特許第6960456号(P6960456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960456
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】燃料電池モジュールおよび燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20211025BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20211025BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 N
   H01M8/04 J
   !H01M8/12 101
   !H01M8/12 102C
   !H01M8/12 102B
   !H01M8/12 102A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-526967(P2019-526967)
(86)(22)【出願日】2018年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2018024322
(87)【国際公開番号】WO2019004267
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2019年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-129131(P2017-129131)
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】中間 英徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅人
(72)【発明者】
【氏名】柳本 幸弘
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/157735(WO,A1)
【文献】 特開2007−315130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素含有ガスと燃料ガスとを用いて発電を行なうセルスタック装置と、
前記セルスタック装置が載置される載置面を有し、変形可能な第1断熱材と、
前記第1断熱材内に配設され、前記セルスタック装置を支持可能な支持部材と、を備えることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記第1断熱材には、前記載置面から前記載置面と反対側の面まで貫通する貫通孔が設けられており、
前記支持部材は、前記貫通孔内に配設されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記支持部材の高さは、前記第1断熱材の厚さと同じかまたは前記第1断熱材の厚さより小さいことを特徴とする請求項2記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
前記支持部材を複数有するとともに、複数の前記支持部材は、高さが全て同じであることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記第1断熱材の下方に配設された第2断熱材と、
前記第2断熱材の下方に配設された金属板であって、前記酸素含有ガスまたは前記セルスタック装置より排出される排ガスが流れる流路の一部を規定する金属板と、を備え、
前記第2断熱材は、前記金属板に臨む側の中央部分に切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項6】
前記第1断熱材の下方に配設された第2断熱材と、
前記第2断熱材の下方に配設された金属板であって、前記酸素含有ガスまたは前記セルスタック装置より排出される排ガスが流れる流路の一部を規定する金属板と、を備え、
前記第2断熱材は、前記金属板に臨む側の中央部分の硬さが、前記金属板に臨む側の他の部分の硬さよりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項7】
前記第1断熱材と前記第2断熱材との間に、前記第1断熱材を保持する板状部材を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の燃料電池モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の燃料電池モジュールと、
該燃料電池モジュールを作動させるための補機と、
前記燃料電池モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと、を備える燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池モジュールおよび燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、セルの1種である燃料電池セルを複数個配列したセルスタックを備えるセルスタック装置を収納容器内に収納した燃料電池モジュールが種々提案されている。
【0003】
燃料電池モジュールは、高温状態で運転し、発電効率を低下させないために、収納容器内において、セルスタック装置の周囲を断熱材で覆っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−51510号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の燃料電池モジュールは、酸素含有ガスと燃料ガスとを用いて発電を行なうセルスタック装置と、前記セルスタック装置が載置される載置面を有する第1断熱材と、前記第1断熱材内に配設され、前記セルスタック装置を支持可能な支持部材と、を備える。
【0006】
また本開示の燃料電池装置は、上記の燃料電池モジュールと、該燃料電池モジュールを作動させるための補機と、前記燃料電池モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
図1】本実施形態のモジュールに収納されるセルスタック装置の一例を示す斜視図である。
図2A図1に示すセルスタック装置を示す側面図である。
図2B図2Aの点線枠Aで囲った部分の一部拡大平面図である。
図3】本実施形態のモジュールの一例を示す外観斜視図である。
図4図3に示すモジュールの断面図である。
図5】下方断熱材周辺の拡大断面図である。
図6】下方断熱材を上方から見たときの平面図である。
図7】下方断熱材周辺の拡大断面図である。
図8】下方断熱材周辺の拡大断面図である。
図9】本実施形態のモジュールの他の一例を示す断面図である。
図10】本実施形態の燃料電池装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本実施形態モジュールおよびモジュール収容装置について説明する。なお、異なる図中の共通の構成要素については、同一の符号を付与するものとする。
【0009】
図1は、本実施形態のモジュールを構成するセルスタック装置の一例を示す外観斜視図であり、図2Aは、図1に示すセルスタック装置を示す側面図であり、図2Bは、図2Aの点線枠Aで囲った部分の一部を拡大して示す平面図である。また、以降の図において、セルとして主に固体酸化物形の燃料電池セルを用いて説明する。
【0010】
図1図2Aおよび図2Bに示すセルスタック装置1においては、セルスタック2を2つ備えている。セルスタック2は、内部を燃料ガスが一端から他端に流通するガス流路15を有する燃料電池セル3を立設させた状態で配列方向(図1で示すX方向)に沿って一列に配列し、隣接する燃料電池セル3間が導電部材6を介して電気的に直列に接続されているとともに、燃料電池セル3の下端を絶縁性接着材9でマニホールド4に固定してなる。
【0011】
図1図2Aおよび図2Bにおいては、燃料電池セル3として、内部を燃料ガスが長手方向に流通するガス流路を複数有する中空平板型で、ガス流路を有する支持体の表面に、燃料極層、固体電解質層および酸素極層を順に積層してなる固体酸化物形の燃料電池セル3を例示している。燃料電池セル3の間に酸素含有ガスが流通する。燃料電池セル3の構成については後述する。本実施形態の燃料電池装置においては、燃料電池セル3は、例えば平板型や円筒型、さらには横縞型とすることもでき、あわせてセルスタック装置1の形状も適宜変更することができる。
【0012】
また、セルスタック2の最も外側に位置する燃料電池セル3に導電部材6を介して電気的に接続されたセルスタック支持部材7(以下、スタック支持部材7と略することがある。)が存在する。スタック支持部材7の外側には保護カバーを設けることもできる。保護カバーは、セルスタック2の周囲に配置された断熱材との接触や外部からの衝撃に対して、スタック支持部材7およびセルスタック2を保護する。また、スタック支持部材7にはセルスタック2の外側に突出する導電部8が接続されている。
【0013】
なお、図1図2Aおよび図2Bにおいては、セルスタック装置1が2つのセルスタック2を備えている場合を示しているが、適宜その個数は変更することができ、例えばセルスタック2を1つだけ備えていてもよい。また、セルスタック装置1を、後述する改質器を含むものとすることもできる。
【0014】
また、マニホールド4は燃料電池セル3に供給する燃料ガスを貯留し、開口部を上面に有するガスケースと、内側に燃料電池セル3を固定するとともに、ガスケースに固定される枠体とを備えている。
【0015】
燃料電池セル3の一端部(図2Aの下端部)は枠体で囲まれており、枠体の内側に充填された絶縁性接着材9で燃料電池セル3の下端部の外周が固定されている。つまり、セルスタック2は、枠体の内側に複数の燃料電池セル3を並べて収容し、絶縁性接着材9で枠体に接着されている。なお、絶縁性接着材9は、ガラス等の材料からなり、熱膨張係数を加味して所定のフィラーを添加したものを用いることができる。
【0016】
また、マニホールド4の上面には、後述する改質器にて生成された燃料ガスが流通するガス流通管5が接続されている。燃料ガスは、ガス流通管5を介してマニホールド4に供給され、マニホールド4より燃料電池セル3の内部に設けられたガス流路15に供給される。
【0017】
ここで、燃料電池セル3は、図2Bに示すように、一対の対向する平坦面をもつ柱状の導電性支持基板14(以下、支持基板14と略す場合がある)の一方の平坦面上に燃料側電極層10、固体電解質層11及び空気側電極層12を順次積層してなる柱状(中空平板状等)からなる。また、燃料電池セル3の他方の平坦面上にはインターコネクタ13が設けられており、インターコネクタ13の外面(上面)にはP型半導体層16が設けられている。P型半導体層16を介して、導電部材6aをインターコネクタ13に接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくし集電性能の低下を有効に回避することが可能となる。なお、図1では導電部材6、スタック支持部材7の記載を省略している。また、支持基板は燃料側電極層を兼ねるものとし、その表面に固体電解質層および空気側電極層を順次積層してセルを構成することもできる。なお燃料電池セルを構成する各部材は、公知の材料を用いて作製することができる。
【0018】
図3は、本実施形態のセルスタック装置を備えてなるモジュール(燃料電池モジュール)の一例を示す外観斜視図であり、図4は、図3に示すモジュールの断面図である。
【0019】
図3に示すモジュール17においては、収納容器19の内部に、本実施形態のセルスタック装置18が収納されている。なお、セルスタック装置18の上方には、燃料電池セル3に供給する燃料ガスを生成するための改質器20が配置されている。
【0020】
また、図3に示す改質器20においては、原燃料供給管23を介して供給される天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成する。なお、改質器20は、改質効率のよい改質反応である水蒸気改質を行うことができる構造とすることができる。改質器20は、水を気化させるための気化部21と、原燃料を燃料ガスに改質するための改質触媒(図示せず)が配置された改質部22とを備えている。
【0021】
また図3においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されるセルスタック装置18を後方に取り出した状態を示している。ここで、図3に示したモジュール17においては、セルスタック装置18を、収納容器19内にスライドして収納することが可能である。
【0022】
なお、収納容器19の内部には、マニホールド4に並置されたセルスタック2の間に配置され、酸素含有ガスが燃料電池セル3間を下端部から上端部に向けて流れるように、第1ガス供給部である酸素含有ガス供給部材24が配置されている。
【0023】
図4に示すように、モジュール17を構成する収納容器19は、内壁25と外壁26とを有する二重構造で、外壁26により収納容器19の外枠が形成されるとともに、内壁25によりセルスタック装置18を収納する収納室27が形成されている。
【0024】
ここで、収納容器19は、外部より導入される酸素含有ガスを収納室27に導入するための第1ガス導入部である酸素含有ガス導入部28を備えている。酸素含有ガス導入部28に導入された酸素含有ガスは、収納室27の側方における内壁25と外壁26とにより設けられ、酸素含有ガス導入部28とつながる第1ガス流通部である酸素含有ガス流通部29を上方に向けて流れる。続いて収納室27の上方における内壁25と外壁26とにより設けられ、酸素含有ガス流通部29とつながる第1ガス分配部である酸素含有ガス分配部30を流れる。そして、酸素含有ガス分配部30には、上端側に酸素含有ガスが流入するための酸素含有ガス流入口(図示せず)とフランジ部31とを備え、下端部に燃料電池セル3の下端部に酸素含有ガスを導入するための酸素含有ガス流出口32が設けられてなるガス供給部である酸素含有ガス供給部材24が、内壁25を貫通して挿入されて固定されている。それにより、酸素含有ガス分配部30と酸素含有ガス供給部材24とがつながっている。なお、フランジ部31と内壁25との間には断熱材33が配置されている。
【0025】
なお、図4においては、酸素含有ガス供給部材24が、収納容器19の内部に並置された2つのセルスタック2間に位置するように配置されているが、セルスタック2の数により、適宜配置することができる。例えば、収納容器19内にセルスタック2を1つだけ収納する場合には、酸素含有ガス供給部材24を2つ設け、セルスタック2を両側面側から挟み込むように配置することができる。
【0026】
また収納室27内には、モジュール17内の熱が放散され、燃料電池セル3(セルスタック2)の温度が低下して発電効率が低下しないよう、モジュール17内の温度を高温に維持するための断熱材33が複数の箇所に設けられている。
【0027】
断熱材33は、セルスタック2の近傍に配置することができる。例えば、燃料電池セル3の配列方向に沿ってセルスタック2の側面側に配置するとともに、セルスタック2の側面における燃料電池セル3の配列方向に沿った幅と同等またはそれ以上の幅を有する側方断熱材33aを配置する。なお、セルスタック2の両側面側に側方断熱材33aを配置することができる。それにより、セルスタック2の温度が低下することを効果的に抑制できる。さらには、酸素含有ガス供給部材24より導入される酸素含有ガスが、セルスタック2の側面側より排出されることを抑制でき、セルスタック2を構成する燃料電池セル3間の酸素含有ガスの流れを促進することができる。なお、セルスタック2の両側面側に配置された側方断熱材33aにおいては、燃料電池セル3に供給される酸素含有ガスの流れを調整し、セルスタック2の長手方向および燃料電池セル3の積層方向における温度分布を低減するための開口部34が設けられている。
【0028】
また、セルスタック装置1の下方には、セルスタック装置1が載置される載置面33b1を有する下方断熱材33b(第1断熱材)が配置される。本実施形態では、下方断熱材33bの載置面33b1にマニホールド4の下面が直接接触するように、セルスタック装置1が載置される。下方断熱材33bは、セルスタック装置1のマニホールド4下面からの放熱を抑制するとともに、セルスタック装置1を支持する支持部材として機能している。
【0029】
また、燃料電池セル3の配列方向に沿った内壁25の内側には、排ガス用内壁35が設けられており、収納室27の側方における内壁25と排ガス用内壁35との間が、収納室27内の排ガスが上方から下方に向けて流れる排ガス流通部36とされている。
【0030】
また、収納室27の下方であって、酸素含有ガス導入部28の上方には、排ガス流通部36とつながる排ガス収集部37が設けられている。排ガス収集部37は、収納容器19の底部に設けられた排気孔38と通じている。
【0031】
それにより、モジュール17の稼動(起動処理時、発電時、停止処理時)に伴って生じる排ガスは、排ガス流通部36、排ガス収集部37を流れた後、排気孔38より排気される構成となっている。なお、排気孔38は収納容器19の底部の一部を切り欠くようにして形成してもよく、また管状の部材を設けることにより形成してもよい。
【0032】
また、酸素含有ガス供給部材24の内部には、セルスタック2近傍の温度を測定するための熱電対39が、その測温部40が燃料電池セル3の長手方向の中央部でかつ燃料電池セル3の配列方向における中央部に位置するように配置されている。
【0033】
また、上述の構成のモジュール17においては、燃料電池セル3におけるガス流路15より排出される、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスとを燃料電池セル3の上端と改質器20との間で燃焼させることにより、燃料電池セル3の温度を上昇・維持させることができる。あわせて、燃料電池セル3(セルスタック2)の上方に配置された改質器20を温めることができ、改質器20で効率よく改質反応を行なうことができる。なお、通常発電時においては、上記燃焼や燃料電池セル3の発電に伴い、モジュール17内の温度は500〜800℃程度となる。
【0034】
図5は、下方断熱材周辺の拡大断面図である。セルスタック装置の下方に位置する断熱材は、セルスタック装置の自重によって変形したり、圧縮されるので、セルスタック装置の傾きや収納容器内での高さ位置の変動が生じる。セルスタック装置が傾くことで、燃料ガスや酸素含有ガスの供給に偏りが生じたり、高さ位置の変動によって、接続されている配管への外力の付加などが生じてしまう。
【0035】
本実施形態のモジュール17は、下方断熱材33b内に配設される支持部材330を備えている。支持部材330は、下方断熱材33b内において、セルスタック装置1を支持可能に構成されている。セルスタック装置1の自重によって、または運転時の振動や地震などによって、下方断熱材33bが、圧縮されるなどして変形してしまうおそれがある。下方断熱材33bが変形すると、例えば、セルスタック装置1が傾き、供給された燃料ガスおよび酸素含有ガスがセルスタック2内で偏って、発電効率が低下してしまうおそれがある。また、セルスタック装置1が傾いたり、収納容器19内での高さ位置が変化すると、原燃料供給管23などの配管に外力が付加され、配管の折れ曲がり、破断などが生じてしまうおそれがある。
【0036】
本実施形態のように、下方断熱材33b内に支持部材330を配設しておくことで、下方断熱材33bが変形した場合に、支持部材330が下方断熱材33bの代わりにセルスタック装置1を支持する。これにより、セルスタック装置1のさらなる傾きおよび高さ位置の変化を低減することができる。
【0037】
本実施形態では、例えば、下方断熱材33bの載置面33b1から載置面33b1と反対側の面まで厚み方向に貫通する貫通孔33b2が設けられており、支持部材330は、貫通孔33b2内に配設されている。支持部材330は、下方の排ガス用内壁35上に載置され支持されている。なお、後述するが、下方断熱材33bを保持する板状の棚板を設け、その棚板の上に下方断熱材33bとセルスタック装置1とを載置してもよい。この場合、支持部材330は棚板に載置することもできる。
【0038】
なお、支持部材330は、貫通孔33b2ではなく、下方断熱材33bに設けられた凹部内に配設されていてもよい。
【0039】
図6は、下方断熱材33bを上方から見たときの平面図である。セルスタック装置1と支持部材330との平面視における位置関係がわかるように、セルスタック2およびマニホールド4を透過した図を示している。本例では、支持部材330を5つ配設しており、下方断熱材33bの四隅に対応する位置と中心位置(重心位置)とに配設している。これに限らず支持部材330の数および配置位置は、これに限らず、1〜4つでああってもよく、6つ以上であってもよく、セルスタック2に沿って列状に配置してもよい。
【0040】
本実施形態では、支持部材330は、例えば円柱状であるが、これに限らず角柱状などであってもよく、円錐台および角錐台などの錐台形状などであってもよい。また、支持部材330は、中実の柱状に限らず、中空の筒状などであってもよい。
【0041】
支持部材330の高さH2は、下方断熱材33bの厚さH1と同じかまたは下方断熱材33bの厚さH1より小さい。すなわち、H2≦H1であればよく、支持部材330による熱伝導を考慮すると、下方断熱材33bが変形していない状態では、マニホールド4と支持部材330とが接触しないようにH2<H1とすることができる。このとき、H2がH1よりも小さ過ぎると、下方断熱材33bが変形しても、支持部材330とマニホールド4とが接触せず、セルスタック装置1の傾きなどを低減することができないおそれがある。それゆえ、例えば、H2/H1は0.9〜1とすることができる。
【0042】
支持部材330を複数配設する場合は、全て同じ高さとしてもよく、配設する場所によって支持部材330の高さを変えてもよい。
【0043】
支持部材330を構成する材料は、厚み方向の強度を下方断熱材33bと同程度以上とすることができるものであればよく、熱伝導性は、下方断熱材33bと同程度以下とすることができる。支持部材330を構成する材料の強度が低すぎると、支持部材330自体が変形してしまい、セルスタック装置1の傾きなどを抑制する効果が低減する。また、熱伝導性が高すぎると、支持部材330とセルスタック装置1のマニホールド4とが接触したときに、支持部材330が伝熱経路となって、下方断熱材33bによる放熱を抑制する効果が低減する。支持部材330を構成する材料としては、たとえば、高温耐熱性を有するセラミック材料、ステンレス鋼、その他、耐高温酸化材料などを用いることもできる。
【0044】
また、本実施形態の変形例としては、下方断熱材33bのさらに下方に第2下方断熱材(第2断熱材)を設けてもよい。第2下方断熱材は、下方断熱材とは異なる厚み、異なる材料で構成されていてもよい。第2下方断熱材を設ける場合、下方断熱材33bの貫通孔33b2内に配設される支持部材330は、排ガス用内壁35の代わりに第2下方断熱材に支持される。
【0045】
さらに、本実施形態の変形例としては、図7の下方断熱材周辺の拡大断面図に示すように、下方断熱材33bと第2下方断熱材33cとの間に下方断熱材33bを保持する板状部材からなる棚板70を備えている。棚板70は、排ガス用内壁35などと同様の金属材料からなり、下方断熱材33bの貫通孔33b2内に配設される支持部材330は、排ガス用内壁35の代わりに棚板70に支持される。
【0046】
ここで、第2下方断熱材33cは、金属板である排ガス用内壁35上に載置されて支持される。第2下方断熱材33cの下方に配設された排ガス用内壁35は、モジュール17の組み立て時に加わる外力、燃料電池装置動作時の温度変化による熱収縮などによって変形する場合がある。この変形は、主に長手方向の中央部分、すなわち、セルスタック2の配列方向に平行な方向の中央部分が、第2下方断熱材33c側に盛り上がるような凸状の変形となることが多い。このような変形が生じると、第2下方断熱材33cを下方から突き上げ、下方断熱材33bの変形と同様にセルスタック装置1の傾きおよび高さ位置の変化が生じてしまう。
【0047】
第2下方断熱材33cの下方の金属板、本例では排ガス用内壁35の変形を吸収するために、例えば、第2下方断熱材33cの排ガス用内壁35に臨む側の中央部分に切り欠き部を設けることができる。第2下方断熱材33cを厚み方向に一部を切り欠いた場合、図7に示すように切り欠き部33c1は、凹部状となる。
【0048】
排ガス用内壁35が変形したとしても、凸状の変形部分が切り欠き部33c1内に収まれば、第2下方断熱材33cが下方から突き上げられることを抑制することができる。
【0049】
さらに大きな排ガス用内壁35の変形を吸収するためには、例えば、図8の下方断熱材周辺の拡大断面図に示すように、第2下方断熱材33cを厚み方向に全部を切り欠くことで、切り欠き部33c2は、第2下方断熱材33cを2つの部分に分割する分割溝状となる。
【0050】
排ガス用内壁35がさらに大きく変形したとしても、凸状の変形部分が切り欠き部33c2内に収まれば、第2下方断熱材33cが下方から突き上げられることを抑制することができる。
【0051】
また、排ガス用内壁35の変形を吸収するための構成としては、切り欠き部を設ける以外に、第2下方断熱材33cの中央部分の硬さを、他の部分の硬さよりも小さくする。
【0052】
このような構成とすれば、排ガス用内壁35が変形したとしても、凸状の変形部分に追従して中央部分が凹むように変形し、他の部分は変形も変位もしないので、第2下方断熱材33cが下方から突き上げられることを抑制することができる。
【0053】
図9は、本実施形態のモジュールの他の一例を示す断面図である。図9に示すモジュール41は、図4に示すモジュール17と比較して、収納室42内に4つのセルスタック装置43を備える点、4つのセルスタックの上方に1つの改質器45が設けられている点、収納室42の上方に、燃料電池セル3より排出される排ガスを回収する排ガス回収部61を設けている点で異なっている。
【0054】
図4に示すモジュール17に比べて、収納室42内に複数のセルスタック装置43を収納してなるモジュール41においては、特に中央部側に位置するセルスタック装置43における燃料電池セル3から、収納室42の側方に位置する排ガス流通部36までの距離が長くなってしまい、中央部側に位置するセルスタック装置43における燃料電池セル3から排出される排ガスを、効率よく外部に排出することが難しい場合がある。
【0055】
それゆえ、図9に示す本実施形態の燃料電池モジュール41においては、収納室42の上方に、燃料電池セル3より排出される排ガスを回収する排ガス回収部61を設け、排ガスを一旦排ガス回収部61に回収したのちに排気する。それにより、効率よく排気ガスを排気することができる。
【0056】
また、図示していないが、改質器45としては、W字状(ミアンダ形状)の改質器とすることができる。それ以外の構成については、図4に示すモジュール17と同じであるため、各構成における説明は省略する。
【0057】
なお、図には示していないが、モジュール41は、モジュール17と同様に、下方断熱材33b内に配設される支持部材330を備えている。それにより、セルスタック装置43のさらなる傾きおよび高さ位置の変化を低減することができる。また、モジュール41は、モジュール17と同様に、第2下方断熱材33cをさらに備えていてもよく、棚板70を備えていてもよい。このように、本実施形態の支持部材330は、セルスタックの数に関係なく、セルスタック装置1,43のさらなる傾きおよび高さ位置の変化を低減することができる。
【0058】
なお、図には示していないが、モジュール41においては、4つのセルスタック装置43と1つの改質器45とを1つの下方断熱材33b上に載置することもできる。この場合、特に下方断熱材33bにおける変形が大きくなるおそれがある。これに対し、本実施形態のモジュール41では、支持部材330を配設することで、より効果的にセルスタック装置43のさらなる傾きおよび高さ位置の変化を低減することができる。すなわち、本実施形態の支持部材は、1つの下方断熱材に載置するセルスタック装置の数が多ければ多いほど、その効果はより強固なものとなる。
【0059】
図10は、外装ケース内にモジュール17、41のいずれかと、各モジュールを動作させるための補機とを収納してなる燃料電池装置の一例を示す分解斜視図である。なお、図10においては一部構成を省略して示している。
【0060】
図10に示す燃料電池装置53は、支柱54と外装板55とから構成される外装ケース内を仕切板56により上下に区画し、その上方側を上述した各モジュールを収納するモジュール収納室57とし、下方側を各モジュールを動作させるための補機類を収納する補機収納室58として構成されている。なお、補機収納室58に収納する補機類は省略して示している。
【0061】
また、仕切板56には、補機収納室58の空気をモジュール収納室57側に流すための空気流通口59が設けられており、モジュール収納室57を構成する外装板55の一部に、モジュール収納室57内の空気を排気するための排気口60が設けられている。
【0062】
このような燃料電池装置では、上述したような各モジュールを外装ケース内に収納することにより、発電効率を向上した燃料電池装置53とすることができる。
【0063】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0064】
例えば、上記形態のモジュール41では、4個のセルスタック装置の上方に1個の改質器を配置したセルスタック装置を具備する形態について説明したが、例えば、2個または3個のセルスタック装置の上方に1個の改質器を配置したセルスタック装置でも良く、さらに、5個以上のセルスタック装置の上方に1個の改質器を配置したセルスタック装置でも良い。この場合、改質器の形状は適宜変更すればよい。
【0065】
さらに、1個のマニホールド4に2個のセルスタック2を配置した形態について説明したが、1個のマニホールドに1個のセルスタックを配置しても良く、また、1個のマニホールドに3個以上のセルスタックを配置しても良い。
【0066】
さらに、上述の例ではいわゆる縦縞型と呼ばれる燃料電池セル3を用いて説明したが、一般に横縞型と呼ばれる複数の発電素子部を支持体上に設けてなる横縞型の燃料電池セルを用いることもできる。
【0067】
例えば、上記形態では燃料電池セル3、燃料電池セルスタック装置1、モジュール17、41ならびに燃料電池装置53について説明したが、セルに水蒸気と電圧とを付与して水蒸気(水)を電気分解することにより、水素と酸素(O)を生成する電解セル(SOEC)およびこの電解セルを備える電解セルスタック装置および電解モジュールならびに電解装置にも適用することができる。
【0068】
本開示は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本開示の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本開示の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0069】
1、43:セルスタック装置
17、41:モジュール
33b:下方断熱材
33b1:載置面
330:支持部材
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10