特許第6960452号(P6960452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960452
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ナノ構造シリンダー形ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25F 3/14 20060101AFI20211025BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20211025BHJP
   C25F 3/02 20060101ALI20211025BHJP
   B81C 99/00 20100101ALI20211025BHJP
【FI】
   C25F3/14
   H01B13/00 501Z
   C25F3/02 B
   B81C99/00
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-514722(P2019-514722)
(86)(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公表番号】特表2019-530799(P2019-530799A)
(43)【公表日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】US2017051146
(87)【国際公開番号】WO2018052895
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2020年9月11日
(31)【優先権主張番号】62/395,518
(32)【優先日】2016年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/491,691
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】レンツ,ダニエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ステンスヴァド,カール ケー.
(72)【発明者】
【氏名】タルノウスキ,デイヴィッド ジェイ.
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−143937(JP,A)
【文献】 特表2009−534523(JP,A)
【文献】 特開2016−196673(JP,A)
【文献】 特開2014−114474(JP,A)
【文献】 特開平02−070095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25F 3/14
H01B 13/00
C25F 3/02
B81C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー形工具をパターニングする方法であって、
ベースと前記ベース上の固体状態イオン伝導体の層とを備えるスタンプを用意することと、
前記固体状態イオン伝導体の主面に所定の形体のパターンのネガを付与することと、
金属表面を有するシリンダー形工具を前記スタンプに近接させて提供することと、
前記スタンプを前記金属表面に対して転がり線接触させた状態で動かしながら、前記金属表面とカソードとの間に電界を印加して、前記金属表面上に前記所定の形体のパターンを与えることを含み
前記カソードは前記ベース又は前記ベースに隣接して位置する伝導性要素のいずれかであり、
更に、前記金属表面の一部分が酸化されることによって金属イオン及び自由電子が発生し、
更に、前記金属イオンは前記固体状態イオン伝導体を通って前記カソードまで移動して前記カソードで還元され、前記自由電子は前記金属表面まで移動することによって前記所定の形体のパターンのポジを前記金属表面に与え
任意に、前記所定の形体のパターンの前記ポジは、複数のナノサイズの形体を含む法。
【請求項2】
前記金属表面は、銀、銅、クロム、チタン、金、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の形体のパターンは、複数の3次元レリーフ構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固体状態イオン伝導体の少なくとも一部分の下の前記ベース内にスペースを形成することを更に含み、そのウィンドウは、前記パターンと反対側の前記固体状態イオン伝導体の側面を露出する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属表面に対する前記固体状態イオン伝導体の前記パターニングされた表面の接触圧力を維持するように前記スペースを加圧することを更に含
任意に、前記カソードが前記ウィンドウの一部分を画定し、前記スペースは少なくとも部分的に電解液又はゲルにより充填されている、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記固体状態イオン伝導体は、ガラス状イオン伝導体又は高分子イオン伝導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電界によって生じた電流を測定することと、前記測定値に応じて、前記転がり線接触の速度、前記スタンプと前記金属表面との間の力、前記スタンプと前記金属表面との間の位置合わせ、及び前記電界の大きさのうちの少なくとも1つを調整することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の形体のパターンの前記ネガを前記固体状態イオン伝導体の前記主面に付与することは、前記所定の形体のパターンの前記ネガを前記固体状態イオン伝導体の前記主面上にレーザ加工すること、前記所定の形体のパターンの前記ネガを前記固体状態イオン伝導体の前記主面上にパターニング及びエッチングすること、又は前記固体状態イオン伝導体の前記主面にマスターテンプレートの主面を接触させて、前記固体状態イオン伝導体の前記主面に前記所定の形体のパターンの前記ネガをエンボス又はキャストすることのうち
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン伝導体と前記ベースとの間に第1の伝導性中間層を配置することを更に含み、前記第1の伝導性中間層は、伝導性箔層及び弾性層を含み、任意に、前記第1の伝導性中間層は、複数の伝導性区分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の伝導性中間層を前記第1の伝導性中間層に隣接させて配置することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記スタンプを前記金属表面に対して転がり線接触させた状態で動かしながら、前記金属表面とカソードとの間に電界を印加して、前記金属表面上に前記所定の形体のパターンを付与することが、前記シリンダー形工具上の第1の位置における第1のインスタンスにおいて、及び前記シリンダー形工具上の第2の位置における少なくとも第2のインスタンスにおいて、実行され、
任意に、前記第2の位置は、前記第1の位置と重なる位置、前記第1の位置に隣接する位置、又は前記第1の位置から離れた位置からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属表面に基準マークを付与することを更に含み、前記基準マークは前記所定のパターンの位置に対する所定の位置を有し、任意選択的に、前記金属表面に前記基準マークを付与することは、前記スタンプによって実行される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的に、所定の構造化表面特徴を有するシリンダー形ロールの製造に関し、より詳細には、固体イオン伝導体による電気化学パターニングを用いて、所定のナノサイズ表面特徴を有するシリンダー形ロールを形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダー形工具ロールは、多様な生産工程において、特にロールツーロール製造において有用である。1マイクロメートル以上のオーダーの構造化パターンの長さスケールを形成できることが知られている。例えば、ダイヤモンド旋盤(精密旋盤上で銅を切断するためにダイヤモンドを用いる)が、マイクロ構造の工具を形成するために用いられている。しかし、この技術に関する制約が存在する。なぜならば、この方法は基本的に回転動作だからである。
【0003】
固体状態の超イオンスタンピングは金属膜の電気化学パターニングプロセスである。このプロセスは、特定の金属に対して高イオン伝導性を示す固体電解質スタンプから始まる。パターンを形成するとき、固体電解質スタンプ及び金属膜基板が接触状態で配置される。パターン転写が電界を印加して行われる。膜スタンプ界面における酸化反応によって、アノード溶解を通して金属膜がエッチングされる。結果として得られる金属イオンが固体状態イオン伝導体スタンプを通してカウンタ電極(例えば、ベース)まで運ばれ、そこでバランス還元反応を通して金属イオンが沈殿する。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本開示ではシリンダー形工具をパターニングする方法について説明する。本方法は、ベースとベース上の固体状態イオン伝導体の層とを備えるスタンプを用意することと、固体状態イオン伝導体の主面上に所定の形体のパターンのネガを付与することと、金属表面を有するシリンダー形工具をスタンプに近接させて提供することと、スタンプを金属表面に対して転がり線接触させた状態で動かしながら、金属表面とカソードとの間に電界を印加して(カソードはベース又はベースに隣接して位置する伝導性要素のいずれかである)、金属表面上に所定のパターンをエッチングすることであって、更に、金属表面の一部分が酸化されることによって金属イオン及び自由電子が発生し、更に、前記金属イオンは固体状態イオン伝導体を通ってカソードまで移動してカソードで還元され、また自由電子は金属表面まで移動することによって所定のパターンのポジを金属表面に与える、エッチングすることと、を含む。
【0005】
ある典型的な実施形態では、所定の形体のパターンのポジは複数のナノサイズの特徴を含む。所定のパターンは複数の3次元レリーフ構造を含んでいてもよい。
【0006】
いくつかの好都合な実施形態では、接触圧力を拡散させる柔軟な固体状態超イオンスタンプが用意される。
【0007】
ある好都合な実施形態では、シリンダー形工具を調製して(例えば、ダイヤモンド切削によって)、表面粗さ(Ra)を0.05μm未満、又は0.02μm未満にさえする。任意の金属表面が好適であるが、銅及び銀が、現時点で特に有用であると考えられる。
【0008】
いくつかの好都合な実施形態において、所定のパターンのネガを固体状態イオン伝導体の主面に付与することは、所定のパターンのネガを固体状態イオン伝導体の主面上に直接レーザ加工すること、又は所定のパターンのネガを固体状態イオン伝導体の主面上にパターニング及びエッチングすることを含んでいてもよい。既知のパターニング技術としては、ナノインプリントリソグラフィ、フォトリソグラフィ、eビームリソグラフィなどが挙げられる。代替的に、固体状態イオン伝導体のパターニングを、固体状態イオン伝導体の主面にマスターテンプレートの主面を接触させて、固体状態イオン伝導体の主面に所定のパターンのネガをエンボス又はキャストすることによって行ってもよい。あるこのような実施形態では、このようなマスターテンプレートは、シリコン(例えば、シリコンウェハ)、石英、ニッケル、又は他の金属、及びそれらの組み合わせから選択された材料を含む。所定のパターンを好都合なことに、マスターテンプレートに、例えばeビームリソグラフィによって付与してもよい。いくつかの好都合な実施形態では、マスターテンプレートは、以前にマスターしたテンプレートの複製である。いくつかの好都合な実施形態では、マスターテンプレートは多孔性であり、固体状態イオン伝導体を扱うために電解液及びゲルを注入することができる。
【0009】
例示的な実施形態の列挙
A.シリンダー形工具をパターニングする方法であって、
ベースとベースの上の固体状態イオン伝導体の層とを備えるスタンプを用意することと、
固体状態イオン伝導体の主面に所定の形体のパターンのネガを付与することと、
金属表面を有するシリンダー形工具をスタンプに近接させて提供することと、
スタンプを金属表面に対して転がり線接触させた状態で動かしながら、金属表面とカソードとの間に電界を印加して、金属表面上に所定の形体のパターンを与えることであって、カソードはベース又はベースに隣接して位置する伝導性要素のいずれかであり、更に、金属表面の一部分が酸化されることによって金属イオン及び自由電子が発生し、更に、金属イオンは固体状態イオン伝導体を通ってカソードまで移動してカソードで還元され、自由電子は金属表面まで移動することによって所定のパターンのポジを金属表面に与える、ことと、を含む方法。
B.所定の形体のパターンのポジは複数のナノサイズの特徴を含む実施形態Aに記載の方法。
C.金属表面の表面粗さは0.05マイクロメートル(μm)未満である実施形態A又はBに記載の方法。
D.金属表面は、
銀、銅、クロム、チタン、金、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の金属を含む実施形態A〜Cのいずれか1つに記載の方法。
E.所定の形体のパターンは、複数の3次元レリーフ構造を含む、実施形態A〜Dのいずれか1つに記載の方法。
F.固体状態イオン伝導体の少なくとも一部の下のベース内にスペースを形成することを更に含み、ウィンドウは、形体のパターンと反対側の固体状態イオン伝導体の側面を露出する、実施形態A〜Eのいずれか1つに記載の方法。
G.金属表面に対する固体状態イオン伝導体のパターニングされた表面の接触圧力を維持するようにスペースを加圧することを更に含む、実施形態Fに記載の方法。
H.カソードによってウィンドウの一部分を画定し、スペースに少なくとも部分的に電解液又はゲルを充填する実施形態Gに記載の方法。
I.固体状態イオン伝導体は、ガラス状イオン伝導体である、実施形態A〜Hのいずれか1つに記載の方法。
J.電界によって生じた電流を測定することと、測定値に応じて、転がり線接触の速度、スタンプと金属表面との間の力、スタンプと金属表面との間の位置合わせ、及び電界の大きさのうちの少なくとも1つを調整することと、を更に含む、実施形態A〜Iのいずれか1つに記載の方法。
K.所定の形体のパターンのネガを固体状態イオン伝導体の主面に付与することは、所定の形体のパターンのネガを固体状態イオン伝導体の主面上にレーザ加工すること、所定の形体のパターンのネガを固体状態イオン伝導体の主面上にパターニング及びエッチングすること、又は固体状態イオン伝導体の主面にマスターテンプレートの主面を接触させて、固体状態イオン伝導体の主面上の所定の形体のパターンのネガをエンボス又はキャストすることのうちの1つを含む、実施形態A〜Jのいずれか1つに記載の方法。
L.マスターテンプレートは、
シリコン、石英、ニッケル、他の金属、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む実施形態Kに記載の方法。
M.所定のパターンは、
電子ビームリソグラフィによってマスターテンプレートに付与される実施形態K又はLに記載の方法。
N.イオン伝導体とベースとの間に第1の伝導性中間層を配置することを更に含む、実施形態A〜Mのいずれか1つに記載の方法。
O.第1の伝導性中間層は伝導箔及び弾性層を含む、実施形態Nに記載の方法。
P.第1の伝導性中間層は複数の伝導性区分を含む、実施形態Oに記載の方法。
Q.第2の伝導性中間層を第1の伝導性中間層に隣接させて配置することを更に含む、実施形態N〜Pに記載の方法。
R.スタンプを金属表面に対して転がり線接触させた状態で動かしながら、金属表面とカソードとの間に電界を印加して、金属表面上に所定の形体のパターンを付与することが、シリンダー形工具上の第1の位置における第1のインスタンスにおいて、及びシリンダー形工具上の第2の位置における少なくとも第2のインスタンスにおいて、実行される、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
S.第2の位置は、第1の位置と重なる位置、第1の位置に隣接する位置、又は第1の位置から離れた位置からなる群から選択される、実施形態Rに記載の方法。
T.第2の位置は、第1の位置から2μm以下の距離で離れている、実施形態Sに記載の方法。
U.カソードはウィンドウの一部を規定し、スペースに電解質エラストマーを少なくとも部分的に充填する、実施形態Fに記載の方法。
V.固体状態イオン伝導体は、高分子イオン伝導体である、実施形態Aに記載の方法。
W.金属表面に基準マークを付与することを更に含み、基準マークは所定のパターンの位置に対する所定の位置を有する前述の実施形態のいずれかに記載の本方法。
X.金属表面に基準マークを付与することをスタンプによって行う実施形態Wに記載の方法。
【0010】
以上が本開示の例示的な実施形態の様々な態様及び利点の概要である。上記の「発明の概要」は、それらの本開示の特定の例示的な実施形態の、図示される各実施形態又はすべての実装を説明することを意図するものではない。以下の図面及び「発明を実施するための形態」は、本明細書に開示される原理を使用する特定の好ましい実施形態を、より詳細に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
【0012】
図1A】金属表面を有するシリンダー形ロールを含む装置であって、本開示の調製されたスタンプを用いて転がり接触によってその金属表面をパターニングしようとしている装置の概略図面である。
【0013】
図1B】パターニングされたシリンダー形ロールを、図1Aの装置から分離して見た斜視図である。
【0014】
図2A図1Aのスタンプの形成におけるステージの垂直断面図である。
【0015】
図2B図1Aのスタンプの形成における別のステージである。
【0016】
図2C図1Aのスタンプの形成における別のステージである。
【0017】
図2D図1Aのスタンプの形成における別のステージである。
【0018】
図2E】電気化学堆積が別個のカソードで行われるようにウィンドウに伝導性液体が充填されている以外は図2Dと同様の側断面図である。
【0019】
図3図1Aのスタンプの別の典型的な実施形態の垂直断面図であり、図2Bに例示したスタンプの代替的な実施形態を示す図である。
【0020】
図面において、類似の参照符号は類似の要素を表す。必ずしも原寸に比例していない上記に特定した図面は、本開示の様々な実施形態を説明しているが、「発明を実施するための形態」で指摘するように、他の実施形態もまた企図される。すべての場合に、本開示は、本明細書で開示される開示内容を、明示的な限定によってではなく、例示的な実施形態を示すことによって説明する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる多くの他の修正及び実施形態が、当業者によって考案され得ることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示では、シリンダー形ロール上にナノサイズの特徴を形成することについて説明する。
【0022】
以下の定義された用語の用語解説に関して、これらの定義は、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において異なる定義が提供されていない限り、本出願全体について適用されるものとする。
【0023】
用語解説
ある特定の用語が、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用されており、これらの大部分については周知であるが、何らかの説明が必要とされる場合もある。本明細書において使用される場合、以下のとおりであることが理解されるべきである。
【0024】
用語「(コ)ポリマー」(単数又は複数)は、ホモポリマー及びコポリマー、並びに、例えば、共押出しにより、又は例えば、エステル交換反応を含む反応により、混和性配合物において形成され得るホモポリマー又はコポリマーを含む。「コポリマー」という用語は、ランダム、ブロック、及び星型(例えば樹枝状)コポリマーを含む。
【0025】
特徴に対する用語「ナノサイズ」の意味は、特徴が、規定された方向における少なくとも1次元が1マイクロメートルの長さより短く、好ましくは、特徴が、2つの規定された方向(互いに直交し得る)における少なくとも2次元がそれぞれ1マイクロメートルの長さより短く、更にいっそう好ましくは、特徴が、3つの規定された方向(互いに直交し得る)における3次元がそれぞれ1マイクロメートルの長さより短いということである。好ましくは、ナノサイズの特徴は少なくとも1次元が、少なくとも1ナノメートルの長さであり、10nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、又は900nm以下の長さである。
【0026】
用語「転がり線接触」は、スタンプ及び金属表面が実質的に互いに摩擦力を発揮し合い(in traction with each other)、それらが動くときにそれらの間に実質的に滑りがないことを意味する。常時接触している実際の領域は、動作の方向に対して細い。より詳細には、動作の方向に対する幅は、5000μm未満、又は1000、200、50、又は10μm未満でさえあってもよい。
【0027】
特定の層に対して、用語「隣接する」が意味するのは、2つの層が隣にあっており(すなわち隣接しており)及び互いに直接接触している位置にあり、もう1つの層に結合しているか又は取り付けられているということである。
【0028】
開示のコーティング済み物品における様々な要素の位置に関する、「〜の上部」、「〜上」、「〜の上」、「覆う」、「最上の」、「下に存在する」などの方向の用語を使用して、この明細書では、水平に配置された上向きの基材に対する、ある要素の相対位置を指す。しかしながら、別途指示のない限り、基材又は物品は、製造中又は製造後において何らかの特定の空間的向きを有するべきであるということが意図されるわけではない。
【0029】
数値又は形状への言及に関する用語「約」又は「おおよそ」は、数値又は特性若しくは特徴の±5パーセントを意味するが、明示的に、正確な数値を含む。例えば、「約」1Pa−secの粘度とは、0.95〜1.05Pa−secの粘度を指すが、正確に1Pa−secの粘度もまた明示的に含む。
【0030】
特性又は特徴に関する用語「実質的に」は、その特性又は特徴が、その特性又は特徴の反対のものが呈される程度よりも高い程度で呈されることを意味する。例えば、「実質的に」透明な基材は、それが透過しない(例えば、吸収する及び反射する)放射線よりも多くの放射線(例えば、可視光)を透過する基材を指す。それゆえに、その表面上に入射する可視光のうちの50%より多くを伝達する基材は、実質的に透明であるが、その表面上に入射する可視光のうちの50%以下を伝達する基材は、実質的に透明ではない。
【0031】
本明細書及び添付の実施形態において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に内容により明確な指示がない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば「化合物(a compound)」を含有する微細繊維への言及は、2種以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の実施形態において使用されるとき、用語「又は」は、その内容が特に明確に指示しない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0032】
本明細書中で使用されるとき、端点による数値範囲の記述は、その範囲内に包含される数のすべてを含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0033】
特に指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用する量又は成分、特性の測定値などを表すすべての数は、すべての場合、「約」という用語によって修飾されていると解するものとする。したがって、特に指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の列挙において示す数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に依存して変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0034】
本開示の例示的な実施形態は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更を採ってもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることを理解すべきである。
【0035】
例示的な装置及びプロセス
以下に、本開示の様々な例示的な実施形態を、図面を具体的に参照しながら説明する。
【0036】
次に図1Aを参照して、サポートステーション32上にサポートされたスタンプ30との転がり接触によってパターニングされようとしている金属表面24を有するシリンダー形ロール22を含む装置20の概略図面を例示する。転がり接触では、ロール22が方向「R」に回転する間に、スタンプ30が方向「D」に平行移動する。方向「R」における回転速度は、金属表面24の接線表面速度が方向「D」における動作速度に等しくて、接点において滑りがないようになっている。
【0037】
スタンプ30はチャック34によってサポートされている。チャック34はまた、電流を電圧源36から電線導管38を介してスタンプ30に伝達する。電圧源36のアノードは電線導管40を介して金属表面24に、好都合なことにシリンダー形ロール22の回転シャフト42を介して接続される。他の好都合な実施形態では、電線導管40は金属表面24に直接電気を流してもよい。
【0038】
好都合なことに、チャック34は力変換器44上に載置されているため、スタンプ30とシリンダー形ロール22との間の接触力をモニタすることができる。力変換器44は好都合なことに、傾斜プラットフォーム46上に載置されている。傾斜プラットフォーム46自体は土台48上に載置されている。土台48はスタンド50上にスライド可能に載置され、土台48の位置は、一対のアクチュエータ52(第2のアクチュエータはこの図の装置20の向こう側に隠れている)によって制御されている。空気圧式アクチュエータ(例えばエアベアリングシリンダ)がこの目的に対して好都合であると考えられる。いくつかの実施形態では、アクチュエータ52を用いて粗い位置決めを行って、ほとんどの重力の釣り合いを取るようにし、一方で、ボイスコイルを用いて最終的な接触を形成して、スタンプ30と金属表面24との間の印加された力を微調整する。スタンド50及びアクチュエータ52が直線運動ステージ60上に載置されている。回転シャフト42と直線運動ステージ60とを動かす駆動部が存在し、これらの動作は連携して、方向「R」における回転速度が、金属表面24の接線表面速度が方向「D」における動作速度に等しくて金属表面24とスタンプ30との間の接点において滑りがないようになっている。
【0039】
距離センサ62が存在して、それ自体からシリンダー形ロール22の外面24までの距離を測定してもよい。このセンサを用いて、シリンダー形ロール22上の振れをマッピングしてもよい。位置決めセンサ64が存在して、チャック34の平行度を測定し、傾斜プラットフォーム46を好都合に調整することができてもよい。
【0040】
例示した実施形態では、直線運動ステージ60自体は第2の直線運動ステージ62上に載置されている。第2の直線運動ステージ62は、直線運動ステージ60と、それがサポートする装置20の残りとを、方向「D」に垂直な方向「T」(図の平面内)に平行移動させるように方向付けられている。これによって、パターンの更なるインスタンスを、ステップアンドリピート方法でシリンダー形ロール22上に、周囲方向だけでなく、シリンダー形ロール22の軸に平行な方向にも付与することができる。
【0041】
この実施形態を図1Bでより簡単に例示する。図1Bは、シリンダー形ロール22を分離して見た斜視図であり、パターン67の9つのインスタンスがステップアンドリピート方法で3×3アレイで配置されている。図示した実施形態における9つのインスタンスは、周方向若しくは軸方向、又は両方に、ある距離で離れている。しかし、本開示では、パターン67のインスタンスは直接隣接することもできるし又は意図的に重なることもできると考えられる。以下の例で説明するように、シリンダー形ロール22上のパターン67の隣接するインスタンス間のギャップを、高い精度(2μm未満でさえ)で調整することができる。
【0042】
図1Bには基準マーク69も示す。それぞれ、パターン67のうちの1つの特定の位置関係を担っている。基準マーク69を付与することは、同じスタンプによって、パターンがスタンプ30によって付与されるときと同時に行うことができると考えられる(図1A)。基準マーク69を別個の動作において付与できることも可能である。このような基準マーク69がしばしば好都合であるのは、例えばウェブ上でのロールツーロール動作におけるパターニング後にシリンダー形ロール22を使用し、そのウェブ上でのシリンダー形ロール22の結果に何らかの二次動作を正確に位置合わせすることが望ましいときである。
【0043】
次に図2Aを参照して、図1Aのスタンプ30の形成におけるステージを例示する。スタンプ半加工品24aは、イオン伝導体70の薄膜をベース72上に付与することによって製造されている。イオン伝導体として用いる1つの好都合な材料は、ガラス状のヨウ化銀−メタリン酸銀、AgI(x)−AgPO3(1−x)である。この専用のガラス状の複合材料は、高イオン伝導性並びに低いガラス転移温度(ほぼ80〜100℃)を示す。この材料に対する付加情報は以下の論文に見出すことができる。K.Jacobs、K.Hsu、X.Han、A.Kumar、B.Azeredo、N.Fang、P.Ferreira、「Solid−state superionic stamping with silver iodide−silver metaphosphate glass」,Nanotechnology、vol.22、no.42、pp.425301、2011。なお、なおこの文献は、書き換えたかのように、本明細書において参照により取り入れられている。このようなコーティングをベース72に付与することはいくつかの方法で、例えば、加熱したスピンコーティング、スパッタリング、若しくは熱蒸発により、又はそのガラス転移温度まで加熱して、スタンプベースと接触している間に圧縮することにより、行うことができる。
【0044】
ベース72は好ましくは、何らかの強度を有するべきであり、いくつかの好都合な実施形態では、エッチングすることもできるし、機械加工することもできる。イオン伝導体70に電流を送る必要があるため、ベース72が伝導性であること、及びベース72を通して電流を送ることがしばしば好都合である。好都合な材料には、鋼鉄、インバー、及びチタンが含まれる。例えば、ベース72自体が伝導性であることが好都合ではないいくつかの他の実施形態では、電流をイオン伝導体70に送ることを、直接に、又はイオン伝導体70とベース72との間に配置された伝導性中間層を介して行ってもよい。伝導性中間層は、イオン伝導体と接触している伝導箔と、伝導箔に隣接する弾性層とを含んでいてもよい。弾性層によって、イオン伝導体がシリンダー形ロールの金属表面に接触するときに有用な伸展性が得られる。
【0045】
1つの好適な中間層は、伝導箔としてのグラファイト紙テープを、弾性層としてのゴムの薄層の上方に含む。いくつかの実施形態では、伝導層及び弾性層を組み合わせて、単一の柔軟な伝導層(例えば、カーボン添加された伝導性ゴム)にしてもよい。いくつかの実施形態では、弾性層は、規定された圧力を維持することができる流体又はガス層を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、伝導性中間層が複数の伝導性部分を含んで、パターニングされたイオン伝導体の表面の異なる部分におけるパターン転写レートの独立制御を可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、第2の伝導性中間層が、局所電界を検知するために第1の伝導性中間層に隣接して存在してもよい。このような実施形態では、局所電界を検知することによって、第1の伝導性中間層が及ぼす電界の微細制御が容易になってもよい。
【0046】
好適な非伝導性ベースには、シリコン、ガラス、及び石英及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0047】
次に図2Bを参照して、図1Aのスタンプ30の形成における別のステージを例示する。図2Aからのイオン伝導体70上に所定のパターンが押し付けられて、パターニングされたイオン伝導体70bが形成されている。イオン伝導体は好ましくは、ガラス転移温度が低く、例えば100℃未満、又は80℃未満でさえあるため、この所定のパターンを、例えばシリコンウェハから形成されたマスタツールに対する低温熱成形によって形成してもよい。層間剥離を促進するために、任意選択的に剥離コーティングを用いてマスタパターニングされたテンプレートを処理して、分離中の力を減らすことができる。分離を機械的手段によって行うことができないならば、マスタウェハーを選択的にエッチング除去することができる。代替的に、集束イオンビーム加工又はレーザアブレーションなどの技術を用いて、イオン伝導体70を直接パターニングすることもできる。
【0048】
次に図2Cを参照して、図1Aのスタンプ30の形成における別のステージを例示する。この任意的なステージでは、裏面エッチングを行って図2Bのベース72上にウィンドウ80を形成して、ウィンドウ付きベース72cを形成する。ウィンドウ80によって、パターニングされたイオン伝導体30bの裏面が露出する。後に更に説明するように、このような構成によって、パターニングされたイオン伝導体30bは図1Aのシリンダー形ロール22と柔軟な接触を形成することができる。柔軟な接触によって、接触力は安全に低減される場合があり、スタンプ上のパターンをシリンダー形ロールに転写することをより高い忠実度で行うことができる。曲げ応力が最小限であることを確実にするために、イオン伝導体の全体の厚さを好都合なことに最小限にする。いくつかの実施形態では、ウィンドウを覆うイオン伝導体の厚さは、2000μm未満、又は500、100、30未満、又は10μm未満とすることができる。ベース72がシリコンウェハである実施形態では、この裏面エッチングを、異方性KOHエッチングを用いたリソグラフィによって行うことができる。代替的に、ウィンドウを、例えば、注意深く機械加工することができる。
【0049】
次に図2Dを参照して、図1Aのスタンプ24の形成における別のステージを例示する。ウィンドウ80が存在する実施形態では、スタンプ30cを用いたときに、ウィンドウ80には、周囲よりも圧力がわずかに高い流体が与えられて、それにより、パターニングされたイオン伝導体のパターニングされた表面30bが、金属化表面がよりいっそう一様な圧力によって接触されるようになる。
【0050】
次に図2Eを参照すると、ウィンドウ80にイオン伝導性液体90が充填されている以外は、図は図2Dと同様であり、これにより、電気化学堆積が別個のカソード92で行われる。
【0051】
次に図3を参照すると、図2Bに例示したものと同様の代替的な実施形態の断面図が示されている。この実施形態では、伝導性中間層100がイオン伝導体70bとベース72との間に配置されている。図示した伝導性中間層100は、イオン伝導体70bと接触している伝導箔102と、伝導箔102に隣接する弾性層104とを含む。弾性層は、イオン伝導体がシリンダー形ロールの金属表面に接触するときに、有用な伸展性を提供する。図示した実施形態では、伝導性中間層が複数の伝導性部分(例えば、100’、102’、及び104’)を含むことにより、パターニングされたイオン伝導体70bの表面の異なる部分におけるパターン転写レートの独立制御を可能にしてもよい。
【0052】
本開示の例示的実施形態の操作は、以下の詳細な非限定的実施例に関して更に説明される。これらの実施例は、様々な具体的な好ましい実施形態及び技術を更に示すために提供される。しかしながら、本開示の範囲内に留まりつつ、多くの変更及び修正を加えることができるということが理解されるべきである。
【実施例】
【0053】
これらの実施例は単に例示を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を過度に限定することを意図しない。
【0054】
実施例1
図1Aに全般的に示したような装置を製造した。シリンダー形ロールは直径が12.75インチで、アルミニウムで構成されている。ダイヤモンド切削によって真円度を調整した後に、銀の薄層を外面上に堆積する。スタンプを真空チャックによって保持する。Transducer Techniques(カリフォルニア州、テメキュラ)からMLP−50として市販されている力率トランスデューサを真空チャックの下に配置した。力率トランスデューサは、Thorlabs(ニュージャージー州、ニュートン)から市販されている5軸プラットフォーム上に載置される。
【0055】
このプラットフォームは、スタンドの上で滑り運動させるために配置された土台に載置される。Airpot Corporation(コネチカット州、ノーウォーク)からAIRPEL−ABとして市販されている一対の空気圧式アクチュエータが、土台をサポートしている。スタンドは直線運動ステージ上に載置される。
【0056】
スタンプは、ガラス状のヨウ化銀−メタリン酸銀AgI(x)−AgPO3(1−x)の層を、シリコンウェハの形態のベース上に堆積させることによって調製される。この動作において有用な融解曲線に対する情報は以下の論文に見出すことができる。C.Tomasi、P.Mustarelli、A.Magistris、M.Garcia、「Electric,thermodynamic and NMR evidence of anomalies in(x)AgI(1−x)AgPO3 glasses」J.Non−Cryst Solids,vol.293〜295,pp.785〜791,2001。なおこの文献は、ここに再記載されたかのように、本明細書において参照により取り入れられる。ナノサイズの特徴を有するパターンは、シリコンウェハから形成されたマスタツールに対して低温熱成形することによって、ガラス状イオン伝導体上に刻印される。
【0057】
ウィンドウは、KOHで裏面をエッチングすることによってベース内に形成される。ウィンドウに次に、イオン伝導性ヒドロゲルが充填される。充填されたウィンドウは次に、金属カソードに対してシールされる。軽度の圧力をヒドロゲルに印加して、ガラス状イオン伝導体をシリンダー形ロールの方に付勢する。空気圧が空気圧式アクチュエータに印加されて、装置の上部の重みと釣り合いを取るのに十分なだけチャックがシリンダー形ロールに向かって付勢される。ボイスコイルを用いて、イオン伝導体と金属表面との間の接触圧力の最終調整を行う。直線運動ステージを動かして、シリンダー形ロールも動かして、これにより、スタンプとシリンダー形ロールの金属表面との間の接触が互いに摩擦力を発揮し合うようになる。クロノアンペロメトリモードで動作するポテンショスタットを用いて、金属表面とカソードとの間に電位差を印加する。その結果、マイクロアンペアのオーダーの電流が生じて、これにより、銀が金属表面から電気化学的にエッチングされて、カソード上に相応に堆積される。その結果、所定のパターンの高解像度コピーが金属表面上に形成される。
【0058】
実施例2
スタンプの構成に関する以外は、実施例1とほぼ同様の実験を行う。この例では、ベースにウィンドウを作製せず、代わりに、伝導性中間層をガラス状イオン伝導体とベースとの間に配置する。この伝導性中間層は、薄いゴムの弾性層の上方において、グラファイト紙テープ(Wale Apparatus(ペンシルベニア州、ヘラータウン)から市販されている)製の伝導層で形成される。
【0059】
実施例3
以下の詳細に関する以外は、実施例2とほぼ同様の実験セットアップを用意した。ガラス状イオン伝導体は、パターニングされていないものであった。シリンダー形ロールの表面は、銀メッキされていないものだった。代わりに、薄層の一方の側に銀蒸着されたポリエチレンフタレート(PET)フィルムのシートを、銀メッキ側を外側に向けてシリンダー形ロールに接着したものだった。銀メッキ側がシリンダー形ロールのアルミニウムからPETフィルムによって電気絶縁されていることが確認されてから、銀メッキ側をポテンショスタットの正端子を電気的に接続した。ポテンショスタットの負端子を伝導性中間層に接続して、銀メッキ側及びガラス状イオン伝導体を物理的に接触させる前に、ポテンショスタットを用いて、スタンプを銀メッキ側に対して電位差0.4ボルトに電気的にバイアスした。
【0060】
空気圧式アクチュエータに空気圧を印加して、装置の上部の重みと釣り合いを取るのに十分なだけチャックをシリンダー形ロールに向けて付勢した。ボイスコイルを用いて、イオン伝導体と金属表面との間の接触圧力の最終調整を行った。シリンダー形ロールを0.5度/秒で動かし、直線運動ステージを、速度スタンプと銀メッキ表面との間の接触が互いに摩擦力を発揮し合うような速度で動かした。この運動の間にポテンショスタットにより流された電流をグラフ化して、電流が5〜10マイクロアンペアの間であること、及び24秒間に全部で371マイクロクーロンが流れたことが分かった。
【0061】
実施例4
以下の詳細に関する以外、実施例3とほぼ同様の実験セットアップを用意した。シリンダー形ロールを0.25度/秒で動かし、直線運動ステージを、スタンプと銀メッキ表面との間の接触が互いに摩擦力を発揮し合うような速度で動かした。この運動の間にポテンショスタットにより流された電流をグラフ化して、電流が、5〜10マイクロアンペアの間にあり、及び49秒間に全部で457マイクロクーロンが流れたことが分かった。実施例3及び4が示唆するところによれば、電流のモニタリングは、プロセスをモニタするための実行可能な方法であり、品質管理測定をもたらすはずである。
【0062】
実施例5
以下の詳細に関すること以外、全般的に実施例2に従う実験セットアップを用意した。所定のパターンの第1の高解像度コピーが金属表面上に形成された後に、シリンダー形ロールに対するスタンプの周方向位置をその出発状態に戻され、スタンプは、「T」方向においてスタンプの幅をわずかに超えたところに、インデックスが付けられていた。スタンピングプロセスが繰り返されて、金属表面上に所定のパターンの第2のインスタンスが形成された。金属表面上の第1及び第2のパターンの間のギャップは、2マイクロメートル未満に保持された。
【0063】
実施例6
以下の詳細に関すること以外、全般的に実施例2に従う実験セットアップを用意した。金属表面上に基準マークを配置するようにスタンプを用意した。この基準マークは、所定のパターンに対して既知の位置関係を有している。
【0064】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「実施形態」に対する言及は、「実施形態」という用語の前に、「例示的な」という用語が含まれているか否かに関わらず、その実施形態に関連して説明される具体的な特色、構造、材料、又は特徴が、本開示のある特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それゆえに、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態においては」、「特定の実施形態においては」、「一実施形態においては」又は「実施形態においては」といった語句の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態の同一の実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0065】
本明細書では特定の例示的な実施形態について詳細に説明してきたが、当業者には上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の修正形態、変形形態、及び均等物を容易に想起できることが、諒解されるであろう。したがって、本開示は、ここまで説明してきた例示的な実施形態に、過度に限定されるものではないことを理解されたい。特に、本明細書で使用する場合、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)ことが意図される。加えて、本明細書で使用されるすべての数は、用語「約」によって修飾されるものと想定される。
【0066】
更には、本明細書で参照されるすべての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許を参照により組み込むことが詳細かつ個別に指示されている場合と同じ程度に、それらの全容が参照により組み込まれる。様々な例示的な実施形態について説明してきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3