特許第6960405号(P6960405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許6960405吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法
<>
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000002
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000003
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000004
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000005
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000006
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000007
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000008
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000009
  • 特許6960405-吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960405
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20211025BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61M25/00 530
   A61M25/00 502
   A61B17/22
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-531921(P2018-531921)
(86)(22)【出願日】2017年8月1日
(86)【国際出願番号】JP2017027896
(87)【国際公開番号】WO2018025859
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2020年6月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-154005(P2016-154005)
(32)【優先日】2016年8月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】李 翠翠
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−222946(JP,A)
【文献】 特開2014−117369(JP,A)
【文献】 米国特許第02716983(US,A)
【文献】 特開2010−057831(JP,A)
【文献】 特開2005−312726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/01
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側から遠位側に延びるルーメンと、前記ルーメンにおける遠位側に形成された吸引口と、を有するチューブ、を備え、
前記吸引口は、一方端が遠位側に、他方端が近位側に配置され、
前記吸引口における遠位端を鉛直方向上側、前記吸引口における近位端を鉛直方向下側となる前記チューブの配置において、
前記吸引口の近位端における鉛直方向下端を含む一部は、前記ルーメンが延びる第一方向に直交する同一断面上に位置すると共に前記チューブを前記第一方向及び前記鉛直方向に直交する側方から見た場合に前記鉛直方向に延び、
前記吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、前記吸引口の近位側端部は、前記第一方向と前記鉛直方向との両方に直交する幅方向に直線状に延びている、吸引カテーテル。
【請求項2】
請求項1記載の吸引カテーテルの製造方法であって、
直線状の切断部を有する切断部材を用いて、前記チューブが延びる第一方向に直交する断面に沿って前記チューブの一部を切断する工程を含む、吸引カテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記切断部材によって前記チューブを切断する前に前記チューブに芯材を挿入する工程と、
前記切断部材によって前記チューブを切断した後に前記チューブから前記芯材を取り除く工程と、を更に含む、請求項記載の吸引カテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、体内の物質を体外に吸引除去する吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内に導入され、カテーテル手元端から加える陰圧によって、体内の物質を体外に吸引除去する吸引カテーテルが知られている。このような吸引カテーテルとして、例えば、特許文献1には、遠位側に吸引口を有するチューブを血管内に導入して病変部位にまで到達させ、当該吸引口から血栓を吸引除去する血栓吸引カテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−236633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなカテーテルでは、吸引された血栓によるルーメンの閉塞を抑制することが求められている。そこで、ルーメンの内径を大きくしたカテーテルが提案されている。ルーメンの内径が大きいカテーテルは、吸引性能が高く、ルーメンの閉塞が抑制されることが考えられる。しかし、カテーテルの吸引口の末梢到達性を考慮すると、更なる改良が必要となる。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、吸引物質によるルーメンの閉塞を抑制することができる吸引カテーテル及び吸引カテーテルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルは、近位側から遠位側に延びるルーメンと、ルーメンにおける遠位側に形成された吸引口と、を有するチューブ、を備え、吸引口は、一方端が遠位側に、他方端が近位側に配置され、吸引口における遠位端を鉛直方向上側、吸引口における近位端を鉛直方向下側となるチューブの配置において、吸引口の近位端における鉛直方向下端を含む一部は、ルーメンが延びる第一方向に直交する同一断面上に位置すると共にチューブを第一方向及び鉛直方向に直交する側方から見た場合に鉛直方向に延び、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部における曲率が、遠位側端部における曲率よりも小さい。
【0007】
上記吸引カテーテルによって吸引される血栓又は異物等の物質は、吸引口の第一方向における近位側部分からルーメンに吸い込まれる。言い換えれば、上記のように配置されたチューブを第一方向及び鉛直方向に直交する側方から見たときに、上記吸引カテーテルによって吸引される物質は、チューブの吸引口における下側部分からルーメンに吸い込まれる。本発明の吸引カテーテルでは、吸引口の近位端における鉛直方向下端を含む一部は、第一方向に直交する同一断面上に位置すると共にチューブを側面から見た場合に鉛直方向に延びているので、吸引口の近位端近傍において血栓を切断し易い。鉛直方向に延びている箇所に血栓が接近した場合、その血栓は吸引力によって近位側に引かれ、血栓が容易に切断される。また、本発明の吸引カテーテルでは、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部における曲率(曲がり度合)が遠位側端部における曲率よりも小さい、すなわち、吸引口の近位側端部における曲率半径が遠位側端部における曲率半径よりも大きい。この構成では、吸引口において血栓を切断する有効部分が大きくなるので、血栓を切断し易い。なお、ここでいう曲率には、曲率が0の場合、すなわち、直線である場合も含む。この結果、吸引物質によるルーメンの閉塞を抑制することができる。
【0008】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口の近位側端部の曲率を1.74×10rad/m以下としてもよい。この構成の吸引カテーテルでは、閉塞抑制効果をより高くすることができる。rad/mは、曲率の単位であり、度(角度)/周長(長さ)を示す。
【0009】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部は、第一方向と鉛直方向との両方に直交する幅方向に直線状に延びていてもよい。ここでいう直交には、略直交も含む。この吸引カテーテルの構成では、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部における曲率を、容易に遠位側端部における曲率よりも小さくすることができる。
【0010】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルは、近位側から遠位側に延びるルーメンと、ルーメンにおける遠位側に形成された吸引口と、を有するチューブ、を備え、吸引口は、一方端が遠位側に、他方端が近位側に配置され、吸引口における遠位端を鉛直方向上側、吸引口における近位端を鉛直方向下側となるチューブの配置において、吸引口の近位端における鉛直方向下端を含む一部は、ルーメンが延びる第一方向に直交する同一断面上に位置すると共にチューブを第一方向及び鉛直方向に直交する側方から見た場合に鉛直方向に延び、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部は、第一方向と鉛直方向との両方に直交する幅方向に直線状に延びている。
【0011】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルでは、吸引口の近位端における鉛直方向下端を含む一部は、第一方向に直交する同一断面上に位置すると共にチューブを側面から見た場合に鉛直方向に延び、かつ、吸引口を鉛直方向下方から見た場合に、吸引口の近位側端部は、幅方向に直線状に延びているので、血栓を切断し易い。この結果、吸引物質によるルーメンの閉塞を抑制することができる。ここでいう直交には、略直交も含む。
【0012】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルの製造方法は、遠位側に物質の吸引口を有するチューブを備える吸引カテーテルの製造方法であって、直線状の切断部を有する切断部材を用いて、チューブが延びる第一方向に直交する断面に沿ってチューブの一部を切断する工程を含む。
【0013】
上記製造方法によれば、吸引口の近位端における鉛直方向下端を含む一部が、第一方向に直交する同一断面上に位置すると共にチューブを側面から見た場合に鉛直方向に延びるチューブを製造することができる。この製造方法によって製造されたチューブを有する吸引カテーテルでは、血栓を切断し易いので、ルーメンの閉塞を抑制することができる。
【0014】
本発明の一側面に係る吸引カテーテルの製造方法は、切断部材によってチューブを切断する前にチューブに芯材を挿入する工程と、切断部材によってチューブを切断した後にチューブから芯材を取り除く工程と、を更に含んでもよい。
【0015】
上記製造方法では、芯材がチューブ内に挿入されていることにより、予め決められた長さの近位側端部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、吸引物質によるルーメンの閉塞を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る吸引カテーテルを第一方向に沿って切断したときの断面図である。
図2図2は、図1におけるA−A線に沿った断面構成を示す図である。
図3図3は、図1におけるD−D線に沿った断面構成を示す図である。
図4図4(a)は、図1におけるC−C線に沿った断面構成を示す図であり、図4(b)は、図1におけるB−B線に沿った断面構成を示す図である。
図5図5は、図1における吸引ルーメンにおける吸引口を鉛直方向下方から見た底面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、図1の吸引カテーテルの製造方法の工程の一例を説明する図である。
図7図7は、異なる実施形態に係る吸引ルーメンにおける吸引口を鉛直方向下方から見た底面図である。
図8図8(a)〜図8(d)は、変形例に係るカテーテルにおける吸引ルーメンの断面図の一例である。
図9図9(a)〜図9(h)は、変形例に係るカテーテルにおける吸引ルーメンの断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して一実施形態の吸引カテーテル1について説明する。吸引カテーテル1は、体内に導入されて、血管内に生成した血栓を吸引カテーテル1の手元側(近位側)から加える陰圧により体外に吸引除去するために用いられる。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0019】
以下の説明においては、吸引カテーテル1が延びる第一方向において、吸引カテーテル1の操作側(図1左側)を近位側と定義し、吸引カテーテル1の操作側とは反対側であって、人体に導入される側(図1右側)を遠位側と定義する。また、図1図6では、吸引カテーテル1が延びる第一方向をX軸方向として、鉛直方向をZ軸方向として、上記第一方向及び上記鉛直方向に直交する方向である吸引ルーメン10の幅方向をY軸方向として示す場合がある。吸引カテーテル1が延びる第一方向とは、吸引カテーテル1を側面視した場合の長手方向でもある。
【0020】
図1に示されるように、吸引カテーテル1は、近位端から遠位端まで延びる吸引ルーメン10と、吸引ルーメン10の遠位側において吸引ルーメン10に沿って延びるガイドワイヤールーメン20と、を有している。吸引ルーメン10は、吸引ルーメンの遠位端に設けられた吸引口11から吸引される血栓等の流路となる。ガイドワイヤールーメン20は、吸引ルーメン10の吸引口11を対象部位にまで案内するためのガイドワイヤ(図示せず)を通過させるルーメンとなる。以下、吸引ルーメン10が単独で延びる部分を第一シャフト3と称し、吸引ルーメン10とガイドワイヤールーメン20とが並んで延びる部分を第二シャフト5と称する。
【0021】
第一シャフト3は、吸引ルーメン10を形成する第一チューブ31から形成される。図2に示されるように、第一チューブ31は、一方向に延びる中空部材であり、長手方向に直交する断面(以下、単に「断面」と称する)が円環状の部材である。第一チューブ31の内面31aは、上記吸引ルーメン10を形成し、上記吸引ルーメン10は、近位側から遠位側に延びる。第一チューブ31は、樹脂材料により形成されている。樹脂材料の例には、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリエチレン樹脂から選択される少なくとも一つが含まれる。
【0022】
第一チューブ31は、内層及び外層を含む部材であってもよい。内層を形成する材料の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂、高密度ポリエチレン等が含まれる。外層を形成する材料の例には、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー等のエラストマーが含まれる。
【0023】
第一チューブ31として、編組チューブを用いてもよい。編組チューブは、樹脂等で形成されたチューブに樹脂又は金属による編組構造を含むチューブである。編組構造とは、例えばチューブのルーメンの周囲に設けられる編まれた線状物による構造である。編組構造は、1本の線材が巻き付けられた構造又はルーメンに沿って配置された構造であってもよい。編組チューブを構成する編組の材質又は構造は本発明の一側面の効果を制限しないので、様々な材質又は構造が利用可能である。編組の材質として金属を使用することができ、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、バネ鋼、ピアノ線、オイルテンパー線、Co−Cr合金、Ni−Ti合金等を円、楕円、四角形等各種の断面形状に加工した金属素線を1本持あるいは複数本持で編組に加工した金属を使用することができる。
【0024】
第一シャフト3は、第一チューブ31の内側又は外側に別のチューブが配置される二重管構造であってもよい。
【0025】
図1に示されるように、第一シャフト3の近位端3bには、ハブ35が設けられている。ハブ35には、例えばY字コネクタ(図示せず)を介して、シリンジ等の吸引装置(図示せず)が接続されている。吸引装置による負圧吸引力は、ハブ35を通じて、第一チューブ31の吸引ルーメン10に及ぼされる。ハブ35は、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体により形成されている。第一チューブ31の近位端31bは、接着剤37によりハブ35に接着されている。接着剤37は、例えば、ウレタン接着剤である。第一チューブ31の吸引ルーメン10は、ハブ35の開口部35aと連通している。
【0026】
第二シャフト5は、第二チューブ(チューブ)41と第三チューブ61によって形成される。第二チューブ41は、近位側から遠位側に第一方向に延びる吸引ルーメン10を有し、第三チューブ61は、近位側から遠位側に第一方向に延びるガイドワイヤールーメン20を有している。なお、説明の便宜のため、第二チューブ41及び第三チューブ61は、図3等に示されるように、本体樹脂71と別の部分である状態で示しているが、第二チューブ41及び第三チューブ61の外形は、図3に示される形状を留めていなくてもよい。すなわち、第二チューブ41、第三チューブ61、及び本体樹脂71の境界が不明確な状態であってもよい。
【0027】
第二チューブ41は、第一方向に延びる中空部材であり、樹脂材料により形成されている。吸引ルーメン10は、第二チューブ41の内面41aによって形成される。第二チューブ41を形成する樹脂材料の例は、上段にて説明した第一チューブ31を形成する材料の例と同じである。同様に、第二チューブ41は、内層及び外層を含む部材であってもよく、その材料も第一チューブ31の例と同じであってもよい。また、同様に、第二チューブ41として、編組チューブを用いてもよく、その材料の例も第一チューブ31と同じであってもよい。
【0028】
第一チューブ31の遠位端(図示せず)と第二チューブ41の近位端(図示せず)とは、互いに接続され、第一チューブ31の吸引ルーメン10と第二チューブ41の吸引ルーメン10とは互いに連通している。なお、第一シャフト3と第二シャフト5とを通して、同一のチューブが配置されていてもよく、例えば、第二チューブ41が、第一シャフト3から第二シャフト5にまで延びていてもよい。
【0029】
第一チューブ31と第二チューブ41とは、一本のチューブとして一体的に形成されていてもよく、途中で異なる複数のチューブが接続されていてもよい。一体的に形成されている場合、第一チューブ31と第二チューブ41とは、同じ樹脂材料で形成されていてもよい。接続されている場合、同じ樹脂材料で形成されたチューブ同士を接続してもよく、異なる樹脂材料により形成されたチューブ同士を接続してもよい。接続部分は、接着剤又は接続用部材を用いてチューブ同士を接続してもよく、チューブを溶融して接続してもよい。
【0030】
図1に示されるように、第二チューブ41の遠位側の端面41bは、傾斜している。具体的には、第二チューブ41の遠位側の端面41bは、第二チューブ41が延びる方向(第一方向)に対して、所定の角度を成して傾斜している。詳細には、図1に示されるように、第二チューブ41の遠位側の端面41bは、上端が遠位側でかつ下端が近位側となるように、遠位側から近位側に向かって連続して傾斜している。端面41bは、開口しており、吸引ルーメン10に連通する。端面41bの一部が、閉じている構成であってもよい。上記傾斜は、側面視、直線状であってもよく、湾曲していてもよい。直線と曲線との組み合わせであってもよい。端面41bは、上端が遠位側でかつ下端が近位側である形状であればよく、段差が設けられる等して階段状に形状が変化してもよく、直線と曲線との組み合わせ形状であってもよい。
【0031】
第二チューブ41の遠位端には、吸引口11が設けられている。上記吸引口11は、上記端面41bの一部または全部を含んで形成される。吸引口11は、第二チューブ41の長手方向に沿って設けられ、一方端が遠位側に、他方端が近位側に配置される。なお、吸引口11における近位端11bから遠位端11aまでの第一方向における長さL0(図1参照)は、例えば、2.0mm以上10mm以下とすることができる。上記のとおり、第二チューブ41の遠位端の端面41bは傾斜しているので、当該端面に設けられる吸引口11は、吸引ルーメン10の第一方向に直交する面に対して傾いた状態に形成されている。第二チューブ41は、側面視において、吸引口11における遠位端11aが鉛直方向上側、吸引口11における近位端11bが鉛直方向下側となる。
【0032】
吸引口11の近位端11bにおける鉛直方向下端を含む近位側端部11dの一部は、第一方向に直交する同一断面上に位置すると共に第二チューブ41を第一方向及び鉛直方向に直交する側方(Y軸方向)から見た場合に鉛直方向に延びている。この構成により、鉛直方向に延びている箇所に血栓が接近した場合、その血栓は吸引力によって近位側に引かれ、近位側端部11dによって血栓が容易に切断される。
【0033】
図5に示されるように、吸引口11では、鉛直下方向から見たときの近位側の近位端11bを含む近位側端部11dの曲線形状が、遠位端11aを含む遠位側端部11cの曲線形状と異なっていてもよい。具体的には、近位側端部11dの曲線形状における曲線半径が、遠位側端部11cの曲線形状における曲線半径よりも大きい。すなわち、近位側端部11dの曲線形状における曲がり具合(曲率)が、遠位側端部11cの曲線形状における曲がり具合(曲率)よりも小さい。この構成により、吸引口11において血栓を切断する有効部分が大きくなり、血栓が切断され易くなる。この結果、血栓等の吸引物質による吸引ルーメン10の閉塞を抑制することができる。例えば、吸引口11の近位側端部11dの曲率を、1.74×10rad/m以下としてもよい。これにより、閉塞抑制効果をより高めることができる。
【0034】
異なる実施形態の一例として、図7に示されるように、鉛直下方向から見たときの近位側の近位端11bを含む近位側端部111dの曲線形状を、幅方向(Y軸方向)に沿って直線状に形成してもよい。これは、近位側の曲率をより小さくした場合(曲率0)の例でもある。この構成により、血栓が吸引口11により引っかかり易くなると共に、吸引口11において血栓を切断する有効部分が大きくなり、血栓が切断され易くなる。この結果、血栓等の吸引物質による吸引ルーメン10の閉塞を抑制することができる。
【0035】
図1に示されるように、第三チューブ61は、一方向に延びる中空部材であり、樹脂材料により形成されている。ガイドワイヤールーメン20は、第三チューブ61の内面61aによって形成される。第三チューブ61における遠位端及び近位端のそれぞれには、開口21及び開口22が設けられている。開口21及び開口22は、吸引ルーメン10の第一方向に直交する面に沿って形成されている。第三チューブ61は、樹脂材料により形成されている。第三チューブ61を形成する樹脂材料の例は、上段にて説明した第一チューブ31を形成する材料の例と同じである。同様に、第三チューブ61は、内層及び外層を含む部材であってもよく、その材料も第一チューブ31の例と同じであってもよい。また、同様に、第三チューブ61として、編組チューブを用いてもよく、その材料の例も第一チューブ31と同じであってもよい。
【0036】
第一チューブ31、シャフトと第二チューブ41、及び第三チューブ61は、複数の樹脂材料又は他の材料を含む複層構造であってもよい。複数の樹脂材料を用いる場合、樹脂材料は同じであってもよく、互いに異なってもよい。また、例えば金属製のリング又はプレート等をチューブのルーメンに面する部分又はそれ以外の部分に配置してもよい。樹脂製又は金属製のワイヤをチューブに巻き付けることもできる。
【0037】
第三チューブ61には、X線(放射線)が不透過である材料により形成されるマーカー(図示せず)が設けられてもよい。マーカーは、例えば、金、白金、タングステン、白金(Pt)及びインジウム(Ir)を含む合金で形成される環状の部材である。マーカーは、第三チューブ61を周方向に囲うように第三チューブ61に取り付けられる。これにより、操作者は、X線透過画像に基づいて第二シャフト5の遠位端の位置を把握することができるようになる。
【0038】
第二シャフト5において第二チューブ41と第三チューブ61とは一体的に形成されている。具体的には、第三チューブ61が第二チューブ41の鉛直方向上方に配列された状態で、樹脂材料により形成される本体樹脂71により一体化されている。本実施形態では、本体樹脂71は熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミドエラストマー(PAE)、又はポリアミドエラストマーにより形成されている。本体樹脂71は、例えば、第二チューブ41及び第三チューブ61に被せられたシュリンクチューブを加熱することによって形成される。これにより、第二シャフト5の外面(外形)71aが形成される。ここで一体化とは、第二チューブ41、第三チューブ61、及び本体樹脂71の境界が不明確な状態であってもよく、図3に示されるようにそれぞれの境界が明確であってもよい。第二チューブ41、第三チューブ61、及びチューブ材料の異なる3つの部材を一体化していてもよく、1の部材に2つのルーメンを形成して三者が一体化していてもよい。第二チューブ41、第三チューブ61のみを一体化してもよい。この場合、溶解した第二チューブ41、第三チューブ61によって、本体樹脂71が形成される。
【0039】
図1図3及び図4に示されるように、第二チューブ41の内面41aによって形成される吸引ルーメン10は、近位側から遠位側に沿って断面が変化してもよい。第二チューブ41の第一方向において、吸引口11の近位端11bが有る第一位置P1での吸引ルーメン10の断面を第一断面とする。図3に示されるように、上記第一断面は、円弧状の第一内面42と、第一内面42よりも曲率が小さな第二内面(底部)43とにより形成されている。
【0040】
ここで、上記第一断面において幅方向(Y軸方向)に最大長さwを有する最大幅部13は、第一断面における鉛直方向中心位置Mよりも下側に位置してもよい。また、第一断面の鉛直方向における最大長さhは、幅方向における最大長さwよりも短くてもよい。言い換えれば、第一断面は、横長形状であってもよい。このような断面を有する第二チューブ41は、例えば、押出成形によって製造される断面形状が略円形のチューブに、断面形状が第一断面と略同形状のステンレス製の芯材を挿入し、当該チューブを加熱することによって製造することができる。
【0041】
図1に示されるように、吸引ルーメン10における第一断面の形状は、第一位置P1から近位側へ所定距離L1続いていてもよい。これにより、よりスムーズに物質を吸い込むことができる。第一方向における第一位置P1よりも近位側の位置において、第一断面から第一断面とは形状が異なる第二断面(図4(b)参照)へ切り替わる断面切替部15が、第一方向において第一位置P1から所定距離L1離れた第二位置P2を起点に形成されていてもよい。
【0042】
第一位置P1と第二位置P2との距離L1は、例えば、2mm〜20mmとすることができる。また、当該距離L1の下限値は、2mm以上とすることができ、当該距離の上限値は、10mm以下とすることができる。本実施形態では、断面切替部15は、第一方向において第一位置P1から20mmの第二位置P2を起点として配置されている。これにより、吸引口11近傍での血栓による閉塞を、より確実に抑制することが可能になると共に、第二チューブ41への振動付与が、より確実になる。振動付与がより確実になるのは、吸引された吸引物質がチューブの内面に衝突し易くなり、吸引物質のシャフトへの衝突による振動が強くなるためである。
【0043】
本実施形態において断面切替部15は、吸引ルーメン10の断面形状を、第一断面(図3参照)から第一断面とは形状及び断面積が異なる第二断面(図4(b)参照)へと変化させてもよい。断面切替部15は、吸引ルーメン10を形成する第二チューブ41の内面41aの少なくとも一部に形成されるテーパであってもよい。断面切替部15は、第二チューブ41の第二位置P2から第三位置P3にかけて形成されている。このような形状変化により、血栓が切断され易くなる。また、このような形状変化は、血栓吸引の効率を促進し、また第二チューブ41の中で血栓がつまり、吸引ルーメン10が閉塞してしまうことを抑制する効果もある。
【0044】
断面切替部15は、吸引ルーメン10の断面形状を、吸引ルーメン10の内面(内壁)に設けられたテーパによってなだらかに変化させてもよく、テーパの代わりに設けられた段差等によって変化させてもよい。このようなテーパ又は段差である断面切替部15は、複数設けられていてもよい。第三位置P3において、第二チューブ41の内面41aによって形成される吸引ルーメン10の断面形状は、略円形である。吸引ルーメン10は、当該第二断面の形状が、第一シャフト3の近位端3b、すなわち、ハブ35にまで延びている。なお、図4(a)及び図4(b)に示される二点鎖線は、第一断面における内面41aの一部である第二内面43を示している。
【0045】
異なる実施形態として、第三位置P3とハブ35との間に、吸引ルーメン10の形状又は断面積(サイズ)の変化が、一又は複数回あってもよい。本実施形態の吸引カテーテル1は、吸引ルーメン10の断面形状又は断面積が変化するため、吸引された吸引物質がチューブの内面に衝突し易く、血栓の吸引状況の把握が可能である。断面形状又は断面積の変化は、遠位側が小さく近位側が大きくなる変化としてもよい。用途に応じて、遠位側が小さく近位側が大きくなる変化又は近位側が小さく遠位側が大きくなるような変化を適宜組み合わせることができる。これにより、本実施形態の吸引カテーテル1は、よりスムーズに血管内に導入することができる。
【0046】
続いて、吸引カテーテル1の製造方法の一例について説明する。吸引カテーテル1の製造では、最初に、第一チューブ31、第二チューブ41、及び第三チューブ61が準備される。各チューブは、上記材料によって、押出成形により形成される。続いて、第三チューブ61に、マーカーが取り付けられる。マーカーは、第三チューブ61にかしめられ固定される。
【0047】
次に、図6(a)に示されるように、第二チューブ41は、直線状の切断部を有する切断部材によって、第二チューブ41の長手方向(第一方向)に直交する断面に沿って第二チューブ41の一部が切断される。これにより、第二チューブ41に切断線C1が形成される。次に、図6(b)に示されるように、第二チューブ41は、第二チューブ41の長手方向に直交する側方から切断線C1を見たとき、切断部材によって、当該切断線C1と傾いた切断線C2が形成されるように切断される。このように第二チューブ41は、切断線C1及び切断線C2で切断されることにより、吸引口11の近位端における鉛直方向下端を含む一部を、第一方向に直交する同一断面上に位置すると共に第二チューブ41を第一方向及び鉛直方向に直交する側方から見た場合に鉛直方向に延びる近位側端部11dが形成される。切断線C1により、吸引カテーテル1を側面視したときの、吸引口11の近位端11bにおいて鉛直方向に延びる直線状の近位側端部11dが形成される。直線状の切断部を有する切断部材としては、例えば、かみそり又はハサミ等が挙げられる。切断線C2を形成する切断部材は、切断線C1を形成する切断部材と同じであってもよく、切断線C1を形成する切断部材と異なってもよい。
【0048】
次に、第二チューブ41の近位端に、第一チューブ31の遠位端が接続される。続いて、第一チューブ31が接続された第二チューブ41と第三チューブ61とが平行に並べられる。具体的には、第二チューブ41の遠位端に対し第三チューブ61の遠位端が遠位側に突出するように並べられる。第一チューブと第二チューブとを接続する方法は、接着剤により接着する、チューブを加熱し溶着する等適宜選択することができる。
【0049】
次に、第二チューブ41及び第三チューブ61に、ステンレス製の芯材が挿入される。当該芯材の断面は、円形である。芯材の断面形状は、必要に応じて円形以外の形状を選択することもできる。第二チューブ41及び第三チューブ61にシュリンクチューブを被せられ加熱される。シュリンクチューブは、耐熱性樹脂により形成されてもよい。例えば、オレフィン系樹脂が挙げられる。これにより、第二チューブ41及び第三チューブ61を溶着されて一体化される。これにより、本体樹脂71が形成される。次に、第二チューブ41に、ステンレス製の芯材が挿入される。当該芯材の断面は、図3に示されるような、第二チューブ41の内面41aによって形成される第一断面と略同一の断面形状を有している。選択可能な芯材の断面形状の例として、図8及び図9に示される形状がある。第三チューブ61に、ステンレス製の芯材が挿入される。前述の加熱工程で用いた芯材をそのまま使用してもよい。シュリンクチューブを被せて加熱したときに、第二チューブ41も加熱され、第二チューブ41の内面41aの形状が、挿入された芯材の形状に成形される。これにより、図3に示される第一断面を有する吸引ルーメン10が形成される。
【0050】
上記第一断面と略同一の断面形状を有している芯材は、第二チューブ41の遠位側にのみ挿入される。当該芯材を挿入して加熱した熱が、第二チューブ41の当該芯材を挿入していない部分に伝わることにより、テーパ形状の断面切替部15が形成される。上記第一断面と略同一の断面形状を有している芯材からの熱が伝わることにより、最初に芯材により形成した断面円形の部分が、上記第一断面と略同一の断面形状を有している芯材により形成される第一断面部分へと連続的に変形して、テーパ形状の断面切替部15が形成される。
【0051】
最後に、第一チューブ31の近位端に、ハブ35を接着剤37により接続される。以上の工程により、吸引カテーテル1が製造される。
【0052】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は上記実施形態に限定されない。
【0053】
<変形例1>
上記実施形態では、図3に示されるように、第一断面が、円弧状の第一内面42と、第一内面42よりも曲率が小さな第二内面43とにより形成されている例を挙げて説明したが、本発明の一側面はこれに限定されない。第一断面は、どのような形状であってもよいが、第一断面での最大幅部13が、第一断面における鉛直方向中心位置Mよりも下側に位置するように形成すれば、血栓が吸引ルーメン10に吸い込まれる部分が、他の部分に比べて広い。このため、血栓が吸引口11から吸引ルーメン10に吸い込まれ易くなり、吸引口11近傍における吸引ルーメン10の閉塞を抑制できる。
【0054】
上記第一断面の形状に代えて、例えば、吸引ルーメン10の第一断面は、図8(a)〜図8(d)に示されるような形状としてもよい。このとき、底部143A,143B,143C,143Dを、幅方向における最大長さWmaxの0.3倍以上1.0倍以下の長さとすれば、血栓が吸引ルーメン10に吸い込まれる部分が広くなる。このため、血栓が吸引口11から吸引ルーメン10に吸い込まれ易くなり、吸引口11近傍における吸引ルーメン10の閉塞を抑制できる。更に、鉛直方向における最大長さhが、幅方向における最大長さWmaxの0.4倍以上0.9倍以下としてもよい。この場合には、吸引口11において血栓が吸い込まれる下側部を広げることができるので、より効果的に吸引口11から血栓を吸引することができる。
【0055】
上記実施形態の第一断面の形状に代えて、第一断面の形状を多角形とし、第一断面は、鉛直方向下端において、鉛直方向と第一方向とに直交する幅方向に延びる底部を有していてもよい。ここで多角形とは、上記製造方法の一例における芯材の長手方向に垂直な方向の断面形状が多角形であることにより形成された多角形であることを含む。なお、本実施形態の吸引カテーテルは、樹脂により形成されるため柔らかいチューブであり、多角形の各頂点が明確に現れない場合がある。多角形は、各辺の長さが同一である正多角形でもよく、各辺が任意の長さである多角形であってもよい。例えば、第一断面の形状を、図8に示されるように種々の多角形とすることができる。第一断面が、このような多角形の形状であっても、血栓が吸引口11から吸引ルーメン10に吸い込まれ易くなり、吸引口11近傍における吸引ルーメン10の閉塞を抑制できる。第一断面を、このような多角形の形状にすると、吸引口11における吸引圧を高めることができるので、血栓を切断し易くなる。これにより、血栓が吸引口11から吸引ルーメン10に吸い込まれ易くなり、吸引口11近傍における吸引ルーメン10の閉塞を抑制できる。
【0056】
なお、図9(a)〜図9(h)の場合、底部243A,243B,243C,243D,243E,243F,243G,243Hは、幅方向における最大長さWの0.3倍以上1.0倍以下の長さhとすれば、血栓が吸引ルーメン10に吸い込まれる部分を広くできる。このため、血栓が吸引口11から吸引ルーメン10により吸い込まれ易くなる。また、更に、鉛直方向における最大長さhが、幅方向における最大長さWの0.4倍以上0.9倍以下とする第一断面とすれば、吸引口11において血栓が吸い込まれる下側部を広げられるので、より効果的に吸引口11から血栓を吸引することができる。
【0057】
<その他の変形例>
上記実施形態又は変形例では、図3に示されるように、第二チューブ41と第三チューブ61とが本体樹脂71によって一体的に形成される例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第二チューブ41と第三チューブ61とが接着剤等によって互いに固定される構成であってもよい。
【0058】
以上説明した種々の実施形態及び変形例同士は、本発明の一側面の趣旨を逸脱しない範囲で種々、組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…吸引カテーテル、3…第一シャフト、5…第二シャフト、10…吸引ルーメン(ルーメン)、11…吸引口、11a…遠位端、11b…近位端、11c…遠位側端部、11d…近位側端部、20…ガイドワイヤールーメン、31…第一チューブ、41…第二チューブ(チューブ)、41a…第二チューブの内面、41b…第二チューブの端面、61…第三チューブ、71…本体樹脂、111d…近位側端部、P1…第一位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9