(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付勢部材は筒状シール部材内に埋込まれ、該筒状シール部材において、前記付勢部材の前端より前方の部分が前記第1シール部材であり、前記付勢部材の後端より後方の部分が前記第2シール部材である請求項3に記載のコネクタ。
前記筒状シール部材は前後方向に延在する中心孔を含み、前記端子と筒状シール部材とは、前記軸部が前記中心孔内に収容されるように組合されて、前記端子収容ケースの端子収容空洞内に収容される請求項4に記載のコネクタ。
前記筒状シール部材における少なくとも前記第1シール部材を含む部分及び少なくとも前記第2シール部材を含む部分は、前記付勢部材の内側に位置する内側部分及び前記付勢部材の外側に位置する外側部分を含む請求項4又は5に記載のコネクタ。
前記接触部の前端が相手方コネクタの相手方端子と接触していない状態で、前記付勢部材にはプリロードが付与され、前記第1シール部材の前端面は前記フランジの後面に押付けられ、前記第2シール部材の後端面は前記基部の前面に押付けられる請求項4〜9のいずれか1項に記載のコネクタ。
前記第1シール部材の周囲に径方向付勢部材が配設され、前記第1シール部材の内周面の少なくとも一部が前記軸部の外周面に押付けられて前記内周面と前記外周面との間をシールする請求項1又は2に記載のコネクタ。
前記第1シール部材と、前記第2シール部材と、前記第1シール部材及び第2シール部材が両端に一体的に接続された中央筒部とを含む筒状シール部材を備え、前記第2シール部材の外径は前記中央筒部の外径より大きく、前記第1シール部材の外周には前記径方向付勢部材と係合する係合凸部が形成され、前記付勢部材は前記中央筒部の外側に配設され、前記付勢部材の前端及び後端が前記径方向付勢部材及び第2シール部材に当接する請求項11に記載のコネクタ。
前記筒状シール部材は前後方向に延在する中心孔を含み、前記軸部が前記中心孔内に収容され、前記第1シール部材の内周面の一部は前記中心孔の中心に向けて突出するシールリングであり、該シールリングが前記軸部の外周面に押付けられる請求項12に記載のコネクタ。
前記接触部の前端が相手方コネクタの相手方端子と接触していない状態で、前記付勢部材にはプリロードが付与され、前記第2シール部材の後端面は前記基部の前面に押付けられる請求項11〜13のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は第1の実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの斜視図、
図2は第1の実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの二面図、
図3は第1の実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの第1の分解図、
図4は第1の実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの第2の分解図、
図5は第1の実施の形態におけるコネクタの部分断面図、
図6は
図5からハウジングの基部を取除いた状態を示す図、
図7は
図6から更に部材を取除いた状態を示す図、
図8は第1の実施の形態におけるコイルスプリングが埋込まれた弾性筒部材の部分断面図、
図9は第1の実施の形態におけるコイルスプリングが埋込まれた弾性筒部材の変形例の部分断面図である。なお、
図1において、(a)は斜め前方から観た図、(b)は斜め後方から観た図であり、
図2において、(a)は下面図、(b)は側断面図であって(a)のA−A矢視断面図であり、
図7において、(a)は
図6から端子収容ケースを取除いた状態を示す図、(b)は(a)から端子を取除いた状態を示す図、(c)は(b)から弾性筒部材を取除いた状態を示す図であり、
図8及び9において、(a)は斜め後方から観た図、(b)は側断面図である。
【0030】
図において、1は本実施の形態におけるコネクタであり、基部11及び該基部11に後端が接続された端子収容ケース12を含むハウジング10と、該ハウジング10に装填された端子51とを備える。また、101は、前記端子51が接触可能な相手方端子151及び該相手方端子151が取付けられた相手方ハウジング111を備える相手方コネクタである。前記コネクタ1は、電子機器、電気機器等において、バッテリ等の電源と電力を消費する部材とを接続する電力ラインを接続するために使用することができる。また、前記コネクタ1は、信号ラインを接続するために使用することもできる。
【0031】
なお、前記コネクタ1が取付けられる電子機器、電気機器等は、いかなる種類の機器であってもよいが、ここでは、比較的小型で人が携帯可能な程度の大きさの機器であり、また、前記コネクタ1の前後方向(X軸方向)の寸法は1.5〔cm〕程度であるものとして、説明する。
【0032】
なお、本実施の形態において、コネクタ1及び相手方コネクタ101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、コネクタ1及び相手方コネクタ101の各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、コネクタ1及び相手方コネクタ101の各部の姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0033】
前記ハウジング10の基部11は、樹脂等の絶縁性の材料から成る部材であり、図に示される例においては、Y−Z方向に延在する板状の部材である。なお、前記基部11は、例えば、機器の周囲を覆う筐体の壁の一部であってもよく、この場合、基部11の前方(X軸正方向)は筐体の外側となり、基部11の後方(X軸負方向)は筐体の内側となる。そして、基部11の前方の面には、端子収容ケース12の後端に形成された接続部16が接続される前方凹部18が形成されている。該前方凹部18の底面18aは、基部11の前面の一部であって、周囲の面よりも後方に凹入して形成された平面であり、端子51の軸部52の後端近傍部52bがスライド可能に挿入される貫通孔としての後方貫通孔11aが形成されている。前記前方凹部18の左右両端には、前方に向けて突出する接続突起13が配設されている。また、基部11の後方の面において、前方凹部18に対応する部位には、後方凹部17が形成されている。該後方凹部17の底面17aは、基部11の後面の一部であって、周囲の面よりも前方に凹入して形成された平面であり、基部11を板厚方向(X軸方向)に貫通する後方貫通孔11aの後端が開口する。そして、前記後方凹部17の左右両側壁には、通電体としての通電金具81が取付けられる金具取付凹部17bが形成されている。
【0034】
前記端子収容ケース12は、樹脂等の絶縁性の材料から成る部材であり、図に示される例においては、X−Y方向に延在する厚板状の部材であり、後端(X軸負方向端)には、幅広の接続部16が形成されている。該接続部16は、左右両側に形成された接続凹部16a及び後端面16cから後方に向けて突出する接続突起16bを含んでいる。そして、前記接続部16が基部11の前方凹部18に接続されると、前記接続突起13が接続凹部16a内に進入して係合し、接続突起16bが前方凹部18に形成された図示されない接続凹部内に進入して係合し、後端面16cが前方凹部18の底面18aに当接する。なお、前記接続突起16bの代わりに、取付金具(いわゆる、ネイル)を使用することもできる。
【0035】
また、前記端子収容ケース12は、前後方向(X軸方向)に延在する端子収容空洞15と、前端(X軸正方向端)に位置する前板部14とを有する。該前板部14の前端面14bは、コネクタ1が相手方コネクタ101と接続される際に、該相手方コネクタ101の嵌合面と当接又は近接するコネクタ1の嵌合面として機能する。前記端子収容空洞15は、円筒状の細長い空洞であり、その後端は接続部16の後端面16cに開口するが、その前端は前板部14によって塞がれている。しかし、該前板部14における端子収容空洞15に対応する部位には、端子収容空洞15よりも小径の前方貫通孔14aが形成され、前記端子収容空洞15は、前方貫通孔14aを通して、前端面14bの前方の空間と連通する。前記端子収容空洞15の内径は、例えば、約1.8〔mm〕であるが、適宜変更することができる。図に示される例においては、2本の端子収容空洞15が幅方向(Y軸方向)に並んで配置されているが、端子収容空洞15の数は、コネクタ1が備える端子51の数に応じて適宜変更可能であり、いくつであってもよく、また、端子収容空洞15の配置の形態も、相手方端子151の配置の形態に応じて適宜変更可能である。
【0036】
各端子収容空洞15内には、1本の端子51と、付勢部材としてのコイルスプリング71を含む1本の筒状シール部材としての弾性筒部材31とが収容される。図に示される例において、金属等の導電性の材料から成る端子51は、前後方向に延在する細長い円柱状の軸部52と、該軸部52の先端に接続された前後方向に延在する円柱状の接触部54と、該接触部54と軸部52との境界部に配設された鍔状のフランジ53とを含んでいる。そして、接触部54の前端54aは、相手方端子151と接触して導通する部分であり、接触部54の外径は軸部52の外径より大きく、フランジ53の外径は接触部54の外径よりも大きくなるように設定されている。前記軸部52の外径は、例えば、約0.6〔mm〕であるが、適宜変更することができる。なお、前記端子51は、一体的に成形されたものであってもよいが、軸部52、フランジ53及び接触部54が、それぞれ、別個に成形され、ねじ止、溶接、接着等の手段によって相互に接合されたものであってもよい。
【0037】
本実施の形態において、金属製のコイルスプリング71とエラストマーから成る弾性筒部材31とは、オーバーモールド成形(インサート成形)によって一体化されており、コイルスプリング71は、
図7(b)に示されるように、弾性筒部材31内に埋込まれている。該弾性筒部材31は、前後方向に延在する円筒状の部材であって、前後方向に延在する断面円形の中心孔32を有する。該中心孔32は、両端が前端面33a及び後端面34aに開口し、弾性筒部材31の全長に亘って延在する内径が一定の貫通孔であって、前記軸部52が収容される。また、前記弾性筒部材31の外周面31aは、全長に亘って外径が一定である。前記弾性筒部材31の寸法は、例えば、前後方向の長さが約9.0〔mm〕、外径が約1.7〔mm〕、中心孔32の内径が約0.8〔mm〕であるが、適宜変更することができる。なお、弾性筒部材31の前後方向の長さは、軸部52の前後方向の長さよりも短くなるように設定されている。前記弾性筒部材31の材料としてのエラストマーは、スチレン系、オレフィン系等のTPE(熱可塑性エラストマー)に限らず、ゴム等の熱硬化性エラストマーであってもよい。
【0038】
また、前記コイルスプリング71は、
図7(b)に示されるように、弾性筒部材31の外部には露出していない、すなわち、弾性筒部材31の外周面31a、前端面33a、後端面34a及び中心孔32のいずれにも露出していない。なお、図に示される例において、前記コイルスプリング71は、その外径が弾性筒部材31の外径よりわずかに小さく形成され、弾性筒部材31の外周面31aに近接しているが、その内径が弾性筒部材31の内径よりわずかに大きく形成され、弾性筒部材31の内周面31bに近接するようにしてもよい。そうすることで、弾性筒部材31が一体に連続し、後述される第1シール部材33から、中央筒部35、さらに、第2シール部材34へとエラストマーが連続するので、弾性筒部材31が筒状シール部材として機能する。
【0039】
このように、エラストマーから成る弾性筒部材31は、金属製のコイルスプリング71と一体化されているので、あたかも金属製の芯を備えているかのようになり、丈夫で形状が安定した部材となる。また、弾性筒部材31全体のばね性が向上し、かつ、折曲がってしまうような座屈を防止することができる。
【0040】
前記端子51と弾性筒部材31とは、
図7(a)に示されるように、軸部52が中心孔32内に収容され、フランジ53及び接触部54が前端面33aの前方に位置し、軸部52の後端52a及び後端近傍部52bが後端面34aの後方に突出するように組合されて、
図6に示されるように、端子収容ケース12の後方から端子収容空洞15内に収容される。すると、接触部54は前方貫通孔14aにスライド可能に挿入され、接触部54の前端54aは前板部14の前端面14bから前方に突出するが、フランジ53は、その外径が端子収容空洞15の内径よりは小さいが前方貫通孔14aの内径よりも大きいので、その前面53bが前板部14の後面14cに当接し、停止させられる。また、弾性筒部材31の前後方向の長さが、端子収容ケース12の前後方向の長さよりもわずかに長く設定されている。そして、軸部52の後端52a及び後端近傍部52bは、接続部16の後端面16cの後方に突出する。なお、例示したように、軸部52の外径が中心孔32の内径より小さく設定され、弾性筒部材31の外径が端子収容空洞15の内径より小さく設定されているので、軸部52は中心孔32内でスムーズにスライド可能であり、弾性筒部材31は端子収容空洞15でスムーズにスライド可能である。
【0041】
そして、端子51及び弾性筒部材31が端子収容空洞15内に収容された端子収容ケース12は、
図5に示されるように、その後端が基部11に接続される。具体的には、端子収容ケース12の後端に形成された接続部16が基部11の前方凹部18に接続され、接続部16の後端面16cが前方凹部18の底面18aに当接する。また、後端面16cの後方に突出する軸部52の後端近傍部52bは、基部11の後方貫通孔11aにスライド可能に挿入され、軸部52の後端52aは基部11の後方凹部17の底面17aから後方に突出する。そして、前記後端近傍部52bにおける底面17aから後方に突出した部分は、後方凹部17の側壁に形成された金具取付凹部17bに取付けられた通電金具81に通電可能に接続される。なお、必要に応じて、弾性筒部材31の外周面31aにおける後端面34aの近傍に、半径方向外側に突出する突起を形成し、当該部分の外径を端子収容空洞15の内径より大きくすることもできる。これにより、端子収容空洞15内に収容された弾性筒部材31が前記突起によって仮止めされた状態となるので、端子収容ケース12の後端が基部11に接続される際に、端子51及び弾性筒部材31が端子収容空洞15から抜出ることが防止される。
【0042】
図に示される例において、前記通電金具81は、導電性の金属板に曲げ加工を施して一体的に形成された部材であって、金具取付凹部17bに取付けられる本体片81bと、軸部52の後端近傍部52bに接触する接触片81aと、該接触片81aと本体片81bとを連結する連結片81cとを有する。前記本体片81bには、電力ラインの図示されない導線が接続される。また、前記連結片81cは、板ばねとして機能し、平板状の接触片81aを後端近傍部52bの側面に押圧して、接触片81aと後端近傍部52bとを確実に接触させる。なお、前記通電金具81は、必ずしも図に示される例に限定されるものでなく、底面17aから後方に突出した後端近傍部52bと通電可能な部材であれば、いかなる種類の部材であってもよい。
【0043】
前述のように、コイルスプリング71と一体化された弾性筒部材31の前後方向の長さが、端子収容ケース12の前後方向の長さよりもわずかに長く設定されているので、端子収容ケース12の後端が基部11に接続されると、後端面34aが前方凹部18の底面18aによって前方に変位させられた状態となるので、前記弾性筒部材31が前後方向に圧縮され、コイルスプリング71及び弾性筒部材31は、プリロード(予圧)が付与された状態となる。
【0044】
なお、コイルスプリング71の全長は弾性筒部材31の全長よりも短くなっていて、コイルスプリング71の前端は前端面33aよりも後方に位置し、コイルスプリング71の後端は後端面34aよりも前方に位置する。そして、弾性筒部材31におけるコイルスプリング71の前端より前方の部分は、コイルスプリング71の前端によって押圧されて弾性的に変形する第1シール部材33として機能し、弾性筒部材31におけるコイルスプリング71の後端より後方の部分は、コイルスプリング71の後端によって押圧されて弾性的に変形する第2シール部材34として機能する。また、前記第1シール部材33と第2シール部材34との間の部分は、前記第1シール部材33と第2シール部材34とを接続する中央筒部35となる。したがって、コイルスプリング71にプリロードが付与されると、前端面33aは、フランジ53の後面53aに押付けられて弾性筒部材31とフランジ53との間をシール(密着)する第1シール面として機能し、後端面34aは、前方凹部18の底面18aに押付けられて弾性筒部材31と基部11との間をシールする第2シール面として機能する。
【0045】
前述のように、エラストマーから成る弾性筒部材31は、オーバーモールド成形(インサート成形)によってコイルスプリング71と一体化されるので、エラストマーが充填される成形用の金型のキャビティ(空洞)における軸方向両端に軸方向中央に向けて突出する突起を複数形成し、いずれかの突起にキャビティ内にインサートされたコイルスプリング71の軸方向両端を当接させてコイルスプリング71を支持することにより、弾性筒部材31内部におけるコイルスプリング71の位置決めを行うことができる。したがって、コイルスプリング71が埋込まれた弾性筒部材31を詳細に観察すると、
図8に示されるように、弾性筒部材31の前端面33a及び後端面34aの複数箇所には、前記突起によって形成された前方凹部33c及び後方凹部34cが形成され、前記前方凹部33cのいずれか及び後方凹部34cのいずれかには、コイルスプリング71の前端及び後端が露出している。
【0046】
また、前記弾性筒部材31の変形例として、
図9に示されるように、弾性筒部材31の外周面31aにコイルスプリング71の外周面の一部を露出させることもできる。具体的には、コイルスプリング71の外径と成形用の金型のキャビティの内径とを同一に設定し、コイルスプリング71の外周面を前記キャビティにおける円筒状の内周面に当接させてコイルスプリング71の外周面を支持することにより、弾性筒部材31の外周面31aにコイルスプリング71の外周面の一部を露出させることができる。
【0047】
このように、コイルスプリング71の前端と端子51のフランジ53との間に第1シール部材33が介在し、コイルスプリング71の後端とハウジング10の基部11との間に第2シール部材34が介在するとともに、第1シール部材33と第2シール部材34とが接続されているので、端子51が前後方向にスライド可能にハウジング10に取付けられていても、基部11の前方と後方とを液密かつ気密に遮断することができ、基部11の前方の空間に存在する塵埃、水分、ガス等が基部11の後方の空間に進入することを確実に防止することができる。したがって、基部11の後方に突出する端子51の後端近傍部52bと通電金具81との接触による導通が確実に保護される。より具体的には、第1シール部材33の前端面33aが第1シール面として機能し、フランジ53の後面53aに押付けられて弾性筒部材31とフランジ53との間を確実にシールするので、基部11の前方の空間に存在する塵埃、水分、ガス等は、接触部54と前方貫通孔14aとの間隙を通って端子収容空洞15内に進入しても、軸部52の周囲の空間、すなわち、中心孔32内の空間にまでは、進入し得ない。また、第2シール部材34の後端面34aが第2シール面として機能し、前方凹部18の底面18aに押付けられて弾性筒部材31と基部11との間を確実にシールするので、基部11の前方の空間に存在する塵埃、水分、ガス等は、接続部16の外周面と前方凹部18の内周面との間の間隙にまでは進入しても、軸部52の周囲の空間にまでは、進入し得ない。したがって、前記塵埃、水分、ガス等は、軸部52の後端近傍部52bと基部11の後方貫通孔11aとの間の間隙を通って基部11の後方の空間に進入することはない。また、例えば、弾性筒部材31の外径が端子収容空洞15の内径よりわずかに小さい場合、端子収容空洞15内が肉厚の弾性筒部材31によって充填されたようになるので、端子収容空洞15内の密閉性が向上し、前記塵埃、水分、ガス等を効果的に遮断することができる。
【0048】
次に、前記コネクタ1が相手方コネクタ101と接続された状態について説明する。
【0049】
図10は第1の実施の形態におけるコネクタと相手方コネクタとが接続された状態の斜視図、
図11は第1の実施の形態におけるコネクタと相手方コネクタとが接続された状態の二面図、
図12は第1の実施の形態における相手方コネクタと接続されたコネクタの部分断面図である。なお、
図10において、(a)は斜め前方から観た図、(b)は斜め後方から観た図であり、
図11において、(a)は下面図、(b)は側断面図であって(a)のB−B矢視断面図である。
【0050】
本実施の形態において、コネクタ1は、
図1及び2に示されるような相手方コネクタ101から離れている状態から、該相手方コネクタ101に相対的に接近させられて、
図10及び11に示されるように、前記相手方コネクタ101と接続された状態となる。前記コネクタ1が相手方コネクタ101と接続されると、端子51の接触部54の前端54aが相手方コネクタ101の相手方端子151に押付けられた状態となるので、ハウジング10の端子収容ケース12の前板部14が相手方ハウジング111に接近し、端子51は、ハウジング10に対してスライドさせられ、相対的に後方に変位させられる。この際の端子51の後方へのスライド量は、例えば、約1.5〔mm〕であるが、適宜変更することができる。
【0051】
すると、接触部54が前板部14の前方貫通孔14a内を後方にスライドし、前板部14の前端面14bからの接触部54の前端54aの突出量が減少するとともに、フランジ53が端子収容空洞15内を後方にスライドする。そうすると、フランジ53の前面53bが前板部14の後面14cから後方に離間するので、前記フランジ53の前面53bと前板部14の後面14cとの間に空間が生じる。また、端子51の軸部52が後方にスライドし、後端近傍部52bが基部11の後方貫通孔11a内を後方にスライドするので、基部11の後方凹部17の底面17aからの前記後端近傍部52bの突出量が増加する。なお、後端近傍部52bが後方にスライドする際、前記底面17aから突出した後端近傍部52bは、その側面が通電金具81の接触片81aの面に摺接し続けるので、通電金具81との接触を維持する。
【0052】
さらに、端子収容空洞15内を後方にスライドするフランジ53によって弾性筒部材31の前端面33aが後方に変位させられるので、コイルスプリング71と一体化された弾性筒部材31が前後方向に更に圧縮される。したがって、コイルスプリング71の発揮するばね力が大きくなり、端子51の接触部54の前端54aが相手方コネクタ101の相手方端子151に強く押付けられるので、端子51と相手方端子151との導通状態が確実に維持される。また、コイルスプリング71の前端及び後端が第1シール部材33及び第2シール部材34を押圧する力が更に大きくなり、第1シール面としての前端面33aは、フランジ53の後面53aに更に押付けられて弾性筒部材31とフランジ53との間をシールし、第2シール面としての後端面34aは、前方凹部18の底面18aに更に押付けられて弾性筒部材31と基部11との間をシールする。したがって、第1シール部材33及び第2シール部材34のシール機能が向上し、塵埃、水分、ガス等の進入をより効果的に防止することができる。また、前記弾性筒部材31は、前後方向に圧縮されることによって、外径が拡大し、中心孔32の内径が縮小するので、端子収容空洞15内は、弾性筒部材31によってより高密度に充填されたようになり、前記塵埃、水分、ガス等をより効果的に遮断することができる。
【0053】
このように、本実施の形態において、コネクタ1は、後方貫通孔11aが形成された基部11と、前方貫通孔14aが形成された前板部14を含み、後端が基部11に接続された端子収容ケース12とを有するハウジング10と、軸部52と、軸部52の先端に接続された接触部54と、接触部54と軸部52との境界部に配設されたフランジ53と、を含み、軸部52の後端近傍部52bが後方貫通孔11aにスライド可能に挿入され、後端近傍部52bにおける基部11の後方凹部17の底面17aよりも後方に突出した部分に通電金具81が接続され、接触部54は前方貫通孔14aにスライド可能に挿入され、前板部14よりも前方に突出した接触部54の前端54aが相手方コネクタ101の相手方端子151と接触可能な端子51と、軸部52の周囲に取付けられ、フランジ53を前方に向けて付勢するコイルスプリング71と、コイルスプリング71の先端とフランジ53との間に介在する第1シール部材33、コイルスプリング71の後端と基部11との間に介在する第2シール部材34、及び、第1シール部材33と第2シール部材34とを接続する中央筒部35を含む弾性筒部材31と、を備える。
【0054】
これにより、コネクタ1は、構成が簡素で、組立が容易で、低コストでありながら、液密性及び気密性を確実に維持し、基部11の前方と後方との間を気密かつ液密にシールすることができる。また、端子51をスライド可能に保持することができ、さらに、相手方コネクタ101の相手方端子151との導通状態を確実に維持することができる。したがって、信頼性を向上させることができる。
【0055】
また、第2シール部材34の後端面34aは、基部11の前方凹部18の底面18aに押付けられて後端面34aと前方凹部18の底面18aとの間をシールする。これにより、基部11の前方の空間に存在する塵埃、水分、ガス等は、端子収容ケース12の後端と前方凹部18との間の間隙にまでは進入しても、軸部52の周囲の空間にまで進入することは、不可能である。したがって、液密性及び気密性が確実に維持され、塵埃、水分、ガス等が、軸部52の後端近傍部52bと基部11の後方貫通孔11aとの間の間隙を通って基部11の後方の空間に進入することを防止することができる。
【0056】
さらに、第1シール部材33の前端面33aは、フランジ53の後面53aに押付けられて前端面33aと後面53aとの間をシールする。これにより、基部11の前方の空間に存在する塵埃、水分、ガス等は、接触部54と前方貫通孔14aとの間隙を通って進入しても、軸部52の周囲の空間にまで進入することは、不可能である。したがって、液密性及び気密性が確実に維持され、塵埃、水分、ガス等が、軸部52の後端近傍部52bと基部11の後方貫通孔11aとの間の間隙を通って基部11の後方の空間に進入することを防止することができる。また、第1シール部材33の前端面33aは、フランジ53の後面53aと摺動することなく、該後面53aに押付けられて前端面33aと後面53aとの間をシールするので、摺動によって第1シール部材33の前端面33aが摩滅してしまうことがなく、シール機能の劣化が効果的に防止される。
【0057】
さらに、コイルスプリング71は弾性筒部材31内に埋込まれ、弾性筒部材31において、コイルスプリング71の前端より前方の部分が第1シール部材33であり、コイルスプリング71の後端より後方の部分が第2シール部材34である。したがって、コイルスプリング71の取扱が容易であり、コネクタ1の組立が容易になり、製造コストを低減することができる。
【0058】
さらに、弾性筒部材31は外径が全長に亘って一定の円筒状の部材であって前後方向に延在する中心孔32を含み、端子51と弾性筒部材31とは、軸部52が中心孔32内に収容されるように組合されて、端子収容ケース12の端子収容空洞15内に収容される。したがって、端子51と弾性筒部材31とを端子収容空洞15内に収容する作業が容易になり、コネクタ1の組立が容易になり、製造コストを低減することができる。
【0059】
さらに、接触部54の前端54aが相手方コネクタ101の相手方端子151と接触していない状態で、コイルスプリング71にはプリロードが付与され、第1シール部材33の前端面33aはフランジ53の後面53aに押付けられ、第2シール部材34の後端面34aは基部11の前方凹部18の底面18aに押付けられる。したがって、コネクタ1が相手方コネクタ101と接続される前の状態であっても、第1シール部材33の前端面33aとフランジ53の後面53aとの間、及び、第2シール部材34の後端面34aと基部11の前方凹部18の底面18aとの間が確実にシールされるので、基部11の前方と後方との間を気密かつ液密にシールすることができる。
【0060】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0061】
図13は第2の実施の形態におけるコネクタの部分断面図、
図14は
図13から部材を取除いた状態を示す図、
図15は第2の実施の形態における弾性筒部材の後面図である。なお、
図13において、(a)はコネクタの斜め後方から観た部分断面図、(b)は(a)から基部を取除いた状態を示す図であり、
図14において、(a)は
図13(b)から端子収容ケースを取除いた状態を示す図、(b)は(a)から端子を取除いた状態を示す図、(c)は(b)から弾性筒部材を取除いた状態を示す図である。
【0062】
前記第1の実施の形態において、コイルスプリング71は、弾性筒部材31の外周面31aに近接しているか、又は、
図9に示される変形例のように、その外周面の一部が弾性筒部材31の外周面31aに露出しているが、本実施の形態において、コイルスプリング71は、弾性筒部材31の外周面31aから離れて、該外周面31aと内周面31bとの間に位置する。なお、
図15に示される例においては、弾性筒部材31の前後方向(X軸方向)から観て、弾性筒部材31の半径方向に関し、コイルスプリング71が外周面31aと内周面31bとの中間に位置しているが、コイルスプリング71は、必ずしも外周面31aと内周面31bの中間に位置する必要はなく、外周面31a及び内周面31bから離れて、外周面31aと内周面31bとの間に位置していればよい。すなわち、弾性筒部材31の半径方向に関し、コイルスプリング71の内側及び外側の両方に、弾性筒部材31の材料としてのエラストマーが存在していればよい。なお、
図15は、弾性筒部材31の後方から観た状態、すなわち、後端面34aを示しているが、弾性筒部材31の前方から観た状態、すなわち、前端面33aも同様である。
【0063】
コネクタ1が相手方コネクタ101と接続され、コイルスプリング71と一体化された弾性筒部材31が前後方向に圧縮された状態で、比較的高温(例えば、約85〔℃〕以上)の環境下におかれた後に室温程度にまで冷却されてから、コネクタ1と相手方コネクタ101との接続が解除されて、コイルスプリング71のばね力によって弾性筒部材31が元の長さに復帰すると、弾性筒部材31の前端面33a及び/又は後端面34aの平面度が低下してしまうことがある。これは、弾性筒部材31の材料であるエラストマーが、冷却された際に、前後方向に圧縮された状態である程度固まっているのを、コイルスプリング71のばね力によって、強制的に元の長さに復帰させたためである、と考えられる。
【0064】
そこで、本実施の形態においては、前述のように、コイルスプリング71の内側及び外側の両方に、弾性筒部材31の材料であるエラストマーが配設されている。つまり、
図15に示されるように、弾性筒部材31は、コイルスプリング71の内側に位置する内側部分31cと、コイルスプリング71の外側に位置する外側部分31dとを含んでいる。これにより、コイルスプリング71の内側及び外側の両方のエラストマー、すなわち、内側部分31c及び外側部分31dのエラストマーが、コイルスプリング71のばね力によって、均等に元の長さに復帰させられるので、弾性筒部材31の前端面33a及び/又は後端面34aの平面度の低下を防止することができる。
【0065】
上述の説明での「前後方向に圧縮された状態である程度固まっている」状態は高温の環境下での圧縮永久ひずみといえるが、それに限らず常温、低温の状況下といったあらゆる状況における圧縮永久ひずみについて同様である。
【0066】
内側部分31c及び外側部分31dの両方にエラストマーを可能な限り均等に配置するためには、例えば、
図15に示されるように、弾性筒部材31の半径の、内側部分31cに対応する部分の長さと、外側部分31dに対応する長さとを等しくしてもよいし、内側部分31c及び外側部分31dのエラストマーの体積(
図15においては、面積に対応)を等しくしてもよい。
【0067】
なお、
図13及び14に示される例においては、弾性筒部材31の全長に亘って、コイルスプリング71の内側及び外側の両方にエラストマーが配設されているが、前端面33aの近傍及び後端面34aの近傍のみ、すなわち、第1シール部材33及び第2シール部材34のみ、又は、第1シール部材33の近傍及び第2シール部材34の近傍のみにおいて、コイルスプリング71の内側及び外側の両方にエラストマーが配設されていれば、その他の部分では、コイルスプリング71の内側又は外側のいずれか一方のみにエラストマーが配設されているようにしてもよい。
【0068】
また、弾性筒部材31の第1シール部材33及び第1シール部材33の複数箇所には、弾性筒部材31のエラストマーが充填される成形用の金型のキャビティに形成された複数の突起によって形成された前方凹部33c及び後方凹部34cが形成され、前記前方凹部33cのいずれか及び後方凹部34cのいずれかには、コイルスプリング71の前端及び後端が露出している。本実施の形態においては、コイルスプリング71が弾性筒部材31の外周面31aに露出しても近接してもいないので、弾性筒部材31を成形するためのキャビティの円筒状の内周面によってコイルスプリング71の外周面を支持することができない。そこで、本実施の形態においては、エラストマーの内部に埋もれた状態のコイルスプリング71の位置決めを行うため、前記突起は、コイルスプリング71の軸方向両端及び外周面に当接することができる形状を備える。したがって、前記突起によって形成された前方凹部33c及び後方凹部34cは、比較的浅い部分である上底部33c1及び34c1と比較的深い部分である下底部33c2及び34c2とを有する段付きの凹部となっている。そして、
図14に示されるように、コイルスプリング71の軸方向前端は、いずれか1つの前方凹部33cの上底部33c1上に露出し、コイルスプリング71の軸方向後端は、いずれか1つの後方凹部34cの上底部34c1上に露出した状態となる。なお、本実施の形態における前方凹部33c及び後方凹部34cは、弾性筒部材31の前端面33a及び後端面34aには開口していない。
【0069】
このように、本実施の形態において、弾性筒部材31における少なくとも第1シール部材33を含む部分及び少なくとも第2シール部材34を含む部分は、コイルスプリング71の内側に位置する内側部分31c及びコイルスプリング71の外側に位置する外側部分31dを含んでいる。また、内側部分31c及び外側部分31dは円筒状である。さらに、内側部分31cの横断面の面積及び外側部分31dの横断面の面積を同一にすることができる。
【0070】
これにより、内側部分31c及び外側部分31dのエラストマーが、コイルスプリング71のばね力によって、均等に元の長さに復帰させられるので、弾性筒部材31の前端面33a及び/又は後端面34aの平面度の低下を防止することができる。
【0071】
なお、コネクタ1及び相手方コネクタ101のその他の点の構成及び動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0072】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0073】
図16は第3の実施の形態におけるコネクタの部分断面図、
図17は
図16から部材を取除いた状態を示す図、
図18は第3の実施の形態における弾性筒部材の後面図である。なお、
図16において、(a)はコネクタの斜め後方から観た部分断面図、(b)は(a)から基部を取除いた状態を示す図であり、
図17において、(a)は
図16(b)から端子収容ケースを取除いた状態を示す図、(b)は(a)から端子を取除いた状態を示す図、(c)は(b)から弾性筒部材を取除いた状態を示す図である。
【0074】
前記第1及び第2の実施の形態において、弾性筒部材31は円筒状の部材であって、外周面31aは、横断面が円形の円柱面(円筒面)であるが、本実施の形態において、弾性筒部材31は、断面円形の中心孔32を有するが、外周面31aは、横断面が概略正方形の角柱面となっている。具体的には、前記外周面31aは、前後方向に延在する4つの細長い平面31a1と、隣接する平面31a1の長辺同士を連結する90度に湾曲した4つの細長い湾曲面31a2とを含んでいる。
【0075】
前記弾性筒部材31は、コイルスプリング71の内側に位置する内側部分31cと、コイルスプリング71の外側に位置する外側部分31dとを含んでいるが、
図18に示されるように、本実施の形態において、前記外側部分31dは、外周面31aにおける4つの湾曲面31a2とその近傍部分のみとなっている。そして、コイルスプリング71は、外周面31aにおける4つの細長い平面31a1に近接している。つまり、弾性筒部材31の前方又は後方から観て、コイルスプリング71の外周は、概略正方形の外周面31aの内接円となっている。
【0076】
このように、弾性筒部材31が内側部分31c及び外側部分31dを含んでいるので、コイルスプリング71の内側及び外側の両方のエラストマー、すなわち、内側部分31c及び外側部分31dのエラストマーが、コイルスプリング71のばね力によって、均等に元の長さに復帰させられるので、弾性筒部材31の前端面33a及び/又は後端面34aの平面度の低下を防止することができる。なお、内側部分31c及び外側部分31dの両方にエラストマーを可能な限り均等に配置するためには、例えば、内側部分31c及び外側部分31dのエラストマーの体積(
図18においては、面積に対応)を等しくすることができる。
【0077】
本実施の形態においては、コイルスプリング71が弾性筒部材31の外周面31aにおける平面31a1に近接しているので、弾性筒部材31を成形するための金型のキャビティの内周面によってコイルスプリング71の外周面を支持することができる。したがって、前記キャビティに形成された複数の突起は、前記第1の実施の形態と同様に、コイルスプリング71の軸方向両端にのみ当接することができる形状であればよく、その結果、前記突起によって形成された前方凹部33c及び後方凹部34cは、前記第1の実施の形態と同様の形状である。
【0078】
なお、本実施の形態において、弾性筒部材31の外周面31aは、横断面が概略正方形の角柱面となっているので、
図16に示されるように、端子収容空洞15の内周面との間に間隙が発生する。しかし、前記第1の実施の形態と同様に、第2シール部材34の後端面34aが第2シール面として機能し、前方凹部18の底面18aに押付けられて弾性筒部材31と基部11との間を確実にシールするので、基部11の前方の空間に存在する塵埃、水分、ガス等が弾性筒部材31の外周面31aと、端子収容空洞15の内周面との間に間隙にまでは進入しても、軸部52の周囲の空間にまでは、進入し得ない。したがって、前記塵埃、水分、ガス等は、軸部52の後端近傍部52bと基部11の後方貫通孔11aとの間の間隙を通って基部11の後方の空間に進入することはない。
【0079】
このように、本実施の形態において、内側部分31cは円筒状であり、外側部分31dの外周面31aは横断面が概略正方形である。また、内側部分31cの横断面の面積及び外側部分31dの横断面の面積を同一にすることができる。
【0080】
これにより、内側部分31c及び外側部分31dのエラストマーが、コイルスプリング71のばね力によって、均等に元の長さに復帰させられるので、弾性筒部材31の前端面33a及び/又は後端面34aの平面度の低下を防止することができる。
【0081】
なお、コネクタ1及び相手方コネクタ101のその他の点の構成及び動作については、前記第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0082】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0083】
図19は第4の実施の形態におけるコネクタの部分断面図、
図20は
図19から部材を取除いた状態を示す図である。なお、
図19において、(a)はコネクタの斜め後方から観た部分断面図、(b)は(a)から基部を取除いた状態を示す図であり、
図20において、(a)は
図19(b)から端子収容ケースを取除いた状態を示す図、(b)は(a)から端子を取除いた状態を示す図、(c)は(b)から弾性筒部材を取除いた状態を示す図である。
【0084】
前記第3の実施の形態においては、弾性筒部材31の全長に亘って、弾性筒部材31の外周面31aの横断面が概略正方形の角柱面となっているが、本実施の形態においては、前端面33aの近傍及び後端面34aの近傍のみ、すなわち、第1シール部材33及び第2シール部材34のみ、又は、第1シール部材33の近傍及び第2シール部材34の近傍のみにおいて、外周面31aの横断面が概略正方形の角柱面となっていて、その他の部分では、前記第1の実施の形態と同様に、外周面31aの横断面が円形の円柱面(円筒面)である。
【0085】
つまり、第1シール部材33及び第2シール部材34のみ、又は、第1シール部材33の近傍及び第2シール部材34の近傍のみにおいて、弾性筒部材31が内側部分31c及び外側部分31dを含んでいて、コイルスプリング71の内側及び外側の両方にエラストマーが配設されているが、その他の部分においては、弾性筒部材31が外側部分31dを含んでおらず、コイルスプリング71の内側のみにエラストマーが配設されている。
【0086】
このように、本実施の形態において、弾性筒部材31における少なくとも第1シール部材33を含む部分及び少なくとも第2シール部材34を含む部分では、コイルスプリング71の内側に位置する内側部分31cが円筒状であり、コイルスプリング71の外側に位置する外側部分31dの外周面31aは横断面が概略正方形である。
【0087】
なお、コネクタ1及び相手方コネクタ101のその他の点の構成及び動作については、前記第1〜第3の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0088】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第4の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0089】
図21は第5の実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの二面図、
図22は第5の実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの第1の分解図、
図23は第5の実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの第2の分解図、
図24は第5の実施の形態におけるコネクタの部分断面図、
図25は
図24から部材を取除いた状態を示す図、
図26は
図25から更に部材を取除いた状態を示す図である。なお、
図21において、(a)は下面図、(b)は側断面図であって(a)のC−C矢視断面図であり、
図24において、(a)はコネクタの斜め後方から観た部分断面図、(b)は(a)から基部を取除いた状態を示す図であり、
図25において、(a)は
図24(b)から端子収容ケースを取除いた状態を示す図、(b)は(a)から付勢リングを取除いた状態を示す図であり、
図26において、(a)は
図25(b)から端子を取除いた状態を示す図、(b)は(a)から弾性筒部材を取除いた状態を示す図である。
【0090】
本実施の形態において、エラストマーから成る筒状シール部材としての弾性筒部材331は、金属製のコイルスプリング71と一体化されていない。すなわち、弾性筒部材331とコイルスプリング71とは別個になっている。また、本実施の形態における弾性筒部材331は、前記第1の実施の形態のように全長に亘って外径が一定のものでなく、コイルスプリング71の内径よりも小さな外径の中央筒部335を有し、該中央筒部335の前後端に第1シール部材333及び第2シール部材334が一体的に接続されている。なお、本実施の形態における弾性筒部材331も、前記第1の実施の形態と同様に、前後方向に延在する断面円形の中心孔32を有し、該中心孔32は、両端が前端面333a及び後端面334aに開口する。また、中心孔32の内径は、前記第1の実施の形態と同様である。
【0091】
第2シール部材334の外径は、前記第1の実施の形態における弾性筒部材31の外径と同様である。したがって、第2シール部材334は、小さな外径の中央筒部335の後端に形成された外径の大きなフランジ38になっている。一方、第1シール部材333の外径は、全体的は中央筒部335と同一であるが、前端面333aの近傍にやや外径の大きな前端フランジ333bが形成され、該前端フランジ333bの後方により外径の大きな係合凸部としてのリング状凸部36が形成され、さらに、中心孔32の内周面におけるリング状凸部36に対応する部位には、中心孔32の中心に向けて突出するシールリング36aが形成されている。なお、前記リング状凸部36の外形は第2シール部材334の外径よりも小さく、前記前端フランジ333bの外形はリング状凸部36の外形よりも小さく設定されている。
【0092】
そして、第1シール部材333の周囲には、径方向付勢部材としての付勢リング37が取付けられる。該付勢リング37は、弾性筒部材331とは別個の部材であって、弾性筒部材331の材料であるエラストマーよりも硬い、樹脂や金属を材料として成形された前後方向の長さが短い円筒状の部材であり、前後方向に延在する断面円形の中心孔37dを有する。そして、前記付勢リング37は、全長に亘って外径が一定であり、かつ、該外径は前記第2シール部材334の外径と同様である。また、前記中心孔37dの内径は、中央筒部335の外径よりわずかに大きく設定されているが、中心孔37dの内周面には半径方向外側に向けて凹入する係合凹溝37cが形成されている。
図25に示されるように、前記付勢リング37が第1シール部材333の周囲に取付けられると、リング状凸部36が係合凹溝37c内に進入して係合し、前端フランジ333bが中心孔37d内に収容され、弾性筒部材331の前端面333aが付勢リング37の前端面37aとほぼ面一になる。
【0093】
前記係合凹溝37cの形状及び大きさは、付勢リング37が第1シール部材333の周囲に取付けられて係合凹溝37cとリング状凸部36とが係合した状態で、該リング状凸部36が中心孔32の中心に向けて押圧されるように形成されている。したがって、
図25(a)に示されるように、付勢リング37が第1シール部材333の周囲に取付けられ、弾性筒部材331の中心孔32に端子51の軸部52が挿入されると、リング状凸部36に対応する部位に形成されたシールリング36aが軸部52の外周面に押付けられて弾性筒部材331と軸部52との間をシールする。すなわち、第1シール部材333の内周面における少なくともシールリング36aが形成された部分が第1シール面として機能し、弾性筒部材331と軸部52との間をシールする。
【0094】
本実施の形態において、コイルスプリング71は、フランジ38である第2シール部材334と第1シール部材333の周囲に取付けられた付勢リング37との間の範囲において、中央筒部335の外周を取囲むようにして弾性筒部材331に取付けられる。そして、コイルスプリング71が取付けられた弾性筒部材331と端子51とが組合されて端子収容空洞15内に収容された端子収容ケース12の後端が基部11に接続されると、前記第1の実施の形態と同様に、コイルスプリング71と取付けられた弾性筒部材331の前後方向の長さが、端子収容ケース12の前後方向の長さよりもわずかに長く設定されているので、後端面334aが前方凹部18の底面18aによって前方に変位させられた状態となり、前記弾性筒部材331が前後方向に圧縮され、コイルスプリング71及び弾性筒部材331は、プリロードが付与された状態となる。すると、第2シール部材334がコイルスプリング71の後端によって押圧されるので、後端面334aは、前方凹部18の底面18aに押付けられて弾性筒部材331と基部11との間をシールする第2シール面として機能する。また、第1シール部材333の周囲に取付けられた付勢リング37の後端面37bがコイルスプリング71の前端に当接して押圧されるので、付勢リング37の前端面37aは、弾性筒部材331の前端面333aとともに、フランジ53の後面53aに押付けられる。本実施の形態における弾性筒部材331の前端面333aは、前記第1の実施の形態よりも面積が小さいが、フランジ53の後面53aに押付けられるので、弾性筒部材331とフランジ53との間を補助的にシールする補助シール面として機能する。
【0095】
このように、本実施の形態においては、第1シール部材333の周囲に付勢リング37が配設され、第1シール部材333の内周面の少なくとも一部が軸部52の外周面に押付けられて第1シール部材333の内周面と軸部52の外周面との間をシールする。これにより、基部11の前方の空間に存在する塵埃、水分、ガス等は、接触部54と前方貫通孔14aとの間隙を通って進入しても、軸部52の周囲の空間にまで進入することは、不可能である。したがって、液密性及び気密性が確実に維持され、塵埃、水分、ガス等が、軸部52の後端近傍部52bと基部11の後方貫通孔11aとの間の間隙を通って基部11の後方の空間に進入することを防止することができる。
【0096】
また、コネクタ1は、第1シール部材333と、第2シール部材334と、第1シール部材333及び第2シール部材334が両端に一体的に接続された中央筒部335とを含む弾性筒部材331を備え、第2シール部材334の外径は中央筒部335の外径より大きく、第1シール部材333の外周には付勢リング37と係合するリング状凸部36が形成され、コイルスプリング71は中央筒部335の外側に配設され、コイルスプリング71の前端及び後端が付勢リング37及び第2シール部材334に当接する。したがって、コイルスプリング71の取付が容易であり、コネクタ1の組立が容易になり、製造コストを低減することができる。
【0097】
さらに、弾性筒部材331は前後方向に延在する中心孔32を含み、軸部52が中心孔32内に収容され、第1シール部材33の内周面の一部は中心孔32の中心に向けて突出するシールリング36aであり、シールリング36aが軸部52の外周面に押付けられる。これにより、第1シール部材333の内周面と軸部52の外周面との間が効果的にシールされる。
【0098】
さらに、接触部54の前端54aが相手方コネクタ101の相手方端子151と接触していない状態で、コイルスプリング71にはプリロードが付与され、第2シール部材334の後端面334aは基部11の前方凹部18の底面18aに押付けられる。したがって、コネクタ1が相手方コネクタ101と接続される前の状態であっても、第2シール部材334の後端面334aと基部11の前方凹部18の底面18aとの間が確実にシールされるので、基部11の前方と後方との間を気密かつ液密にシールすることができる。
【0099】
なお、コネクタ1及び相手方コネクタ101のその他の点の構成及び動作については、前記第1〜第4の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0100】
また、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。