【実施例】
【0054】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。具体的には、以下の実施例1〜実施例27、及び比較例1〜比較例8の研磨用組成物を作製し、それぞれの研磨用組成物を用いてシリコンウェーハの研磨を行った。そして、研磨における欠陥数の測定及びヘイズ値の測定を行った。
【0055】
(研磨用組成物)
実施例1〜実施例27、及び比較例1〜比較例8の研磨用組成物の組成について説明する。なお、各研磨用組成物の組成を表1〜表6にも示す。表1〜表6において、各成分の重量%は、研磨用組成物(原液)全体に対する重量%を表す。
【0056】
実施例1の研磨用組成物は、3.5重量%の砥粒(1)、0.10重量%の水酸化アンモニウム(NH
4OH)、及び0.1重量%の水溶性高分子(変性PVA)を水に配合して全体で100重量%としたものである。
【0057】
ここで使用した砥粒(1)は、コロイダルシリカであり、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径は50nmであった。また、ここでは重合度450、分子量20000の変性PVAを使用した。動的散乱法による平均粒子径は、大塚電子株式会社製の粒径測定システム「ELS−Z2」を用いて測定した。
【0058】
実施例2の研磨用組成物は、実施例1の研磨用組成物に、さらに、0.015重量%のポロキサミン(1)を配合したことを除いて、実施例1と同一の組成を有する。
【0059】
ここでは、ポロキサミン(1)として、式(2)で示されるものを使用した。ポロキサミン(1)のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの質量比EO/POは、EO/PO=40/60であり、分子量は6900であった。
【0060】
実施例3及び実施例4の研磨用組成物は、実施例2の研磨用組成物のポロキサミン(1)の配合量を、それぞれ、0.020重量%及び0.025重量%としたことを除いて、実施例2と同一の組成を有する。
【0061】
実施例5の研磨用組成物は、実施例3の研磨用組成物に、さらに、0.0050重量%の多価アルコール(1)を配合したことを除いて、実施例3と同一の組成を有する。
【0062】
ここで使用した多価アルコール(1)は、式(5)で示されるポリオキシプロピレンメチルグルコシドであり、分子量は774であった。
【0063】
【化5】
【0064】
実施例6の研磨用組成物は、実施例5の研磨用組成物の多価アルコール(1)の配合量を0.0100重量%としたことを除いて、実施例5と同一の組成を有する。
【0065】
実施例7の研磨用組成物は、実施例5の研磨用組成物のポロキサミン(1)の配合量を0.015重量%としたことを除いて、実施例5と同一の組成を有する。
【0066】
実施例8の研磨用組成物は、実施例7の研磨用組成物の多価アルコール(1)の代わりに0.0050重量%の多価アルコール(2)を配合したことを除いて、実施例7と同一の組成を有する。
【0067】
ここで使用した多価アルコール(2)は、式(6)で示されるポリオキシエチレンメチルグルコシドであり、分子量は634であった。
【0068】
【化6】
【0069】
実施例9の研磨用組成物は、実施例7の研磨用組成物の多価アルコール(1)の配合量を0.0025重量%とし、さらに、0.0025重量%の多価アルコール(2)を配合したことを除いて、実施例7と同一の組成を有する。
【0070】
実施例10の研磨用組成物は、実施例7の研磨用組成物のポロキサミン(1)の代わりに0.015重量%のポロキサミン(2)を配合したことを除いて、実施例7と同一の組成を有する。
【0071】
ここでは、ポロキサミン(2)として、式(3)で示されるものを使用した。ポロキサミン(2)のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの質量比EO/POは、EO/PO=80/20であり、分子量は25000であった。
【0072】
実施例11及び実施例12の研磨用組成物は、それぞれ、実施例2及び実施例7の研磨用組成物の砥粒(1)の代わりに3.5重量%の砥粒(2)を配合したことを除いて、実施例2及び実施例7と同一の組成を有する。
【0073】
ここで使用した砥粒(2)は、コロイダルシリカであり、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径は30nmであった。
【0074】
実施例13及び実施例14の研磨用組成物は、実施例7の研磨用組成物のアルカリ化合物の配合量を、それぞれ、0.15重量%及び0.20重量%としたことを除いて、実施例7と同一の組成を有する。
【0075】
実施例15及び実施例16の研磨用組成物は、実施例2の研磨用組成物の砥粒(1)の配合量を、それぞれ、5.5重量%及び7.5重量%としたことを除いて、実施例2と同一の組成を有する。
【0076】
実施例17の研磨用組成物は、ポロキサミン(1)を配合しないことを除いて、実施例6と同一の組成を有する。
【0077】
実施例18及び実施例19の研磨用組成物は、実施例17の研磨用組成物の多価アルコール(1)の配合量を、それぞれ、0.0200重量%及び0.0300重量%としたことを除いて、実施例17と同一の組成を有する。
【0078】
実施例20の研磨用組成物は、実施例17の研磨用組成物に、さらに、0.0100重量%の多価アルコール(2)を配合したことを除いて、実施例17と同一の組成を有する。
【0079】
実施例21〜実施例26の研磨用組成物は、実施例7の研磨用組成物の砥粒(1)の代わりに、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径がそれぞれ31nm、25nm、19nm、16nm、12nm、及び5nmの砥粒を配合したことを除いて、実施例7と同一の組成を有する。これらの砥粒は、すべてコロイダルシリカであり、配合量は3.5重量%である。
【0080】
実施例27の研磨用組成物は、実施例1の研磨用組成物のアルカリ化合物の配合量を0.019重量%としたことを除いて、実施例1と同一の組成を有する。
【0081】
比較例1の研磨用組成物は、実施例1の研磨用組成物の砥粒(1)の代わりに3.5重量%の砥粒(3)を配合したことを除いて、実施例1と同一の組成を有する。
【0082】
ここで使用した砥粒(3)は、コロイダルシリカであり、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径は70nmであった。
【0083】
比較例2の研磨用組成物は、比較例1の研磨用組成物に、さらに、0.015重量%のポロキサミン(1)を配合したことを除いて、比較例1と同一の組成を有する。
【0084】
比較例3の研磨用組成物は、比較例2の研磨用組成物のポロキサミン(1)の配合量を0.020重量%としたことを除いて、比較例2と同一の組成を有する。
【0085】
比較例4の研磨用組成物は、比較例2の研磨用組成物のアルカリ化合物の配合量を0.20重量%としたことを除いて、比較例2と同一の組成を有する。
【0086】
比較例5の研磨用組成物は、比較例2の研磨用組成物に、さらに、0.0050重量%の多価アルコール(1)を配合したことを除いて、比較例2と同一の組成を有する。
【0087】
比較例6の研磨用組成物は、実施例1の研磨用組成物の砥粒(1)の代わりに3.5重量%の砥粒(4)を配合したことを除いて、実施例1と同一の組成を有する。
【0088】
ここで使用した砥粒(4)は、コロイダルシリカであり、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径は99nmであった。
【0089】
比較例7及び比較例8の研磨用組成物は、実施例27の研磨用組成物の砥粒の代わりに、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径がそれぞれ70nm及び62nmの砥粒を配合したことを除いて、実施例27と同一の組成を有する。これらの砥粒は、すべてコロイダルシリカであり、配合量は3.5重量%である。
【0090】
上記の実施例及び比較例の研磨用組成物に対し、以下の研磨条件で研磨を行った。そして、それぞれについて欠陥数、ヘイズ値、及び研磨用組成物中の粒子の平均粒子径の測定を行った。以下、研磨条件及び各測定方法について説明する。
【0091】
(研磨条件)
研磨装置(SPP800S、岡本工作機械製作所製)を用い、研磨パッド(SUPREME(登録商標) RN−H、ニッタ・ハース株式会社製)に、31倍に希釈された実施例1〜実施例27及び比較例1〜比較例8の研磨用組成物を1000mL/分の割合で供給して、4分間、シリコンウェーハの研磨を行った。用いたシリコンウェーハは、直径が300mmのP型半導体のものであり、結晶方位が(100)であった。このときの研磨条件としては、シリコンウェーハにかける圧力が0.012MPa、研磨定盤の回転速度が40rpm、キャリアの回転速度が39rpmであった。
【0092】
(欠陥数測定方法)
上記の実施例1〜実施例27及び比較例1〜比較例8について、ウェーハ欠陥検査・レビュー装置(レーザーテック株式会社製の「MAGICS M5640」)を用いて欠陥数の測定を行った。測定時のウェーハ欠陥検査・レビュー装置の最高感度は、D37mVに設定した。
【0093】
(ヘイズ値測定方法)
上記の実施例1〜実施例27及び比較例1〜比較例8について、ウェーハ表面検査装置(日立エンジニアリング社製の「LS6600」)を用いて、ヘイズ値の測定を行った。
【0094】
(研磨用組成物中の粒子の平均粒子径の測定)
上記の実施例1〜実施例27及び比較例1〜比較例8について、動的光散乱法を用いて、研磨用組成物を測定対象物として、研磨用組成物中の粒子の平均粒子径の測定を行った。測定には、大塚電子株式会社製の粒径測定システム「ELS−Z2」を用いた。
【0095】
このようにして測定した欠陥数、ヘイズ値、及び、研磨用組成物中の粒子の平均粒子径の結果を、表1〜表6に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
(実施例の評価)
研磨用組成物が砥粒、アルカリ化合物及び変性PVAを含む実施例1及び比較例1を比較すると、配合する砥粒の径が小さい(平均粒子径:50nm)実施例1は、砥粒の径が大きい(平均粒子径:70nm)比較例1よりも、シリコンウェーハの欠陥数及びヘイズ値が著しく良好となることが分かる。
【0103】
研磨用組成物の砥粒を砥粒(3)から径の小さい砥粒(1)に変更することにより、シリコンウェーハの欠陥数及びヘイズ値が良好となることは、研磨用組成物が砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、及びポロキサミンを含む実施例2と比較例2の比較、並びに実施例3と比較例3の比較からも確認できる。
【0104】
また、研磨用組成物の砥粒を砥粒(3)から径の小さい砥粒(1)に変更することにより、シリコンウェーハの欠陥数及びヘイズ値が良好となることは、研磨用組成物が砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、ポロキサミン及び多価アルコールを含む実施例7と比較例5の比較からも確認できる。
【0105】
研磨用組成物の砥粒を、砥粒(1)(平均粒子径:50nm)からさらに小径の砥粒(2)(平均粒子径:30nm)に変更した場合について検討する。研磨用組成物が砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、及びポロキサミンを含む実施例2と実施例11との比較から、砥粒(1)を砥粒(2)に変更することにより、欠陥数が低減する一方、ヘイズ値は大きくなることが分かる。また、研磨用組成物が砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、ポロキサミン、及び多価アルコールを含む実施例7と実施例12との比較から、砥粒(1)を砥粒(2)に変更することにより、欠陥数が同等の値を示す一方、ヘイズ値は大きくなることが分かる。ヘイズ値が大きくなる原因として、小径の砥粒(2)では、砥粒(1)よりも、1次研磨または2次研磨において発生した研磨傷による表面粗さをとる効果が小さいためであると考えられる。
【0106】
研磨用組成物にポロキサミンを配合していない実施例1と、実施例1の研磨用組成物にさらにポロキサミンを配合した実施例2とを比較すると、欠陥数及びヘイズ値の両方が低減していることが分かる。
【0107】
ウェーハ表面には、変性PVAが吸着してウェーハの表面を保護している。研磨用組成物がさらにポロキサミンを含む場合には、ポロキサミンが変性PVAの分子と分子との間に入り込んでウェーハの表面に吸着すると考えられる。このため、実施例2では、ウェーハ表面の保護効果が高まり、研磨後のウェーハの欠陥数及びヘイズ値が低減していると考えられる。
【0108】
また、砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、及びポロキサミン(1)を配合した研磨用組成物であって、ポロキサミン(1)の配合量を変更した実施例2〜実施例4を比較すると、ポロキサミン(1)の配合量が多くなるほど、欠陥数及びヘイズ値の両方が低減していることが分かる。
【0109】
実施例7及び実施例10より、研磨用組成物に配合するポロキサミンの種類をポロキサミン(1)からポロキサミン(2)に変更すると、より優れた欠陥数及びヘイズ値が得られることが分かる。これは、ポロキサミン中のEO/PO比の違いと、ポロキサミンの分子量の違いが影響しているためであると考えられる。
【0110】
ポロキサミン中のEO/PO比の違いについて検討すると、ポロキサミン(1)のEO/PO比は、40/60である一方で、ポロキサミン(2)のEO/POは80/20である。そのため、EOの割合の高いポロキサミン(2)を含む研磨用組成物の方が、親水性が高くなり、ウェーハ表面への濡れ広がりやすくなってウェーハ表面の保護効果が高まると考えられる。
【0111】
ポロキサミンの分子量の違いについて検討すると、ポロキサミン(1)の分子量は6900である一方で、ポロキサミン(2)の分子量は25000である。ポロキサミン(2)の方がポロキサミン(1)よりも分子量が大きいため、ウェーハ表面に吸着した際にウェーハを被覆する層が厚くなり、ウェーハ表面の保護効果が高まると考えられる。
【0112】
砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、及びポロキサミン(1)を含む研磨用組成物において、多価アルコールを配合していない実施例2及び実施例3と、実施例2及び実施例3のそれぞれの研磨用組成物にさらに多価アルコール(1)を配合した実施例7及び実施例5とを比較すると、研磨用組成物がさらに多価アルコール(1)を含むことにより、欠陥数及びヘイズ値の両方が低減していることが分かる。
【0113】
研磨用組成物がさらにポロキサミンと変性PVAと比較して分子量が小さい多価アルコール(1)を含むことにより、ウェーハ研磨面に即座に吸着し薄膜を形成する。そのため、研磨用組成物によるウェーハ表面の保護効果が高まっていると考えられる。
【0114】
また、砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、ポロキサミン、及び多価アルコールを配合した研磨用組成物であって、多価アルコールの配合量を変更した実施例5と実施例6を比較すると、多価アルコールの配合量が多くなるほど、欠陥数及びヘイズ値の両方が低減していることが分かる。
【0115】
研磨用組成物に含まれる多価アルコールの種類を変更した実施例7〜実施例9より、多価アルコールとして多価アルコール(1)を用いても、多価アルコール(2)を用いても、あるいは両者を併用しても、多価アルコールを配合しない実施例2よりも、欠陥数及びヘイズ値の両方が良好となることが分かる。
【0116】
用いる多価アルコールの種類について検討すると、プロピレン系の多価アルコール(1)を用いた実施例7は、エチレン系の多価アルコール(2)を用いた実施例8よりも、欠陥数が小さくなっている。ヘイズ値については、実施例7と実施例8とで同等の値となっている。これは、多価アルコール(1)の方が欠陥数が小さくなったのは、多価アルコール(1)の方が分子量が小さく、より緻密にウェーハをコーティングすることができたためであると考えられる。
【0117】
実施例2と実施例8との比較により、多価アルコール(2)は、ヘイズ値を悪化させないで欠陥数を大きく低減する。また、実施例2と実施例7との比較により、多価アルコール(1)は、ヘイズ値を悪化させないで欠陥数を多価アルコール(2)を用いる場合よりも大きく低減する。したがって、多価アルコール(1)は、多価アルコール(2)よりも欠陥数を低減する効果が大きい。
【0118】
実施例7、実施例21〜実施例26、比較例2、及び比較例6は、砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、ポロキサミン(1)及び多価アルコール(1)を配合した研磨用組成物についての実施例及び比較例であり、それぞれの砥粒の平均粒子径を変更したものである。これらの実施例及び比較例から、砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、ポロキサミン(1)及び多価アルコール(1)を配合した研磨用組成物では、平均粒子径が小さくなるほど、欠陥数及びヘイズ値が小さくなる傾向があることが分かる。
【0119】
実施例2、実施例15及び実施例16では、砥粒(1)の配合量を3.5%、5.5%、及び7.5%と変化させている。これらの欠陥数及びヘイズ値は3つとも同程度であることから、砥粒の配合量は研磨性能に大きく影響しないと考えられる。
【0120】
実施例17〜実施例20の研磨用組成物は、砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、及び多価アルコールを配合したものであり、ポロキサミンを含んでいない。実施例17〜実施例20によれば、欠陥数及びヘイズ値を著しく低減できる。
【0121】
研磨用組成物がポロキサミンを含まない一方で多価アルコールを含む実施例17及び実施例20によれば、多価アルコールとして多価アルコール(1)と多価アルコール(2)とを併用した実施例20においても、良好な欠陥数及びヘイズ値が得られることが分かる。
【0122】
実施例7、実施例13、及び実施例14は、砥粒、アルカリ化合物、変性PVA、ポロキサミン及び多価アルコールを配合した研磨用組成物についての実施例であり、それぞれのアルカリ化合物の配合量を変更したものである。これらの実施例によれば、アルカリ化合物の配合量が0.15重量%から0.20重量%の実施例13及び実施例14において、より良好な欠陥数及びヘイズ値が得られていることが分かる。
【0123】
図1は、アルカリ化合物の配合量を横軸、欠陥数及びヘイズ値を縦軸にとって、実施例7、実施例13、及び実施例14の結果をグラフ化したものである。
図1のグラフより、アルカリ化合物の配合量が0.1〜0.2重量%の範囲において、欠陥数及びヘイズ値が小さい値となっていることが分かる。
【0124】
実施例27、比較例7、及び比較例8は、砥粒、アルカリ化合物、及び変性PVAを配合した研磨用組成物についての実施例及び比較例であり、それぞれの砥粒の平均粒子径を変更したものである。これらの実施例及び比較例から、平均粒子径が小さくなるほど、欠陥数及びヘイズ値が小さくなる傾向があることが分かる。
【0125】
図2は、砥粒の平均粒子径を横軸、欠陥数及びヘイズ値を縦軸にとって、実施例27、比較例7、及び比較例8の結果をグラフ化したものである。
図2のグラフより、平均粒子径が小さくなるほど、欠陥数及びヘイズ値が小さくなる傾向があることが分かる。特に、平均粒子径が50nm以下になると、欠陥数及びヘイズ値が顕著に小さくなることが分かる。
【0126】
研磨用組成物中の粒子の平均粒子径に着目すると、平均粒子径が50nmの砥粒(1)が配合された実施例1〜実施例10、実施例13〜実施例20、及び実施例27では、研磨用組成物中の粒子の平均粒子径が54〜55nmとなっている。また、平均粒子径が30nmの砥粒(2)が配合された実施例11、実施例12では、研磨用組成物中の粒子の平均粒子径が34〜35nmとなっている。つまり、研磨用組成物に含まれる粒子の平均粒子径は、研磨用組成物に含まれる砥粒の単体の平均粒子径の1.2倍以下となっている。また、実施例21〜実施例26においても、もとの平均粒子径が5nmと非常に小さい実施例26を除けば、研磨用組成物に含まれる粒子の平均粒子径は、研磨用組成物に含まれる砥粒の単体の平均粒子径の1.2倍以下となっている。
【0127】
研磨用組成物に、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース(HEC)が配合されている場合には、HECの分子が砥粒の周りに絡みついて、研磨用組成物中の粒子の平均粒子径が、砥粒単体の大きさよりも大きく検出されてしまう。HEC分子が砥粒の周りに絡みつきやすいのは、HEC分子が立体的な3次元の構造を有することが理由であると考えられる。一般的に、研磨用組成物が水溶性高分子としてHECを含む場合には、研磨用組成物に含まれる粒子の平均粒子径は、研磨用組成物に含まれる砥粒の単体の平均粒子径の1.3〜1.7倍程度となることが知られている。
【0128】
これに対し、本実施形態の研磨用組成物COMP1には、変性PVAが配合されているので、砥粒の周りに水溶性高分子が絡みつきにくい。これは、変性PVAの分子中に含まれる炭素二重結合により、変性PVAの分子が直線的な構造を有することが理由であると考えられる。そのため、研磨用組成物の中で、砥粒は砥粒単体の大きさと同程度の大きさの粒子として存在している。したがって、研磨用組成物に含まれる粒子の平均粒子径は、研磨用組成物に含まれる砥粒の単体の平均粒子径の1.2倍以下となっていると考えられる。
【0129】
次に、変性PVAを配合した効果を確認するため、変性PVAに代えて、HECを配合した比較例9〜12の研磨用組成物を作製した。比較例9〜12の研磨用組成物の組成を表7に示す。表7において、各成分の重量%は、研磨用組成物(原液)全体に対する重量%を表す。
【0130】
比較例9の研磨用組成物は、5重量%の砥粒、0.4重量%の水酸化アンモニウム(NH
4OH)、及び0.35重量%の水溶性高分子(HEC)を水に配合して全体で100重量%としたものである。ここで使用した砥粒は、コロイダルシリカであり、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径は40nmであった。また、HECは、分子量80万のものを使用した。
【0131】
比較例10〜12の研磨用組成物は、比較例9の研磨用組成物の砥粒の代わりに、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径がそれぞれ60nm、70nm、及び73nmの砥粒を配合したことを除いて、比較例9と同一の組成を有する。これらの砥粒は、すべてコロイダルシリカであり、配合量は5重量%である。
【0132】
上記の研磨用組成物に対し、実施例1〜実施例27及び比較例1〜比較例8の場合と同じ研磨条件で研磨を行い、研磨後の欠陥数及びヘイズ値を測定した。ただし、欠陥数の測定は、実施例1〜実施例27及び比較例1〜比較例8の場合とは異なり、LS6600を用いて行った。そのため、欠陥数については、実施例1〜実施例27及び比較例1〜比較例8の結果と絶対値での比較はできない。
【0133】
研磨用組成物中の粒子の平均粒子径の測定も、実施例1〜実施例27及び比較例1〜比較例8の場合と同様にして行った。結果を表7に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
図3は、砥粒の平均粒子径を横軸、欠陥数及びヘイズ値を縦軸にとって、比較例9〜比較例12の結果をグラフ化したものである。
図3のグラフより、変性PVAに代えてHECを配合した研磨組成物では、
図2の場合とは反対に、平均粒子径が小さくなるほど欠陥数及びヘイズ値が大きくなる傾向があることが分かる。特に、平均粒子径が40nm以下の比較例9では、欠陥数及びヘイズ値ともに測定不能であった。
【0136】
また、研磨用組成物に含まれる粒子の平均粒子径は、研磨用組成物に含まれる砥粒の単体の平均粒子径の1.2倍よりも大きく、約1.5〜1.8倍になっていた。
【0137】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。