特許第6960410号(P6960410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6960410大細孔アルミナ担体に担持された白金族金属触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960410
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】大細孔アルミナ担体に担持された白金族金属触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20211025BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20211025BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20211025BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20211025BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20211025BHJP
   B01J 27/053 20060101ALI20211025BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20211025BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01J35/10 301H
   B01J35/10 301J
   B01J35/04 301E
   B01J37/02 101C
   B01J37/08
   B01J27/053 A
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/28 Q
   F01N3/28 301Q
【請求項の数】32
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-555456(P2018-555456)
(86)(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公表番号】特表2019-519356(P2019-519356A)
(43)【公表日】2019年7月11日
(86)【国際出願番号】US2017019808
(87)【国際公開番号】WO2017184256
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】62/326,141
(32)【優先日】2016年4月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シヤオミン
(72)【発明者】
【氏名】ディーバ,マイケル
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−047279(JP,A)
【文献】 特開2010−029752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0104491(US,A1)
【文献】 特表2014−500217(JP,A)
【文献】 特表2014−534156(JP,A)
【文献】 特開2010−018503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86−53/90
53/94
53/96
B01J 21/00−38/74
C01F 1/00−17/00
F01N 3/00
3/02
3/04−3/38
9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナを含む多孔質耐火性酸化物担体に含浸させた白金族金属成分を含む触媒組成物であって、前記多孔質耐火性酸化物担体が、細孔面積のみに基づく2次元計算により求められた平均細孔半径が300Å〜,000Åの範囲にあり、合計侵入体積が2.0〜2.3ml/gであり、気孔率が少なくとも85%であり、前記多孔質耐火性酸化物担体の合計細孔面積が150〜200m/gである、触媒組成物。
【請求項2】
前記白金族金属成分が、パラジウム、白金またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記白金族金属成分が、パラジウムと白金との組み合わせであり、白金が、合計白金族金属成分に対して約10質量%〜約80質量%で存在する、請求項1または2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記多孔質耐火性酸化物担体が、前記多孔質耐火性酸化物担体の合計質量に対して少なくとも90質量%のアルミナを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記多孔質耐火性酸化物担体が、安定化されたアルミナを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
酸素吸蔵成分に含浸させた白金族金属をさらに含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記酸素吸蔵成分がセリアを含む、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記酸素吸蔵成分がセリア−ジルコニア複合材である、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記セリア−ジルコニア複合材が、前記セリア−ジルコニア複合材の合計質量に対して少なくとも10質量%のセリアを含む、請求項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
ガス流に適合した複数個のチャネルを有する触媒基材を含む触媒物品であって、各チャネルが内部に分散された被覆を有し、前記被覆が請求項1からのいずれか一項に記載の少なくとも1種の触媒組成物を含む、触媒物品。
【請求項11】
前記触媒基材が金属またはセラミックハニカムである、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記ハニカムが、ウォールフローフィルター基材またはフロースルー基材を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記触媒組成物が、少なくとも約1.0g/inの担持量で前記触媒基材に塗布されている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記被覆が、請求項1から10のいずれか一項に記載の触媒組成物の形態の第一の触媒成分を、第二の耐火性酸化物担体に含浸させた第二のPGM成分、塩基性金属酸化物またはこれらの組み合わせから成る群より選択されるさらなる触媒成分と任意に組み合わせて含む第一の層と、第三の耐火性酸化物担体に含浸させたロジウムを含む第二の層とを含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項15】
少なくとも1つの層が、約0.25〜約1.5g/inの範囲の、多孔質耐火性酸化物成分に含浸させたPGM成分の担持量を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記第一の触媒成分において、前記PGM成分がパラジウムであり、前記多孔質耐火性酸化物担体がアルミナを含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記第二の層が、OSCに含浸させたPGM成分をさらに含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項18】
前記第一の層および前記第二の層のうち少なくとも1つが、上流域および下流域に区分されている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項19】
前記上流域が前記第一の触媒成分を含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項20】
前記下流域が、1種または複数種の塩基性金属酸化物と、OSCに含浸させたPGM成分とを含む、請求項19に記載の触媒物品。
【請求項21】
前記触媒基材への合計PGM担持量が、約10〜約200g/ftの範囲にある、請求項1から2のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項22】
排ガス中のCO、HCおよびNOxレベルを低減させる方法であって、前記ガスと触媒とを、前記ガス中のHC、COおよびNOxレベルを低減させるのに十分な時間、十分な温度で接触させることを含み、前記触媒が請求項1からのいずれか一項に記載の触媒組成物を含む、方法。
【請求項23】
前記排ガス流中に存在するCO、HCおよびNOxレベルを、前記触媒との接触前の排ガス流中のCO、HCおよびNOxレベルに比べて、少なくとも50%低減させる、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から2のいずれか一項に記載の触媒物品を製造する方法であって、
a.多孔質耐火性酸化物担体に白金族金属成分の塩を含浸させ、白金族金属(PGM)含浸多孔質耐火性酸化物担体を形成すること、
b.前記PGM含浸多孔質耐火性酸化物担体をか焼すること、
c.前記か焼したPGM含浸多孔質耐火性酸化物担体を水溶液に混合することでスラリーを製造すること、
d.前記スラリーをモノリス基材に被覆すること、および
e.前記被覆したモノリス基材をか焼して、前記触媒物品を得ること
を含む、方法。
【請求項25】
酸素吸蔵成分に白金族金属成分の塩を含浸させ、白金族金属(PGM)含浸酸素吸蔵成分を形成することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記白金族金属(PGM)含浸酸素吸蔵成分をか焼することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記か焼した白金族金属(PGM)含浸酸素吸蔵成分を前記スラリーに添加することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記PGMがパラジウムであり、前記耐火性金属酸化物がアルミナを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
前記PGM成分が、約10〜約200g/ftの量で前記モノリス基材に被覆されている、請求項2に記載の方法。
【請求項30】
前記モノリス基材が、金属またはセラミックハニカムである、請求項2に記載の方法。
【請求項31】
内燃機関の下流に配置された請求項1から2のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排ガス処理システム。
【請求項32】
前記内燃機関がガソリンまたはディーゼルエンジンである、請求項3に記載の排ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通常、三元転化触媒の分野、ならびに炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物を低減させるための排出ガス処理システムにおいてこれらの三元転化触媒を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から放出される排ガスを、排ガス中に含有される有害成分、例えば、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)および一酸化炭素(CO)を低減させることで浄化するために、様々な触媒が開発されてきた。
【0003】
これらの触媒は通常、排ガス処理システムの一部であり、この排ガス処理システムは、触媒コンバーター、気化式排出装置(evaporative emissions device)、洗浄装置(scrubbing device)(例えば、炭化水素、硫黄など)、微粒子フィルター、補足剤、吸着剤、吸収剤、非熱プラズマ反応器など、ならびに前述の装置のうち少なくとも1個を含む組み合わせをさらに備えていてもよい。これらの装置はそれぞれ、個別または組み合わせにおいて、様々な条件下で排ガス流中の有害成分(複数可)のうちのいずれか1種の濃度を低減させる能力という観点で評価可能である。
【0004】
触媒コンバーターは例えば、排ガス処理システムと一緒に使用される排気物質制御装置の1種であり、基材上に配置された1種または複数種の触媒材料を含む。触媒材料の組成、基材の組成、および触媒材料を基材上に配置する方法は、触媒コンバーターを互いに区別する1つの手段として機能する。
【0005】
例えば、触媒コンバーターの触媒複合材は、1種または複数種の耐火性金属酸化物担体上に分散した白金族金属(PGM)をしばしば含む。典型的には、これらの触媒複合材は、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)といったガス状汚染物質を低減させるために、内燃機関の排ガス流の処理において使用されることが公知である。これらの触媒複合材は、三元転化触媒(TWC)と呼ばれる。典型的には、これらの触媒複合材は、1種または複数種の触媒被覆組成物を堆積させて、セラミックまたは金属基材キャリア(例えば、本明細書において以下に記載されるフロースルーハニカムモノリスキャリア)上に形成されている。
【0006】
例えば、パラジウム(Pd)を、耐火性金属酸化物担体、例えばアルミナに含浸させることが一般的である。Pdが担持されたアルミナを使用するTWC触媒複合材は、ガソリンおよびディーゼル内燃機関から生じる排ガス排出物の処理においてしばしば使用される。しかしながら、これらの担体は、水熱安定性の欠如という問題を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排出規制がより厳しくなっているため、触媒の性能および安定性が改善された触媒複合材を開発する必要性が継続的にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガス状の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)を少なくとも部分的に転化させるのに適した三元転化(TWC)触媒組成物を提供する。TWC触媒組成物は、多孔質耐火性酸化物担体に含浸させたPGM成分を含み、かつ酸素吸蔵成分(OSC)に含浸させた同じPGM成分を任意に含んでいてもよい。TWC触媒組成物において現用の多孔質耐火性酸化物担体とは異なり、本発明の多孔質耐火性酸化物担体は、気孔率が少なくとも80%であり、合計侵入体積が少なくとも1.8ml/gであり、かつ平均細孔半径が約250Å〜約5,000Åの範囲にある。本発明のTWC触媒組成物を使用する場合、これらの特性(すなわち、高い気孔率、大きな侵入体積および平均細孔半径)の組み合わせが、HC、COおよびNOxの効率的な触媒転化に寄与するのである。さらに、例えばTWC触媒組成物の改善された物理特性が観察され、この物理特性としては、水熱安定性、PGM分散性および物質移動特性が挙げられる。
【0009】
本発明の一態様は、多孔質耐火性酸化物担体に含浸させた白金族金属成分を含む触媒組成物であって、多孔質耐火性酸化物担体が、平均細孔半径が約250Å〜約5,000Åの範囲にあり、合計侵入体積が少なくとも約1.8ml/gであり、気孔率が合計体積に対して少なくとも約80%である、触媒組成物に関する。
【0010】
幾つかの実施形態において、多孔質耐火性酸化物担体は、合計細孔面積が少なくとも約50m/g(例えば、水銀ポロシメトリーにより測定)である。
【0011】
幾つかの実施形態において、白金族金属を酸素吸蔵成分に含浸させる。別の実施形態において、白金族金属成分はパラジウムである。一実施形態において、多孔質耐火性酸化物担体はアルミナである。特定の実施形態において、アルミナ担体を、さらなる金属酸化物、例えば、La、Mg、Ba、Sr、Zr、Ti、Si、Ce、Mn、Nd、Pr、Sm、Nb、W、Mo、Feの酸化物またはこれらの組み合わせにより改質または安定化させることができる。
【0012】
幾つかの実施形態において、白金族金属成分は、パラジウムと白金との組み合わせであり、ここで白金は、合計白金族金属成分の約10質量%〜約80質量%で存在する。例えば、幾つかの実施形態において、白金は、合計白金族金属成分の約20質量%〜約60質量%で存在する。
【0013】
幾つかの実施形態において、多孔質耐火性酸化物担体は、多孔質耐火性酸化物担体の合計質量に対して少なくとも90質量%のアルミナを含む。幾つかの実施形態において、多孔質耐火性酸化物担体は、安定化されたアルミナを含む。
【0014】
別の実施形態において、酸素吸蔵成分はセリアを含む。一実施形態において、酸素吸蔵成分はセリア−ジルコニア複合材である。別の実施形態において、セリア−ジルコニア複合材は、酸素吸蔵成分の合計質量に対して少なくとも10質量%のセリアを含む。
【0015】
本発明の別の態様は、ガス流に適合した複数個のチャネルを有する触媒基材を含む触媒物品であって、各チャネルが内部に分散された被覆を有し、被覆が本発明による触媒組成物を含む、触媒物品に関する。一実施形態において、触媒基材は、金属またはセラミックハニカムである。別の実施形態において、ハニカムは、ウォールフローフィルター基材またはフロースルー基材を含む。
【0016】
別の実施形態において、触媒組成物は、少なくとも約1.0g/inの担持量で基材に塗布されている。
【0017】
幾つかの実施形態において、被覆は、先の請求項のいずれか一項に記載の触媒組成物の形態の第一の触媒成分を、第二の耐火性酸化物担体に含浸させた第二のPGM成分、塩基性金属酸化物に含浸させた第二のPGM成分またはこれらの組み合わせから成る群より選択されるさらなる触媒成分と任意に組み合わせて含む第一の層と、第三の耐火性酸化物担体に含浸させたロジウムを含む第二の層とを含む。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの層は、約0.25〜約1.5g/inの範囲の、多孔質耐火性酸化物成分に含浸させたPGM成分の担持量を含む。幾つかの実施形態において、第一の触媒成分において、PGM成分はパラジウムであり、多孔質耐火性酸化物担体はアルミナを含む。別の実施形態において、第二の層は、OSCに含浸させたPGM成分をさらに含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、第一の層および第二の層のうち少なくとも1つは、上流域および下流域に区分されている。幾つかの実施形態において、下流域は、1種または複数種の塩基性金属酸化物と、OSCに含浸させたPGM成分とを含む。別の実施形態において、触媒基材への合計PGM担持量は、約10〜約200g/ftの範囲にある。
【0019】
本発明の別の態様は、排ガス中のCO、HCおよびNOxレベルを低減させる方法であって、ガスと触媒とを、ガス中のHC、COおよびNOxレベルを低減させるのに十分な時間および温度で接触させることを含む、方法に関する。一実施形態において、排ガス流中に存在するCO、HCおよびNOxレベルを、触媒との接触前の排ガス流中のCO、HCおよびNOxレベルに比べて、少なくとも50%低減させる。
【0020】
本発明の別の態様は、触媒物品を製造する方法であって、
多孔質耐火性酸化物担体に白金族金属成分の塩を含浸させ、多孔質耐火性酸化物担体に含浸させた白金族金属(PGM)を形成すること、
PGM含浸多孔質耐火性酸化物担体をか焼すること、
PGM含浸多孔質耐火性酸化物担体を水溶液に混合することでスラリーを製造すること、
スラリーをモノリス基材(例えば、金属またはセラミックハニカム基材)に被覆すること、および
被覆したモノリス基材をか焼して、触媒物品を得ること
を含む、方法に関する。
【0021】
一実施形態において、本方法は、酸素吸蔵成分に白金族金属成分の塩を含浸させ、白金族金属(PGM)含浸酸素吸蔵成分を形成することをさらに含む。一実施形態において、白金族金属(PGM)含浸酸素吸蔵成分をか焼した。別の実施形態において、PGMはパラジウムであり、耐火性酸化物担体はアルミナを含む。
【0022】
一実施形態において、PGM成分はパラジウムであり、ここで例えば、モノリス基材に堆積したパラジウムの合計量は、約10〜約200g/ftである。幾つかの実施形態において、PGM成分は、PdとPtとの組み合わせであり、質量比は例えば、Pd:Pt=約20:1〜約1:1である。特定の実施形態において、モノリス基材に堆積したPdとPtとの合計量は、約10〜約200g/ftであり、ある特定の実施形態において、Ptは、合計PGM含量の約5〜50質量%を示す。
【0023】
多孔質アルミナ上のPGMは、基材上に存在する触媒層のいずれかの中に、例えば約0.25〜1.5g/inの量で存在していてもよい。多孔質アルミナ上のPGM(例えば、多孔質アルミナ上のPd)は、あらゆる層状または区分された構成物の中に位置していてもよく、ここで例えば、多孔質アルミナ上のPdは、区分された触媒被覆における被覆基材の前部に位置している。さらに、多孔質アルミナ上のPdを、その他のPd/多孔質担体材料、例えばその他の耐火性酸化物(例えば、気孔率がより低いアルミナ、Pr−ZrO、La−ZrOなど)と混合して、Pdまたはその他のPGM成分を担持することができる。
【0024】
別の実施形態において、触媒物品は、内燃機関の下流に配置されている。別の実施形態において、内燃機関はガソリンまたはディーゼルエンジンである。
【0025】
本発明の実施形態を理解するために、添付図面を参照するが、この添付図面は、必ずしも縮尺通りに描かれてはおらず、参照番号は、本発明の例示的な実施形態の成分を指す。これらの図面は、単なる例であって、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による触媒物品(すなわち、三元転化(TWC)触媒)の被覆組成物を含み得るハニカム型基材キャリアの斜視図である。
図2】基材がモノリスフロースルー基材である実施形態について、図1を拡大して図1の基材キャリアの端面に対して平行な平面を切り取った部分断面図である。これは、図1に示される複数のガス流路の拡大図を示す。
図3図1を拡大した部分断面図である。図1のハニカム型基材キャリアは、ウォールフローフィルター基材モノリスを示す。
図4】第一のPGM(PGM)を含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)と、PGM含浸酸素吸蔵成分(OSC)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせを第一の(底部)層中に有し、第二のPGM(PGM)を含浸させたROSを第二の(上部)層中に有する被覆された標準的な三元転化(TWC)触媒を示す図である。第一の層中の第一のPGMを含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)は、第二の層中の第二のPGMを含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)と同じものではない。
図5】第一のPGM(PGM)を含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)と、PGM含浸酸素吸蔵成分(OSC)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせを第一の(底部)層中に有し、かつ第一のPGM(PGM)を含浸させたROSと、第二のPGM(PGM)を含浸させたROSとの組み合わせを第二の(上部)層中に有する被覆された標準的な三元転化(TWC)触媒を示す図である。第一のPGMを含浸させたROSは、第二のPGMを含浸させたROSと同じものではない。
図6】第一のPGM(PGM)を含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)を第一の(底部)層中に有し、かつ第二のPGM(PGM)を含浸させたROSと、PGM含浸OSCと、塩基性金属酸化物(複数可)との組み合わせを第二の(上部)層中に有する被覆された標準的な三元転化(TWC)触媒を示す図である。
図7】第一のPGM(PGM)を含浸させたROSを第一の(底部)層中に有し、かつ区分された第二の(上部)層を有する区分された三元転化(TWC)触媒を示す図である。第二のPGM(PGM)を含浸させたROSが、上流域内にあり、第二のPGM(PGM)を含浸させたROSと、PGM含浸OSCと、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせが、下流域内にある。
図8】第一のPGM(PGM)を含浸させたROSの区分された第一の(底部)層を上流域内に有し、かつ第一のPGM(PGM)を含浸させたROSと、PGM含浸OSCと、塩基性金属酸化物(複数可)との組み合わせを下流域内に有し、かつROSに含浸させた第二のPGM(PGM)を第二の(上部)層中に有する区分された三元転化(TWC)触媒を示す図である。
図9】第一のPGM(PGM)を含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせを第一の(底部)層中に有し、かつ第二のPGM(PGM)を含浸させたROSと、PGM含浸OSCとの組み合わせを第二の(上部)層中に有する三元転化(TWC)触媒を示す図である。
図10】第一のPGM(PGM)を含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)と、PGM含浸酸素吸蔵成分(OSC)との組み合わせを第一の(底部)層中に有し、かつ第二のPGM(PGM)を含浸させたROSと、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせを第二の(上部)層中に有する三元転化(TWC)触媒を示す図である。
図11】水銀ポロシメトリーによる実験から得られた細孔径の半径(オングストローム)の関数としての対数微分(log differential)侵入体積(mL/g)を示す折れ線グラフである。
図12図12のx軸の拡大を示す折れ線グラフである。x軸は、約10〜約10,000オングストロームの範囲を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
これより、本発明を以下でより十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が綿密かつ完全になるように行われ、当業者に対して本発明の範囲を十分に伝えるものである。本願および請求項において使用されるように、単数形の「1つ(a,an)」および「その(the)」には、文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、複数の指示物が含まれる。
【0028】
本発明には、ガス状の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)を少なくとも部分的に転化させるのに適した三元転化(TWC)触媒組成物が記載されている。TWC触媒組成物は、多孔質耐火性酸化物担体に含浸させたPGM成分を含み、かつ酸素吸蔵成分に含浸させた同じPGM成分を任意に含んでいてもよい。本発明において使用される多孔質耐火性酸化物担体は、気孔率が少なくとも80%であり、平均細孔半径が約250Å〜約1,000Åの範囲にあり、かつ合計侵入体積が少なくとも1.8ml/gである。多くの耐火性酸化物担体は「多孔質」であると考えられるが、このような耐火性酸化物担体における、高い気孔率、平均細孔半径および大きな侵入体積の組み合わせが、HC、COおよびNOxの効率的な触媒転化に寄与するのである。さらに、このような多孔質耐火性酸化物担体を含むTWC触媒組成物は、現用のTWC触媒組成物に比べて、物理特性、例えば、水熱安定性、PGM分散性および物質移動特性が改善されてもいる。
【0029】
本願の目的に関して、下記の用語は、以下に記載の意味をそれぞれ有するものとする。
【0030】
本明細書で使用されているように、「触媒」または「触媒組成物」という用語は、反応を促進する材料を指す。本明細書で使用されているように、「触媒系」という熟語は、2種以上の触媒の組み合わせ、例えば第一の触媒と第二の触媒との組み合わせを指す。触媒系は、2種の触媒が一緒に混合された被覆の形態にあってもよい。
【0031】
本明細書で使用されているように、「上流」および「下流」という用語は、エンジンから排気管へと流れるエンジンの排ガスの流れに従った相対的な方向を指し、エンジンは上流に位置しており、排気管および汚染軽減物品、例えばフィルターおよび触媒は、エンジンの下流にある。
【0032】
本明細書で使用されているように、「流(れ)」という用語は、固形物または液体微粒子状物質を含有し得る流動ガスのあらゆる組み合わせを幅広く指す。「ガス流」または「排ガス流」という用語は、ガス状成分、例示的には、飛沫同伴した非ガス状成分、例えば液滴、固体微粒子などを含有し得るリーンバーンエンジンの排気の流れを意味する。典型的には、リーンバーンエンジンの排ガス流は、燃焼生成物、不完全燃焼の生成物、窒素酸化物、可燃性および/または炭素質の微粒子状物質(煤煙)、ならびに未反応の酸素および窒素をさらに含む。
【0033】
本明細書で使用されているように、「基材」という用語は、触媒組成物が置かれるモノリス材料を指し、典型的には、これは、表面に触媒組成物を含む複数の粒子を含有する被覆の形態である。被覆は、液体ビヒクル中に特定の固体含量(例えば、30〜90質量%)の粒子を含有するスラリーを製造し、その後、このスラリーを基材に被覆し、乾燥させ、ウォッシュコート層、すなわち被覆をもたらすことで形成される。
【0034】
本明細書で使用されているように、「ウォッシュコート」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味、すなわち、処理されるガス流を通過させるのに十分に多孔質な基材材料、例えばハニカム型キャリア部材に塗布された触媒またはその他の材料の薄い接着性被覆を意味する。
【0035】
本明細書で使用されているように、「触媒物品」という用語は、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、触媒組成物を含有する被覆を基材上に含むことができる。触媒物品は、「新鮮」であってもよく、これは、触媒物品が新品であり、長期間のいかなる熱または熱負荷にも曝されたことがないことを意味する。「新鮮」とは、触媒が最近製造され、いかなる排ガスにも曝されたことがないことも意味し得る。同様に、「エージングした」触媒物品とは、新品ではなく、排ガスおよび/または高温(すなわち、500℃超)に長期間(すなわち、3時間超)にわたり曝されたものである。
【0036】
本明細書で使用されているように、「含浸させた」または「含浸」という用語は、触媒材料が担体材料の多孔質構造に浸透することを指す。
【0037】
触媒組成物
触媒組成物は、多孔質耐火性酸化物担体(ROS)に含浸させたPGM成分を含む。触媒組成物は、酸素吸蔵成分(OSC)または耐火性酸化物担体(ROS)に含浸させた第二のPGM成分をさらに含むことができる。本明細書で使用されているように、「白金族金属」または「PGM」は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)およびこれらの混合物を含む白金族金属またはこれらの酸化物を指す。特定の実施形態において、各担体中のPGM成分は同じである。幾つかの実施形態において、各担体中のPGM成分は異なる。一実施形態において、多孔質耐火性酸化物担体に含浸させたPGM成分および酸素吸蔵成分に含浸させたPGM成分は、Pdである。1つまたは複数の実施形態において、個別のPGM成分は、白金族金属、例えば白金とパラジウムとの組み合わせを、例えば約0.1:10〜約10:0.1、好ましくは約0.1:2〜約1:1の質量比で含む。他の実施形態において、個別のPGM成分は、白金またはパラジウムを含む。幾つかの実施形態において、個別のPGM成分はRhを含む。各PGM成分(例えば、Pt、Pd、Rhまたはこれらの組み合わせ)の濃度は変動し得るが、典型的には、含浸された多孔質耐火性酸化物担体または酸素吸蔵成分の質量に対して約0.1質量%〜約10質量%(例えば、含浸された担体材料に対して約1質量〜約6質量%)であろう。
【0038】
幾つかの実施形態において、触媒組成物は、触媒組成物中に存在する耐火性酸化物成分に含浸させたPGM成分(例えば、Pd)の量が、触媒組成物中に存在する酸素吸蔵成分に含浸させたPGM成分(例えば、Pd)の質量の約1〜約10倍、好ましくは約1〜約5倍の範囲になるように、多孔質耐火性酸化物担体に含浸させたPGM成分と、酸素吸蔵成分に含浸させた同じPGM成分との組み合わせを含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、触媒組成物は、PGM含浸耐火性酸化物材料またはPGM含浸OSCと混合した塩基性金属酸化物(複数可)(すなわち、BMO)をさらに含む。当技術分野において公知のあらゆる塩基性金属(複数可)、例えば、BaO、SrO、Laおよびこれらの組み合わせ(例えば、BaO−ZrO)を使用することができる。
【0040】
本明細書で使用されているように、「多孔質耐火性酸化物」は、高温、例えばガソリンおよびディーゼルエンジンの排気に関連した温度で化学的安定性および物理的安定性を示す多孔質金属含有酸化物担体を指す。例示的な多孔質耐火性酸化物としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリアおよびこれらの物理的混合物または化学的な組み合わせが挙げられ、これには、原子をドープした組み合わせおよび高表面積の化合物または活性化合物、例えば活性アルミナが含まれる。幾つかの実施形態において、アルミナは、アルカリ金属、半金属および/または遷移金属、例えば、La、Mg、Ba、Sr、Zr、Ti、Si、Ce、Mn、Nd、Pr、Sm、Nb、W、Mo、Feまたはこれらの組み合わせの金属酸化物(複数可)で改質されている。幾つかの実施形態において、アルミナの表面は、主に金属酸化物(複数可)で改質されており、それにより、アルミナの触媒特性が変化する(例えば、利用可能な触媒サイトにおける変化)。幾つかの実施形態において、アルミナを改質するために使用される金属酸化物(複数可)の量は、アルミナの量に対して約0.5質量%〜約10質量%の範囲にあり得る。幾つかの実施形態において、このような耐火性酸化物担体中のアルミナの量は、多孔質耐火性酸化物担体の合計量に対して少なくとも90質量%である。
【0041】
幾つかの実施形態において、セリアで改質された耐火性酸化物は、耐火性酸化物材料の量に対して約5質量%〜約75質量%の量の範囲にある。
【0042】
金属酸化物の例示的な組み合わせとしては、アルミナ−ジルコニア、セリア−ジルコニア、アルミナ−セリア−ジルコニア、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−ランタナ−アルミナ、バリア−ランタナ−ネオジミア−アルミナおよびアルミナ−セリアが挙げられる。幾つかの実施形態において、Rhのための例示的な金属酸化物担体としては、アルミナ、ジルコニア−アルミナ、ランタナ−ジルコニア、ジルコニア、セリア−ジルコニアが挙げられる。例示的なアルミナとしては、大細孔べーマイト、ガンマ型アルミナおよびデルタ型/シータ型アルミナが挙げられる。有用な市販のアルミナとしては、安定化された酸化物を含む、活性アルミナ、例えば、かさ密度が高いガンマ型アルミナ、かさ密度が低いまたは中程度の大細孔ガンマ型アルミナ、ならびにかさ密度が低い大細孔べーマイトおよびガンマ型アルミナが挙げられる。
【0043】
幾つかの実施形態において、アルミナは、「安定剤」、例えば、アルカリ金属、半金属および/または遷移金属、例えば、La、Ba、Sr、Zr、Ti、Si、Mgまたはこれらの組み合わせの金属酸化物(複数可)を使用して改質され、この安定剤により、未改質の酸化アルミニウムの熱安定性を向上させることができる。残念なことに、未改質のγ型酸化アルミニウムを高温に加熱すると、結晶格子内の原子の構造が経時的に崩壊し、表面積が大幅に減少し、結果として、γ型酸化アルミニウムを含有する触媒組成物の触媒活性も同様に減少する。よって、安定化された酸化アルミニウムを使用する場合、安定化された酸化アルミニウムの合計質量に対して、好ましくは約40質量パーセント(質量%)までの安定剤を使用することができ、約2質量%〜約30質量%の安定剤が好ましく、約4質量%〜約10質量%の安定剤がより好ましい。このような酸化アルミニウム成分の例としては、ランタニド(La)で安定化されたガンマ型酸化アルミニウム(本明細書ではLa−γ型酸化アルミニウムと称する)、シータ型酸化アルミニウム(本明細書ではθ型酸化アルミニウムと称する)、バリウム(Ba)で安定化されたガンマ型酸化アルミニウム(本明細書ではBa−γ型酸化アルミニウムと称する)または前述の酸化アルミニウムのうち少なくとも1種を含む組み合わせを挙げることができる。
【0044】
先に言及したように、各耐火性酸化物担体は、それに関連した気孔率を有し得る。本明細書で使用されているように、気孔率は、成分が占める合計体積に対する細孔容積の比率(例えば、成分において細孔が占める合計体積)である。気孔率自体は、材料の密度に関係する。また成分の気孔率は、成分内に画定された個別の細孔の径に応じて分類される。本明細書で使用されているように、細孔は、粒子内に開口部および/または通路を含む。細孔の半径は不規則(例えば、可変かつ不均一)であり得るため、細孔半径は、細孔が存在する成分の表面において求めた細孔の平均断面積を反映し得る。幾つかの実施形態において、大細孔耐火性酸化物担体は、アルミナ、例えば酸化アルミニウムである。
【0045】
IUPACに従った細孔径による分類には、ミクロ気孔率、メソ気孔率およびマクロ気孔率成分が含まれる。ミクロ孔成分は、直径約20オングストローム(Å)未満の細孔を有する。メソ孔成分は、直径約20Å〜500Åの細孔を有する。マクロ孔成分は、直径約500Å超の細孔を有する。幾つかの実施形態において、多孔質耐火性酸化物担体はマクロ多孔質である。
【0046】
幾つかの実施形態において、多孔質耐火性酸化物担体は、約250〜約5,000Å、好ましくは約300〜約5,000Å、より好ましくは約300〜約1,000Åの範囲にある平均細孔半径の細孔を有し、ここで大細孔耐火性酸化物担体の合計細孔容積の少なくとも40%は、このような平均細孔半径の細孔に関連する。多孔質耐火性酸化物担体の細孔容積の約50%以上、より好ましくは約80%以上が、約250Å〜約5,000Åの平均半径を有する細孔に関連することが好ましい。細孔容積の約40%以上、好ましくは約50%以上、より好ましくは約80%以上が、約300Å〜約5,000Åの平均細孔半径を有する細孔に関連することがより好ましい。細孔容積の約40%以上、好ましくは約50%以上、より好ましくは約80%以上が、約300Å〜約1,000Åの平均細孔半径を有する細孔に関連することがさらにより好ましい。幾つかの実施形態において、平均細孔半径は、約50オングストローム〜約1,000オングストロームの範囲にある細孔のみを含む。
【0047】
多孔質耐火性酸化物担体は、合計細孔容積が、約0.5ミリリットル毎グラム(ml/g)〜約3ml/g、好ましくは約1ml/g〜約2.75ml/g、より好ましくは約1.75ml/g〜約2.5ml/gであり得る。好ましくはこの範囲内において、多孔質耐火性酸化物担体の合計細孔容積は、約1.5ml/g以上、より好ましくは約1.75ml/g以上である。幾つかの実施形態において、マクロ多孔質酸化アルミニウム担体の合計細孔容積は、好ましくは約2.5ml/g以下、より好ましくは約2ml/g以下である。幾つかの実施形態において、合計細孔容積は、水銀ポロシメトリーを使用して求められる。
【0048】
多孔質耐火性酸化物担体は、合計細孔面積が、約50〜約200平方メートル毎グラム(m/g)の範囲、または約100〜約200m/gの範囲、または約150〜約200m/gの範囲にあり得る(例えば、少なくとも約50m/g、または少なくとも約100、または少なくとも約150m/g)。幾つかの実施形態において、合計細孔面積は、水銀ポロシメトリーを使用して求めた。
【0049】
多孔質耐火性酸化物担体は、合計侵入体積が、少なくとも約1.8ml/g(例えば、約1.8ml/g以上、または約1.9ml/g以上、または約2.0ml/g以上)、例えば、約1.8ml/g〜約2.5ml/g、または約1.9〜約2.4ml/g、または約2.0〜約2.3ml/gであり得る。
【0050】
多孔質耐火性酸化物担体は、気孔率が、合計体積に対して、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約90%、例えば気孔率が、約80%〜約98%、または約80%〜約95%、または約85%〜約95%であり得る。
【0051】
高表面積の耐火性酸化物担体、例えばアルミナ担体材料は、「ガンマ型アルミナ」または「活性アルミナ」とも称され、典型的には、60m/g、しばしば約200m/gまでまたはそれ以上を上回るBET表面積を示す。「BET表面積」は、その一般的な意味を有し、すなわち、N吸着により表面積を求めるBrunauer,Emmett,Teller法を指す。1つまたは複数の実施形態において、BET表面積は、約100〜約150m/gの範囲にある。
【0052】
多孔質耐火性酸化物担体は、TWC触媒組成物において使用されると、現用の多孔質耐火性酸化物担体(すなわち、マクロ多孔質ではない担体)よりも多くの利点をもたらす。例えば、多孔質耐火性酸化物担体は、TWC組成物において使用されると、現用の多孔質耐火性酸化物担体に比べて、より良好な水熱安定性を示すことが一般的である。現用の多孔質耐火性酸化物担体は、約1ml/g未満の細孔容積を含むミクロ多孔質またはメソ多孔質のどちらかの担体である。TWC触媒はエンジンの下流かつこれに隣接して位置しており、ここで排ガス排出物の温度が、容易に約1000℃までに達し得るため、水熱安定性が重要となる。多孔質耐火性酸化物担体を含むTWC触媒は、熱によるエージングに対してより耐性があるため、触媒効率の向上および長寿命を示すだろう。
【0053】
また多孔質耐火性酸化物担体は、含浸させたPGM成分の分散性が改善されているため、従来の耐火性酸化物担体に比べて有益である。細孔(すなわち、約50オングストローム〜約1,000オングストロームの範囲にある平均細孔半径を有する細孔)の平均細孔半径が増加しているため、インシピエントウェットネス含浸の間に毛細管現象が向上することで、溶液中で同濃度のPGM成分を用いた現用の多孔質耐火性酸化物担体の含浸に比べて、担体の細孔へのPGM成分の分散性がより効率的になる。このような担体において、PGM成分の分散性は不均一であり、一部のPGM粒子は、まとまって塊になり得る。
【0054】
最近では、多孔質耐火性酸化物担体は、現用の多孔質耐火性酸化物担体に比べて、より良好な物質移動特性を示す。物質移動は、排ガス流中に存在するガス状分子(例えば、HC、COおよびNOx)が耐火性酸化物担体の細孔を通って拡散して多孔質耐火性酸化物担体に含浸させた触媒組成物と会合する能力についての重要な測定項目である。同様に、多孔質耐火性酸化物担体から出てくる、HC、COおよびNOxの転化の結果として得られたガス状生成物(例えば、窒素、二酸化炭素および酸素)の拡散性が改善されることで、担体の内外におけるこれらの分子の輸送が改善され、それにより、このようなTWC触媒組成物の触媒活性が促進される。
【0055】
本明細書で使用されているように、「OSC」とは、酸素吸蔵成分であって、酸素吸蔵能を示し、かつしばしば多価酸化状態を有する構成要素であり、かつ酸化条件下で、酸化体、例えば、酸素(O)または窒素酸化物(NO)と活発に反応することができるか、または還元条件下で、還元体、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)または水素(H)と反応する、酸素吸蔵成分を指す。特定の例示的なOSCは、希土類金属酸化物であり、元素周期表に定められているスカンジウム、イットリウムおよびランタン系列の1種または複数種の酸化物を指す。適切な酸素吸蔵成分の例としては、セリアおよびプラセオジミア、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
幾つかの実施形態において、酸素吸蔵成分は、過剰量の酸素が排気流中に存在するリーンな排ガス条件下において、Ce4+へと酸化された形態にあるセリア(Ce)を含み、リッチな排ガス条件が存在する場合には、Ce3+酸化状態に還元されるように酸素を放出するセリア(Ce)を含む。セリアを、例えば、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジム(Nd)、ニオブ(Nb)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Tr)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)および前述の金属のうち少なくとも1種を含む組み合わせを含むその他の材料と組み合わせた酸素吸蔵成分として使用することもできる。例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、チタニア(TiO)、プラセオジミア(Pr11)、イットリア(Y)、ネオジミア(Nd)、ランタナ(La)、酸化ガドリニウム(Gd)または前述のもののうち少なくとも1つを含む混合物を含む様々な酸化物(例えば、酸素(O)と組み合わせた金属)を使用することもできる。
【0057】
このような組み合わせは、混合酸化物複合材を指すこともある。例えば、「セリア−ジルコニア複合材」は、セリアとジルコニアとを含む複合材を意味し、どちらかの成分の量が特定されることはない。適切なセリア−ジルコニア複合材としては、セリア−ジルコニア複合材の合計の約25質量%〜約95質量%、好ましくは約50質量%〜約90質量%、より好ましくは約60質量%〜約70質量%の範囲にあるセリア含量(例えば、少なくとも約25%、または少なくとも約30質量%、または少なくとも約40質量%のセリア含量)を有する複合材が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0058】
基材
1つまたは複数の実施形態によると、TWC触媒成分の組成物用の基材は、典型的には自動車触媒を製造するために使用される材料から構築可能であり、典型的には、金属またはセラミックハニカム構造を含む。典型的には、基材は、被覆組成物を塗布および付着させた複数の壁表面を具備しており、それにより、触媒組成物用のキャリア基材として作用する。
【0059】
例示的な金属基板としては、耐熱性金属および金属合金、例えばチタンおよびステンレス鋼、ならびに実質的に鉄であるか、または主成分が鉄であるその他の合金が挙げられる。このような合金は、ニッケル、クロムおよび/またはアルミニウムのうち1種または複数種を含有していてもよく、有利には、これらの金属の合計量に、少なくとも15質量%の合金、例えば、10〜25質量%のクロム、3〜8質量%のアルミニウムおよび20質量%までのニッケルが含まれていてもよい。また合金は、少量または極微量の1種または複数種のその他の金属、例えば、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどを含有していてもよい。表面または金属キャリアを、高温、例えば1000℃以上で酸化させて、基材の表面に酸化物層を形成し、合金の耐食性を改善し、金属表面への被覆層の接着を容易にすることができる。
【0060】
基材を構築するために使用されるセラミック材料としては、適切な耐火性材料、例えば、コーディエライト、ムライト、コーディエライト−α型アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカ−マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、シリマナイト、窒化マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α型アルミナ、アルミノシリケートなどを挙げることができる。
【0061】
適切な基材、例えば、流路が流体の流れに対して開放されているように基材の入口面から出口面へと延びる複数の微細で平行なガス流路を有するモノリスフロースルー基材を用いることができる。入口から出口への通路が本質的に直線である流路は、被覆を形成するためのウォッシュコートとして触媒材料が被覆された壁により画定されているため、流路を流れるガスが触媒材料に接触する。モノリス基材の流路は、薄壁型チャネルであり、あらゆる適切な断面形状、例えば、台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形、円形などであってもよい。このような構造は、ガス入口開口部(すなわち、「セル」)を、断面1平方インチあたり約60〜約1200個(cpsi)以上、より典型的には約300〜600cpsi含有できる。フロースルー基材の壁厚は変動してもよく、一般的な範囲は、0.002〜0.1インチである。市販で入手可能な代表的フロースルー基材は、400cpsiおよび壁厚6ミル、または600cpsiおよび壁厚4ミルのコーディエライト基材である。しかしながら、本発明は、特定の基材の種類、材料または形状に制限されることはないと理解される。
【0062】
代替的な実施形態において、基材はウォールフロー基材であってもよく、ここで各流路は、現用の多孔質プラグにより基材本体の一方の端部において閉じられており、反対側の端面で交互に流路が閉じられている。これにより、ウォールフロー基材の多孔質壁を通るガス流は、出口に達することになる。このようなモノリス基板は、約700cpsiまで、例えば約100〜400cpsi、より典型的には約200〜約300cpsiを含有できる。セルの断面形状は、上記のように変動し得る。ウォールフロー基材は、典型的には、壁厚が0.002〜0.1インチの間である。市販で入手可能な代表的ウォールフロー基材は、多孔質コーディエライトから構築されており、例示的な多孔質コーディエライトは、200cpsiおよび壁厚10ミルまたは300cpsiおよび壁厚8ミルを有し、かつ壁気孔率が、45〜65%である。その他のセラミック材料、例えば、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素もウォールフローフィルター基材として使用される。しかしながら、本発明は、特定の基材の種類、材料または形状に制限されることはないと理解される。基材がウォールフロー基材である場合、触媒組成物は、壁表面に配置されていることに加えて、多孔質壁の細孔構造に浸透する(すなわち、部分的または完全に細孔開口部を塞ぐ)ことができることに言及したい。
【0063】
図1および2は、ウォッシュコート組成物、すなわち、本明細書に記載されている被覆で被覆されたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を図示している。図1を参照すると、例示的な基材2は、円柱形の形状および円柱形の外面4と、上流側端面6と、端面6と同じ相応する下流側端面8とを有する。基材2には、その内部に複数の微細で平行なガス流路10が形成されている。図2から分かるように、流路10は、壁12により形成されており、かつキャリア2を通って上流側端面6から下流側端面8へと延び、流路10は遮られておらず、そのため、流体、例えばガス流が、そのガス流路10を介してキャリア2を縦方向に流れることができる。図2からより簡単に分かるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形の形状を有するように寸法決めおよび構成されている。示されているように、被覆組成物を、必要に応じて複数の個別層で塗布することもできる。図示した実施形態において、被覆は、キャリア部材の壁12に付着した別個の底部被覆層14と、底部被覆層14に被覆された第二の別個の上部被覆層16とから成る。本発明は、1つまたは複数(例えば、2つ、3つまたは4つ)の被覆層で実践可能であり、図示した二層の実施形態に限定されることはない。
【0064】
あるいは、図1および3は、ウォッシュコート組成物、すなわち、本明細書に記載されている被覆で被覆されたウォールフローフィルター基材の形態の例示的な基材2を図示し得る。図3から分かるように、例示的な基材2は、複数の流路52を有する。流路は、フィルター基材の内壁53により管状に囲まれている。基材は、入口端部54および出口端部56を有する。入口端部においては入口プラグ58で、出口端部においては出口プラグ60で流路が交互に塞がれて、入口54および出口56において、対向した碁盤目状の模様が形成される。ガス流62は、塞がれていないチャネル入口64を通って入り、出口プラグ60で止まり、チャネル壁53(多孔質である)を通って出口側66に拡散する。ガスは、入口プラグ58を理由に、壁の入口側に戻ることはできない。本発明において使用される多孔質ウォールフローフィルターは、前記要素の壁が、1種または複数種の触媒材料を、その上に有しているか、またはその中に含有するという点で触媒されている。触媒材料が、要素の壁の入口側にのみ、出口側にのみ、入口側および出口側の双方に存在していても、または壁自体が、すべてまたは部分的に触媒材料から成っていてもよい。本発明には、要素の入口および/または出口の壁において1つまたは複数の触媒材料層を使用する方法が含まれる。
【0065】
被覆、または触媒金属成分、または組成物のその他の成分の品質を記載する際に、触媒基材の単位体積あたりの成分質量の単位を使用することが都合がよい。よって、担体基材の空隙の体積を含む担体または基材の体積あたりの成分質量を意味するために、グラム毎立方インチ(「g/in」)およびグラム毎立方フィート(「g/ft」)の単位を本明細書において使用する。体積あたりの質量におけるその他の単位、例えばg/Lを使用することもある。例えば、幾つかの実施形態において、多孔質耐火性酸化物担体におけるPGM成分の担持量は、好ましくは約0.1〜約6g/in、より好ましくは約0.1〜約5g/inである。別の例では、幾つかの実施形態において、酸素吸蔵成分へのPGM成分の担持量は、好ましくは約0.1〜約6g/in、より好ましくは約2〜約5g/in、最も好ましくは約3〜約4g/inである。
【0066】
幾つかの実施形態において、各層中の多孔質耐火性酸化物担体または酸素吸蔵成分におけるPGM成分の担持量は、約0.25〜約1.5g/inの範囲にある。
【0067】
キャリア基材、例えばモノリスフロースルー基材における触媒組成物の合計担持量は、典型的には約0.5〜約6g/in、より典型的には約1〜約5g/inである。担体材料なしのPGM成分の合計担持量(すなわち、PtまたはPdまたはこれらの組み合わせ)は、個別の基材キャリアそれぞれについて、典型的には約10〜約200g/ftの範囲にある。
【0068】
単位体積あたりのこれらの質量は、典型的には、触媒被覆組成物による処理の前後に触媒基材を秤量することで計算されること、ならびに処理プロセスには高温で触媒基材を乾燥およびか焼することが含まれるため、これらの質量は、ウォッシュコートスラリー、すなわち、被覆スラリーにおける本質的にすべての水が除去された、本質的に溶媒不含の触媒被覆を表すことにも言及したい。
【0069】
触媒組成物を製造する方法
典型的には、PGM含浸多孔質耐火性酸化物担体またはPGM含浸酸素吸蔵成分(OSC)の製造には、微粒子形態の多孔質耐火性酸化物担体材料または酸素吸蔵成分(OSC)をPGM溶液、例えば、白金溶液またはパラジウム溶液またはこれらの組み合わせに含浸させることが含まれる。
【0070】
複数のPGM成分(例えば、白金およびパラジウム)を、インシピエントウェットネス技術を使用して、同時または個別に含浸させてもよく、かつ同じ担体粒子または個別の担体粒子に含浸させてもよい。
【0071】
毛細管式含浸(capillary impregnation)または乾式含浸とも呼ばれるインシピエントウェットネス含浸技術は、不均一系材料、すなわち、触媒を合成するためによく使用される。
【0072】
一般的に、担体は、担体の細孔を満たすのに十分な含浸剤溶液(すなわち、水性/有機溶液に溶解した金属前駆体)にのみ接触している。通常、この「インシピエントウェットネス」段階に達するために必要とされる液体の体積は、混合物がやや液状になるまで、撹拌した十分な量の担体に少量の溶媒をゆっくりと添加することで求められる。それから、この質量体積比を使用して、適切な濃度を有する金属前駆体塩の溶液を製造して、望ましい金属担持量を得る。
【0073】
典型的には、金属前駆体は、水性または有機溶液に溶解させられ、その後、金属含有溶液が、添加された溶液の体積と同じ細孔容積を含有する触媒担体に添加される。毛細管現象により、溶液が担体の細孔内に引き込まれる。担体細孔容積を上回って添加された溶液により、溶液輸送が、毛細管現象プロセスから、それよりはるかに遅い拡散プロセスに変わる。その後、触媒を乾燥およびか焼して、溶液内の揮発性成分を除去し、触媒表面に金属を析出させることができる。最大担持量は、溶液における前駆体の溶解度により制限されている。含浸させた材料の濃度プロファイルは、含浸および乾燥における細孔内の物質移動条件によって決まる。
【0074】
典型的には、担体粒子は十分に乾燥しており、実質的にすべての溶液を吸収して湿潤固形物を形成する。典型的には、PGM成分の水溶性化合物または錯体、例えば、パラジウムもしくは白金の硝酸塩、テトラアンミンパラジウムもしくは白金の硝酸塩、またはテトラアンミンパラジウムもしくは白金の酢酸塩の水溶液を用いる。担体粒子をPGM溶液で処理した後に、例えば粒子を高温(例えば、100〜150℃)で一定の時間(例えば、1〜3時間)にわたり熱処理することで、粒子を乾燥させ、その後、か焼して、PGM成分をより触媒活性な形態に転化させる。例示的なか焼プロセスには、約400〜約550℃の温度で約1〜約3時間にわたり空気中において熱処理することが含まれる。望ましいPGM含浸レベルに達するために、上記のプロセスを必要に応じて繰り返してもよい。幾つかの実施形態において、か焼を、PGM含浸多孔質耐火性酸化物担体の沈殿で置き換えられる。得られた材料は、乾燥粉末として貯蔵可能である。
【0075】
溶液中でPGM成分を使用するインシピエントウェットネスは、溶媒の合計体積に対して、約90体積%〜約105体積%、好ましくは約80体積%〜約100体積%の範囲にあり得る。幾つかの実施形態において、PGM成分はPdである。幾つかの実施形態において、PGM成分は、PtとPdとの組み合わせである。
【0076】
PGM成分(例えば、パラジウム)を担体材料に担持してもよく、ここで担持量は、PGM成分が、その各機能、例えば、一酸化炭素(CO)の酸化、炭化水素の酸化反応およびNOxの還元について活性を示すのに十分である。例えば、先に言及したように、多孔質耐火性酸化物担体および/または酸素吸蔵成分におけるPGM成分の担持量は、好ましくは約0.1〜約6g/in、より好ましくは約2〜約5g/in、最も好ましくは約3〜約4g/inである。
【0077】
基材被覆プロセス
PGM含浸多孔質耐火性酸化物担体を含有するキャリア粒子の形態の先に言及した触媒組成物を水と混合して、触媒キャリア基材、例えばハニカム型基材を被覆する目的のスラリーを形成する。幾つかの実施形態において、PGM含浸酸素吸蔵成分を、PGM含浸多孔質耐火性酸化物担体を含有するスラリーに事後的に添加する。幾つかの実施形態において、PGM含浸多孔質耐火性酸化物担体およびPGM含浸酸素吸蔵成分と水とを同時にまとめて混合することでスラリーを形成する。金属成分を担体粒子に含浸または堆積させるために使用される液体媒体が、触媒組成物中に存在し得る担体またはその化合物またはその錯体またはその他の成分と不利な反応を起こさず、かつ加熱および/または真空付加後の気化または分解により金属成分から除去可能である限り、金属成分の水溶性化合物または水分散性化合物または錯体を使用してもよい。
【0078】
触媒粒子に加えて、スラリーは、バインダーとしてのアルミナ、炭化水素(HC)吸蔵成分(例えば、ゼオライト)、水溶性もしくは水分散性安定剤(例えば、酢酸バリウム)、促進剤(例えば、硝酸ランタン)、会合性増粘剤および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性界面活性剤を含む)を任意に含有することができる。
【0079】
1つまたは複数の実施形態において、スラリーは酸性であり、pHが、例えば約2〜約7である。スラリーの一般的なpH範囲は、約4〜約5である。十分な量の無機酸または有機酸をスラリーに添加することで、スラリーのpHを低下させてもよい。酸と原材料との適合性を考慮して、これら双方の組み合わせを使用してもよい。無機酸としては、硝酸が挙げられるが、これに限定されることはない。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられるが、これらに限定されることはない。その後、必要に応じて、水溶性もしくは水分散性化合物または安定剤、例えば酢酸バリウム、および促進剤、例えば硝酸ランタンをスラリーに添加することができる。
【0080】
先に言及したように、スラリーは、炭化水素(HC)を吸着するための1種または複数種の炭化水素(HC)吸蔵成分を任意に含有することができる。あらゆる公知の炭化水素吸蔵材料、例えばゼオライトまたはゼオライトに似た材料のようなミクロ多孔質材料を使用することができる。炭化水素吸蔵材料は、ゼオライトであることが好ましい。ゼオライトは、天然ゼオライトまたは合成ゼオライト、例えば、ホージャサイト、チャバザイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM−5ゼオライト、オフレタイトまたはベータ型ゼオライトであり得る。好ましいゼオライト吸着剤材料は、アルミナに対するシリカの比率が高い。ゼオライトは、シリカ/アルミナのモル比が、少なくとも約25:1、好ましくは少なくとも約50:1、有効範囲は約25:1〜1000:1、50:1〜500:1、また約25:1〜300:1の範囲であり得る。好ましいゼオライトは、ZSM、Y型ゼオライトおよびベータ型ゼオライトが挙げられる。特に好ましい吸着剤は、米国特許第6,171,556号に開示されている種類のベータ型ゼオライトを含んでいてもよく、本明細書において、その全体を参照により組み込む。ゼオライトまたはその他のHC吸蔵成分は、存在する場合、典型的には約0.05g/in〜約1g/inの量で使用される。
【0081】
アルミナバインダーは、存在する場合、典型的には約0.05ml/g〜約1ml/gの量で使用される。アルミナバインダーは、例えば、べーマイト、ガンマ型アルミナまたはデルタ/シータ型アルミナであってもよい。
【0082】
スラリーを粉砕して、粒子の混合および均質材料の形成を向上させることができる。粉砕は、ボールミル、連続式ミルまたはその他の類似した設備内で実施可能であり、スラリーの固体含量は、例えば約20〜60質量%、より詳細には約30〜40質量%であり得る。一実施形態において、粉砕後スラリーは、D90粒径が、約10〜約40ミクロン、好ましくは10〜約25ミクロン、より好ましくは約10〜約20ミクロン(すなわち、少なくとも40ミクロン未満、または少なくとも25ミクロン未満、または少なくとも20ミクロン未満)であることを特徴とする。D90は粒径として定義され、ここで90%の粒子がより微細な粒径を有する。
【0083】
その後、当技術分野において公知の被覆技術を使用して、スラリーを触媒基材に被覆する。一実施形態において、触媒基材を、1回または複数回スラリーに浸漬するか、そうでなければ、スラリーで被覆して、望ましい担持量の担体、例えば一回の浸漬あたり約0.5〜約2.5g/inを触媒基材に堆積させる。その後、被覆された基材を、高温(例えば、100〜150℃)で一定の時間(例えば、1〜3時間)にわたり乾燥させ、次いで、例えば400〜600℃での加熱により、典型的には約10分〜約3時間にわたりか焼する。
【0084】
PGM含浸OSCが存在する場合、このようなOSCを被覆層に供給することは、例えば混合酸化物複合材を使用して達成可能である。例えば、PGM含浸セリアを、セリウムおよびジルコニウムの混合酸化物の複合材として、かつ/またはセリウム、ジルコニウムおよびネオジミウムの混合酸化物の複合材として供給することができる。例えば、プラセオジミアを、プラセオジミウムとジルコニウムとの混合酸化物複合材として、かつ/またはプラセオジミウムと、セリウムと、ランタンと、イットリウムと、ジルコニウムと、ネオジミウムとの混合酸化物複合材として供給することができる。
【0085】
か焼後に、上記の被覆技術により得られた触媒担持量を、被覆された基材の質量と被覆されていない基材の質量との差を計算することで求めることができる。当業者にとって明らかであるように、触媒担持量は、スラリーの流動性を変えることで変更可能である。さらに、被覆を生成するための被覆/乾燥/か焼プロセスを必要に応じて繰り返して、被覆を望ましい担持量レベルまたは厚さに構築することができ、これは、1つより多くの被覆が塗布され得ることを意味する。
【0086】
本明細書に開示されている触媒物品に関連のある設計としては、区分された層状の選択触媒還元物品が挙げられる。幾つかの実施形態において、触媒組成物は、単一層として、または多層で塗布可能である。一実施形態において、触媒組成物は単一層で塗布される(例えば、図2の層16のみ)。一実施形態において、触媒組成物は多層で塗布され、各層は、異なるまたは同じ組成物を有する(例えば、図2の層14および16)。例えば、第一の(底部)層(図4)は、第一のPGMを含浸させた多孔質耐火性酸化物担体(ROS)(例えば、Pd/アルミナ)と、PGM含浸酸素吸蔵成分(OSC)(例えば、Pd/セリア−ジルコニア複合材)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせを含む本発明の触媒組成物を含むことができ、第二の(上部)層は、第二のPGMを含浸させたROS(Rh/ROS)を含む本発明の触媒組成物を含むことができる。別の例において、底部層(例えば、図5)は、第一のPGMを含浸させた多孔質耐火性酸化物担体(ROS)(例えば、Pd/アルミナ)と、PGM含浸酸素吸蔵成分(OSC)(例えば、Pd/セリア−ジルコニア複合材)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせを含む本発明の触媒組成物を含むことができ、上部層は、第一のPGMを含浸させたROS(例えば、Pd/アルミナ)と、第二のPGMを含浸させたROS(Rh/ROS)との組み合わせを含む本発明の触媒組成物を含むことができる。
【0087】
さらに別の例において、底部層(例えば、図6)は、第一のPGMを含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)(例えば、Rh/ROS)を含む本発明の触媒組成物を含むことができ、上部層は、第二のPGMを含浸させた多孔質ROS(例えば、Pd/アルミナ)と、PGM含浸OSC(Pd/セリア−ジルコニア複合材)と、塩基性金属酸化物(複数可)との組み合わせを含む本発明の触媒組成物を含むことができる。
【0088】
さらに別の例において、底部層(例えば、図9)は、第一のPGMを含浸させた多孔質耐火性酸化物担体(ROS)(例えば、Pd/アルミナ)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)とを含む本発明の触媒組成物を含むことができ、上部層は、第二のPGMを含浸させたROS(例えば、Rh/ROS)と、PGM含浸OSC(例えば、Pd/セリア−ジルコニア複合材)との組み合わせを含む本発明の触媒組成物を含むことができる。
【0089】
別の例において、底部層(例えば、図10)は、第一のPGMを含浸させた耐火性酸化物担体(ROS)(例えば、Rh/ROS)と、PGM含浸酸素吸蔵成分(OSC)(例えば、Pd/セリア−ジルコニア複合材)との組み合わせを含む本発明の触媒組成物を含むことができ、上部層(例えば、図10)は、第二のPGMを含浸させた多孔質耐火性酸化物担体(ROS)(例えば、Pd/アルミナ)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせを含む本発明の触媒組成物を含むことができる。
【0090】
1つまたは複数の実施形態において、触媒系は、層状の触媒物品を含み、ここで少なくとも1つの層が、2つの帯域、すなわち、上流域および下流域から成る。
【0091】
1つまたは複数の実施形態において、層状の触媒物品は、軸状に区分された構成物であり、ここで上流域を含む触媒組成物が、下流域を含む触媒組成物の上流にある同じ基材に被覆されている。
【0092】
1つまたは複数の実施形態によると、このような基材に被覆された上流域を含む触媒組成物の量は、基材の軸長の約1%〜約95%、より好ましくは約25%〜約75%、さらにより好ましくは約30%〜約65%の範囲にあり得る。
【0093】
図7を参照すると、軸状に区分された系の例示的な実施形態が示されている。層状の触媒物品が示されており、ここで第一の層(底部層)は、PGM含浸耐火性酸化物材料(例えば、Rh/ROS)を含み、第二の(上部)層は、軸状に区分された配置にあり、ここで第二のPGMを含浸させた多孔質ROS(例えば、Pd/アルミナ)は、上流域にあり、第二のPGMを含浸させた多孔質ROS(例えば、Pd/アルミナ)と、PGM含浸OSC(Pd/セリア−ジルコニア複合材)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせは、下流域にある。
【0094】
図8には別の例が示されており、ここで第一の層(底部層)は、軸状に区分された配置にあり、ここで第一のPGMを含浸させた多孔質ROS(例えば、Pd/アルミナ)は、上流域にあり、第二のPGMを含浸させた多孔質ROS(例えば、Pd/アルミナ)と、PGM含浸OSC(Pd/セリア−ジルコニア複合材)と、塩基性金属酸化物(複数可)(BMO)との組み合わせは、下流域にあり、第二の(上部)層は、第二のPGMを含浸させた耐火性酸化物材料(例えば、Rh/ROS)を含む。
【0095】
各層における触媒組成物(複数可)の相対量は変動してもよく、例示的な二重層被覆は、底部層(基材表面に隣接する)において、PGM成分を含む触媒組成物の合計質量を約10〜90質量%含み、上部層において、触媒組成物の合計質量を約10〜90質量%含む。
【0096】
炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)を転化させる方法
典型的には、ガソリンまたはディーゼルエンジンの排ガス流中に存在する炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物を転化させて、以下に示す式に記載のように、二酸化炭素、窒素、酸素および水にすることができる:
2NOx→xO+N
2CO+O→2CO
2x+2+[(3x+1)/2]O→xCO+(x+1)H
【0097】
典型的には、エンジンの排ガス流中に存在する炭化水素は、C〜C炭化水素(すなわち、低級炭化水素)を含むが、高級炭化水素(C超)も検出され得る。
【0098】
本発明の態様自体は、排ガス流中のHC、COおよびNOxの量を部分的に転化させる方法であって、ガス流と、ここに含まれる実施形態に記載の触媒組成物とを、排ガス流中のHC、COおよびNOxの量を部分的に転化させるのに十分な時間および温度で接触させることを含む、方法に関する。
【0099】
幾つかの実施形態において、触媒組成物は炭化水素を転化させて、二酸化炭素および水にする。幾つかの実施形態において、触媒組成物は、触媒組成物との接触前の排ガス流中に存在する炭化水素の量の少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%を転化させる。
【0100】
別の実施形態において、触媒組成物は一酸化炭素を転化させて、二酸化炭素にする。幾つかの実施形態において、触媒組成物は、触媒組成物との接触前の排ガス流中に存在する一酸化炭素の量の少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%を転化させる。
【0101】
別の実施形態において、触媒組成物は窒素酸化物を転化させて、窒素および酸素にする。幾つかの実施形態において、触媒組成物は、触媒組成物との接触前の排ガス流中に存在する窒素酸化物の量の少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%を転化させる。
【0102】
別の実施形態において、触媒組成物は、触媒組成物との接触前の排ガス流中に存在する炭化水素と、二酸化炭素と、窒素酸化物とを合わせた合計量の少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%を転化させる。
【実施例】
【0103】
[実施例1]
比較用アルミナ担体A〜Cおよび多孔質アルミナ担体Dの細孔半径分布およびその他のパラメーターの決定
水銀ポロシメトリーによる実験を使用して、合計侵入体積、平均細孔半径および%気孔率を測定した。水銀ポロシメトリーは、材料の多孔質の性質における定量化可能な様々な側面、例えば、細孔径、合計細孔容積および表面積を求めるために使用される分析技術である。この技術には、ポロシメーターを使用して、液体水銀を高圧力で材料に侵入させることを伴う。液体の表面張力とは反対方向の力に逆らって液体を細孔に押し込むために必要とされる外部圧力に基づき、細孔径を求めることができる。
【0104】
水銀ポロシメトリーにより、細孔は、約20Å〜100,000Å超のメソ多孔質およびマクロ多孔質範囲にあると測定される。しかしながら、10,000Åまでのメソ多孔質範囲にある細孔が、触媒作用にとって最も重要である。メソ孔では、ほとんどの金属が堆積し、かつ高表面積の材料の場合、ほとんどの反応が起こる。メソ気孔率がより高いことで、拡散特性がより良好になり、それにより、活性がより高まり、選択率がより良好になる。
【0105】
測定を開始する前に、試料から排気して、空気および残留湿分またはその他の液体を細孔系から除去してもよい。起こり得るあらゆるエアポケットおよび汚染の問題を回避するために、完全に脱気することが望ましい。その後、系全体がなおも減圧下にある一方で、試料に水銀を満たす。その後、全体の圧力をゆっくりと上げることで、まず、試料中の最も大きな細孔、または試料片の間の空隙に水銀を浸透させる。このような初期測定は、あまり重要ではない。なぜなら、材料中に存在する大細孔、および粒子間の空隙は、材料の触媒特性に寄与しないからである。例えば図11において、10,000〜100,000オングストロームの間のシグナルは、これらの試料における、大細孔、および粒子間の空隙の初期測定を示す。
【0106】
圧力が上がり続けるにつれて、水銀は、約50オングストローム〜約1,000オングストロームの範囲にある細孔に浸透して、図11および12に示される各試料についてシグナルを出すことができる。これらの測定により、材料の領域が定まり、これらの領域は、触媒作用に寄与するため、重要である。表1は、水銀ポロシメトリーによる実験で得られたデータを要約しており、ここで平均細孔半径は、約50オングストローム〜約1,000オングストロームの範囲にある細孔について各試料で得られたデータのみを含み、かつ2つの異なる方法を使用して求められた。
【0107】
【表1】
【0108】
[実施例2]
比較用アルミナ担体A〜Cおよび多孔質アルミナ担体D上にパラジウムを含有する触媒物品を製造するための一般的な手順
硝酸Pdを使用して、溶液を製造した。この溶液を2つの部分に均等に分けた。硝酸Pd溶液の第一の部分を、アルミナ担体(例えば、Al−A)に含浸させるために使用し、硝酸Pd溶液の第二の部分を、酸素吸蔵材料、例えばセリア/ジルコニア複合材(40%のセリア含量を有するCeO/ZrO)に含浸させるために使用し、その際、インシピエントウェットネス技術を使用する。含浸させた担体、すなわち、Pd/アルミナ担体およびPd/OSC担体を550℃で2時間にわたり個別にか焼する。
【0109】
次に、アルミナ上のPdをか焼したものと水および酢酸とを混合することでスラリーを製造した。混合物を粉砕して、25μm未満の粒径分布を90%にした。粉砕後に、酢酸Zr(か焼した酸化Zrに対して0.5g/in)および硫酸Ba(か焼したBaOに対して0.15g/in)を添加し、酢酸を使用して、pHを4.2に調整した。
【0110】
か焼したPd/OSC担体をアルミナスラリーに添加し、さらにボールミルで処理して、18μm未満の粒径分布を90%にした。
【0111】
スラリーを、直径4.16”および長さ1.5”のモノリス基材(600個/inのセルおよび4ミルの壁厚)に被覆した。か焼した被覆の最終的な担持量中のアルミナ担体の量は1g/inであり、Pd濃度は1.6%である(か焼したPd含浸アルミナ担体の合計量に対する、アルミナ担体上のパラジウムの量)。
【0112】
ウォッシュコート部分を空気中において550℃で2時間にわたりか焼した。完成した被覆触媒は1.7g/inを含有し、Pd担持量は、か焼した部分に対して0.94%である(被覆されたモノリスの質量に対する、モノリス上のPdの合計%)。寸法を、直径1”および長さ1.5”のコア片に調整して、研究室用反応器での試験において使用した。モノリス基材の体積に対して計算したPdの合計量は、55g/ft(または0.0318g/in)である。
【0113】
アルミナ担体B〜Dをそれぞれ使用して、上記の手順を繰り返した。
【0114】
[実施例3]
Pd変性した比較用アルミナ担体A〜Cおよび多孔質アルミナ担体Dを含有する触媒物品を排ガス性能について評価
モノリス基板に被覆された触媒組成物を、サイクルエージング条件のもと、950℃で5時間にわたりエージングし、ここで、リーン条件、化学量論的条件およびリッチ条件の間で15分毎にサイクルを変えた。
【0115】
エージング後に、触媒組成物が被覆されたモノリス基板を研究室用反応器内で試験し、新欧州ドライビングサイクル(NEDC)を使用して、実車走行サイクルをシミュレーションした。
【0116】
試験結果の要約を表2および3に示す。表2は、触媒で被覆されたモノリス基材に曝す前の排ガス流中に存在するHC、COおよびNOxの初期量のうち残ったHC、COおよびNOxの残留量をパーセンテージで示す。残留パーセントが低いほど、個別の触媒組成物についての性能が良好であることを示す。触媒組成物Al−Dは、比較用触媒Al−A、Al−BおよびAl−Cよりも、排ガス排出物の曝露後に存在するHC、COおよびNOxの残留量が低いことを示した。これは、触媒組成物Al−Dの被覆中での細孔の拡散性が改善されているためであり得る。
【0117】
【表2】
【0118】
結果を、全試験期間を通して測定された合計量である累計排出量測定値で示す。試験時間において測定された値が低いほど、個別の触媒組成物の排出物触媒性能が良好であることを示す。触媒組成物Al−Dは、触媒Al−A、Al−BおよびAl−Cに比べて、触媒に曝した後に排ガス中に存在するHC、COおよびNOxの累積量が低いことを示す。
【0119】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12