【実施例1】
【0016】
先ず、
図1および
図2を参照して、リーン燃焼の内燃機関(リーンバーンエンジン)の特性について説明する。
図1,
図2は、オットーサイクルを理論サイクルとした時の空気過剰率(以下、「λ」とも表記する)に対する熱効率と燃焼温度の理論値を示している。
【0017】
図1および
図2に示すように、リーンバーンエンジンでは、空気過剰率λが高くなるのに従い、作動流体(空気と燃料の混合気)の比熱比が高まることで、理論熱効率が向上し、燃焼温度が下がることが分かる。通常、燃焼温度が1800K以下の場合、理論的にはNO
Xが排出されないことから、空気過剰率λが1.8以上の場合、高熱効率と低NO
Xが両立することがわかる。
【0018】
一方、空気過剰率λが高くなると、層流燃焼速度が小さくなるため、空気過剰率λを高くするには限界がある。このことから、リーン燃焼は、空気過剰率λの狭いエリアで燃焼させる必要がある。つまり、安定した燃焼で、なおかつ、低NO
Xのリーン燃焼を実現するためには、限られた狭いエリアにおいて、空気過剰率λの正確な制御が必要となる。
【0019】
次に、
図3から
図7を参照して、実施例1の内燃機関の制御装置とその制御方法について説明する。
図3は、本実施例のエンジンシステム(内燃機関)の概略構成を説明するための図である。
図3に示すように、本エンジンシステムは燃焼室9内の燃料と空気の混合気に点火する点火プラグ3を備えた火花点火エンジンである。インジェクタ1により、燃焼室9へ空気を導入する吸気管内に燃料が噴射される。また、スロットル2により、エンジン(燃焼室9)に供給される空気量が調整される。エンジン(燃焼室9)に入る空気の量をセンサにて計測し、コンピュータ(コントローラ11)が必要な燃料を計算して、インジェクタ1により燃料が吸気管内に高圧噴射される。
【0020】
燃焼室9には燃焼圧力と相関のある物理量を検出する燃焼圧推定センサ6が設置されている。この燃焼圧推定センサ6には、例えば、燃焼室9内の圧力を検出する圧力センサの他に、燃焼室9の壁面の歪量(ひずみ量)を検出する歪センサ、燃焼に伴う振動を検出する振動センサや加速度センサ、燃焼室9で発生する音を検出する音センサ、燃焼に伴い発生するイオン電流を計測する電流計などを用いる。
【0021】
エンジン内にはクランク軸8の回転位置(クランク角度)を検出するクランク角度センサ(回転センサ)7が設置されており、このクランク角度センサ(回転センサ)7を用いることで、燃焼圧推定センサ6の出力値とクランクの回転角度を同期することができる。
【0022】
各気筒の合流後の排気管にはO
2センサ10が設置されており、このO
2センサ10により、排気中のO
2濃度を計測し、全体の空気過剰率を推定する。
【0023】
燃焼室9の吸気側と排気側には、それぞれ吸気バルブ4、排気バルブ5が設置されており、これらのバルブには位相時期(開閉タイミング)およびリフト量(開度)のいずれかを変化できる可変バルブ機構が搭載されている。
【0024】
コントローラ11は、燃焼圧推定センサ6およびクランク角度センサ(回転センサ)7の各センサの値を読み込み、これらの値をもとにインジェクタ1の噴射量および噴射時期、スロットル2の開度、点火プラグ3の点火時期、吸気バルブ4の可変量、排気バルブ5の可変量を制御する制御機能およびドライバ機能を有する。
【0025】
図4は燃焼圧推定センサ6およびクランク角度センサ(回転センサ)7の各出力値から定義したタイミング(Δθ
Pmax,Δθ
P’’max)について示している。このタイミング(Δθ
Pmax,Δθ
P’’max)は、燃焼圧推定センサ6の最大値となるクランク角度(Δθ
Pmax)、燃焼圧推定センサ6の二回微分の最大値となるクランク角度(Δθ
P’’max)をそれぞれ示す。
【0026】
Δθ
P’’maxは点火プラグ3の点火タイミングから燃焼室9内での燃焼開始タイミングまでの点火遅れ期間であり、Δθ
Pmaxは燃焼開始タイミングから設定量(所定)の燃焼が終了する設定量燃焼終了タイミングまでの燃焼期間である。
【0027】
各パラメータの算出式を以下の式(1),(2)と定義する。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
ここで、t
1、t
2はクランク角度センサの立下りのタイミング(時間ベース)を、t
m1は燃焼圧推定センサ6の値(P)の最大値を示すタイミング(時間ベース)、t
m2は燃焼圧推定センサ6の二回微分の値(P”)の最大値を示すタイミング(時間ベース)を示す。また、θ
1、θ
2はクランク角度センサ7の立下りのタイミング(クランク角度ベース)を示す。
【0031】
式(1),(2)により、クランク角度センサ7の立ち下がり周期が例えば10deg毎と比較的粗い(周期が長い)場合においても、正確なθ
Pmax,θ
P’’maxを算出することができる。θ
Pmax,θ
P’’maxより、Δθ
PmaxおよびΔθ
P’’maxを算出し、燃焼制御へ活用する。なお、Δθ
Pmaxは、点火してから、燃焼圧推定センサ6の値(P)の最大値までのクランク期間、Δθ
P’’maxは、点火してから燃焼圧推定センサ6の二回微分の値(P”)の最大値までのクランク期間と定義した。
【0032】
Δθ
Pmaxは、点火から燃焼の重心位置までの燃焼期間と相関を示し、Δθ
P’’maxは、点火から熱発生が開始するまでの点火遅れ期間と相関を示す。そのため、これらの2つのデータを組み合わせることで、燃焼条件を簡易的に推定することが可能となる。
【0033】
Δθ
Pmax,Δθ
P’’maxは、燃焼圧推定センサ6の出力の絶対値の精度を必要としないことから、例えば、圧力センサの出力値の温度ドリフトやセンサの劣化が起こった場合でも、正確に計測することができる。さらに、エンジンの振動やヘッドの熱歪(ひずみ)、燃焼音などを計測するセンサを燃焼圧推定センサとして活用することができる。つまり、定義したタイミング(Δθ
Pmax,Δθ
P’’max)を活用することで、低コストな燃焼検知による燃焼制御を実現できるといえる。
【0034】
図5は、実機エンジンの燃焼圧推定センサ6から算出したタイミング(Δθ
Pmax,Δθ
P’’max)を燃焼条件毎に整理した結果である。燃焼条件は、空気過剰率λと点火時期をそれぞれ変化させている。
【0035】
この結果より、空気過剰率λ毎にΔθ
Pmax,Δθ
P’’maxは線形の相関を示す。また、各λにおける最大トルク点火時期(MBT:Minimum Advance for Best Torque)は、Δθ
Pmax,Δθ
P’’maxの領域を持つことがわかる。これらのことから、Δθ
Pmax,Δθ
P’’maxを活用することで、λとMBTの両方を同時に制御することが可能となる。
【0036】
次に、
図6および
図7を用いて、本実施例における具体的な内燃機関の制御手順(方法)について説明する。ここでは、目標とする空気過剰率λを2とした場合の制御手順の例を説明する。
【0037】
図7に示すように、MBTとなる点Eを目標とした場合、燃焼圧推定センサ6の出力から算出したΔθ
Pmax,Δθ
P’’maxにより、以下の領域A,B,C,Dに分類することができる。(
図6参照)
領域A:現在λが目標λよりも大きく、現在点火時期がMBTよりも遅角側
領域B:現在λが目標λよりも大きく、現在点火時期がMBTよりも進角側
領域C:現在λが目標λよりも小さく、現在点火時期がMBTよりも遅角側
領域D:現在λが目標λよりも小さく、現在点火時期がMBTよりも進角側
MBTおよびλ制御を実施する際の各領域における制御方法を以下に示す。
【0038】
領域A:λを小さくした後に点火時期を進角化する。すなわち、設定されたMBT領域に対して、点火遅れ期間が大きく、かつ燃焼期間が大きい場合、設定された空気過剰率領域λ内に入るようにインジェクタ1およびスロットル2を制御した後、設定されたMBT領域内に入るように点火プラグ3の点火タイミングを制御する。
【0039】
領域B:点火時期を遅角化した後にλを小さくする。すなわち、設定されたMBT領域に対して、点火遅れ期間が大きく、かつ燃焼期間が小さい場合、設定されたMBT領域内に入るように点火プラグ3の点火タイミングを制御した後、設定された空気過剰率領域λ内に入るようにインジェクタ1およびスロットル2を制御する。
【0040】
領域C:点火時期を進角化した後にλを大きくする。すなわち、設定されたMBT領域に対して、点火遅れ期間が重なり、かつ燃焼期間が大きい場合、設定されたMBT領域内に入るように点火プラグ3の点火タイミングを制御した後、設定された空気過剰率領域λ内に入るようにインジェクタ1およびスロットル2を制御する。
【0041】
領域D:点火時期を遅角化した後にλを大きくする。すなわち、設定されたMBT領域に対して、点火遅れ期間が重なり、かつ燃焼期間が小さい場合、設定されたMBT領域内に入るように点火プラグ3の点火タイミングを制御した後、設定された空気過剰率領域λ内に入るようにインジェクタ1およびスロットル2を制御する。
【0042】
領域B,Dのように、現在点火時期がMBTよりも進角側にある場合は、ノッキング等の異常燃焼が起きやすい状態であることから、点火時期の遅角制御を優先して行う。
【0043】
一方、領域Aのように、現在λが目標λよりも大きく、かつ現在点火時期がMBTよりも遅角側の場合は、λを小さくする制御を先に実施した後に点火時期を進角化する。λの制御は、燃料と空気の供給量で決定されることから、点火時期に比べ、変動が大きくなる。領域Aで必要とされるλおよび点火時期制御は、両方ともノッキングが起こりやすくなる制御であることから、変動要因の大きいλを先に制御することで、ノッキングを回避することができる。
【0044】
また、領域Cのように、現在λが目標λより小さく、現在点火時期がMBTよりも遅角側の場合は、まず点火時期を進角化した後、λを大きくする。これは、先にλを大きくした場合、失火の確率が高くなることから、点火時期の進角化を優先する必要があるためである。
【0045】
以上のような制御手順にすることで、ノッキング、失火を起こさずに、各燃焼領域A〜Dにおいて、目標とする空気過剰率λ、最大トルク点火時期MBTへ制御することが可能となる。
【0046】
以上説明したように、本実施例の内燃機関の制御装置とその制御方法によれば、燃焼圧推定センサ6およびクランク角度センサ(回転センサ)7の各出力値から算出したタイミング(Δθ
Pmax,Δθ
P’’max)に基づいて燃焼状態を分類し、各分類(運転域)に応じて空気過剰率λ、最大トルク点火時期MBTに対する点火時期を制御することで、ECUへの実装負荷を必要以上に増やすことなく、燃焼の安定化とNO
X排出量の抑制が可能で、高効率な内燃機関の制御を行うことができる。
【実施例2】
【0047】
図8から
図13を参照して、実施例2の内燃機関の制御装置とその制御方法について説明する。
【0048】
実施例1のように空気過剰率λが2付近のリーン燃焼においては、過給器等の補機類の搭載性に制約を受けることから、幅広い回転数、トルク域にて実現することが難しい。
図8に空気過剰率λが2付近のリーン燃焼の運転域について示す。
【0049】
低負荷では点火時の混合気温度が低いことでリーン燃焼を実現することが難しく、また高負荷はターボ等の補機が必要となる。そのため、リーン燃焼を実現する上記実施例1は、中負荷での運転に向いているといえる(運転域(領域)H)。このことから、低負荷および高負荷では空気過剰率λが1でEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス還流)を使った燃焼を実施する必要がある(運転域(領域)G,I)。低負荷では、EGRを使うことでポンピングロスが低減し、高負荷では、EGRを使うことで燃焼温度低下により冷却損失低減と耐ノッキング性向上により高効率化を実現できる。
【0050】
図9にEGRを供給する本実施例のエンジンシステム(内燃機関)の概略構成を示す。本実施例のエンジンシステム(内燃機関)は、
図9に示すように、エンジンの排ガスの一部がエンジンの吸気管に接続されるEGRシステムを持つ構成である。エンジンの排ガスはEGRクーラ12およびEGRバルブ13を通って、エンジンの吸気管に供給される。EGRクーラ12には、エンジンの冷却水が供給され、EGRは約80℃以下に冷やされる(図示せず)。このような構成とすることで、冷却されたEGRを任意の量でエンジンに供給することができる。
【0051】
本実施例のシステムは空気過剰率λが1であり、EGRを任意の量に制御するシステムである。排気管に三元触媒14を設置していることから、未燃燃料やNO
Xは三元触媒で浄化され、水蒸気とCO
2、N
2へ変換される。EGR量は温度や排ガス成分が不安定であることから、流量を直接制御することが難しいが、本実施例の燃焼制御システムを用いることで、正確なEGR量とMBTを制御が可能となる。また運転域(領域)I,Gは共にトルクが高いほど、EGR率(排気ガス還流率)が小さくなる。
【0052】
運転域(領域)Iについては、ポンピングロスを小さくするために、低負荷ほどEGR率が高くなるように制御する。また、運転域(領域)Gについては、高負荷のために、トルクが高くなるほど吸入空気量が増加し、EGR率が小さくなる。EGR率は、吸入空気温度によっても変化する。以上のことから、運転域(領域)G,Iで高効率に運転するには、EGR率を最適に制御し、かつMBT運転をすることが重要である。
【0053】
EGRシステムにおいて、点火時期を変化させた際、
図10に示すΔθ
Pmax、Δθ
P’’maxにより、整理できる。なおEGR率は以下の式(3)のように定義する。
【0054】
【数3】
【0055】
図9に示す本実施例の内燃機関(エンジンシステム)では、スロットル2を介して外部から取り込む吸入空気流量(新気流量)とEGRクーラ12およびEGRバルブ13を介して排気側から吸気側に戻すEGR量の和に対するEGR量の比率がEGR率となる。
【0056】
EGR率が高くなると、エンジン(燃焼室9)に吸入されるガスの中に不活性であるCO
2,水蒸気の割合が多くなり、燃焼は遅くなる傾向になる。そのため、同じ点火時期の場合、EGR率が大きくなるに従い、Δθ
Pmax,Δθ
P’’maxが大きくなる。そして、点火時期を変えた場合は、
図10に示すように各EGR率で点火時期を変化させるとΔθ
Pmax,Δθ
P’’maxは線形の関係を示す。さらに各EGR率において、所定のMBT領域が存在することから、EGR率とMBTを同時に制御することが可能となる。
【0057】
運転域(領域)IではEGR率を積極的に制御するために、その具体的な制御方法を
図11および
図12に示す。燃焼圧推定センサ6の出力から算出したΔθ
Pmax,Δθ
P’’maxにより、以下の領域A,B,C,Dに分類することができる。(
図12参照)
領域A:現在EGRが目標EGRよりも大きく、現在点火時期がMBTよりも遅角側
領域B:現在EGRが目標EGRよりも大きく、現在点火時期がMBTよりも進角側
領域C:現在EGRが目標EGRよりも小さく、現在点火時期がMBTよりも遅角側
領域D:現在EGRが目標EGRよりも小さく、現在点火時期がMBTよりも進角側
MBTおよびEGR制御を実施する際の各領域における制御方法を以下に示す。
【0058】
領域A:EGR率を小さくした後に点火時期を進角化する。
【0059】
領域B:点火時期を遅角化した後にEGR率を小さくする。
【0060】
領域C:点火時期を進角化した後にEGR率を大きくする。
【0061】
領域D:点火時期を遅角化した後にEGR率を大きくする。
【0062】
領域B,Dのように、現在点火時期がMBTよりも進角側にある場合は、ノッキング等の異常燃焼が起きやすい状態であることから、点火時期の遅角制御を優先して行う。
【0063】
一方、領域Aのように、現在EGRが目標EGRよりも大きく、かつ現在点火時期がMBTよりも遅角側の場合は、EGR率を小さくする制御を先に実施した後に点火時期を進角化する。EGR率の制御は、燃料と空気の供給量で決定されることから、点火時期に比べ、変動が大きくなる。領域Aで必要とされるEGR率および点火時期制御は、両方ともノッキングが起こりやすくなる制御であることから、変動要因の大きいEGR率を先に制御することで、ノッキングを回避することができる。
【0064】
また、領域Cのように、現在EGRが目標EGRより小さく、現在点火時期がMBTよりも遅角側の場合は、まず点火時期を進角化した後、EGR率を大きくする。これは、先にEGR率を大きくした場合、失火の確率が高くなることから、点火時期の進角化を優先する必要があるためである。
【0065】
以上のような制御手順にすることで、ノッキング、失火を起こさずに、各燃焼領域A〜Dにおいて、目標とするEGR率(排気ガス還流率)、最大トルク点火時期MBTへ制御することが可能となる。
【0066】
なお、
図8の運転域(領域)Gにおいては、高負荷での運転のため、EGR率は吸入空気量に依存して決められることから、制御することが難しい。そのため、
図13に示すように、点火時期を制御し、EGR率毎にMBT領域に制御する。具体的には領域Kでは点火時期を遅角化し、領域Jでは点火時期を進角化することで、MBT領域内となるように制御する。
【0067】
以上説明したように、本実施例の内燃機関の制御装置とその制御方法によれば、燃焼圧推定センサ6およびクランク角度センサ(回転センサ)7の各出力値から算出したタイミング(Δθ
Pmax,Δθ
P’’max)に基づいて燃焼状態を分類し、各分類(運転域)に応じてEGR率(排気ガス還流率)、最大トルク点火時期MBTに対する点火時期を制御することで、ECUへの実装負荷を必要以上に増やすことなく、燃焼の安定化とNO
X排出量の抑制が可能で、高効率な内燃機関の制御を行うことができる。
【実施例3】
【0068】
図14を参照して、実施例3の内燃機関の制御方法について説明する。
図14は、
図8に示す燃焼域(領域)毎の制御方法を示すフローチャートである。
【0069】
先ず、ステップS101にて、エンジンの回転数を計測し、トルクを推定する。回転数はクランク軸8の回転センサ(クランク角度センサ)7により計測する。トルクは吸入空気量、燃料量、熱効率、アクセル開度のいずれかより推定する。
【0070】
次に、ステップS102にて、燃焼圧推定センサ6の計測値をもとにΔθ
Pmax,Δθ
P’’maxを算出する。
【0071】
その後、ステップS103にて、
図8に示した燃焼域(領域)判定を実施する。燃焼域(領域)がG若しくはIの時は、空気過剰率λ=1でEGR率を制御する燃焼であることから、ステップS104にて、Δθ
Pmax,Δθ
P’’maxを軸にしたEGR率、MBTのマップを読み込む(
図10参照)。このマップはエンジンの回転数及びトルク毎に決められる。燃焼域(領域)がGのときはステップS105にて
図13に示す領域K,Jを判定した後に、ステップS106にて領域に応じた点火時期制御を実施する。また、燃焼域(領域)がIの場合は、ステップS107にて領域A,B,C,Dのいずれかを判定し(
図11参照)、ステップS108にて領域に応じて点火時期とEGR率を制御する(
図12参照)。
【0072】
一方、ステップS103にて、燃焼域(領域)Hと判定された場合は、空気過剰率λ=1.8以上のリーン燃焼であるため、ステップS109にてΔθ
Pmax,Δθ
P’’maxを軸にした空気過剰率λ、MBTのマップを読み込む(
図7参照)。続いて、ステップS110にて、領域A,B,C,Dの判定を実施し(
図7参照)、ステップS111にて領域に応じた点火時期、空気過剰率λの制御を実施する。(
図6参照)
以上説明したように、本実施例の内燃機関の制御方法によれば、燃焼圧推定センサ6およびクランク角度センサ(回転センサ)7の各出力値から算出したタイミング(Δθ
Pmax,Δθ
P’’max)に基づいて燃焼状態を分類し、各分類(運転域)に応じて空気過剰率λ及び最大トルク点火時期MBTに対する点火時期、またはEGR率(排気ガス還流率)及び最大トルク点火時期MBTに対する点火時期を制御することで、ECUへの実装負荷を必要以上に増やすことなく、燃焼の安定化とNO
X排出量の抑制が可能で、高効率な内燃機関の制御を行うことができる。
【0073】
なお、以上で説明した各実施例による制御の実施の有無は、例えば、内燃機関(エンジン)が搭載される自動車のECU(Engine Control Unit)からの出力信号(波形)や燃焼室へのセンサ(燃焼圧推定センサ)の設置の有無等から確認することができる。
【0074】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。