(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の吐出容器では、エアゾールバルブ(ハウジング)のフランジ部を容器本体の開口部に設けられた係合段部に係合させ、その上に固定蓋を被せ、固定蓋と容器本体を溶着し一体化している。そのため、この吐出容器では、内容物を充填する内部空間と溶着部との間に係合部が位置しており、基本的には、内部空間と溶着部とは隔てられた状態にある。ところが、内容物に液化ガスや圧縮ガスなどの噴射剤が含まれているため、長期間保存しておくと内容物が係合部を通って溶着部にまで浸透し、溶着部に悪影響を及ぼすことが分かった。
【0005】
そこで本発明は、内容物による溶着部への影響を抑制することができる吐出容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吐出容器は、合成樹脂製の容器本体10と、容器本体10内と外部との連通と遮断を切り換えるバルブ11と、容器本体10に溶着され、バルブ11を容器本体10に固定する合成樹脂製の固定部材18、18C、18D、18Eとを備えており、前記バルブ11が、弾性力をもって容器本体と当接する弾性変形部12a、12m、12pを備えており、この弾性変形部12a、12m、12pが、容器本体10と固定部材18、18C、18D、18Eとの溶着部よりも内側で容器本体10と当接し、容器本体10との間に線シールを形成していることを特徴としている。
【0007】
前記容器本体10が、円筒状の首部10dを有し、首部10dの下部から内周側に突出する係合凸部10gを備えており、前記バルブ11が、係合凸部10gに係合される弾性変形部12aを備えており、前記固定部材18、18Dが、首部10d内に収容されたバルブ11を押圧する押圧部18aを備えており、前記バルブ11が固定部材18、18Dに押圧されることにより、弾性変形部12aが弾性変形し、弾性変形部12aと係合凸部10gとの間に線シールが形成されることが好ましい。
【0008】
前記バルブ11が、バルブ機構を収容するハウジング12、12A、12Dを備えており、ハウジング12、12A、12Dの外周下部が係合凸部10gと係合する弾性変形部12aであることが好ましい。前記弾性変形部12aの上部又は内側に、環状の溝12b、12iが形成されていることが好ましい。
【0009】
前記容器本体10が、円筒状の首部10dを有し、首部10dの内面に係合段部10hを備えており、前記バルブ11が、係合段部10hに当接する弾性変形部12mを備えており、前記固定部材18、18Cが、首部10d内に収容されたバルブ11を押圧する押圧部18aを備えており、前記バルブ11が固定部材18、18Cに押圧されることにより、弾性変形部12mが弾性変形し、弾性変形部12mと係合段部10hとの間に線シールが形成されることが好ましい。
【0010】
前記容器本体10が、円筒状の首部10dを有しており、前記バルブ11が、外周面に弾性変形部12pを備えており、前記バルブ11が容器本体10の首部10dに挿入されることにより、弾性変形部12pが弾性変形し、弾性変形部12pと首部10dの内面との間に線シールが形成されることが好ましい。
【0011】
前記バルブ11が、前記容器本体10および固定部材18、18C、18D、18Eと異材質の合成樹脂からなることが好ましい。
【0012】
前記容器本体10の首部10dの内周面と、前記固定部材18、18C、18D、18Eの外周面及び/又は前記バルブ11の外周面との間であって、線シールよりも外側に、溶着時に生じる融解物を収容可能な隙間Sが設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明の吐出製品は、上記いずれかの吐出容器に、1価アルコールを含有する原液と、噴射剤を充填している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吐出容器は、容器本体と固定部材との溶着部よりも内側において、弾性変形部と容器本体との間に線シールが形成されているため、内容物が溶着部に接触・浸透するのを抑制し、溶着部の劣化を防止して溶着強度を長期間維持することができる。
【0015】
容器本体が円筒状の首部を有し、首部の下部から内周側に突出する係合凸部を備えており、バルブが、係合凸部に係合される弾性変形部を備えており、固定部材が、首部内に収容されたバルブを押圧する押圧部を備えており、バルブが固定部材に押圧されることにより、弾性変形部が弾性変形し、弾性変形部と係合凸部との間に線シールが形成されている場合でも、内容物が溶着部に接触・浸透するのを抑制し、溶着部の劣化を防止して溶着強度を長期間維持することができる。
【0016】
バルブがバルブ機構を収容するハウジングを備えており、ハウジングの外周下部が係合凸部と係合する弾性変形部であれば、固定部材を容器本体に溶着する時に、自然と係合凸部に押し当てられることとなり、線シールを形成しやすい。弾性変形部の上部又は内側に、環状の溝が形成されていれば、弾性変形部を係合凸部の形状に合わせて変形させやすくなり、線シールを安定して形成することができる。
【0017】
容器本体が、円筒状の首部を有し、首部の内面に係合段部を備えており、バルブが、係合段部に当接する弾性変形部を備えており、固定部材が、首部内に収容されたバルブを押圧する押圧部を備えており、バルブが固定部材に押圧されることにより、弾性変形部が弾性変形し、弾性変形部と係合段部との間に線シールが形成される場合でも、内容物が溶着部に接触・浸透するのを抑制し、溶着部の劣化を防止して溶着強度を長期間維持することができる。
【0018】
容器本体が、円筒状の首部を有しており、バルブが、外周面に弾性変形部を備えており、バルブが容器本体の首部に圧入されることにより、弾性変形部が弾性変形し、弾性変形部と首部の内面との間に線シールが形成される場合でも、内容物が溶着部に接触・浸透するのを抑制し、溶着部の劣化を防止して溶着強度を長期間維持することができる。また、弾性変形部の弾性変形が固定部材による押圧に依存しないため、固定部材が内圧等によって変形したとしても線シールを維持し続けることができる。
【0019】
バルブが、容器本体および固定部材と異材質の合成樹脂からなれば、溶着による影響を軽減することができる。また硬度が異なれば、線シールを形成しやすくなる。
【0020】
容器本体の首部の内周面と、固定部材の外周面及び/又はバルブの外周面との間であって、溶着時に生じる融解物(溶着後に冷却されて樹脂片となる)を収容可能な隙間が設けられていれば、融解物の容器本体外へのはみ出しを抑制することができる。また、隙間が線シールよりも外側に設けられていれば、融解物が線シールよりも内側に入り込むことを防止することができ、融解物の内容物への接触や、融解物によるバルブの詰まりを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示す吐出容器1は、合成樹脂製の容器本体10と、容器本体10の開口部10eに配設され、容器本体10内と外部との連通と遮断を切り換えるエアゾールバルブ11(以下、バルブ)と、バルブ11を覆うようにして容器本体10に溶着され、バルブ11を容器本体10に固定する固定部材(固定蓋)18を有している。この吐出容器1に、原液及び噴射剤からなる内容物(エアゾール組成物)Cを充填することで、バルブ11から内容物Cを吐出する吐出製品100となる。なお、吐出製品100にはバルブ11を操作するための押ボタン(図示しない)が適宜取り付けられる。以下、上記の各構成部品について詳細に説明する。
【0023】
容器本体10は、噴射剤の圧力に耐え得る耐圧容器であって、
図1aに示すように、略円盤状の底部10aと、底部10aの外縁から立ち上がる円筒状の胴部10bと、胴部10bの上端に設けられたドーム状の肩部10cと、肩部10cの上端に設けられた円筒状の首部10dと、首部10dの上端に設けられた開口部10eとを備えている。首部10dの上部は、
図1bに示すように、それより下方の部分に比べて肉厚とされており、肉厚の差だけ径外方向に突出している。首部10dの上面には、平面視、開口部10eの周りを囲むようにして環状の突起10fが2列設けられている。ただ、環状突起10fは1列でもよく、高さを変えてもよい。この環状突起10fは、溶着時に溶けて平坦になる。
【0024】
首部10dの下部(肩部10cと首部10dとの境界近傍)からは、
図1bに示すように、内周側に向かって係合凸部10gが突出している。この係合凸部10gは周方向に連続している(環状に設けられている)。また、径内方向に向かって滑らかな凸湾曲面を形成するようにして突出している。そのため、首部10dの内径は、係合凸部10gに至るまでは略同等とされ、係合凸部10gに差し掛かると括れるようにして縮径している。なお、この係合凸部10gは、後述するハウジング12の弾性変形部12aと当接し、環状に連続する線シールを形成する。
【0025】
上記構成の容器本体10は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなる有底筒状のパリソンを射出成型するとともに、首部10dに相当する部分を保持した状態でパリソンを軸方向に伸ばしながら内部に空気を吹き込み、首部10dよりも下側を膨らませることで成型されている(いわゆる2軸延伸ブロー成型)。そのため、首部10dよりも下側(特に肩部10cと胴部10b)のブロー成型部は分子が一定に配列されており、首部10d(肩部10c)に比べて靭性に富み、衝撃を加えても割れ難い。なお、係合凸部10gはブロー成型部には位置しておらず、パリソンを成型する際に形づくられる。容器本体10の内容量としては30〜1000ml、特に50〜500mlが好ましい。また、首部10dの内径(係合凸部10gを除く内径)は10〜35mm、特に20〜30mmであることが好ましい。係合凸部10gの内周方向への突出長さは0.5〜3mmとすることが好ましい。
【0026】
バルブ11は、
図1bに示すように、容器本体10の首部10dに収容(挿入)されるハウジング12と、そのハウジング12内に収容されるバルブ機構と、バルブ機構の上面を覆うカバー16とからなる。バルブ機構は、ハウジング12内に上下動自在に挿入されるステム13と、そのステム13を常時上方に付勢する弾性体(バネ)14と、ステム13の側面に設けられたステム孔13aを閉じるステムラバー15とからなる。なお、ハウジング12の下端には、ディップチューブ17が取り付けられている。
【0027】
ハウジング12は平面形状が円形であって、全体としては略円盤状(若しくは短い円柱状)である。外径は係合凸部10gの内径よりも大であり、係合凸部10gの上側の内径よりも小である。従って、ハウジング12が開口部10eから首部10d内に挿入(収容)されると、ハウジング12の外周下部(特に角部)が係合凸部10gの凸湾曲面と当接・係合することになる。
【0028】
ハウジング12の外周下部(外周側の下側の角部)の上方には、環状の溝12bが形成されている。これは、外周下部の弾性変形を促し、弾性力をもった状態で係合凸部10gと当接できるようにするため、すなわち、弾性変形部12aとして機能させるためのものである。ハウジング12の中央には、バルブ機構を収容するための略円柱状の収容空間12cが設けられている。この収容空間12cの上端部近傍は、その他の部分に比べて拡径されており、ステムラバー15を載置するための支持段部12dが形成されている。支持段部12dの内周側には、上方に突出する環状突起12eが設けられており、ステムラバー15に先端を食い込ませることでシールを形成できるようになっている。このシールは、収容空間12c内の内容物Cが支持段部12dを通って固定蓋18の下面とハウジング12の上面との間に入り込むのを防ぐためのものである。支持段部12dの外側には、さらにカバー16を載置するための支持段部12fが設けられている。収容空間12cの底部には、その中心に連通孔12gが形成されており、さらにその下方には、ディップチューブ17を接続するためのチューブ接続筒12hが設けられている。
【0029】
このハウジング12は、ポリアセタール、ナイロン、ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂を射出成型することで形成される。ただ、容器本体10と固定蓋18とを溶着する際の影響をなるべく受けないようにするため、例えばハウジング12と容器本体10や固定蓋18とが溶着しないようにするために、容器本体10や固定蓋18とは異なる材質のものを選択するのが好ましい。また、係合凸部10gとの間に良好な線シールを形成するため、容器本体10に比べて軟質な(弾性率の小さな)材質のものを用いることが好ましい。
【0030】
ステム13は、下底を有する筒状のものであり、その側面にはステム孔13aが設けられている。ステム13の下端には、バネ14の上端に差し込むための突起13bが設けられている。バネ14としては、ハウジング12とは別体の金属製のコイルバネを用いるが、これに代えて合成樹脂製のバネや、ハウジング12に一体とされた板バネなど、種々公知のバネを用いることができる。
【0031】
ステムラバー15は、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、オレフィン系エラストマーなどのゴムを円盤状に成型したものであって、その中心にはステム13を挿通するための孔が設けられている。このステムラバー15は、定常時(非吐出時)にはステム13のステム孔13aを塞ぎ、使用時(吐出時)には、ステム13の下動に伴ってステム孔13aから離れ、容器本体10内と外部との連通を許容する。
【0032】
カバー16は薄肉のリング状であって、固定蓋18とステムラバー15との間に介在し、ステムラバー15から浸透してくる内容物Cの固定蓋18への接触を防止するものである。従って、カバー16の材質としては、ポリプロピレンやポリエチレンなど耐薬品性に優れた合成樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
固定蓋18は、容器本体10の首部10d内に収容されたバルブ11を押圧する円盤状の押圧部18aと、押圧部18aの外周から径外方向に延出され、首部10dの上面に溶着されるフランジ部18bとを備えている。押圧部18aの厚み(上下方向の長さ)は、フランジ部18bの下面を首部の上面に溶着させた状態において、ハウジング12の弾性変形部12aを弾性変形させた状態で係合凸部10gに押し当てることができるように調整されている。押圧部18aの外径については、ハウジング12を均等に押圧できるようにハウジング12の外径と略同等とされている。また、容器本体の環状突起10fや首部10d上面の一部、固定蓋18のフランジ部18bの下面の一部が溶着時に溶けて、溶着部からはみ出たもの(融解物:樹脂)を収容するために、容器本体の開口部10eの内径よりも小とされ、首部10dの内周面との間に隙間Sを形成している。なお、首部10dの内周面と押圧部18aの外周面の間に収容された樹脂は室温に戻ると固形化する。この固形化した樹脂が小さな破片となって容器本体10内に落下するとバルブ11での詰まりの原因になるが、隙間Sよりも内側(内容物Cに近い側:上流側)に線シールが形成されているため、容器本体10内に落下することはない。フランジ部18bの外径は、首部の外径と略同等とされている。この固定蓋18には、その中心にステム13を挿通するための孔が設けられている。
【0034】
上記構成の固定蓋18は、容器本体10の首部10dの上面、ハウジング12の上面、カバー16の上面を覆うとともに、容器本体10の首部10dの上面に溶着される。この際、ハウジング12及びカバー16が押圧部18aによって下方に押圧され、ハウジング12の弾性変形部12aが弾性変形しながら係合凸部10gに係合し、弾性変形部12aの角と係合凸部10gの凸湾曲面との間に環状に連続する線シールが形成される。
【0035】
固定蓋18の容器本体10への溶着方法としては、超音波溶着、熱溶着、高周波溶着等、容器本体10と固定蓋18の材料に応じて選択される。特に、容器本体10及び固定蓋18をポリエチレンテレフタレートとする場合は、超音波溶着とすることが好ましい。なお、固定蓋18は、容器本体10と一体化できる点、溶着部の強度の点から容器本体10と同じ合成樹脂とすることが好ましい。ただ、容器本体10と溶着一体化できれば特に限定されるものではない。
【0036】
なお、超音波溶着により容器本体10と固定蓋18との溶着を行う場合には、固定蓋18の上方からホーンを押し当てることで行う。容器本体10の首部10dの上面に環状突起10fを設けているため、超音波振動が環状突起10fに集中することとなり、首部10dの上面とフランジ部18bの下面との間をムラなくきれいに且つ短時間に溶着することができる。
【0037】
固定蓋18を固定した後、ステム13から原液と噴射剤を容器本体10内に充填すれば、ステム13の操作によって内容物Cを吐出できる吐出製品100として使用することができる。なお、噴射剤を充填してから原液を加圧充填してもよい。この場合は、原液の充填を別の充填工場で充填することができる。さらに、容器本体10に原液を充填し、容器本体10の係合凸部10gにハウジング12を係合し、ハウジング12の収容空間12cにバルブ機構を挿入し、固定蓋18を容器本体10の首部10d上面に被せて超音波溶着などにより一体化し、噴射剤を充填してもよい。
【0038】
この吐出製品100は、容器本体10と固定蓋18との溶着部よりも内側(内容物Cに近い側:上流側)で、容器本体10の係合凸部10gとハウジング12の弾性変形部12aとの間に線シールが形成されている、換言すれば、内容物Cを収容している内部空間と溶着部との間にシールが介在しているため、内容物Cが溶着部に接触又は浸透することがない。特に、弾性変形部12aが弾性力をもった状態で係合凸部10gと当接しているため、シールが安定しており、長期に亘って溶着部への内容物Cの浸透を抑制することができる。そのため、原液がエタノールのような1価アルコールを原液中に20質量%以上含有し、液化ガスや圧縮ガスなどの噴射剤により0.4MPa以上に加圧された、浸透しやすい内容物Cであっても、溶着部の劣化が防止される。
【0039】
次に、
図2に示す吐出容器1Aについて説明する。この吐出容器1Aのハウジング12Aの下面には、外周から内側(径内方向)に入った部分に溝12iが形成されている。この溝12iは収容空間12cを囲むようにして環状に連続している。また、外周下部は先細りとなっている。さらに、先細りとなることで形成された傾斜面が平坦ではなく、凸湾曲面12jとなっている。そして、この凸湾曲面12jを係合凸部10gの凸湾曲面に係合させることで、環状に連続する線シールを形成している。
【0040】
このような構成であっても、固定蓋18によってハウジング12Aを下方に押圧することで外周下部を弾性変形させることができる、すなわち、弾性変形部12aとすることができるため、内部空間から溶着部への内容物Cの浸透を長期に亘って安定して抑制することができる。
【0041】
また、この吐出容器1Aでは、固定蓋18の押圧部18aの外周面とフランジ部18bの下面との間の入隅部に傾斜面(隅肉)18cを設けている。この傾斜面18cは、溶着時に容器本体10の首部10dの内周端(内周側の上端角部)に当接し、ともに溶けることで、首部10dの内周面と押圧部18aの外周面との間にも溶着部を形成し、溶着強度を高くしている。なお、上記吐出容器1と同様に、この吐出容器1Aにおいても、固定蓋18の押圧部18aの外周面と、容器本体10の首部10dの内周面との間に隙間Sが設けられているため、溶着部からはみ出す樹脂は隙間Sに収容されることになる。また、隙間Sよりも内側に線シールが形成されているため、隙間Sに収容された樹脂が内容物Cに混入することもない。
【0042】
他の構成については、
図1に示す吐出容器1と同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0043】
図3に示す吐出容器1Bでは、容器本体10の首部10dの内周側に係合段部10hが設けられているとともに、ハウジング12Bからこの係合段部10hに係合するフランジ部12kが延設されている。そして、フランジ部12kの下面には、下方(係合段部10h)に向かって突出する断面略三角形の環状突起12mが設けられている。なお、係合段部10h、フランジ部12k、環状突起12mはいずれも周方向に連続している。
【0044】
上記構成の吐出容器1Bでは、ハウジング12Bを容器本体10の首部10d内に挿入すると、環状突起12mの先端が係合段部10hの上面と当接する。この状態で固定蓋18のフランジ部18bを容器本体10の首部10dの上面に溶着すると、固定蓋18の押圧部18aでハウジング12Bが押圧されて環状突起12mが弾性変形し、弾性力をもった状態で係合段部10hの上面と当接する。すなわち、環状突起12mが弾性変形部として機能する。そのため、環状突起12mと係合段部10hとで環状に連続する線シールが形成されることとなり、内部空間から溶着部への内容物Cの浸透を長期に亘って安定して抑制することができる。また、上記他の吐出容器1、1Aと同様、隙間Sよりも内側に線シールが形成されているため、隙間Sに収容された樹脂が内容物Cに混入することもない。
【0045】
他の構成については、
図1に示す吐出容器1と同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、本吐出容器1Bでは、容器本体10に係合凸部10gが形成されていないが、形成しても良い。また、溶着方法として超音波溶着を用いる場合には、環状突起12mが溶けないように、固定蓋18や容器本体10と異なる材質の合成樹脂でハウジング12を成型するのが好ましい。例えば、固定蓋18や容器本体10がポリエチレンテレフタレートからなれば、ハウジング12Bの材料としてポリアセタールを用いることが好ましい。
【0046】
図4に示す吐出容器1Cでも、環状突起12mがハウジング12Cのフランジ部12kの下面から下方に向かって延設されている。この環状突起12mは、ハウジング12Cが固定蓋18Cによって押圧されることで、容器本体10の係合段部10hの上面と当接、弾性変形し、両者間に環状の線シールを形成している。従って、容器本体10内に充填された内容物Cが線シールを越えて溶着部に浸透することはない。また、固定蓋18Cのフランジ部18bの下面と、容器本体10の首部の上面とを溶着した際の融解物(樹脂)は、線シールよりも内側に入り込むこともない。融解物のうち、内側に向かって流れたものは、ハウジング12Cのフランジ部12kの外周面と容器本体10の首部10dの内周面との間に形成された隙間Sに収容される。
【0047】
融解物のうち、外側(容器本体10外)に向かって流れたものは、首部10dの外周面から水平方向に突出した固定蓋18Cのフランジ部18bの下面(首部10dの外周面とフランジ部18bの下面とで構成された入隅部)に留まる。この吐出容器1Cには、容器本体10の首部10dや固定蓋18C、バルブ11を覆うようにして肩カバー20が取り付けられるが、フランジ部18bの下面によって融解物が無秩序にはみ出すのを抑制できる、換言すれば、融解物がフランジ部18bの外周面よりも突出することが無いため、肩カバー20の取り付けに際し、融解物が邪魔になることはない。
【0048】
なお、吐出容器1Cでは、バルブ機構11が
図3に示す吐出容器1Bに比べて上方に位置しており、それに合わせてハウジング12Cや固定蓋18Cの形状が他の吐出部材1Bのものと大きく異なっている。具体的には、ハウジング12Cのフランジ部12kの下面がそのまま収容空間12c近傍まで延びており、実質的にフランジ部12kの延出長さが長くなっている。また、バルブ機構11が上方に位置していることで、ハウジング12Cの上面に段差12nが形成されている。固定蓋18Cは、この段差12nに合わせて中心部が盛り上がった帽子状となっている。また、全域に亘って厚みがほぼ均一となっている。なお、この固定蓋18Cでは、フランジ部18bがハウジング12Cのフランジ部12kを押圧する押圧部としても機能している。肩カバー20は、首部10dの外周を覆う大筒部20aと、固定蓋18Cの押圧部18aを覆う小筒部20bと、大筒部20aの上端と小筒部20bの下端を繋ぐリング部20cとから構成されている。大筒部20aの内面には、首部10dの外周面に設けられた傾斜面10iに係合する係合突起20dが設けられており、容器本体10に嵌着された肩カバー20の意図しない抜けを抑制している。
【0049】
他の構成については、
図3に示す吐出容器1Bと同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0050】
図5に示す吐出容器1Dは、
図2に示す吐出容器1Aと同じタイプであって、ハウジング12Dの外周下部に凸湾曲面12jが形成されており、この凸湾曲面12jを容器本体10の係合凸部10gの凸湾曲面に弾性力をもって押し付けることで、環状に連続する線シールを形成している。
【0051】
固定部材18Dはカップ状であって、円筒部18dの外径が容器本体10の首部10dの内径と同じ、若しくはやや大とされている。そして首部10d内に押し込まれるにして挿入(圧入)されており、固定部材18Dの円筒部18dの外周面と容器本体10の首部10dの内周面とが圧着している。そのため、固定部材18Dは、凸湾曲面12jを含む弾性変形部12a(溝よりも外側の片持ち部分)からの反発力を受けても上方にずれ動くことは無く、短期間であれば弾性変形部12aを弾性変形させたままの状態で維持する(ハウジング12Dの押圧状態を維持する)ことができる。
【0052】
弾性力による線シールを長期間安定したものとするため、この吐出容器1Dでも固定部材18Dと容器本体10とを溶着している。具体的には、容器本体10として透明な容器を用いるとともに、固定部材18Dを着色するなどして透光性の低い状態とし、水平方向(
図5に示す矢印の方向)からレーザーを照射することで、容器本体10を透過するレーザーにより固定部材18D(円筒部18d)の外周面を溶かし、容器本体10の首部10dの内周面と、固定部材18D(円筒部18d)の外周面とを溶着している。なお、
図5では、首部10dの上端近傍の肉厚の部分ではなく、その下方の薄肉とされた部分にレーザーを照射しているが、肉厚の部分に照射しても良い。また、照射方向としては水平方向に限らず、斜めに傾けても良い。レーザーは首部10dの全周に亘って照射され、固定部材18Dはその外周の全周が首部10dと溶着されている。
【0053】
溶着部の下方には、
図5に示すように、ハウジング12Dの外周面と容器本体10の首部10dの内周面との間に、融解物を収容可能な隙間Sが形成されている。隙間Sの下方には線シールが形成されている。従って、融解物が内容物を収容する内部空間に入り込むことも無い。また、線シールの外側に溶着部が位置しているため、溶着部が内容物によって侵されることもない。他の構成については、
図2に示す吐出容器1Aと同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0054】
図6に示す吐出容器1Eでは、ハウジング12Eの外周面に環状突起12pが2列、全周に亘って設けられている。この環状突起12pは、
図6cに示すように断面略三角形とされている。また、ハウジング12Eの容器本体10内への挿入方向と反対の方向に傾いている。そのため、ハウジング12Eを容器本体10内に挿入し易い。また、ハウジング12Eを容器本体10の首部10dに挿入すると、倒れるようにして弾性変形し、首部10dとの間で線シールを形成する(
図6b参照)。さらに、内圧がかかってハウジング12Eが上方に移動しようとすると「かえし」として機能し、首部10dの内面との当接が強くなり、線シールが強固なものとなる。
【0055】
ところで上記構成の吐出容器1Eは、バルブ機構を2つ備えている。ハウジング12Eは全体としては略円柱状であるが、円柱状の収容空間12cを2つ備えており、2つのバルブ機構を保持している。そして一方のバルブ機構にはディップチューブ17が接続され、他方のバルブ機構には流路部材22を介して内袋(パウチ)21が接続されている。なお、流路部材22は、棒体の表面に複数の突条22aを千鳥状に設けることで、パウチ21の内面同士の密着を抑制し、内容物C2の流路を確保するためのものである。固定蓋18Eは、全体としては略円盤状であって、2つのステムを外部に突出させるための孔が2つ設けられている。この固定蓋18Eは、上記他の固定蓋と同様に、容器本体10の係合段部10hに係合されたハウジング12Eを上から押圧し、ハウジング12Eの上下方向の移動を規制している。また、フランジ部18bが、容器本体10の首部10dの上面に溶着されている。
【0056】
容器本体10内に、原液と噴射剤とからなる内容物C1が充填され、パウチ21内に原液のみからなる内容物C2が充填されて、内容物C1と内容物C2とを吐出可能な吐出製品200となる。なお、図示はしていないが、通常、吐出製品200には2つのステム13、13に跨って押ボタンが取り付けられ、一度の操作で2つの内容物C1、C2を同時に吐出できるよう構成される。なお、パウチ21からの内容物C2の吐出は、容器本体10内に充填された噴射剤の圧力によって行われる。他の構成については、
図3に示す吐出容器1Bと同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0057】
以上に、この発明の代表的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、ハウジング12、12A、12Dの材質として弾性変形しやすい材質を用いた場合には、外周下部の近傍に、外周下部を片持ち状態とするための溝12b、12iを設ける必要はない。また、
図1、
図3に示す吐出容器においては、溝12b内にOリング19を配置しても良い(
図1b、
図3の仮想線)。この場合、弾性変形部12aと係合凸部10gとの間や、環状突起12mと係合段部10hとの間の線シールに加えて、Oリング19によるシールが形成されるため、シールが2重となり、溶着部への内容物Cの浸透をより一層抑制することができる。溶着方向としては上下方向に限らず、横方向であっても良い。すなわち、押圧部18aの外周面と首部10dの内周面とを溶着しても良い。