(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
短い方の波長である前記第1等吸光係数比波長を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度に、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長における吸光係数の比、又はデオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長における吸光係数の比である波長間吸収係数比を乗じてから、長い方の波長である前記第2等吸光係数比波長を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度を減算することで、前記メラニンインデックスを求める請求項1記載のメラニンインデックスの算定方法。
前記肌状態解析部は、波長間吸収係数比算定部を備えており、該波長間吸収係数比算定部は、オキシヘモグロビンの前記第1等吸光係数比波長における吸光係数に対する前記第2等吸光係数比波長における吸光係数の比、又はデオキシヘモグロビンの前記第1等吸光係数比波長における吸光係数に対する前記第2等吸光係数比波長における吸光係数の比である波長間吸収係数比を算定し、前記メラニンインデックス算定部は、短い方の波長である前記第1等吸光係数比波長を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度に、前記波長間吸収係数比を乗じてから、長い方の波長である前記第2等吸光係数比波長を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度を減算することで、前記メラニンインデックスを求める請求項8記載の肌状態解析装置。
前記肌状態解析部に波長間吸収係数比算定部を形成すると共に、該波長間吸収係数比算定部には、オキシヘモグロビンの前記第1等吸光係数比波長における吸光係数に対する前記第2等吸光係数比波長における吸光係数の比、又はデオキシヘモグロビンの前記第1等吸光係数比波長における吸光係数に対する前記第2等吸光係数比波長における吸光係数の比である波長間吸収係数比を算定させ、前記メラニンインデックス算定部には、短い方の波長である前記第1等吸光係数比波長を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度に、前記波長間吸収係数比を乗じさせてから、長い方の波長である前記第2等吸光係数比波長を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度を減算させることで、前記メラニンインデックスを求めさせる請求項11記載の肌状態解析用プログラム。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−299743号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本香粧品学会誌Vol.28 No.1 (2004)pp18-22「皮膚色の計測」、瀧脇弘嗣著
【非特許文献2】Feather JW et al. Phys Med Biol 1988: 33: 711-722
【非特許文献3】Dawson JB et al. Phys Med Biol 1980: 25: 695-709
【0006】
ここで、ランベルト−ベール(Lambert -Beer)の法則は、希薄溶液の吸光度(透過率の逆数の対数)はその濃度と比例するとするものであり、反射率を、見かけ上の吸光度(反射率の逆数の対数)に変換して演算することが可能である(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
すなわち、真皮を溶液の下に置いた白い反射板と仮定すれば、反射率は透過率×透過率で代用でき、見かけ上の吸光度を測れば色素濃度(メラニン濃度及びヘモグロビン濃度)を推定できるという発想に基づく。皮膚は、表面から表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれており、光学的な観点からみると、皮膚の色を決定するのは半透明な膜である角層、メラニン顆粒を含んだ表皮の基底層(メラニン層)、真皮最上層の毛細血管・小血管網(へモグロビン層)、及び白色の真皮層である。進入した光は角層では約90%が透過し、メラニン層及びヘモグロビン層では、それぞれの色素によって光は吸収されるが、散乱(乱反射)はほとんどなく、残りは透過して真皮では主として散乱が生じることになる。角層を省略した
図2に示す皮膚の多層モデルでいえば、ある波長λでの反射率Rは、メラニン層m、へモグロビン層hでの透過率をそれぞれTm、Th、真皮層dでの反射率をRdとおくと、メラニン層m、へモグロビン層hでは光が往復することになり、下記の式(1)が得られる。
【0008】
【数1】
【0009】
式(1)の両辺の逆数をとれば、下記の式(2)が得られる。
【0010】
【数2】
【0011】
式(2)の左辺(見かけ上の吸光度)をA
λと表すと、式(2)は、下記の式(3)のように変形できる。
【0012】
【数3】
【0013】
C
mはメラニン量、C
hはヘモグロビン量、M
λとH
λは波長λでのそれぞれの吸光度に対応した係数、Dは真皮の見かけ上の吸光度で、波長λによらずほぼ一定なので定数項とみなすことができる。いま二つの狭波長帯λ1、λ2における見かけ上の吸光度をA1、A2とおけば、下記の式(4)が得られる。
【0014】
【数4】
【0015】
式(4)において、M1−M2が十分に小さく(理想的にはゼロ)、H1−H2が十分に大きい値になるようにλ1、λ2を選べば、A1−A2は、感度の良いヘモグロビン量C
hに比例する指数となる。同様にH1−H2が十分に小さく、M1−M2が十分に大きい値になるλ1、λ2を選べば、A1−A2はメラニン量C
mに比例する最適な指数となる。得られたメラニン量C
mやヘモグロビン量C
hのインデックスMI,EIは、このような考えに基づいて定義され、色を表すのではなく、理想的にはターゲットとした皮膚の色素量に線形に相関すると考えられる、1次元の数値となる。
【0016】
また、反射分光光度計を用いれば、都合のよい波長の光を選んで照射できることから、メラニン量C
mのインデックスMIやヘモグロビン量C
hのインデックスEIを得るためのさまざまな公式が考案されている。インデックスメータとして販売されている機種では、メラニン量C
mのインデックスMIやヘモグロビン量C
hのインデックスEIを算定するのに適した、特定の狭波長域の光を出すLEDが備えられている。
【0017】
例えば、ヘモグロビン量C
hのインデックスであるエリスマインデックスEIを算定して得る際には、メラニンによる影響を軽減させるように、540〜570nmの波長と660nm付近の波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度を用いて、吸光度の引き算(A1−A2)を行なう公式や、560nm、543nm、576nm、510nm、及び610nmの5波長の光を皮膚に照射した際に計測される、各々の見かけ上の吸光度を用いて引き算を行なう、下記の式(5)の公式によって、エリスマインデックスEIを算定することが提案されている。
【0018】
【数5】
【0019】
また、メラニン量C
mの指標であるメラニンインデックスMIを算定して得る際には、ヘモグロビンによる影響を軽減させるように、ヘモグロビンによる影響を受け難い、長波長の波長として、例えば620〜650nmの波長と670〜700nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度を用いて、吸光度の引き算(A1−A2)を行なう公式や(例えば、非特許文献2参照)、620〜650nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度の平均値と、670〜700nmの波長の光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の吸光度の平均値とを用いて、吸光度の平均値の引き算(A1ave−A2ave)を行なう公式によって(例えば、非特許文献3参照)、メラニンインデックスMIを算定することが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の好ましい一実施形態に係る肌状態の評価方法は、人の肌の状態として、例えば腕や掌や顔の肌の状態を適正に評価できるようにするための情報、より具体的には画像情報を評価者に提示する方法(肌状態の評価のための情報提示方法)として採用されたものである。本実施形態の肌状態の評価方法を用いることで、例えば肌色の主たる構成色素であるメラニンの色素量に由来する色素沈着の状態を、適正に把握することができる。すなわち、本実施形態の肌状態の評価方法は、例えば皮膚のメラニン層m(
図2参照)に含まれるメラニン量C
mを定量するメラニンインデックスMIを算定する際に、デオキシヘモグロビンによる影響を受けないようにして、精度良く算定できるようにすることで、肌の状態を一層適正に評価できるようにする機能を備えている。
【0029】
そして、本実施形態の肌状態の評価方法は、好ましくは皮膚に含まれるメラニン量を反映するメラニンインデックスMIを用いて肌の状態を評価する評価方法であって、メラニンインデックスMIを、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数との比である、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる2点(等吸光係数比点)11,12(
図1参照)の波長を第1等吸光係数比波長λ11及び第2等吸光係数比波長λ12として、第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度A
λ11と、第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度A
λ12とから求める。
【0030】
すなわち、本実施形態では、メラニンインデックスMIは、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの、吸光係数と波長との関係を示す
図1の吸光係数スペクトルにおいて、例えばオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数との比である、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる第1等吸光係数比点11の波長525nmの光を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度A
λ11(A
525)と、第2等吸光係数比点12の波長568nmの光を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度A
λ12(A
568)との差を、下記の式(6)により算定することで求める。
【0031】
なお、第1等吸光係数比点11の波長や第2等吸光係数比点12の波長を、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとから選定する際に、これらの等吸光係数比点の波長(525nm、568nm)は、正確な波長から±10nm程度ずれた値となっていても、実用上問題はないと考えられる。
【0033】
また、本実施形態では、式(6)において、好ましくは、短い方の波長である第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度A
λ11(A
525)に、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比、又はデオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ11における吸光係数の比である波長間吸収係数比αを乗じてから、長い方の波長である第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度A
λ12(A
568)を減算することで、メラニンインデックスを求めて、肌の状態を評価するようになっている。
【0034】
さらに、本実施形態の肌状態の評価方法では、メラニンインデックスMIと共に、皮膚に含まれるヘモグロビン量を反映するエリスマインデックスEIを用いて肌の状態を評価する。すなわち、皮膚のメラニン層mに含まれるメラニン量C
mを定量するメラニンインデックスMIと、皮膚のヘモグロビン層h(
図2参照)に含まれるヘモグロビン量C
bを定量するエリスマインデックスEIとの、2つのインデックスを指標として、肌状態を評価する。エリスマインデックスEIは、見かけ上の吸光度から算定して求められる。
【0035】
ランベルト−ベールの法則は、上述のように、反射率を、見かけ上の吸光度(反射率の逆数の対数)に変換して演算することを可能にする。本実施形態では、角層を省略した
図2に示す皮膚の多層モデルを想定して、上記の式(1)を変形することで、上記の式(2)、式(3)から、さらに上記の式(4)を得ることができた。式(4)において、M1−M2が十分に小さく(理想的にはゼロ)、H1−H2が十分に大きい値になるように波長λ1、λ2を選べば、A1−A2は、感度の良いヘモグロビン量C
bに比例する指数(エリスマインデックスEI)となって、ヘモグロビンの色素量を精度良く定量することが可能になると考えられる。同様にH1−H2が十分に小さく、M1−M2が十分に大きい値になる波長λ1、λ2を選べば、A1−A2はメラニン量C
mに比例する最適な指数(メラニンインデックスMI)となって、メラニンの色素量を精度良く定量することが可能になると考えられる。本願の発明者は、これらの着想に基づいて、本願の発明を完成するに至った。
【0036】
本実施形態では、H1−H2を十分に小さな値とし、且つM1−M2を十分に大きな値とする波長λ1、λ2として、
図1に示すオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数との比である、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる等吸光係数比点11,12の波長λ11,λ12を含む光として、例えばλ11=波長525nm、λ12=波長568nmの光を含む光を皮膚に照射した際に計測される、見かけ上の吸光度A
λ11(A
525)、A
λ12(A
568)から算定して、メラニンインデックスMIを得ている。
【0037】
ここで、オキシヘモグロビンの吸光係数と波長との関係を示すオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル、及びデオキシヘモグロビンの吸光係数と波長との関係を示すデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルは、オキシヘモグロビンやデオキシヘモグロビンに特有の物性として、既に検証されている公知のスペクトルである。
図1に示すように、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルは、吸光係数が波打った値となっており、600nmを超える長波長の領域では、吸光係数は、波長の増加に伴って0に近い値でなだらかに減少する。デオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルもまた、吸光係数が波打った値となっており、600nmを超える長波長の領域では、波長の増加に伴ってなだらかに減少するものの、オキシヘモグロビンと比較すると吸光係数は高いままとなっている。このため、長波長の光を照射して計測される見かけ上の吸光度を用いてメラニンインデックスMIを算定することで、ヘモグロビンによる影響を排除できるようにした従来の公式では、オキシヘモグロビンによる影響を除くことができても、デオキシヘモグロビンによる影響を十分に排除できていなかった。
【0038】
また、
図1に示すオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルとは、各々のスペクトルの波打った形状が異なっていることから、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数との比である、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる等吸光係数比点は、複数箇所に現れるようになっている。本実施形態では、式(4)により見かけ上の吸光度A1(A
λ11)、A2(A
λ12)から算定してメラニンインデックスMIを得る際に、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる等吸光係数比点の波長を、皮膚に照射すべき光の波長として用いる。見かけ上の吸光度A1、A2から算定してメラニンインデックスMIを得る際の波長として、等吸光係数比点の波長λ11、λ12を用いることにより、オキシヘモグロビンやデオキシヘモグロビンの影響を抑制した、精度の良いメラニンインデックスMIを、効率良く得ることが可能になる。
【0039】
さらに、本実施形態では、見かけ上の吸光度A1、A2から式(4)により算定してメラニンインデックスMIを得る際に用いる等吸光係数比点の波長として、例えば第1等吸光係数比点11の525nmの第1等吸光係数比波長λ11と、第2等吸光係数比点12の568nmの第2等吸光係数比波長λ12との、2箇所の等吸光係数比点11,12における波長λ11、λ12が用いられている。これらの等吸光係数比点11,12は、その波長λ11、λ12の差が、50nmという好ましい範囲に収まるように選ばれている。第1等吸光係数比点11の第1等吸光係数比波長λ11と第2等吸光係数比点12の第2等吸光係数比波長λ12との差を10〜200nmの範囲に収めることで、第1等吸光係数比点11の第1等吸光係数比波長λ11と第2等吸光係数比点12の第2等吸光係数比波長λ12とが、比較的近い値となるので、波長による真皮の反射特性の違いの影響や、波長による光の皮膚への浸透深さの違いの影響を受けずに、あるいは小さくして、メラニンインデックスMIを得ることが可能になる。
【0040】
ここで、見かけ上の吸光度A1、A2から式(4)により算定してメラニンインデックスMI(A1−A2)を得る際の等吸光係数比点の波長として、2箇所の等吸光係数比点11,12における波長λ11、λ12を用いる必要は必ずしも無く、例えば第1等吸光係数比点11の波長λ11と第2等吸光係数比点12の波長λ12と第3等吸光係数比点13の波長λ13との、3箇所の等吸光係数比点11,12,13における波長λ11、λ12、λ13を用いることもできる。例えば第1等吸光係数比点11の波長λ11と第2等吸光係数比点12の波長λ12との平均値を第1等吸光係数比点の波長とし、第3等吸光係数比点13の波長λ13を第2等吸光係数比点の波長として、これらの差から、式(4)によりメラニンインデックスMIを算定することもできる。
【0041】
また、本実施形態では、上述のように、メラニンインデックスMIは、好ましくは、短い方の波長である第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度A
λ11(A
525)に、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比、又はデオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ11における吸光係数の比である波長間吸収係数比αを乗じてから、長い方の波長である第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度A
λ12(A
568)を減算することで、上述の式(6)によって、求められるようになっている。
【0042】
すなわち、本実施形態では、後述する実施例における表1の実施例1の欄にも示されるように、短い方の波長である第1等吸光係数比波長λ11を525nmの波長とし、長い方の波長である第2等吸光係数比波長λ12を568nmの波長としたことから、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数は、30883〔cm
−1/(moles/liter)〕となり、第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数は、40172〔cm
−1/(moles/liter)〕となる。したがって、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する、第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比は、40172/30883=1.30となる。また、デオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数は、35171〔cm
−1/(moles/liter)〕となり、第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数は、46948〔cm
−1/(moles/liter)〕となる。したがって、デオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する、第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比は、46948/35171=1.33となる。
【0043】
本実施形態では、上述のように、第1等吸光係数比点11の波長や第2等吸光係数比点12の波長を選定する際に、これらの等吸光係数比点の波長(525nm、568nm)は、正確な波長から±10nm程度ずれた値となっていても、実用上問題はないと考えられている。このため、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比と、デオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数の比は、僅かに異なっていることから、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比、又はデオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比である、波長間吸収係数比αは、これらの平均の値をとって、α=1.32としてメラニンインデックスMIを算出できるようになっている。
【0044】
メラニンインデックスMIを、短い方の波長である第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度A
λ11(A
525)に、波長間吸収係数比αを乗じてから、長い方の波長である第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度A
λ12(A
568)を減算することで求めることにより、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビン両者の影響をより効果的に排除することが可能になって、メラニン量C
mのみに比例するメラニン指数となるメラニンインデックスMIを、より精度良く得ることが可能になる。
【0045】
本実施形態では、更に、メラニンインデックスMIと共に、皮膚に含まれるヘモグロビン量を反映するエリスマインデックスEIを用いて、肌の状態を評価する。エリスマインデックスEIは、見かけ上の吸光度から算定して求められる。本実施形態では、エリスマインデックスEIは、上述のように、ヘモグロビン量C
hのインデックスである当該エリスマインデックスEIを得るための式として考案された、公知のさまざまな公式のうち、より精度良くエリスマインデックスEIを算定できると考えられる、上記の式(5)を用いて算定することができる。すなわち、メラニンによる影響を軽減させるように、エリスマインデックスは、500nm以上700nm以下の少なくとも2波長の光の見かけ上の吸光度から算定して求めるのが好ましく、560nm、543nm、576nm、510nm、及び610nmの5波長の光を皮膚に照射した際に計測される、各々の見かけ上の吸光度を用いて引き算を行なう上記の式(5)によって、エリスマインデックスEIを算定して求めるのがより好ましい。本実施形態では、算定されたエリスマインデックスEIと、上述のメラニンインデックスMIに基づいて、メラニン画像及びヘモグロビン画像を作成すると共に、作成したメラニン画像及びヘモグロビン画像が提示され、あるいは統計処理などがなされることで、肌の状態を評価できるようになっている。
【0046】
本実施形態では、皮膚に含まれるヘモグロビン量を反映するエリスマインデックスEIは、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数との比である、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる2点11,12(
図1参照)の波長を第1等吸光係数比波長λ11及び第2等吸光係数比波長λ12として、第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度A
λ11と、第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度A
λ12とから求めることもできる。これによって、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトルの相違による両者の影響を効果的に排除して、エリスマインデックスEIをより精度良く得ることが可能になり、例えばへモグロビン層における血流の状態等の肌状態をさらに精度よく評価することが可能になる。
【0047】
また、本実施形態では、肌の状態を評価するために、ハイパースペクトラルイメージング装置を用いて、例えば人の顔の部分の肌を撮影し、撮影された顔の部分の肌の2次元画像の各画素について、メラニンインデックス及びエリスマインデックスを算定する。なお、メラニンインデックスMI及びエリスマインデックスEIを用いた肌の状態の評価は、後述するハイパースペクトラルイメージング装置により撮像される画像を介して評価する方法に限定されることなく、例えば、一般的な分光測色器(例えば、商品名:CM−2600d、コニカミノルタ社製)を用いて、肌の特定領域における肌の状態を評価する方法やシステムに採用することもできる。
【0048】
ここで、人の顔の肌をハイパースペクトラルイメージング装置を用いて撮影するためのシステムとして、
図3に示す肌状態評価システム1を用いることができる。
図3に示す肌状態評価システム1は、被写体である例えば人の腕や掌や顔の部分に所定の波長の光を照射する照明装置2と、照明装置2により光が照射された顔の部分を撮像するハイパースペクトラルイメージング装置3と、ハイパースペクトラルイメージング装置3により撮像された画像の各画素について、上記の式(5)及び式(6)を用いてヘモグロビン量及びメラニン量を定量して、ヘモグロビン画像及びメラニン画像を作成すると共に、定量した各画素のヘモグロビン量及びメラニン量から、肌の状態を評価可能とする肌状態評価装置4とを含んで構成されている。
【0049】
照明装置2は、被写体である例えば人の腕や掌や顔の部分を、A方向から内部に臨ませることが可能な開口部20a、及びハイパースペクトラルイメージング装置3のレンズ部を、B方向から内部に臨ませることが可能なレンズ挿入口20bを有する照明ボックス20と、照明ボックス20の内部に臨ませた例えば人の腕や掌や顔の部分に向けて、所定の波長の光を照射する光源(図示せず)とを含んで構成されている。
【0050】
照明ボックス20は、半球状に形成されており、その内側面には、白色の梨地面加工が施されている。梨地面加工は、表面に微細で均一なざらつき加工を施したものである。内側面に梨地面加工が施されることで、照明ボックス20の内部を無光沢にすることが可能になる。また光源から照射される光の拡散性を向上させることが可能になって、被写体である例えば顔に均一な光を照射することが可能になる。光源は、照明ボックス20の内部に配され、白色LEDが好ましく用いられる。
【0051】
ハイパースペクトラルイメージング装置3は、バンド数(波長分解能)が数十バンド〜数百バンドとなっており、3バンドのRGB(人の目)や、数バンド〜数十バンドのマルチスペクトルカメラと比較して、物性のスペクトル形状を、より連続的に見ることが可能なカメラとして公知のものである。またハイパースペクトラルイメージング装置3は、色(RGB)では識別できない変化を可視化したり、目に見えない現象を可視化したり、スペクトルの変化を画像として捉えたりすることで、人の目と同等又はそれ以上の色変化を認識できる機能を備えている。このようなハイパースペクトラルイメージング装置3として、例えば製品名「ハイパースペクトルカメラNH−7」(エバ・ジャパン製、解像度:131.1万画素、波長範囲:400〜1000nm、波長分解能:5nm)を用いることができる。
【0052】
本実施形態では、ハイパースペクトラルイメージング装置3は、撮像時には、B方向の直線上に配置されている照明ボックス20に形成されたレンズ挿入口20bに、レンズを挿入した状態で固定される。
【0053】
肌状態評価装置4は、メラニンインデックスMIやエリスマインデックスEIを算出するCPUと、メラニンインデックスMIやエリスマインデックスEIを算出するためのプログラム等が記憶される揮発性のRAMと、算出したメラニンインデックスMIやエリスマインデックスEI等を一時的に記憶可能な不揮発性のROMと、算出したメラニンインデックスMIやエリスマインデックスEI等を画像として提示するモニターと、これらを操作するためのマウスやキーボードとを含んで構成されている。肌状態評価装置4としては、例えば、汎用のパーソナルコンピュータを用いることができる。
【0054】
本実施形態では、例えば、汎用のパーソナルコンピュータによる肌状態評価装置4に、皮膚に含まれるメラニン量を反映するメラニンインデックスを用いて肌の状態を評価する肌状態解析用プログラムが組み込まれている。肌状態解析用プログラムは、肌状態評価装置4に肌状態解析部を形成する。これによって肌状態評価装置4は、肌状態解析部を含んで構成されることになる。肌状態解析部は、波長選択部と、メラニンインデックス算定部とを備えており、波長選択部は、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数との比である、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる2点11,12(
図1参照)の波長を第1等吸光係数比波長λ11及び第2等吸光係数比波長λ12として選択するようになっている。メラニンインデックス算定部は、第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度と、第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度とからメラニンインデックスMIを求めるようになっている。
【0055】
また、肌状態解析部は、波長間吸収係数比算定部を備えている。波長間吸収係数比算定部は、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比、又はデオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比である波長間吸収係数比αを算定し、メラニンインデックス算定部は、短い方の波長である第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度に、波長間吸収係数比αを乗じてから、長い方の波長である第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度を減算することで、上記の式(6)によって、メラニンインデックスMIを求めるようになっている。
【0056】
すなわち、肌状態解析用プログラムは、肌状態解析装置4に肌状態解析部を形成すると共に、肌状態解析部の波長選択部には、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数との比である、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる2点11,12(
図1参照)の波長を第1等吸光係数比波長λ11及び第2等吸光係数比波長λ12として選択させ、メラニンインデックス算定部には、第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度と、第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度とから、メラニンインデックスを求めさせるようになっている。
【0057】
また、肌状態解析用プログラムは、肌状態解析部に波長間吸収係数比算定部を形成すると共に、波長間吸収係数比算定部には、オキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比、又はデオキシヘモグロビンの第1等吸光係数比波長λ11における吸光係数に対する第2等吸光係数比波長λ12における吸光係数の比である波長間吸収係数比を算定させ、メラニンインデックス算定部には、短い方の波長である第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度に、波長間吸収係数比αを乗じさせてから、長い方の波長である第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度を減算させることで、メラニンインデックスを求めさせるようになっている。
【0058】
本実施形態では、例えば、汎用のパーソナルコンピュータによる肌状態評価装置4に、公知の各種の画像解析用のプログラムが組み込まれており、組み込まれた画像解析用のプログラムにおいて、上記の式(5)や式(6)を取り込むことによって、ハイパースペクトラルイメージング装置3で撮影された、被写体である人の顔の部分の画像の各画素について、エリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIを算定する。また算定したエリスマインデックスEI及びメラニンインデックスMIに基づいて、肌のヘモグロビン量やメラニン量を定量すると共に、メラニン画像及びヘモグロビン画像を作成する。作成したメラニン画像及びヘモグロビン画像が提示されることで、評価者が、例えばメラニンの色素量に由来する、シミ、そばかす、くすみ等の美白効果に影響を及ぼす色素沈着の状態や、ヘモグロビンの色素量に由来する鬱血や炎症等の状態を把握して、肌の状態を評価することができるようになっている。
【0059】
すなわち、本実施形態では、肌状態評価装置4は、複数の画素からなる肌の画像を用い、肌の画像の各画素毎又は任意の領域毎に、メラニンインデックスMIやエリスマインデックスEIを求めて、肌の状態を評価することができる。また、算定された各画素又は各領域のメラニンインデックスMI及びエリスマインデックスEIに基づいて、メラニン画像及びヘモグロビン画像を作成し、作成したメラニン画像及びヘモグロビン画像から、肌の状態を評価することができる。さらに、本実施形態では、算定された各画素のメラニンインデックスMI及び/又はエリスマインデックスEIの均一性(分散)から、肌の状態を評価することができるようになっている。
【0060】
そして、上述の構成を備える本実施形態の肌状態の評価方法によれば、ヘモグロビンの酸素飽和度の相違による影響を受けないようにして、メラニンインデックスMIをさらに精度良く算定できることで、肌の状態をより一層適正に評価することが可能になる。
【0061】
すなわち、本実施形態によれば、メラニンインデックスMIを、オキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数スペクトル上の吸光係数との比である、ヘモグロビン種間吸光係数比が等しくなる2点(等吸光係数比点)11,12の波長を第1等吸光係数比波長λ11及び第2等吸光係数比波長λ12として、第1等吸光係数比波長λ11を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第1吸光度A
λ11と、第2等吸光係数比波長λ12を含む光を皮膚に照射した際に計測される見かけ上の第2吸光度A
λ12とから求める。
【0062】
これによって、本実施形態によれば、ランベルト−ベールの法則に基づいて得られた上記の式(4)において、H1−H2が十分に小さく(理想的にはゼロ)、M1−M2が十分に大きな値となるようにすることが可能になるので、ヘモグロビンの酸素飽和度の相違にかかわらず、特にデオキシヘモグロビンによる影響を受けないようにして、皮膚のメラニン層mに含まれるメラニン量C
mを反映するメラニンインデックスMIを、精度良く算定することが可能になり、これによって、肌の状態をより一層適正に評価することが可能になる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、ハイパースペクトラルイメージング装置での撮影に代えて、光源側の波長を例えばフィルタなどで選択して被写体に当て、反射強度をモノクロカメラで撮影してもよい。また、上述のハイパースペクトラルイメージング装置を用いて撮影された肌の2次元画像の各画素について、メラニンインデックス及びエリスマインデックスを算定して肌の状態を評価したり、作成したメラニン画像及びヘモグロビン画像から肌の状態を評価したりする必要は必ずしも無く、その他の種々の装置やシステムを用いて、メラニンインデックスを算定して、肌の状態を評価することもできる。例えば、2以上の特定の波長を含む光を皮膚に照射して、その反射波を計測する機能を備える反射率計測部と、反射率計測部により得られた反射率のデータから特定領域での平均値としての皮膚の反射係数を複数求め、所定の式を用いて、前記複数の波長の反射係数からメラニンインデックスやエリスマインデックスを算定して表示する機能を備える制御算定部とからなる、簡易な構成の定量装置を用いて、本発明を実施することもできる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例により、本発明の肌状態の評価方法をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例の記載によって何ら制限されるものではない。
【0065】
〔実施例1〜3〕
図4に示す波長とヘモグロビン種間吸光係数比との関係を示すチャートにおいて、ヘモグロビン種間吸光係数比が概ね1.0(オキシヘモグロビンの吸光係数とデオキシヘモグロビンの吸光係数が概ね等しい値)となる530nmの波長と570nmの波長の等吸光係数比点を、実施例1の第1等吸光係数比点(第1等比点)及び第2等吸光係数比点(第2等比点)として選択し、ヘモグロビン種間吸光係数比が概ね0.86となる525nmの波長と568nmの波長の等吸光係数比点を、実施例2の第1等吸光係数比点(第1等比点)及び第2等吸光係数比点(第2等比点)として選択し、ヘモグロビン種間吸光係数比が概ね0.72となる515nmの波長と565nmの波長の等吸光係数比点を、実施例3の第1等吸光係数比点(第1等比点)及び第2等吸光係数比点(第2等比点)として選択した。
【0066】
選択された実施例1〜3の第1等吸光係数比点(第1等比点)及び第2等吸光係数比点(第2等比点)に関する、等吸光係数比波長、オキシヘモグロビンの吸光係数、デオキシヘモグロビンの吸光係数、ヘモグロビン種間吸光係数比、オキシヘモグロビンの波長間吸光係数比、デオキシヘモグロビンの波長間吸光係数比、及びオキシヘモグロビンの波長間吸光係数比とデオキシヘモグロビンの波長間吸光係数比との平均値を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
〔メラニンインデックスMIの算定及びメラニン画像の作成〕
人の肌として、被験者の腕の内側部分の肌にUV照射を行って、3カ月経過後にメラニン沈着を得た状態で、UV照射をした被験者の腕の内側部分の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。人の肌として、被験者の腕の内側部分の肌にニコチン酸メチルを塗布して血流促進効果を得た後に、ニコチン酸メチルを塗布した被験者の腕の内側部分の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。人の肌として、被験者の手の中指の第1関節よりも先の部分の指腹部の肌を、第1関節と第2関節との間をテープ止血することでうっ血させた後に、被験者の手の肌を、上記実施形態で用いた肌状態評価システム1と同様の構成を備える肌状態評価システムを用いて撮影した。
【0069】
撮影したこれらの2次元画像の各画素について、メラニンインデックスMIを算定して、メラニン画像を作成した。メラニンインデックスMIの算定は、第1等吸光係数比点の第1等吸光係数比波長を含む光と、第2等吸光係数比点の第2等吸光係数比波長を含む光の分光反射画像を用い、見かけ上の第1吸光度と、見かけ上の第2吸光度とを得て、上記の式(6)により各画素毎に行った。作成したメラニン画像を
図5に示す。
【0070】
〔比較例1〕
上述と同様の各々の2次元画像の各画素について、従来の公式によりメラニンインデックスMIを算定して、メラニン画像を作成した。すなわち、メラニンインデックスMIの算定は、撮影した被験者の肌の2次元画像の各画素について、620〜640nmの分光画像の平均値と、670〜690nmの分光画像の平均値を用い、これらの光が反射した際に計測される見かけ上の吸光度の平均値(Aave620~640、Aave670~690)を得て、従来の公式(Aave620~640−Aave670~690)により各画素毎に行った。作成した比較例1のメラニン画像を、
図6示す。
【0071】
図5に示す、実施例1、実施例2、及び実施例3のメラニン画像によれば、
図6に示す比較例1のメラニン画像では排除できなかった、うっ血や静脈等のデオキシヘモグロビンの色素量に由来する部分を画像から排除できていることが判明する。これによって、本発明によれば、ヘモグロビンの酸素飽和度の相違による影響を受けないようにして、メラニンインデックスMIをさらに精度良く算定できることが判明する。
【0072】
〔波長間吸収係数比αのずれに対する検討〕
第1等比点の第1等吸光係数比波長を525nm、第2等比点の第2等吸光係数比波長を568nmとした実施例2によりメラニンインデックスMIを算定する際に、波長間吸収係数比αがずれることによる影響を検討した。すなわち、実施例2において、計算により求めた波長間吸収係数比αは、1.32であったのに対して、波長間吸収係数比αを、1.00、1.20、1.40、1.60、及び2.00に変化させてメラニンインデックスMIを算定すると共に、上述と同様に、UV照射を行ってメラニン沈着を得た状態、ニコチン酸メチルを塗布して血流促進効果を得た状態、及びテープ止血することでうっ血させた状態のメラニン画像を作成した。作成したメラニン画像を、実施例2によるメラニン画像と共に、
図7に示す。
【0073】
図7に示す波長間吸収係数比αのずれによる影響を検討したメラニン画像によれば、波長間吸収係数比αは、例えばデバイスの相違によってずれた場合でも、±10%程度のずれであれば、実用上は問題ないことが判明する。また、波長間吸収係数比αが、1.00、1.60、及び2.00の場合は、ニコチン酸メチルの塗布により増加したヘモグロビンの影響や、うっ血により増加したデヘモグロビンの影響が、メラニンとして検出されていることが判明する。