(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押圧部は、前記基部が前記床面から離れる方向に移動する形で前記床面を押圧することで、前記複数の車輪のうちの一部の車輪を前記床面から離間させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の台車。
前記複数の車輪は、前記床面に対する前記基部の前後方向への移動を可能とする第1車輪と、前記床面に対する前記基部の前後方向及び左右方向への移動を可能とし、且つ前記第1車輪よりも前記押圧部側に配された第2車輪と、からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の台車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、台車が床面を移動可能な状態でフォーク部を昇降させて物体を積載しようとすると、台車が不測に動いたり倒れたりしてしまう虞があり、危険である。傾いた床面において台車を使用した場合は、台車が傾くことによりその危険が一層高まる。台車の移動を規制するために、キャスターの回転をロックするロック機構を台車に設けることも考えられるが、台車を使用する作業者がロック機構のロックを忘れる虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、安全に使用することができる台車を提供することを目的の一つとする。また、スムーズに物体を運ぶことができる台車を提供することをさらなる目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、物体を運ぶ台車であって、基部と、前記物体を載置可能な載置台と、前記基部に取り付けられ、前記載置台を昇降させる形で作動する昇降機構と、前記基部に取り付けられ、床面に対する前記基部の移動を可能とする複数の車輪と、前記床面を押圧して前記複数の車輪による前記基部の移動を規制可能な押圧部と、前記昇降機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記押圧部が前記床面を押圧した場合に、前記昇降機構を作動可能な状態にすることに特徴を有する。
【0007】
このような台車によると、押圧部が床面を押圧して複数の車輪による基部の移動を規制することで、台車の移動を規制することができる。載置台は、押圧部が床面を押圧している場合(即ち、台車の移動が規制されている場合)に、昇降可能となる。これにより、作業者が物体を載置台に載置して、載置台を昇降しようとしたときに、台車が不測に移動したり、転倒したりしてしまうことを防ぐことができる。
【0008】
また、上記構成において、前記台車は、前記床面に対する当該台車の傾きを検出する傾き検出部を備え、前記制御部は、前記傾き検出部が検出した傾きが所定の範囲内の傾きである場合に、前記昇降機構を作動可能な状態にすることとすることができる。
【0009】
このような台車によると、載置台は、押圧部が床面を押圧し、台車の傾きが所定の範囲内の傾きである場合に、昇降可能となる。これにより、台車の移動が規制されている場合であっても、例えば傾きのある床面上にて作業者が物体を載置台に載置し、載置台を昇降しようとしたときに、台車が転倒してしまうことを防ぐことができる。
【0010】
また、上記構成において、前記台車は、画像を表示する表示部を備え、前記制御部は、前記傾き検出部が検出した傾きが所定の範囲内の傾きではない場合に、少なくともその傾き方向を表す画像を前記表示部に表示することとすることができる。
【0011】
このような台車によると、作業者が台車の傾きを認知し、例えば傾きのない床面に移動して台車の傾きを修正することができる。これにより、安定した状態の台車において載置台を昇降させることができ、台車の転倒を予め防ぐことができる。
【0012】
また、上記構成において、前記押圧部は、前記基部が前記床面から離れる方向に移動する形で前記床面を押圧することで、前記複数の車輪のうちの一部の車輪を前記床面から離間させることとすることができる。このような台車によると、押圧部の押圧により車輪が床面から離間することで、基部が床面を移動することができなくなるため、台車の移動を容易に規制することができる。
【0013】
また、上記構成において、前記複数の車輪は、前記床面に対する前記基部の前後方向への移動を可能とする第1車輪と、前記床面に対する前記基部の前後方向及び左右方向への移動を可能とし、且つ前記第1車輪よりも前記押圧部側に配された第2車輪と、からなることとすることができる。
【0014】
このような台車によると、第1車輪と第2車輪とによる床面に対する基部の移動により、作業者が台車を多方向(前後方向及び左右方向)にスムーズに移動させることが可能となる。また、床面に対する基部の多方向への移動を可能とする第2車輪が、第1車輪よりも押圧部側に配されているので、押圧部が床面を押圧した場合は、第1車輪よりも押圧部側に配されている第2車輪による基部の移動を規制して台車が多方向へ移動することを効果的に規制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安全に使用することができる台車を提供することが可能となる。また、スムーズに物体を運ぶことができる台車を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の実施形態を
図1から
図11によって説明する。本実施形態では、パレットや種々の荷物(物体)を運搬可能な台車1について説明する。尚、矢印方向Fを前方、矢印方向Bを後方、矢印方向Tを上方、矢印方向Uを下方、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方として各図を説明する。
【0018】
図1から
図3に示すように、台車1は、前後方向に長板状であって枠状の土台をなし、その中央部が上下方向に開口した開口部10Aをなす基部10と、物体を載置可能な板状の載置台20と、基部10の後端部に対し上方に立ち上がる形で取り付けられた側壁部30と、基部10に取り付けられ、載置台20を上下方向に昇降させる形で作動する昇降機構40と、を備える。台車1において、基部10と載置台20との間には、上下方向に伸縮可能な蛇腹状の被覆部64が、昇降機構40を覆うように、基部10と載置台20の周囲に沿って取り付けられている(被覆部64は、便宜上、
図1においてのみ二点鎖線で示す)。
【0019】
載置台20は、鉄やアルミニウム等の金属からなる板金であり、物体が載置される載置面20Aが、水平方向に拡がる平面状をなしている。載置台20には、その載置面20Aの周囲の端部において、例えば、物体が載置面20Aから落下することを防止するリブ(凹凸状の部分)や立ち上がる壁部等が設けられていない。従って、台車1を使用する作業者は、物体を載置面20Aの高さにおいて容易に平行移動することができる。これにより、物体が比較的重い場合であっても、載置台20の載置面20Aと机等との間にて、作業者が物体をスムーズに移動させることができる。尚、物体が載置台20を平行移動しやすくなる背反として、物体が載置台20から落下しやすくなってしまうことが懸念されるが、後述する制御部34の昇降機構40の制御等によりその落下を防止することができる。
【0020】
基部10の下側には、床面Gに対する当該基部10の移動を可能とする複数の車輪61,62が取り付けられている。基部10の外側の周囲には、他部材との衝突を緩衝するための弾性を有する弾性部材63が取り付けられている。基部10の左右方向における側方には、後述するフットセンサ53,54が取り付けられている。基部10の後側の端部且つ左右方向における中央部には、床面Gを押圧して複数の車輪61,62の移動を規制可能な押圧部11と、押圧部11に繋がるヒンジ部12と、が取り付けられている。
【0021】
複数の車輪61,62は、基部10の前側且つ左右側に設けられた一対の第1車輪61と、基部10の後側(側壁部30の直下)且つ左右側に設けられた一対の第2車輪62と、からなる。第1車輪61は、左右方向のみを回転軸として回転可能に基部10に固定されており、床面Gに対する基部10の前後方向への移動を可能とする。第2車輪62は、水平方向における一方向と上下方向とを回転軸として回転可能に基部10に固定されており、床面Gに対する基部10の前後方向及び左右方向への移動を可能とする。第2車輪62は、第1車輪61よりも押圧部11側に配されている。押圧部11は、一対の第2車輪62の間に配されている。
【0022】
側壁部30は、後方が開口した箱状をなしており、台車1の使用時には、保持部32に保持される図示しない板状部材によってその内部が覆われている。側壁部30の内部には、充電式のバッテリである電源33と、昇降機構40を制御する制御部34と、ACコンセントに接続し、AC電圧をDC電圧に変換して電源33に電力を供給するスイッチング電源37と、押圧部11の上下の動きを検出する押圧センサ50と、制御部34を構成する制御基板上に実装された3軸加速度センサであって、床面Gに対する当該側壁部30の傾き(台車1の傾き)を検出する傾きセンサ(傾き検出部)52と、が設けられている。側壁部30の上部には、その内部から外部に向かって上下方向に延伸した円柱状の一対の取手部31と、一対の取手部31の間に配され、画像を表示する表示部35と、非常時に昇降機構40の昇降を停止可能な非常停止スイッチ36と、が設けられている。
【0023】
図11は、台車1の電気的構成を示すブロック図を表している。制御部34は、電源33、押圧センサ50、後述する高さセンサ51、傾きセンサ52、フットセンサ53,54、非常停止スイッチ36、表示部35、及び後述するアクチュエータ42(昇降機構40)と電気的に接続されている。
図1から
図3及び
図11に示すように、作業者は、取手部31を握って台車1を移動させ、表示部35、押圧部11(ヒンジ部12)、及びフットセンサ53,54を用いることで、台車1の移動や昇降機構40の昇降を作動させる(詳細は後述する)。
【0024】
図4に示すように、押圧部11は、円盤状の下側部13と、下側部13の中央から上方に延在する上側部14と、を備え、上下に変位可能となっている。押圧部11が床面Gを押圧していない状態では、一対の第2車輪62が床面Gに当接しており、基部10が複数の車輪61,62によって移動可能な状態となっている(この状態を、非押圧状態と呼ぶ)。ヒンジ部12は、その前端部12Aに対して後端部12Bが上下方向に回動可能なヒンジ構造をなしており、前端部12Aと後端部12Bとの中央よりもやや前側に位置する中央部12Cが、押圧部11の上側部14に接続されている。
【0025】
例えば、作業者がヒンジ部12の後端部12Bを足で蹴り下げると、その前端部12Aが支点となって中央部12Cが上側部14を押し下げることで、
図5に示すように、下側部13が下方に下がる。押圧部11には、下方への付勢力を付与する(例えば、下方に200Nの力を付与する)バネ等の付勢部材が取り付けられており、下方に下がった下側部13は、床面Gを下方に付勢しながら床面Gに密着する(この状態を、押圧状態と呼ぶ)。押圧状態において、押圧部11は、下側部13の下端が、一対の第2車輪62の下端よりも例えば約5mm下方に変位する形となるので、基部10の後端部が床面Gから上方に離れる方向に移動し、一対の第2車輪62が床面Gから離間する。このように、押圧状態では、下側部13と床面Gとの摩擦力や、一対の第2車輪62が床面Gから離間することによって、複数の車輪61,62による基部10の移動(即ち、台車1の移動)を容易に規制することができる。尚、押圧状態において、作業者がヒンジ部12の後端部12Bを蹴り上げると、上記の順序を遡ることにより、押圧部11が非押圧状態となる。
【0026】
基部10の後側において、押圧部11の上側部14の上方に位置する部分は、上下方向に開口した後側開口部10Bとなっている。後側開口部10Bの上方には、側壁部30の内部に設けられた押圧センサ50が配されている。押圧センサ50は、後側開口部10Bを通して押圧部11の上側部14との距離を検出する。そして、押圧センサ50から送信される信号(押圧センサ50と押圧部11の上側部14との距離)に基づいて、
図2及び
図11に示す制御部34が、非押圧状態か押圧状態かを判定する。
【0027】
図1及び
図3に示すように、昇降機構40は、パンタグラフ状をなし、上下に伸縮可能な一対の伸縮部41と、電源33からの電流により駆動するアクチュエータ42と、を備える。一対の伸縮部41は、基部10と載置台20との間の右側及び左側において、基部10の開口部10Aと載置台20とを接続しており、基部10に対して、載置台20を上下方向に昇降させる形で伸縮する。一対の伸縮部41は、上下方向における中央部において、左右方向に延在して互いを中継する柱状の中継部41Bを備える。伸縮部41の前側の下端部41Aは、基部10の開口部10Aに設けられた溝部10A1を前後方向に摺動可能な形で取り付けられている。
【0028】
アクチュエータ42は、その前側部が基部10の前側下部に取り付けられた筒状のシリンダ42Aと、その後側部が伸縮部41の後側の中継部41Bのやや上方部分に取付部42B1を介して取り付けられ、シリンダ42A内を往復運動可能なピストン42Bと、を備える。アクチュエータ42は、電源33から供給される電流によりピストン42Bがシリンダ42A内を往復運動することで、伸縮可能な構成とされている。アクチュエータ42に供給される電流が大きくなるほど、アクチュエータ42が伸縮部41に加える力が大きくなり、昇降機構40が、より重い物体を昇降することが可能となる。載置台20に載置された物体の重さは、アクチュエータ42に供給される電流の大きさを用いて算出することができる。
【0029】
図6から
図8では、押圧状態において電源33からの電流の供給により昇降機構40が載置台20を昇降させる形で作動する態様を示している。
図6では、伸縮部41とアクチュエータ42が最も伸張し、載置台20が最も高い位置(高位置)に配された状態を示す。
図8では、伸縮部41とアクチュエータ42が最も収縮し、載置台20が最も低い位置(低位置)に配された状態を示す。
図7では、伸縮部41とアクチュエータ42が中程度に伸張(収縮)し、載置台20が高位置と低位置との間の位置(中位置)に配された状態を示す。
【0030】
図8に示すように載置台20が低位置に配されているときに(又は、
図7に示すように載置台20が中位置に配されているときに)、電源33からの電流の供給によりピストン42Bがシリンダ42A内から伸びる方向(後上方)に移動すると、伸縮部41の前側の下端部41Aが溝部10A1を後方に摺動し、伸縮部41が上方に伸びて載置台20が上方に上昇する(
図6又は
図7参照)。一方、
図6に示すように載置台20が高位置に配されているときに(又は、
図7に示すように載置台20が中位置に配されているときに)、電源33からの電流の供給によりピストン42Bがシリンダ42A内に収容される方向(前下方)に移動すると、伸縮部41の前側の下端部41Aが溝部10A1を前方に摺動し、伸縮部41が下方に縮んで載置台20が下方に下降する(
図8又は
図7参照)。尚、低位置において、アクチュエータ42の一部(後側部)は、基部10の下側に設けられた収容部43に収容される。また、載置台20の床面Gからの高さは、基部10の開口部10Aに設けられた高さセンサ(高さ検出部)51によって検出される。
【0031】
続いて、
図9から
図11を用いて、制御部34が昇降機構40を制御する各ステップ(S1からS9)について説明する。
図9及び
図11に示すように、制御部34は、作業者による表示部35の操作(表示部35に表示された上昇及び下降を示す画像を作業者がタッチすること)や、作業者がフットセンサ53,54(
図1参照)の下方へ足を挿入したことを検知すると(S0:昇降スイッチON)、押圧センサ50から送信される信号により押圧部11が押圧状態であるか非押圧状態であるかを判定する(S1)。押圧状態の場合(押圧部11が床面Gを押圧した場合)、制御部34は、傾きセンサ52が検出した台車1の傾きが所定範囲内(例えば、2度未満の傾き)であるか否かを判定する(S2)。台車1の傾きが所定範囲内の場合、制御部34は、アクチュエータ42へ通電(電流を供給)するとともに、アクチュエータ42に供給される単位時間あたりの電流の変化量が規定値以上(例えば、1A/秒以上)であるか否かを判定する(S3)。アクチュエータ42に供給される単位時間あたりの電流の変化量が規定値未満である場合、制御部34は、アクチュエータ42に供給される時間ごとの電流及び載置台20の時間ごとの高さの変化が予め測定した測定値(
図10参照、詳細は後述する)から外れていないかどうかを判定する(S4)。時間ごとの電流及び高さの変化が予め測定した測定値から外れていない場合、制御部34は、アクチュエータ42への通電を継続する(S5)。これにより、昇降機構40は作動可能な状態となり、上記作業者による表示部35の操作、又はフットセンサ53,54(
図1参照)の下方への足の挿入により、昇降機構40が適宜昇降する。
【0032】
図10では、種々の重さの物体を載置した(もしくは載置していない)状態の載置台20が昇降機構40によりスムーズに(載置台20や載置台20に載置した物体等が他部材に引っ掛かることなく)上昇したときの、時間に対する、アクチュエータ42に供給される電流及び載置台20の高さの関係(予め測定した測定値)を示したグラフを示す。グラフ70,71,72,73は、時間ごとのアクチュエータ42に供給される電流の値の変化を示す。グラフ80,81,82,83は、時間ごとの載置台20の高さの値の変化を示す。グラフ70及びグラフ80は、載置台20に物体を載置していないときの各値の変化を示す。グラフ71及びグラフ81は、載置台20に重さ40kgの物体を載置したときの各値の変化を示す。グラフ72及びグラフ82は、載置台20に重さ80kgの物体を載置したときの各値の変化を示す。グラフ73及びグラフ83は、載置台20に重さ100kgの物体を載置したときの各値の変化を示す。例えば、載置台20に重さ80kgの物体を載置して昇降機構40により載置台20を上昇する場合、制御部34は、グラフ72,グラフ82を選択し(物体の重さに応じて、基準とする測定値を変更し)、グラフ72,グラフ82が示す各値(予め測定した測定値)と実際の値(実測値)とを対比する。そして、時間ごとのアクチュエータ42に供給される電流及び載置台20の高さの変化が予め測定した測定値から所定値以上(例えば、±5%以上)外れているか否かを判断する。尚、昇降機構40により載置台20を下降する場合も、同様に、予め測定した測定値と実測値とを対比する。
【0033】
一方、
図9及び
図11に示すように、ステップS1において、非押圧状態の場合、制御部34は、アクチュエータ42への通電(電流の供給)を停止する(S6)。これにより、昇降機構40は作動不可能な状態となり、上記作業者による表示部35の操作、又はフットセンサ53,54(
図1参照)の下方への足の挿入があったとしても、昇降機構40は昇降することがない。
【0034】
ステップS2において、台車1の傾きが所定範囲内ではない場合、制御部34は、表示部35又は図示しないスピーカによってその旨を通知する(S7)。例えば、台車1が右側に2度以上傾いている場合は、表示部35にその傾き方向を示す右矢印「→」を表す画像と、その傾き方向を修正する方向を示す左矢印「←」を表す画像とを表示し、図示しないスピーカからブザー音を鳴らす。そして、制御部34は、アクチュエータ42への通電を停止する(S6)。
【0035】
ステップS3において、アクチュエータ42に供給される単位時間あたりの電流の変化量が規定値以上である場合、制御部34は、表示部35又は図示しないスピーカによってその旨を通知する(S8)。そして、制御部34は、アクチュエータ42への通電を停止する(S6)。また、ステップS4において、アクチュエータ42に供給される時間ごとの電流及び載置台20の時間ごとの高さの変化が予め測定した測定値(
図10参照)から外れている場合、制御部34は、表示部35又は図示しないスピーカによってその旨を通知する(S9)。そして、制御部34は、アクチュエータ42への通電を停止する(S6)。
【0036】
制御部34は、上記ステップを繰り返し実行することで、昇降機構40の昇降を制御する。尚、制御部34は、アクチュエータ42に供給される単位時間あたりの電流の変化量が規定値以上となってアクチュエータ42への通電を停止した(昇降機構40の作動を停止した)回数(停止回数)を記憶し、当該停止回数が所定の回数以上になった場合に、その停止回数を表す画像を表示部35に表示する。
【0037】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態において、物体を運ぶ台車1は、基部10と、物体を載置可能な板状の載置台20と、基部10に取り付けられ、載置台20を昇降させる形で作動する昇降機構40と、基部10に取り付けられ、床面Gに対する基部10の移動を可能とする複数の車輪61,62と、床面Gを押圧して複数の車輪61,62による基部10の移動を規制可能な押圧部11と、昇降機構40を制御する制御部34と、を備え、制御部34は、押圧部11が床面Gを押圧した場合に、昇降機構40を作動可能な状態にするものとされる。
【0038】
このような台車1によると、押圧部11が床面Gを押圧して複数の車輪61,62による基部10の移動を規制することで、台車1の移動を規制することができる。載置台20は、押圧部11が床面Gを押圧している場合(即ち、台車1の移動が規制されている場合)に、昇降可能となる。これにより、作業者が物体を載置台20に載置して、載置台20を昇降しようとしたときに、台車1が不測に移動したり、転倒したりしてしまうことを防ぐことができる。
【0039】
また、台車1は、床面Gに対する当該台車1の傾きを検出する傾きセンサ52を備え、制御部34は、傾きセンサ52が検出した傾きが所定の範囲内の傾きである場合に、昇降機構40を作動可能な状態にするものとされる。
【0040】
このような台車1によると、載置台20は、押圧部11が床面Gを押圧し、台車1の傾きが所定の範囲内の傾きである場合に、昇降可能となる。これにより、台車1の移動が規制されている場合であっても、例えば傾きのある床面G上にて作業者が物体を載置台20に載置し、載置台20を昇降しようとしたときに、台車1が転倒してしまうことを防ぐことができる。
【0041】
また、台車1は、画像を表示する表示部35を備え、制御部34は、傾きセンサ52が検出した傾きが所定の範囲内の傾きではない場合に、少なくともその傾き方向を表す画像を表示部35に表示するものとされる。
【0042】
このような台車1によると、作業者が台車1の傾きを認知し、例えば傾きのない床面Gに移動して台車1の傾きを修正することができる。これにより、安定した状態の台車1において載置台20を昇降させることができ、台車1の転倒を予め防ぐことができる。
【0043】
また、押圧部11は、基部10が床面Gから離れる方向に移動する形で床面Gを押圧することで、複数の車輪61,62のうちの一部の車輪62を床面Gから離間させる構成とされる。このような台車1によると、押圧部11の押圧により車輪62が床面Gから離間することで、基部10が床面Gを移動することができなくなるため、台車1の移動を容易に規制することができる。
【0044】
また、複数の車輪61,62は、床面Gに対する基部10の前後方向への移動を可能とする第1車輪61と、床面Gに対する基部10の前後方向及び左右方向への移動を可能とし、且つ第1車輪61よりも押圧部11側に配された第2車輪62と、からなる。
【0045】
このような台車1によると、第1車輪61と第2車輪62とによる床面Gに対する基部10の移動により、作業者が台車1を多方向(前後方向及び左右方向)にスムーズに移動させることが可能となる。また、床面Gに対する基部10の多方向への移動を可能とする第2車輪62が、第1車輪61よりも押圧部11側に配されているので、押圧部11が床面Gを押圧した場合は、第1車輪61よりも押圧部11側に配されている第2車輪62による基部10の移動を規制して台車1が多方向へ移動することを効果的に規制することができる。
【0046】
また、本実施形態において、物体を運ぶ台車1は、基部10と、物体を載置可能な板状の載置台20と、基部10に取り付けられ、電源33からの電流に応じて載置台20を昇降させる形で作動する昇降機構40と、基部10に取り付けられ、床面Gに対する基部10の移動を可能とする複数の車輪61,62と、昇降機構40を制御する制御部34と、を備え、制御部34は、単位時間あたりの電流の変化量が規定値以上になった場合に、昇降機構40の作動を停止するものとされる。
【0047】
例えば、載置台20を昇降させた際に、載置台20や載置台20に載置した物体等が他部材に引っ掛かった場合は、昇降機構40において、電源33から供給される電流の変化量が比較的大きくなる。しかし、上記のような台車1によると、制御部34が、単位時間当たりの電流の変化量により昇降機構40の作動を停止することで、上記引っ掛かりによって台車1、物体、又は他部材が倒れたり壊れてしまったりすることを未然に防ぐことができる。
【0048】
また、制御部34は、時間ごとの電流の変化が予め測定した測定値から外れた場合に、昇降機構40の作動を停止することとするものとされる。このような台車1によると、載置台20や載置台20に載置した物体等が他部材に引っ掛かった場合に、電流の変化量が上記規定値以上にならなかったとしても、昇降機構40の作動を精度よく停止することができる。
【0049】
また、台車1は、載置台20の高さを検出する高さセンサ51を備え、制御部34は、時間ごとの高さの変化が予め測定した測定値から外れた場合に、昇降機構40の作動を停止するものとされる。
【0050】
例えば、載置台20に載置した物体が他部材に引っ掛かった状態で、昇降機構40により載置台20を下降させた場合は、昇降機構40に供給される単位時間当たりの電流の変化量が規定値以上にならないことがある。しかし、上記のような台車1によると、制御部34は、時間ごとの載置台20の高さの変化が予め測定した測定値から外れた場合に、昇降機構40の作動を停止するので、載置台20や載置台20に載置した物体等が他部材に引っ掛かった場合において昇降機構40の作動を迅速に精度よく停止することができる。
【0051】
また、制御部34は、物体の重さに応じて、基準とする測定値を変更することとされる。載置台20に載置する物体の重さによっては、昇降機構40が載置台20を昇降させるために必要な電流が変化する(載置台20に載置する物体が重いほど、昇降機構40が載置台20を上昇させるために大きい電流が必要となる)。しかし、上記のような台車1によると、載置台20に載置する物体が種々の重さであっても、その重さに応じた測定値を用いて、制御部34が昇降機構40の作動の停止を精確に制御することができる。これにより、台車1の安全性を一層高めることができる。
【0052】
また、台車1は、画像を表示する表示部35を備え、制御部34は、単位時間あたりの電流の変化量が規定値以上となって昇降機構40の作動を停止した回数(停止回数)を記憶し、当該回数が所定の回数以上になった場合に、その停止回数を表す画像を表示部35に表示するものとされる。このような台車1によると、例えば、昇降機構40の劣化等、台車1自体に不具合がある場合に、作業者がその不具合を認知し、台車1を点検することができる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0054】
(1)上記実施形態では、基部を、台車1の下部において前後方向に長板状の部分(基部10)としたが、これに限られない。例えば、基部は、上記実施形態における基部10(第1基部)及び側壁部30(第2基部)を含むものとしてもよい。その場合、台車は、第2基部に取り付けられた昇降機構と、第1基部に取り付けられた複数の車輪とを備える物であってもよい。
【0055】
(2)上記実施形態以外にも、昇降機構は適宜変更可能である。上記実施形態では、昇降機構は、パンタグラフ状の伸縮部とアクチュエータとからなるものとしたが、これに限られない。例えば、昇降機構は、レールギアを用いたものや電動油圧ジャッキ式のものであってもよい。
【0056】
(3)上記実施形態以外にも、押圧部の形状は適宜変更可能である。上記実施形態では、押圧部は、円盤状の下側部を備えるものとしたが、これに限られない。例えば、押圧部における下側部は、正方形状、長方形状又は台形状等をなす板状のものや、柱状、針状等の形状をなしたものでもよい。
【0057】
(4)上記実施形態以外にも、制御部及び電源の配置は適宜変更可能である。例えば、制御部及び電源は、基部の下側や載置台の下面側に取り付けられていてもよい。
【0058】
(5)上記実施形態以外にも、制御部の昇降機構の制御は適宜変更可能である。例えば、制御部は、載置する物体の重さや載置台の高さが、予め設定した値を超える場合には、表示部又はスピーカからその旨を通知し、アクチュエータへの通電を停止するステップを含むものとしてもよい。また、制御部は、押圧状態の台車が不測に移動してしまった場合、表示部又はスピーカからその旨を通知するステップを含むものとしてもよい。