特許第6960364号(P6960364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960364
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】触媒担持用ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20211025BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20211025BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20211025BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20211025BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20211025BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20211025BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20211025BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B01J35/04 301A
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   B01J32/00ZAB
   B01J35/04 301E
   F01N3/022 C
   F01N3/035 A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-69129(P2018-69129)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-177362(P2019-177362A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2020年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 達行
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−064609(JP,A)
【文献】 特表2007−522919(JP,A)
【文献】 特開2004−169586(JP,A)
【文献】 特開2016−168582(JP,A)
【文献】 特開2010−221155(JP,A)
【文献】 特開2008−029914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 39/00 − 41/04
B01D 46/00 − 46/54
B01D 53/73 − 53/96
F01N 3/00 − 3/38
F01N 9/00 − 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一底面から第二底面まで高さ方向に延び、第一底面が開口して第二底面が目封止された複数の第一セルと、第一底面から第二底面まで高さ方向に延び、第一底面が目封止されて第二底面が開口する複数の第二セルとを備え、第一セル及び第二セルが隔壁を挟んで隣接配置されている柱状の触媒担持用ハニカム構造体であって、
前記隔壁を中央部及び連結部に区分すると、中央部における隔壁厚みよりも連結部における隔壁厚みが大きく、且つ、中央部における単位断面積当たりの初期吸水速度が連結部における単位断面積当たりの初期吸水速度よりも小さい触媒担持用ハニカム構造体。
ここで、隔壁の中央部とは、ハニカム構造体を高さ方向に垂直な断面で観察したとき、隣り合う二つのセルに挟まれた、隔壁厚み方向に垂直な方向に直線状に延びる隔壁部分を指し、隔壁の連結部とは隔壁の中央部以外の部分を指す。
【請求項2】
隔壁の中央部の単位断面積当たりの初期吸水速度は、隔壁の連結部の単位断面積当たりの初期吸水速度に対して、0.9倍以下である請求項1に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
【請求項3】
隔壁の中央部の単位断面積当たりの初期吸水速度は、隔壁の連結部の単位断面積当たりの初期吸水速度に対して、0.2倍以上である請求項1又は2に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
【請求項4】
ハニカム構造体を高さ方向に垂直な断面で観察したとき、少なくとも一部の隔壁の連結部がR面取り形状又はC面取り形状を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
【請求項5】
少なくとも一部の隔壁の中央部に疎水性物質が付着している請求項1〜4の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
【請求項6】
疎水性物質として疎水性有機ケイ素化合物及び疎水性有機化合物よりなる群から選択される一種又は二種以上が含まれる請求項5に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
【請求項7】
前記隔壁がセラミックスを基材とする請求項1〜6の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体の前記隔壁に触媒を担持させる工程を含む触媒担持ハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体の前記隔壁に触媒が担持されている触媒担持ハニカム構造体。
【請求項10】
隔壁の中央部の単位体積当たりの触媒量は、隔壁の連結部の単位体積当たりの触媒量に対して、0.7〜1.5倍である請求項9に記載の触媒担持ハニカム構造体。
【請求項11】
フィルタとして使用される請求項9又は10に記載の触媒担持ハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒担持用ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、環境汚染の原因となる炭素を主成分とするパティキュレート(粒子状物質)が多量に含まれている。そのため、一般的にディーゼルエンジン等の排気系には、パティキュレートを捕集するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)が搭載されている。また近年ではガソリンエンジンから排出されるパティキュレートも問題視されており、ガソリンエンジンにもフィルタ(Gasoline Particulate Filter:GPF)が搭載されるようになってきている。
【0003】
フィルタとしては、第一底面から第二底面まで高さ方向に延び、第一底面が開口して第二底面が目封止された複数の第一セルと、第一底面から第二底面まで高さ方向に延び、第一底面が目封止されて第二底面が開口する複数の第二セルと、第一セル及び第二セルが隔壁を挟んで隣接配置されている柱状のハニカム構造体を備えたウォールフロー式のフィルタが知られている(特許文献1)。
【0004】
このようなフィルタにおいては、フィルタ上に堆積したパティキュレートを容易に燃焼除去できるように、フィルタ表面及びその内部にパティキュレートの燃焼を補助するような触媒が担持されることが多い。フィルタへの触媒の担持方法としては、フィルタに触媒組成物スラリーを接触させた後、乾燥及び焼成する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1では、フィルタに触媒を均一に担持させるために、触媒材料を有機溶媒に分散させてスラリーを作成し、該スラリーをフィルタに適用することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−21335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィルタとして用いられるハニカム構造体は、各セルを区画形成する多数の隔壁を有するところ、隔壁の厚みは均一とは限らない。例えば、ハニカム構造体の強度向上を目的として、複数の隔壁が交差する連結部に面取り部を設けるなどして、当該部分の厚みを大きくする場合がある。
【0008】
しかしながら、本発明者の検討結果によると、連結部の厚みが大きくなるほど、連結部に触媒が担持されにくくなり、逆に、連結部間に延在する隔壁中央部に多くの触媒が担持されることを見出した。また、このように不均一にハニカム構造体に触媒が担持されることで、ハニカム構造体に流体を流したときの圧力損失が増大することを見出した。当該問題は特許文献1に記載の技術を適用しても解決できない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、複数の隔壁が交差する連結部の厚みが大きな触媒担持用ハニカム構造体であって、隔壁の連結部に触媒が担持され易い触媒担持用ハニカム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、連結部間に延在する隔壁中央部を選択的に疎水化すると、疎水化された当該隔壁部分には触媒が担持されにくくなり、相対的に連結部への触媒担持量が多くなることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0011】
[1]
第一底面から第二底面まで高さ方向に延び、第一底面が開口して第二底面が目封止された複数の第一セルと、第一底面から第二底面まで高さ方向に延び、第一底面が目封止されて第二底面が開口する複数の第二セルとを備え、第一セル及び第二セルが隔壁を挟んで隣接配置されている柱状の触媒担持用ハニカム構造体であって、
前記隔壁を中央部及び連結部に区分すると、中央部における隔壁厚みよりも連結部における隔壁厚みが大きく、且つ、中央部における単位断面積当たりの初期吸水速度が連結部における単位断面積当たりの初期吸水速度よりも小さい触媒担持用ハニカム構造体。
ここで、隔壁の中央部とは、ハニカム構造体を高さ方向に垂直な断面で観察したとき、隣り合う二つのセルに挟まれた、隔壁厚み方向に垂直な方向に直線状に延びる隔壁部分を指し、隔壁の連結部とは隔壁の中央部以外の部分を指す。
[2]
隔壁の中央部の単位断面積当たりの初期吸水速度は、隔壁の連結部の単位断面積当たりの初期吸水速度に対して、0.9倍以下である[1]に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
[3]
隔壁の中央部の単位断面積当たりの初期吸水速度は、隔壁の連結部の単位断面積当たりの初期吸水速度に対して、0.2倍以上である[1]又は[2]に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
[4]
ハニカム構造体を高さ方向に垂直な断面で観察したとき、少なくとも一部の隔壁の連結部がR面取り形状又はC面取り形状を有する[1]〜[3]の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
[5]
少なくとも一部の隔壁の中央部に疎水性物質が付着している[1]〜[4]の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
[6]
疎水性物質として疎水性有機ケイ素化合物及び疎水性有機化合物よりなる群から選択される一種又は二種以上が含まれる[5]に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
[7]
前記隔壁がセラミックスを基材とする[1]〜[6]の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体。
[8]
[1]〜[7]の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体の前記隔壁に触媒を担持させる工程を含む触媒担持ハニカム構造体の製造方法。
[9]
[1]〜[7]の何れか一項に記載の触媒担持用ハニカム構造体の前記隔壁に触媒が担持されている触媒担持ハニカム構造体。
[10]
隔壁の中央部の単位体積当たりの触媒量は、隔壁の連結部の単位体積当たりの触媒量に対して、0.7〜1.5倍である[9]に記載の触媒担持ハニカム構造体。
[11]
フィルタとして使用される[9]又は[10]に記載の触媒担持ハニカム構造体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体によれば、複数の隔壁が交差する連結部の厚みが大きな触媒担持用ハニカム構造体において、隔壁の連結部に触媒が担持され易くなるという効果が得られる。本発明の好ましい実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体によれば、複数の隔壁が交わる連結部の厚みが大きな触媒担持用ハニカム構造体において、高い均一性で触媒が隔壁に担持されるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体の模式的な斜視図である。
図2図1に係る触媒担持用ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に平行な断面の模式図である。
図3-1】図1に係る触媒担持用ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に垂直な断面構造の部分的な模式図である。
図3-2】本発明の第二実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に垂直な断面構造の部分的な模式図である。
図3-3】本発明の第三実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に垂直な断面の部分的な模式図が示されている。
図4】連結部に対する中央部の吸水速度比と、連結部に対する中央部の触媒担持量比の関係を示す。
図5】連結部に対する中央部の吸水速度比と、圧力損失の関係を示す。
図6】隔壁の連結部の面取り寸法の定義を説明する模式的な部分断面図である。
図7】初期吸水速度の測定方法を説明するための模式図である。
図8】初期吸水速度の測定のための試験片の作製方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1.触媒担持用ハニカム構造体)
(1−1 全体構造)
図1には、本発明の第一実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体の模式的な斜視図が示されている。図2には、図1に係る触媒担持用ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に平行な断面の模式図が示されている。図3−1には、図1に係る触媒担持用ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に垂直な断面構造の部分的な模式図が示されている。図3−2には、本発明の第二実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に垂直な断面構造の部分的な模式図が示されている。図3−3には、本発明の第三実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に垂直な断面構造の部分的な模式図が示されている。
【0016】
図1及び図2を参照すると、第一実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体100は、外周側壁102と、外周側壁102の内側に配設され、第一底面104から第二底面106まで延び、第一底面104が開口して第二底面106が目封止された複数の第一セル108と、外周側壁102の内側に配設され、第一底面104から第二底面106まで延び、第一底面104が目封止されて第二底面106が開口する複数の第二セル110とを備え、第一セル108及び第二セル110が隔壁112を挟んで隣接配置されている柱状のウォールフロー式触媒担持用ハニカム構造体である。
【0017】
図2を参照すると、触媒担持用ハニカム構造体100の上流側の第一底面104に粒子状物質を含むガスが供給されると、ガスは第一セル108に導入されて第一セル108内を下流に向かって進む。第一セル108は下流側の第二底面106が目封止されているため、ガスは第一セル108と第二セル110を区画する多孔質の隔壁112を透過して第二セル110に流入する。粒子状物質は隔壁112を通過できないため、第一セル108内に捕集され、堆積する。粒子状物質が除去された後、第二セル110に流入した清浄なガスは第二セル110内を下流に向かって進み、下流側の第二底面106から流出する。
【0018】
触媒担持用ハニカム構造体の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。第一実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体100の外形は円柱形状である。
【0019】
触媒担持用ハニカム構造体の底面の大きさは特に制限はない。しかしながら、大きい方が触媒担持量を大きくできる一方で、大きすぎると底面内の排気ガス温度分布不均一などによる耐熱衝撃性の悪化や、触媒担体をコンバーターに把持する際のキャニング時の破壊が発生しやすくなるため、底面の面積が5000〜200000mm2であることが好ましく、6500〜125000mm2であることがより好ましく、8000〜75000mm2であることが更により好ましい。
【0020】
(1−2 隔壁)
図3−1を参照すると、第一実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体100においては、断面略正方形の第一セル108及び第二セル110が隔壁112を挟んで市松模様状に交互に隣接配置されている。
【0021】
図3−2を参照すると、第二実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体においては、断面略正六角形の第一セル108及び第二セル110が隔壁112を挟んで隣接配置されている。より詳細には、断面略正六角形の一つの第二セル110の各辺に隣接して断面略正六角形の六つの第一セル108が配置されている。
【0022】
図3−3を参照すると、第三実施形態に係る触媒担持用ハニカム構造体においては、断面略八角形の第一セル108と、断面略正方向の第二セル110が隔壁112を挟んで交互に隣接配置されている。
【0023】
隔壁112は、中央部112a及び連結部112bを有する。本発明に係る触媒担持用ハニカム構造体においては、中央部112aにおける隔壁厚みよりも連結部112bにおける隔壁厚みが大きい。当該構成によって、ハニカム構造体の強度向上を図ることができる。
【0024】
隔壁112の中央部112aとは、ハニカム構造体を高さ方向に垂直な断面で観察したとき、隣り合う二つのセル(108、110)に挟まれた、隔壁厚み方向に垂直な方向に直線状に延びる隔壁部分を指し、隔壁の連結部112bは、複数の隔壁112が交差する部分であり、隔壁の中央部112a以外の部分を指す。
【0025】
連結部112bの隔壁厚みを中央部112aの隔壁厚みよりも大きくする方法としては、ハニカム構造体を高さ方向に垂直な断面で観察したときのセルの断面形状を、角部が面取りされた多角形とする方法が挙げられる。従って、連結部112bは一実施形態において、ハニカム構造体を高さ方向に垂直な断面で観察したとき、少なくとも一部の隔壁の連結部がR面取り形状又はC面取り形状を有することができ、好ましくはすべての隔壁の連結部がR面取り形状又はC面取り形状を有することができる。図3−1〜図3−3においては、隔壁の連結部はR面取り形状を有する。
【0026】
図3−1〜図3−3を参照すると、隔壁の厚みは、ハニカム構造体を高さ方向に垂直な断面で観察したとき、隣り合う二つのセルに挟まれた隔壁についての、これらのセルの重心同士を結ぶ方向(「隔壁厚み方向」という。図中の両矢印の方向)の隔壁の長さを指す。
【0027】
隔壁112の中央部112aの厚みは特に制限はない。しかしながら、ハニカム構造体の強度を高めるという観点から、隔壁の中央部112aの厚みは0.1mm以上であることが好ましく、0.12mm以上であることがより好ましく、0.15mm以上であることが更により好ましい。また、隔壁112の中央部112aの厚みは圧力損失を抑制するという観点から0.5mm以下であることが好ましく、0.45mm以下であることがより好ましく、0.4mm以下であることが更により好ましい。
【0028】
隔壁112の連結部112bの面取り寸法は、ハニカム構造体の強度を高めるという観点から、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.15mm以上であることが更により好ましい。また、隔壁112の連結部112bの面取り寸法は圧力損失を抑制するという観点から0.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましく、0.35mm以下であることが更により好ましい。図6を参照すると、面取り寸法とは、R面取りの場合(図6(a))は面取り半径Rを指し、C面取りの場合(図6(b))は面取り形状が存在しないと仮定したときの隣り合う二つの中央部112aの交点Aからの仮想的な切り取り長さCを指す。
【0029】
隔壁112はセラミックスで構成することができる。隔壁に好適なセラミックスの材質に特に制限はないが、炭化珪素、コージェライト、珪素−炭化珪素複合材、コージェライト−炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ジルコン、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア、シリカ−アルミナ等のセラミックが挙げられ、炭化珪素、コージェライト、珪素−炭化珪素複合材料、コージェライト−炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ及びチタン酸アルミニウムから構成される群から選択される少なくとも1種を含むものが好ましいる。
【0030】
隔壁112は多孔質とすることができる。この場合、隔壁の気孔率は、圧力損失を低く抑えるという観点から、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更により好ましい。また、隔壁の気孔率は、ハニカム構造体の強度を確保するという観点から、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、68%以下であることが更により好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータを用いて、JIS R1655:2003に準拠して水銀圧入法によって測定される。
【0031】
隔壁112が多孔質の場合、その平均細孔径は、圧力損失を低く抑えるという観点から5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、9μm以上であることが更により好ましい。また、隔壁の平均細孔径は、捕集効率を高めるという観点から、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更により好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0032】
隔壁の連結部112bの厚みが隔壁の中央部112aの厚みに比べて大きくなるほど、連結部112bに触媒が担持されにくくなる一方で、中央部112aに多くの触媒が担持されてしまう。不均一にハニカム構造体に触媒が担持されると、ハニカム構造体に流体を流したときの圧力損失が大きくなる。
【0033】
そこで、相対的に多くの触媒が連結部に担持されるように、中央部における単位断面積当たりの初期吸水速度を、連結部における単位断面積当たりの初期吸水速度よりも小さくすることが望ましい。隔壁の中央部112aの単位断面積当たりの初期吸水速度は、隔壁の連結部112bの単位断面積当たりの初期吸水速度に対して、0.9倍以下であることが好ましく、0.85倍以下であることがより好ましく、0.7倍以下であることが更により好ましい。
【0034】
一方、中央部における単位断面積当たりの初期吸水速度が連結部における単位断面積当たりの初期吸水速度に比べて過度に小さくなると、中央部への触媒担持量が少なくなり過ぎて、逆に連結部の触媒担持量のほうが多くなる。そこで、中央部及び連結部に均一に触媒を担持するという観点から、隔壁の中央部の単位断面積当たりの初期吸水速度は、隔壁の連結部の単位断面積当たりの初期吸水速度に対して、0.2倍以上であることが好ましく、0.3倍以上であることがより好ましく、0.4倍以上であることが更により好ましい。
【0035】
隔壁の中央部112a及び連結部112bにおける単位断面積当たりの初期吸水速度の測定手順について説明する。測定対象となる触媒担持用ハニカム構造体から、ハニカム構造体の高さ方向(セルの延びる方向)に50mmの寸法を有する、1つの流路又は複数の流路をもった試験片701を採取する(図8(a)参照)。試験片701について、下面側を長さ20mmの距離まで連結部112bのみ(図8(b)参照)、又は中央部112aのみ(図8(c)参照)となるように加工する。次いで、加工後の試験片701を図7に示すように50mmの長さ方向が鉛直方向となるように、吊り下げ式の重量計702で吊し、下面を水面に接触させる。このとき、下面が水に接触してから0.5秒の間の試験片701の増加重量(=吸水重量)を求め、これを加工後の試験片下面の総面積で除し、当該試験片(中央部又は連結部)の単位断面積当たりの初期吸水速度[g/秒/mm2]とする。
【0036】
隔壁の初期吸水速度の調整方法には制限はない。例えば、隔壁の材質や気孔率を連結部と中央部によって変える方法、並びに、疎水性物質が付着した隔壁は初期吸水速度が遅くなることを利用して、隔壁の中央部に選択的(本明細書において、選択的というのは優先的であることを含む概念である。)に疎水性物質を付着させる方法がある。これらの中でも、製造コスト及び簡便性の観点から、隔壁の中央部に選択的に疎水性物質を付着させる方法が好ましい。隔壁の中央部に選択的に疎水性物質を付着させることで、通常は触媒が担持されやすい隔壁の中央部に触媒が担持され難くなる。
【0037】
従って、本発明に係る触媒担持用ハニカム構造体の一実施形態においては、少なくとも一部の隔壁の中央部に疎水性物質が付着している。疎水性物質としては、隔壁の初期吸水速度を低下させる効果を奏する限り、特に制限はない。疎水性物質としては、例えば、疎水性有機ケイ素化合物及び疎水性有機化合物よりなる群から選択される一種又は二種以上が挙げられる。典型的には、疎水性物質は、水に対する溶解性が低く、水と分相を形成することができる物質である。疎水性物質は、オクタノール/水分配係数LogP値が1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることが更により好ましく、例えば1〜20とすることができる。
【0038】
好適に使用可能な疎水性有機ケイ素化合物としては、シラン系、シリコネート系、シリコーン系及びシラン複合系の撥水剤が挙げられる。
【0039】
好適に使用可能な疎水性有機化合物としては、アルコール、エーテル及びケトン等の脂肪族化合物、並びに、芳香族化合物が挙げられる。これらの中でも、疎水性を高めるという理由により、分子量の大きな、例えば分子量が100以上、好ましくは150以上の芳香族化合物が好ましい。
【0040】
(1−3 セル)
触媒担持用ハニカム構造体のセルの延びる方向(高さ方向)の長さは、特に制限はない。しかしながら、長い方が触媒担持量を増やすことができる一方で、長すぎると耐熱衝撃性が低下するため、50〜400mmであることが好ましく、60〜350mmであることがより好ましく、70〜310mmであることが更により好ましい。
【0041】
セルの延びる方向(ハニカム構造体の高さ方向)に直交する断面におけるセルの形状に制限はないが、角部を面取り形状にしていないと仮定したときの形状が、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、フィルタとして使用したときの浄化性能が優れたものとなる。
【0042】
触媒担持用ハニカム構造体のセルピッチは、特に制限はない。しかしながら、圧力損失を小さくするという観点からは、セルピッチが1.0mm以上であることが好ましく、1.2mm以上であることがより好ましく、1.3mm以上であることが更により好ましい。但し、隔壁の表面積を大きくして捕集面積を大きくし、また、パティキュレート堆積時の圧力損失上昇を抑えるという観点からは、セルピッチは3.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましく、2.0mm以下であることが更により好ましい。ここで、図3−1〜図3−3を参照すると、セルピッチとは、セルの延びる方向(ハニカム構造体の高さ方向)に垂直な断面において、隣接する二つのセルの重心同士を結ぶ線分の長さDを指す。
【0043】
(2.触媒担持用ハニカム構造体の製造方法)
本発明に係る触媒担持用ハニカム構造体の製造方法の好適な例を以下に説明する。本発明に係る触媒担持用ハニカム構造体の製造方法は一実施形態において、第一底面から第二底面まで延び、第一底面が開口して第二底面が目封止された複数の第一セルと、隔壁を挟んで第一セルに隣接配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面が目封止されて第二底面が開口する複数の第二セルとを備えた柱状の触媒担持用ハニカム構造体のセル内に疎水性物質を含有する流体を流すことを含む。
【0044】
(2−1 ハニカム構造体の作製)
まず、第一底面から第二底面まで延び、第一底面が開口して第二底面が目封止された複数の第一セルと、隔壁を挟んで第一セルに隣接配置され、第一底面から第二底面まで延び、第一底面が目封止されて第二底面が開口する複数の第二セルとを備えた柱状の触媒担持用ハニカム構造体を作製する。このような柱状の触媒担持用ハニカム構造体自体は公知の任意の製法により作製すればよい。
【0045】
従って、柱状の触媒担持用ハニカム構造体の製造方法は一実施形態において、外周側壁と、外周側壁の内側に配設され、第一の底面から第二の底面まで延びる複数のセルとを有する柱状ハニカム成形体を製造する工程を含む。
【0046】
柱状ハニカム成形体は、セラミックス原料、分散媒、造孔材及びバインダーを含有する原料組成物を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形することにより作製可能である。原料組成物中には分散材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0047】
セラミックス原料は、焼成後に残存し、セラミックスとしてハニカム構造体の骨格を構成する部分の原料である。セラミックス原料は例えば粉末の形態で提供することができる。セラミックス原料としては、炭化珪素、コージェライト、珪素−炭化珪素複合材、コージェライト−炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ジルコン、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア、シリカ−アルミナ等のセラミックスを得るための原料が挙げられる。具体的には、限定的ではないが、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナ、カオリン、蛇紋石、パイロフェライト、ブルーサイト、ベーマイト、ムライト、マグネサイト等が挙げられる。セラミックス原料は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。DPF及びGPF等のフィルタ用途の場合、炭化珪素、コージェライト、珪素−炭化珪素複合材料、コージェライト−炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ及びチタン酸アルミニウムを好適に使用することができる。
【0048】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば、特に限定されず、例えば、小麦粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル、炭素(例:グラファイト)、セラミックバルーン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、フェノール、発泡済発泡樹脂、未発泡発泡樹脂等を挙げることができる。造孔材は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。造孔材の含有量は、ハニカム構造体の気孔率を高めるという観点からは、セラミックス原料100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であるのがより好ましく、3質量部であるのが更により好ましい。造孔材の含有量は、ハニカム構造体の強度を確保するという観点からは、セラミックス原料100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であるのがより好ましく、4質量部以下であるのが更により好ましい。
【0049】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。また、バインダーの含有量は、ハニカム成形体の強度を高めるという観点から、セラミックス原料100質量部に対して4質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であるのがより好ましく、6質量部以上であるのが更により好ましい。バインダーの含有量は、焼成工程での異常発熱によるキレ発生を抑制する観点から、セラミックス原料100質量部に対して9質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であるのがより好ましく、7質量部以下であるのが更により好ましい。バインダーは、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0050】
分散材には、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等の界面活性剤を用いることができる。分散材は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。分散材の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して0〜2質量部であることが好ましい。
【0051】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0052】
乾燥工程が実施される前のハニカム成形体の水の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して、20〜90質量部であることが好ましく、60〜85質量部であることがより好ましく、70〜80質量部であることが更により好ましい。ハニカム成形体の水の含有量が、セラミックス原料100質量部に対して、20質量部以上であることで、ハニカム成形体の品質が安定し易いという利点が得られやすい。ハニカム成形体の水の含有量が、セラミックス原料100質量部に対して、90質量部以下であることで、乾燥時の収縮量が小さくなり、変形を抑制することができる。本明細書において、ハニカム成形体の水の含有量は、乾燥減量法により測定される値を指す。
【0053】
ハニカム成形体の底面を目封止する方法は、特に限定されるものではなく、周知の手法を採用することができる。目封止部の材料については、特に制限はないが、強度や耐熱性の観点からセラミックスであることが好ましい。セラミックスとしては、炭化珪素、コージェライト、珪素−炭化珪素複合材、コージェライト−炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ジルコン、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア、シリカ−アルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックス料であることが好ましい。目封止部はこれらのセラミックスを合計で50質量%以上含む材料で形成されていることが好ましく、80質量%以上含む材料で形成されていることがより好ましい。焼成時の膨張率を同じにでき、耐久性の向上につながるため、目封止部はハニカム成形体の本体部分と同じ材料組成とすることが更により好ましい。
【0054】
柱状のハニカム成形体を乾燥した後、脱脂及び焼成を実施することで柱状の触媒担持用ハニカム構造体を作製することができる。乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程の条件はハニカム成形体の材料組成に応じて公知の条件を採用すればよく、特段に説明を要しないが以下に具体的な条件の例を挙げる。
【0055】
乾燥工程においては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。なかでも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。目封止部を形成する場合は、乾燥したハニカム成形体の両底面に目封止部を形成した上で目封止部を乾燥し、ハニカム乾燥体を得る。
【0056】
目封止部の形成方法について例示的に説明する。目封止スラリーを、貯留容器に貯留しておく。次いで、目封止部を形成すべきセルに対応する箇所に開口部を有するマスクを一方の底面に貼る。マスクを貼った底面を、貯留容器中に浸漬して、開口部に目封止スラリーを充填して目封止部を形成する。他方の底面についても同様の方法で目封止部を形成することができる。
【0057】
次に脱脂工程について説明する。バインダーの燃焼温度は200℃程度、造孔材の燃焼温度は300〜1000℃程度である。従って、脱脂工程はハニカム成形体を200〜1000℃程度の範囲に加熱して実施すればよい。加熱時間は特に限定されないが、通常は、10〜100時間程度である。脱脂工程を経た後のハニカム成形体は仮焼体と称される。
【0058】
焼成工程は、ハニカム成形体の材料組成にもよるが、例えば仮焼体を1350〜1600℃に加熱して、3〜10時間保持することで行うことができる。
【0059】
(2−2 疎水性物質の付着)
次いで、柱状の触媒担持用ハニカム構造体のセル内に疎水性物質を含有する流体を流す。疎水性物質を含有する流体は、例えば、溶液状、スラリー状又は煙状の流体とすることができる。疎水性物質は粒子状の形態で提供することが、隔壁の中央部に捕集されやすいという理由により好ましい。
【0060】
疎水性物質を含有する流体を一方の底面から第一セル(又は第二セル)内に流すと、当該流体は、第一セル(又は第二セル)を流れた後、厚みの大きな連結部よりも厚みの小さな隔壁の中央部を通って第二セル(又は第一セル)へと移動し、第二セルから流出する。従って、隔壁の中央部に疎水性物質が付着し易い。疎水性物質が付着して疎水化した隔壁の中央部は、初期吸水速度が低くなる。また、使用する疎水性物質の付着量及び疎水性物質のLogP値等を調整することで、初期吸水速度の低下度合いを制御可能である。疎水性物質を含有する流体は一方の底面のみならず、他方の底面から流してもよい。
【0061】
(3 触媒担持ハニカム構造体の製造方法)
本発明の一側面によれば、本発明に係る触媒担持用ハニカム構造体の前記隔壁に触媒を担持させる工程を含む触媒担持ハニカム構造体の製造方法が提供される。
【0062】
本発明に係る触媒担持用ハニカム構造体においては、通常であれば多くの触媒が担持されやすい隔壁の中央部の初期吸水速度が小さいため、隔壁の中央部に触媒が過剰に担持されるのを抑制可能であり、好ましい実施形態においては、隔壁の中央部及び隔壁の連結部における触媒担持量の均一性を高めることが可能である。具体的には、本発明に係る触媒担持用ハニカム構造体の一実施形態によれば、隔壁の中央部の単位体積当たりの触媒量を、隔壁の連結部の単位体積当たりの触媒量に対して、0.7〜1.5倍とすることができ、好ましくは0.8〜1.4倍とすることができ、より好ましくは0.9〜1.1倍とすることができる。
【0063】
隔壁に触媒を担持させる工程は、例えば、隔壁の中央部及び隔壁の連結部の両方に触媒組成物スラリーを接触させた後に、乾燥及び焼成する方法が挙げられる。
【0064】
触媒組成物スラリーは、その用途に応じて適切な触媒を含有することが望ましい。触媒としては、限定的ではないが、煤、窒素酸化物(NOx)、可溶性有機成分(SOF)、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)等の汚染物質を除去するための酸化触媒、還元触媒及び三元触媒が挙げられる。特に、本発明に係るハニカム構造体をDPF又はGPFといったフィルタとして用いる場合、排気ガス中の煤及びSOF等のパティキュレート(PM)がフィルタに捕集されるため、パティキュレートの燃焼を補助するような触媒を担持することが好ましい。触媒は、例えば、貴金属(Pt、Pd、Rh等)、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)、希土類(Ce、Sm、Gd、Nd、Y、Zr、Ca、La、Pr等)、遷移金属(Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Ti、V、Cr等)等を適宜含有することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0066】
(1.ハニカム構造体の用意)
直径118.4mm×高さ152.4mmの円柱状で、目封じ深さ5mmのコージェライト製のウォールフロー式ハニカム構造体を下記の各試験に使用するのに十分な数だけ作製した。当該ハニカム構造体の隔壁は、中央部の厚みが0.22mm、連結部の面取り計状部の半径Rが0.25mm、気孔率が62%、平均細孔径が17μmであった。当該ハニカム構造体のセル断面形状はR面取りされた正方形、セルピッチは1.47mmであった。
【0067】
(2.疎水性物質の付着)
上記で用意したハニカム構造体に対して、第一底面側から第二底面側に向かって、粒状の疎水性物質(シリコーン粒子)を0.2g/L濃度で含有する常温の空気を流量15L/分で流した。試験番号に応じて当該空気の流通時間を変えた。各試験番号における当該空気の流通時間は、実施例2における時間を1とした比で表1に示す。なお、実施例2において当該空気を流した時間は20秒であった。比較例1に対しては、疎水性物質を含有する空気は流さなかった。
【0068】
(3.初期吸水速度の測定)
疎水性物質を付着させたハニカム構造体(実施例1〜8)及び疎水性物質を付着させなかったハニカム構造体(比較例1)のそれぞれについて、隔壁の中央部及び連結部からそれぞれ初期吸水速度測定用の試験片を採取し、先述した測定手順に従って、単位断面積当たりの初期吸水速度を測定し、連結部に対する中央部の吸水速度比を求めた。結果を表1に示す。
【0069】
(4.触媒担持)
上と同様の手順で疎水性物質を付着させたハニカム構造体(実施例1〜8)及び疎水性物質を付着させなかったハニカム構造体(比較例1)を別途用意した。それぞれのハニカム構造体全体を、三元触媒を含有する触媒組成物スラリーに10秒間浸漬し、その後に引き上げた。次いで、このようにして触媒組成物スラリーが塗布された各ハニカム構造体を大気雰囲気下で450℃×3時間加熱し、触媒を焼き付けた。
【0070】
(5.触媒担持量の測定)
上記手順で触媒を焼き付けた後の各ハニカム構造体について、初期吸水速度測定における採取方法と同様の方法で、中央部及び連結部からそれぞれ試験片を採取した。試験片の重量及び外形寸法に基づく体積から、触媒担持後の試験片密度(触媒担持後密度)を中央部及び連結部のそれぞれについて算出した。
【0071】
また、上記で用意したハニカム構造体(疎水性物質の付着前)を別途用意し、当該ハニカム構造体の中央部及び連結部の密度(触媒担持前密度)をそれぞれ算出した。次いで、試験番号毎に、先に算出した触媒担持後の中央部及び連結部のそれぞれについての触媒担持後密度と触媒担持前密度の差を求め、中央部及び連結部のそれぞれについて単位体積当たりの触媒担持量を算出し、連結部に対する中央部の触媒担持量比を求めた。なお、疎水性物質は非常に微量であり、疎水性物質の重量は考慮しなくてよい。結果を表1に示す。また、連結部に対する中央部の吸水速度比と、連結部に対する中央部の触媒担持量比の関係を図4に示す。
【0072】
(6.圧力損失の測定)
上記手順で触媒を焼き付けた後の各ハニカム構造体について、第一底面側から第二底面側に向かって、室温の空気を10m3/分の流量で流し、入口及び出口の間における圧力損失を求めた。各試験番号における圧力損失は、比較例1における値を100とした比で表1に示す。また、連結部に対する中央部の吸水速度比と、圧力損失の関係を図5に示す。なお、比較例1における圧力損失の値は7kPaであった。
【0073】
【表1】
【符号の説明】
【0074】
100、200 触媒担持用ハニカム構造体
102 外周側壁
104 第一の底面
106 第二の底面
108 第一セル
110 第二セル
112 隔壁
112a 中央部
112b 連結部
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6
図7
図8