特許第6960440号(P6960440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナホーム株式会社の特許一覧

特許6960440タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法
<>
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000002
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000003
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000004
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000005
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000006
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000007
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000008
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000009
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000010
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000011
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000012
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000013
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000014
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000015
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000016
  • 特許6960440-タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960440
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】タイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/95 20060101AFI20211025BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G01N21/95 Z
   G01N21/88 Z
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-180944(P2019-180944)
(22)【出願日】2019年9月30日
(65)【公開番号】特開2021-56144(P2021-56144A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 曜
(72)【発明者】
【氏名】永野 俊夫
【審査官】 大河原 綾乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−173385(JP,A)
【文献】 特開2009−145312(JP,A)
【文献】 特開2015−194069(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104568981(CN,A)
【文献】 特開2014−21973(JP,A)
【文献】 特開平9−89803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/84−G01N21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイルを下地接着剤によって下地に接着しているタイル壁の劣化診断を行うタイル壁診断システムであって、
前記タイル壁の劣化診断の対象となる撮影対象部を撮影して、その撮影画像を生成する撮影部と、
前記撮影部が生成した撮影画像を読み込み、前記撮影画像の特徴を表す第1画像情報を生成する画像情報生成部と、
前記第1画像情報に基づき、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定する劣化判定部と、
前記劣化判定部による判定結果を出力する出力部と、を備え
前記劣化判定部は、
劣化の度合いが各々異なるタイル壁を撮影して得られた複数の基準画像と、前記複数の基準画像のそれぞれの特徴を表す複数の第2画像情報とが記憶された記憶部と、
前記第1画像情報と、前記記憶部に記憶されている複数の第2画像情報とを比較し、前記複数の第2画像情報の中から、前記第1画像情報に最も類似度が高い第2画像情報に対応する基準画像を抽出する基準画像抽出部と、を備え、
前記基準画像抽出部によって抽出された基準画像に基づき、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定し、
前記出力部は、前記基準画像抽出部によって抽出された前記基準画像および前記撮影画像を、前記劣化判定部による判定結果とともに表示することを特徴とするタイル壁診断システム。
【請求項2】
前記撮影対象部は、前記複数のタイル間の目地を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のタイル壁診断システム。
【請求項3】
前記複数の第2画像情報は、目地交差部の撮影画像を表す情報を含んでいることを特徴とする請求項に記載のタイル壁診断システム。
【請求項4】
複数のタイルを下地接着剤によって下地に接着しているタイル壁の劣化診断を行うタイル壁診断方法であって、
撮影部が、前記タイル壁の劣化診断の対象となる撮影対象部を撮影して、その撮影画像を生成する第1工程と、
画像情報生成部が、前記第1工程で前記撮影部が撮影した撮影画像を読み込み、読込んだ撮影画像の特徴を表す第1画像情報を生成する第2工程と、
劣化判定部が、前記第2工程で前記画像情報生成部が生成した前記第1画像情報を読み込み、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定し、判定した劣化の度合いを表す情報を生成する第3工程と、
出力部が、前記第3工程で前記劣化判定部によって生成した劣化の度合いを表す情報を画像表示する第4工程と、を含み、
前記第3工程は、
劣化の度合いが各々異なるタイル壁を撮影して得られた複数の基準画像と、前記複数の基準画像のそれぞれの特徴を表す複数の第2画像情報とを記憶する基準画像準備工程と、
前記画像情報生成部が生成した第1画像情報を読み込む画像情報読込み工程と、
前記画像情報読込み工程で読み込んだ第1画像情報と、前記基準画像準備工程で記憶されている複数の第2画像情報とを比較し、前記複数の第2画像情報の中から、前記第1画像情報に最も類似度が高い第2画像情報に対応する基準画像を抽出する基準画像抽出工程と、
前記基準画像抽出工程で抽出した基準画像に基づき、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定し、判定した劣化の度合いを表す情報を生成する劣化情報生成工程と、を含み、
前記出力部は、前記第4工程で生成された前記劣化の度合いを表す情報とともに、前記基準画像抽出工程で抽出された前記基準画像および前記撮影画像を表示することを特徴とするタイル壁診断方法。
【請求項5】
前記撮影対象部は、前記複数のタイル間の目地を含んでいることを特徴とする請求項に記載のタイル壁診断方法。
【請求項6】
前記複数の第2画像情報は、目地交差部の撮影画像を表す情報を含んでいることを特徴とする請求項に記載のタイル壁診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル壁の目地の画像に基づき、タイル壁の劣化の度合いを判定することができるタイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイルを接着施工した建物の外壁は、タイルに下地接着剤を塗布し、下地に一定間隔の目地を設けてタイルが貼り付けられている。そのため、隣り合うタイル間の目地に位置する下地接着剤はタイルによって覆われておらず、外部に露出している部分が劣化して雨水などが浸入し、タイルが貼り付けられる下地外装材等の劣化を生じさせる場合がある。
【0003】
下地接着剤は、一般に、熱硬化性樹脂を含むため、長期間の日射による紫外線の暴露よって光酸化分解が生じやすい。また、シリル化エポキシ樹脂系の下地接着剤の場合は、雨水や熱によって後硬化反応を生じる。このように、紫外線、熱、雨水などの影響によって、劣化が進むと、亀裂が生じ、その結果、接着剤の下地材保護性が低下し、下地外装材等の劣化の原因となる。
【0004】
このようなタイル壁の経年変化を診断する方法は、例えば特許文献1に記載されている。この従来技術は、壁面における診断対象部に対する診断結果を記録する壁面診断結果記録システムであって、撮影手段にて撮影した壁面画像であり、診断作業者による診断結果を示す診断結果情報が記録された診断対象部を少なくとも含む壁面画像を取得する壁面画像取得手段と、壁面画像取得手段によって取得した壁面画像の診断結果情報を解析し、当該診断結果情報が示す診断結果を特定する壁面画像解析手段と、壁面画像解析手段によって特定した診断結果を、壁面画像取得手段によって取得した壁面画像における診断対象部の位置に対応付けて所定の記録手段に記録する対応付け手段と、を備える壁面診断結果記録システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−134470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の壁面診断結果記録システムは、診断作業者がタイルの損傷状態等の診断を行うことが前提とされており、診断作業者による壁面の劣化の有無および程度を判定するために時間を要し、壁面の診断作業の効率が悪いという課題がある。また、診断作業者の判断に個人差があるので、診断結果にばらつきが生じ、診断結果の正確性および安定性を高める必要がある。
【0007】
本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、タイル壁の劣化の度合いを正確かつ安定に判定することができるタイル壁診断システムおよびタイル壁診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタイル壁診断システムは、複数のタイルを下地接着剤によって下地に接着しているタイル壁の劣化診断を行うタイル壁診断システムであって、
前記タイル壁の劣化診断の対象となる撮影対象部を撮影して、その撮影画像を生成する撮影部と、
前記撮影部が生成した撮影画像を読み込み、前記撮影画像の特徴を表す第1画像情報を生成する画像情報生成部と、
前記第1画像情報に基づき、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定する劣化判定部と、
前記劣化判定部による判定結果を出力する出力部と、を備え
前記劣化判定部は、
劣化の度合いが各々異なるタイル壁を撮影して得られた複数の基準画像と、前記複数の基準画像のそれぞれの特徴を表す複数の第2画像情報とが記憶された記憶部と、
前記第1画像情報と、前記記憶部に記憶されている複数の第2画像情報とを比較し、前記複数の第2画像情報の中から、前記第1画像情報に最も類似度が高い第2画像情報に対応する基準画像を抽出する基準画像抽出部と、を備え、
前記基準画像抽出部によって抽出された基準画像に基づき、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定し、
前記出力部は、前記基準画像抽出部によって抽出された前記基準画像および前記撮影画像を、前記劣化判定部による判定結果とともに表示することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のタイル壁診断システムは、前記撮影対象部が、前記複数のタイル間の目地を含んでいることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のタイル壁診断システムは、前記複数の第2画像情報が、目地交差部の撮影画像を表す情報を含んでいることを特徴とする。
【0012】
本発明のタイル壁診断方法は、複数のタイルを下地接着剤によって下地に接着しているタイル壁の劣化診断を行うタイル壁診断方法であって、
撮影部が、前記タイル壁の劣化診断の対象となる撮影対象部を撮影して、その撮影画像を生成する第1工程と、
画像情報生成部が、前記第1工程で前記撮影部が撮影した撮影画像を読み込み、読込んだ撮影画像の特徴を表す第1画像情報を生成する第2工程と、
劣化判定部が、前記第2工程で前記画像情報生成部が生成した前記第1画像情報を読み込み、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定し、判定した劣化の度合いを表す情報を生成する第3工程と、
出力部が、前記第3工程で前記劣化判定部によって生成した劣化の度合いを表す情報を画像表示する第4工程と、を含み、
前記第3工程は、
劣化の度合いが各々異なるタイル壁を撮影して得られた複数の基準画像と、前記複数の基準画像のそれぞれの特徴を表す複数の第2画像情報とを記憶する基準画像準備工程と、
前記画像情報生成部が生成した第1画像情報を読み込む画像情報読込み工程と、
前記画像情報読込み工程で読み込んだ第1画像情報と、前記基準画像準備工程で記憶されている複数の第2画像情報とを比較し、前記複数の第2画像情報の中から、前記第1画像情報に最も類似度が高い第2画像情報に対応する基準画像を抽出する基準画像抽出工程と、
前記基準画像抽出工程で抽出した基準画像に基づき、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定し、判定した劣化の度合いを表す情報を生成する劣化情報生成工程と、を含み、
前記出力部は、前記第4工程で生成された前記劣化の度合いを表す情報とともに、前記基準画像抽出工程で抽出された前記基準画像および前記撮影画像を表示することを特徴とする。
また、本発明のタイル壁診断方法は、前記複数の第2画像情報が、目地交差部の撮影画像を表す情報を含んでいることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のタイル壁診断方法は、前記撮影対象部が、前記複数のタイル間の目地を含んでいることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のタイル壁診断方法は、
前記第3工程が、
劣化の度合いが各々異なるタイル壁を撮影して得られた複数の基準画像と、前記複数の基準画像のそれぞれの特徴を表す複数の第2画像情報とを記憶する基準画像準備工程と、
前記画像情報生成部が生成した第1画像情報を読み込む画像情報読込み工程と、
前記画像情報読込み工程で読み込んだ第1画像情報と、前記基準画像準備工程で記憶されている複数の第2画像情報とを比較し、前記複数の第2画像情報の中から、前記第1画像情報に最も類似度が高い第2画像情報に対応する基準画像を抽出する基準画像抽出工程と、
前記基準画像抽出工程で抽出した基準画像に基づき、前記撮影対象部の劣化の度合いを判定し、判定した劣化の度合いを表す情報を生成する劣化情報生成工程と、を含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイル壁診断システムによれば、撮影部によって撮影対象部撮影され、撮影された撮影画像の特徴を表す第1画像情報が画像情報生成部によって生成される。劣化判定部は、画像情報生成部によって生成された第1画像情報に基づいて撮影対象部の劣化の度合いを判定し、その判定結果が出力部によって出力される。このようなタイル壁診断システムによって、診断作業者による劣化診断のための作業を必要とせず、劣化診断に要する時間を短縮するとともに、診断結果のばらつきを抑制し、正確で客観性の高い診断結果を出力部によって、例えば画像表示して、建物の所有者または管理者などにタイル壁の補修の要否を説明し、または確認することが可能となる。
また劣化判定部は、基準画像抽出部によって、記憶部に記憶された複数の第2画像情報の中から、撮影画像の特徴を表す第1画像情報と類似度が最も高い第2画像情報に対応する基準画像が抽出され、抽出された基準画像に基づいてタイル壁の劣化の度合いが判定される。これによって、多様なタイル壁の劣化状態の判定に必要な基準画像およびそれらの第2画像情報を記憶部に担持させておくことによって、複雑な画像解析処理を行うことなく、容易に高精度の劣化度合いの判定結果が得られ、汎用性の高いタイル壁診断システムを提供することができる。
【0016】
また、本発明のタイル壁診断システムによれば、撮影対象部にタイル間の目地を含んでいるので、下地接着剤の表面の状態を表す情報を含む撮影画像から第1画像情報が生成され、このような第1画像情報に基づいてタイル壁の劣化の度合いが判定される。したがって、下地接着剤の状態が劣化の度合いの判定に必ず加味され、劣化判定を高精度化することができる。
【0018】
また、本発明のタイル壁診断システムによれば、第2画像情報には目地交差部の撮影画像を表す情報を含むので、タイル壁が水付着面であるか乾燥面であるかによる劣化の進行状態の相違、例えば明度、彩度、色相、欠陥の状態(割れ、膨れ、欠落、発生数など)も加味して、対象とする撮影画像による劣化判定を行うことができる。これによって、撮影対象部の劣化の度合いを、より高精度で判定することができる。
【0019】
本発明のタイル壁診断方法によれば、第1工程で撮影部が撮影対象部を撮影し、第2工程で画像情報生成部は、撮影された撮影画像を読み込み、第1画像情報を生成する。劣化判定部は、第2工程で画像情報生成部が生成した第1画像情報を読み込んで劣化の度合いが判定され、その判定結果が第3工程で出力部に画像表示される。このようなタイル壁診断方法によって、診断作業者による劣化診断のための作業を必要とせず、劣化診断に要する時間を短縮するとともに、診断結果のばらつきを抑制し、正確で客観性の高い診断結果を出力部によって、例えば画像表示して、建物の所有者または管理者にタイル壁の補修の要否を説明し、または確認することが可能となる。
また、基準画像準備工程で、劣化の度合いが各々異なるタイル壁を撮影して得られた複数の基準画像と、複数の基準画像のそれぞれの特徴を表す複数の第2画像情報とを記憶し、画像情報読込み工程で、画像情報生成部が生成した第1画像情報が読み込まれる。基準画像抽出工程では、画像情報読込み工程で読み込んだ第1画像情報と、基準画像準備工程で記憶されている複数の第2画像情報とが比較され、複数の第2画像情報の中から、第1画像情報に最も類似度が高い第2画像情報に対応する基準画像が抽出される。劣化情報生成工程では、基準画像抽出工程で抽出した基準画像に基づき、撮影対象部の劣化の度合いが判定され、判定した劣化の度合いを表す情報が生成される。生成された劣化の度合いを表す情報は、第4工程で、前述のように出力部によって画像表示される。これによって、多様なタイル壁の劣化状態の判定に必要な基準画像およびそれらの第2画像情報を記憶部に担持させておくことによって、複雑な画像解析処理を行うことなく、容易に高精度の劣化度合いの判定結果が得られ、汎用性の高いタイル壁診断方法を提供することができる。
【0020】
また、本発明のタイル壁診断方法によれば、撮影対象部にタイル間の目地を含んでいるので、画像情報生成部は、下地接着剤の表面の状態を表す情報を含む撮影画像から第1画像情報を生成し、このような第1画像情報に基づいて、劣化判定部は、タイル壁の劣化の度合いを判定する。したがって、下地接着剤の状態が劣化の度合いの判定に必ず加味され、劣化判定を高精度化することができる。
【0021】
また、本発明のタイル壁診断方法によれば、第2画像情報には目地交差部の撮影画像を表す情報を含むので、タイル壁が水付着面であるか乾燥面であるかによる劣化の進行状態の相違も加味して、対象とする撮影画像による劣化判定を行うことができる。これによって、撮影対象部の劣化の度合いを、より高精度で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態のタイル壁診断システム1の撮影部2によって撮影されるタイル壁10の一部の断面図である。
図2】タイル壁10が破れ目地構造である場合の例を示す正面図である。
図3図2に示されるタイル壁10の一部を拡大した正面図である。
図4】タイル壁10が通し目地構造である場合の例を示す正面図である。
図5図4に示されるタイル壁10の地面付近のタイル壁10の一部を示す正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るタイル壁診断システム1を示すブロック図である。
【0023】
図7A】タイル壁10の構築直後に撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図7B】タイル壁10の構築後3年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図7C】タイル壁10の構築後10年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図7D】タイル壁10の構築後20年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図7E】タイル壁10の構築後40年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図7F】タイル壁10の構築後3年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図7G】タイル壁10の構築後10年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図7H】タイル壁10の構築後20年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図7I】タイル壁10の構築後40年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
図8】タイル壁診断方法に係る本発明の実施形態の診断手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施形態に係るタイル壁診断システム1について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態のタイル壁診断システム1の撮影部2によって撮影されるタイル壁10の一部の断面図であり、図2はタイル壁10が破れ目地構造である場合の例を示す正面図であり、図3図2に示されるタイル壁10の一部を拡大した正面図である。図4はタイル壁10が通し目地構造である場合の例を示す正面図であり、図5図4に示されるタイル壁10の地面付近のタイル壁10の一部を示す正面図である。
【0025】
本実施形態のタイル壁診断システム1が対象とするタイル壁10は、代表的には、図2および図3に示される破れ目地構造と、図4および図5に示される通し目地構造とがある。破れ目地構造のタイル壁10では、タイル11が上下方向(図2の上下方向)の各列が交互に各タイル11の配置間隔の1/2だけずれて位置し、下地接着剤13によって建物の下地12に接着され、各タイル11間には、ジグザグ状に屈曲した目地14が形成され、下地接着剤13が露出している。
【0026】
このような目地14は、各タイル11の表面から退避しているので、降雨があると、雨水は上下に延びる目地14に沿って矢符m1方向に流下し、その下端に連なって水平に延びる目地14に流入すると、その目地14の下方に位置するタイル11の上面に落下する。タイル11の上面に落下した雨水は、矢符m2で示すように、下段のタイル11の上面に沿って両側へ流れ、下段のタイル11間の目地14に矢符m3で示されるように流れ落ちる。
【0027】
このように、破れ目地構造のタイル壁10では、上下に延びる目地14と水平に延びる目地14とが目地交差部14aで交差する構造であるので、各目地交差部14aには雨水が滞留し易く、各目地交差部14aに位置する下地接着剤13の劣化の度合いが他の部位に比べて高い。したがって、タイル壁10が破れ目地構造である場合には、各目地交差部14aが含まれるように撮影部2によって撮影し、サンプリング画像として撮影される。
【0028】
また、図4および図5に示される通し目地構造のタイル壁10では、タイル11が上下方向および水平方向に整列して位置し、下地接着剤13によって建物の下地12に接着され、各タイル11間には、格子状の目地14が形成され、下地接着剤13が露出している。
【0029】
目地14は、各タイル11の表面から退避しているので、降雨があると、雨水は上下に延びる目地14に沿って矢符m3方向に流れ落ちるとともに、水平な目地14に沿って矢符m4で示すように移動して、矢符m3方向に流れ落ちる雨水に合流する。また、壁面10の上部に付着した雨水が上下に延びる目地14に沿って矢符m3方向に流れ落ちてくるため、壁面10に下部にある上下に延びる目地14は上部よりも、より多くの雨水が通過することになり、下地接着剤13の劣化が上の領域よりも促進される。
【0030】
このように、通し目地構造のタイル壁10では、上下に延びる目地14と水平に延びる目地14との目地交差部14aで、上下に延びる目地14に沿って流れる雨水と、水平に延びる目地14に沿って移動する雨水とが合流するので、各目地交差部14aが含まれるように撮影部2によって撮影し、サンプリング画像として撮影される。また、各目地交差部14aは、壁面10の下部に位置する箇所、例えば最下段に位置する各目地交差部14aを含むように撮影された画像を、サンプリング画像として用いることが好ましい。
【0031】
図6は、本発明の実施形態に係るタイル壁診断システム1を示すブロック図である。図7Aは、タイル壁10の構築直後に撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図であり、図7Bはタイル壁10の構築後3年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図であり、図7Cはタイル壁10の構築後10年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。また、図7Dは、タイル壁10の構築後20年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図であり、図7Eはタイル壁10の構築後40年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。さらに、図7Fは、タイル壁10の構築後3年が経過したときに撮影された水付着面の下地接着剤13の基準画像を示す図であり、図7Gはタイル壁10の構築後10年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。さらに、図7Hは、タイル壁10の構築後20年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の基準画像を示す図であり、図7Iはタイル壁10の構築後40年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の基準画像を示す図である。
【0032】
本実施形態に係るタイル壁診断システム1は、タイル壁10の劣化診断の対象となる撮影対象部を撮影して、その撮影画像を生成する撮影部2、撮影部2が生成した撮影画像を読み込み、撮影画像の特徴を表す第1画像情報を生成する画像情報生成部3、第1画像情報に基づき、撮影対象部の劣化の度合いを判定する劣化判定部4、および劣化判定部4による判定結果を出力する出力部5を含む。
【0033】
画像情報生成部3は、撮影部2によって生成された撮影画像の特徴を表す第1画像情報を生成するために、例えば、カラー画像解析によって、読み込んだ撮影画像に基づいて、各画素の明度、彩度、色相などの色彩情報から、劣化による欠陥の有無、膨れ・浮き・欠損・割れなどの種類、発生数、分布などの特徴量を求める画像データ処理部として設けられる。このようなカラー画像解析としては、例えば、撮影された画像の特徴量を抽出し、撮影された画像の特徴量と、図7A図7Iに示される複数の基準画像の特徴量とを比較して、最も類似度が高い画像を抽出するアルゴリズムによって類似画像を抽出する画像処理手法を用いるようにしてもよい。
【0034】
劣化判定部4は、劣化の度合いが各々異なるタイル壁10を撮影して得られた複数の基準画像と、複数の基準画像のそれぞれの特徴を表す複数の第2画像情報とが記憶された記憶部4aと、第1画像情報と、記憶部4aに記憶されている複数の第2画像情報とを比較し、複数の第2画像情報の中から、第1画像情報に最も類似度が高い第2画像情報に対応する基準画像を抽出する基準画像抽出部4bと、を備える。
【0035】
このような劣化判定部4は、基準画像抽出部4bによって抽出された基準画像に基づき、撮影対象部の劣化の度合いを判定して、例えば、出力部5がディスプレイ装置であれば、「適応年数:築○○年」、「補修:要/否」などの表示内容を、判定した劣化の度合いに応じた態様で、基準画像および撮影画像とともに表示して、ユーザに情報提供するための情報を作成する提供情報作成部4cを、さらに含む。
【0036】
前述の図7A図7Eの各基準画像および各第2画像情報は、データベース化された状態で、サーバコンピュータなどの他のコンピュータによって管理される記憶装置にデータベースとして記憶されている。
【0037】
劣化判定部4は、ハードウェア資源として、例えばパーソナルコンピュータによって実現され、ソフトウェア資源として、パーソナルコンピュータによって実行可能なアプリケーションプログラムによって実現されてもよい。また、画像情報生成部3、基準画像抽出部4b、提供情報作成部4cは、中央演算処理装置(Central Processing Unit;CPU)によって実現されてもよい。記憶部4aは、パーソナルコンピュータの主回路基板に搭載されたRAM(Random Access Memory)によって実現されてよく、パーソナルコンピュータにいわゆる外付けで接続されるUSB(Universal Serial Bus)メモリまたはハードディスクドライブ(Hard Disk Drive;HDD)などの外部記憶装置によって実現されてもよい。
【0038】
撮影の対象となるタイル壁10は、例えば、戸建て住宅や高層集合住宅などの建物の外壁として用いられる。タイル壁10は、外壁に限らず、内壁であってもよい。タイル壁10は、複数のタイル11と、複数のタイル11を下地12に接着する下地接着剤13とを有している。
【0039】
タイル壁10は、さらに複数のタイル11間に、所定の幅bを有する目地14が設けられる。目地14からは、下地接着剤13が露出している。本実施形態において、目地14の配置は、破れ目地状であるが、これに限らず、通し目地状、たて割千鳥目地状などの配置であってもよい。目地14の幅bは、例えば3mm〜7mm程度であるが、これに限らない。
【0040】
下地12としては、窯業系サイディング材、金属サイディング材、ALC(軽量気泡コンクリート)、樹脂サイディング材、珪酸カルシウム板、石膏ボード、石膏スラグなどを用いることができる。
【0041】
下地接着剤13の主剤は、適宜選択できるが、例えば、硬化時の体積収縮が少なく、優れた伸び性能と接着性を有する変性シリコン系樹脂が好ましい。また、下地接着剤13の添加物としては、炭酸カルシウムなど塗工作業性を向上させるものが添加されるが、これらに限らない。
【0042】
撮影部2は、例えば、タイル壁10の目地14から露出する下地接着剤13の表面である撮影対象部15を撮影し、その撮影画像を生成する。撮影対象部15は、1枚のタイル壁10から複数選択されてもよい。撮影対象部15の位置および範囲は、診断作業者のタイル壁10の観察などによって適切な範囲が決定されてもよい。撮影対象部15は、複数のタイル11間の目地14から露出する下地接着剤13の表面であることが好ましいが、これに限らず、下地接着剤13の表面の一部を含んでいれば、タイル11の表面など、タイル壁10の任意の部分を対象とすることができる。
【0043】
撮影部2は、撮影対象部15を撮影可能な解像度を備えていればよく、例えば立体画像(3D)用のCCDデジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、カメラ機能を備えたタブレット端末など、公知のデジタル画像撮影機能を備えた携帯端末機器を用いることができる。
【0044】
第1画像情報は、色、濃度など撮影対象部15の撮影画像の特徴を表す情報である特徴量を抽出した情報からなる。第1画像情報を得るために、適切な画像解析技術による画像処理を用いることができる。第1画像情報は、さらに、接着剤の種類、添加物の種類のほか、建物が存する地域が寒冷地であるかどうかなどの地理的環境に関する情報、撮影対象部15の撮影画像が水付着面か乾燥面かの別に関する情報、あるいは上下に延びる目地14である縦目地と、水平に延びる目地14である横目地とが交差する目地交差部14aなどを含んでいてもよい。
【0045】
本実施形態において、第2画像情報は、タイル壁10の構築直後の撮影画像(図7A)、構築から経過年数3年の撮影画像(図7B)、経過年数10年の撮影画像(図7C)、経過年数20年の撮影画像(図7D)、経過年数40年の撮影画像(図7E)の情報、タイル壁10の構築後3年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の撮影画像(図7F)、タイル壁10の構築後10年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の撮影画像(図7G)、タイル壁10の構築後20年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の撮影画像(図7H)、およびタイル壁10の構築後40年が経過したときに撮影された乾燥面の下地接着剤13の撮影画像(図7I)のそれぞれの特徴を表す情報を含む。
【0046】
劣化判定部4は、これらの撮影画像のそれぞれの特徴を表す情報として第2画像情報を抽出し、各第2画像情報と1つの第1画像情報とを対照し、各第2画像情報から類似度の最も高い1つの第2画像情報に対応する基準画像を、基準画像抽出部4bが抽出し、出力部5に抽出した基準画像および撮影画像とともに前述した表示内容を画像表示させる。
【0047】
このように、出力部5に表示された出力画像によって、診断作業者は、撮影対象部15のタイル壁10の構築時からの経過年数および撮影対象部15の劣化の度合いを確認し、建物の所有者または管理者に、タイル壁10の補修の要否を提案することができる。
【0048】
劣化判定部4は、演算処理を行う中央演算処理装置(Central Processing Unit;CPU)、内部メモリであるランダムアクセスメモリ(Random Access Memory;RAM)、CPU上で実行されるオペレーションシステム(Operating System;OS)を含む各種プログラムが記憶されるリードオンリーメモリ(Read Only Memory;ROM)などを含んで構成される。劣化判定を実行するプログラムは、外部記録媒体または情報通信ネットワークを介してタイル壁劣化診断システムにインストールされるアプリケーションプログラムであってもよい。
【0049】
出力部5は、劣化判定部4による判定結果を出力する。本実施形態においては、端末に出力部5が設けられているが、出力部5は、例えば、タブレット端末のディスプレイ装置のように、劣化判定部4と一体に組み込まれた1つ機器によって構成されてもよく、情報通信ネットワークを介して劣化判定部4と接続された携帯端末装置によって実現されてもよい。
【0050】
本実施形態のタイル壁診断システム1によれば、撮影部2によって撮影対象部15を撮影し、撮影した撮影画像の特徴を表す第1画像情報に基づき劣化を判定することから、診断作業者による診断を必要とすることなく、劣化診断に要する時間を短縮するとともに、診断結果のばらつきを低減し、タイル壁の補修の必要性を正確に認識することが可能となる。
【0051】
また本実施形態のタイル壁診断システム1によれば、目地14から露出し、紫外線、熱、雨水などの影響を受けやすい下地接着剤13の表面の画像の特徴を表す第1画像情報に基づき劣化を判定することから、高精度の劣化診断が可能である。
【0052】
また本実施形態のタイル壁診断システム1によれば、第1画像情報と、予め記録されたタイル壁10の基準画像を表す第2画像情報とを比較し、第2画像情報から最も類似度が高い前記基準画像を抽出し、抽出された基準画像に基づいて撮影対象部15の劣化の度合いを判定することから、個人差によらず、客観的かつ正確な劣化診断が可能である。
【0053】
次に、タイル壁診断方法に係る本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図8は、タイル壁診断方法に係る本発明の実施形態のタイル壁診断手順を説明するためのフローチャートである。なお、前述のタイル壁診断システムの実施形態と対応する部分に同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
本実施形態のタイル壁診断方法は、建物のタイル壁10の劣化診断の対象となる撮影対象部15を撮影部2によって撮影する第1工程S1と、第1工程で撮影された撮影対象部15の撮影画像の特徴を表す第1画像情報を、撮影部2から劣化判定部4に読み込ませる第2工程S2と、第2工程で撮影部2から読み込んだ第1画像情報に基づき、撮影対象部15の劣化の度合いを劣化判定部4によって判定する第3工程S3と、第3工程で劣化判定部4によって判定された劣化の度合いを表す情報を、出力部5によって画像表示させる第4工程S4と、を含む。
【0055】
前述の第3工程S3は、次の基準画像準備工程S31と、画像情報読込み工程S32と、基準画像抽出工程S33と、劣化情報生成工程S34と、を含む。
【0056】
基準画像準備工程S31では、記憶部4aに、劣化の度合いが各々異なるタイル壁10を撮影して得られた複数の基準画像と、複数の基準画像のそれぞれの特徴を表す複数の第2画像情報とを記憶する。画像情報読込み工程S32では、画像情報生成部3が生成した第1画像情報を劣化判定部4が読み込む。
【0057】
基準画像抽出工程S33では、基準画像抽出部4bが、画像情報読込み工程S32で読み込んだ第1画像情報と、基準画像準備工程S31で記憶部4aに記憶された複数の第2画像情報とを比較し、複数の第2画像情報の中から、第1画像情報に最も類似度が高い第2画像情報に対応する基準画像を抽出する。
【0058】
劣化情報生成工程S34では、基準画像抽出部4bが基準画像抽出工程S33で抽出した基準画像に基づき、撮影対象部15の劣化の度合いを判定し、判定した劣化の度合いを表す情報を生成する。このようにして生成された劣化の度合いを表す情報は、出力部5によって、前述のように出力表示される。
【0059】
タイル壁10は、複数のタイル11と、複数のタイル11を下地12に接着する下地接着剤13とを有しているので、第1工程S1では、タイル壁10の複数のタイル11および目地14を含む撮影対象部15を撮影部2によって撮影されるが、画像の編集によって目地14から露出している下地接着剤13の表面だけを取り出すようにしてもよい。
【0060】
撮影対象部15は、1枚のタイル壁10から複数選択される。撮影対象部15の位置および範囲は、適宜の方法により決定される。撮影対象部15は、タイル11間の目地14から露出する下地接着剤13の表面であることが好ましく、さらに上下に延びる目地14である縦目地と水平に延びる目地14である横目地とが交差する目地交差部が好ましいが、これに限らない。
【0061】
次に、第2工程S2で撮影部2から読み込んだ第1画像情報に基づき、撮影対象部15の劣化の度合いを劣化判定部4によって判定する第3工程S3が実施される。
【0062】
本実施形態において、劣化判定部4は、タイル壁10の基準画像の特徴を表す第2画像情報が記憶されている記憶部4a、第1画像情報と、第2画像情報とを比較し、第2画像情報から最も類似度が高い前記基準画像を抽出する基準画像抽出部4bと、を備えている。
【0063】
また、第2画像情報は、基準画像のタイル壁10の施工時からの経過年数の情報を含んでいる。これによって、第3工程S3では、劣化判定部4が、基準画像抽出部4bによって抽出された基準画像の第2画像情報から、撮影対象部15のタイル壁10の施工からの経過年数による劣化の進行を推定し、撮影対象部15の劣化の度合いを判定することができる。
【0064】
最後に、第3工程S3において、劣化判定部4によって判定された劣化の度合いを表す情報を、出力部5によって画像表示させる第4工程S4が実施される。
【0065】
以上の実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)撮影部2によって撮影対象部15を撮影し、撮影した撮影画像の特徴を表す第1画像情報に基づき劣化を判定することから、診断作業者による診断を必要とすることなく、劣化診断に要する時間を短縮するとともに、診断結果のばらつきを抑制し、補修の必要性を正確に把握することが可能である。
【0066】
(2)目地14から露出し、紫外線、熱、雨水などの影響を受けやすい下地接着剤13の表面の画像の特徴を表す第1画像情報に基づき劣化を判定することから、高感度の劣化診断が可能である。
【0067】
(3)第1画像情報と、予め記録されたタイル壁10の基準画像の特徴を表す第2画像情報とを比較し、第2画像情報から最も類似度が高い前記基準画像を抽出し、抽出された基準画像に基づいて撮影対象部15の劣化の度合いを判定することから、客観的かつ正確な劣化診断が可能である。
【0068】
前述の各実施形態では、撮影画像および基準画像が2次元画像である場合について述べたが、本発明の他の実施形態では、撮影画像および基準画像として、いわゆる3D画像または立体画像とも呼ばれる3次元画像を用いるようにしてもよい。これによって下地接着剤13の目地14から露出する表面の亀裂および隆起をより正確に検出し、タイル壁10の劣化の度合いを高精度で判定することができる。
【0069】
本発明のさらに他の実施形態では、一定位置のタイル間の目地を時系列的に撮影部によって撮影した撮影画像を蓄積することによって、劣化の進行速度が判明するので、そのような基準画像を記憶部にデータベースとして蓄積すれば、現状の撮影画像に基づいて将来の劣化の度合いを推定することができる。これによって、タイル壁10を補修すべき時期、期間または期限を施主に提案することができる。さらに地震、台風の発生に関する統計的な確率も考慮すれば、より安全な補修の時期、期間または期限を提案することができる。
【0070】
前述の各実施形態では、前述の水の付着によって劣化したタイル壁10の撮影画像を基準画像として用いる場合について述べたが、本発明のさらに他の実施形態では、日射によって劣化したタイル壁10の撮影画像をも基準画像に追加して用いるようにしてもよい。これによって、タイル壁10の劣化を水の付着によるものだけでなく、日射の紫外線による劣化の影響をも考慮して、タイル壁10の劣化の度合いを判定することができ、劣化の要因を拡げ、判定精度をより高くすることができる。
【0071】
以上においては、タイル壁の劣化診断システムおよび劣化診断方法について説明したが、本発明は、タイル壁に限らず、その他の外壁および内壁の劣化診断にも、適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 タイル壁診断システム
2 撮影部
3 画像情報生成部
4 劣化判定部
4a 記憶部
4b 基準画像抽出部
4c 表示情報作成部
5 出力部
10 タイル壁
11 タイル
12 下地
13 下地接着剤
14 目地
15 撮影対象部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図8