(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、図面の厚み比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
実施形態に係る電池100は、例えば、
図2に示される車両198の電源として適用され、
図1に示すように、本体部110、減圧装置190および制御部194を有する。車両198は、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車である。電池100は、高エネルギー密度化することが容易であるため、例えば、1回の充電あたりの走行距離を延長させることが可能である。
【0013】
本体部110は、
図3に示すように、剛性を有するセルケース120、可撓性を有する蓋部材170、カバープレート176、および変位吸収部180を有する。
【0014】
本明細書において、「剛性を有するセルケース120」とは、セルケース120に外部から力が作用した場合に、セルケース120が容易に変形せず、内部に配置した積層体140を十分に保護できる程度に、セルケース120が剛体であることを意味する。また、「可撓性を有する蓋部材170」とは、セルケース120の内部を減圧する(セルケース120の内部圧力を外部圧力(少なくとも大気圧)よりも低くする)ことにより、外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧によって蓋部材170が変形できる程度に、蓋部材170が柔軟性を有していることを意味する。
【0015】
セルケース120は、高い剛性を有しており、略矩形の底面122と、底面を取り囲む側壁部124とを有し、その上面が開口部126を構成し、その内部に、積層体140が配置されている。積層体140は、積層されている単セル10、強電タブ150、152およびスペーサー160、162を有する。開口部126は、単セル10の積層方向Sに関する積層体140の上面142に相対するように位置決めされている。
【0016】
強電タブ150、152は、例えば、略板状の銅であり、積層体140から電流を取り出すために使用され、最下層に位置する単セル10および最上層に位置する単セル10に当接している。
【0017】
スペーサー160、162は、積層体140に付加される振動を吸収する機能を有する絶縁シートであり、強電タブ150、152の外側に配置されている。つまり、スペーサー160、162は、積層体140の上面(一方の面)142および下面(他方の面)144に位置している。スペーサー160、162は、必要に応じ、適宜省略することも可能である。
【0018】
蓋部材170は、開口部126を密閉しており、可撓性を有する膜から形成されている。可撓性を有する膜は、例えば、ウレタンゴム、または、比較的薄肉なアルミニウムもしくはステンレスから形成される。
【0019】
カバープレート176は、蓋部材170を覆うように配置されて、蓋部材170をガードしている。カバープレート176は、例えば、比較的厚肉なアルミニウム等の良好な剛性を有する軽量の材料から構成されるバックアッププレートである。カバープレート176および蓋部材170は、ビス等の締結部材を利用してセルケース120に固定されている。締結部材は、電池100を車両198に搭載するために使用される締結部材として兼用することも可能である。
【0020】
変位吸収部180は、蓋部材170とカバープレート176との間に配置されており、積層体140の体積変位に追従して積層方向Sに拡張収縮自在である。また、変位吸収部180は、単セル10に含まれる電極層と対向している。
【0021】
変位吸収部180は、弾性体である。弾性体としては、例えば、コイルばね、皿ばね、グリッドばね等の金属ばね、ゴム、または、不織布、紙等の多孔質弾性体が挙げられるが、これらに限定されない。変位吸収部180を構成する弾性体の弾性率は、例えば、25℃で0.1〜4.0MPaであるが、これに限定されない。弾性体の弾性率は、例えば0.1MPaより小さくてもよいが、小さ過ぎると弾性体が容易に変形してしまい、積層体140に対して所定の電池性能が発揮されるような加圧力を付与することが困難になる。また、弾性体の弾性率は、例えば4.0MPaよりも大きくてもよいが、大き過ぎると変位吸収部180が変形し難くなり、積層体140の体積変位に対する追従性が低下する。弾性体の弾性率は、従来公知の弾性率測定方法によって求めることができ、例えば、荷重試験器(JIS K 6272の4.(試験機の等級分類)に規定する力計測系1級以上の精度を持つ試験装置を使用。例えば、株式会社今田製作所の引張圧縮試験機SDWS)で弾性体に所定の荷重をかけた時の変位量から算出する方法によって求めることができる。弾性体がゴムの場合、JIS K 6254:2010に記載のA法によって求めることができる。
【0022】
変位吸収部180は、蓋部材170とカバープレート176との間にひずませた状態で保持されており、そのひずみは、例えば、1〜95%である。
【0023】
変位吸収部180が積層方向Sにおいてひずむことが可能な長さは、同方向において想定される積層体140の全変位量よりも大きく、変位吸収部180は、積層体140で生じる体積変位に追従して拡張収縮できる。
【0024】
減圧装置190は、真空ポンプから構成される圧力付与装置であり、セルケース120の内部を減圧してセルケース120の内部圧力を大気圧(外部圧力)よりも低くするために使用される。制御部194は、減圧装置190を制御するために使用される。
【0025】
開口部126を覆っている蓋部材170は、減圧装置190によって大気圧よりも低く減圧されたセルケース120の内部圧力とその外部の大気圧との差圧によって、密閉を維持した状態で変形している。蓋部材170は、そのように変形して積層体140の上面142と当接しており、当接した面に対し、差圧に基づく圧力を付与している。
【0026】
また、積層体140には、変位吸収部180の弾性力も加わっており、積層体140の押し付け力は、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力、および、変位吸収部180の弾性力から構成されている。
【0027】
積層体140は、そのような押し付け力によって、高剛性のセルケース120に強固に固定されているため、電池100を車両198に固定することにより、電池100全体が安定する。
【0028】
また、セルケース120は、絶縁フィルム層128、強電用コネクタ130、132、排気用コネクタ134、圧力解放弁136、圧力センサー138、および弱電用コネクタ(不図示)を、さらに有する。
【0029】
絶縁フィルム層128は、底面122および側壁部124の内壁に形成されている。底面122の絶縁フィルム層128上には、スペーサー162が位置決めされている。強電用コネクタ130、132は、側壁部124に気密的に取り付けられており、かつ、強電タブ150、152と電気的に接続されている。排気用コネクタ134は、側壁部124に気密的に取り付けられており、かつ、減圧装置190からの配管と連結されている。したがって、減圧装置190は、セルケース120の内部の空気を排気して、セルケース120の内部を減圧することが可能である。
【0030】
圧力解放弁136は、側壁部124に気密的に取り付けられており、例えば、予期せぬ原因により、セルケース120の内部圧力が過度に上昇した際に、セルケース120内部の気体を排出し、セルケース120の内部圧力を降下させるために使用される。圧力解放弁136における気体を排出する機構は、特に限定されず、例えば、所定の圧力で開裂する金属の薄膜を利用することが可能である。
【0031】
圧力センサー138は、セルケース120の内部に配置され、セルケース120の内部圧力を計測するために使用される。弱電用コネクタ(不図示)は、側壁部124に気密的に取り付けられており、積層体140に含まれる単セル10の電圧を監視(検出)するために使用される。
【0032】
減圧装置190は、圧力センサー138によって計測された内部圧力に基づいて、制御部194によって制御されている。減圧装置190は、圧力センサー138によって計測された内部圧力が上限値以上になった場合、稼働されて、セルケース120の内部を減圧するように構成されている。
【0033】
内部圧力の上限値は、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧を考慮して設定されている。したがって、セルケース120の内部圧力の予期せぬ上昇が防止される一方、良好な押し付け力が確保される。内部圧力の上限値は、例えば、0.25気圧に設定されており、この場合、変位吸収部180の弾性力とともに十分な押し付け力を得ることが可能である。
【0034】
減圧装置190は、圧力センサー138によって計測された内部圧力が下限値に到達した場合、セルケース120の内部の減圧を停止するように構成されている。内部圧力の下限値は、例えば、0.15気圧に設定されており、この場合、多目的で利用される真空度と同レベルのため、電池100が搭載される装置(車両198)において別の用途で利用される減圧装置(真空源)を、減圧装置190として兼用することが可能である。
【0036】
積層体140は、
図4に示すように、単セル10が積層方向Sに積層されて構成している。積層体140は、電気自動車用の二次電池として用いられる場合には、その大きさは用紙サイズで示せば例えばA4以上とすることができる。
【0037】
積層体140において積層されている単セル10は直列接続されている。単セル10は、
図4に示すように、正極集電体層20と、正極層30と、セパレーター40と、負極層50と、負極集電体層60と、が順に積層されて構成している。また、単セル10は、正極層30、ならびに負極層50の周辺部分を封止するシール部80を有する。
【0038】
正極集電体層20および負極集電体層60は、導電性フィラーと樹脂とを主に含む樹脂集電体から構成される。これにより、正極集電体層20および負極集電体層60の軽量化および内部短絡耐性の向上により、より高容量の活物質を使用することが可能となる。
【0039】
導電性フィラーの構成材料は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン、銀、金、銅、チタンである。樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、これらの混合物である。
【0040】
正極集電体層20および負極集電体層60は、樹脂集電体によって構成する形態に限定されず、例えば、金属や導電性高分子材料によって構成することが可能である。金属は、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅である。導電性高分子材料は、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、これらの混合物である。
【0041】
必要に応じ、正極集電体層20および負極集電体層60の一方のみを、樹脂集電体によって構成することも可能である。
【0042】
シール部80は、
図4に示すように、正極層30、ならびに負極層50の周囲をそれぞれ取り囲むように配置されている。
【0043】
シール部80の厚さは、正極層30および負極層50の各々の厚さよりも薄く、隣接する単セル10の端部同士は、拘束されず離間している。
【0044】
シール部80の形成材料は、絶縁性、シール性、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。シール部80は、例えば、熱可塑性樹脂からなる。具体的には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられ得る。
【0045】
正極層30は、正極集電体層20とセパレーター40との間に位置するシート状電極であり、
図5に示すように、正極活物質粒子32および繊維状物質38を含んでいる。
【0046】
正極活物質粒子32は、その表面の少なくとも一部に被覆層33を有する。被覆層33は、導電助剤35と被覆用樹脂34とから構成されており、正極層30の体積変化を緩和し、電極の膨脹を抑制することが可能である。
【0047】
正極活物質粒子32の構成材料は、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、導電性高分子などである。リチウムと遷移金属との複合酸化物は、例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2およびLiMn
2O
4である。遷移金属酸化物は、例えば、MnO
2およびV
2O
5である。遷移金属硫化物は、例えば、MoS
2およびTiS
2である。導電性高分子は、例えば、ポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンおよびポリビニルカルバゾールである。
【0048】
被覆用樹脂34は、好ましくは、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂であるが、必要に応じ、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネートなどを適用することも可能である。
【0049】
導電助剤35は、例えば、金属、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン、これらの混合物である。金属は、アルミニウム、ステンレス鋼、銀、金、銅、チタン、これらの合金などである。カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラックなどである。導電助剤は、必要に応じて、2種以上併用することが可能である。なお、導電助剤35は、電気的安定性の観点から、好ましくは、銀、金、アルミニウム、ステンレス鋼、カーボンであり、より好ましくは、カーボンである。
【0050】
繊維状物質38は、その少なくとも一部が正極層30の導電通路を形成し、かつ、導電通路の周囲の正極活物質粒子32と接している。したがって、正極活物質(正極活物質粒子32)から発生した電子は、導電通路に速やかに到達し、正極集電体層20までスムーズに導かれる。
【0051】
繊維状物質38は、例えば、PAN系カーボン繊維、ピッチ系カーボン繊維等のカーボン繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、導電性繊維から構成される。
【0052】
導電性繊維は、合成繊維の中に金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維などである。なお、電気伝導度の観点から、導電性繊維の中では、カーボン繊維が好ましい。
【0053】
繊維状物質38の電気伝導度は、50mS/cm以上であることが好ましい。この場合、導電通路の抵抗が小さいため、正極集電体層20から遠い位置に存在する正極活物質(正極活物質粒子32)からの電子の移動がよりスムーズに行われる。電気伝導度は、JIS R 7609(2007)の「カーボン繊維−体積抵抗率の求め方」に準じて体積抵抗率を測定し、体積抵抗率の逆数を取ることによって求められる。
【0054】
繊維状物質38の平均繊維径は、好ましくは、0.1〜20μm、より好ましくは、0.5〜2.0μmである。平均繊維径は、例えば、30μm角視野中に存在する任意の繊維10本についてそれぞれ中央付近の直径を測定し、この測定を三視野について行い、合計30本の繊維の径の平均値として得られる。
【0055】
電極の単位体積あたりに含まれる繊維状物質38の繊維長の合計は、好ましくは、10000〜50000000cm/cm
3、より好ましくは、20000000〜50000000cm/cm
3、さらに好ましくは、1000000〜10000000cm/cm
3である。
【0056】
繊維長の合計は、(活物質層の単位体積あたりに含まれる繊維状物質の繊維長合計)=((繊維状物質の平均繊維長)×(活物質層の単位面積あたりに使用した繊維状物質の重量)/(繊維状物質の比重))/((活物質層の単位面積)×(活物質層厚さ))で表わされる式によって算出される。
【0057】
負極層50は、負極集電体層60とセパレーター40との間に位置するシート状電極であり、
図5に示すように、負極活物質粒子52および繊維状物質58を含んでいる。
【0058】
負極活物質粒子52は、その表面の少なくとも一部に被覆層53を有する。被覆層53は、導電助剤55と被覆用樹脂54とから構成されており、負極層50の体積変化を緩和し、電極の膨脹を抑制することが可能である。
【0059】
負極活物質粒子52の構成材料は、黒鉛、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体、コークス類、カーボン繊維、導電性高分子、スズ、シリコン、シリコン合金、シリコン酸化物、金属合金、リチウムと遷移金属との複合酸化物などである。高分子化合物焼成体は、例えば、フェノール樹脂およびフラン樹脂を焼成し炭素化したものである。コークス類は、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスである。導電性高分子は、例えば、ポリアセチレン、ポリピロールである。金属合金は、例えば、リチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム−マンガン合金である。リチウムと遷移金属との複合酸化物は、例えば、Li
4Ti
5O
12である。
【0060】
被覆層53、被覆用樹脂54、導電助剤55および繊維状物質58は、正極層30の被覆層33、被覆用樹脂34、導電助剤35および繊維状物質38と略同一の構成を有するため、その説明は省略される。なお、繊維状物質58は、その少なくとも一部が負極層50の導電通路を形成し、かつ、導電通路の周囲の負極活物質粒子52と接している。
【0061】
正極層30および負極層50は、上記構造により、150〜1500μmの厚さを有することが可能となっている。これにより、多くの活物質を含ませることが可能となり、高容量化およびエネルギー密度向上が図られる。なお、正極層30の厚さおよび負極層50の厚さは、好ましくは、200〜950μm、さらに好ましくは250〜900μmである。
【0062】
セパレーター40は、正極層30と負極層50との間に位置する多孔性(ポーラス)の絶縁体である。セパレーター40は、電解液が浸透することによって、イオンの透過性を呈する。
【0063】
電解液は、非水系有機溶媒、支持塩としてのリチウム塩(LiPF
6等)を含んでいる。非水系有機溶媒は、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の公知の非水系溶媒を適用することが可能である。リチウム塩は、その他の無機酸陰イオン塩、LiCF
3SO
3等の有機酸陰イオン塩等の公知のリチウム塩を、適用することが可能である。
【0064】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0065】
本実施形態の積層体140では、単セル10が、負極層50の膨張によって面方向Pにおいて厚みのばらつきを生じさせるのに起因して、不均一な体積変位が生じることがある。
【0066】
しかしながら、本実施形態では、不均一な体積変位が積層体140で生じたとしても、変位吸収部180がそれに追従して変形しつつ加圧するため、不均一な体積変位が吸収され、片当たり等を抑制して積層体140が均一に加圧される。
【0067】
また、負極層50が、例えば、シリコンまたはシリコン化合物を含有していると、その膨張が特に大きくなり易い。
【0068】
しかしながら、本実施形態では、蓋部材170が、減圧されたセルケース120の内部圧力とその外部の大気圧との差圧に基づく圧力を積層体140に加えるだけでなく、それに加えて、変位吸収部180が弾性力を積層体140に加える。
【0069】
このため、大きな体積変位が積層体140で不均一に生じたとしても、大きく体積変位している箇所を抑え込んで均一な加圧が可能である。
【0070】
また、変位吸収部180が弾性体であり、構成が比較的簡単であるため、装置コストを抑えられる。
【0071】
図6に示すように、正極層30および負極層50の各々の厚さと略等しい厚さを有するシール部80Aが設けられた単セル10Aによって、本実施形態と異なる積層体140Aが構成されてもよく、この場合、単セル10Aの端部が積層方向Sからの加圧によって拘束される。
【0072】
そのため、
図7に示すように、負極層50が膨張すると、それに隣接している単セル10Aの構成部材が、端部を拘束されたままの状態で引っ張られてしまい、極端に伸張してしまう虞がある。特に、そのような伸張は、積層方向Sの端に配置されている単セル10Aほど大きくなる。
【0073】
一方、
図8に示すように、本実施形態では、シール部80の厚さが、正極層30および負極層50の各々の厚さよりも薄く、単セル10の端部同士が拘束されず離間している。このため、負極層50が膨張してもそれに隣接する単セル10の構成部材が極端に伸張せず、単セル10の損傷を防止できる。
【0074】
図7、8では、簡単な例として、積層されている複数の単セルの1つで負極層の膨張が生じることを示したが、これに限定されない。いずれか2つ以上の単セルにおいて、あるいは複数の単セルの全てにおいて、負極層の膨張が生じることがありうる。それらの場合にも、単セルの端部が拘束されていると、複数の負極層の膨張によって、
図7の例と同様に構成部材の極端な伸張が生じる虞があるが、シール部が電極層よりも薄く、単セルの端部同士が拘束されず離間していれば、
図8の例と同様に、そのような極端な伸張が生じ難くなる。
【0075】
<第2実施形態>
図9に示すように、第2実施形態では、第1実施形態と異なる変位吸収部280が設けられる。
【0076】
本実施形態において、変位吸収部280は、気体または液体を内包している容器であり、セルケース120の外部に備えられたポンプ281と連通している。
【0077】
それら以外の他の構成については、本実施形態は第1実施形態と略同様であるため、第1実施形態と同様の符号を付してここでの重複する説明は省略する。
【0078】
変位吸収部280を構成している容器は、例えばエアージャッキ及び油圧ジャッキのように、内包している気体または液体の圧力が調整されることによって拡張収縮自在であり、例えば、柔軟性を有する袋や、蛇腹状容器である。変位吸収部280に内包されている気体または液体の圧力調整は、ポンプ281によって行われる。
【0079】
変位吸収部280に内包される気体または液体は、特に限定されない。気体としては、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウムが挙げられる。液体としては、例えば、水、シリコーンオイル、フッ素系オイルが挙げられる。
【0080】
変位吸収部280は、第1実施形態の変位吸収部180と異なる構成を有しているが、それと同様に機能する。
【0081】
例えば、変位吸収部280は、内包している気体または液体の圧力が調整されることによって、第1実施形態の変位吸収部180である弾性体と同様、積層体140の体積変位に追従する。また、変位吸収部280は、第1実施形態の弾性体の弾性力と同様に、内包している気体または液体の圧力によって、積層体140を加圧する。また、第1実施形態の弾性体のひずみと同様、変位吸収部280が積層方向Sにおいて変形可能な許容高さは、同方向において想定される積層体140の全変位量よりも大きい。
【0082】
ポンプ281は、例えば、変位吸収部280への気体または液体の供給量を増減させることによって、あるいは、それらの供給と排出とを切り替えることによって、変位吸収部280の内部圧力を調整する。
【0083】
ポンプ281は、変位吸収部280の内部に設置された圧力センサー(不図示)によって計測された内部圧力に基づき、制御部194によって制御されてもよい。
【0084】
この場合、例えば、積層体140が膨張するのにともなって、計測される内部圧力が増加するのに応じ、ポンプ281(調圧部)は、変位吸収部280から気体または液体を排出るように制御され、過剰な圧力を逃がすようにしてもよい。
【0085】
なお、このような制御とは異なり、例えば、所定の圧力以上で開く弁(調圧部)を変位吸収部280に設けることによっても、過剰な圧力を逃がすことが可能である。
【0086】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0087】
本実施形態の変位吸収部280も、第1実施形態と同様、積層体140で生じる不均一な体積変位に追従して変形し、それを吸収するため、積層体140を均一に加圧できる。
【0088】
また、本実施形態では、変位吸収部280が容器であり、例えばばねと異なり面で積層体140を加圧するため、より均一に積層体140を加圧し易い。
【0089】
また、容器内の圧力増加とともに、ポンプ(調圧部)が容器内の気体または液体を排出するようにすれば、積層体140が過剰な圧力で加圧されるのを防止できる。
【0090】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【0091】
例えば、変位吸収部は、蓋部材とカバープレートとの間に配置されるだけでなく、それ以外の他の場所にも追加して配置されてもよい。
【0092】
従って、本発明は、
図10に示すように、第1実施形態の構成に対し、変位吸収部180を積層体140の最下層側にさらに配置した変形例を含むとともに、
図11に示すように、それに追加して積層体140の中間に導電性の変位吸収部180がさらに配置された変形例を含む。
【0093】
また、第2実施形態についても同様で、
図12に示すように、第2実施形態の構成に対し、変位吸収部280を積層体140の最下層側にさらに配置してもよい。
【0094】
ここで示したように、変位吸収部が積層体に対し蓋部材とカバープレートとの間以外にも追加で配置されることによって、積層体の全体をより均一に加圧できる。
【0095】
また、上記実施形態に追加可能な構成は変位吸収部に限定されず、それ以外の他の構成を新たに追加してもよい。
【0096】
例えば、
図13に示す変形例では、上記第2実施形態の構成に対し、気体または液体の循環経路282が新たに追加されている。
【0097】
循環経路282は、セルケース120の外部に配置されている。容器の形態を有する変位吸収部280、および循環経路282は、互いに連通しており、気体または液体がポンプ281によって圧送されてそれらを循環する。
【0098】
この変形例では、セルケース120の外部に配置された循環経路282と、容器である変位吸収部280とが連通することによって、冷却系を構成するため、積層体140の温度上昇を抑えて電池性能をより良好に発揮させることができる。