(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本発明の断熱材は、スチレン系樹脂発泡粒子成形体であって、前記発泡粒子成形体を構成しているスチレン系樹脂発泡粒子として、輻射伝熱抑制剤の含有量が1〜10質量%である発泡粒子A、及び、前記輻射伝熱抑制剤含有量が1質量%未満(0を含む)の発泡粒子Bを含み、前記発泡粒子成形体の厚み方向に垂直な断面における前記発泡粒子Aの合計面積(S1)と前記発泡粒子Bの合計面積(S2)との面積比(S1/S2)の平均値が0.1〜4.0の範囲である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記発泡粒子成形体が、複数の前記発泡粒子Aと複数の前記発泡粒子Bの融着体からなり、前記発泡粒子Aと前記発泡粒子Bとが前記発泡粒子成形体中で分散して存在している。
【0016】
また、本発明の断熱材において、前記発泡粒子成形体の厚み方向に垂直な断面における前記発泡粒子Aの合計面積(S1)と前記発泡粒子Bの合計面積(S2)との面積比(S1/S2)の変動係数は40%以下である。
【0017】
また、本発明において、輻射伝熱抑制剤としては、特にグラファイト及び/又はカーボンブラックであることが望ましい。以下の説明では、輻射伝熱抑制剤としてグラファイトを用いる場合を代表例として説明する。
【0018】
また、本発明の断熱材を構成するスチレン系樹脂発泡粒子成形体の密度が、10〜50kg/m
3であることが望ましい。
【0019】
なお、本明細書において、スチレン系樹脂発泡粒子成形体を発泡粒子成形体又は単に成形体と呼ぶことがある。また、発泡粒子Aと発泡粒子Bをまとめて発泡粒子と呼ぶことがある。
【0020】
先ず、発泡粒子成形体が発泡粒子Aと発泡粒子Bから構成される実施形態について説明する。
(発泡粒子A)
輻射抑制剤を含有する発泡粒子Aは、輻射抑制剤の含有量が1〜10質量%である。輻射抑制剤の含有量が少なすぎる場合には、目的の建築用途としての熱伝導率(0.037W/m・K以下)が得られ難くなるおそれがある。一方、輻射抑制剤が多すぎる場合には、発泡粒子Aを発泡成形体中に均一に分散させて存在させることが難しくなる。上記観点から、発泡粒子Aにおける輻射抑制剤の含有量は1〜10質量%、更に好ましくは2〜8質量%、さらに好ましくは、3〜5質量%である。
(輻射抑制剤)
輻射抑制剤としては、赤外線吸収効果を有するものや、赤外線反射効果を有するものがあり、カーボン系輻射抑制剤やカーボン系輻射抑制剤以外の無機粒子系輻射抑制剤等が例示できる。カーボン系輻射抑制剤としては、グラファイトやカーボンブラック等が挙げられ、無機粒子系輻射抑制剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、アルミニウム粉等が挙げられる。
【0021】
なお、輻射抑制剤は、コストや取扱性の観点から、カーボン系輻射抑制剤が好ましく、さらにはグラファイトであることが好ましい。
(発泡粒子B)
一方、発泡粒子Bは輻射抑制剤を含有せずに形成された樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子、又は輻射抑制剤が1質量%未満の範囲で含有されている樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子である。また、輻射抑制剤の含有量が、0質量%〜0.5質量%であることが好ましい。
(発泡粒子)
なお、発泡粒子A及び発泡粒子Bのいずれについても、輻射抑制剤以外にその他の添加剤が適宜含有されてもよい。なお、前記添加剤としては、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、気泡調整剤などを例示することができる。また、発泡粒子A及び発泡粒子Bの嵩密度は、10〜80kg/m
3であることが好ましく、12〜50kg/m
3であることが好ましい。上記範囲内であれば、良好な断熱材を得ることが可能である。なお、発泡粒子Aまたは発泡粒子Bの嵩密度は、それぞれ同一のものを用いてもよいが、異なる嵩密度の発泡粒子を用いることもできる。なお、嵩密度は、発泡粒子を1Lメスシリンダー内の1Lの標線位置まで充填して計量し、嵩体積1Lの発泡粒子の質量WP(単位:g)を小数点第1位まで秤量した。そして、単位換算を行うことにより、嵩密度(単位:kg/m
3)を求めた。
(発泡粒子成形体)
本発明の発泡粒子成形体は、発泡粒子Aと発泡粒子Bとから構成され、それらが特定の分散状態で発泡粒子成形体中に存在していることが好ましい。熱伝導率の低減の観点からは、発泡粒子Aと発泡粒子Bの配合割合(体積割合)が、10:90〜70:30であることが好ましく、より好ましくは15:85〜60:40であり、さらに好ましくは20:80〜55:45である。
【0022】
なお、発泡粒子成形体中での、発泡粒子Aと発泡粒子Bとの分散状態は、均一に分散していることが好ましく、後述する発泡粒子成形体断面における面積比を満足することが好ましく、さらには上記面積比の変動係数を満足することが好ましい。
(発泡粒子成形体密度)
発泡粒子成形体の密度は、建築用途としては、断熱性及び引張強さのバランスの観点から、10〜50kg/m
3であることが好ましく、12〜25kg/m
3であることがより好ましく、更には15〜20kg/m
3が好ましい。
(発泡粒子成形体密度の測定)
発泡粒子成形体の密度は、型内成形法により得られる型内成形体であるため、成形体試料の質量(g)を成形体試料の体積(m
3)で除することにより求めることができる。なお、成形体試料の体積は、発泡成形体を水没させた際における水の容積増加分により算出する水没法により求めることができる。
(発泡粒子成形体形状)
発泡粒子成形体の形状は、建築用途としては、板状や柱状等、種々の立体形状に適宜設定が可能である。特に、本発明の断熱材では、従来の積層構造を形成する必要がなく、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを発泡粒子成形体中に分散させることによって、成形体の断熱性を向上させることができる。発泡粒子Aと発泡粒子Bとを、下記断面積の面積比と該面積比の変動係数を満足するように均一に存在させることができれば、統計的に、厚み方向に対する発泡粒子Aの数がほぼ同じになるので、均一な断熱特性を有し、優れた断熱性を発揮させることができる。また、断熱性層を形成させる必要がなく、断熱材を型内成形によって自由な形状に形成できるので、形状の自由度に優れるものとなる。
(スチレン系樹脂)
スチレン系樹脂は、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレンなどの芳香族ビニルモノマーを重合して得られたスチレン系樹脂である。スチレン系樹脂は、上記芳香族ビニルモノマー単独でも、これらのモノマーを2種類以上混合して重合したものでも良く、更には前記モノマーから重合して得られた樹脂を2種類以上混合したものでも良い。
【0023】
また、芳香族ビニルモノマーと共重合可能なビニルモノマーが共重合されたスチレン系樹脂を用いても良い。
【0024】
製造コストの点、前記発泡性樹脂粒子から発泡粒子を得る際の発泡性などの観点から、スチレンを主成分とするスチレン系樹脂を用いることが好ましく、前記スチレン系樹脂はスチレン成分を50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むことが好ましい。
(発泡粒子を構成するスチレン系樹脂の分子量)
発泡粒子を構成するスチレン系樹脂の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、150,000〜350,000の範囲にあることが好ましい。特に、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを構成するスチレン系樹脂の両方の分子量が上記範囲内であれば、前記発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子の発泡性が良好で、高発泡倍率の発泡粒子成形体を得ることができ、且つ型内成形時に発泡粒子同士が融着し易く、得られる発泡粒子成形体の強度が向上する。前記重量平均分子量(Mw)は150,000〜250,000であることが好ましい。
【0025】
なお、前記重量平均分子量、および、数平均分子量、Z平均分子量は、スチレン系樹脂10mgをTHF(テトラヒドロフラン)10mLに溶解させ、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により測定し、標準ポリスチレンで校正した値である。上記GPC分析は、使用機器:東ソー(株)製、SC−8020型、カラム:昭和電工(株)製、Shodex AC−80M 2本を直列に連結、カラム温度:40℃、流速:1.0ml/分、検出器:東ソー(株)製、紫外可視光検出機UV−8020型、を用いて行うことができる。
(面積比)
本発明の発泡粒子成形体における発泡粒子Aと発泡粒子Bとの分散状態について、前記発泡粒子成形体の厚み方向に垂直な断面に現れた、発泡粒子Aの合計面積(S1)と発泡粒子Bの合計面積(S2)との面積比(S1/S2)の平均値は0.1〜4である
上記の面積比(S1/S2)の平均値が小さすぎる場合は、目的の熱伝導率を発揮することが困難となるおそれがある。上記の面積比(S1/S2)の平均値が大きすぎる場合は、均一に発泡粒子を分散させることが難しくなることから、十分かつ再現性のある断熱性能が得られなくなるおそれがある。上記観点から、該面積比は、より好ましくは0.2〜3であり、さらに好ましくは0.25〜2である。
(面積比の測定方法)
本発明において上記の面積比(S1/S2)は、発泡粒子成形体において、厚み方向の中央部分と、表面側部分の2か所の、合計3か所の断面を切り出す。そして、それぞれの断面上において、複数個所の縦50mm、横50mmの正方形の範囲内に存在する、複数の発泡粒子A断面の面積の合計(S1)と複数の発泡粒子B断面の面積の合計(S2)を求めて、S1をS2で除することにより求める。そして、それぞれの発泡粒子成形体断面について、この面積比(S1/S2)を求める操作を行い、得られた少なくとも15箇所についての面積比(それぞれSR1、SR2、・・・・・SR15とする)の算術平均値を該面積比(S1/S2)の平均値(SV)とする。
【0026】
なお、発泡粒子成形体の断面が曲面を含む場合には、平面断面として切り出したサンプルについて、同様の操作を行い、該面積比を算出する。なお、厚み方向とは、断熱材として使用される断熱方向を意味する。
【0027】
また、発泡粒子成形体の断面上に選択された正方形の範囲内に存在するS1、S2の算出方法としては、例えば、まず、上記正方形の範囲の拡大写真を撮影し、その拡大写真をスキャナー装置で画像データ化する。このときスキャナー装置としては、市販のスキャナー装置を適宜選択可能である。次に、画像データ化された拡大写真の画像にモノトーン化処理を施してモノトーン画像を調製する。グラファイトを含有する発泡粒子Aは黒い部分として表示される。モノトーン化処理は、例えば、画像データ化された拡大写真をNS2K Pro(ナノシステム)のような画像解析ソフトに適用することで実現することができる。モノトーン化処理され画像データに基づき、黒く表れている部分の面積を算出することにより発泡粒子Aの面積の合計(S1)が算出され、画像全体の面積から発泡粒子Aの面積の合計を差し引くことで、発泡粒子Bの面積の合計(S2)を算出することができる。
(面積比の変動係数)
本発明の発泡粒子成形体の断面における面積比(S1/S2)の変動係数は40%以下、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは25%以下である。上記面積比の変動係数が小さいことは、発泡粒子成形体中での発泡粒子A及び発泡粒子Bのそれぞれがより均一に分散していることを示している。なお、変動係数の下限は、概ね5%であることが好ましい。
従来、断熱材を形成する際には、熱伝導率低減効果に優れる発泡粒子Aのみからなる成形体の層を形成することで、目的の断熱性能を得ることが一般的であった。
【0028】
一方、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを混合して成形体を形成した場合には、発泡粒子Aには輻射抑制剤が含有されているので、発泡粒子Aと発泡粒子Bの体積当たりの重量が異なり、型内成形時に、発泡粒子Aが成形型の下側に滞留しやすくなるため、均一な断熱特性を有する発泡粒子成形体を得ることは難しいと考えられていた。したがって、型内成形にて使用される発泡粒子Aと発泡粒子Bとの配合割合と、該型内成形にて得られた発泡粒子成形体の断面を構成している発泡粒子Aと発泡粒子Bの面積比は、必ずしも対応する関係になるとは限らない。
【0029】
なお、本発明においては、発泡粒子成形体中で発泡粒子Aを従来よりも均一に分散させた成形体を断熱材として用いることによって、安定した熱伝導率の低減効果が得られることを見出したものである。本発明においては、発泡粒子成形体中において、上記面積比の変動係数が小さく、発泡粒子Aが比較的均一に分散して存在している。この場合には、統計的に厚み方向に存在する発泡粒子Aの個数も均一となる。すると、厚み方向における断熱性能は、均質化されたものとなるので、断熱性能に優れるものとなる。本発明においては、後述する方法によって、均一に型内に発泡粒子を導入することによって、上記の面積比の変動係数が小さなものとなり、優れた断熱性を発揮し得るものとなる。
(面積比の変動係数(%)の算出方法)
本発明において上記の面積比(S1/S2)の変動係数は、上記のとおり測定された発泡粒子成形体断面における15箇所の面積比(SR1、SR2、SR3、・・・SR14、SR15)の値および面積比の平均値(SV)から、下記数式(1)〜(3)に基づいて算出される。
【0033】
(発泡粒子成形体の製造方法)
本発明に係る発泡粒子成形体の製造方法としては、例えば次のような方法を挙げることができる。
【0034】
まず、発泡粒子A及び発泡粒子Bを次のように調製する。
【0035】
発泡粒子Bを得るための樹脂粒子を調製する方法としては、例えば、基材樹脂を押出機に投入して溶融状態として押出機先端に取り付けたダイからストランド状に押出し、押出されたストランドをカットして樹脂粒子を得る方法(ストランドカット法)等を挙げることができる。この方法の他にも、樹脂粒子を調製する方法としては、アンダーウォーターカット法等の周知の樹脂粒子製造方法を採用することができる。発泡粒子Aは、スチレン系樹脂に輻射抑制剤としてグラファイトが1〜10質量%分散されているものに発泡剤を含有させた樹脂粒子を得る。発泡粒子Aを得るための樹脂粒子を調製する方法としては、グラファイトとスチレン系樹脂とをニーダーや押出機などの混練機を使用することによりグラファイトがスチレン系樹脂中に大きく偏在することなく分散するように混練する以外は、上述したようなストランドカット法や、アンダーウォーターカット法等の周知の樹脂粒子製造方法を採用することができる。
【0036】
樹脂粒子の発泡物である発泡粒子は、従来公知の押出発泡粒子製造方法やオートクレーブから発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を放出して発泡する方法、発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を加熱軟化させて発泡する方法等の従来公知の発泡方法により製造することができる。
【0037】
本発明の発泡粒子成形体を断熱材として使用する場合においては、発泡粒子成形体を構成する発泡粒子Aと発泡粒子Bの混合状態は、均一であることが理想的である。発泡粒子Aと発抱粒子Bとが均一に混合された発泡粒子成形体を得る観点からは、発泡粒子A及び発泡粒子Bの見かけ密度及び平均粒子径の関係が下記数式(4)および数式(5)を満足することが好ましい。
【0039】
【数5】
ただし、上記数式(4)、数式(5)において、
D1:発泡粒子Aの見かけ密度(kg/m
3)、
D2:発泡粒子Bの見かけ密度(kg/m
3)、
P1:発泡粒子Aの平均粒子径(mm)、
P2:発泡粒子Bの平均粒子径(mm)、
である。
【0040】
上記数式(4)及び数式(5)を満足する発泡粒子を用いることにより、発泡粒子成形体中の発泡粒子Aの分散をより均一なものにすることができる。
【0041】
なお、発泡粒子Aおよび発泡粒子Bは、混合装置などを用いて十分に混合して発泡粒子混合物を調製し、該発泡粒子混合物を成形型に充填して型内成形することによって発泡粒子成形体とすることができる。混合装置としては、パドル型若しくはスクリュー型ミキサーや、タンブラー等を適宜選択可能である。
【0042】
また、本発明においては、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを別々に保管しておき、成形型に導入する際に、
図1に示すような導入方法によって、成形体中の発泡粒子Aと発泡粒子Bの分散状態をさらに均一なものに制御することができる。すなわち、発泡粒子Aと発泡粒子Bとを成形型に移送する際に、移送する配管の径を変更することで、それぞれの発泡粒子の配合割合を制御する。そして、成形型に導入する直前に、発泡粒子A用の配管と発泡粒子B用の配管とを1本に連結して、配管内で発泡粒子Aと発泡粒子Bとを混ぜ合わせることにより、成形型内に発泡粒子AとBとを均一に導入することが可能となる。導入された発泡粒子は型内成形によって融着して、成形体中に、発泡粒子AとBとが均一に分散した成形体が得られる。
【0043】
特に、上記の
図1の方法であれば、平板のボード状の成形体であったり、発泡粒子に密度差があったり、発泡粒子の重量が異なるなど、一方の発泡粒子が金型内で偏在し易い場合であっても、発泡粒子Aと発泡粒子Bとが良好に分散した成形体となる。
【0044】
建築用断熱材として用いられる場合には、例えば、平板状の成形体である場合、厚み方向に垂直な断面上において、均一に上記2種の発泡粒子が分散されていることが重要であるとともに、成形体の厚み方向にも偏りなく、均一に分散されていることが重要である。本発明においては、このようにして、2種類の発泡粒子の成形体中での分散を制御して得られた成形体が、建築用断熱材として特に優れることを見出したものである。
【0045】
なお、上記方法であれば、本発明の効果を阻害しない範囲内で、配管の本数を増減させることで、さらに多種の発泡粒子を混合させ、成形体を得ることもできる。
(発泡粒子の平均粒子径測定方法)
水が入ったメスシリンダーを用意し、適量の発泡粒子群を上記メスシリンダー内の水中に金網などの道具を使用して沈める。そして、金網などの道具の体積を考慮しつつ水位上昇分より読みとられる発泡粒子の容積V1[L]を測定する。この容積V1をメスシリンダーに入れた発泡粒子の個数(N)にて割り算(V1/N)することにより、発泡粒子1個あたりの平均体積を算出する。得られた平均体積と同じ体積を有する仮想真球の直径をもって発泡粒子の平均粒子径[mm]とした。
(発泡粒子成形体の引張強さ)
発泡粒子成形体の引張強さは、JIS K6767:1999に記載の引張試験方法に基づき、試験片90mm×90mm×10mm(厚み)を、引張試験用オートグラフで鉛直方向に速度10mm/minで引張った時の、切断にいたるまでの最大荷重を試験片の断面積(試験片の幅×試験片の厚さ)で割算することにより求める。なお、前記スチレン系樹脂発泡粒子成形体の引張り強さは、20N/cm
2以上であることが好ましく、21N/cm
2以上であることがさらに好ましい。
(加熱寸法変化)
得られた断熱材を、JIS K6767(1999)に準拠して、70℃〜90℃の各温度に保った熱風循環式乾燥機の中に水平に置き、22時間加熱を行った後取り出し、標準状態に1時間放置した後と、加熱前の寸法を測定した。
(熱伝導率)
熱伝導率は、、製造直後の発泡成形体200mm×200mm×25mmの試験片を23℃、湿度50%の雰囲気下に保存する。製造後10日後に該試験片を用いてJIS A1412−2:1999記載の熱流計法(試験体1枚・対称構成方式、高温側33℃、低温側13℃)に基づいて熱伝導率を測定することができる。なお、建築用断熱材として優れた性能を発揮し得る観点からは、上記熱伝導率が0.037W/m・K以下であることが好ましく、0.0365W/m・K以下であることがより好ましく、0.036W/m・K以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。
実施例1
市販のグラファイトを5.5質量%含有した、ポリスチレン樹脂からなる予備発泡粒子A13%(vol%)(嵩密度18kg/m
3、平均粒子径4.0mm)と、市販のグラファイト非含有のポリスチレン樹脂からなる予備発泡粒子B87%(vol%)(嵩密度18kg/m
3、平均粒子径4.0mm)を別々に用意し、後述の方法でこれらを型内成形機に充填した。成形体全体に対するグラファイト比は0.8質量%であった。
【0047】
そして、0.09MPa(ゲージ圧力)のスチームで金型内に充填した予備発泡粒子を15秒間加熱した。これにより、予備発泡粒子を金型内にて相互に融着させた。次いで、金型内を所定時間冷却した後、予備発泡粒子同士が相互に融着してなる発泡粒子成形体を金型から取り出して、実施例1の断熱材を製造した。この断熱材の寸法は、底面200mm×200mm、厚さ25mm、密度が16kg/m
3であった。なお、予備発泡粒子AとBは、金型に導入する際の配管径により配合割合を調整し、予備発泡粒子AとBの配管を金型導入前に一度合流させた後に、配管内で混合された発泡粒子群を充填ガンから金型に導入した。予備発泡粒子AとBの金型への導入は、
図1に示すように、発泡粒子充填ホースの先端を二股(Y字管)とし、そのパイプ径(断面積)を適切な比率に設定することで均一な混合比率の成形体を得ることができる。実施例1では、発泡粒子B側の配管を直径25mmとし、発泡粒子A側の配管の断面積を、発泡粒子Bの配管の断面積の18%とすることで、発泡粒子Aの充填割合を13%に制御した。
【0048】
実施例1で作成した断熱材の平均面積比(S1/S2)、面積比の変動係数、標準偏差(σ)、成形体密度、熱伝導率、寸法変化(70℃、80℃、85℃、90℃、95℃)、引張強さAを、前述した方法により測定した。その結果を表1、表2に示す。なお、面積比は、成形体中央部と、成形体表面から5mmの断面を切り出し、測定を行った。表1から、実施例1の断熱材は、熱伝導率が良好で断熱性能に優れ、かつ、引張強さに優れることがわかる。
【0049】
また、表2から、発泡粒子Aの配合割合が多い断熱材ほど、加熱寸法変化が小さくなっていることが分かる。これは、グラファイト粒子を含有する発泡粒子Aは熱放散が起こり易いので、このような特性を有する発泡粒子が発泡粒子成形体中に均一に分散されているため、加熱寸法変化が小さいと考えられる。上記観点からは、発泡粒子Aと発泡粒子Bの配合割合(体積割合)が、30:70〜70:30であることが好ましい。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
実施例2〜6
発泡粒子Aと発泡粒子Bの配合比率を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6の断熱材を製造した。それぞれの発泡粒子の充填割合は、実施例1の際の発泡粒子Bの配管を一定とし、発泡粒子Aの配管の断面積を変更することで制御した。実施例2においては、発泡粒子Bの配管に対する発泡粒子Aの配管の断面積の割合Xを36%とし、実施例3ではXを42%とし、実施例4では55%とし、実施例5では100%とした。したがって、配管の断面積を変更することで、各発泡粒子の充填割合を制御することができる。上記のようにして型内成形された発泡粒子成形体は、前記発泡粒子成形体の厚み方向に垂直な断面における前記発泡粒子Aの合計面積(S1)と前記発泡粒子Bの合計面積(S2)との面積比(S1/S2)の平均値が0.1〜4.0の範囲であり、前記面積比の変動係数が40%以下となり、発泡粒子の分散性に優れていた。
【0053】
これらの断熱材について実施例1と同様にして各種特性を調べた。その結果を表1に示す。
比較例1
発泡粒子Bのみを用いて、実施例1と同様にして、比較例1の断熱材を製造した。
【0054】
比較例1の断熱材について、表1に示す各種特性を調べた。その結果を表1に示す。表1から、比較例1の断熱材は、熱伝導率が大きく断熱性が劣る。
比較例2
発泡粒子Aのみを用いて、実施例1と同様にして、比較例2の断熱材を製造した。
【0055】
比較例2の断熱材について、表1に示す各種特性を調べた。
比較例3
発泡粒子Aのみを用いて、実施例1と同様にして作製した発泡粒子成形体と、発泡粒子Bのみを用いて、実施例1と同様にして作製した発泡粒子成形体を厚みが1:2となるように積層し、厚さ25mmの成形体とし、比較例3の断熱材を製造した。
【0056】
比較例3の断熱材について、表1に示す各種特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0057】
なお、比較例3においては、発泡粒子Aの成形体と、発泡粒子Bの成形体との積層接着面が存在するので、測定箇所によって引張強さは大きく変動してしまった。特に、接着強度が不十分な箇所が存在すると、局所的にその部分から壊れて、引張強度が低下する場合があった。