(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の散水ノズル付バルブ装置では、以下に示すような問題点を有している。
【0006】
すなわち、上記公報に開示された装置では、噴射方向を自在に設定できる散水ノズルを備えているものの、散水する際の水の飛距離と散水範囲(面積)とを両立することが困難である。
【0007】
このため、例えば、道路に散水する散水ノズル付バルブ装置としては、道路の各車線に対して1個ずつノズルが必要となるため、メンテナンスが煩雑になり、かつコストアップの要因にもつながる。
【0008】
本発明の課題は、散水する際の液体の飛距離と散水範囲(面積)とを両立することが可能な散水ノズル付バルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る散水ノズル付バルブ装置は、バルブと、散水ノズルと、を備えている。散水ノズルは、先端に取り付けられており、バルブによって調整された流量の液体を散水する。散水ノズルは、流出口と、角度調整機構と、絞り部と、平行部と、流向調整部と、を有している。流出口は、液体を外部へ散水する。角度調整機構は、バルブの先端に対して角度調整を行う。絞り部は、液体が流れる流路の断面を流出口に向かって小さくする。平行部は、流路における絞り部の下流側に配置されており、流路の断面積が流出口に向かってほぼ一定であって液体を整流する。流向調整部は、流路における平行部の下流側に配置されており、流出口側において平行部の断面の一部を塞いで流路内における流向を調整する。
【0010】
ここでは、バルブの先端に取り付けられ散水を行う散水ノズルを備えた散水ノズル付バルブ装置において、散水ノズル内に形成される流路を、絞り部、平行部、流向調整部によって構成している。具体的には、絞り部は、バルブ側の配管の断面に対して、流出口側に向かって流路の断面を縮小し、散水ノズル内の流路を流れる液体の流速を上昇させる。平行部は、絞り部の下流側に接続されており、流路の断面積がほぼ一定となっていることで、散水ノズル内の流路を流れる液体の流向を均一化する。さらに、流向調整部は、平行部の下流側に配置されており、流出口の近傍において平行部の断面の一部を塞ぐことで、流出口の直前において流路内における流向を調整する。
【0011】
ここで、本散水ノズル付バルブ装置によって散水される液体としては、例えば、水道水、温水、塩水等の融雪剤等の各種液体を用いることができる。
【0012】
また、絞り部は、例えば、流路の断面を一定の割合で縮小してもよいし、段階的に縮小してもよい。
【0013】
さらに、流向調整部は、例えば、流出口の近傍において、円形の断面の端部を塞ぐ平面等を用いることができる。
【0014】
これにより、絞り部において流速が上昇し、平行部において流向が略均一化された水流は、流出口の近傍に配置された流向調整部において、平行部からそのまま直進する水流と、閉塞部分に衝突して乱流を発生させる水流とを同時に発生させることができる。
【0015】
よって、直進する水流によって流出口から放出される液体の飛距離を確保することができるとともに、流向調整部において発生させた乱流によって流出口から放出される液体の前後方向(散水方向)における拡散性も確保することができる。
【0016】
この結果、散水する際の液体の飛距離と散水範囲(面積)とを両立することができる。
第2の発明に係る散水ノズル付バルブ装置は、第1の発明に係る散水ノズル付バルブ装置であって、平行部は、流路の長さ/流路の断面積が、0.01以上2.00未満である。
【0017】
ここでは、平行部における流路について、長さ(L)と断面積(S)との比率について好ましい範囲を規定する。
【0018】
ここで、平行部の形状が細長すぎる(L/Dが大きい)場合には、水流の直進性が強くなりすぎて、散水時における前後方向の拡散性を損なうおそれがある。
【0019】
反対に、平行部の形状が短すぎる(L/Dが小さい)場合には、水流の直進性が失われて、散水時における水流の噴射方向が定まらないおそれがある。
【0020】
よって、ここでは、好ましくは、L/Dが0.01以上2.00未満であることが好ましい。また、より好ましくは、0.01以上0.50未満、さらに好ましくは0.10以上0.30未満であることが好ましい。
【0021】
これにより、L/Dを上記範囲に設定することで、散水時における液体の飛距離と散水範囲(面積)とを両立させることができる。
【0022】
第3の発明に係る散水ノズル付バルブ装置は、第1または第2の発明に係る散水ノズル付バルブ装置であって、流向調整部における断面の閉塞面積は、平行部の流路断面積に対して、3%以上50%未満である。
【0023】
ここでは、平行部における流路断面積に対する流向調整部における閉塞面積の比率について、好ましい範囲を規定する。
【0024】
ここで、流向調整部における閉塞面積が大きすぎる場合には、乱流が直進水流よりも支配的になってしまうため、十分な飛距離を確保することができないおそれがある。反対に、流向調整部における閉塞面積が小さすぎる場合には、直進水流の方が乱流よりも支配的になりすぎて、前後方向における拡散性を確保することができないおそれがある。
【0025】
よって、流向調整部における流路の断面の閉塞部分の面積が、平行部における流路の断面積の3%以上50%未満であることが好ましい。また、より好ましくは、3%以上30%未満、さらに好ましくは5%以上15%未満であることが好ましい。
【0026】
これにより、平行部における流路の断面積に対する流向調整部における閉塞部分の面積の割合を上記範囲に設定することで、散水時における液体の飛距離と散水範囲(面積)とを両立させることができる。
【0027】
第4の発明に係る散水ノズル付バルブ装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る散水ノズル付バルブ装置であって、流向調整部における開口断面積が、3mm
2以上30mm
2未満である。
【0028】
ここでは、流向調整部における開口断面積について、好ましい範囲を規定する。
ここで、流向調整部における開口部分の断面積が小さすぎる場合には、小石や析出した塩によって詰まりが生じるおそれがある。反対に、流向調整部における開口部分の断面積が大きすぎる場合には、散水時における水流の流速を十分に確保することができず、飛距離、散布面積ともに小さくなってしまうおそれがある。
【0029】
よって、閉塞後の開口断面積は、3mm
2以上30mm
2未満であることが好ましい。より好ましくは、5mm
2以上15mm
2未満であることが好ましい。
【0030】
これにより、流向調整部における開口断面積を上記範囲に設定することで、液体中に混入した不純物質による詰まりの発生を防止しつつ、散水時における液体の飛距離と散水範囲(面積)とを両立させることができる。
【0031】
第5の発明に係る散水ノズル付バルブ装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る散水ノズル付バルブ装置であって、散水ノズルの素材は、合成樹脂である。
【0032】
ここでは、防錆等の観点から、散水ノズルを、合成樹脂によって成形する。
ここで、散水ノズルの素材としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS等、任意の合成樹脂を用いることができる。特に、ポリ塩化ビニルは、弾性率、強度等の諸物性を確保しやすく、好ましい。
【0033】
これにより、融雪剤として塩水等の液体を散布する場合でも、錆の発生を防止しつつ、射出成形等によって特別な加工等を必要とすることなく容易に製造することができる。
【0034】
第6の発明に係る散水ノズル付バルブ装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る散水ノズル付バルブ装置であって、角度調整機構は、ノズル側に形成された凹部と、凹部に嵌合するボールジョイントとを含む。
【0035】
ここでは、角度調整機構として、ボールジョイントを採用している。
これにより、バルブ側との接続部分においてボールジョイントを採用することで、簡素な構成によって、散水ノズルの向きを自在に変更することができる。
【0036】
この結果、散水時における液体の散水範囲(面積)を拡張することができる。
第7の発明に係る散水ノズルは、バルブの先端に取り付けられ、バルブによって調整された流量の液体を散水する散水ノズルであって、流出口と、角度調整機構と、絞り部と、平行部と、流向調整部と、を備えている。流出口は、液体を外部へ散水する。角度調整機構は、バルブの先端に対して角度調整を行う。絞り部は、液体が流れる流路の断面を流出口に向かって小さくする。平行部は、流路における絞り部の下流側に配置されており、流路の断面が流出口に向かってほぼ一定であって液体を整流する。流向調整部は、流路における平行部の下流側に配置されており流出口側において平行部の断面の一部を塞いで流路内における流向を調整する。
【0037】
ここでは、バルブの先端に取り付けられ散水を行う散水ノズルにおいて、散水ノズル内に形成される流路を、絞り部、平行部、流向調整部によって構成している。具体的には、絞り部は、バルブ側の配管の断面に対して、流出口側に向かって流路の断面を縮小し、散水ノズル内の流路を流れる液体の流速を上昇させる。平行部は、絞り部の下流側に接続されており、流路の断面積がほぼ一定となっていることで、散水ノズル内の流路を流れる液体の流向を均一化する。さらに、流向調整部は、平行部の下流側に配置されており、流出口の近傍において平行部の断面の一部を塞ぐことで、流出口の直前において流路内における流向を調整する。
【0038】
ここで、本散水ノズル付バルブ装置によって散水される液体としては、例えば、水道水、温水、塩水等の融雪剤等の各種液体を用いることができる。
【0039】
また、絞り部は、例えば、流路の断面を一定の割合で縮小してもよいし、段階的に縮小してもよい。
【0040】
さらに、流向調整部は、例えば、流出口の近傍において、円形の断面の端部を塞ぐ平面等を用いることができる。
【0041】
これにより、絞り部において流速が上昇し、平行部において流向が略均一化された水流は、流出口の近傍に配置された流向調整部において、平行部からそのまま直進する水流と、閉塞部分に衝突して乱流を発生させる水流とを同時に発生させることができる。
【0042】
よって、直進する水流によって流出口から放出される液体の飛距離を確保することができるとともに、流向調整部において発生させた乱流によって流出口から放出される液体の前後方向における拡散性も確保することができる。
【0043】
この結果、散水する際の液体の飛距離と散水範囲(面積)とを両立することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る散水ノズル付バルブ装置によれば、散水する際の水の飛距離と散水範囲(面積)とを両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係る散水ノズル付バルブ装置および散水ノズルについて、
図1〜
図3(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
【0047】
本実施形態に係る散水ノズル付バルブ装置50は、例えば、道路等の側方から道路上へ融雪剤としての塩水等を散水するための装置であって、
図1に示すように、バルブ10と、散水ノズル20とを備えている。
【0048】
(バルブ10)
バルブ10は、内部に形成される流路を流れる水量を調整するために設けられており、
図1に示すように、本体部11と、接続部12と、屈曲部13と、レバー14とを有している。
【0049】
本体部11は、
図1に示すように、略円筒状の形状を有しており、内部に形成される液体の流路における上流側の端部に接続部12、下流側の端部に散水ノズル20が接続されている。また、本体部11は、流路の上流側において、屈曲部13を介して、接続部12と接続されている。
【0050】
接続部12は、
図1に示すように、散水ノズル付バルブ装置50の上流側に配置される配管に接続され、上流側から塩水等の液体が供給される。
【0051】
屈曲部13は、
図1に示すように、本体部11内に形成される流路に対して、内部に形成される流路を略90度屈曲させるように設けられている。
【0052】
レバー14は、
図1に示すように、本体部11の上部に取り付けられており、回転操作されることで、本体部11内に形成される流路の開口面積を調整する。これにより、散水ノズル20に供給される塩水等の液体の流量が調整される。
【0053】
(散水ノズル20)
散水ノズル20は、バルブ10の先端側に取り付けられており、バルブ10によって水量が調整された塩水等の液体を散水する。そして、散水ノズル20は、
図2(a)に示すように、略球状の本体部20a、絞り部21、平行部22、流向調整部23、角度調整機構24を有している。
【0054】
なお、散水ノズル付バルブ装置50によって塩水等の融雪剤を散布する場合を想定すると、防錆、成形性、強度等の観点から、散水ノズル20は、合成樹脂によって成形されていることが好ましい。
【0055】
散水ノズル20を成形する合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS等の任意の合成樹脂を用いることができる。特に、弾性率、強度等の各種物性を確保しやすく成形性もよいことを考慮すれば、ポリ塩化ビニルを用いることが好ましい。
【0056】
本実施形態のように、散水バルブ20のような形状であれば、特殊な切削加工を必要とすることなく、例えば、射出成形によって、容易に散水ノズル20を製造することができる。
【0057】
本体部20aは、略球状に形成されており、内部に、絞り部21、平行部22、および流向調整部23によって形成される流路を有している。そして、本体部20aは、略球状の部分が、バルブ10側の先端に設けられた凹部に嵌合するように接続される。
【0058】
これにより、略球状の本体部20aがバルブ10側の凹部において、上下左右、斜め方向に回動可能な状態で保持されるため、散水ノズル20の向きを自由に変化させることができる。すなわち、略球状の本体部20aとバルブ10側の凹部とが、散水ノズル20の角度調整機構24として機能する。
【0059】
絞り部21は、
図2(a)に示すように、本体部20aの内部におけるバルブ10に接続される側に設けられている。そして、絞り部21は、絞り21bによって、下流側に向かって流路断面が小さくなる略円錐状の流路21aを形成する。
【0060】
これにより、バルブ10側の流路の断面積から絞り21bによって断面積を縮小することで、流路21aを流れる塩水等の液体の流速を上昇させることができる。
【0061】
平行部22は、
図2(a)に示すように、絞り部21によって断面積が縮小された側(下流側)の端部に接続されている。
【0062】
また、平行部22の流路22aは、
図3(a)に示すように、円形の断面を有しており、ほぼ一定の断面積を有する。
【0063】
これにより、絞り部21aにおいて流速が上昇した液体は、平行部22において流向を略均一化することができる。
【0064】
ここで、平行部22の流路22aの長さL、断面積Sとすると、平行部22の形状が細長すぎる(L/Dが大きい)場合には、水流の直進性が強くなりすぎて、散水時における前後方向の拡散性を損なうおそれがある。
【0065】
反対に、平行部22の形状が短すぎる(L/Dが小さい)場合には、水流の直進性が失われて、散水時における水流の噴射方向が定まらないおそれがある。
【0066】
よって、本実施形態の散水ノズル20では、平行部22について、L/Dが0.01以上2.00未満であることが好ましい。また、より好ましくは、L/Dが、0.01以上0.50未満、さらに好ましくは0.10以上0.30未満であることが好ましい。
【0067】
これにより、L/Dを上記範囲に設定することで、散水時における液体の飛距離と散水範囲(面積)とを両立させることができる。
【0068】
流向調整部23は、
図2(a)に示すように、平行部22の下流側の端部に接続されている。そして、流向調整部23は、塩水等の液体を散水する流出口23aと、閉塞部23bとを有している。
【0069】
流向調整部23の流出口23aは、
図2(b)および
図3(b)に示すように、
図3(a)に示す平行部22の円形の断面の一部を、閉塞部23bによって閉塞させた断面形状を有している。
【0070】
閉塞部23bは、
図3(b)に示すように、円形の断面の一部を、円周上の2点を結ぶ直線によって塞いだ形状を有している。
【0071】
これにより、流向調整部23では、平行部22の流路22aの断面の一部を閉塞部23bによって塞ぐことにより、平行部22からそのまま直進してくる水流と、閉塞部23bによって閉塞された部分における衝突によって乱流となる水流とを生じさせて、流路内における流向を調整することができる。
【0072】
よって、直進する水流によって散水ノズル20から散水される塩水等の液体の飛距離を確保するとともに、閉塞部23bによって閉塞された部分に衝突して生じる乱流によって前後方向における液体の拡散性を確保することができる。
【0073】
ここで、閉塞部23bによる閉塞面積(円形の断面から縮小した面積)は、平行部22の流路22aの断面積の3%以上50%未満であることが好ましい。また、平行部22の流路22aの断面に対する閉塞面積の割合は、より好ましくは、3%以上30%未満、さらに好ましくは5%以上15%未満であることが好ましい。
【0074】
例えば、閉塞部23bによる閉塞の割合が大きすぎる場合には、流向調整部23において直進水流よりも乱流が支配的な状態となって、十分な飛距離を確保できなくなるおそれがある。また、飛距離が十分確保できない場合には、前後方向における拡散性も確保することが困難になってしまう。
【0075】
そこで、本実施形態の散水ノズル20では、閉塞部23bによる閉塞割合を、上記範囲に設定している。
【0076】
これにより、流向調整部23において発生させる乱流と、平行部22からの直進流とを適度なバランスで生じさせることができるため、流出口23aから散水される塩水等の液体の飛距離と前後方向における散水範囲(面積)とを両立させることができる。
【0077】
なお、閉塞部23bにおける閉塞部分の形状としては、上述したように、平行部22の円形の断面を、円周上の2点を直線で結んだ形状とすることが好ましい。これにより、閉塞部23bを容易に加工することができる。
【0078】
さらに、平行部22の円形断面の流路22aから閉塞部23bによる閉塞面積を除いた流路23aの開口断面積は、3mm
2以上30mm
2未満であることが好ましい。また、より好ましくは、5mm
2以上15mm
2未満であることが好ましい。
【0079】
ここで、流向調整部23における流路23aの開口断面積が小さすぎる場合には、小石や析出した塩等によって、流路23aが詰まってしまうおそれがある。
【0080】
反対に、流向調整部23における流路23aの開口断面積が大きすぎる場合には、液体を散水する際の液体の流速を確保することが困難となり、飛距離、散布範囲(面積)ともに小さくなるおそれがある。
【0081】
よって、本実施形態の散水ノズル20では、閉塞部23bによって閉塞された部分を含む流向調整部23の開口断面積を、上記範囲に設定している。
【0082】
これにより、流向調整部23における開口断面積を上記範囲に設定することで、液体中に混入した不純物質による詰まりの発生を防止しつつ、散水時における液体の飛距離と散水範囲(面積)とを両立させることができる。
【0083】
角度調整機構24は、上述したように、略球状の本体部20aの部分がバルブ10側の凹部に嵌合することで、バルブ10に対する角度を調整可能なボールジョイントが採用されている。
【0084】
これにより、簡易な構成により、散水ノズル20の向き(散水の方向)を、縦横、斜め等自在に調整することができる。
【0085】
本実施形態の散水ノズル20は、
図2(a)および
図2(b)に示すように、流出口23aと、角度調整機構24と、絞り部21と、平行部22と、流向調整部23とを備えている。流出口23aは、塩水等の液体を外部へ散水する。角度調整機構24は、バルブ10の先端に対して角度調整を行う。絞り部21は、液体が流れる流路21aの断面を流出口23aに向かって小さくする。平行部22は、絞り部21の下流側に配置されており、流路22aの断面が流出口23aに向かってほぼ一定であって液体を整流する。流向調整部23は、平行部22の下流側に配置されており、流出口23a側において平行部22の断面の一部を塞いで乱流を発生させる。
【0086】
これにより、絞り部21において流速が上昇し、平行部22において流向が略均一化された水流は、流出口23aの近傍に配置された流向調整部23において、平行部22からそのまま直進する水流と、閉塞部23bに衝突して乱流を発生させる水流とを同時に発生させることができる。
【0087】
よって、直進する水流によって流出口23aから放出される液体の飛距離を確保することができるとともに、流向調整部23において発生させた乱流によって流出口23aから放出される液体の前後方向における拡散性も確保することができる。
【0088】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る散水ノズル付バルブ装置に含まれる散水ノズルについて、
図4(a)および
図4(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
【0089】
本実施形態に係る散水ノズル120は、絞り部121において、2つの絞り121ba,121bbによって2段階に分けて流路121aの断面を縮小する点において、1つの絞り21bによって流路21aの断面を縮小する上記実施形態1の散水ノズル20とは異なっている。
【0090】
具体的には、散水ノズル120は、
図4(a)に示すように、球状の本体部120a、絞り部121、平行部122、流向調整部123、角度調整部124を備えている。
【0091】
本体部120aは、略球状に形成されており、内部に、絞り部121、平行部122、および流向調整部123によって形成される流路を有している。そして、本体部120aは、略球状の部分が、バルブ10(
図1参照)側の先端に設けられた凹部に嵌合するように接続される。
【0092】
これにより、略球状の本体部120aがバルブ10側の凹部において、上下左右、斜め方向に回動可能な状態で保持されるため、散水ノズル120の向きを自由に変化させることができる。すなわち、略球状の本体部120aとバルブ10側の凹部とが、散水ノズル120の角度調整機構124として機能する。
【0093】
絞り部121は、
図4(a)に示すように、本体部120aの内部におけるバルブ10に接続される側に設けられている。そして、絞り部121は、2つの絞り121ba,121bbによって、下流側に向かって2段階で流路断面が小さくなる略円錐状の流路121aを形成する。
【0094】
これにより、バルブ10側の流路の断面積から絞り121ba,121bbによって断面積を縮小することで、流路121aを流れる塩水等の液体の流速を上昇させることができる。
【0095】
平行部122は、
図4(a)に示すように、絞り部121によって断面積が縮小された側(下流側)の端部に接続されている。
【0096】
これにより、絞り部121aにおいて流速が上昇した液体は、平行部122において流向を略均一化することができる。
【0097】
なお、平行部122の流路122aの長さL、断面積Sについては、上記実施形態1で説明した数値範囲になるように設定されていることが好ましい。
【0098】
流向調整部123は、
図4(a)に示すように、平行部122の下流側の端部に接続されている。そして、流向調整部123は、塩水等の液体を散水する流出口123aと、閉塞部123bとを有している。
【0099】
流向調整部123の流出口123aは、
図4(b)に示すように、
図4(a)に示す平行部122の円形の断面の一部を、閉塞部123bによって閉塞させた断面形状を有している。
【0100】
閉塞部123bは、
図4(b)に示すように、円形の断面の一部を、円周上の2点を結ぶ直線によって塞いだ形状を有している。
【0101】
これにより、流向調整部123では、平行部122の流路122aの断面の一部を閉塞部123bによって塞ぐことにより、平行部122からそのまま直進してくる水流と、閉塞部123bによって閉塞された部分における衝突によって乱流となる水流とを生じさせることができる。
【0102】
よって、直進する水流によって散水ノズル120から散水される塩水等の液体の飛距離を確保するとともに、閉塞部123bによって閉塞された部分に衝突して生じる乱流によって前後方向における液体の拡散性を確保することができる。
【0103】
ここで、閉塞部123bによる閉塞面積(円形の断面から縮小した面積)は、上記実施形態1で説明した数値範囲になるように設定されていることが好ましい。
【0104】
角度調整機構124は、上述したように、略球状の本体部120aの部分がバルブ10側の凹部に嵌合することで、バルブ10に対する角度を調整可能なボールジョイントが採用されている。
【0105】
これにより、簡易な構成により、散水ノズル120の向き(散水の方向)を、縦横、斜め等自在に調整することができる。
【0106】
本実施形態の散水ノズル120では、
図4(a)に示すように、流出口123aと、角度調整機構124と、絞り部121と、平行部122と、流向調整部123とを備えている。流出口123aは、塩水等の液体を外部へ散水する。角度調整機構124は、バルブ10の先端に対して角度調整を行う。絞り部121は、液体が流れる流路121aの断面を流出口123aに向かって小さくする。平行部122は、絞り部121の下流側に配置されており、流路122aの断面が流出口123aに向かってほぼ一定であって液体を整流する。流向調整部123は、平行部122の下流側に配置されており、流出口123a側において平行部122の断面の一部を塞いで乱流を発生させる。
【0107】
これにより、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0108】
(A)
上記実施形態では、流向調整部23以外の絞り部21および平行部22における流路断面が、略円形の断面である例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0109】
例えば、流路の断面は、略円形に限らず、楕円形、長方形、ひし形、六角形等の多角形であってもよい。
【0110】
(B)
上記実施形態では、バルブ10に対する散水ノズル20の角度を調整するための角度調整機構24として、ボールジョイントを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0111】
例えば、バルブに対して散水ノズルの角度を調整できる機構であれば、ボールジョイント以外の機構を採用してもよい。
【0112】
(C)
上記実施形態では、散水ノズル付バルブ装置50によって、融雪剤としての塩水を散布する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0113】
例えば、散水ノズルから散布される液体としては、塩水に限らず、水道水、温水等であってもよいし、農薬等の他の液体であってもよい。
【0114】
(D)
上記実施形態では、散水ノズル20,120を、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって成形した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0115】
例えば、アルミニウム等の金属によって成形された散水ノズルを用いてもよい。
【実施例】
【0116】
本実施例では、上述した散水ノズル20の形状のうち、平行部22の長さ(L)、平行部22の断面積(S1)、その比率(L/S1)、流向調整部23の閉塞面積(S2)、閉塞の比率(S2/S1)、散水時の最大飛距離(d1)、最小飛距離(d2)、その差(d1-d2)について変化させた4つの実施例1〜4を用意した。
【0117】
そして、上記各項目について変化させた2つの比較例1,2を用意した。
なお、散水ノズルとしては、ポリ塩化ビニル製のノズルを製造し、Φ20Aのボールバルブの先端に取り付けて検証を行った。また、検証時には、高さ0.55mの位置において、水平方向に沿って散水ノズルを向けた状態で、水を噴出させ、地表面に対する水の落下範囲を計測した。このとき、水圧は、0.32MPaとした。
【0118】
また、水の散水範囲は、散水ノズルの先端からの最大飛距離、車線横断方向を想定したカバー範囲(最大飛距離−最小落下点)の2項目について、メジャーを用いて計測した。
【0119】
図5に、これらの実施例1〜4と比較例1,2とを比較した結果について示す。
(比較例1)
比較例1では、
図5に示すように、平行部の長さ(L)=30mm、平行部における流路の断面積(S1)=12.6mm
2、L/S1=2.39、流向調整部の閉塞部分の断面積(S2)=なし、S2/S1=100(%)とした結果、最大飛距離(d1)=9.5m、最小落下点(d2)=7.5m、散水範囲(d1−d2)=2.0(m)であった。
【0120】
すなわち、比較例1の散水ノズル220は、
図6に示すように、流向調整部のない構成であって、絞り部221と、平行部222とを備えている。
【0121】
絞り部221は、流路221aの断面積を縮小する絞り221bを有している。
平行部222は、流路222aの断面積が流出口に向かってほぼ一定となっている。
【0122】
この結果、比較例1の構成では、流向調整部がないために、最大飛距離については十分であったが、最小落下点との差が小さく、散水範囲が狭いことが分かった。
【0123】
(比較例2)
比較例2では、
図5に示すように、平行部の長さ(L)=3mm、平行部における流路の断面積(S1)=12.6mm
2、L/S1=0.24、流向調整部の閉塞部分の断面積(S2)=なし、S2/S1=100(%)とした結果、最大飛距離(d1)=8.5m、最小落下点(d2)=6.1m、散水範囲(d1−d2)=2.4(m)であった。
【0124】
すなわち、比較例2の散水ノズル320は、
図7に示すように、上記比較例1と同様に、流向調整部のない構成であって、絞り部321と、平行部322とを備えている。また、比較例2の構成では、上記比較例1と比べて、平行部322の長さが短く形成されている。
【0125】
絞り部321は、流路321aの断面積を縮小する2つの絞り321ba,321bbを有している。
【0126】
平行部322は、流路322aの断面積が流出口に向かってほぼ一定となっている。
この結果、比較例2の構成では、比較例1と同様に、流向調整部がないため、最大飛距離については十分であったが、最小落下点との差が小さく、散水範囲が狭いことが分かった。
【0127】
(実施例1)
実施例1では、
図5に示すように、平行部の長さ(L)=30mm、平行部における流路の断面積(S1)=12.6mm
2、L/S1=2.39、流向調整部の閉塞部分の断面積(S2)=6.3mm
2、S2/S1=50(%)とした結果、最大飛距離(d1)=8.6m、最小落下点(d2)=4.9m、散水範囲(d1−d2)=3.7(m)であった。
【0128】
この結果、比較例1,2の結果と比較して、本実施例1では、流向調整部が設けられているため、最大飛距離は十分であって、かつ最大飛距離と最小落下点との差も大きくすることができるため、散水範囲(面積)を広げることができることが分かった。
【0129】
特に、本実施例1では、流向調整部の有無以外、比較例1と同じ形状を備えているが、流向調整部を設けたことにより、散水範囲を2.0mから3.7mまで大きくすることができた。
【0130】
(実施例2)
実施例2では、
図5に示すように、平行部の長さ(L)=5mm、平行部における流路の断面積(S1)=12.6mm
2、L/S1=0.24、流向調整部の閉塞部分の断面積(S2)=6.3mm
2、S2/S1=50(%)とした結果、最大飛距離(d1)=8.4m、最小落下点(d2)=3.2m、散水範囲(d1−d2)=5.2(m)であった。
【0131】
この結果、比較例1,2の結果と比較して、本実施例2では、流向調整部が設けられているため、最大飛距離は十分であって、かつ最大飛距離と最小落下点との差も大きくすることができるため、散水範囲(面積)を広げることができることが分かった。
【0132】
特に、本実施例2では、流向調整部の有無以外、比較例2と同じ形状を備えているが、流向調整部を設けたことにより、散水範囲を2.4mから5.2mまで大きくすることができた。
【0133】
また、本実施例2では、平行部の長さを、実施例1の30mmから5mmに変化させたところ、散水範囲が、実施例1の3.7mから5.2mまで大きくすることができた。
【0134】
(実施例3)
実施例3では、
図5に示すように、平行部の長さ(L)=30mm、平行部における流路の断面積(S1)=12.6mm
2、L/S1=2.39、流向調整部の閉塞部分の断面積(S2)=1.26mm
2、S2/S1=10(%)とした結果、最大飛距離(d1)=9.5m、最小落下点(d2)=6.0m、散水範囲(d1−d2)=3.5(m)であった。
【0135】
この結果、比較例1,2の結果と比較して、本実施例3では、流向調整部が設けられているため、最大飛距離は十分であって、かつ最大飛距離と最小落下点との差も大きくすることができるため、散水範囲(面積)を広げることができることが分かった。
【0136】
特に、本実施例3では、流向調整部の有無以外、比較例1と同じ形状を備えているが、流向調整部を設けたことにより、散水範囲を2.0mから3.5mまで大きくすることができた。
【0137】
また、本実施例3では、流向調整部の閉塞部分の面積の閉塞割合を、実施例1の50%から10%に変化させたところ、散水範囲を、実施例1の3.7mと略同等の3.5mであった。
【0138】
(実施例4)
実施例4では、
図5に示すように、平行部の長さ(L)=5mm、平行部における流路の断面積(S1)=12.6mm
2、L/S1=0.24、流向調整部の閉塞部分の断面積(S2)=1.26mm
2、S2/S1=10(%)とした結果、最大飛距離(d1)=9.5m、最小落下点(d2)=3.0m、散水範囲(d1−d2)=6.5(m)であった。
【0139】
この結果、比較例1,2の結果と比較して、本実施例4では、流向調整部が設けられているため、最大飛距離は十分であって、かつ最大飛距離と最小落下点との差も大きくすることができるため、散水範囲(面積)を広げることができることが分かった。
【0140】
特に、本実施例4では、流向調整部の有無以外、比較例2と同じ形状を備えているが、流向調整部を設けたことにより、散水範囲を2.4mから6.5mまで大きくすることができた。
【0141】
また、本実施例4では、流向調整部の閉塞部分の面積の閉塞割合を、実施例2の50%から10%に変化させたところ、散水範囲を、実施例2の5.2mから6.5mまで大きくすることができた。
【0142】
さらに、本実施例4では、平行部の長さを、実施例3の30mmから5mmに変化させたところ、散水範囲が、実施例3の3.5mから6.5mまで大きくすることができた。
【0143】
(まとめ)
以上の結果から、本発明のように、流出口の近傍に、直進する水流の一部を遮蔽する流向調整部を設けた構成とすることで、流向調整部のない比較例の構成と比較して、散水範囲を2.0〜2.4mから、3.5〜6.5mまで拡大することができた。