特許第6960757号(P6960757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6960757ろ過ユニット及びこれを用いた雨水処理設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960757
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ろ過ユニット及びこれを用いた雨水処理設備
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/14 20060101AFI20211025BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20211025BHJP
   B01D 24/02 20060101ALI20211025BHJP
   B01D 35/027 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   E03F5/14ZAB
   B01D23/02 A
   B01D23/16
   B01D35/02 F
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-68591(P2017-68591)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-168645(P2018-168645A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松坂 昇
(72)【発明者】
【氏名】奥薗 哲郎
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−269517(JP,A)
【文献】 特許第6675625(JP,B1)
【文献】 特開2014−046307(JP,A)
【文献】 特開2006−035136(JP,A)
【文献】 特開2008−133598(JP,A)
【文献】 特開2010−174544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/14
B01D 29/00
B01D 24/02
B01D 35/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された一対のフィルター材と、
該一対のフィルター材の間に充填された砂ろ過材と、
前記一対のフィルター材及び前記砂ろ過材の外周側面を前記砂ろ過材に直接接触して覆う枠状のフレーム材と、を有するろ過ユニット。
【請求項2】
前記一対のフィルター材は、不織布からなる請求項1に記載のろ過ユニット。
【請求項3】
前記フレーム材は、前記一対のフィルター材の周縁部も覆う請求項1又は2に記載のろ過ユニット。
【請求項4】
前記フレーム材には、前記一対のフィルター材を覆う一対の網材が設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のろ過ユニット。
【請求項5】
前記フィルター材が長方形の平面形状を有し、
前記長方形の長辺が鉛直方向に平行となるように縦長に配置されて用いられる請求項1乃至4のいずれか一項に記載のろ過ユニット。
【請求項6】
互いに平行に配置された一対のフィルター材と、
該一対のフィルター材の間に充填された砂ろ過材と、
前記一対のフィルター材及び前記砂ろ過材の外周側面を覆うフレーム材と、を有し、
前記フィルター材が長方形の平面形状を有し、
前記長方形の長辺が鉛直方向に平行となるように縦長に配置されて用いられ、
前記フレーム材の上面に砂投入口が設けられたろ過ユニット。
【請求項7】
互いに平行に配置された一対のフィルター材と、
該一対のフィルター材の間に充填された砂ろ過材と、
前記一対のフィルター材及び前記砂ろ過材の外周側面を覆うフレーム材と、を有し、
前記フィルター材が長方形の平面形状を有し、
前記長方形の長辺が鉛直方向に平行となるように縦長に配置されて用いられ、
前記フレーム材の上面には、吊下げ保持用の係合部材が設けられたろ過ユニット。
【請求項8】
前記長方形の長辺は2m以上の高さを有し、
前記長方形の短辺は50cm以上の厚さを有する請求項5乃至7のいずれか一項に記載のろ過ユニット。
【請求項9】
雨水排水を貯留可能な雨水貯留外槽と、
該雨水貯留外槽内に設けられ、請求項5乃至8のいずれか一項に記載のろ過ユニットを複数個配列して形成した壁面を有する雨水貯留槽と、を有する雨水処理設備。
【請求項10】
雨水排水を貯留可能な雨水貯留外槽と、
該雨水貯留外槽内に設けられ、互いに平行に配置された一対のフィルター材と、該一対のフィルター材の間に充填された砂ろ過材と、前記一対のフィルター材及び前記砂ろ過材の外周側面を覆うフレーム材と、を有し、前記フィルター材が長方形の平面形状を有し、前記長方形の長辺が鉛直方向に平行となるように縦長に配置されて用いられるろ過ユニットを複数個配列して形成した壁面を有する雨水貯留槽と、
隣接して配列された前記ろ過ユニット同士を、所定間隙を有して連結固定する固定手段と、
前記隣接して配列された前記ろ過ユニット同士の前記所定間隙からの前記雨水排水の漏水を防止するシール材が設けられた雨水処理設備。
【請求項11】
前記シール材はゴムからなる請求項10に記載の雨水処理設備。
【請求項12】
前記雨水貯留槽の上流側には、前処理用のフィルターが更に設けられた請求項9乃至11のいずれか一項に記載の雨水処理設備。
【請求項13】
前記雨水排水は、木質バイオマス燃料を含む請求項9乃至12のいずれか一項に記載の雨水処理設備。
【請求項14】
前記木質バイオマス燃料は、パームカーネルシェルである請求項13に記載の雨水処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過ユニット及びこれを用いた雨水処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
木質バイオマス燃料の発電用燃料としての利用は、比較的最近開始された。よって、水質汚濁防止法の特定施設に指定されておらず、現在、木質バイオマス燃料に特化した水処理技術は存在しない。従来技術で木質バイオマス燃料の水処理に適用可能な技術としては、一次処理としては浮上分離や凝集沈殿、二次処理しては砂ろ過等が考えられる。
【0003】
例えば、濁水を処理する濁水処理システムとして、第1凝集反応槽内の第1の被処理水がアルカリ性になるようにアルカリ性物質を添加するアルカリ添加手段と、第2の凝集反応槽内の第2被処理水が酸性になるように酸性物質を添加する酸添加手段と、第1被処理水に第1凝集剤を添加するための第1凝集剤添加手段と、第2被処理水に第2凝集剤を添加するための第2凝集剤添加手段と、濁水の濁度又はSS濃度を検出する濁度/SS検出手段と、濁度/SS検出手段によって検出された濁度又はSS濃度に基づいて第1凝集剤の添加量を制御する凝集剤制御手段と、を備えた濁水処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる特許文献1に記載の濁水処理システムでは、濁度又はSS濃度に基づいて第1凝集剤の添加量を制御するため、濁水の性状が大きく変動する場合にも適用可能であり、地震災害によって発生した災害廃棄物等にも適用可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の濁水処理システムにおいても、複数の反応槽、凝集剤添加手段等を必要としているように、濁水処理の従来技術は、機械設備等のイニシャルコスト、薬品や電力費等のランニングコストが必要であり、コストが高くなるおそれがある。このため、低廉な価格の水処理技術が求められている。
【0007】
ところで、木質バイオマス燃料のうち、パームカーネルシェル(以下、「PKS」と表記する。)は、アブラヤシパーム果実の種から核油を搾油した後の殻であり、近年、木質バイオマス燃料として採用されるようになってきている。PKSは木質の殻であるため、雨水に晒された場合、表面の微小な木くず等が洗い流されて、懸濁物質としての濁水に加わって排水されることがある。この濁水は、SS(浮遊物質・懸濁物質)とCOD(化学的酸素要求量)において水質汚濁防止法の一律排水基準を上回るおそれがあるため、雨水処理設備での適切な処理が必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、木質バイオマス燃料を適切に処理することができるろ過フィルタユニット及びこれを用いた雨水処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るろ過ユニットは、互いに平行に配置された一対のフィルター材と、
該一対のフィルター材の間に充填された砂ろ過材と、
前記一対のフィルター材及び前記砂ろ過材の外周側面を前記砂ろ過材に直接接触して覆う枠状のフレーム材と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全水深で雨水のろ過を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るろ過ユニットの一例の概略構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るろ過ユニットの一例の構成を示した多面図である。図2(a)は本実施形態に係るろ過ユニットの側面図である。図2(b)は本実施形態に係るろ過ユニットの背面図である。図2(c)は本実施形態に係るろ過ユニットの正面図である。
図3】本実施形態に係るろ過ユニットの上面図である。
図4】ろ過ユニット間の止水構造の一例を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態に係るろ過ユニットを用いた雨水処理設備の一例を示した図である。
図6】前処理フィルターの一例を示した図である。図6(a)は前伊処理フィルターの一例の全体図である。図6(b)は前処理フィルターのスクリーンの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るろ過ユニットの一例の概略構成を示す断面図である。図1に示されるように、本実施形態に係るろ過ユニット60は、砂ろ過材10と、一対のフィルター材20とを有する。一対のフィルター材20は、互いに平行となるように設けられ、一対のフィルター材20の間の空間に砂ろ過材10が充填された構成を有する。図1に示されるように、PKSの残滓や泥土など(以下、「PKSなど」と表記する。)を含有する雨水排水がろ過ユニット60の左側にある場合に、ろ過ユニット60を通過して右側に移動した際にろ過処理が行われ、PKSなどが除去された処理水(浄化水)となる。
【0014】
本実施形態に係るろ過ユニットは、種々の用途に適用可能であるが、木質バイオマス燃料から発生する雨水排水を浄化する用途に好適に適用され得る。そのような用途で用いる場合、雨水貯留槽の壁面を構成するように複数のろ過ユニット60を配列すれば、雨水貯留槽に貯留された雨水排水の水深に関わらず、常に雨水排水のろ過処理を行うことができる。つまり、図1に示されるように、砂ろ過材10を一対のフィルター材20で挟み込んだ断面構造を有するろ過ユニット60を、雨水留槽の底面から上方に向かって縦長に延びるように配置すれば、水深が浅い場合であっても深い場合であっても、常にPKSなどを含む雨水排水はろ過ユニット60に接することができ、常に雨水貯留槽の壁面を介してろ過処理を行うことができる。なお、雨水貯留槽の外側には、雨水貯留外槽を設けておき、ここから排水処理施設に排水可能な構成としておけば、ろ過処理により浄化された処理水を排水することができる。
【0015】
なお、木質バイオマス燃料を使用した発電で発生する雨水排水には、木くず等の懸濁物質のCODが多く含まれており、懸濁物質の除去は、SSのみならず、CODの低減にも効果が期待できる。
【0016】
本実施形態に係るろ過ユニット60は、このような懸濁物質の除去に極めて有効であり、雨水貯留槽の壁面の下端から上端までをろ過ユニット60で構成するろ過壁とすることで、雨水貯留槽の全水深でろ過した処理水(浄化水)の排水を可能とする。また、貯留された雨水排水中の懸濁物質は自然沈殿するため、沈殿物については、雨水排水が無くなったときに除去すればよい。つまり、本実施形態に係るろ過ユニット60を用いて雨水貯留槽の壁面を形成すれば、雨水貯留槽は、沈殿池とろ過槽の双方の機能を備えることができる。
【0017】
ここで、ろ過ユニット60は、上述のように、一対のフィルター材20で砂ろ過材10を挟む構造を有するが、砂ろ過材10をフィルター材20で挟むことで、砂ろ過材10の内部への細粒の侵入を防止し、砂ろ過材10の劣化を抑制することができる。
【0018】
砂ろ過材10は、上述のように、PKSなどをトラップすることができれば、種々の砂材を用いることができる。
【0019】
フィルター材20は、砂ろ過材10を保持するとともに、文字通りフィルターとしての役割を有し、砂ろ過材10への細粒の進入を防止し、砂ろ過材10の劣化を低減させる。フィルター材20には、例えば、不織布を用いるようにしてもよい。不織布は、用途に応じて適切な不織布を選択して良いが、例えば、ポリエステル系短繊維不織布を用いてもよい。具体的には、例えば、前田工繊株式会社製の「サンドフS−10G」等を用いてもよい。
【0020】
次に、ろ過ユニット60の構成について、より詳細に説明する。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係るろ過ユニット60の一例の構成を示した多面図である。図2(a)は本実施形態に係るろ過ユニット60の側面図であり、図2(b)は本実施形態に係るろ過ユニット60の背面図である。また、図2(c)は、本実施形態に係るろ過ユニット60の正面図である。なお、図2(a)は、全体としては側面図であるが、砂ろ過材10及びフィルター材20が視認できるように、その部分に関しては一部断面図となっている。
【0022】
図2(a)に示されるように、ろ過ユニット60は、平行に配置された一対のフィルター材20の間に、砂ろ過材10が充填されて構成される。一対のフィルター材20は下端から上端まで延び、下端から上端まで砂ろ過材10が充填されている。
【0023】
なお、ろ過ユニット60の高さH(図2(c)参照)は、ろ過ユニット60が雨水貯留槽の壁面に用いられる場合には、雨水貯留槽の壁面の高さHと同じ高さに構成される。例えば、雨水貯留槽の高さは、2m以上3m以下の高さに構成される場合が多いので、ろ過ユニット60の高さHは2m以上3m以下の高さ、例えば、2.5mに設定してもよい。
【0024】
また、ろ過ユニット60の厚さは、PKSなどを含む雨水のろ過処理を行うのに必要な砂ろ過材10の厚さを考慮して定められ、例えば20cm以上40cm以下であってもよい。より具体的には、例えば、ろ過ユニット60は、30cmの厚さで構成されてもよい。
【0025】
図2(b)、(c)に示されるように、砂ろ過材10及びフィルター材20の外周側面は、フレーム材30で覆われる。フレーム材30は、文字通り枠状に構成され、砂ろ過材10及び一対のフィルター材20を外側から保持する。よって、フレーム材30は、少なくとも砂ろ過材10及びフィルター材30の厚さ方向に延びる部分を有し、砂ろ過材10及びフィルター材20の外周側面と接触し、これを保持する部分を有する。また、フレーム材30は、砂ろ過材10及びフィルター材20を確実に保持すべく、フィルター材20の平面形状部分の周縁部を覆う部分を有することが好ましい。これにより、砂ろ過材10及びフィルター材20をフレーム材30内に確実に保持することができる。
【0026】
更に、フレーム材30には、一対のフィルター材20の各面を覆うように、網材40が取り付けられる。砂ろ過材10及びフィルター材20の外周側面をフレーム材30で覆い、フィルター材20を両面から網材40で覆うことにより、砂ろ過材10及びフィルター材20を確実に保持することができる。
【0027】
なお、網材40は、外枠を形成するプレート状のフレーム41を有し、フレーム41をフレーム材30にボルト42で取り付けることにより、フレーム材30と一体的に構成するようにしてもよい。この場合、フレーム材30がフィルター材20の周縁部を覆う部分を有して構成され、その部分にフレーム41をボルト42で取り付けるようにすれば、網材40を容易にフレーム材30に取り付けることができる。
【0028】
フレーム材30及び網材40は、砂ろ過材10及びフィルター材20を適切に保持できる限り、種々の材料から構成されてよいが、例えば、鋼等の金属材料から構成されてもよい。鋼等の適切な金属材料を用いてフレーム材30及び網材40を構成することにより、十分な強度及び耐食性を得ることができる。
【0029】
網材40の格子の大きさは、用途に応じて適切な値としてよいが、例えば、5cm×5cm〜20cm×20cmの範囲の大きさとしてもよい。より具体的には、例えば、網材40の格子の大きさを、10cm×10cmに設定してもよい。
【0030】
なお、図2(b)、(c)に示されるように、網材40は、特に特殊な用途が無ければ、正面側と背面側で同一の網材40を使用するようにしてもよい。両面が同一の網材40で済むので、製造コストを低減させることができる。逆に、正面側と背面側で網目の大きさ、形状等、構成を変えたい場合には、正面側と背面側とで異なる構成としてもよい。ここで、正面側は、雨水貯留槽の内壁をなす面を意味し、背面側は、雨水貯留槽の外壁をなす面を意味する。また、ろ過ユニット60の幅は、用途に応じて適切な幅に構成してよいが、あまり小さいと雨水貯留槽の内壁を構成するのに非常に多くの枚数が必要となり、また大き過ぎると重量が重くなり、取扱いが困難となるため、例えば、50cm以上2.0m以下の範囲の幅としてもよい。より具体的には、例えば、幅Wを1mとしてもよい。
【0031】
このように、ろ過ユニット60はユニット状に構成されているので、雨水貯留槽の壁面を構成するように用いられた場合も、ユニット毎の交換が可能である。よって、雨水貯留槽のメインテナンスを非常に容易にすることができる。例えば、フィルター材20の目詰まりが生じたら、雨水排水を貯留していない時に、網材40の外からフィルター材20に水を掛けてフィルター材20を洗浄することが可能である。それでもフィルター材20の目詰まりが解消しない場合には、網材40を取り外し、フィルター材20を取り外して洗浄したり、砂ろ過材10を洗浄したりすることも可能である。更に、これらの耐用寿命に到達した場合には、砂ろ過材10、フィルター材20を適宜交換することが可能である。これらの洗浄、交換作業は、ろ過ユニット60を雨水貯留槽60から取り外して行うようにすれば、単体のろ過ユニット60に対してのメインテナンスが可能となるので、メインテナンスを非常に容易にすることができる。また、砂ろ過材10、フィルター材20を交換する場合も、ろ過ユニット60の単位で行うことができ、壁面全体の砂ろ過材10及びフィルター材20を交換する必要が無いので、メインテナンスの費用も少なくすることができる。
【0032】
また、図2(a)に示されるように、ろ過ユニット60は、止水ゴム50、51を更に備えてもよい。止水ゴム50、51は、ろ過ユニット60を雨水貯留槽の壁面を形成するように配置した際、隣接して配置したろ過ユニット60同士の間隙から雨水排水の漏洩を防止するべく、シール材として設けられるが、この点の詳細については後述する。なお、ろ過ユニット60の下部から上部に亘り全体的に設けられている止水ゴム50は、上述の目的で隣接するろ過ユニット60間に設けられるシール材であり、下端の止水ゴム51は、雨水貯留槽の施設側に設けられるシール材である。下端の止水ゴム51は、ろ過ユニット60の下端における雨水排水の漏洩を防止し、雨水貯留外槽に流出する雨水の総てがろ過ユニット60のフィルター部分(フィルター材20及び砂ろ過材10)を通過するようにするために設けられる。
【0033】
図3は、本実施形態に係るろ過ユニット60の上面図である。図3に示されるように、ろ過ユニット60が直方体で構成された場合、フレーム材30の上面は長方形となる。フレーム材30の上面には、必要に応じて砂投入口33を設けるようにしてもよい。砂ろ過材10が不足した場合には、砂投入口33から砂ろ過材10をフィルター材20の間に投入し、砂ろ過材10を適切な量に維持することができる。これにより、網材40及びフィルター材30を取り外すことなく砂ろ過材10の不足を補うことができ、メインテナンスを容易にすることができる。
【0034】
なお、フレーム材30の上面には、必要に応じて、クレーン等の機械による吊下げ保持を容易に行うための係合部を設けてもよい。上述のように、ろ過ユニット60は、畳1畳と同程度、又はそれよりも大きい大きさを有し、砂ろ過材10、鋼等の金属材料からなるフレーム材30及び網材40を備えるため、2t程度の重量になることが予想される。よって、このような重量物を取り扱う場合には、クレーン等の機械を用いる場合が多いため、クレーン等による支持及び搬送が容易となる構造を適宜追加してもよい。
【0035】
図4は、ろ過ユニット60間の止水構造の一例を説明するための図である。図4において、2個のろ過ユニット60が連結固定されて雨水貯水槽の壁面を形成する場合の平面図が示されている。上述のように、ろ過ユニット60は、必要に応じてユニット毎に交換等を行うため、隣接するろ過ユニット60同士を密着させて固定することはできず、僅かな間隙Gを有した状態で配置される場合が多い。このような場合、間隙Gから雨水排水が漏洩するため、雨水排水の漏洩を防止する止水構造を設けることが好ましい。
【0036】
図4において、フレーム材30は、砂ろ過材10及びフレーム材20の外周側面を覆う側面部31と、フレーム材20の周縁部を覆うエッジ部32を有して構成される。隣接するフレーム材30の側面部31同士は、間隙Gを有しており、この間隙Gから雨水排水が漏洩してしまう。そこで、隣接するフレーム材30のエッジ部32同士を跨ぐように止水ゴム50を設け、間隙Gを塞ぐ構成とする。これにより、止水ゴム50が隣接するフレーム材30同士の間隙Gをシールし、雨水排水の漏洩を防止することができる。
【0037】
なお、隣接するフレーム材30同士は、固定治具70を用いて、連結固定することが好ましい。固定治具70で隣接するフレーム材30同士を固定することにより、両者の間隙Gを塞ぐ適切な位置に止水ゴム50を設けることができ、確実に雨水排水の漏洩を防止することができる。固定治具70は、隣接するろ過ユニット60のフレーム材30同士を連結固定できる手段であれば、種々の構造を有してよい。図4においては、フレーム材30のエッジ部32の大部分を覆う幅を有して鉛直方向に延びるプレート部材71をボルト72で固定することにより、押圧部73が止水ゴム50を押圧する構造の固定治具70が固定手段として例示されているが、ろ過ユニット60同士を固定連結でき、止水ゴム50等のシール材でろ過ユニット60同士の間隙Gをシール出来る構造であれば、種々の構造であってよい。
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係るろ過ユニット60を用いた雨水処理設備の一例を示した図である。図5に示されるように、雨水処理設備は、雨水貯留外槽90の内側に、ろ過ユニット60を配列して形成した雨水貯留槽65を設けることにより構成される。雨水貯留槽65は、ろ過ユニット60を、長辺が縦、短辺が横となるように配置して複数個を並べて配列し、雨水貯留槽65の壁面を構成する。ろ過ユニット60同士の連結は、例えば、図4で説明した構造により行う。雨水貯留槽65の内部は、沈殿池80を構成し、ろ過ユニット60を通過しないで沈殿池80に沈殿する木くず等の沈殿物は、雨水排水が無くなったときに回収される。このように、本実施形態に係る雨水処理設備の雨水貯留槽65は、ろ過装置としての機能と、沈殿池80としての機能を併せ持つ。
【0039】
まず、ろ過対象となるPKSなどを含む雨水排水130は、PKS置場から側溝120を通じて集水され、前処理フィルター100に供給される。雨水排水130は、夾雑物として5mm〜30mmの大きさを有するPKS本体を含んでおり、そのまま処理設備に導水すると、ろ過ユニット60の目詰まりの原因となる場合がある。そこで、必要に応じて、雨水貯留槽65に雨水排水130の前段(上流側)に前処理フィルター100を設けるようにしてもよい。
【0040】
図6は、前処理フィルター100の一例を示した図である。前処理フィルター100は、PKS本体を含む夾雑物を除去できれば、種々のフィルター装置を用いてよいが、例えば、図6に示されるような、無電力・旋回流式の夾雑物除去装置であるユニフィルターを用いてもよい。
【0041】
図6(a)に示されるように、前処理フィルター100として用いられるユニフィルターは、導入管101から導入された雨水排水130について、2枚の誘導板102により上下旋回流を発生させる。かかる上下旋回流による自洗効果でスクリーン103の目詰まりが生じず、メインテナンスが容易である。
【0042】
図6(b)は、スクリーン103の拡大図である。スクリーン103には、丸孔が形成され、フィルタリングが可能な構成となっている。なお、丸孔の径は、用途に応じて設定してよいが、例えば、0.5mm以上に設定してもよい。
【0043】
ユニフィルターは、夾雑物除去装置として多く用いられている実績があり、電動機械構造機器を使用しておらず、またスクリーン103の目詰まりが少ないため、メインテナンスが容易である。例えば、前処理フィルター100には、このようなユニフィルターを用いてもよい。
【0044】
図5の説明に戻る。前処理フィルター100を通過した雨水排水130は、減勢槽110を介して、沈殿池80に導入される。ここで、減勢槽110は、雨水排水130の流入速度を低下させ、必要以上に夾雑物が沈殿池80内で舞い上がることを防止するために設けられている。
【0045】
雨水貯留槽65の壁面は、複数のろ過ユニット60が配列されて構成されているため、沈殿池80内の雨水排水130は、壁面まで到達すれば、全水深においてろ過ユニット60に接触し、ろ過される。ろ過された処理水は、雨水貯留外槽90内に貯留され、排水槽140を経て、排水路150から排水される。
【0046】
なお、雨水貯留外槽90の大きさは、用途に応じて種々適宜定めることができるが、例えば、横20〜30m、縦10〜20m、深さ3〜5m、ろ過フィルター60の高さは2〜3mとしてもよい。より具体的には、一例として、横25m、縦15m、深さ3.8m、ろ過フィルター60の高さを2.5mに設定してもよい。
【0047】
上述の通り、ろ過ユニット60は、ユニット毎にメインテナンスが可能であるため、必要に応じて、取り外して個々にメインテナンスを行うことができる。また、ろ過ユニット60を経由せず、沈殿池80に沈殿した凝集物は、雨水排水130が無くなった時に回収すればよい。
【0048】
このように、本実施形態に係るろ過ユニット60及びこれを用いた雨水処理設備によれば、雨水貯留槽65に貯留された雨水排水130の全水深においてろ過が可能であるとともに、ろ過ユニット60のメインテナンスを容易に行うことができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 砂ろ過材
20 フィルター材
30 フレーム材
31 側面部
32 エッジ部
33 砂投入口
40 網材
41 フレーム
50、51 止水ゴム
60 ろ過ユニット
65 雨水貯留槽
70 固定治具
80 沈殿池
90 雨水貯留外槽
100 前処理フィルター
130 雨水排水
図1
図2
図3
図4
図5
図6