(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記警報装置は、前記警報の発生を停止した後に、前記電波発信装置から発信される前記電波を受信しなくなってから再び前記電波を受信すると、前記警報を再び発生するように構成される請求項1又は2に記載の吊荷警報システム。
前記警報装置は、前記クレーンに吊り下げられる前記吊荷の移動が停止すると、前記電波を受信している場合であっても、前記警報の発生を停止するように構成される請求項1から7の何れか1項に記載の吊荷警報システム。
前記警報装置は、前記クレーンに吊り下げられる前記吊荷の移動が停止した後に、前記吊荷の移動が再開され、且つ、前記電波を受信すると、前記警報を再び発生するように構成される請求項8に記載の吊荷警報システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレーンに近接している作業員の中には、例えば、クレーンに吊り下げられている吊荷を引き寄せるための作業員のように、所定の作業のためにクレーンに近接している作業員が含まれている場合が多い。そして、このような作業員と吊荷とが近接していることで鳴らされている警告音は、容易に停止対象として選択され、速やかに停止されることが望ましい場合がある。しかしながら、特許文献1から特許文献3には、このような作業員と吊荷とが近接していることで鳴らされている警告音が容易に停止対象として選択され、速やかに停止されるための技術について何ら記載されていない。
【0006】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は上述の従来技術に鑑みなされたものであり、クレーンに吊り下げられる吊荷が近接していることを作業員に報知する警報のうち、特定の警報を容易に停止対象として選択し、速やかに停止することができる吊荷警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る吊荷警報システムは、クレーンに吊り下げられる吊荷が作業員に近接していることを前記作業員に報知するための吊荷警報システムであって、前記吊荷の近傍に配置された、磁界を発生させるための磁界発生装置と、前記作業員が身に着けている装着物に取り付けられる電波発信装置であって、前記磁界発生装置が発生させる前記磁界を検知すると電波を発信するように構成された電波発信装置と、前記電波発信装置が発信する前記電波を受信すると警報を発生するように構成された警報装置と、前記電波を発信している前記電波発信装置に対応するシンボルを表示可能なタッチパネルと、を備え、前記警報装置は、前記タッチパネルに表示されている前記シンボルが接触操作されると、前記電波を受信している場合であっても、前記警報の発生を停止するように構成される。
【0008】
上記(1)の構成によれば、電波発信装置が取り付けられている装着物を身に着けている作業員と吊荷とが近接すると、吊荷の近傍に配置された磁界発生装置が発生させる磁界を電波発信装置が検知して電波を発信する。そして、警報装置はその電波発信装置が発信する電波を受信して警報を発生する。この際、タッチパネルはその電波発信装置に対応するシンボルを表示するので、容易にその電波発信装置のシンボルを選択することができる。また、その電波発信装置のシンボルに対して接触操作することで、その電波発信装置が発信する電波を受信して警報を発生している警報装置に対して、速やかに警報の発生を停止することができる。よって、クレーンに吊り下げられる吊荷が近接していることを作業員に報知する警報のうち、特定の警報を容易に停止対象として選択し、速やかに停止することができる。
【0009】
また、タッチパネルに表示されているシンボルを視覚的に確認してからそのシンボルに対して接触操作するので、いわゆる指差確認が行なわれるので、停止対象の警報を間違えて選択し、その警報を停止してしまうことを防止することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、前記タッチパネルに表示される前記シンボルは、接触操作されると、接触操作される前の前記シンボルと識別可能であるように前記タッチパネルに表示される。
【0011】
上記(2)の構成によれば、タッチパネルに表示されているその電波発信装置に対応するシンボルを視認することで、警報装置はその電波発信装置が発信する電波を受信して、警報を発生している(接触操作される前)か、又は警報の発生を停止している(接触操作されている)かどうかを識別することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の何れか1つに記載の構成において、前記警報装置は、前記警報の発生を停止した後に、前記電波発信装置から発信される前記電波を受信しなくなってから再び前記電波を受信すると、前記警報を再び発生するように構成される。
【0013】
上記(3)の構成によれば、警報装置は、警報の発生を停止している状態において、作業員が吊荷から離れた位置(警報の発生が不要な位置)に移動してから再度吊荷に近接した場合に、警報を再び発生する。このため、この作業員は吊荷と再度近接したことを知ることができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)の何れか1つに記載の構成において、前記作業員が身に着けている前記装着物に取り付けられる加速度検出装置をさらに備え、前記警報装置は、前記警報の発生を停止した後に、前記加速度検出装置が検出する加速度が閾値を超え、且つ、前記電波を受信すると、前記警報を再び発生するように構成される。
【0015】
上記(4)の構成によれば、警報装置は、警報の発生を停止している状態において、作業員の動きが加速度の閾値を超える異常事態(例えば、作業員の転倒)であり、且つ電波を受信すると、再び警報を発生する。このため、吊荷に近接している作業員は作業員自身に異常事態が発生していることを知ることができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)の何れか1つに記載の構成において、前記磁界発生装置は、前記クレーンのクレーンフックに配置されている。
【0017】
クレーンフックは、ブームや運転室と比較して、クレーンに吊り下げられている吊荷と近い。このため、上記(5)の構成によれば、磁界発生装置はクレーンフックに配置されているので、磁界発生装置が発生させる磁界の領域内に吊荷を容易に含めることができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)から(5)の何れか1つに記載の構成において、前記電波発信装置は、前記電波発信装置の位置と前記磁界発生装置の位置との間の距離に応じた情報である電波情報を含む電波を発信し、前記警報装置は、前記電波発信装置が発信する前記電波の前記電波情報に応じた警報を発生するように構成される。
【0019】
上述したように、電波発信装置は作業員が身に着けている装着物に取り付けられる。磁界発生装置は吊荷の近傍に配置されている。このため、電波発信装置の位置と磁界発生装置の位置との間の距離に応じた情報である電波情報は、作業員の位置と吊荷の位置との間の距離に応じた情報であると言うことができる。上記(6)の構成によれば、警報装置は電波情報に応じた警報を発生するので、作業員は吊荷とどれくらい近接しているかを知ることができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)の何れか1つに記載の構成において、前記クレーンの運転室に設けられる運転室用警報装置であって、前記運転室にいる運転員に報知するための警報である運転室用警報を発生する運転室用警報装置をさらに備え、前記運転室用警報装置は、前記警報装置が前記警報を発生すると前記運転室用警報を発生するように構成される。
【0021】
上記(7)の構成によれば、クレーンに吊り下げられている吊荷と作業員とが近接していると、警報装置が警報を発生するとともに、運転室用警報装置が運転室用警報を発生する。このため、クレーンに吊り下げられている吊荷と作業員とが近接していることを、クレーンの運転室にいる運転員に報知することができる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(7)の何れか1つに記載の構成において、前記警報装置は、前記クレーンに吊り下げられる前記吊荷の移動が停止すると、前記電波を受信している場合であっても、前記警報の発生を停止するように構成される。
【0023】
吊荷を所定の位置に置いているような吊荷の移動が停止している場合、その吊荷と作業員とが近接していることを作業員に報知しなくてもよい。上記(8)の構成によれば、警報装置は、吊荷の移動が停止すると、電波を受信している場合であっても、警報の発生を停止するので、作業員に報知しなくてもよい警報の発生を停止することができる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の構成において、前記警報装置は、前記クレーンに吊り下げられる前記吊荷の移動が停止した後に、前記吊荷の移動が再開され、且つ、前記電波を受信すると、前記警報を再び発生するように構成される。
【0025】
上記(9)の構成によれば、警報装置は、吊荷の移動が停止した後に、吊荷の移動が再開され、且つ、電波を受信すると再び警報を発生する。このため、吊荷に近接している作業員は、吊荷の移動が再開されたことを知ることができる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)から(9)の何れか1つに記載の構成において、前記吊荷及び、前記吊荷の周辺領域を撮像する撮像装置をさらに備え、前記タッチパネルは、前記撮像装置が撮像した撮像画像に前記シンボルを重ねて表示する。
【0027】
上述したように、シンボルは電波発信装置に対応しており、この電波発信装置は作業員が身に着けている装着物に取り付けられる。このため、シンボルは作業員を表しているといえる。上記(10)の構成によれば、タッチパネルは、吊荷、及び吊荷の周辺領域が撮像された撮像画像にシンボルを重ねて表示する。このため、タッチパネルを視認することで、吊荷の位置に対する作業員の位置を知ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、クレーンに吊り下げられる吊荷が近接していることを作業員に報知する警報のうち、特定の警報を容易に停止対象として選択し、速やかに停止することができる吊荷警報システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る吊荷警報システムの概略構成図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る吊荷警報システムを備えたクレーンを示す概略構成図である。
図3A及び
図3Bは、本発明の一実施形態に係る吊荷警報システムのタッチパネルに表示される画像の図である。
【0032】
本発明の一実施形態に係る吊荷警報システムは、クレーンに吊り下げられる吊荷が作業員に近接していることを作業員に報知するためのシステムである。このような吊荷警報システム1は、
図1及び
図2に示すように、磁界発生装置2と、電波発信装置4と、警報装置8と、タッチパネル10と、を備える。
図1に示した実施形態では、複数の装置を収めることが可能な筐体100に磁界発生装置2が収められている。
【0033】
クレーン30は、エンジンや電力などを動力源として重量物(吊荷50)を吊上げ、その吊上げた吊荷50を水平方向に移動させるための装置であって、例えば、ジブクレーン、天井クレーンや引込みクレーンなどである。本開示では、
図2に示すように、ジブクレーンを例にして説明する。
【0034】
磁界発生装置2は、
図1及び
図2に示すように、所定の領域を有する磁界20を発生させるための装置である。また、この磁界発生装置2は、
図2に示すように吊荷50の近傍に配置されている。
【0035】
図1に示した実施形態では、磁界発生装置2は、磁界20を発生させる磁界発生部102を備えている。磁界発生部102は、例えば、電磁石を含んでおり、この電磁石に電流が流されることで、所定の領域を有する磁界20を発生させる。尚、磁界発生装置2は、この磁界発生部102に流すための電流を、筐体100の外部(例えば、運転室34に設けられた電源装置)から無線によって給電されるように構成されてもよい。
【0036】
図2に示した実施形態では、磁界発生装置2はクレーンフック31に取り付けられることで、吊荷50の近傍に配置されている。そして、この磁界発生装置2は、磁界20の中心Oから半径rを有する磁界20(球状形状を有する)を発生させている。磁界発生装置2は、磁界20の半径rの大きさを変えて磁界20を発生させたり、発生させる磁界20の強度を変えたりすることが可能であるように構成されている。磁界20の半径rは、クレーン30に吊り下げられる吊荷50が磁界20の領域内から出ない程度の大きさでよく、例えば12mである。ここで、「磁界発生装置2を吊荷50の近傍に配置する」とは磁界発生装置2が発生させる磁界20の領域内に吊荷50が含まれる程度に、磁界発生装置2を吊荷50に近い位置に配置することを意味する。
図2に示した実施形態では、吊荷50の近傍としてクレーンフック31を例示しているが、上述した条件を満たすのであれば、クレーンフック31以外であってもよい。例えば、ワイヤ33やブーム32に磁界発生装置2を取り付けてもよい。
【0037】
電波発信装置4は、
図1及び
図2に示すように、磁界発生装置2が発生させる磁界20を検知すると、電波40を発信するように構成された装置である。また、電波発信装置4は、
図2に示すように、作業員W1が身に着けている装着物(ヘルメット24)に取り付けられる装置である。
【0038】
図1に示した実施形態では、電波発信装置4は、磁界発生装置2が発生させる磁界20を検知可能に構成される磁界検知部104Aと、磁界検知部104Aが磁界20を検知すると電波40を発信する電波発信部104Bと、を備えている。磁界検知部104Aは、例えば、磁気センサである。電波発信部104Bは、この電波発信部104Bを備える電波発信装置4を識別するための識別情報が含まれる電波40を発信する装置である。電波40にこのような識別情報が含まれることで、後述するタッチパネル10に電波発信装置4のシンボル15が表示された際に、運転員W5は電波発信装置4のシンボル15を識別することができる。
【0039】
図2に示した実施形態では、電波発信装置4は作業員W1が身に着けているヘルメット24に取り付けられている。そして、作業員W1が吊荷50に近づくと、ヘルメット24に取り付けられている電波発信装置4が、吊荷50の近傍に配置されている磁界発生装置2が発生させる磁界20を検知する。そして、この磁界20を検知した電波発信装置4は電波40を発信している。尚、電波発信装置4は、ヘルメット24以外の装着物に取り付けられていてもよく、例えば作業員W1が身に着ているものである作業着(不図示)に取り付けられていてもよい。
【0040】
警報装置8は、電波発信装置4が発信する電波40を受信すると警報を発生するように構成された装置である。
図1に示した実施形態では、警報装置8は、電波発信装置4が発信する電波40を受信可能に構成されるものである電波受信部108Aと、電波受信部108Aが電波を受信すると警報を発生させるものである警報発生部108Bと、を備えている。このような警報装置8は、電波発信装置4が発信する電波40を電波受信部108Aが受信すると、警報発生部108Bが警報を発生する。警報装置8は、例えばブザーや、パトランプといった装置であって、聴覚的に認識可能な音である警報や、視覚的に認識可能な光である警報を発生する。尚、警報装置8は、上記例の他に、作業員W1の五感により認識可能な警報を発生する装置も含まれる。
【0041】
図2に示した実施形態では、警報装置8は作業員W1が身に着けているヘルメット24に取り付けられている。そして、作業員W1が吊荷50に近づくと、警報装置8は、電波発信装置4が発信する電波40を受信して、警報を発生している。尚、警報装置8は、ヘルメット24以外の装着物に取り付けられていてもよく、例えば作業員W1が身に着ているものである作業着(不図示)に取り付けられていてもよい。
【0042】
タッチパネル10は、
図3A及び
図3Bに示すように、電波40を発信している電波発信装置4に対応するシンボル15を表示可能に構成される。このタッチパネル10は、人の指のような導電性を有する物体に接触されることで、指示を入力することができる画面である。
図1に示した実施形態では、筐体100は、電波発信装置4が発信する電波40から電波発信装置4の識別情報を取得するとともに、この取得した識別情報をタッチパネル10に送信可能に構成される装置である識別情報取得・送信装置130をさらに収めている。そして、
図3A及び
図3Bに示すように、タッチパネル10は、識別情報取得・送信装置130が送信した電波発信装置4の識別情報を、タッチパネル10に表示される映像であるシンボル15に変換して表示している。
【0043】
また、タッチパネル10は、電波40を発信している1つの電波発信装置4に対応する1つのシンボル15を表示する。
図3A及び
図3Bに示した実施形態では、タッチパネル10は、3つのシンボル15(15A、15B、15C)を表示しているため、磁界20を検知して電波40を発信している電波発信装置4の台数は3台である。
【0044】
警報装置8は、タッチパネル10に表示されているシンボル15が接触操作されると、電波40を受信している場合であっても、警報の発生を停止するように構成される。
【0045】
ここで、接触操作とは、シンボル15に接触することで、タッチパネル10に指示(警報停止指示、又は警報指示)を入力する操作である。接触操作は、例えば、シンボル15を一回接触した後に、所定の時間内に再度シンボル15に接触する操作であるダブルタップである。
図1に示した実施形態では、吊荷警報システム1は、タッチパネル10に表示されるシンボル15に接触操作されると、警報装置8に対して警報を停止する指示である警報停止指示、又は警報を発生する指示である警報指示を出力するように構成される指示装置112をさらに備えている。警報停止指示は、警報装置8に警報を発生させている電波発信装置4のシンボル15に対して接触操作されたときに出力される。警報指示は、警報装置8に警報を発生させることが警報停止指示によって停止されている電波発信装置4のシンボル15に対して接触操作されたときに出力される。
【0046】
警報装置8は、指示装置112から警報停止指示が出力されると、電波受信部108Aが電波40を受信して警報発生部108Bが警報を発生している場合であっても、その警報の発生を停止する。また、警報装置8は、指示装置112から警報指示が出力されると、警報発生部108Bに警報を発生させる。
【0047】
図2に示した実施形態では、タッチパネル10は、クレーン30の運転室34に設けられている。運転室34は、運転員W5がクレーン30に吊り下げられている吊荷50を移動させるため、ワイヤ33やブーム32などを操作するための部屋である。
【0048】
このような本発明の一実施形態に係る吊荷警報システム1によれば、磁界20を発生させるための磁界発生装置2は吊荷50の近傍に配置されている。電波発信装置4は作業員W1が身に着けている装着物(ヘルメット24)に取り付けられる。また、電波発信装置4は磁界発生装置2が発生させる磁界20を検知すると電波40を発信する。タッチパネル10は、電波40を発信している電波発信装置4に対応するシンボル15を表示できる。警報装置8は電波発信装置4が発信する電波40を受信すると警報を発生する。また、警報装置8は、タッチパネル10に表示されているシンボル15が接触操作されると、電波40を受信している場合であっても、警報の発生を停止するように構成される。
【0049】
このため、電波発信装置4が取り付けられている装着物(ヘルメット24)を身に着けている作業員W1と吊荷50とが近接すると、吊荷50の近傍に配置された磁界発生装置2が発生させる磁界20を電波発信装置4が検知して電波40を発信する。そして、警報装置8はその電波発信装置4が発信する電波40を受信して警報を発生する。この際、タッチパネル10はその電波発信装置4に対応するシンボル15を表示するので、容易にその電波発信装置4のシンボル15を、例えば、そのシンボル15を一回接触する(シングルタップ)ことで、選択することができる。また、その電波発信装置4のシンボル15に対して接触操作(ダブルタップ)することで、その電波発信装置4が発信する電波40を受信して警報を発生している警報装置8に対して、速やかに警報の発生を停止することができる。よって、クレーン30に吊り下げられる吊荷50が近接していることを作業員W1に報知する警報のうち、特定の警報を容易に停止対象として選択し、速やかに停止することができる。
【0050】
また、タッチパネル10に表示されているシンボル15を視覚的に確認してから、そのシンボル15に対して接触操作するので、いわゆる指差確認が行なわれるので、停止対象の警報を間違えて選択し、その警報を停止してしまうことを防止することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、タッチパネル10に表示されるシンボル15は、接触操作されると、接触操作される前のシンボル15と識別可能であるようにタッチパネル10に表示される。
【0052】
図3A及び
図3Bに示した実施形態では、タッチパネル10に表示されるシンボル15Aであって、接触操作される前のシンボル15Aは、所定の色(例えば赤色)を付けて点滅させて表示されている。そして、このシンボル15Aは、接触操作されると所定の色とは異なる色(例えば黒色)が付けられて、且つこのシンボル15Aを囲む枠Hが付けられて、点滅させて表示されている。尚、接触操作の前後でシンボル15を識別可能であれば、上述した実施形態以外の方法でシンボル15をタッチパネル10に表示してもよい。例えば、接触操作される前のシンボル15には特定の文字を付けずにタッチパネル10に表示し、接触操作されると、このシンボル15には特定の文字(例えば、警報解除中)を付けてタッチパネル10に表示してもよい。
【0053】
このような構成によれば、警報装置8は電波発信装置4が発信する電波40を受信して、警報を発生している(接触操作される前)か、又は警報の発生を停止している(接触操作されている)かどうかを、タッチパネル10に表示されているその電波発信装置4に対応するシンボル15を視認して識別することができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、警報装置8は、警報の発生を停止した後に、電波発信装置4から発信される電波40を受信しなくなってから再び電波40を受信すると、警報を再び発生するように構成される。ここで、「警報の発生を停止した」とは、タッチパネル10に表示されているシンボル15が接触操作されることで、警報装置8が警報の発生を停止したことを意味する。
【0055】
図1に示した実施形態では、警報装置8は、指示装置112から出力される警報停止指示をキャンセルするためのものである指示取消部108Cをさらに備える。この指示取消部108Cは、電波受信部108Aが電波40を受信しなくなると、指示装置112から出力されている警報停止指示をキャンセルする。このため、警報装置8に対して指示が出力されない状態(接触操作される前の状態)となる。そして、電波受信部108Aが電波40を受信し始めると、警報発生部108Bが警報を再び発生する。
【0056】
このような構成によれば、警報装置8は、警報の発生を停止している状態において、作業員W1が吊荷50から離れた位置(警報の発生が不要な位置)に移動してから再度吊荷50に近接した場合に、警報を再び発生する。このため、この作業員W1は吊荷50と再度近接したことを知ることができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、吊荷警報システム1は、
図1及び
図2に示すように、加速度検出装置26をさらに備える。この加速度検出装置26は、作業員W1が身に着けている装着物(ヘルメット24)に取り付けられる。そして、警報装置8は、
図1に示すように、警報の発生を停止した後に、加速度検出装置26が検出する加速度が閾値を超えると、指示装置112から警報停止指示が出力されていても、警報を再び発生するように構成される。上述したように、「警報の発生を停止した」とは、タッチパネル10に表示されているシンボル15が接触操作されることで、警報装置8が警報の発生を停止したことを意味する。
【0058】
加速度検出装置26は、吊荷50に近接している位置にいる作業員W1の加速度を検出するために、作業員W1が身に着けている装着物(ヘルメット24)に取り付けられる装置であって、例えば、加速度センサである。閾値は、吊荷50に近接している位置にいる作業員W1が転倒したり、急に座りこんだりしたことを検出できるように予め設定される値である。尚、加速度検出装置26は、ヘルメット24以外の装着物に取り付けられていてもよく、例えば作業員W1が身に着ているものである作業着(不図示)に取り付けられていてもよい。
【0059】
このような構成によれば、警報装置8は、警報の発生を停止している状態において、作業員W1の動きが加速度の閾値を超える異常事態(例えば、作業員の転倒)であり、且つ電波40を受信すると、再び警報を発生する。このため、吊荷50に近接している作業員W1は作業員W1自身に異常事態が発生していることを知ることができる。
【0060】
尚、幾つかの実施形態では、警報装置8が警報を再び発生すると、その警報装置8が受信している電波40を発信している電波発信装置4のシンボル15は、接触操作される前のシンボル15でタッチパネル10に表示される。このような構成によれば、タッチパネル10を視認することで、警報装置8が再び警報を発生していること(作業員W1と吊荷50とが再近接していることや、作業員W1に異常事態が発生していること)を知ることができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、磁界発生装置2は、クレーン30のクレーンフック31に配置されている。クレーンフック31は、ブーム32や運転室34と比較して、クレーン30に吊り下げられている吊荷50と近い。このため、このような構成によれば、磁界発生装置2はクレーンフック31に配置されているので、磁界発生装置2が発生させる磁界20の領域内に吊荷50を容易に含めることができる。
【0062】
図4は、本発明の一実施形態に係る吊荷警報システムの磁界発生装置が発生させる磁界の領域を説明するための図である。
【0063】
幾つかの実施形態では、電波発信装置4は、電波発信装置4の位置と磁界発生装置2の位置との間の距離に応じた情報である電波情報を含む電波を発信する。そして、警報装置8は、電波発信装置4が発信する電波40の電波情報に応じた警報を発生するように構成される。電波情報は、例えば周波数や電波を受信した際の強度である。
【0064】
図4に示した実施形態では、磁界20の領域は、注意領域20Aと、警報領域20Bと、緊急領域20Cとを含む。注意領域20Aは、警報領域20B及び緊急領域20Cと比較して、クレーン30に吊り下げられる吊荷50が作業員W1に衝突する危険性が低い領域である。
図4に示した実施形態では、注意領域20Aは、磁界20の領域のうち、磁界20の中心Oからの距離がL2を超えている領域である。警報領域20Bは、注意領域20Aよりもクレーン30に吊り下げられる吊荷50が作業員W1に衝突する危険性が高い領域であって、且つ、緊急領域20Cよりも、クレーン30に吊り下げられる吊荷50が作業員に衝突する危険性が低い領域である。
図4に示した実施形態では、警報領域20Bは、磁界20の領域のうち、磁界20の中心Oからの距離がL1を超え、且つL2以下である領域である。緊急領域20Cは、注意領域20A及び警報領域20Bと比較して、クレーン30に吊り下げられる吊荷50が作業員W1に衝突する危険性が高い領域である。
図4に示した実施形態では、緊急領域20Cは、磁界20の領域のうち、磁界20の中心Oからの距離がL1以下である領域である。
【0065】
電波発信装置4は、作業員W1が注意領域20Aにいる場合の電波情報を含む電波40、作業員W1が警報領域20Bにいる場合の電波情報を含む電波40、及び作業員W1が緊急領域20Cにいる場合の電波情報を含む電波40の何れかの電波を発信する。そして、警報装置8は、作業員W1が注意領域20Aにいる場合の電波情報に応じた警報(注意警報)、作業員W1が警報領域20Bにいる場合の電波情報に応じた警報(通常警報)、及び作業員W1が緊急領域20Cにいる場合の電波情報に応じた警報(緊急警報)の何れかの警報を発生する。そして、吊荷警報システム1は、これら発生する警報が互いに異なることで、クレーン30に吊り下げられる吊荷50が作業員W1に衝突する危険性の違いを作業員W1に報知する。例えば、警報装置8が警告音を発生するブザーである場合は、緊急警報、通常警報及び注意警報の順に音量を小さくすることで、危険性の違いを作業員に報知する。警報装置8が警告灯を発生するパトランプである場合は、緊急警報、通常警報及び注意警報の順に点滅する回数を小さくすることで、危険性の違いを作業員に報知する。
【0066】
上述したように、電波発信装置4は作業員W1が身に着けている装着物(ヘルメット24)に取り付けられる。磁界発生装置2は吊荷50の近傍に配置されている。このため、電波発信装置4の位置と磁界発生装置2の位置との間の距離に応じた情報である電波情報は作業員W1の位置と吊荷50の位置との間の距離に応じた情報であると言うことができる。このような構成によれば、警報装置8は電波情報に応じた警報(注意警報、通常警報、緊急警報)を発生するので、作業員W1は吊荷50とどれくらい近接しているかを知ることができる。
【0067】
尚、幾つかの実施形態では、タッチパネル10は、電波発信装置4が発信する電波40の電波情報に応じるシンボル15であって、その電波発信装置4に対応するシンボル15を表示する。例えば、タッチパネル10は、緊急警報、通常警報及び注意警報の順に点滅するスピードが遅くなるシンボル15を表示する。このような構成によれば、タッチパネル10を視認することで、作業員W1と吊荷50とがどれくらい近接しているかを知ることができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、吊荷警報システム1は、
図1及び
図2に示すように、運転室用警報装置28をさらに備える。運転室用警報装置28は、クレーン30の運転室34に設けられる装置であって、運転室34にいる運転員W5に報知するための警報である運転室用警報を発生する装置である。そして、運転室用警報装置28は、警報装置8が警報を発生すると運転室用警報を発生するように構成される。この運転室用警報装置28は、例えばブザーや、パトランプといった装置であって、聴覚的に認識可能な音である運転室用警報や、視覚的に認識可能な光である運転室用警報を発生する。尚、運転室用警報装置28は、上記例の他に、作業員W1の五感により認識可能な運転室用警報を発生する装置も含まれる。尚、運転室用警報装置28は、上述したような接触操作や、作業員W1が吊荷50から離れることにより、警報を発生する警報装置8がなくなると、運転室用警報の発生を停止する。
【0069】
このような構成によれば、クレーン30に吊り下げられている吊荷50と作業員W1とが近接していると、警報装置8が警報を発生するとともに、運転室用警報装置28が運転室用警報を発生する。このため、クレーン30に吊り下げられている吊荷50と作業員W1とが近接していることを、クレーン30の運転室34にいる運転員W5に報知することができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、警報装置8は、クレーン30に吊り下げられる吊荷50の移動が停止すると、電波40を受信している場合であっても、警報の発生を停止するように構成される。「クレーン30に吊り下げられる吊荷50の移動の停止」とは、例えば、運転室34にいる運転員W5がワイヤ33やブーム32などの操作を停止することであって、吊荷50の吊上げを停止したり、吊荷50の水平方向への移動を停止したりすることである。
【0071】
図1を参照して説明したように、吊荷警報システム1は指示装置112をさらに備える。この指示装置112は、吊荷50の移動が停止すると、警報装置8に対して警報停止指示を出力する。そして、上述したように、警報装置8は、指示装置112から警報停止指示が出力されると、電波受信部108Aが電波40を受信して警報発生部108Bが警報を発生している場合であっても、その警報の発生を停止する。
【0072】
吊荷50を所定の位置に置いているような吊荷50の移動が停止している場合、その吊荷50と作業員W1とが近接していることを作業員W1に報知しなくてもよい場合がある。このような構成によれば、警報装置8は、吊荷50の移動が停止すると、電波40を受信している場合であっても、警報の発生を停止するので、作業員W1に報知しなくてもよい警報の発生を停止することができる。
【0073】
また、幾つかの実施形態では、警報装置8は、クレーン30に吊り下げられる吊荷50の移動が停止した後に、吊荷50の移動が再開され、且つ、電波40を受信すると、警報を再び発生するように構成される。
【0074】
上述した指示装置112は、吊荷50の移動が停止した後に、吊荷50の移動が再開されると、警報装置8に対して出力していた警報停止指示を取りやめる。つまり、警報装置8に対して指示が出力されない状態(接触操作される前の状態)となる。このため、警報装置8は、吊荷50の移動が再開され、且つ電波受信部108Aが電波40を受信すると、警報発生部108Bに警報を再び発生させる。
【0075】
このような構成によれば、警報装置8は、吊荷50の移動が停止した後に、吊荷50の移動が再開され、且つ、電波40を受信すると再び警報を発生する。このため、吊荷50に近接している作業員W1は、吊荷50の移動が再開されたことを知ることができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、吊荷警報システム1は、撮像装置29をさらに備える。撮像装置29は、吊荷50及び、吊荷50の周辺領域を撮像する装置であって、例えばカメラである。そして、タッチパネル10は、撮像装置29が撮像した撮像画像にシンボル15を重ねて表示する。
【0077】
図1に示した実施形態では、撮像装置29は、撮像装置29が撮像した撮像画像をタッチパネル10に送信する撮像画像送信部121を備えている。そして、タッチパネル10は、この撮像画像送信部121が送信した撮像画像に対してシンボル15を重ねる画像処理を行う。そして、
図3A及び
図3Bに示すように、タッチパネル10はシンボル15、及び吊荷50(画像処理が実行された後の撮像画像)を表示する。尚、幾つかの実施形態では、タッチパネル10は画像処理が実行された撮像画像を簡略化又は特徴化する処理(デフォルメ)を実行する。例えば、
図3A及び
図3Bに示すように、タッチパネル10は、吊荷50を表す吊荷シンボル51を作成し、その吊荷シンボル51を表示している。
【0078】
図2に示した実施形態では、撮像装置29はブーム32の先端に取り付けられており、吊荷50の上方から、吊荷50及び、吊荷50の周辺領域を撮像している。この周辺領域には、磁界20の領域のうち、作業員W1が位置することができる領域が含まれる。
【0079】
上述したように、シンボル15は電波発信装置4に対応しており、この電波発信装置4は作業員W1が身に着けている装着物(ヘルメット24)に取り付けられる。このため、シンボル15は作業員W1を表しているといえる。このような構成によれば、タッチパネル10は、吊荷50、及び吊荷50の周辺領域が撮像された撮像画像にシンボル15を関連付けて表示する。このため、タッチパネル10を視認することで、吊荷50の位置に対する作業員W1の位置を知ることができる。
【0080】
以上、本発明の一実施形態にかかる吊荷警報システムについて説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0081】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、吊荷警報システム1は、音声指示を受け付けるためのマイク36を備える。
図2に示した実施形態では、マイク36は、運転室34に設けられ、運転員W5が発声する音声指示を受け付けることが出来るように構成される装置である。音声指示は、例えば、「警報停止よし」など特定の言語を組み合わせたものである。そして、警報装置8は、タッチパネル10に表示されているシンボル15が接触操作され、且つ運転員W5が発生する音声指示をマイク36が受け付けると、電波40を受信している場合であっても、警報の発生を停止するように構成される。このような構成によれば、運転員W5の接触操作と音声指示によって、警報の発生を停止するので、接触操作で警報の発生を停止する場合と比較して、誤って警報を停止してしまうことを防止できる。