【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、本発明の目的は、独立請求項の特徴によって解決される。
【0006】
本発明による更なる好ましい実施形態は、従属請求項に見られる。
【0007】
本発明は、ヘッドならびにねじ山及びヘッドから見て軸方向に外方を向くねじ山端を含むねじ山付き部分を含む高強度ねじに関する。ねじ山付き部分は、ねじ山端で始まり、軸方向に延在する未硬化部分を含む。未硬化部分は、ねじ山付き部分の軸中央部分と比較して硬度が減少している。
【0008】
本発明は、同様に、高強度ねじを製造する方法に関し、方法は、
− ヘッド及びシャフトを含むブランクを変形によって製造するステップと、
− 硬度の増加を獲得するためブランクを熱処理するステップと、
− シャフトの軸部分で始まる未硬化部分であって、ヘッドから見て外方を向くねじ山端が後
のステップで配置されることになり、また、ねじ山付き部分が後
のステップで配置されることになるシャフトの軸部分の一部にわたってだけ軸方向に延在する、未硬化部分内でシャフトの硬度を減少させるステップと、
− ねじ山付き部分を、シャフトの領域内でねじ山を変形することによって製造するステップとを含む。
【0009】
これらの方法ステップは所与の順序で行われる。しかし、これらの方法ステップの間で更なるステップを行うことが可能である。
【0010】
高強度ねじは、少なくとも800N/mm
2の引張強度R
mを有するねじとして理解される。高強度ねじは、特性クラス8.8、10.9、及び12.9のねじとして理解される。しかし、本発明による高強度ねじは、同様に、少なくとも1400N/mm
2の引張強度R
mを有する超高強度ねじであってもよい。こうした超高強度ねじは、主に、特性クラス14.8、15.8、または16.8に属する。そのため、本発明による「高強度(high−strength)」ねじは、少なくとも高強度ねじであるが、同様に、超高強度ねじであり得る。
【0011】
例えば、新しい高強度ねじは、その軸端部分がねじのヘッドを向き、その軸中央部分が超高強度ねじに対応し、その未硬化部分が、しかし、高強度ねじに対応する「だけである(only)」、ねじ山付き部分を含む。
【0012】
本出願で使用される用語、未硬化部分は、標準的な技術用語ではない。未硬化部分は、(未硬化でない)ねじ山付き部分の残りと比較して、硬度の減少を有するねじのねじ山付き部分の軸部を指定するものとして、本出願において理解される。未硬化という用語は、硬度が減少したことを表現することを意図される。未硬化は、前もって行われた硬化プロセスが完全に行われなかったことを特に意味しない。
【0013】
そのため、硬度及び引張強度は、ねじのヘッドから見て外方を向くねじ山のねじ山付き部分の端部分において減少する。多くの場合、これは、ねじの軸端である。しかし、ねじ山付き部分が、ねじの軸端ではなく、代わりに、ねじの軸端とヘッドとの間の任意の場所に配置されることが、同様に可能である。両方の場合に、未硬化部分は、ねじ山付き部分の或る軸長にわたって、ねじ山付き部分のこの端、すなわち、ねじ山ランインから延在する。しかし、未硬化部分は、ねじ山付き部分の全長にわたって延在しない。
【0014】
未硬化部分における硬度及び引張張力の平均は、ねじ山付き部分の残りの部分における硬度及び引張張力の平均より低い。ねじ山付き部分の「残りの部分」という用語と比較する参照を改善するため、本出願は、ねじ山付き部分の軸中央部分を参照する。
【0015】
ネジ山端のこの部分における新しい未硬化部分によって、ねじは、複数の方法で逃がされる。この逃がしは、特に、ねじ山端のドーム、すなわち、ねじ山の外径が最初にその最大サイズに達するねじ山ランインの軸部分に関する。このドームの領域において従来技術の種々の問題が存在する。まず第1に、ねじ山の製造中のローリングツールにおいてねじ山の側面に作用するこの場所における不均等な力分布が存在する。
【0016】
従来技術における別の問題は、対応する雌ねじの領域における締付け式コンポーネントにおける疲労破壊のリスクである。ねじのねじ山の先端による張力集中が存在する。
【0017】
本発明によれば、ねじ山の製造中にならびにねじ山を締付けるときに、新しいねじのねじ山付き部分の硬度及び引張強度の減少によって、ねじ山ランインの領域内のこのドームにおいて少ない応力が存在する。これは、ローリングツールにおける少ない摩耗、ならびに、締付け式コンポーネントにおける少ない損傷及びクラックが存在することを意味する。
【0018】
新しい未硬化部分によって、ワンステップローリング法によって超高強度ねじを更に生産することが可能である。従来技術から知られているツーステップスレッドローリングプロセスは必要とされない。コンポーネントにおける応力集中を低減するための他の機械加工法は、同様に必要とされない。
【0019】
新しい高強度ねじ、特に、新しい超高強度ねじの疲労強度は、それにより、従来技術と比較して実質的に改善される。例えば、約20N/m
2と50N/m
2との間から最大約150N/m
2以上だけの疲労強度σ
A50の増加が可能である。
【0020】
未硬化部分の硬度は、ねじ山付き部分の軸中央部分と比較して少なくとも50HVだけ低い場合がある。未硬化部分の硬度は、50HVと300HVとの間、特に100HVと250HVとの間の値だけ低い場合がある。未硬化部分の引張強度は、ねじ山付き部分の軸中央部分と比較して少なくとも100N/mm
2だけ低い場合がある。特に、未硬化部分の引張強度は、100N/mm
2と700N/mm
2との間、特に200N/mm
2と500N/mm
2との間の値だけ低い場合がある。
【0021】
未硬化部分の硬度は、ねじ山付き部分の軸中央部分と比較して、15%と50%との間、特に20%と40%との間の値だけ低い場合がある。未硬化部分の引張強度は、ねじ山付き部分の軸中央部分と比較して、15%と50%との間、特に20%と40%との間の値だけ低い場合がある。
【0022】
未硬化部分内のねじ山付き部分の硬度及び引張強度のこの数値的減少は、ねじ山の製造中にローリングツールにおいて起こる少ない摩耗をもたらす。更に、コンポーネントに対するねじの接続中におけるコンポーネントの少ない不具合が存在する。
【0023】
未硬化部分は、ねじ山付き部分の軸長の一部にわたって延在するだけである。この部分的長さは、ヘッドから見て外方を向くねじ山の端、及び、ねじ山ランインのドーム、すなわち、ねじ山の最大外径に初めて達するねじ山のピッチに対応する、ねじの周囲に巻付く部分を覆う。
【0024】
少なくともドームのこの部分が未硬化部分によって覆われることを保証するため、未硬化部分は、ねじ山のピッチの2倍、特に3倍にわたって延在してもよい。換言すれば、ねじのねじ山は、それぞれ、完全に2回及び3回ねじに巻付いた。
【0025】
硬度及び引張張力の増加の所望のポジティブな効果をねじ山が完全に喪失しないことを保証するため、未硬化部分は、ねじ山付き部分の軸中央部分になる前に少なくとも終わる。未硬化部分の長さは、ねじ山のピッチの、最大8倍、特に最大7倍、特に最大6倍に対応してもよい。こうして、ねじ山の製造中にまたねじの締付け中に、普通なら上述したネガティブな効果が起こることになるねじ山付き部分の領域が覆われることが十分に保証される。ねじ山の残りの部分は、この高強度ねじから予測されるように、所望の大きな硬度及び引張強度を有する。
【0026】
ネジ山は、未硬化部分において通常の標準的なデザインを有してもよい。これは、通常のねじ山ランインが存在することを意味する。例えば、
穴または更なる面とりした面として、この場所における他の特別な幾何学的対策は存在しない。しかし、シャフトのねじ山ランインの端における通常の面とりした面が存在する。そのため、ねじ山ランインの逃がしは、未硬化部分によって排他的に達成されてもよい。
【0027】
高強度ねじを製造する上述した方法において、硬度を減少させることは、ブランクの誘導加熱によって実現されてもよい。これは、ライブコイルが交流電磁場を受け、ブランクの材料内で渦電流を生成することによって特に達成される。これらが初期電流と反対方向へ流れるため、熱が生成される。
【0028】
ブランクの冷却は、ブランクの誘導加熱に続いてもよい。鋼及び表面層の加熱が、500℃と750℃との間、特に600℃と723℃との間の、オーステナイト変態の始まりAC1より低い温度に制限される場合、これは、特に有利である。加熱ステップと冷却ステップの協調によって、硬度及び強度の所望の減少が獲得される。冷却は、約10℃〜約50℃の温度を有する水によって特に実現される。冷却は、約0.05sと30sとの間、特に約0.1sと10sとの間の期間にわたって起こる場合がある。
【0029】
誘導加熱は、約20kHzと500kHzとの間、特に約100kHzと400kHzとの間の周波数で実現されてもよい。
【0030】
誘導加熱は、約0.05sと30sとの間、特に約0.1sと10sとの間の期間にわたって実現されてもよい。
【0031】
しかし、ブランクを加熱することによる硬度の減少は、同様に、例えばレーザによって実現されてもよい。特に、未硬化部分の硬度の所望の減少を獲得するための制御式冷却が、この加熱に続いてもよい。
【0032】
上述した方法ステップにおいて、ねじは、上述した特徴の1つまたは複数を含んでもよい。
【0033】
熱処理は、特にオーステンパ処理であってもよい。ねじ山付き部分を生産するための変形は、特にローリングであってもよい。特に、プロセスは、冷間成形であってもよい。
【0034】
新しい高強度ねじは、特に、オーステンパ処理によって少なくとも部分的に生産されたベイナイト組織を含んでもよい。ベイナイト組織は、延性が依然として同様に非常に高いままで、極端に高い引張強度をもたらす。この高い延性または靱性は、硬化及びそれに続くアニーリングによる知られている方法で従来技術において生産されるマルテンサイト組織から、ベイナイト組織を実質的に識別する。代わりに、オーステンパ処理中に、硬化は、ベイナイト相における等温的組織変態によってオーステナイト相からの急速な冷却によって実現される。要素、特に、ねじは、オーステナイトからベイナイトへの組織変態が全断面にわたって終了するまで、等温度の塩浴内に配置される。マルテンサイト硬化中に必要とされるアニーリングステップは、好ましくは省略されてもよい。そのため、歪を硬化させる傾向が低減される。
【0035】
高強度ねじを生産するために使用される開始材料は、通常、「ワイヤ(wire)」と呼ばれる。新しい高強度ねじのために使用されるワイヤは、冷間成形可能な非硬化式でかつ非焼戻し式の鋼で作られてもよく、約0.2%〜0.6%、または約0.2%〜0.5%の炭素含量を有してもよい。鋼は、特に、約1.1%より大きい総合シェアを有する、合金元素、特に、Cr、Mo、Mn、Ni、V、Nb、またはTiを含んでもよい。
【0036】
本発明の有利な開発は、特許請求の範囲、説明、及び図面に起因する。説明の始めで述べた特徴及び複数の特徴の組合せの利点は、例として役立つだけであり、これらの利点を取得しなければならない本発明による実施形態を必要とすることなく、代替的にまたは累積的に使用されてもよい。含まれる特許請求の範囲によって規定される保護の範囲を変更することなく、以下は、オリジナルの出願及び特許の開示に関して当てはまる。更なる特徴は、図面から、特に、示すデザイン及び複数のコンポーネントの互いに対する寸法から、ならびに、それらの相対的配置及びそれらの動作接続から採取されてもよい。本発明の異なる実施形態の特徴の、または、特許請求の範囲の選択される参照と無関係の異なる特許請求の範囲の特徴の組合せが、同様に可能であり、組合せは、こうして動機付けられる。これは、同様に、別個の図面において示される、または、図面を説明するときに述べられる特徴に関連する。これらの特徴は、同様に、異なる特許請求の範囲の特徴と組合されてもよい。更に、本発明の更なる実施形態が、特許請求の範囲で述べた特徴を持たないことが可能である。
【0037】
特許請求の範囲及び説明において述べた特徴の数は、副詞「少なくとも(at least)」を明示的に使用する必要なしで、この正確な数及び述べた数より多い数をカバーすると理解される。例えば、1つの未硬化部分が述べられる場合、これは、正確に1つの未硬化部分が存在するように、または、2つ以上の未硬化部分が存在するように理解される。更なる特徴がこれらの特徴に追加されてもよい、または、これらの特徴が、各製品の唯一の特徴であってもよい。
【0038】
特許請求の範囲に含まれる参照符号は、特許請求の範囲によって保護される事柄の範囲を制限しない。それらの唯一の機能は、特許請求の範囲を理解し易くすることである。
【0039】
以下で、本発明は、図面に示す好ましい例示的な実施形態に関して更に説明され述べられる。