(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多孔質アノード本体および誘電体層を含むアノードであって、前記アノード本体が、200,000μF・V/g以上の比電荷および100ppm以下のリン含量を有する、プレスされ焼結されたバルブ金属粉末から形成された、アノードと、
前記アノードの上に重なる固体電解質と
を含む、固体電解キャパシタであって、
前記キャパシタが、120Hzの周波数で決定された、65%以下の散逸率を示し、
前記粉末が、5〜250nmのメジアン径を有する1次粒子を含み、
前記1次粒子が、4以下のアスペクト比を有し、
120Hzの周波数で決定された75%以上の湿乾キャパシタンスパーセンテージを示す、
前記固体電解キャパシタ。
バルブ金属粉末をアノード本体にプレスするステップであって、前記粉末が200,000μF・V/g以上の比電荷および100ppm以下のリン含量を有するステップと、
前記アノード本体を焼結するステップと、
前記焼結されたアノード本体の上に誘電体層を形成するステップと、
前記誘電体層上に固体電解質を付着させるステップと
を含む、固体電解キャパシタを形成する方法であって、
前記キャパシタが、120Hzの周波数で決定された、65%以下の散逸率を示し、
前記粉末が、5〜250nmのメジアン径を有する1次粒子を含み、
前記1次粒子が、4以下のアスペクト比を有し、
前記キャパシタが、120Hzの周波数で決定された75%以上の湿乾キャパシタンスパーセンテージを示す、
前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書および図面における参照符号の反復使用は、本発明と同じまたは類似の特徴または要素を表すものとする。
本考察は、単なる例示的な実施形態を記述するものであり、本発明のより広範な態様を限定するものではなく、より広範なその態様は例示的な構成に具体化されることが、当業者に理解されよう。
概して本発明は、焼結多孔質本体上に形成された誘電体を含有するアノードと、アノードの上に重なる固体電解質とを含有する固体電解キャパシタを対象とする。焼結多孔質本体は、超高比電荷を有するバルブ金属粉末から形成される。粉末の比電荷は、例えば、グラム当たり約200,000マイクロファラド・ボルト(「μF・V/g」)以上、いくつかの実施形態では約250,000〜約800,000μF・V/g、およびいくつかの実施形態では約280,000〜約600,000μF・V/gであってもよい。当技術分野で公知のように、比電荷は、用いられる陽極酸化電圧をキャパシタンスに乗算し、次いでこの積を陽極酸化された電極本体の質量で除算することによって決定され得る。超高比電荷を有する粉末から形成されるにも関わらず、本発明者らは、優れた電気的性質を有するキャパシタを、アノードの選択的制御およびそれが構成される手法を通してさらに形成できることを発見した。
【0005】
キャパシタは、例えば、その湿式キャパシタンスが高いパーセンテージを示し、雰囲気湿度の存在下で小さなキャパシタンスの損失および/または変動しか持たないようにすることができる。この性能特性は、方程式:
湿乾キャパシタンス=(乾式キャパシタンス/湿式キャパシタンス)×100
によって決定される「湿乾キャパシタンスパーセンテージ」により定量される。
【0006】
本発明のキャパシタは、約60%以上、いくつかの実施形態では約70%以上、いくつかの実施形態では約75%以上、いくつかの実施形態では約80%〜100%の湿乾キャパシタンスパーセンテージを示してもよい。乾式キャパシタンスは、120Hzの周波数で測定したときに、平方センチメートル当たり約1ミリファラド(「mF/cm
2」)以上、いくつかの実施形態では約2mF/cm
2以上、いくつかの実施形態では約5〜約50mF/cm
2、いくつかの実施形態では約8〜約20mF/cm
2であってもよい。キャパシタは、100kHzの動作周波数で測定したときに比較的低い等価直列抵抗(「ESR」)、例えば約3.0Ω以下、いくつかの実施形態では約0.01〜約2.5Ω、いくつかの実施形態では約0.05〜約2.0Ωを示してもよい。さらに、ある伝導体から絶縁体を経て隣接する伝導体に流れる電流を一般に指す漏れ電流は、比較的低いレベルで維持することができる。例えば漏れ電流は、60秒当たり6.3Vの電圧で決定したときに、約150マイクロアンペア(「μA」)以下、いくつかの実施形態では約100μA以下、いくつかの実施形態では約75μA以下、いくつかの実施形態では約1〜約50μAであってもよい。キャパシタの散逸率も、比較的低いレベルで維持され得ることも考えられる。散逸率は、一般に、キャパシタに生ずる損失を指し、通常は、理想的なキャパシタ性能のパーセンテージとして表される。例えば、本発明のキャパシタの散逸率は、120Hzの周波数で決定されたときに典型的には約75%以下、いくつかの実施形態では約65%以下、いくつかの実施形態では約1%〜約60%である。
【0007】
次に本発明の様々な実施形態について、より詳細に記述する。
I.
アノード本体
記述されるように、多孔質アノード本体は、バルブ金属(即ち、酸化可能な金属)またはバルブ金属をベースにした化合物、例えばタンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、これらの合金、これらの酸化物、およびこれらの窒化物などを含有する粉末から形成される。粉末は、典型的には、タンタル塩(例えば、フルオタンタル酸カリウム(K
2TaF
7)、フルオタンタル酸ナトリウム(Na
2TaF
7)、五塩化タンタル(TaCl
5)など)を還元剤と反応させる還元プロセスから形成される。還元剤は、液体、気体(例えば、水素)、または固体、例えば金属(例えば、ナトリウム)、金属合金、または金属塩などの形で提供されてもよい。一実施形態では、例えば、タンタル塩(例えば、TaCl
5)を約900℃〜約2000℃、いくつかの実施形態では約1,000℃〜約1,800℃、およびいくつかの実施形態では約1,100℃〜約1,600℃の温度で加熱して、気状還元剤(例えば、水素)の存在下で還元することができる蒸気を形成してもよい。蒸気は約0.1〜約5秒、いくつかの実施形態では約0.5〜約3秒の期間にわたって還元反応部位内で保持されるように、約0.05〜約5.0g/cm
2・分、いくつかの実施形態では約0.1〜約3.0g/cm
2・分の速度で反応部位を通過してもよい。適切な反応器は、例えば、縦型管状炉、ロータリーキルン、流動床炉、多段焼却炉、自己伝播高温合成反応炉などを含んでいてもよい。反応器は、反応容器内の物質が周囲温度に冷却されるまで、不活性ガス(例えばアルゴン)中に維持されてもよい。そのような還元反応のさらなる詳細は、
MaeshimaらのWO 2014/199480に記述され得る。還元後、生成物を冷却し、破砕し、洗浄して粉末を形成してもよい。
【0008】
リンドーパントは、典型的には粉末の形成中、多くの従来のアノードでしばしば用いられるようには用いられない。したがって、粉末(ならびにアノード)は、比較的リン様の含有物を有していてもよい。例えば、粉末は、リンを約150ppm以下、いくつかの実施形態ではリンを約100ppm以下、いくつかの実施形態ではリンを約50ppm以下、およびいくつかの実施形態ではリンを約10ppm以下有していてもよい。そのような低量のリンドーパントと共に形成された粉末は、焼結中に、より高い収縮度を示すことができることが発見された。従来の考え方とは対照的に、より高い収縮は、アノードにおける細孔の形成を増大させるのを助けることができ、これは、固体電解質をアノード本体の構造内に含浸させ得る程度を高める。
【0009】
得られた粉末は、1次粒子を含有する易流動性の微粉であってもよい。上述のように、粉末の1次粒子は、粒子を70秒間の超音波振動に供した後であってもよいがBECKMAN COULTER Corporation製レーザ粒度分布分析器(例えば、LS−230)を使用して決定されるように、一般に約5〜約250nm、いくつかの実施形態では約10〜約200nm、およびいくつかの実施形態では約20〜約150nmのメジアン径(D50)を有する。1次粒子は、典型的には3次元顆粒形状(例えば、結節状または角状)を有する。そのような粒子は典型的には、粒子の平均直径または幅を平均厚さで割った値(「D/T」)である、比較的低い「アスペクト比」を有する。例えば、粒子のアスペクト比は約4以下、いくつかの実施形態では約3以下、およびいくつかの実施形態では約1〜約2であってもよい。1次粒子に加え、粉末は、1次粒子を集合(または凝集)させることによって形成された2次粒子などのその他のタイプの粒子を含有していてもよい。そのような2次粒子は約1〜約500μm、いくつかの実施形態では約10〜約250μmのメジアン径(D50)を有していてもよい。
【0010】
典型的には、粒子の凝集は顕著な程度の加熱を必要とせずに生ずる。とりわけ、そのような「冷却」凝集は細孔形成をさらに高めることができ、それが固体電解質をアノード本体に含浸させ得る程度をさらになお高める。より詳細には、凝集は約0℃〜約40℃、いくつかの実施形態では約5℃〜約35℃、およびいくつかの実施形態では約15℃〜約30℃の温度で生じてもよい。顕著な程度の加熱を用いるのではなく、粒子は結合剤の助けを借りて凝集されてもよい。適切な結合剤は、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースポリマー;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えばDow Chemical Co.製のCarbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、およびポリアクリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、およびフルオロオレフィンコポリマーなどのフルオロポリマー;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)、および低級アルキルアクリレートおよびメタクリレートのコポリマーなどのアクリルポリマー;ステアリンおよびその他のせっけん脂肪酸、植物ろう、マイクロワックス(精製パラフィン)などの、脂肪酸およびワックスを含んでいてもよい。
【0011】
得られた粉末を、任意の従来の粉末プレスデバイスを使用し、締め固めてペレットを形成してもよい。例えば、ダイおよび1つまたは複数のパンチを含有する単一ステーション締固めプレスであるプレスモールドを使用してもよい。あるいは、ダイおよび単一下方パンチのみ使用するアンビル型締固めプレスモールドを使用してもよい。単一ステーション締固めプレスモールドは、単動式、複動式、フローティングダイ、可動プラテン、対向ラム、ネジ、衝撃、ホットプレス、コイニングまたはサイジングなどの様々な能力を有するカム、トグル/ナックルおよび偏心/クランクプレスなど、いくつかの基本的なタイプとして利用可能である。粉末は、アノードリードワイヤの周りで締め固めてもよい。ワイヤは、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタンなどの任意の導電性材料、ならびにこれらの導電性酸化物および/または窒化物から形成されてもよい。
【0012】
任意の結合剤は、ある温度(例えば約150℃〜約500℃)で数分間、真空中でペレットを熱でプレスした後に除去されてもよい。あるいは、結合剤は
Bishopらの米国特許第6,197,252号に記載されるように、ペレットを水溶液と接触させることによって除去してもよい。その後、ペレットを焼結して多孔質の一体化した塊を形成する。ペレットは、典型的には約5分〜約100分、いくつかの実施形態では約8分〜約15分の時間にわたって、約700℃〜1600℃、一部の実施形態では約800℃〜約1500℃、一部の実施形態では約900℃〜約1200℃の温度で焼結される。これは1つまたは複数のステップで行ってもよい。必要に応じて、焼結は、アノードへの酸素原子の移送を制限する雰囲気中で行ってもよい。例えば、焼結は、真空、不活性ガス、水素などの還元雰囲気中で行ってもよい。還元雰囲気は、約10Torr〜約2000Torr、いくつかの実施形態では約100Torr〜約1000Torr、およびいくつかの実施形態では約100Torr〜約930Torrの圧力であってもよい。水素およびその他の気体(例えばアルゴンまたは窒素)の混合物を用いてもよい。
【0013】
焼結により、ペレットは、粒子同士の冶金学的結合の成長に起因して収縮する。収縮は一般にペレットの密度を増大させるので、所望の目標密度をさらに実現するのに、より低いプレス密度(「圧粉」)を用いてもよい。例えば、焼結後のペレットの目標密度は、典型的には約5〜約8グラム毎立方センチメートルである。しかし収縮現象の結果、ペレットはそのような高い密度までプレスされる必要がなく、代わりに約6.0グラム毎立方センチメートル未満、いくつかの実施形態では約4.5〜約5.5グラム毎立方センチメートルの密度にプレスされてもよい。とりわけ、より低い圧粉密度を用いる能力は著しいコスト節約をもたらし、かつ加工効率を増大させることができる。
【0014】
アノードリードは、そこから縦方向に延びるアノード本体に接続されてもよい。アノードリードは、ワイヤ、シートなどの形をとってもよく、タンタル、ニオブ、酸化ニオブなどのバルブ金属化合物から形成されてもよい。リードの接続は、リードを本体に溶接し、または形成中に(例えば、締固めおよび/または焼結の前に)リードをアノード本体内に埋め込むなど、公知の技法を使用して実現されてもよい。
【0015】
B.
誘電体層
上述のように、アノードは、焼結されたアノードペレットを陽極により酸化する(「陽極酸化する」)ことによって形成された誘電体層も含有する。例えば、タンタル(Ta)アノードは五酸化タンタル(Ta
2O
5)に陽極酸化されてもよい。典型的には、陽極酸化は、ペレットを電解質中に浸漬することなどによって、電解質をペレットに最初に付着させることにより行われる。その後、電流を電解質に流して、上述の手法で誘電体層を形成する。陽極酸化が生ずる温度は、典型的には約10℃〜約200℃であり、いくつかの実施形態では約20℃〜約150℃であり、いくつかの実施形態では約25℃から約90℃である。陽極酸化中に用いられる形成電圧は、一般に約2V以上であり、いくつかの実施形態では約6V以上であり、いくつかの実施形態では約8〜約15Vである。陽極酸化プロセスは、1つまたは多数の段階で生じてもよい。望む場合には、誘電体層が陽極酸化プロセス中にアニールされてもよい。アニーリングが生ずる温度は、典型的には約220℃〜約350℃であり、いくつかの実施形態では約250℃〜約320℃であり、いくつかの実施形態では約260℃〜約300℃である。陽極酸化中に用いられる電解質は、一般に液体、例えば溶液(例えば、水性または非水性)、分散体、融解物などの形をとる。電解質は導電性であり、25℃の温度で決定された約1ミリジーメンス毎センチメートル(「mS/cm」)以上、いくつかの実施形態では約10mS/cm以上、およびいくつかの実施形態では約20mS/cm〜約100mS/cmの導電率を有していてもよい。電解質の導電率を高めるために、溶媒中で解離してイオンを形成することが可能なイオン性化合物を用いてもよい。本発明のある実施形態では、イオン性化合物は、リン酸、ポリリン酸など、リンをベースにした酸である。例えば、そのようなリンをベースにした酸(例えば、リン酸)は、電解質の約0.01質量%〜約5質量%、いくつかの実施形態では約0.05質量%〜約0.8質量%、およびいくつかの実施形態では約0.1質量%〜約0.5質量%を構成してもよい。
【0016】
溶媒、例えば水(例えば、脱イオン水);エーテル(例えば、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、およびブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、および酢酸メトキシプロピル);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド、およびN−アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、およびベンゾニトリル);スルホキシド、またはスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびスルホラン)なども、典型的に電解質に用いられる。溶媒は、電解質の約50質量%〜約99.9質量%、いくつかの実施形態では約75質量%〜約99質量%、およびいくつかの実施形態では約80質量%〜約95質量%を構成してもよい。必ずしも必要ではないが、水性溶媒(例えば、水)の使用は、酸化物の形成を容易にするのにしばしば望まれる。実際に、水は、電解質中に使用される溶媒の約1質量%以上、いくつかの実施形態では約10質量%以上、いくつかの実施形態では約50質量%以上、いくつかの実施形態では約70質量%以上、およびいくつかの実施形態では約90質量%〜100質量%を構成してもよい。
【0017】
C.
固体電解質
上述のように、固体電解質は、カソードとして一般に機能する誘電体の上に重なる。いくつかの実施形態では、固体電解質は二酸化マンガンを含んでいてもよい。固体電解質が二酸化マンガンを含む場合、二酸化マンガン固体電解質は、例えば、硝酸マンガン(Mn(NO
3)
2)の熱分解によって形成されてもよい。そのような技法は、例えば
Sturmerらの米国特許第4,945,452号に記載されている。
【0018】
その他の実施形態では、固体電解質は、典型的には酸化または還元後にπ共役されかつ少なくとも約1μS/cmの導電率を有する伝導性ポリマーを含有する。そのようなπ共役伝導性ポリマーの例には、例えば、ポリ複素環(例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、およびポリフェノレートなどが含まれる。一実施形態では、例えば、ポリマーは、下記の一般構造を有するものなどの置換ポリチオフェンである。
【0019】
【化1】
(式中、
Tは、OまたはSであり;
Dは、置換されていてもよいC
1−C
5アルキレンラジカル(例えば、メチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレン、n−ペンチレンなど)であり;
R
7は、直鎖状または分枝状の、置換されていてもよいC
1−C
18アルキルラジカル(例えば、メチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−、sec−、またはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルなど);置換されていてもよいC
5−C
12シクロアルキルラジカル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなど);置換されていてもよいC
6−C
14アリールラジカル(例えば、フェニル、ナフチルなど);置換されていてもよいC
7−C
18アラルキルラジカル(例えば、ベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2−6、3−4−、3,5−キシリル、メシチルなど);置換されていてもよいC
1−C
4ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルであり;
qは、0〜8の整数であり、いくつかの実施形態では0〜2、いくつかの実施形態では0であり;
nは、2〜5,000であり、いくつかの実施形態では4〜2000であり、いくつかの実施形態では5〜1,000である)。ラジカル「D」または「R
7」に関する置換基の例には、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシラン、およびアルコキシシラン基、およびカルボキシルアミド基などが含まれる。
【0020】
特に適切なチオフェンポリマーは、「D」が置換されていてもよいC
2−C
3アルキレンラジカルのものである。例えば、ポリマーは、置換されていてもよいポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であって、下記の一般構造を有するものでよい。
【化2】
【0021】
上述のような伝導性ポリマーを形成するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、
Merkerらの米国特許第6,987,663号は、モノマー前駆体から置換ポリチオフェンを形成するための様々な技法について記述する。モノマー前駆体は、例えば下記の構造を有する。
【0022】
【化3】
(式中、
T、D、R
7、およびqは上記にて定義される)。特に適切なチオフェンモノマーは、「D」が、置換されていてもよいC
2−C
3アルキレンラジカルのものである。例えば、置換されていてもよい3,4−アルキレンジオキシチオフェンは、一般構造を有するものを用いてもよい。
【0023】
【化4】
(式中、R
7およびqは、上記にて定義される)。ある特定の実施形態において、「q」は0である。3,4−エチレンジオキシチオフェン(ethylenedioxthiophene)の1つの商用として適切な例は、Clevios(商標)Mという名称でHeraeus Cleviosから入手可能である。その他の適切なモノマーは、
Blohmらの米国特許第5,111,327号および
Groenendaalらの第6,635,729号にも記載されている。これらのモノマーの誘導体は、例えば上記モノマーのダイマーまたはトリマーであるものが用いられてもよい。モノマーの高級分子誘導体、即ちテトラマー、ペンタマーなどは、本発明で使用するのに適切である。誘導体は同一の、または異なるモノマー単位で構成されてもよく、純粋な形で、または互いのおよび/またはモノマーとの混合物として使用されてもよい。これらの前駆体の酸化または還元形態を用いてもよい。
【0024】
様々な方法が、伝導性ポリマー層を形成するのに利用されてもよい。例えば、in situ重合層が、酸化触媒の存在下でモノマーを化学的に重合することにより形成されてもよい。酸化触媒は、典型的には、鉄(III)、銅(II)、クロム(VI)、セリウム(IV)、マンガン(IV)、マンガン(VII)、またはルテニウム(III)陽イオンなどの、遷移金属陽イオンを含む。ドーパントは、伝導性ポリマーに過剰な電荷を提供し、かつポリマーの伝導性を安定化するのに用いられてもよい。ドーパントは、典型的には、スルホン酸のイオンなどの無機または有機陰イオンを含む。ある実施形態において、酸化触媒は、陽イオン(例えば遷移金属)および陰イオン(例えばスルホン酸)を含むので、触媒およびドーピング機能の両方を有する。例えば、酸化触媒は、例えば、鉄(III)ハロゲン化物(例えばFeCl
3)、またはFe(ClO
4)もしくはFe
2(SO
4)
3などの他の無機酸の鉄(III)塩、有機酸および有機ラジカルを含む無機酸の鉄(III)塩を含む、遷移金属塩であってもよい。有機ラジカルを持つ無機酸の鉄(III)塩の例には、例えば、C
1−C
20アルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩(例えばラウリル硫酸の鉄(III)塩)が含まれる。同様に、有機酸の鉄(III)塩の例には、例えば、C
1−C
20アルカンスルホン酸(例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、またはドデカンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族パーフルオロスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、またはパーフルオロオクタンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族C
1−C
20カルボン酸(例えば2−エチルヘキシルカルボン酸)の鉄(III)塩;脂肪族パーフルオロカルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸またはパーフルオロオクタン酸)の鉄(III)塩;C
1−C
20アルキル基によって置換されてもよい芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、またはドデシルベンゼンスルホン酸)の鉄(III)塩;シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸)の鉄(III)塩などが含まれる。これらの上述の鉄(III)塩の混合物を使用してもよい。鉄(III)−p−トルエンスルホネート、鉄(III)−o−トルエンスルホネート、およびこれらの混合物が特に適切である。鉄(III)−p−トルエンスルホネートの1つの商用として適切な例は、Clevious(商標)Cという名称でHeraerus Cleviousから入手可能である。
【0025】
酸化触媒およびモノマーは、重合反応を開始させるために逐次または一緒に付着させてもよい。これらの成分を付着させるための適切な付着技法には、スクリーン印刷、浸漬、電気泳動コーティング、および噴霧が含まれる。例として、モノマーを最初に酸化触媒と混合して、前駆体溶液を形成してもよい。混合物が形成されたら、それをアノード部分に付着させ、次いで重合させて、伝導性コーティングが表面に形成されるようにしてもよい。あるいは、酸化触媒およびモノマーを順次付着させてもよい。一実施形態では、例えば、酸化触媒を有機溶媒(例えば、ブタノール)に溶解し、次いで浸漬溶液として付着させる。次いでアノード部分を乾燥させて、そこから溶媒を除去してもよい。その後、その部分をモノマーを含有する溶液に浸漬してもよい。それでも重合は、使用される酸化剤および所望の反応時間に応じて、典型的には約−10℃〜約250℃、いくつかの実施形態では約0℃〜約200℃の温度で行われる。上述のような適切な重合技法は、
Bilerの米国特許第7,515,396号でより詳細に記述されている。そのような(1種または複数の)伝導性コーティングを付着するためのさらにその他の方法は、
Sakataらの米国特許第5,457,862号、
Sakataらの第5,473,503号、
Sakataらの第5,729,428号、および
Kudohらの5,812,367号明細書に記述されている。
【0026】
in situ重合に加え、伝導性ポリマー固体電解質は、伝導性ポリマー粒子の分散体の形で付着させてもよい。分散体を用いる1つの利点は、イオン移動により高電界下で誘電破壊を引き起こす可能性のある、in situ重合中に生成されるイオン種(例えば、Fe
2+またはFe
3+)の存在を最小限に抑え得ることである。したがって、in situ重合を通してではなく分散体として伝導性ポリマーを付着させることにより、得られたキャパシタは比較的高い「破壊電圧」を示す可能性がある。アノードの良好な含浸を可能にするために、分散体で用いられる粒子は、平均サイズ(例えば、直径)が約1〜約150nm、いくつかの実施形態では約2〜約50nm、およびいくつかの実施形態では約5〜約40nmなど、典型的には小さいサイズを有する。粒子の直径は、超遠心分離、レーザ回折などの、公知の技法を使用して決定されてもよい。粒子の形状も同様に変化してもよい。ある特定の実施形態では、例えば、粒子はその形状が球状である。しかし、本発明により、平板、棒、円板、バー、チューブ、不規則な形状などその他の形状も企図されることを理解すべきである。分散体中の粒子の濃度は、分散体の所望の粘度、および分散体をキャパシタに付着させる特定の手法に応じて変化してもよい。しかし典型的には、粒子は、分散体の約0.1〜約10質量%、いくつかの実施形態では約0.4〜約5質量%、およびいくつかの実施形態では約0.5〜約4質量%を構成する。
【0027】
分散体は、一般に、粒子の安定性を高める対イオンも含有する。即ち、伝導性ポリマー(例えば、ポリチオフェンまたはその誘導体)は、典型的には、中性または陽性(陽イオン性)である電荷を主なポリマー鎖上に有する。例えばポリチオフェン誘導体は、典型的には主なポリマー鎖に正電荷を保持する。場合によって、ポリマーは、構造単位内に正および負電荷を有し、この正電荷は主鎖に位置しており、負電荷は、スルホネートまたはカルボキシレート基などのラジカル「R」の置換基上に位置していてもよい。主鎖の正電荷は、ラジカル「R」上に存在していてもよい陰イオン性基で部分的にまたは全体的に飽和されてもよい。全体的に見ると、ポリチオフェンは、これらの場合、陽イオン性、中性または陰イオン性であってもよい。それにも関わらずポリチオフェンは、ポリチオフェン主鎖が正電荷を有するので、全てが陽イオン性ポリチオフェンと見なされる。
【0028】
対イオンは、伝導性ポリマーの電荷を相殺するモノマーまたはポリマー陰イオンであってもよい。例えばポリマー陰イオンは、ポリマーカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など);ポリマースルホン酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸(「PSS」)、ポリビニルスルホン酸など);および同様のものなどの陰イオンとすることができる。酸は、コポリマー、例えばビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸とその他の重合性モノマーとのコポリマー、例えばアクリル酸エステルとスチレンとのコポリマーであってもよい。同様に、適切なモノマー陰イオンには、例えば、C
1−C
20アルカンスルホン酸(例えばドデカンスルホン酸);脂肪族パーフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、またはパーフルオロオクタンスルホン酸);脂肪族C
1−C
20カルボン酸(例えば、2−エチル−ヘキシルカルボン酸);脂肪族パーフルオロカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸またはパーフルオロオクタン酸);C
1−C
20アルキル基によって置換されてもよい芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、またはドデシルベンゼンスルホン酸);シクロアルカンスルホン酸(例えば、カンファースルホン酸、またはテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、パークロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアーセネート、もしくはヘキサクロロアンチモネート);および同様のものの陰イオンが含まれる。特に適切な対陰イオンは、ポリマーカルボン酸またはポリマースルホン酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸(「PSS」))などのポリマー陰イオンである。そのようなポリマー陰イオンの分子量は、典型的には約1,000から約2,000,000に及び、いくつかの実施形態では約2,000〜約500,000である。
【0029】
用いられる場合、分散体および得られる層におけるそのような対イオンと伝導性ポリマーとの質量比は、典型的には約0.5:1〜約50:1であり、いくつかの実施形態では約1:1〜約30:1であり、いくつかの実施形態では約2:1〜約20:1である。上記言及された質量比に対応する導電性ポリマーの質量は、これから使用されるモノマーの計量部分を指し、重合中に完全な変換が生ずると仮定する。伝導性ポリマーおよび対イオンに加え、分散体は、1種または複数の結合剤、分散剤、充填剤、接着剤、架橋剤などを含有していてもよい。
【0030】
ポリマー分散体は、スピンコーティング、含浸、注入、滴下塗布、射出、噴霧、ドクターブレード、ブラッシング、印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、またはパッド印刷)、または浸漬など、様々な公知の技法を使用して付着されてもよい。用いられる付着技法に応じて変化してもよいが、分散体の粘度は、典型的には約0.1〜約100,000mPa秒(100秒
-1の剪断速度で測定)、いくつかの実施形態では約1〜約10,000mPa秒、いくつかの実施形態では約10〜約1,500mPa秒、およびいくつかの実施形態では約100〜約1000mPa秒である。付着させたら、層を乾燥および/または洗浄してもよい。1つまたは複数の追加の層を、所望の厚さを実現するためにこの手法で形成してもよい。典型的には、この粒子分散体により形成される層の全厚は、約1〜約50μmであり、いくつかの実施形態では約5〜約20μmである。対イオンと伝導性ポリマーとの質量比は同様に、約0.5:1〜約50:1であり、いくつかの実施形態では約1:1〜約30:1であり、いくつかの実施形態では約2:1〜約20:1である。
【0031】
望む場合には、ヒドロキシル官能性非イオン性ポリマーを固体電解質中に含んでもよい。「ヒドロキシ官能性」という用語は、一般に、化合物が少なくとも1つのヒドロキシル官能基を含有し、またはそのような官能基を溶媒の存在下で保持することが可能であることを意味する。理論により限定されるものではないが、ヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーは、伝導性ポリマーと、より高い形成電圧の結果としてその性質が典型的には比較的滑らかである内部誘電体の表面との間の接触の程度を改善することができると考えられる。このことは、得られるキャパシタの破壊電圧および湿乾キャパシタンスを予期せず増大させる。さらに、ある分子量を持つヒドロキシ官能性ポリマーの使用は、高電圧での化学分解の可能性を最小限に抑えることもできると考えられる。例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーの分子量はmol当たり約100〜10,000g、いくつかの実施形態では約200〜2,000、いくつかの実施形態では約300〜約1,200、およびいくつかの実施形態では約400〜約800であってもよい。
【0032】
様々なヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーのいずれかは、一般に、この目的のために用いられてもよい。一実施形態では、例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーはポリアルキレンエーテルである。ポリアルキレンエーテルは、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエピクロロヒドリンなど)、ポリオキセタン、ポリフェニレンエーテル、およびポリエーテルケトンなどを含んでいてもよい。ポリアルキレンエーテルは典型的には、末端ヒドロキシ基を持つ、主として直鎖状の非イオン性ポリマーである。特に適切なものは、水へのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはテトラヒドロフランの重付加により生成されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン)である。ポリアルキレンエーテルは、ジオールまたはポリオールから重縮合反応によって調製されてもよい。ジオール成分は特に、5〜36個の炭素原子を含有する飽和または不飽和の、分枝状または非分枝状の脂肪族ジヒドロキシ化合物または芳香族ジヒドロキシ化合物、例えばペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、ビスフェノールA、ダイマージオール、水素化ダイマージオール、またはさらに記述されるジオールの混合物からも選択されてもよい。さらに、例えばグリセロール、ジおよびポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、またはソルビトールを含む多価アルコールを重合反応に使用してもよい。
【0033】
上述のものに加え、その他のヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーが本発明で用いられてもよい。そのようなポリマーのいくつかの例には、例えば、エトキシル化アルキルフェノール;エトキシル化またはプロポキシル化C
6−C
24脂肪アルコール;一般式:CH
3−(CH
2)
10-16−(O−C
2H
4)
1-25−OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルおよびペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル);一般式:CH
3−(CH
2)
10-16−(O−C
3H
6)
1-25−OHを有するポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル;下記の一般式:C
8H
17−(C
6H
4)−(O−C
2H
4)
1-25−OHを有するポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル(例えばTriton(商標)X−100);下記の一般式:C
9H
19−(C
6H
4)−(O−C
2H
4)
1-25−OH(例えばノノキシノール−9)を有するポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル;C
8−C
24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエステル、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、PEG−20メチルグルコースジステアレート、PEG−20メチルグルコースセスキステアレート、PEG−80ヒマシ油、およびPEG−20ヒマシ油、PEG−3ヒマシ油、PEG 600ジオレエート、およびPEG 400ジオレエート)、およびポリオキシエチレングリコールアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン−23グリセロールラウレート、およびポリオキシエチレン−20グリセロールステアレート);C
8−C
24脂肪酸のポリオキシレチレングリコールエーテル(例えば、ポリオキシエチレン−10セチルエーテル、ポリオキシエチレン−10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−20セチルエーテル、ポリオキシエチレン−10オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン−15トリデシルエーテル、およびポリオキシエチレン−6トリデシルエーテル);ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマー(例えば、ポロキサマー);および同様のもの、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0034】
ヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーは、様々な異なる方法で固体電解質に組み込まれてもよい。ある実施形態では、例えば、非イオン性ポリマーが上述の方法(例えば、in situ重合または半重合粒子分散)により形成された任意の伝導性ポリマー層に単に組み込まれていてもよい。しかしその他の実施形態では、非イオン性ポリマーを初期ポリマー層が形成された後に付着させてもよい。
【0035】
D.
外部ポリマーコーティング
必ずしも必要ではないが、外部ポリマーコーティングをアノード本体に付着させてもよく、固体電解質上に重ねてもよい。外部ポリマーコーティングは、一般に、上記にてより詳細に記述されたような半重合伝導性粒子の分散体から形成された1つまたは複数の層を含有する。外部コーティングは、誘電体との接着を増大させるため、かつより機械的に堅牢な部分をもたらすため、キャパシタ本体の縁部領域にさらに侵入してもよく、それが等価直列抵抗および漏れ電流を低減させ得る。望む場合には、固体電解質との接着の程度を高めるために、外部ポリマーコーティングに架橋剤を用いてもよい。典型的には架橋剤は、外部コーティングで使用される分散体を付着させる前に付着させる。適切な架橋剤は、例えば
Merkerらの米国特許公開第2007/0064376号に記載されており、例えば、アミン(例えば、ジアミン、トリアミン、オリゴマーアミン、ポリアミンなど);多価金属陽イオン、例えばMg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Ba、Ti、Co、Ni、Cu、Ru、Ce、またはZnの塩または化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物などを含む。
【0036】
E.
その他の成分
望む場合には、キャパシタ要素は、当技術分野で公知であるその他の層を含有していてもよい。例えば、接着コーティングを誘電体層と固体電解質との間に用いてもよい。接着コーティングは、アノード本体の小さい細孔に侵入することができ、かつ最終的には内側固体電解質層に埋め込まれるようになる、酸化マンガン(例えば二酸化マンガン)の複数の離散したナノ突出部を含む不連続プレコート層であってもよい。プレコート層は、連続層としてではなく離散したナノ突出部として形成されるので、固体電解質(例えば伝導性ポリマー)は、直接または以下に記述されるような別の層との接触を通して、誘電体の実質的な部分に直接接触可能になる。内側固体電解質層と誘電体との間の比較的大きい接触の程度は、ESRをさらに低減させることができる。キャパシタの全性能に悪影響を及ぼすことなく所望の結果を実現するために、ナノ突出部の平均サイズ(例えば直径)は、典型的には接着の改善が実現されるように十分大きいが、アノードの細孔に侵入できないほど大きくはない。この点に関し、ナノ突出部は、典型的には約5nm〜約500nm、いくつかの実施形態では約6nm〜約250nm、いくつかの実施形態では約8nm〜約150nm、およびいくつかの実施形態では約10nm〜約110nmの平均サイズを有する。「平均直径」という用語は、例えば、上から見たときのナノ突出部の主軸の平均値を指す(最大直径)。そのような直径は、例えば、光子相関分光法、動的光散乱、準弾性散乱などの公知の技法を使用して得てもよい。様々な粒度分析器を、この手法で直径を測定するのに用いてもよい。ある特定の例は、Corouan VASCO 3粒度分析器である。必ずしも必要ではないが、ナノ突出部は、キャパシタの性質をさらに改善することができる狭いサイズ分布を有していてもよい。例えば、ナノ突出部の約50%以上、いくつかの実施形態では約70%以上、およびいくつかの実施形態では約90%以上が、上述の範囲内の平均サイズを有していてもよい。あるサイズを有するナノ突出部の数は、体積パーセントをある吸光度単位(「au」)を有する粒子の数に相関させることができる上述の技法を使用して決定されてもよい。
【0037】
それらのサイズに加え、誘電体上のナノ突出部の表面被覆率は、所望の電気性能を実現するのを助けるよう選択的に制御されてもよい。即ち、表面被覆率が小さ過ぎると、より良好に誘電体に接着するという伝導性ポリマー層の能力が制限される可能性があり、また被覆率が大き過ぎると、キャパシタのESRに悪影響を及ぼす可能性がある。この点に関し、ナノ突出部の表面被覆率は、典型的には約0.1%〜約40%、いくつかの実施形態では約0.5%〜約30%、およびいくつかの実施形態では約1%〜約20%である。表面被覆率の程度は、「実際のキャパシタンス」値を「通常のキャパシタンス」値で除算し、次いで100を乗算するなど、様々な方法で計算することができる。「通常のキャパシタンス」は、ナノ突出部を形成し、次いでアノードに伝導性ポリマー溶液を含浸させた後に決定され、一方「実際のキャパシタンス」は、ナノ突出部を形成し、アノードに伝導性ポリマー溶液を含浸させ、アノードの内部からの伝導性ポリマー溶液を洗浄し、次いでアノードを乾燥して湿分を除去した後に決定される。
【0038】
様々な異なる技法が、本発明のプレコート層を形成するのに用いられてもよい。当技術分野で公知のように、酸化マンガン(例えば二酸化マンガン)は、典型的には前駆体(例えば、硝酸マンガン(Mn(NO
3)
2))の熱分解を通して形成される。例えば誘電体でコーティングされたアノード本体を、前駆体を含有する溶液に接触させ(例えば、浸漬、液浸、噴霧など)、その後、加熱して酸化物に変換してもよい。望む場合には、多数の付着ステップを用いてもよい。アノード本体を酸化マンガン前駆体溶液に接触させる時間の長さは、望みに応じて変えてもよい。例えば、アノード本体を、約10秒から約10分に及ぶ時間にわたりそのような溶液に浸漬してもよい。
【0039】
酸化マンガン前駆体溶液は、界面活性剤を含有していてもよい。そのような界面活性剤は、表面張力を低減させ、それによってアノード本体の内部への溶液の侵入を改善することができる。特に適切なものは、非イオン性界面活性剤、例えばポリグリコールエーテル(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)、ノニルフェノキシポリ−(エチレンオキシ)エタノール(例えばIgepal CO−630);イソオクチルフェノキシ−ポリエトキシエタノール(例えばTriton X−100)、ベンジルエーテルオクチルフェノール−エチレンオキシド縮合体(例えばTriton CF−10)、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール(例えばSurfynol 82)などである。キャパシタのその他の特性に悪影響を及ぼすことなく酸化マンガン前駆体の含浸の所望の改善を実現するには、一般に、界面活性剤の濃度がある範囲内で選択的に制御されることが望まれる。例えば、アノード本体が浸漬される溶液は、界面活性剤を、約0.01質量%〜約30質量%、いくつかの実施形態では約0.05質量%〜約25質量%、およびいくつかの実施形態では約0.1質量%〜約20質量%の量で含有してもよい。前駆体(例えば硝酸マンガン)は、同様に、溶液の約1質量%〜約55質量%、いくつかの実施形態では約2質量%〜約15質量%、およびいくつかの実施形態では約5質量%〜約10質量%を構成してもよい。水などの担体を溶液中に用いてもよい。本発明の水溶液は、例えば、水を約30質量%〜約95質量%、いくつかの実施形態では約40質量%〜約99質量%、およびいくつかの実施形態では約50質量%〜約95質量%の量で含有してもよい。溶液中の成分の実際の量は、アノード中の粒子の粒度および分布、分解が行われる温度、分散体の詳細、担体の詳細などの要因に応じて変化してもよいことを理解すべきである。
【0040】
望む場合には、アノード本体を、酸化マンガン前駆体溶液に接触させる前に行われる前処理ステップで、加湿雰囲気に接触させてもよい。ある量の水蒸気が存在することにより、二酸化マンガンの熱分解反応を遅くすることができ、それによって二酸化マンガンを、分散したナノ突出部として形成することができる。例えば前処理ステップ中に、アノード本体を、空気1立方メートル当たり水約1〜約30g(g/m
3)、いくつかの実施形態では約4〜約25g/m
3、およびいくつかの実施形態では約5〜約20g/m
3の湿度レベルを有する雰囲気に曝すことができる。相対湿度は同様に、約30%〜約90%、いくつかの実施形態では約40%〜約85%、およびいくつかの実施形態では約50%〜約80%に及んでもよい。加湿雰囲気の温度は、例えば約10℃〜約50℃、いくつかの実施形態では約15℃〜約45℃、およびいくつかの実施形態では約20℃〜約40℃まで変化してもよい。前処理ステップに加え、アノード本体を、酸化マンガン前駆体溶液に接触させた後に行われる中間処理ステップで、加湿雰囲気に接触させてもよい。中間処理ステップにおける加湿雰囲気は、前処理ステップと同じ、または異なる条件を有していてもよいが、一般に上述の範囲内にある。
【0041】
それでも、所望の時間にわたって前駆体溶液に接触させた後、その部分は熱分解により前駆体(例えば硝酸マンガン)を酸化物に変換させるのに十分な温度に加熱される。加熱は、例えば約150℃〜約300℃、いくつかの実施形態では約180℃〜約290℃、およびいくつかの実施形態では約190℃〜約260℃の温度で、炉内で行ってもよい。加熱は、湿潤または乾燥雰囲気中で実施してもよい。ある実施形態では、例えば加熱は、前述の前処理および中間処理ステップで使用された雰囲気と同じであっても異なっていてもよい加湿雰囲気中で実施されてもよく、しかし一般には上述の条件の範囲内で実施されてもよい。変換に要する時間は、炉の温度、熱伝達率、および雰囲気に依存するが、一般に約3〜約5分である。熱分解後、漏れ電流は二酸化マンガンの堆積中に誘電体被膜から受ける損傷に起因して、時々高くなる可能性がある。この漏れを低減させるため、キャパシタを当技術分野で公知のように陽極酸化浴内で改修してもよい。例えばキャパシタを、上述のような電解質に浸漬し、次いでDC電流に供してもよい。
【0042】
望む場合には、接着コーティングが、層間剥離の可能性を低減させるのを助けるために、その他の層を含有していてもよい。一実施形態では、例えば接着コーティングが、本質的に連続または不連続であってもよい樹脂状層を含んでいてもよい。用いられる場合、プレコート層に対する樹脂状層の特定の配置構成は、望み通りに換えてもよい。一実施形態では、例えばプレコート層を最初に誘電体上に形成してもよく、その後に樹脂状層を、コーティングされた誘電体に付着させてもよい。そのような実施形態では、プレコート層は誘電体上に重なり、樹脂状層はプレコート層上に重なり、かつプレコート層および/または誘電体に接触してもよい。樹脂状層の存在にも関わらず、プレコート層のコーティングされたナノ突出部は、内側伝導性ポリマー層内に埋め込まれるようになることがさらに可能と考えられる。別の実施形態では、樹脂状層は最初に誘電体に付着されてもよく、その後にプレコート層がその上に形成されてもよい。そのような実施形態では、樹脂状層が誘電体上に重なり、プレコート層が樹脂状層上に重なる。
【0043】
樹脂状層は、一般に、本質的にポリマー性でありまたは重合し、硬化し、またはその他の手法で硬質化することが可能な固体、または半固体材料であってもよい天然または合成樹脂を含んでいてもよい。典型的には、樹脂が本質的に、比較的絶縁性であることも望まれる。本明細書で使用される「比較的絶縁性」という用語は一般に、内側伝導性ポリマー層を主に形成する伝導性ポリマーよりも抵抗性があることを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、比較的絶縁性の樹脂は、20℃で約1000Ω・cm以上、いくつかの実施形態では約10,000Ω・cm以上、いくつかの実施形態では約1×10
5Ω・cm以上、およびいくつかの実施形態では約1×10
10Ω・cm以上の抵抗率を有することができる。用いてもよい適切な樹脂のいくつかの例には、これらに限定されないが、ポリウレタン、ポリスチレン、および不飽和または飽和脂肪酸のエステル(例えばグリセリド)などが含まれる。例えば、脂肪酸の適切なエステルには、これらに限定されないが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アロイリチン酸、およびシェロール酸などのエステルが含まれる。脂肪酸のこれらのエステルは、「乾性油」が形成されるよう比較的複雑な組合せで使用した場合、特に有用であることが見出され、これは得られた被膜を素早く重合させて安定層にすることが可能である。そのような乾性油は、エステル化された1個、2個、および3個の脂肪アシル残基をそれぞれ持ったグリセロール骨格を有するモノ、ジ、および/またはトリグリセリドを含んでいてもよい。例えば、使用され得るいくつかの適切な乾性油には、これらに限定されないが、オリーブ油、アマニ油、ヒマシ油、キリ油、大豆油、およびシェラックが含まれる。様々な脂肪族および脂環式ヒドロキシ酸(例えば、アロイリチン酸およびシェロール酸)のエステルを含有すると考えられるシェラックが特に適切である。これらおよびその他の樹脂材料は、
Fifeらの米国特許第6,674,635号により詳細に記載されている。
【0044】
用いられる場合、上述のような脂肪酸のエステルは天然に存在していてもよく、または天然材料から精製されてもよい。例えば大豆油は、石油炭化水素での溶媒抽出によって、または連続ねじプレス操作を使用した精製を通して、大豆から得られることが多い。抽出により得られた大豆油は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸のトリグリセリドで主に構成される。一方、キリ油は、そのような精製をしばしば必要としない乾性油である。ある場合には、アルコールと反応させることによって、脂肪酸混合物のさらなるエステル化を開始することが望まれると考えられる。そのような脂肪酸/アルコールエステル誘導体は、一般に、脂肪酸と反応することが可能な任意の公知のアルコールを使用して得られてもよい。例えば、いくつかの実施形態では8個未満の炭素原子を持つ、およびいくつかの実施形態では5個未満の炭素原子を持つ、1価および/または多価アルコールを本発明で使用してもよい。本発明の特定の実施形態は、メタノール、エタノール、ブタノール、ならびに様々なグリコール、例えばプロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどの使用を含む。ある特定の実施形態では、シェラックを上述のようなアルコールと混合することによってエステル化することができる。詳細には、シェラックはある程度までエステル化される脂肪酸の複合混合物を含有すると考えられる、昆虫の樹脂状排泄物である。したがってアルコールと混合した場合、シェラックの脂肪酸基はアルコールとの反応によってさらにエステル化される。
【0045】
樹脂状層は、様々な異なる方法で形成することができる。例えば一実施形態では、アノードを所望の樹脂の溶液に浸漬することができる。溶液は、選択された保護樹脂を、水または非水性溶媒などの溶媒に溶解することによって形成することができる。いくつかの適切な非水性溶媒は、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、ブタノール、ならびに様々なグリコール、例えばプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジ(エチレンアセテート)グリコールなどを含むことができる。特に望まれる非水性溶媒は、約80℃よりも高い、いくつかの実施形態では約120℃よりも高い、およびいくつかの実施形態では約150℃よりも高い沸点を有するものである。上述のように、非水性溶媒を使用した溶液の形成は、そのような樹脂状材料が利用される場合に脂肪酸のさらなるエステル化をもたらすこともできる。アノードは、所望の厚さに応じて1回または複数回、溶液に浸漬することができる。例えばいくつかの実施形態では、多数の樹脂状層、例えば2〜10層、およびいくつかの実施形態では3〜7層を用いてもよい。各層は、例えば約100nm以下、いくつかの実施形態では約30nm以下、およびいくつかの実施形態では約10nm以下の、目標とする厚さを有していてもよい。浸漬の他に、スパッタリング、スクリーン印刷、電気泳動コーティング、電子線蒸着、真空蒸着、および噴霧などのその他の従来の付着方法も使用できることも理解すべきである。
【0046】
樹脂状層を形成した後、アノード部分を加熱し、またはその他の手法で硬化してもよい。加熱は、付着中に使用される任意の溶媒の蒸発を容易にすることができ、樹脂状材料のエステル化および/または重合を助けてもよい。エステル化および/または重合を容易にするために、硬化剤を樹脂状層に添加してもよい。例えば、シェラックと共に使用することができる硬化剤の一例は硫酸である。加熱が行われる時間および温度は一般に、利用される特定の樹脂状材料に応じて変化する。典型的には各層は、約30℃から約300℃、いくつかの実施形態では約50℃から約150℃に及ぶ温度で、約1分から約60分、いくつかの実施形態では約15分から約30分に及ぶ時間にわたって乾燥される。加熱は、各樹脂状層の付着後に必ずしも利用する必要はないことも理解すべきである。
【0047】
II.
端子
キャパシタには、特に表面実装適用例で用いられる場合、端子を設けてもよい。例えばキャパシタは、キャパシタ要素のアノードが電気接続されるアノード端子と、キャパシタ要素のカソードが電気接続されるカソード端子とを含有していてもよい。伝導性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、およびこれらの合金)などの任意の伝導性材料が端子を形成するのに用いられてもよい。特に適切な伝導性金属には、例えば、銅、銅合金(例えば、銅−ジルコニウム、銅−マグネシウム、銅−亜鉛、または銅−鉄)、ニッケル、およびニッケル合金(例えばニッケル−鉄)が含まれる。端子の厚さは一般に、キャパシタの厚さが最小限に抑えられるように選択される。例えば端子の厚さは、約0.05から約1mmに、いくつかの実施形態では約0.05から約0.5mmに、および約0.07から約0.2mmに及んでもよい。1つの例示的な伝導性材料はWieland(ドイツ)から入手可能な銅−鉄合金金属板である。望む場合には、最終部分が回路基板に実装可能であることを確実にするために、当技術分野で公知のように、端子の表面をニッケル、銀、金、スズなどで電気めっきしてもよい。ある特定の実施形態では、端子の両面をニッケルおよび銀フラッシュでそれぞれめっきし、一方実装表面もスズはんだ層でめっきされる。
【0048】
図1を参照すると、例えば、キャパシタ要素33に電気接続しているアノード端子62およびカソード端子72を含むものとして電解キャパシタ30が示されている。キャパシタ要素33は、上面37、下面39、正面36、および背面38を有する。キャパシタ要素33の面のいずれかに電気接触していてもよいが、図示される実施形態のカソード端子72は、伝導性接着剤(図示せず)を介して下面39に電気接触している。より詳細には、カソード端子72は、キャパシタ要素33の下面39に電気接触しており、かつほぼ平行な第1の構成要素73を含有する。アノード端子62は同様に、第2の構成要素64に実質的に垂直に位置決めされた第1の構成要素63を含有する。第1の構成要素63は、キャパシタ要素33の下面39に電気接触しており、かつほぼ平行である。第2の構成要素64は、アノードリード16を保持する領域51を含有する。領域51は、リード16の表面接触および機械的安定性をさらに高めるために「U字形」を保持していてもよい。
【0049】
端子は、当技術分野で公知の任意の技法を使用してキャパシタ要素に接続されてもよい。一実施形態では、例えば、カソード端子72およびアノード端子62を画定するリードフレームを設けてもよい。電解キャパシタ要素33をリードフレームに取着するために、伝導性接着剤(図示せず)を最初にカソード端子72の表面に付着させてもよい。伝導性接着剤は、例えば、樹脂組成物と共に含有された伝導性金属粒子を含んでいてもよい。金属粒子が、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってもよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、およびカップリング剤(例えばシランカップリング剤)を含んでいてもよい。適切な伝導性接着剤は、
Osakoらの米国特許公開第2006/0038304号に記載され得る。様々な技法のいずれかを、カソード端子72に伝導性接着剤を付着させるのに使用してもよい。例えば印刷技法は、それらの実用的かつコスト削減の利点により用いてもよい。
【0050】
端子をキャパシタに取着するために、様々な方法が一般に用いられてもよい。一実施形態では、例えばアノード端子62の第2の構成要素64が、
図1に示される位置に向かって最初に上向きに曲げられる。その後キャパシタ要素33は、その下面39が接着剤90に接触し、かつアノードリード16が領域51に受容されるように、カソード端子72上に位置決めされる。望む場合には、アノード端子とカソード端子とが電気的に隔離されるように、プラスチックパッドまたはテープなどの絶縁材料(図示せず)を、キャパシタ要素33の下面39とアノード端子62の第1の構成要素63との間に位置決めしてもよい。
【0051】
次いでアノードリード16を、機械式溶接、レーザ溶接、伝導性接着剤などの当技術分野で公知の任意の技法を使用して、領域51に電気接続する。例えばアノードリード16は、レーザを使用してアノード端子62に溶接してもよい。レーザは一般に、誘導放出によって光子を放出することが可能なレーザ媒体を含む共振器と、レーザ媒体の要素を励起するエネルギー源とを含有する。適切なレーザの1つのタイプは、レーザ媒体が、ネオジム(Nd)とドープされたアルミニウムおよびイットリウムガーネット(YAG)からなるものである。励起された粒子はネオジムイオンNd
3+である。エネルギー源は、連続レーザビームを放出するようレーザ媒体に連続エネルギーを提供してもよく、またはパルス状レーザビームを放出するようにエネルギー放出を提供してもよい。アノードリード16をアノード端子62に電気接続し、次いで伝導性接着剤を硬化してもよい。例えば、電解キャパシタ要素33が接着剤によってカソード端子72に十分に接着するのを確実にするために、熱および圧力が加えられるよう熱プレスを使用してもよい。
【0052】
III.
ケーシング
キャパシタ要素は一般に、回路基板上に実装するためアノードおよびカソード端子の少なくとも一部が露出するように、ケーシング内に封入される。
図1に示されるように、例えばキャパシタ要素33は、アノード端子62の一部およびカソード端子72の一部が露出するように、樹脂状ケーシング28内に封入される。ケーシングは、典型的には熱硬化性樹脂から形成される。そのような樹脂の例には、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などが含まれる。エポキシ樹脂が特に適切である。光開始剤、粘度調節剤、懸濁助剤、顔料、応力低減剤、非伝導性充填剤、安定化剤など、さらにその他の添加剤を用いてもよい。例えば、非伝導性充填剤は、無機酸化物粒子、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、ゼオライト、シリケート、クレー(例えばスメクタイトクレー)など、ならびに複合体(例えばアルミナがコーティングされたシリカ粒子)、およびこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0053】
本発明は下記の例を参照することによって、より良く理解することができる。
試験手順
キャパシタンスおよび散逸率
キャパシタンスおよび散逸率は、動作周波数120Hzおよび温度約25℃で1.5V DCバイアスのHewlett−Packard Precision LCRメータを使用して測定されてもよい。「乾式キャパシタンス」は、固体電解質、黒鉛、および銀層を付着させた後の部分のキャパシタンスを指し、一方「湿式キャパシタンス」は、誘電体を形成した後の部分のキャパシタンスであって、白金黒めっきを持つ銀カソードに対して30%硫酸中で測定された値を指す。
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗は、Kelvin Leadsを持つ、1.5V DCバイアスおよび0.5Vピーク間正弦波信号によるKeithley 3330 Precision LCZメータを使用して測定されてもよい。動作周波数は100kHzであってもよく、温度は約25℃であってもよい。
漏れ電流:
漏れ電流(「DCL」)は、60秒後に約25℃の温度および定格電圧(例えば6.3V)で漏れ電流を測定する、漏れ試験設定を使用して測定されてもよい。
【実施例】
【0054】
様々なアノードサンプルは、下記の通り形成されてもよい。
サンプル1−1:リンドーパントなしの、300,000μF・V/gの比電荷を有する粉末が形成されてもよい。1次粒子は結合剤と共に凝集されてもよい。粉末は、設計されたサイズおよび質量のタンタルアノードにプレスされてもよい。プレス後、結合剤は真空中20分間、600℃の温度での熱処理によって除去されてもよい。結合剤を除去した後、アノードは真空中で10分間、1050℃で焼結されてもよい。
サンプル1−2:リンドーパントが280ppmで比電荷が300,000μF・V/gの粉末が形成されてもよい。1次粒子は熱処理の下で凝集されてもよい。次いで粉末を、安息香酸結合剤(2%)と混合し、設計されたサイズおよび質量のタンタルアノードにプレスしてもよい。プレス後、結合剤を水溶液(50℃、pH=10以上)により除去してもよい。アノードを水溶液中に120分間浸漬し、次いで脱イオン水で75分間すすいでもよい。すすいだ後、アノードを110℃で180分間乾燥し、その後真空中で10分間、1050℃で焼結してもよい。
サンプル1−3:リンドーパントが240ppmで比電荷が300,000μF・V/gの粉末が形成されてもよい。次いで粉末を、サンプル1−2に関して記述した手法でプレスし焼結してもよい。
【0055】
サンプル1−1、1−2、および1−3は、100μFのキャパシタンスおよび6.3Vの定格電圧を有するアノード(F98Mケースサイズ)を形成するのに使用することができる。焼結後、これらのアノードそれぞれの収縮度は下記の通りである:サンプル1−1:3.8%;サンプル1−2:1.5%;およびサンプル1−3:2.1%。次いでアノードサンプルを、下記の条件下で陽極酸化してもよい:
電解質:リン酸
電解質温度:60℃
電解質伝導度:6.5mS/cm
電圧:9.6V
ステップ1:第1の陽極酸化、60分間
ステップ2:320度で10分間以上のアニーリング
ステップ3:第2の陽極酸化、240分間
陽極酸化プロセス後、二酸化マンガンカソードを形成してもよく、次いでアノードを、従来の組立てプロセスを使用して完成させて、キャパシタを形成してもよい。12のキャパシタサンプルを、各アノードサンプルから形成してもよい。そのようなキャパシタに関する代表的な電気的性質(平均)を以下に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
本発明の、これらおよびその他の修正および変更は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者が行ってもよい。さらに、様々な実施形態の態様は、全体的または部分的の両方で交換してもよいことを理解すべきである。さらに、当業者なら、先の記述が単なる例であり、そのような添付される特許請求の範囲でさらに記述される本発明を限定するものではないことが理解されよう。