(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960372
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】FRPの最適化システム、FRPの最適化装置、FRPの信頼性評価方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20211025BHJP
【FI】
G06F30/20
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-90051(P2018-90051)
(22)【出願日】2018年5月8日
(65)【公開番号】特開2019-197320(P2019-197320A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2021年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 宗太
(72)【発明者】
【氏名】吉村 侯泰
【審査官】
真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−305105(JP,A)
【文献】
特開2004−110793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/20
G06F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部材としてのFRP(繊維強化樹脂)の仕様を決定するFRPの最適化システムであって、
前記最適化システムは、1つ以上の演算装置を備え、
前記演算装置は、前記最適化システムに入力されるFRPの仕様に応じて機械的な特性を算出する第1の計算手段と、
前記入力されたFRPの仕様よりも少ない積層枚数で前記特性と等価な特性を与える仮想的な仕様を決定する第2の計算手段と、を有し、
前記第2の計算手段から得られる仮想的な仕様を用いて前記FRPを含む機械構造物に作用する外力に対する前記機械構造物の応答を解析し、前記応答と前記入力されたFRPの仕様とを用いて前記FRPに生じる応力を算出し、前記応力を用いてFRPの信頼性を評価し、前記評価の結果に基づき前記機械構造物のFRPの仕様を決定することを特徴とするFRPの最適化システム。
【請求項2】
請求項1に記載のFRPの最適化システムであって、
前記演算装置は、前記FRPを含む機械構造物の稼働情報を格納した第1のデータベースを備え、
前記稼働情報を前記第1のデータベースから抽出し、前記稼働情報を用いて前記機械構造物の応答を解析し、前記応答と前記入力されたFRPの仕様とを用いて前記FRPに生じる応力を算出し、前記応力を用いてFRPの信頼性を評価し、前記評価の結果に基づき前記機械構造物のFRPの仕様を決定することを特徴とする最適化システム。
【請求項3】
請求項1に記載のFRPの最適化システムであって、
前記演算装置は、前記FRPの既存の仕様を格納した第2のデータベースを備え、
前記評価の結果および前記第2のデータベースから抽出した前記既存の仕様に基づき前記機械構造物のFRPの仕様を決定することを特徴とする最適化システム。
【請求項4】
請求項1に記載のFRPの最適化システムであって、
前記演算装置は、FRPを含む機械構造物において損傷の生じる位置を予測する損傷位置予測手段を備え、
前記損傷位置予測手段の予測結果に基づき前記機械構造物のFRPの仕様を決定することを特徴とする最適化システム。
【請求項5】
構造部材としてのFRP(繊維強化樹脂)の仕様を決定するFRPの最適化装置であって、
FRPの仕様を入力する入力部と、
対象となる機械構造物のFRPの仕様を決定する演算処理部と、を備え、
前記演算処理部は、
前記入力部から入力されたFRPの仕様に基づきFRPの機械的特性を算出する第1の計算手段と、
前記第1の計算手段により算出された機械的特性に基づき仮想的な積層仕様を算出する第2の計算手段と、
前記第2の計算手段により算出された仮想的な積層仕様に基づきFRPを含む機械構造物に作用する外力に対する前記機械構造物の応答を解析する応答解析手段と、
前記応答解析手段により解析した前記機械構造物の応答と、前記入力部から入力されたFRPの仕様に基づきFRPに生じる応力を算出する応力計算手段と、
前記応力計算手段により算出した応力に基づきFRPの信頼性と相関のある信頼性パラメータを算出する信頼性パラメータ計算手段と、
前記信頼性パラメータ計算手段により算出した信頼性パラメータの値に基づき前記機械構造物のFRPの仕様の最適値を算出する最適値計算手段と、
を備えることを特徴とするFRPの最適化装置。
【請求項6】
請求項5に記載のFRPの最適化装置であって、
前記FRPを含む機械構造物の稼働情報を格納した第1のデータベースをさらに備えることを特徴とするFRPの最適化装置。
【請求項7】
請求項5に記載のFRPの最適化装置であって、
前記FRPの既存の仕様を格納した第2のデータベースをさらに備えることを特徴とするFRPの最適化装置。
【請求項8】
請求項5に記載のFRPの最適化装置であって、
前記FRPを含む機械構造物において損傷の生じる位置を予測する損傷位置予測手段をさらに備えることを特徴とするFRPの最適化装置。
【請求項9】
構造部材としてのFRP(繊維強化樹脂)の信頼性を評価するFRPの信頼性評価方法であって、
(a)FRPの仕様を入力するステップと、
(b)前記(a)ステップで入力したFRPの仕様に基づきFRPの機械的特性を算出するステップと、
(c)前記(a)ステップで入力したFRPの仕様よりも少ない積層枚数で等価な機械的特性を与える仮想的な積層仕様を算出するステップと、
(d)前記(c)ステップで算出した仮想的な積層仕様に基づきFRPを含む機械構造物に作用する外力に対する前記機械構造物の応答を解析するステップと、
(e)前記(d)ステップで解析した前記機械構造物の応答と、前記(a)ステップで入力したFRPの仕様に基づきFRPに生じる応力を算出するステップと、
(f)前記(e)ステップで算出した応力に基づきFRPの信頼性と相関のある信頼性パラメータを算出するステップと、
を有することを特徴とするFRPの信頼性評価方法。
【請求項10】
請求項9に記載のFRPの信頼性評価方法であって、
前記(c)ステップと前記(d)ステップの間に、
(g)前記FRPを含む機械構造物の稼働情報を抽出するステップを有し、
前記稼働情報に基づき前記機械構造物の応答を解析することを特徴とするFRPの信頼性評価方法。
【請求項11】
請求項9に記載のFRPの信頼性評価方法であって、
前記(e)ステップと前記(f)ステップの間に、
(h)前記機械構造物における損傷の発生確率を算出するステップと、
(i)前記(h)ステップで算出した損傷の発生確率に基づき前記機械構造物における損傷発生部位を特定するステップと、
を有することを特徴とするFRPの信頼性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRPを含む複合材の強度設計に係り、特に、構造部材としてのFRPの最適化及び信頼性評価に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に環境意識が高まっている中、鉄道車両や建設機械、風力発電装置などの機械構造物の軽量化は、エネルギ消費量の低減に大きく貢献するため、非常に重要な課題となっている。このような背景から、機械構造物を構成する様々な部材において、金属材料と比較して比強度・比剛性に優れる繊維強化樹脂(Fiber-Reinforced Plastics:以降、FRPと記す)に代表される複合材の適用が広がっている。
【0003】
FRPを構造部材に適用するには、FRP自体の厚肉化や異材との接合による強度剛性の増加が必要となる。特に、異材との接合信頼性は、材料コスト抑制の面でも重要な課題である。一般的にFRPは繊維方向の異なる層を積み重ねた多層構造となっており、積層枚数や繊維の方向などの仕様が、FRPの機械的特性を決定する。また、この仕様は、FRPを用いた機械構造物全体の信頼性や接合部の信頼性にも大きく影響する。
【0004】
機械構造物の信頼性を評価する手法の一つとして、有限要素解析を利用した構造解析により、外力に対する構造の応答を解析する方法が広く用いられている。有限要素解析を用いた構造解析により、FRPを用いた機械構造物の応答を解析する方法として、シェル要素を用いた方法がある(例えば、特許文献1)。シェル要素は、多層構造を厚さの無い1層の要素でモデル化するため、計算負荷の低減や計算モデルの作成に要する時間の削減などの利点がある。その一方で、厚さを考慮しない方法であるために、厚肉のFRPに生じる応力評価の精度が低下する場合や、接合部に空間的なギャップを生じ、接合部の信頼性評価の精度が低下する場合がある。
【0005】
有限要素解析を利用した構造解析においては、厚みを考慮したソリッド要素を用いる方法もある。ソリッド要素を用いる場合、接合部に空間的なギャップは生じないため、接合部の信頼性評価の精度を維持できる。しかし、多層構造をソリッド要素でモデル化する場合、積層構成の修正・変更を計算モデルに反映することに多大な時間を要することや、積層構成を詳細にモデル化すると計算負荷が増大するといった課題がある。このため、これらの手法では効率的にFRPの信頼性を評価することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−110793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、FRPを用いた機械構造物の信頼性評価において、シェル要素を用いた解析は、計算負荷の低減や計算モデル作成に要する時間の削減などの利点がある一方で、接合部の信頼性評価において精度低下の課題がある。
【0008】
また、ソリッド要素を用いた解析は、接合部の信頼性評価においては精度を維持できるものの、計算負荷の増加や計算モデル作成に要する時間の増大といった課題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、構造部材としてFRPを用いる機械構造物全体およびその接合部の信頼性向上に最も適したFRPの仕様を効率的に決定可能なFRPの最適化システム及びFRPの最適化装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、構造部材であるFRPの信頼性を精度良く評価可能なFRPの信頼性評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、構造部材としてのFRP(繊維強化樹脂)の仕様を決定するFRPの最適化システムであって、前記最適化システムは、1つ以上の演算装置を備え、前記演算装置は、前記最適化システムに入力されるFRPの仕様に応じて機械的な特性を算出する第1の計算手段と、前記入力されたFRPの仕様よりも少ない積層枚数で前記特性と等価な特性を与える仮想的な仕様を決定する第2の計算手段と、を有し、前記第2の計算手段から得られる仮想的な仕様を用いて前記FRPを含む機械構造物に作用する外力に対する前記機械構造物の応答を解析し、前記応答と前記入力されたFRPの仕様とを用いて前記FRPに生じる応力を算出し、前記応力を用いてFRPの信頼性を評価し、前記評価の結果に基づき前記機械構造物のFRPの仕様を決定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、構造部材としてのFRP(繊維強化樹脂)の仕様を決定するFRPの最適化装置であって、FRPの仕様を入力する入力部と、対象となる機械構造物のFRPの仕様を決定する演算処理部と、を備え、前記演算処理部は、前記入力部から入力されたFRPの仕様に基づきFRPの機械的特性を算出する第1の計算手段と、前記第1の計算手段により算出された機械的特性に基づき仮想的な積層仕様を算出する第2の計算手段と、前記第2の計算手段により算出された仮想的な積層仕様に基づきFRPを含む機械構造物に作用する外力に対する前記機械構造物の応答を解析する応答解析手段と、前記応答解析手段により解析した前記機械構造物の応答と、前記入力部から入力されたFRPの仕様に基づきFRPに生じる応力を算出する応力計算手段と、前記応力計算手段により算出した応力に基づきFRPの信頼性と相関のある信頼性パラメータを算出する信頼性パラメータ計算手段と、前記信頼性パラメータ計算手段により算出した信頼性パラメータの値に基づき前記機械構造物のFRPの仕様の最適値を算出する最適値計算手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、構造部材としてのFRP(繊維強化樹脂)の信頼性を評価するFRPの信頼性評価方法であって、(a)FRPの仕様を入力するステップと、(b)前記(a)ステップで入力したFRPの仕様に基づきFRPの機械的特性を算出するステップと、(c)前記(a)ステップで入力したFRPの仕様よりも少ない積層枚数で等価な機械的特性を与える仮想的な積層仕様を算出するステップと、(d)前記(c)ステップで算出した仮想的な積層仕様に基づきFRPを含む機械構造物に作用する外力に対する前記機械構造物の応答を解析するステップと、(e)前記(d)ステップで解析した前記機械構造物の応答と、前記(a)ステップで入力したFRPの仕様に基づきFRPに生じる応力を算出するステップと、(f)前記(e)ステップで算出した応力に基づきFRPの信頼性と相関のある信頼性パラメータを算出するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構造部材としてFRPを用いる機械構造物全体およびその接合部の信頼性向上に最も適したFRPの仕様を効率的に決定可能なFRPの最適化システム及びFRPの最適化装置を実現することができる。
【0015】
また、構造部材であるFRPの信頼性を精度良く評価可能なFRPの信頼性評価方法を実現することができる。
【0016】
これにより、FRPを含む機械構造物の信頼性向上に最も適したFRPの仕様を効率的に決定することが可能となり、機械構造部の信頼性向上を図ることができる。
【0017】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る最適化システムの処理フローを示すフローチャートである。(実施例1)
【
図3】本発明の一実施形態に係る最適化システムを備えた装置を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る最適化システムにおける最適値の表示例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る最適化システムの処理フローを示すフローチャートである。(実施例2)
【
図6】本発明の一実施形態に係る最適化システムの処理フローを示すフローチャートである。(実施例3)
【
図7】本発明の一実施形態に係る最適化システムの処理フローを示すフローチャートである。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において、同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0020】
図1から
図4を参照して、実施例1のFRPの最適化システム及びそれを備える装置、FRPの信頼性評価方法について説明する。
図1は本実施例の最適化システムの処理フローを示すフローチャートである。
図2は積層モデルの一例であり、現実の積層とそれよりも積層数の少ない仮想的な積層の例を概念的に示している。
図3は本実施例の最適化システムを備えた装置を示す概略構成図である。
図4は最適値の表示例である。
【0021】
本実施例のFRPの最適化システム1は、
図1に示すように、主要な構成として演算装置2を備えている。本システムでは、入力装置(図示せず)を用いて、先ずFRPの仕様を設定(演算装置2に入力)する。(ステップS1)
次に、ステップS1で設定したFRPの仕様に応じてFRPの機械的特性を算出する。(ステップS2)
続いて、ステップS1で設定したFRPの仕様よりも少ない積層枚数で等価な機械的特性を与える仮想的な積層仕様を決定(計算)する。(ステップS3)
続いて、ステップS3で決定(計算)した仮想的な積層仕様を用いて、FRPを含む機械構造物3に作用する外力4に対する機械構造物3の応答を解析する。(ステップS4)
図1では機械構造物3の例として鉄道車両を示している。
【0022】
続いて、ステップS4で解析した機械構造物3の応答と、ステップS1で設定したFRPの仕様を用いてFRPに生じる応力を算出する。(ステップS5)
続いて、ステップS5で算出した応力を用いてFRPの信頼性と相関のあるパラメータ(以降、信頼性パラメータと記す)を評価(計算)する。(ステップS6)
続いて、ステップS6で評価(計算)した信頼性パラメータの値を用いて機械構造物3の信頼性向上に最も適したFRPの仕様の最適値を探索(計算)する。(ステップS7)
最後に、ステップS7で探索(計算)したFRPの仕様の最適値を外部の表示装置(図示せず)に表示する。(ステップS8)
上記で説明した仮想的な積層仕様は、
図2に示すように、現実の積層5よりも積層数の少ない仮想的な積層における各層(X層6及びY層7)の機械的特性Qと板厚tとを用いて、現実の積層5におけるFRP全体の面内剛性Aおよび曲げ剛性Dを表した式1から式3を解くことで得られる。なお、板厚tの合計値は現実の積層5での板厚tに一致するものとする。
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
【0025】
【数3】
【0026】
また、
図1のステップS5で算出されるFRPに生じる応力σは、式4示すように、ステップS4で解析した応答の解析結果として得られる歪(ひずみ)と、現実の積層5での各層の剛性から得られる。
【0027】
【数4】
【0028】
本実施例の最適化システム1を備える装置20は、
図3に示すように、主要な構成として入力部30、演算処理部40、出力部50および記憶部60を備えている。演算処理部40には、第一の計算手段200と第二の計算手段210、
図1のステップS4における応答の計算手段220、
図1のステップS5における応力の計算手段230、
図1のステップS6における信頼性パラメータの計算手段240、
図1のステップS7における最適値の計算手段250および最適値の表示手段260を備える。最適値は、例えば
図4に示すように、積層数と故障率の関係を示すグラフ上に表示される。
【0029】
第一の計算手段200は
図1のステップS2におけるFRPの機械的特性を算出し、第二の計算手段210は
図1のステップS3における仮想的な積層仕様を計算する。
【0030】
以上説明したように、本実施例のFRPの最適化システム及びそれを備える装置によれば、仕様の異なるFRPの積層構成を逐次モデル化することなく、例えば鉄道車両のような機械構造物3の信頼性向上に最も適したFRPの仕様の最適値を効率的に探索(計算)することが可能となる。
【0031】
また、板厚を考慮しないでFRPをモデル化する場合と異なり、空間的なギャップ無しに接合部をモデル化できるため、接合部の信頼性評価の精度低下を回避できる。
【0032】
なお、構造部材としてFRPを用いる機械構造物全体およびその接合部の信頼性の評価は、
図1に示すステップS1からステップS6までの処理を実行し、FRPの信頼性と相関のあるパラメータ(信頼性パラメータ)を評価(計算)することで可能である。
【実施例2】
【0033】
図5を参照して、実施例2のFRPの最適化システムについて説明する。
【0034】
本実施例の最適化システム1は、演算装置2に、機械構造物3の過去の稼働情報が蓄積(格納)されたデータベース100をさらに備えている点において、実施例1の最適化システムと異なっている。
【0035】
本実施例の最適化システム1は、
図5に示すように、演算装置2に、データベース100を備え、データベース100には機械構造物3の過去の稼動情報が蓄積(格納)されている。演算装置2は、データベース100から機械構造物3の応答と相関のあるパラメータ110を抽出し、パラメータ110を用いて機械構造物3の応答を解析する。(ステップS4)
ステップS4で解析した機械構造物3の応答と、ステップS1で設定したFRPの仕様を用いてFRPに生じる応力を算出する。(ステップS5)
その後は、実施例1の
図1の処理フローと同様に、算出した応力を用いて信頼性パラメータを評価し(ステップS6)、信頼性パラメータの値を用いて機械構造物3の信頼性向上に最も適したFRPの仕様の最適値を探索(計算)する。(ステップS6)
これにより、実施例1の最適化システムよりも、稼動時の複雑な応答に対応した上で、機械構造物3の信頼性向上に対して最適なFRPの仕様を決定することが可能となる。
【実施例3】
【0036】
図6を参照して、実施例3のFRPの最適化システムについて説明する。
【0037】
本実施例の最適化システム1は、演算装置2に、FRPの既存の仕様が蓄積(格納)されたデータベース120をさらに備えている点において、実施例1の最適化システムと異なっている。
【0038】
本実施例の最適化システム1は、
図6に示すように、演算装置2に、実施例2(
図5)のデータベース100(第1のデータベース)とは別の第2のデータベース120を備え、第2のデータベース120には、FRPの既存の仕様130が蓄積(格納)されている。演算装置2は、第2のデータベース120から、最適値に最も近い近似的な仕様140を抽出し(ステップS9)、ステップS9で抽出したFRPの近似的な仕様を外部の表示装置(図示せず)に表示する。(ステップS10)
これにより、製造可能なFRPの仕様を選択することや、既存の仕様を流用した構造設計が可能となる。
【実施例4】
【0039】
図7を参照して、実施例4のFRPの最適化システムについて説明する。
【0040】
本実施例の最適化システム1は、演算装置2において、実施例1(
図1)のステップS5とステップS6の間に、さらにステップS11およびステップS12が実行される点において、実施例1の最適化システムと異なっている。また、最後に近似的な仕様が表示される点も実施例1とは異なる。(ステップS10)
本実施例の最適化システム1は、
図7に示すように、演算装置2により、機械構造物3における損傷の発生確率150を予測(計算)し(ステップS11)、予測結果に基づいて、機械構造物3の信頼性に対して影響の大きい損傷の発生する部位160を特定する。(ステップS12)本実施例では、部位160における損傷の発生確率150の低減に最も適したFRPの仕様を決定する。
【0041】
これにより、機械構造物3の信頼性をより高精度に予測し、予測結果に応じてFRPの最適な仕様を決定することが可能となる。また、FRPの仕様の最適値を、より効率的に決定することが可能となる。
【0042】
以上説明した各実施例における最適化システムは、機械構造物3の稼動データに応じて機械構造物3の応答を解析し、解析結果により、稼働中の機械構造物3の信頼性向上に最も適したFRPの仕様を決定することも可能である。これにより、たとえば稼働中の機械構造物3に含まれるFRPに対する補修方法を決定することが可能となる。
【0043】
なお、各実施例において、機械構造物3の具体例として鉄道車両を想定して説明したが、鉄道車両以外にも、建設機械や風力発電装置のように機械的な強度が必要で厚みのある複合材を用いる製品分野でも同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…最適化システム、2…演算装置、3…機械構造物(鉄道車両)、4…外力、5…現実の積層、6…X層、7…Y層、20…装置、30…入力部、40…演算処理部、50…出力部、60…記憶部、100…(第1の)データベース、110…応答と相関のあるパラメータ、120…(第2の)データベース、130…FRPの既存の仕様、140…FRPの近似的な仕様、150…機械構造物3における損傷の発生確率、160…機械構造物3の信頼性に対して影響の大きい損傷の発生する部位、200…第一の計算手段、210…第二の計算手段、220…応答の計算手段、230…応力の計算手段、240…信頼性パラメータの計算手段、250…最適値の計算手段、260…最適値の表示手段。