特許第6960671号(P6960671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960671
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】フルハーネス型安全帯用ハンガー
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20211025BHJP
   A47G 25/28 20060101ALI20211025BHJP
   A47G 25/36 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A62B35/00 Z
   A47G25/28 Z
   A47G25/36 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-226219(P2017-226219)
(22)【出願日】2017年11月24日
(65)【公開番号】特開2019-92941(P2019-92941A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年7月1日
【審判番号】不服2020-17158(P2020-17158/J1)
【審判請求日】2020年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126056
【氏名又は名称】株式会社つくし工房
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】特許業務法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 照生
【合議体】
【審判長】 佐々木 正章
【審判官】 鈴木 充
【審判官】 金澤 俊郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−41471(JP,A)
【文献】 実開昭48−110141(JP,U)
【文献】 実開昭52−129541(JP,U)
【文献】 実公昭46−32111(JP,Y1)
【文献】 特開平10−216001(JP,A)
【文献】 実開平1−99284(JP,U)
【文献】 特開2013−153944(JP,A)
【文献】 特開2016−112032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G25/36
A47G25/28
A62B35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルハーネス型安全帯(51)の各ベルト部分とランヤード(60)を主に掛け止めるフルハーネス型安全帯用ハンガー(1)であって、
鉤形状を有するフック部(2)と、該フック部(2)の下部に回動自在に連結されたハンガー本体部(3)と、から成り、
前記フック部(2)は、パイプ等の棒状部材(P)に掛け止める吊下げ用フック(5)を有し、
前記ハンガー本体部(3)は略菱形の形状から成り、前記フック部(2)との連結部(4)を両方から挟むように、該ハンガー本体部(3)の上部の略菱形の傾斜部に対称的に2か所形成された、フルハーネス型安全帯(51)の肩ベルト(52)をそれぞれ掛け止める肩ベルト用掛止め部(9)と、
該ハンガー本体部(3)の上下方向の中心線(CL)を挟んだ両側2か所に開けられた、二丁掛けランヤード(60)先端の各フック(61)をそれぞれ掛け止める二丁掛け用穴部(10)と、
該ハンガー本体部(3)の上下方向の中心線(CL)上の1か所に開けられた、一丁掛けランヤード(60)先端のフック(61)を掛け止める一丁掛け用穴部(11)と、を有し、
フルハーネス型安全帯(1)に接続されたランヤード(60)が、二丁掛けランヤード(60)のときは、2か所に開けられた前記二丁掛け用穴部(10)にそれぞれ掛け止められ、
一丁掛けランヤード(60)のときは、その1個のフック(61)は、1か所に開けられた前記一丁掛け用穴部(11)に掛け止められるように構成された、ことを特徴とするフルハーネス型安全帯用ハンガー。
【請求項2】
前記フック部(2)の吊下げ用フック(5)の上部に、ヘルメット(64)の顎ひも等を掛け止めるひも類用フック(7)を、該吊下げ用フック(5)の下方に、IDカード等のひも類を掛け止めるひも類用突起(8)を、それぞれ形成した、ことを特徴とする請求項1に記載のフルハーネス型安全帯用ハンガー。
【請求項3】
前記ハンガー本体部(3)の下部に、工具用ベルト(63)を掛け止める工具ベルト用掛止め部(12)を、該工具ベルト用掛止め部(12)の引っ掛かり部(12a)が該ハンガー本体部(3)の上下方向の中心線(CL)の近傍に配置されるように、該中心線(CL)を挟んで2か所形成した、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフルハーネス型安全帯用ハンガー。
【請求項4】
前記ハンガー本体部(3)の一面に連結用凹部(21)を形成し、該ハンガー本体部(3)の他面には該連結用凹部(21)が着脱自在に嵌合する連結用突起(22)を形成した、ことを特徴とする請求項1、2又は3の何れか1項に記載のフルハーネス型安全帯用ハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所で作業する作業者が装着するフルハーネス型安全帯を保管する際に用いるフルハーネス型安全帯用ハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
フルハーネス型安全帯は、高所で作業する作業者の墜落を阻止する際に、これを装着している作業者の身体が安全帯から抜け出さないように複数のベルトで構成されている。このフルハーネス型安全帯は、厚生労働省により、落下のおそれのある高所又はそれに類する場所で作業する作業者は、フルハーネス型安全帯を身体に装着すると共に、その一部をロープ(ランヤード)を介して周囲の固定体に連結することが義務付けられている。このフルハーネス型安全帯により、高所作業の現場から落下しても作業者は安全に宙吊りとなるようにしている。
【0003】
図8の作業者前面側の状態図に示すように、フルハーネス型安全帯51は、肩や腿(もも)、胸などの複数のベルトで構成され、これによって身体が安全帯から抜け出すことや、胸部・腹部を過大に圧迫するリスクを低減するようになっている。フルハーネス型安全帯51は、作業者の両肩から胸に掛ける肩ベルト52と、この肩ベルト52の胸の部分でバックル53により着脱自在に連結する胸ベルト54と、肩ベルト52の下部は胴ベルト55につながれている。この胴ベルト55には、両太ももを差し込む腿ベルト56がそれぞれつながれている。胴ベルト55はバックル57により着脱自在になっている。
【0004】
図9の作業者後面側の状態図に示すように、フルハーネス型安全帯51は、両肩ベルト52の中間はD環58に通されている。更に、両肩ベルト52の他端は胴ベルト55につながれている。このD環58には、ショックアブソーバー59を介してランヤード60がつながれている。このランヤード60の先端にフック61が付けられている。各腿ベルト56には広がりを防止する骨盤ベルト62がつながれている。
いわゆる一丁掛けは、このランヤード60が1本のものである。図示例の二丁掛けは、このランヤード60が2本のものである。フック61の掛け替え時の墜落リスクを低減させるため、2丁掛けが一般的である。
【0005】
このように構成されたフルハーネス型安全帯51は、宙つり状態でも身体の重心位置(腰部付近)より頭部側にD環58を維持するため、着用者の姿勢が“逆さま姿勢”になることを防止する機能もある。ショックアブソーバー59は、墜落阻止時に発生する衝撃荷重を大幅に低減するためのものである。これにより、ランヤード60に作用する軸力が小さくなるため、フルハーネス型安全帯51に作用する荷重が小さくなる。更に、鋭利な角部等に接触した際に生じる摩擦力を小さくできるため、ショックアブソーバー59を備えていないランヤード60に比べ、ランヤード60の切断リスクを低減することができる。
【0006】
このようなフルハーネス型安全帯51を使用しない時には整然と保持しておくことができ、これを使用する際に容易かつ迅速に装着することができるフルハーネス型安全帯用のハンガーに関する技術が提案されている。例えば特許文献1の特開2004−41471号公報「ハーネス安全帯用のハンガー」のように、左右対称形の吊掛部を基部の両側に配置すると共に該基部の下部を中心に回動自在に取り付け前記吊掛部上部の前記基部に接する部分に前記基部に対し回動不能に錠止する錠止機構を設け、前記基部の上部に操作部を設け、該操作部の操作により前記錠止機構を解除して前記吊掛部が回動するようにし、前記吊掛部が回動しない状態においてハーネス安全帯の2本の肩掛けベルトを前記吊掛部の上辺にそれぞれ係止するようにしたハーネス安全帯用のハンガーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−41471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、フルハーネス型安全帯51には多数のベルト52,54、55,56、ランヤード60(ロープ)、フック61が備えられた装備であるため、その保管が煩雑であった。一人分のフルハーネス型安全帯51であれば、保管と装着が容易である。しかし、複数のフルハーネス型安全帯51を重ねて保管しておくと、ベルト52,54、55,56とフック61それぞれが絡むことが多く、それらを外すために多くの時間を要し、また装着に際しても時間を取られることが多かった。
【0009】
また、使用後のフルハーネス型安全帯51については、ロッカーや棚に丸めて置いた状態にすることが多かった。あるいはパイプ等の棒状部材にそのまま掛けた状態にすることも多かった。このように乱暴に扱った状態のフルハーネス型安全帯51について、使用する際の装着に時間がかかるという問題を有していた。フルハーネス型安全帯51を乱暴に扱ったときに、その状態で装着すると、装着ミス(不完全な装着)をすることもあった。更に、フルハーネス型安全帯の部品が紛失するおそれがあった。
【0010】
特に、一丁掛け又は二丁掛けのフルハーネス型安全帯51では、複数本のベルト52,54、55,56のほかに1本又は2本のランヤード60を備えているので、これらのランヤード60のフック61が絡みやすかった。特許文献1の「ハーネス安全帯用のハンガー」では、ランヤード60を掛け止めることができず、ランヤード60、そのフック61が他のベルト52,54、55,56、ランヤード60に絡むことを防止できないという問題を有していた。
【0011】
本発明の発明者は、高所作業では、作業者はフルハーネス型安全帯のみを装着するのではなく、工具ベルト63、ヘルメット64なども装着する必要があり、これらも掛け止めておくことができるハンガーであれば、作業開始を迅速かつ容易にできることに着目した。しかも、高所作業に必要な工具類も同じ場所に保管することで、高所の作業現場における工具忘れも確認できることにも着目した。
【0012】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、フルハーネス型安全帯の複数のベルトの他に、ランヤードも掛け止める構成にすることで、フルハーネス型安全帯のベルト、ランヤードが絡むことなく、掛け止めておくことができ、また作業者が容易に装着することもでき、更に作業現場に必要な工具類も合わせて保管することができるフルハーネス型安全帯用ハンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、フルハーネス型安全帯(51)の各ベルト部分とランヤード(60)を主に掛け止めるフルハーネス型安全帯用ハンガー(1)であって、
鉤形状を有するフック部(2)と、該フック部(2)の下部に回動自在に連結されたハンガー本体部(3)と、から成り、
前記フック部(2)は、パイプ等の棒状部材(P)に掛け止める吊下げ用フック(5)を有し、
前記ハンガー本体部(3)は略菱形の形状から成り、前記フック部(2)との連結部(4)を両方から挟むように、該ハンガー本体部(3)の上部の略菱形の傾斜部に対称的に2か所形成された、フルハーネス型安全帯(51)の肩ベルト(52)をそれぞれ掛け止める肩ベルト用掛止め部(9)と、
該ハンガー本体部(3)の上下方向の中心線(CL)を挟んだ両側2か所に開けられた、二丁掛けランヤード(60)先端の各フック(61)をそれぞれ掛け止める二丁掛け用穴部(10)と、
該ハンガー本体部(3)の上下方向の中心線(CL)上の1か所に開けられた、一丁掛けランヤード(60)先端のフック(61)を掛け止める一丁掛け用穴部(11)と、を有し、
フルハーネス型安全帯(1)に接続されたランヤード(60)が、二丁掛けランヤード(60)のときは、2か所に開けられた前記二丁掛け用穴部(10)にそれぞれ掛け止められ、
一丁掛けランヤード(60)のときは、その1個のフック(61)は、1か所に開けられた前記一丁掛け用穴部(11)に掛け止められるように構成された、ことを特徴とする。
【0014】
前記フック部(2)の吊下げ用フック(5)の上部に、ヘルメットの顎ひも等を掛け止めるひも類用フック(7)を、該吊下げ用フック(5)の下方に、IDカード等のひも類を掛け止めるひも類用突起(8)を、それぞれ形成することができる。
前記ハンガー本体部(3)の下部に、工具用ベルト(63)を掛け止める工具ベルト用掛止め部(12)を、該工具ベルト用掛止め部(12)の引っ掛かり部(12a)が該ハンガー本体部(3)の上下方向の中心線(CL)の近傍に配置されるように、該中心線(CL)を挟んで2か所形成することができる。
【0015】
前記ハンガー本体部(3)の一面に連結用凹部(21)を形成し、該ハンガー本体部(3)の他面には該連結用凹部(21)が着脱自在に嵌合する連結用突起(22)を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成では、略菱形のハンガー本体部(3)の上部に対称的に2か所形成された肩ベルト用掛止め部(9)に、フルハーネス型安全帯(51)の肩ベルト(52)をそれぞれ容易に掛け止めることができる。フルハーネス型安全帯用ハンガー(1)への取り付け、取り外しが容易である。しかも身体から外した状態で、ハンガー本体部(3)にフルハーネス型安全帯(51)を掛け止めることができるので、使用に際して容易に装着でき、その装着時間を短縮でき、その上装着ミスがなくなる。特に、フルハーネス型安全帯(51)と、フルハーネス型安全帯(51)を使用する際に必要なランヤード(60)も一緒に保管できるため、フルハーネス型安全帯(51)の装着時に、このランヤード(60)の装着忘れを防止できる。
また、本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー(1)は、通常の洋服用のハンガーと比較して厚く形成されているので、フルハーネス型安全帯(51)の各ベルト(52,54、55,56)について、ハンガー本体部(3)の上部を面(丸み部分)で掛け止めることができ、フルハーネス型安全帯(51)の使用に際して引っかかりを防止できる。使用に際しても本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー(1)から容易に取り外すことができる。
【0017】
フルハーネス型安全帯用ハンガー(1)には、ランヤード(60)の二丁掛け用穴部(10)と一丁掛け用穴部(11)が共に設けられているので、ここに何れのタイプのランヤード(60)先端のフック(61)でも掛け止めることができる。他のベルトに絡みやすいランヤード(60)先端のフック(61)がハンガー本体部(3)に固定されることで、フルハーネス型安全帯(51)を容易に保管できる。
【0018】
一丁掛けのランヤード(60)先端のフック(61)についても、ハンガー本体部(3)の中心線(CL)上に掛け止められる構造になり、フルハーネス型安全帯用ハンガー(1)の平衡を保つことができる。ハンガー本体部(3)が傾くことにより、そこに掛けられているものが落下することを防止できる
【0019】
更にフルハーネス型安全帯(51)以外に、ヘルメット(64)、IDカード、工具用ベルト(63)といった高所作業に必要なものを一式保管できるため、装着時に装着忘れを防止できる。逆に、作業終了後は、工具、ヘルメット(64)などの道具を作業現場に忘れたか否かについても判断できる。これらのものは、ハンガー本体部(3)の中心線(CL)上、又は中心線(CL)の近くに掛け止められる構造にすることで、フルハーネス型安全帯用ハンガー(1)の平衡を保つことができ、ハンガー本体部(3)が傾き、そこに掛けているものが落下することを防止できる。
【0020】
ハンガー本体部(3)の一面に連結用凹部(21)を、他面に連結用突起(22)を形成したものは、ハンガー本体部(3)を積み上げられた状態を維持できるので、ハンガー(1)を同じ方向に積み重ねて保管することができる。このように、同じ方向に積み重ねた状態で保管できると、フック部(2)が破損しなくなる。また、嵩張ることもなく、容易に保管できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーを示す正面図である。
図2】本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーを示し、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
図3】フルハーネス型安全帯用ハンガーにフルハーネス型安全帯の肩ベルトを掛け止めた状態を示す正面図である。
図4】本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーを示す平面図であり、(a)はフック部を捻る前の状態、(b)はフック部を捻った後の状態である。
図5】本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーにフルハーネス型安全帯を掛け止めた状態を示す正面図である。
図6】本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーの変形例1を示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図である。
図7】変形例1のフルハーネス型安全帯用ハンガーを積み重ねる状態を示す正面図である。
図8】フルハーネス型安全帯を装着した作業者の前面側の状態を示す斜視図である。
図9】フルハーネス型安全帯を装着した作業者の後面側の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、鉤形状を有するフック部と、フック部の下部に回動自在に連結されたハンガー本体部とから成り、フルハーネス型安全帯の各ベルト部分を掛け止めるフルハーネス型安全帯用ハンガーである。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<フルハーネス型安全帯用ハンガーの構成>
図1は本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーを示す正面図である。図2は本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーを示し、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。図3は本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーにフルハーネス型安全帯の肩ベルトを掛け止めた状態を示す正面図である。
本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1は、鉤形状を有するフック部2と、フック部2の下部に回動自在に連結されたハンガー本体部3とから成るハンガーである。フック部2自体、又はフック部2とハンガー本体部3との連結部4は、荷重20kg程度は耐えられる構造になっている。フルハーネス型安全帯51以外に、ヘルメット64、工具ベルト63などを合わせると10kg程度は超えることがある。本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1を吊り下げるパイプPの配置状態に応じて、この連結部4で向きを頻繁に変えることがあり、フック部2は重い荷重に耐えられることが望ましいからである。図示上外殻線の内側の細線は、丸み形状を示している。
【0024】
本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1は、通常の洋服用のハンガーと比較して厚く形成されている。例えば、図1図2に示すように、フック部2とハンガー本体部3の厚みL1は、ハンガー本体部3の長手方向の全長L2に対して1/10〜1/15程度の厚みを有する。フルハーネス型安全帯用ハンガー1は、プラスチックの中空成形により製造することができる。このように所定の厚みを有することで、フルハーネス型安全帯51の各ベルト52,54、55,56について、ハンガー本体部3の上部を面(丸み部分)で掛け止めることができ、フルハーネス型安全帯51の使用に際して引っかかりを防止できる。使用に際しても本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1から容易に取り外すことができる。
【0025】
<フック部の構成>
フルハーネス型安全帯用ハンガー1のフック部2は、パイプ等の棒状部材Pに掛け止める吊下げ用フック5を有する。本発明のフック部2は、通常の洋服用のハンガーと比較して、ハンガー本体部3に対してフック部2が大きく形成されている。鉤状の吊下げ用フック5はある程度の立ち上がり部6を有する。これは、本発明のハンガー1にフルハーネス型安全帯51を吊るした状態で、この立ち上がり部6を手で持って、パイプ等に吊るせるようにするためである。または容易に取り外すことができるようにするためである。
【0026】
フック部2の吊下げ用フック5の上部に、ヘルメット64の顎ひも等を掛け止めるひも類用フック7を形成した。このひも類用フック7は、立ち上がり部6の上方に延長するように形成された鉤状部分である。勿論、ヘルメットの顎ひも以外のものを掛け止めることも可能である。図示例では鉤状になったものを示しているが、単純に上方に伸びた棒状の部材でもよい。また、1か所に限定されず数か所設けることも可能である。
【0027】
吊下げ用フック5の下方に、IDカード等のひも類を掛け止めるひも類用突起8を、それぞれ形成した。これは、単純にひも類を掛け止める箇所である。勿論IDカード以外のものを掛け止めることも可能である。
【0028】
<ハンガー本体部の構成>
ハンガー本体部3は、全体として略菱形の形状を有する部材である。このハンガー本体部3の上部に、フック部2との連結部4を両方から挟むように対称的に肩ベルト用掛止め部9が2か所形成されている。文字通り、フルハーネス型安全帯51の肩ベルト52部分をそれぞれ掛け止めるものである。図示例では、ハンガー本体部3の上部に切り欠いた状態になったものをしている。この形状に限定されず、肩ベルト52部分を掛け止めることができれば、ハンガー本体部3の上部に突起を形成した状態でもよい。
【0029】
ハンガー本体部3の両側に二丁掛け用穴部10が2か所開けられている。この二丁掛け用穴部10には、二丁掛けランヤード60先端の各フック61をそれぞれ掛け止める。他のベルトに絡みやすいランヤード60先端のフック61がハンガー本体部3に固定されるため、フルハーネス型安全帯51を容易に保管できる。
【0030】
本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1は、このようにハンガー本体部3の中心線CLにバランスよく、物を掛け止める構造にしてハンガー本体部3が傾かないようになっている。掛けているものの落下を防止するためである。そこで、原則、肩ベルト用掛止め部9を2か所に対称配置した。同じく二丁掛け用穴部10が2か所開けられている。
【0031】
ハンガー本体部3の中央に一丁掛け用穴部11は、上下方向の中心線CL上に1か所開けられている。この一丁掛け用穴部11には、一丁掛けランヤード60先端のフック61を掛け止める。一丁掛け用穴部11は、ハンガー本体部3の中央に開けたので、ハンガー本体部3の平衡を保ち、フルハーネス型安全帯用ハンガー1が傾斜することを防止する。ハンガー本体部3が傾斜しないことにより、フルハーネス型安全帯51以外のヘルメット64、IDカード、工具ベルト63、更には作業服などが落下することを防止できる。
【0032】
ハンガー本体部3の下部に、対称的に工具ベルト用掛止め部12の2か所形成されている。この工具ベルト用掛止め部12は、文字通り工具用ベルト63を掛け止める部分である。ハンガー本体部3の下部にあるため、工具用ベルト63が外れづらいように、上方に傾斜した長い掛け止め棒から成る構成である。フルハーネス型安全帯51以外に、工具ベルトといった高所作業に必要なものを一式保管できるため、装着時に装着忘れを防止できる。逆に、作業終了後は、工具などの道具を作業現場に忘れたか否かについても判断できる。
この工具ベルト用掛止め部12は、工具ベルト用掛止め部12の引っ掛かり部12aがハンガー本体部3の上下方向の中心線CLの近傍に配置されるように、中心線CLを挟んで2か所形成することができる。
【0033】
本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1では、対称的に掛け止めることができないものは、ハンガー本体部3の中心線CL上、又は中心線CLの近くに掛け止められる構造にした。フルハーネス型安全帯用ハンガー1は、平衡を保つようにするためである。
【0034】
ハンガー本体部3には、ネームプレート13が貼れる部分を有する。これはネームプレート13を粘着剤で貼れるようにする場所である。勿論、フルハーネス型安全帯51の所有者特定するためである。ここにポケットを設けて差し込む構成にしてもよい。
【0035】
<使用状態の説明1>
図4は本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーを示す平面図であり、(a)はフック部を捻る前の状態、(b)はフック部を捻った後の状態である。
本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1は、そのフック部2の吊下げ用フック5を、パイプ等の棒状部材Pに掛け止めて使用する。通常の洋服用のハンガーと同様な方法で使用する。本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1は、棒状部材Pの長手方向と、ハンガー本体部3の長手方向が直角になるように掛け止めて使用するときは、図4(a)に示すように、ハンガー本体部3とフック部2のそれぞれの面が平行になるようにする。
【0036】
本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1を、棒状部材Pの長手方向とハンガー本体部3の長手方向と平行にして使用するときは、図4(b)に示すように、フック部2をハンガー本体部3の長手方向に対して90度捻り、掛け止めて使用する。
【0037】
<使用状態の説明2>
図5は本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーにフルハーネス型安全帯を掛け止めた状態を示す正面図である。
本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1に、フルハーネス型安全帯51を掛け止めるときは、ハンガー本体部3の上部に対称的に2か所形成された肩ベルト用掛止め部9に、フルハーネス型安全帯51の肩ベルト52をそれぞれ掛け止める。更に、二丁掛けのランヤード60先端のフック61を二丁掛け用穴部10にそれぞれ掛け止める。このように肩ベルト52と共に、乱雑になりやすい二丁掛けのランヤード60先端のフック61がそれぞれ同じハンガー本体部3に掛け止められているので、フルハーネス型安全帯51の各ベルト52,54、55,56やランヤード60先端のフック61が他のベルトに絡むことを防止できる。
なお、一丁掛け用のランヤード60先端のフック61は、一丁掛け用穴部11に掛け止めることができ、フルハーネス型安全帯51を容易に保管できる。
【0038】
本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガー1では、フルハーネス型安全帯51、ランヤード60先端のフック61を容易に掛け止めることができ、容易に取り外すことができる。しかも身体から外した状態で、ハンガー本体部3にフルハーネス型安全帯51を装着することができるので、装着ミスがない。
【0039】
フルハーネス型安全帯51以外に、ヘルメット54、IDカード、更に工具用ベルト63といった高所作業に必要なものを一式保管できるため、装着時に装着忘れを防止できる。逆に、作業終了後は、工具などの道具を作業現場に忘れたか否かについても判断できる。
【0040】
<変形例1>
図6は本発明のフルハーネス型安全帯用ハンガーの変形例1を示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図である。図7は変形例1のフルハーネス型安全帯用ハンガーを積み重ねる状態を示す正面図である。
変形例1のフルハーネス型安全帯用ハンガー1は、ハンガー本体部3の一面(表面、メームプレート13の面)に連結用凹部21を形成し、ハンガー本体部3の他面(裏面)にこの連結用凹部21が着脱自在に嵌合する連結用突起22をそれぞれ形成したものである。使用していない保管中のハンガー1は、フック部2がハンガー本体部3に絡んで、取り出すときに時間を要する。また、無造作に重ねた状態であると、嵩張るだけでなく、フック部2が破損するおそれがある。この変形例1のように、同じ方向に積み重ねた状態で保管できると、フック部2が破損しなくなる。また、嵩張ることもない。容易に保管できる。
なお、ハンガー本体部3の連結用凹部21と連結用突起22の配置を逆にしてもよいことは勿論である。
【0041】
図示例では、ハンガー本体部3の一面に2個の連結用凹部21と、他面に2個の連結用突起22を形成した状態を示している。この個数は2個に限定されず、3個、4個と自由に選択することができる。逆に、連結用凹部21と連結用突起22が円形以外の形状、嵌合部分を中心に回動しない形状であれば、1個のみでもよい。
【0042】
なお、本発明は、フルハーネス型安全帯51の複数のベルトの他に、ランヤード60も掛け止める構成にすることで、フルハーネス型安全帯51についてベルト52、54、55,56、ランヤード60、フック61が絡むことなく、掛け止めておくことができ、また作業者が容易に装着することもでき、更に作業現場に必要な工具類も合わせて保管することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、フルハーネス型安全帯51、ヘルメット54、IDカード、工具用ベルト63といった高所作業に必要なものに限定されず、その他の作業服、作業道具などを保管することに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 フルハーネス型安全帯用ハンガー
2 鉤形状を有するフック部
3 ハンガー本体部
4 連結部
5 吊下げ用フック
7 ひも類用フック
8 ひも類用突起
9 肩ベルト用掛止め部
10 二丁掛け用穴部
11 一丁掛け用穴部
12 工具ベルト用掛止め部
21 連結用凹部
22 連結用突起
L1 ハンガー本体部の厚み
L2 ハンガー本体部の全長
P 棒状部材
CL 中心線
51 フルハーネス型安全帯
52 肩ベルト
60 一丁掛けランヤード
61 フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9