(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性ウレタンエラストマー基材上の一方の面に受像層を積層した熱転写受像シートと前記受像層にインクを熱転写する熱溶融型インクリボンのセットであって、前記受像層が、ウレタンアクリレートを主剤として、前記ウレタンアクリレートの一部がポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートである組成物を硬化してなる層であり、前記受像層の厚みが0.8μm以上、2.0μm以下であり、熱転写時に前記受像層と接する前記熱溶融型インクリボンの最上層である転写層が、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及び変性ポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれる樹脂を含有することを特徴とする熱転写受像シートと熱溶融型インクリボンのセットである。
前記熱転写時に前記受像層と接する前記熱溶融型インクリボンの最上層である転写層がエポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及び変性ポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれる樹脂を固形分中の35重量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シートと熱溶融型インクリボンのセット。
前記熱可塑性ウレタンエラストマー基材の前記受像層を積層した面の反対側の面上に、粘着層又は吸着層を積層したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱転写受像シートと熱溶融型インクリボンのセット。
前記吸着層が、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなるシリコーン組成物を、付加反応により硬化してなるものを主成分とすることを特徴とする請求項3に記載の熱転写受像シートと熱溶融型インクリボンのセット。
前記ジオルガノポリシロキサンが、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサン、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種以上である請求項4に記載の熱転写受像シートと熱溶融型インクリボンのセット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の熱転写受像シートと熱溶融型インクリボンを、さらに詳しく説明する。
【0016】
(熱転写受像シート)
本発明の第1実施形態である熱転写受像シートXと熱溶融型インクリボンYの層構成の模式図を
図1に示す。熱転写受像シートXは、熱可塑性ウレタンエラストマー基材3(以下、TPU基材3と言う)の一方の面に、アンカー層2A、シリコーン吸着層2、セパレーターA1の3層が、TPU基材3側からこの順で積層され、TPU基材3のもう一方の面に、アンカー層4A、受像層4が、TPU基材3側から、この順で積層された構成となっている。
【0017】
(熱可塑性ウレタンエラストマー基材:TPU基材3)
本発明におけるTPU基材3は、従来公知の方法で、すなわち押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどに熱可塑性ウレタンエラストマー及びその他の成分を投入し溶融混練して混練物(マスターバッチ)を作成し、当該混練物をカレンダー、Tダイなどを通過させることでシート状及至板状に成形したものを使用することができる。
【0018】
なお、熱転写受像シートXにおいては、TPU基材3はPETフィルムなどの仮支持体上に形成するか、又は仮支持体上に設けられたTPU基材の市販品を使用することが好ましい。なぜなら、TPU基材3単体では引張強度が小さく、TPU基材3に他の層を積層する際にTPU基材3が伸びたり切れたりすることがあるからである。このため、仮支持体に積層した状態のTPU基材3にアンカー層4Aを積層することが好ましい。TPU基材3の厚みは50μm以上150μm以下であることが好ましく、70μm以上100μm以下であることがより好ましい。TPU基材の厚みが50μm未満になると、貼付け時にシワになり易く、取り扱い難くなる。一方、TPU基材3の厚みが150μmよりも大きくなると、曲面追従性が低下することがある他、経済的にも無駄である。
【0019】
TPU基材3を積層する仮支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどからなる1層または多層構造のフィルムを使用することができる。仮支持体の厚みは、通常10〜300μmであり、好ましくは25〜200μmである。
【0020】
仮支持体上に熱可塑性ウレタンエラストマーを溶融した混練物(マスターバッチ)を塗工又は積層する方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター、Tダイ等公知の方法が適宜使用される。
【0021】
(熱可塑性ウレタンエラストマー)
TPU基材3の材料である熱可塑性ウレタンエラストマー(TPU)としては、以下のハードセグメント及びソフトセグメントから構成されたものが挙げられるが、熱転写受像シートXの曲面追従性を調整するために、イソシアネートとポリオール成分の配合量を適宜調節して、TPU基材3の引張強度と破断時伸び率を、適切な値に調節することができる。
【0022】
ハードセグメントとしては、ジイソシアネート及び1,9ノナンジオール、1,4‐ブタンジオールやジエチレングリコールなどのアルカンジオール又はポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのジアルキレングリコールからなるものなどが挙げられる。
【0023】
ソフトセグメントとしては、ジイソシアネート又はジイソシアネートに1,3ブタンジオールなどのアルカンジオールを配合したアダクト体、及びポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシブチレン−ポリオキシエチレン、ポリテトラメチレン、又はポリオキシブチレン−ポリオキシエチレン−グリコールなどのポリエーテル系、又はアルカンジオール−ポリアジペートなどのポリエステル系からなるものや、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。ここで、ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
熱転写受像シートXのTPU基材3には、熱転写受像シートXの曲面に貼り付けることができる性質を満足するための柔軟性を損なわない範囲で、熱可塑性ウレタンエラストマー成分以外に他の成分を含めることができる。その他の成分の例としては、改質剤(加工助剤)、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃助剤、ブロッキング防止剤などが挙げられ、これらは必要に応じて単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
(吸着層又は粘着層)
本発明の熱転写受像シートXは、TPU基材3の熱溶融型インクリボンYからインクを転写される受像層4の反対側の面に、画面等の被着体上へ貼り付けるための任意の吸着層、又は粘着層を設けることが好ましい。本発明の熱転写受像シートXの有用な用途として、店頭のガラス面や、商品サンプルの平滑面などに貼り付けて、広告用や装飾用などに使用することが考えられる。このような用途に使用することを考慮すると、本発明の熱転写受像シートXは、間違った位置に貼り付けた場合の貼り直しができることや、不要となった場合に容易に剥がせることが好ましく、この点からは吸着層を設けることが好ましい。また、このような用途に使用することを考慮すると、美観の点から、本発明の熱転写受像シートXは、透明性が高いものが好ましいため、本発明の吸着層に用いる吸着剤は、多種の吸着剤の中でも、シリコーン系吸着剤が好ましい。以下、本発明の熱転写受像シートXの粘着層又は吸着層の説明として、シリコーン吸着層2を例に挙げて説明する。
【0026】
(アンカー層2A)
TPU基材3にシリコーン吸着層2を積層するには、TPU基材3とシリコーン吸着層2の間にアンカー層2Aを設けることが好ましい。アンカー層2Aを設ける目的は、TPU基材3とシリコーン吸着層2との接着力の向上、および、特に被着体がガラスである場合のガラス面とシリコーンオリゴマーとの反応による密着力の経時上昇を防ぎ、熱転写受像シートXを剥離する際に、スムーズに剥離でき被着体であるガラス面上にシリコーン残りを発生させないことである。
【0027】
アンカー層2Aに用いる樹脂としては、酸価7〜100mgKOH/gの範囲にあるポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
ポリエステル系樹脂の酸価が7mgKOH/g未満であると、アンカー層2Aとシリコーン吸着層2、アンカー層2AとTPU基材3の接着力が弱く、特に、経時によりシリコーン吸着層2がTPU基材3から離脱しやすくなる。また被着体への熱転写受像シートXの貼着後、保護フィルムXを剥離する際に、被着体上にシリコーン残りが発生しやすくなる。酸価が100mgKOH/gを超えると樹脂皮膜の耐水性が不足する。
【0029】
アンカー層2A塗工液は従来公知の方法により作製可能である。
【0030】
アンカー層2Aの厚みは0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.15〜3μmである。アンカー層2Aの厚みが、0.1μm未満であると熱架橋されたシリコーン吸着層2がアンカー層2Aから離脱し易くなるとともに、アンカー層2AもTPU基材3から離脱し易くなる。一方、アンカー層2Aの厚みが、5μmを超えることは無駄であるし、熱転写受像シートX全体の柔軟性が失われて、被着体への曲面追従性が低下する。
【0031】
熱転写受像シートXのアンカー層2A用塗工液には、前記の樹脂成分の他、TPU基材3への濡れ性を改善するために、塗工液の分散性を阻害しない範囲内において水と混和性があるアルコール等の有機溶媒を添加してもよい。また、その他の方法として、付加反応型シリコーン樹脂の架橋反応に対して触媒毒にならない範囲で濡れ性改善剤を添加することができる。また、必要に応じて、加硫剤、加硫促進剤など、この種の組成物に通常添加されるものを本発明の効果が低下しない範囲で加えることができる。
【0032】
(シリコーン吸着層2)
熱転写受像シートXのシリコーン吸着層2に用いるシリコーンの性状としては、透明性が高く、ゴムのような柔軟性を持っていていることが求められる。そして、シリコーン吸着層2の性能としては、表面が被着体表面に追従し、被着体からの剥離の際には小さい剥離力で被着体表面から容易に剥離できることが求められる。また、シリコーン吸着層2に用いるシリコーンの加工上の性能としては、少なくとも膜厚10μm以上で、目付け加工の方法を用いることなく塗工及び加熱処理だけで、架橋したシリコーン吸着層2を設けられることが求められる。このようなシリコーンとしては、硬化反応に際して150℃以下の低温短時間で深部まで架橋し、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れかつ低粘度で液状タイプのものである付加型液状シリコーン樹脂の使用が好ましい。付加型液状シリコーン樹脂は、白金触媒等のもと、1分子中に2個以上のビニル基などのアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと架橋剤としてSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロキシル反応により熱架橋することができる。
【0033】
このようなジオルガノポリシロキサンとしては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン、末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサン、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種以上を用いると良い。
【0034】
これらのジオルガノポリシロキサンの1形態である、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、下記一般式(化1)で表せられる。
【0036】
(式中Rは下記有機基、nは整数を表す)
【0038】
(式中Rは下記有機基、m、nは整数を表す)
【0039】
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種又は異種の非置換又は置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で、好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0040】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基であるジオルガノポリシロキサンである。末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンは、上記一般式(化2)で表せられるジオルガノポリシロキサンである。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンは、上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基であるジオルガノポリシロキサンである。
【0041】
(MQレジン)
本発明のシリコーン吸着層2を構成するシリコーン組成物は、上記の成分に加え、さらに、M単位(R
3SiO
1/2:Rはメチル基、フェニル基などの1価の有機基)とQ単位(SiO
4・1/2)からなるMQレジンを含有してもよい。MQレジンは非反応性、又は反応性のどちらでもよく、非反応性と反応性の両方を含有してもよい。
【0042】
ここでシリコーン吸着層2を構成する組成物の架橋反応に用いる架橋剤は公知のものでよい。架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。
【0043】
架橋反応に用いる白金系触媒は公知のものでよく、これには塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩などがあげられる。架橋反応したシリコーン層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0044】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。なかでも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。但し、無溶剤型であっても、所望の膜厚を得るために粘度調節のために、必要に応じてトルエン等の有機溶剤を添加することができる。
【0045】
前述のごとく、シリコーン吸着層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体への貼着時に被着体の表面の凹凸に追従して密着力を確保することが求められる。シリコーン吸着層の膜厚は、被着体に対するシリコーン吸着層の密着面方向の剪断力を確保するために少なくとも10μm以上、通常は15〜50μmが必要となる。10μm未満であると被着体に対する熱転写受像シートXの密着力が確保できず、特に長期貼りつけ時には、熱転写受像シートXが被着体から剥がれ易い。
【0046】
アンカー層2A塗工液、シリコーン吸着層2塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等公知の方法が適宜使用される。
【0047】
(セパレーターA1)
セパレーターA1は、シリコーン吸着層2の表面の汚れや異物付着を防いだり、熱転写受像シートXのハンドリングを向上させるための樹脂フィルム製のセパレーターである。セパレーターA1は、シリコーン吸着層2の表面に貼り合わされて使用される。セパレーターA1としては、ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン、ポリプロピレン等よりなる剥離性の高い樹脂フィルムよりなり、所望により、表面にシリコーン系材料等の剥離剤を塗工したものが使用される。
【0048】
(アンカー層4A)
本発明に係る熱転写受像シートXでは、シリコーン吸着層2を設けたTPU基材3の反対側の面に受像層4を設ける。TPU基材3は軟らかいため、TPU基材3が露出した状態で、熱転写受像シートXを使用すると、熱転写受像シートXの表面が傷つき易い。このため、受像層4は、ハードコート層であることが好ましい。また、受像層4は、TPU基材3上にアンカー層4Aを設け、アンカー層4A上に積層することが好ましい。アンカー層4Aを設ける目的は、薄い受像層4をムラなく塗工して、硬化時のカールの発生を防止するとともに、受像層4とTPU基材3との接着性を向上することである。
【0049】
アンカー層4Aは、ポリオールを主成分とすることが好ましく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、エポキシポリオール他が使用可能であるが、アンカー層4A上に溶剤系ハードコート層塗工液を塗工した場合のTPU基材3の白化防止の点では、ポリエステルポリオールがより好ましい。
【0050】
本発明において、アンカー層4Aは、ポリエステルポリオール100重量部に対して、架橋剤として、カルボジイミド化合物を0.1重量部以上100重量部以下配合されたものが好ましい。カルボジイミド化合物の配合量が0.1重量部を下回ると、アンカー層4Aの塗工液が十分に架橋しない。また、カルボジイミド化合物の配合量が100重量部を上回ると、受像層4Aが白化する。熱転写受像シートXでは、このようなアンカー層4Aを用いることで、受像層4のTPU基材3への良好な接着性を確保することができる。
【0051】
アンカー層4Aの主成分であるポリエステルポリオールは、多価カルボン酸と多価アルコールを縮重合したものである。多価カルボン酸としては、マロン酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸、フタル酸、ジメチルフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸などの芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。
【0052】
多価アルコールとしては、脂肪族グリコール、脂環グリコール、芳香族グリコール、脂肪族トリオールなどを挙げることができる。これらの組み合わせによる各種の公知のポリエステルポリオールを用いることができるが、数平均分子量として1000〜40000の範囲のものが好ましく、水酸基価としては1〜30mgKOH/gのものを用いることができる。数平均分子量が1000未満であると接着力が不十分であり、40000を越えると加工性、塗膜外観、溶解性が劣ることがある。
【0053】
カルボジイミド化合物としては任意のものが使用可能であるが、なかでも反応性、安定性の観点からビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドが好ましい。さらに、上記カルボジイミド化合物として、市販のカルボジイミド化合物は、合成する必要もなく好適に使用することができる。かかる市販のカルボジイミド化合物としては例えば日清紡ケミカル(株)より“カルボジライト”(登録商標)の商品名で販売されている各種グレードのものが使用できる。
【0054】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド当量(分子量/分子に含まれるカルボジイミド基数)が100〜1000のものである。
【0055】
アンカー層4Aの厚みは0.2μm以上5μm以下であることが好ましい、より好ましくは0.3μm以上2μm以下である。アンカー層4Aの厚みが0.2μm未満になると、受像層4とTPU基材3の接着性が不十分となる場合がある。一方、5μmを超えると、経済的に無駄である。
【0056】
(受像層4)
本発明の課題の1つである受像層の優れた耐傷性を満足するためには、受像層4は硬い層であることが好ましい。一方、本発明の他の課題の1つである熱転写受像シートXの被着体上への曲面追従性を確保するためには、受像層4は、曲面に追従する柔軟性を有するものでなければならない。このような、受像層4に要求される相反する性質を満足するためには、受像層4を薄いハードコート層とすることが好ましい。ハードコート層とすることで、受像層4表面は硬くすることができ、一方、薄くすることで、受像層4全体は柔軟性を有するものとすることができるからである。しかしながら、薄くすることで、ハードコート層の耐傷性は低下し易く、また、硬くても脆いハードコート層であれば、受像層4を曲面に追従させると、受像層4(ハードコート層)にひび割れや浮きが生じ易い。本発明の受像層4は曲面追従性を要求されるので、薄くても十分な耐傷性を有し、熱転写受像シートXを曲面に追従させるために伸長しても、ひび割れや浮きが入り難い性質を有するハードコート層が好ましい。このようなハードコート層としては、ウレタンアクリレートを主成分とするハードコート層塗工液を塗工後に熱又は光硬化させることにより得られるハードコート層が挙げられる。また、ウレタンアクリレートを主成分とするハードコート層を作製するための塗工液は、溶剤系の塗工液であることが好ましい。無溶剤系の塗工液は低粘度にすることが困難で、塗工ムラが発生しやすいため、本発明のように薄いハードコート層の塗工には適さず、また、塗工ムラが発生しやすいことにより、硬化時のカールも発生し易くなるからである。
【0057】
本発明において使用されるウレタンアクリレートは、1種または2種以上を併用したポリオール、ジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートを使用し、公知の方法で作られる。
【0058】
上記ポリオールとしては、例えば、スピログリコール、エトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールS、ポリテトラメチレンオキサイドジオール、ポリテトラメチレンオキサイドトリオール、ポリプロピレンオキサイドジオール、ポリプロピレンオキサイドトリオール等が挙げられる。
【0059】
上記ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2, 4−トリレンジイソシアネート、4, 4' −ジフェニルジイソシアネート、1, 5−ナフタレンジイソシアネート、3, 3' −ジメチル−4, 4−ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4, 4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0060】
上記ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2、2−ビス〔4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕エーテル、4, 4−ビス〔4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕シクロヘキサン、9, 9−ビス〔4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕フルオレン、9, 9−ビス〔4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕アントラキノン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシドールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0061】
本発明者らの鋭意努力の結果、熱転写受像シートの特定の受像層と、熱転写時に受像層と接する熱溶融型インクリボンの特定の最上層(転写層)を組み合わせることにより、受像層がハードコート層であっても、受像層の熱溶融型インクリボンによる優れた被印刷性能を確保できることを見出した。この特定の受像層とは、受像層の主成分であるウレタンアクリレートの一部を、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートした受像層である。また、この特定の熱溶融型インクリボンの最上層(転写層)とは、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及び変性ポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれる樹脂を含有する層である。この熱転写受像シートの特定の受像層と、この熱溶融型インクリボンの特定の最上層(転写層)を組み合わせることにより得られる受像層の熱溶融型インクリボンによる優れた被印刷性能は、単にカスレなどがない印字が得られるだけではない。この受像層と最上層(転写層)を組み合わせることにより、受像層上に印字された印刷画像は優れた耐擦過性を有するとともに、熱転写受像シートに引っ張り荷重を加えて伸長させても、この印刷画像は、浮きやひび割れが発生し難い。このように、本発明者らは、本発明の熱溶融型インクリボンと熱転写受像シートを組み合わせることによって、受像層上に印字された印刷画像にも、優れた曲面追従性を得ることができることを見出した。
【0062】
したがって、本発明の熱転写受像シートXの受像層4は、ウレタンアクリレートを主成分とし、その一部がポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートである組成物を硬化したハードコート層である。
【0063】
本発明の受像層4では、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートを含有することにより、粒子を含有しなくても、特定の熱溶融型インクリボンよる受像層の被印刷性を向上することができるので、熱転写受像シートXの高い透明性を両立することができ、特に透明性を損なう材料を含有しない限り、熱転写受像シートXのヘイズ値は通常2%以下であり、最大でも3%を超えることはない。
【0064】
ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートは、受像層に用いられる主成分と同種のもの(ウレタンアクリレート)であるので、受像層内での重合反応による結合を強固にでき、ハードコ−トの効果をより高めることができるという効果も得られる。
【0065】
受像層4に含有されるポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートの含有量は、受像層に対して0.1〜8重量%が好ましく、より好ましくは0.2〜8重量%、さらに好ましくは0.2〜1重量%である。0.1重量%未満では十分な熱溶融型インクリボンによる受像層4の被印刷性向上効果が得られず、8重量%を超えると受像層に十分な硬度が得られなくなるばかりでなく透明性が低下する場合があり好ましくない。
【0066】
受像層4にはN-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。フェノキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−エチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらN-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種を含有することで、受像層に用いられる主成分の化合物である(メタ)アクリロイル基を有する化合物とポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートとの相溶性が極めて良好となり、高い透明性、硬度を両立する事が可能となる。
【0067】
また、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種の配合量の合計は、ハードコート層に対して5〜25重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。5重量%未満では(メタ)アクリロイル基を有する化合物とポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートとの相溶性が劣るため高い透明性を得ることが出来ず、25重量%を超えると受像層4に十分な硬度が得られなくなる場合があり好ましくない。
【0068】
本発明において使用されるウレタンアクリレートの電離放射線重合反応に用いられる光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、ウレタンアクリレート100重量部に対して、通常0.2〜15重量部の範囲で選ばれる
【0069】
受像層4には耐傷性と熱溶融型インクリボンによる受像層4の被印刷性を大きく損なわない範囲で熱可塑性ポリマー、消泡剤、塗工性改良剤、増粘剤、界面活性剤、有機系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料、帯電防止剤などを含有していてもよい。受像層4の厚さは0.8μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。受像層4の厚さが0.8μm未満になると受像層4表面の耐傷性が低下する。また、受像層4の厚さが2.0μmを超えると熱転写受像シートXを被着体へ貼り付ける際の曲面追従性が低下するほか、2.0μmを超えても、耐傷性が向上することはないので、無駄である。
【0070】
熱転写受像シートXを被着体に貼り付ける際には、セパレーターA1をシリコーン吸着層2から剥がして、シリコーン吸着層2を被着体の表面に貼り付ける。
【0071】
(熱溶融型インクリボンY)
本発明の熱転写受像シートXに対しては、熱転写リボンの中でも、熱溶融型インクリボンを好適に用いることができる。本発明で用いる熱溶融型インクリボンYは、少なくとも、熱転写時に熱転写受像シートXの受像層4と接する最上層となるように、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及び変性ポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれる樹脂を含有する転写層5が設けられたものである。ウレタンアクリレートを主剤として、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートを含有した組成物を硬化してなる熱転写受像シートXの受像層4に、受像層4と接する熱溶融型インクリボンYの最上層に設けられた、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及び変性ポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれる樹脂を含有する転写層5を組み合わせることにより、前記のような著しい効果が得られる。すなわち、これらを組み合わせることにより、受像層4の優れた耐傷性、受像層4の熱溶融型インクリボンYによる優れた被印刷性能、及び熱溶融型インクリボンYで印字された印刷画像の優れた耐擦過性を合わせ持つ熱転写受像シートと熱溶融型インクリボンのセットを提供することできる。
【0072】
(転写層5)
転写層5は、着色剤を有しても、有しなくてもよいが、着色剤を有しない場合には、転写層5と基材7の間に、着色層を設けることができる。ここでは、本発明の実施形態の一つである熱溶融型インクリボンYとして、転写層5が着色剤を有する着色転写層である実施形態について、説明する。
【0073】
本発明における転写層5としては着色剤と、熱可塑性樹脂を必須成分とするベヒクルとからなる点では、従来の(着色)転写層と同様である。
【0074】
ベヒクルとしては、たとえば熱可塑性樹脂を含有し、必要に応じてワックス状物質、分散剤、体質顔料などを配合したものがあげられる。本発明の転写層5では、熱溶融型インクリボンYによる熱転写受像シートXの受像層4への優れた印刷性を実現するために、転写層5の固形分中の熱可塑性樹脂の含有量は、35重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。また、熱溶融型インクリボンYによる熱転写受像シートXの受像層4への印刷性転写性をよくするために、体質顔料を配合してもよい。
【0075】
転写層5の軟化点は通常50〜170 ℃程度が好ましい。
【0076】
前記のとおり、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及び変性ポリプロピレン樹脂からなる群から選ばれる樹脂であり、通常はこの1種であるが、2種以上を含有することもできる。
【0077】
前記ワックス状物質としては、たとえば木ろう、蜜ろう、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシンワックスなどの天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;酸化ワックス、エステルワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合ワックスなどの合成ワックス;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ドコサノールなどの高級脂肪族アルコール;高級脂肪酸モノグリセリド、ショ糖の脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステルなどのエステル類;ステアリン酸アミド、オレイルアミドなどのアミド類およびビスアミド類などの1種または2種以上が使用できる。
【0078】
前記着色剤としては、従来からこの種の熱溶融性インクの着色剤として使用されているものがいずれも使用でき、カーボンブラックをはじめとして無機、有機の各種顔料や染料などが適宜使用される。インク層における着色剤の含有量は10〜50%が好ましい。
【0079】
転写層5の塗布量は0.5 〜6g/m
2が好ましい。
【0080】
(離型層6)
熱溶融型インクリボンYでは、プリンターでの印字時に、転写層5が確実に基材7から離型して、熱転写受像シートXの受像層4に転写されるよう、転写層5と基材7の間に離型層6を設けることが好ましい。本発明における離型層6としては、ワックス状物質を主成分とする通常の熱溶融性離型層がとくに制限なく使用できる。ワックス状物質としては、前記転写層用に例示したものが使用できる。
【0081】
離型層6に用いるワックス状物質は、前記物質の中で、軟化点60〜90℃、針入度2以下、粘度5〜100cps(90℃)のものが好ましく、このようなワックス状物質としては、たとえばキャンデリラワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスなどがあげられる。
【0082】
離型層6には、前記ワックス状物質以外に、必要に応じて充填剤、オイル類、脂肪酸類などを配合してもよい。
【0083】
離型層6はホットメルト塗布法によって形成してもよく、あるいはワックス状物質の溶剤溶液、分散液、エマルジョンなどからなる塗工液を基材上に塗布し、乾燥することによって形成してもよい。
【0084】
離型層6の塗布量は 0.1〜4g/m
2 の範囲が好ましい。塗布量が前記範囲未満では剥離効果が乏しく、前記範囲より多いと熱拡散が大きくなるので好ましくない。
【0085】
(基材7)
熱溶融型インクリボンYの基材7としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、その他この種のインクリボンの基材用フィルムとして一般に使用されている各種のプラスチックフィルムが使用できる。基材の厚さは熱伝導を良好にする点から1〜10μmが好ましく、より好ましくは2〜7μmである。
【0086】
(耐熱滑性層8)
基材7として前記プラスチックフィルムを使用するばあい、その背面(加熱ヘッドに摺接する側の面)にシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ニトロセルロース樹脂、あるいはこれらによって変性された、たとえばシリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂など各種の耐熱性樹脂、あるいはこれら耐熱性樹脂に滑剤を混合したものなどからなる、従来から知られている耐熱滑性層8を設けることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各実施例、比較例中の「部」は特に断ることのない限り重量部を示したものである。
【0088】
TPU基材3として、日本マタイ株式会社製エスマー(登録商標)URS PX98の厚み100μmの基材を準備した。
【0089】
(アンカー層4A)
表1に示す材料を表1に示す量で混合、撹拌し、アンカ−層4A塗工液を作製した。上記TPU基材3へ、乾燥後厚みが1.0μmとなるように、表1のアンカー層4A塗工液を、塗工、乾燥して、TPU基材3上にアンカー層4Aを積層した。両面にフィルムが貼り付けられたTPU基材3については、アンカー層4Aを塗工する側のフィルムのみを剥離した状態で、塗工機へ通紙する。TPU基材単体では強度が弱く、塗工機での走行時に伸びるおそれがあるためである。
【0090】
【表1】
【0091】
(ポリエステルポリオールAの水分散液)
アンカー層4A塗工液に用いるポリエステルポリオールAの水分散液を、以下に示す方法で作製した。
【0092】
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル854部、5−ソジウムスルホイソフタル酸355部、エチレングリコール186部、ジエチレングリコール742部及び、反応触媒として、酢酸亜鉛1部を仕込み、130℃から170℃まで2時間かけて昇温し、エステル交換反応した後、イソフタル酸730部、三酸化アンチモン1部を添加し、170℃から200℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度5mmHg以下で1時間重縮合反応を行ない、ポリエステルポリオールAを得た。
【0093】
得られたポリエステルポリオールA25部をイソプロパノール15部、イオン交換水60部の混合溶液に仕込み、70〜80℃で3時間撹拌を行い、固形分濃度25%のポリエステルポリオールAの水分散液を得た。
【0094】
(受像層4)
受像層4形成の準備として、まず、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートを合成する。
【0095】
(ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートの合成)
5リットルの4つ口フラスコにポリブタジエングリコ−ル(日本曹達製、商品名NISSO PB G−3000、数平均分子量2600〜3200)を1943重量部、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を0.2重量部、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノ−ルを0.7重量部入れ、50℃で攪拌しつつ、イソホロンジイソシアネ−ト(住友バイエル社製、商品名デスモジュ−ルI)289重量部を4時間にわたって滴下した。
【0096】
滴下終了後50℃で攪拌しながら、3時間反応を続行したのち、さらに、50℃で攪拌しつつ、ペンタエリスリトールトリアクリレート388重量部を2時間にわたって滴下し、滴下終了後70℃で攪拌しながら、5時間反応を続行し、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートAを得た。
【0097】
[受像層の形成]
上記で合成したポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートA、ジペンタエリスリトールヘキサアクレートとウレタンアクリレートオリゴマ−の混合物、アクリロイルモルホリン、フッソ系レベリング剤、光重合開始剤、及び、溶媒として酢酸ブチルを用いて表2の各受像層塗工液を調整し、TPU基材3のアンカー層4A上に表2の各受像層塗工液を塗工乾燥した後、それぞれ積算光量500mj/cm
2の紫外線を照射し、塗膜を硬化させて表2中に示す層厚の層を形成して、実施例1〜9と比較例1〜5の受像層(ハードコート層)を作成した。
【0098】
【表2】
表1中の各成分の材料名
※1:アクリロイルモルホリン
※2:A−9550(ジペンタエリスリトールヘキサアクレート、新中村化学製)とUA−53(ウレタンアクリレートオリゴマ−、新中村化学製)の1:1混合物
※3:ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トA
※4:フッソ系レベリング剤
※5:光重合開始剤イルガキュアIC184−BA50(光重合開始剤、チバスペシャリティケミカル製)
※6:酢酸ブチル(溶媒)
【0099】
(アンカー層2A)
(ポリエステル系樹脂)
多価カルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)36.0モル部、アジピン酸(ADA)4.0モル部、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)36.0モル部、ネオペンチルグリコ−ル(NPG)11.5モル部、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加体6.0モル部を原料成分として反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、圧力0.3MPa、温度260℃で、3.5時間エステル化反応を行った。得られたエステル化物に、三酸化アンチモンを2.5×10
−4モル/多価カルボン酸成分1モル添加し、0.5hPaに減圧し、280℃で3時間重縮合反応させポリエステル樹脂を得た。次いで、解重合剤として、無水トリメリット酸(TMA)5.5モル部、イソフタル酸(IPA)1.0モル部を添加し、常圧下、250℃で2時間解重合を行い、テレフタル酸(TPA)/アジピン酸(ADA)/無水トリメリット酸(TMA)/イソフタル酸(IPA)/エチレングリコール(EG)/ネオペンチルグリコ−ル(NPG)/ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加体=32.0/4/5.5/1.0/40.0/11.5/6.0(モル比)のポリエステル樹脂を得た。上記のポリエステル樹脂をその酸価と当量のアンモニア水及びブチルセロソルブ5%を含む水に溶解して、ポリエステル樹脂20%濃度の水溶液を調製し、回転速度7,000rpmで撹拌した。次いで、撹拌機のジャケットに熱水を通して加熱し、系内温度を73〜75℃に保って、60分間撹拌した。その後、ジャケット内に冷水を流し、撹拌翼の回転速度を5,000rpmに下げて撹拌しつつ、室温(約25℃)まで冷却し、ポリエステル樹脂水性液(固形分20重量%)を得た。該ポリエステル樹脂の酸価は91mgKOH/gであった。なお、樹脂の酸価の測定は、酸価ポリマーの水性液を1/10規定のKOH水溶液により、指示薬としてとしてフェノールフタレンを用いて滴定し、ポリマー1gを中和するのに要したKOHのmg数を求めた。
【0100】
水90重量部、前記製造例のポリエステル樹脂溶液(固形分20重量%)50重量部を加え、ハイスピードミキサーにより充分に攪拌混合した後、攪拌しながらメタノール50重量部を徐々に添加しアンカー層2A塗工液とした。前記の受像層4を塗工した各実施例、比較例のTPU基材から残りのPETフィルムを剥離し、PETフィルムを剥離したTPU基材3の表面上に、アンカー層2A塗工液を塗工、乾燥して、厚み0.4μmのアンカー層2Aを形成した。
【0101】
(シリコーン吸着層2)
前記のアンカー層2Aの上に、23℃50%RHの環境下で、表3に示すシリコーン吸着層塗工液を塗工厚み20μm(乾燥後)で塗工後、オーブンにて150℃、100秒で架橋させて、シリコーン吸着層2を得た。
【0102】
【表3】
【0103】
(セパレーターA1)
前記のシリコーン吸着層に対して、表面を保護するためにPETフィルム(東レ製、ルミラー(登録商標)50μ厚)をセパレーターA1として貼り合わせた。
【0104】
(熱溶融型インクリボンY)
つぎに、実施例1〜9および比較例1〜5に使用する熱溶融型インクリボンYを作製した。裏面に耐熱滑性層8として、厚さ0.1 μmのシリコーン変性アクリル樹脂層を形成した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである基材7の表面上に、エステルワックスを塗布して塗布量 1.0g/m
2 の離型層6を形成した。ついで前記離型層6上に、下記表4に示す処方の転写層塗工液を塗工、乾燥して塗工量 2.0g/m
2の転写層5を形成した。
【0105】
【表4】
※1:エチレン−酢酸ビニル共重合体
※2:エポキシ樹脂
※3:変性PP樹脂
※4:エステルワックス
※5:エステルワックスとテルペン樹脂の1:1混合物
※6:石油樹脂
※7:カーボンブラック
※8:トルエン(溶媒)
【0106】
各実施例、比較例の評価結果を表5に、各評価方法を下記に示す。
【0107】
(評価方法)
(印字評価)
各実施例、比較例の熱転写受像シートXと熱溶融型インクリボンYとを組み合わせ、東芝TEC製の熱転写プリンターB−EX4T1を使用して、印字評価を行った。該プリンターの印字エネルギー設定+10、印字速度127mm/secの条件にて、すべて同じ所定の印字パターンで印字を行い、カスレが発生の有無を確認し、下記基準にて結果を判定した。なお、印字評価判定が×となったものについては、以下の評価を実施しなかった。
判定基準
◎: 印字に欠けや、ベタ部分で転写できない部分が無い。
○: 印字に微小な欠けや、転写できない部分があるが実用上支障なし。
×: 印字に欠けや、ベタ部分で転写できない部分がある。
【0108】
(曲面追従性評価)
1.50mm×50mmの大きさにカットした各実施例、比較例の熱転写受像シートXを準備する。
2.項目1で準備した熱転写受像シートXのセパレーターA1を剥離した後、シリコーン吸着層2を画面表示面の端部に曲面を持つスマートフォンに貼着する。シリコーン吸着層2とスマートフォンの間には気泡が入り込まないように、熱転写受像シートXをスマートフォンに貼着する。
3.スマートフォンの曲面形状にフィットするように加工した発泡スチロール製の治具を準備し、この治具を使用して10Nの力で60秒間、貼着した熱転写受像シートXをスマートフォンに押し付ける。
4.治具の押し付けを解除した後、60分後にスマートフォンの曲面部分での熱転写受像シートXの浮き上がりの有無を確認する。
評価基準
○:60分後でも浮き上がり無し。
△:60分後には曲面部分の一部に浮き上がりがある。
×:60分後には曲面部分の全てが浮き上がっている。
【0109】
(耐擦傷性評価)
印字評価にて受像層表面に印字した各実施例、比較例の熱転写受像シートXの受像層(ハードコート)表面を、圧力1N/cm
2の荷重をかけたスチールウール(日本スチールウール(株)製ボンスター#0000番)で擦過後の受像層の表面状態を下記評価基準にて目視判定して評価した。
(評価基準)
◎:擦傷が付かない。
○:印字に擦傷が僅かに生じるが目立たない。受像層には擦傷がない。
×:印字および受像層に擦傷が生じ、擦傷が目視で容易に確認できる。
【0110】
(ひび割れ評価)
印字評価にて受像層表面に印字した各実施例、比較例の熱転写受像シートXを10mm幅×150mm長の大きさに切り出し、サンプル測定部位が10mm幅×100mm長(伸長方向)になるようにサンプルをセットし、25℃、50%RHの環境下で引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用いて引張速度100mm/分で120%伸長させ、印字および受像層のひび割れの有無を目視評価する。
(評価基準)
◎:印字および受像層にひび割れは生じない。
○:印字に僅かにひび割れが生じるが目立たない。受像層にひび割れは生じない。
×:印字および受像層にひび割れが生じ、目視で容易にひび割れが確認できる。
【0111】
(浮き評価)
印字評価にて受像層表面に印字した各実施例、比較例の熱転写受像シートXを10mm幅×150mm長の大きさに切り出し、サンプル測定部位が10mm幅×100mm長(伸長方向)になるようにサンプルをセットし、25℃、50%RHの環境下で引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用いて引張速度100mm/分で120%伸長させ、印字および受像層の浮きの有無を目視評価する。
(評価基準)
○:印字および受像層に浮きは生じない。
×:印字および/又は、受像層に浮きが生じる。
【0112】
【表5】