特許第6960355号(P6960355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960355
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】フードロックレバー構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/24 20140101AFI20211025BHJP
   E05B 83/16 20140101ALI20211025BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   E05B83/24 Z
   E05B83/16 H
   B62D25/12 N
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-32772(P2018-32772)
(22)【出願日】2018年2月27日
(65)【公開番号】特開2019-148102(P2019-148102A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】中島 優香里
【審査官】 芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−141620(JP,A)
【文献】 特開2006−9560(JP,A)
【文献】 特開2016−79573(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0043766(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106761050(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
B62D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントフードのロック及び解除を行うためのフードロックレバー構造であって、
車両に固定されるベース部材と、前記ベース部材に対し回動自在に設けられ、前記フロントフードを閉状態から浮き上がらせた状態で、前記フロントフード側のストライカーと係止及び係止解除可能なレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、前記ストライカーと接するキャッチ部と、車両前方側に延びるロックレバーとを有し、
前記ロックレバーは、前記ベース部材の主面に平行に設けられた第1レバー部と、前記第1レバー部に対し所定の角度で車両前方側へ屈曲された第2レバー部と、前記第2レバー部に対し所定の角度で屈曲し、車両前方へ延びる第3レバー部と、前記第3レバー部の先端側に形成されたレバー先端部とを有し、
前記第1レバー部と前記第2レバー部との稜線において、前記第1レバー部と前記第2レバー部の面が倒れこむ方向に、上側が鉛直方向に対し角度α傾斜し、
前記第2レバー部と前記第3レバー部との稜線において、前記第2レバー部と前記第3レバー部の面が倒れこむ方向に、上側が鉛直方向に対し角度α´傾斜し、
前記角度α´は、前記角度α以上であることを特徴とするフードロックレバー構造。
【請求項2】
前記ロックレバーは、所定の角度屈曲されることにより、レバー先端側が、前記レバー部材の回転軸方向に沿って車両前側に延設されていることを特徴とする請求項1に記載されたフードロックレバー構造。
【請求項3】
前記ロックレバーは立設され、各部位における断面が縦方向に長く形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたフードロックレバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードロックレバー構造に関し、特に、車両のフロントフードの強閉時において、フロントフードとフードロックレバーとの干渉を抑制することのできるフードロックレバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように例えばセダンタイプの自動車50には、フロントのエンジンルーム51を覆う開閉自在なフード52が設けられている。フード52は、エンジンルーム51の後方側であるフロントガラス53側で回動自在に固定されている。エンジンルーム51を覆うようにフード52が閉じられたとき、このフード52は、エンジン55と車両前方先端のラジエータグリル56との間となるエンジンルーム51内の前方側に設けられたフードロック装置60によって閉状態で固定(ロック)される。
【0003】
フードロック装置60のロック解除操作は車室内から行うことができ、フードロック装置60は、車室内からロック解除されると、フード52を閉状態から僅かに浮き上がらせた状態にしてフード52裏面のストライカー52aと係合し、フード52がそれ以上開放されないようにする。
【0004】
さらに、フードロック装置60には、ラジエータグリル56に向かって車両のフロント側に延びるロックレバー61が設けられており、フード52を浮き上がらせたロック解除状態でロックレバー61を操作することによって、フード52に対するフードロック装置60の係合が解除され、フード52を完全に開放することが可能になる。
尚、このような一般的なフードロック構造については、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−20026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年にあっては、フロントフードの意匠に自由度を持たせるため、ロックレバーが車両前後方向に長く設計されている。
しかしながら、その場合、フロントフードを開状態から強閉すると、長いロックレバーが振動(変形)するため、フロントフードの意匠を制約する必要があった。
【0007】
この現象について図7を用いて具体的に説明する。図7(a)乃至図7(d)は、従来のフードロック機構の動作を示す正面図である。尚、図7の各部に付した符号は、図6に対応させたものとしている。
【0008】
図7に示すフードロック機構60は、車両に固定されたベース部材70と、このベース部材70に対し軸75周り所定方向に回動可能なレバー部材65とを備える。レバー部材65は、コイルスプリング77により定位置(図7(a)の位置)に戻るよう付勢されている。レバー部材65は、先端が鈎状のキャッチ部66と、車両前方側(図7(a)において手前側)に延びるロックレバー61とを有している。
また、ベース部材70の裏側には、ストライカー52aを保持するための図示しないラッチや、これと係合するポールなどが配置されている。
【0009】
このフードロック機構60において、フロントフード52が開状態から閉められる際、図7(a)に示すようにフロントフード52のストライカー52aがキャッチ部66の頭に当接し、さらに押し下げる方向に押圧する。図7(a)に示すようにキャッチ部66の頭は傾斜しているため、ストライカー52aが押し下げることによりレバー部材65が軸75周りに回動し、図7(b)に示すようにストライカー52aがキャッチ部66の下側に入り込む。
【0010】
ここで、フロントフード52が勢いよく閉められた場合、レバー部材65が必要以上に回動することになり、それによりロックレバー61の先端位置が高くなる(図7(b)の二点鎖線部)。この際、ロックレバー61の先端がフロントフード裏側に干渉する虞があった。
【0011】
また、ストライカー52aがキャッチ部材66の下側に入り込んだ際、ストライカー52aが、レバー部材65に形成されたコブ65aに当たり、ロックレバー51先端に力が伝わってロックレバー51の先端が上下左右方向に変形するという虞もあった(図7(c)の二点鎖線部)。
【0012】
ストライカー52aがキャッチ部材66の下側に入り込むと、コイルバネ77の付勢力により、図7(c)のようにレバー部材65は元の状態に戻る。
そして、フロントフードが完全に閉まると、図7(d)に示すように、ストライカー52aはキャッチ部材66の側部に沿って降下し、底部に位置する。このとき、ストライカー52aとレバー部材65(のコブ65a)との間には、隙間Sがあるため、レバー部材65が回動し、変形するという課題があった。
【0013】
このように従来は、ロックレバー51が変形しやすいという課題があり、それを解消するためフロントフード52の意匠を制約しなければならなかった。
【0014】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、車両のフロントフードの強閉時において、フードロックレバーの振動を抑制することのできるフードロックレバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した課題を解決するために、本発明に係るフードロックレバー構造は、車両のフロントフードのロック及び解除を行うためのフードロックレバー構造であって、車両に固定されるベース部材と、前記ベース部材に対し回動自在に設けられ、前記フロントフードを閉状態から浮き上がらせた状態で、前記フロントフード側のストライカーと係止及び係止解除可能なレバー部材と、を備え、前記レバー部材は、前記ストライカーと接するキャッチ部と、車両前方側に延びるロックレバーとを有し、前記ロックレバーは、前記ベース部材の主面に平行に設けられた第1レバー部と、前記第1レバー部に対し所定の角度で車両前方側へ屈曲された第2レバー部と、前記第2レバー部に対し所定の角度で屈曲し、車両前方へ延びる第3レバー部と、前記第3レバー部の先端側に形成されたレバー先端部とを有し、前記第1レバー部と前記第2レバー部との稜線において、前記第1レバー部と前記第2レバー部の面が倒れこむ方向に、上側が鉛直方向に対し角度α傾斜し、前記第2レバー部と前記第3レバー部との稜線において、前記第2レバー部と前記第3レバー部の面が倒れこむ方向に、上側が鉛直方向に対し角度α´傾斜し、前記角度α´は、前記角度α以上であることに特徴を有する。
尚、前記ロックレバーは、所定の角度屈曲されることにより、レバー先端側が、前記レバー部材の回転軸方向に沿って車両前側に延設されていることが望ましい。
また、前記ロックレバーは立設され、各部位における断面が縦方向に長く形成されていることが望ましい。
【0016】
このように本発明によれば、部品追加することなくロックレバーに折り目(稜線)を加えた形状とすることにより、フロントフードを閉じた際にロックレバーを上方向ではなく下方向に変形させるとともに左右方向の変形を抑えることができる。更にはロックレバーの断面が縦方向に延びる形状とすることにより高さ方向の変形を抑制することができる。
したがって、ロックレバーの破損を防止し、フロントフードの意匠の自由度を広くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両のフロントフードの強閉時において、フロントフードとフードロックレバーとの干渉を抑制することのできるフードロックレバー構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係るフードロックレバー構造の全体を示す斜視図である。
図2図2は、図1のフードロックレバー構造が備えるレバー部材の平面図である。
図3図3は、図2のレバー部材の正面図である。
図4図4は、図2のレバー部材の構成を説明するための斜視図である。
図5図5(a)〜(c)は、レバー部材の変形状態及び回動の軌跡を示す図である。
図6図6は、従来のフードロック装置を説明するための斜視図である。
図7図7(a)〜(d)は、従来のフードロック装置の動作を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるフードロックレバー構造の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るフードロックレバー構造の全体を示す斜視図である。また、図2は、図1のフードロックレバー構造が備えるレバー部材の平面図であり、図3はレバー部材の正面図である。更に図4は、レバー部材の構成を説明するための斜視図である。
【0020】
図1に示す本発明に係るフードロックレバー構造は、図6に示した従来のフードロック機構に置き換えて用いることができる。
図1に示すフードロックレバー構造1は、車両ボディー側に固定されるベース部材2と、図1においてベース部材2の裏側に回動可能に設けられ、フロントフードのストライカーと係合し、これを保持するためのラッチ3と、ラッチ3の回転を固定するポール(図示せず)とを備える。
更に、ベース部材2に対し軸4を中心に回動可能に設けられたレバー部材10と、このレバー部材10の回動に付勢力を与えるコイルスプリング5とを備える。
【0021】
前記ベース部材2は、フードロックレバー構造1を車体に固定するための固定部2aと、フロントフードを開閉する際、ストライカーの通り道となる溝部2bとを有する。
また、レバー部材10は、前記溝部2bに沿って縦方向に延び、上端に鈎状部11aが形成されたキャッチ部11と、軸4から車両前方側に延びて形成されたロックレバー12とを有する。
【0022】
図2に示すようにロックレバー12は、ベース部材2の主面に平行に設けられた第1レバー部12Aと、第1レバー部12Aに対し所定の角度で車両前方側へ屈曲された第2レバー部12Bと、第2レバー部12Bに対し所定の角度で屈曲し、車両前方へ延びる第3レバー部12Cと、第3レバー部12Cの先端側に形成されたレバー先端部12Dとを有する。レバー先端部12Dには樹脂コーティングが施され、指の引っ掛かりの向上の他、フロントフードとの接触の際の衝撃を緩和するようになされている。
【0023】
図3図4に示すように、前記第1レバー部12Aと第2レバー部12Bとの稜線において、上側が角度α(例えば11.9°)だけ倒れ込むように傾斜している。また、第2レバー部12Bと第3レバー部12Cの稜線も上側が角度α´(例えば15.3°)だけ倒れ込むように傾斜している(角度α≦α´)。即ち、第2レバー部12Bは上側が下方向に倒れ込むように傾斜している。これにより、フロントフードのストライカーがキャッチ部11の鈎状部11aに当接し、レバー部材10(ロックレバー12)が回動した際、レバー先端部12Dを下方向に回動させることができる(図5(a)に回動の軌跡を破線で示す。また、従来の回動の軌跡を一点鎖線で示す。)。
【0024】
また、図2図4に示すように第2レバー部12Bに対し第3レバー部12Cが角度β(例えば29.8°)だけ屈曲し、第3レバー部12Cが車両前側方向に延設されている。これによりフロントフードのストライカーがキャッチ部11の鈎状部11aに当接し、レバー部材10(ロックレバー12)が回動した際、レバー先端部12Dの左右方向の変形を小さく抑えることができる(図5(b)に変形状態を破線で示す。また、従来の変形状態を一点鎖線で示す。)。
【0025】
さらに、例えば図2に示すようにロックレバー12は立設された状態であり、断面は縦方向に延びたものとなる。そのため、高さ方向の剛性を向上し、ロックレバー12の変形を抑制することができる(図5(c)に変形の際の軌跡を破線で示す。また、従来の変形状態、軌跡を一点鎖線で示す。)。
【0026】
このように構成されたフードロックレバー構造1において、フロントフードが強閉される場合、ストライカーがキャッチ部11の鈎状部11aに当接し、レバー部材10(ロックレバー12)が回動する。
その際、ストライカーが鈎状部11aの下側へ入り込み、第2レバー部12Bに当たっても、第2レバー部12Bの傾斜によりレバー先端部12Dは下方向に変形する(即ち、図5(a)に示したように、上方向への変形を抑制する)。
【0027】
また、第2レバー部12Bから屈曲して、第3レバー部12Cが車両前方へ延びる方向(左右の回転モーメントが抑制される方向)に形成されているため、図5(b)に示したようにレバー先端部12Dの左右の変形が小さく抑えられる。
更に、ロックレバー10の断面が縦方向に延びた形状であるため、高さ方向の剛性を向上し、図5(c)に示したようにフード閉時のレバー先端部12Dの高さ方向の変形が大きく抑制される。
【0028】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、部品追加することなくロックレバー12に折り目を加えた形状とすることにより、フロントフードを閉じた際にレバー先端部12Dを上方向ではなく下方向に変形させるとともに左右方向の変形を抑えることができる。更にはロックレバー12の断面が縦方向に延びる形状とすることにより高さ方向の変形を抑制することができる。
したがって、ロックレバー12の破損を防止し、フロントフードの意匠の自由度を広くすることができる。
【0029】
尚、前記実施の形態においては、ロックレバー12において2つの折り目(稜線)を設けた構成としたが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではなく、少なくとも1つの折り目(稜線)があればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 フードロックレバー構造
2 ベース部材
3 ラッチ
4 回転軸
5 コイルスプリング
10 レバー部材
11 キャッチ部材
11a 鈎状部
12 ロックレバー
12A 第1レバー部
12B 第2レバー部
12C 第3レバー部
12D レバー先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7