【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1) 尿素処理の反応時間
例えば、ベルパール製造工程からCOD成分としてホルムアルデヒドと塩酸を含む廃液が排出される(例えば、ホルムアルデヒド濃度:最高約7質量%、HCl濃度:約18質量%)。本実施例では、ホルムアルデヒドを含む排水として、ホルマリン2.0質量%、塩酸5.0質量%と微量のフェノール誘導体を含む排水を用いた。なお、排水のpHは0以下であった。
【0042】
排水500gに50wt%尿素水溶液をホルマリンに対する尿素のモル比が1.0となるように添加した(すなわち、50wt%尿素水溶液を40g添加した)。室温(20〜30℃)で攪拌すると、白色の尿素樹脂が1分程度で沈殿する。
【0043】
各反応時間におけるCODの測定結果を表1および
図4に示す。なお、CODの測定は、JIS K 0102−17 工場排水試験法のCOD
Mn条件によって実施した。
【0044】
【表1】
【0045】
原液(処理前の排水)のCODは15250ppmであり、攪拌開始1時間後のCODは1670ppmであり、5時間後のCODは1190ppmであった。5時間後のホルムアルデヒド濃度は200ppmであるため、その他のCOD源は低分子量の尿素とホルムアルデヒドとの反応物であると考えられる。
【0046】
撹拌速度の増加と反応容器中における尿素樹脂の残渣(residue)量が、尿素処理の反応時間に有効であると考えられる。
【0047】
(実施例2) 攪拌時間とホルムアルデヒド除去量の関係性
実施例1と同じ排水(pH:0以下)200gに対し、50wt%の尿素水溶液を30g添加(モル比0.534)し、時間経過とホルムアルデヒド濃度の関係性を調べた。結果を
図2に示す。
【0048】
図2に示されるように、尿素水溶液を添加した直後から、ホルムアルデヒドが尿素との反応で約40分までに激しく消費され、濃度が薄くなった40分以降では反応速度が下がり、濃度変化は緩やかになった。しかし、攪拌を続けると緩やかではあるが、反応は進行する傾向も確認された。
【0049】
(実施例3)
実施例1においてモル比を0.8〜1.5まで推移させてCODの減少度を調査した。攪拌時間は、反応が終了しているであろう17時間とした。NaOHで中和後にCODを測定した。結果を表2および
図3に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
CODの測定値は、原液の15250ppmに対し、モル比0.8では6300ppm(表2および
図3に表示せず)、モル比0.9では1980ppm、モル比1.0では990ppm、モル比1.1では870ppm、モル比1.5では910ppmであった。
【0052】
この結果から、モル比0.9〜1.5(ホルマリン1モル部に対して0.9〜1.5モル部)の量の尿素系化合物を添加することが好ましく、モル比1.0〜1.1(ホルマリン1モル部に対して1.0〜1.1モル部)の量の尿素系化合物を添加することがより好ましいと考えられる。
【0053】
一方、総窒素量(T−N)を測定し尿素由来の残存度を調べた。T−Nの測定結果は、表2および
図3に示した。T−Nは、モル比0.9で1000ppm、モル比1.0で930ppm、モル比1.1で1600ppm、モル比1.5で6300ppmとなった。このことから、モル比1.0以上の場合は窒素系化合物が過剰となり、尿素が濾液中に残存する傾向があると考えられる。したがって、T−Nも考慮すれば、窒素系化合物のモル比は0.9〜1.1であることがより好ましく、0.9〜1.0であることがさらに好ましいと考えられる。
【0054】
(実施例4) ETPテスト
500Lの排水に対して、表3に示す#1〜#5の条件での尿素処理を行った。CODおよびT−Nの測定結果を表2に示す。なお、尿素樹脂の水分含有率は33〜40質量%であった。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示されるように、多くの例において、CODが2000ppm以下まで低下しており、最も低いもので、CODが1000ppm以下に低下していた。また、撹拌を多くするほど、CODは低下すると考えられる。
【0057】
(比較例1)
従来の排水処理方法について処理後の排水のCODを測定した。具体的には、特許文献5(特公昭56−5593号公報)の実施例4と同様の処理を実施して、処理後の排水のCODを測定した。
【0058】
まず、市販のホルマリン液27g(HCHO:37%、CH
3OH:6%)を希釈し、HCHO:2%、CH
3OH:0.33%となる反応液500gを調製した。そこに16.5gの尿素を添加し、70℃で1時間半攪拌した。反応終了後25℃まで冷却し、CODを測定した。CODは、尿素投入前で18250ppm、反応終了後で7980ppmとなった。特許文献5の情報によると、この際HCHO濃度は340ppm程度であり、このCOD源の大部分は、尿素とホルムアルデヒドの誘導体で、分子量が小さく析出せず、溶液中に残存しているものと推測される。液中のメタノールは、3000ppm程度であり、70℃という温度はメタノールの沸点より高いため多少は揮発していると考えられる。同反応液に(本発明と同様の)モル比1.0で20.0gの尿素を添加し、同様の試験を行ったが、結果は9120ppmであった。
【0059】
これに対して、本発明では、例えば、排水(HCHO:2%、CH
3OHの含有はない)に尿素を添加し、CODを15200ppmから1190ppmまで落とすことが可能である。
【0060】
(実施例5) 尿素反応に対する温度の影響
一般的な化学反応は、反応温度を高くすることで反応速度が速まる傾向にある。しかし、尿素とHCHOの反応で生成する尿素樹脂の一部は40℃程度で溶解し、それがCOD源となる。一度溶解した尿素樹脂は、単純に冷却しても析出しにくく、尿素とHCHOの反応は、高温下(50℃超)で行うことは相応しくない。室温でも十分に速い反応とするために液中の酸性度を上げることが有効な手段である。
【0061】
実施例1に対して温度条件のみを変化させた際の尿素反応の影響を調べるための試験を行った。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4の結果から、温度を上げると、濾液中に溶解する尿素樹脂が増すためCODが増加することが分かる。40℃での反応は、反応終了後冷却すれば尿素樹脂は析出するが、50℃以上で生じた尿素樹脂は冷却しても析出せず、そのままCOD源として残ってしまい、排水中のCODはそれほど下がらない。
【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。