(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960779
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】付属物取付構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20211025BHJP
G09F 7/18 20060101ALI20211025BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
E04F13/08 H
G09F7/18 Q
F16B5/02 B
F16B5/02 G
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-119075(P2017-119075)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2019-2227(P2019-2227A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 信之
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信也
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−182282(JP,A)
【文献】
特開平07−129090(JP,A)
【文献】
特開平07−018815(JP,A)
【文献】
特開2001−146831(JP,A)
【文献】
特開2009−263937(JP,A)
【文献】
特開2007−9450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
G09F 7/18
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネルを互いに独立して建物の躯体に取り付けてなる外壁に、前記複数のパネルにまたがって付属物を締結具によって取り付ける付属物取付構造であって、
前記締結具は、前記複数のパネルのそれぞれに2つ設けられ、かつそれぞれのパネルから突出した形状をなし、
前記付属物は、前記複数のパネルの内、1つのパネル以外のパネルに設けられた2つの締結具に対応する部分にそれぞれ個別の第一締結具挿通孔を有するとともに、前記1つのパネルに設けられた2つの締結具に対応する部分にそれぞれ個別の第二締結具挿通孔を有し、
前記第一締結具挿通孔は、前記第二締結具挿通孔よりも大きな内径を有し、
前記付属物は、前記第一締結具挿通孔及び前記第二締結具挿通孔にそれぞれ前記締結具を挿通させた状態で、前記締結具に設けた2枚の座金の間に挟持され、さらにこれら座金を介して2つのナットの間に挟持されて前記締結具に保持されており、
前記パネルと前記付属物との間には、前記第二締結具挿通孔に挿通する締結具に設けた前記ナット及び前記座金を覆うようにシーリング材が設けられていることを特徴とする付属物取付構造。
【請求項2】
前記第一締結具挿通孔及び前記第二締結具挿通孔は、円形の孔であることを特徴とする請求項1に記載の付属物取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁に看板等の付属物を取り付ける構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁に看板等の付属物を取り付ける構造としては、付属物を外壁にボルトで固定しているものがある(例えば、特許文献1参照)。この構造は、付属物の取付部にボルト挿通孔を設け、ボルト挿通孔にボルトを挿通させ且つ、ボルトの頭部と外壁とで取付部を挟むようにして、付属物を外壁に取り付けている。
【0003】
ところで、外壁としては、パネル式の外壁であって、例えば、上下左右に連続するパネルからなる外壁がある。この外壁においては、パネルは、地震時における躯体の変形に追従可能となるように、それぞれ独立して建物の躯体に取り付けられている(例えば、特許文献2参照)。このようにすることにより、地震時におけるパネルの損傷を防止している。具体的な取付構造としては、それぞれのパネルの上端部中央と下端部中央に突設されたOボルトを梁から突設された金物に取り付けることにより、パネルを建物の躯体に取り付けている。
【0004】
付属物をこのようなパネル式の外壁の2枚のパネルにまたがって取り付ける場合、付属物は、2枚のパネルにそれぞれ単にボルトで固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−129090号公報
【特許文献2】特開平8−312041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような付属物取付構造であると、地震等の外力によって2枚のパネルがそれぞれ独立して動いた場合、付属物は、一方のパネルの動きに追従しようとするだけでなく、他方のパネルの動きにも追従しようとする。従って、その結果、付属物を変形する方向に力がかかり、付属物或いはパネルに損傷が生じる恐れがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、建物の躯体に互いに独立して取り付けられた2枚のパネルにまたがって付属物を取り付ける場合であっても、地震等の外力によりパネルもしくは付属物が損傷する恐れの少ない付属物取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る付属物取付構造は、複数のパネルを互いに独立して建物の躯体に取り付けてなる外壁に、前記複数のパネルにまたがって付属物を締結具によって取り付ける付属物取付構造であって、前記締結具は、前記パネルから突出した形状をなし、前記付属物は、締結具挿通孔を有し、前記締結具を前記締結具挿通孔に挿通させた状態で前記締結具に保持されており、前記複数のパネルの内、1つのパネル以外のパネルの前記締結具が挿通されている前記締結具挿通孔は、前記1つのパネルの前記締結具が挿通されている前記締結具挿通孔よりも大きな内径を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る付属物取付構造においては、前記締結具挿通孔は、円形の孔であるとよい。
【0010】
本発明に係る付属物取付構造においては、前記パネルは、パネル側挟持部を有し、前記締結具は、突出方向先端側に挟持部を有し、前記付属物は、前記パネル側挟持部と前記挟持部とに挟持されて前記締結具に保持されているとよい。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成によれば、付属物を取り付ける複数のパネルの内、1つのパネル以外のパネルに備えられた締結具が挿通されている締結具挿通孔が、1つのパネルに備えられた締結具が挿通されている締結具挿通孔よりも大きいので、1つのパネル以外のパネルに備えられた締結具が挿通されている締結具挿通孔内に締結具が移動可能な隙間があり、地震等の外力がかかった際に複数のパネルが独立して動いたとしても、その際の変位をその隙間で吸収でき、パネルもしくは付属物が損傷することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1である付属物取付構造の平断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した付属物取付構造の正断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した付属物取付構造のアンカーボルトとナットと座金とを取り外した状態を示す正断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した付属物取付構造の側断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した付属物取付構造の第二取付部を示す要部拡大断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した付属物取付構造の第一取付部を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る付属物取付構造の好適な実施の形態について
図1〜
図6に基づいて詳細に説明する。本実施の形態では、一例として、看板等の付属物を外壁101を構成する左右方向に隣合う2枚のパネル2に取り付ける場合の付属物取付構造100について説明する。
【0014】
パネル2は、長方形板状をなし、上下左右に並設されている。パネル2は、所謂ロッキング構法によって建物の躯体に配設されている。ロッキング構法は、地震や風圧等による躯体の上側構造体と下側構造体との層間変形に対して、各パネル2が1枚ずつ独立して下側構造体に対して微小回転し、パネル2間の目地がずれることにより、その層間変形に追随する取付構法である。パネル2が層間変形に追随することにより、パネル2が損傷することを防止することができる。
【0015】
パネル2は、例えば、
図4に示すように、上部中央が上側梁51(上側構造体)に金具55を介してボルト54によって取り付けられ、下部中央が下側梁52(下側構造体)に金具53を介してボルト54によって取り付けられている。パネル2には、付属物1に対応する位置に複数のアンカーボルト41(締結具)が配設されている。パネル2には、アンカーボルト41が挿通されるボルト挿通孔24が形成されている。アンカーボルト41は、ボルト挿通孔24に挿通されるとともに、座金47を介してナット46(パネル側挟持部)によってパネル2に固定されている。アンカーボルト41は、先端がパネル2の表面から突出するように配設されている。
【0016】
付属物1は、
図1に示すように、表示部1Aと取付部1Bとを備えている。表示部1Aは、長方形板状の表示本体部10と、表示本体部10の四方を表示本体部10と垂直に折り曲げた形状に形成された表示耳部11と、を有している。取付部1Bは、長方形板状の取付本体部20と、取付本体部20の四方を取付本体部20と垂直に折り曲げた形状に形成された取付耳部21と、を有している。表示部1Aと取付部1Bは、それぞれ、表示耳部11と取付耳部21を重ね合わせて、ビス30で互いを固定している。
【0017】
取付本体部20は、
図3に示すように、付属物1が取り付けられる2枚のパネルのうち一方のパネル2に取り付けられる第一取付部25と、他方のパネル2に取り付けられる第二取付部26を有している。第一取付部25には、2つの第一締結具挿通孔22が形成されている。第一締結具挿通孔22は、
図3において、左側に上下に配置されている。第一締結具挿通孔22には、パネル2に配設されたアンカーボルト41のねじ部分が挿通されている。第一締結具挿通孔22は、後述する第二締結具挿通孔23より大きな穴径を有した円形に開口した孔である。第一締結具挿通孔22の穴径は、設計時に設定した、上側梁51と下側梁52との間の外壁101に沿った方向の最大の層間変位を吸収可能な大きさに形成されている。最大の層間変位は、例えば、層間変形角が1/200の場合の層間変位である。ボルト挿通孔24は、
図3において、第一締結具挿通孔22の上下左右の中心となる位置に配設されている。従って、アンカーボルト41は、
図3において、第一締結具挿通孔22の上下左右の中心に挿通されている。
【0018】
図6に示すように、アンカーボルト41の突出方向先端には、座金43を介してナット42(挟持部)が嵌め込まれている。座金43は、取付本体部20の表裏に配設されている。座金43は、第一締結具挿通孔22の径よりも大きな外径を有したものである。座金43の内径は、第一締結具挿通孔22の径よりも小さい。第一取付部25は、座金43と座金43とによって挟持され、更に、座金43を介してナット42とナット46とによって挟持されている。パネル2とアンカーボルト41との間は、シーリング材48が充填されている。
【0019】
第二取付部26には、
図3に示すように、2つの第二締結具挿通孔23が形成されている。第二締結具挿通孔23は、
図3において、右側に上下に配置されている。第二締結具挿通孔23には、パネル2に配設されたアンカーボルト41のねじ部分が挿通されている。第二締結具挿通孔23は、アンカーボルト41を挿通するのに必要十分な穴径を持つ円形に開口した孔である。
【0020】
図5に示すように、アンカーボルト41の突出方向先端には、座金44を介してナット42が嵌め込まれている。取付本体部20の裏側には、座金45が配設されている。座金44,45は、第二締結具挿通孔23よりも大きな外径を有したものである。座金44,45の内径は、第二締結具挿通孔23の径と同等の大きさである。
【0021】
第二取付部26は、座金44と座金45とによって挟持され、更に、座金44と座金45とを介してナット42とナット46とによって挟持されている。座金47とナット46はシーリング材49で覆われている。パネル2とアンカーボルト41との間は、シーリング材が充填されている。このようにして、付属物1は、アンカーボルト41の先端を締結具挿通孔22,23に挿通させた状態でアンカーボルト41に保持されている。
【0022】
上述したように、第一締結具挿通孔22は、第二締結具挿通孔23よりも内径が大きな孔であるので、第一締結具挿通孔22には、アンカーボルト41のねじ部分が付属物1に対して付属物1に沿った方向に移動する隙間がある。従って、例えば、地震等の外力がかかった際に2枚のパネル2がそれぞれ独立して下部構造体に対して微小回転したとしても、その際の変位をその隙間で吸収でき、パネル2もしくは付属物1が損傷することを防止することができる。
【0023】
尚、本実施の形態では、隣り合う2枚のパネル2に付属物1を取り付けているが、付属物1を取り付ける2枚のパネル2の間に、他のパネル2が配設されていてもよい。本実施の形態では、左右に並ぶパネル2に付属物1を取り付けているが、上下に並ぶパネル2に付属物1を取り付けても良いし、斜めに並ぶパネル2に付属物を取り付けても良い。本実施の形態では、第一締結具挿通孔22は円形の孔であるが、円形でなくてもよく、例えば、楕円形や多角形でもよい。本実施の形態では、アンカーボルト41が締結具を構成しているが、ボルトによって締結具を構成してもよい。その際は、ボルトの頭が挟持部であり、ボルトのねじ部分が棒状部となる。その際のパネル側挟持部は、パネル2の板面であってもよい。
【0024】
また、例えば、左右方向に並ぶ3枚のパネル2のそれぞれにアンカーボルト41を設け、付属物1を取り付けてもよい。その際には、付属物1の取付本体部20において、中央のパネル2に取り付ける部分に第二取付部26を形成し、中央のパネル2の両隣にあるパネル2に取り付ける部分に第一取付部25を形成してもよい。第二取付部26においては、第二締結具挿通孔23を4つ設けてもよい。この場合、中央のパネル2に取り付けられるアンカーボルト41も4つとなる。
【0025】
また、左右方向に並ぶ3枚のパネル2のそれぞれにアンカーボルト41を設け、付属物1を取り付ける場合に、付属物1の取付本体部20において、左端のパネル2に取り付ける部分に第二取付部26を形成し、中央及び右端のパネル2に取り付ける部分に第一取付部25を形成してもよい。その際に、第一取付部25においては、第一締結具挿通孔22を4つ設けてもよいし、第二取付部26においては、第二締結具挿通孔23を4つ設けてもよい。この場合、各パネル2に取り付けられるアンカーボルト41も4つとなる。
【0026】
複数のパネル2に付属物1を取り付ける際に、付属物1の取付本体部20において、複数のパネル2の内の1つのパネルに対応するように第二取付部26を設け、他のパネル2に対応する部分に第一取付部25を設ければよい。第一取付部25における第一締結具挿通孔22、第二取付部26における第二締結具挿通孔23及びそれらに対応するアンカーボルト41は、複数あってもよいし、1つでもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 付属物
2 パネル
25 第一取付部
26 第二取付部
41 アンカーボルト(締結具)
42 ナット(挟持部)
46 ナット(パネル側挟持部)
100 付属物取付構造
101 外壁