特許第6960891号(P6960891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960891
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   C02F1/58 F
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-158890(P2018-158890)
(22)【出願日】2018年8月28日
(65)【公開番号】特開2020-32326(P2020-32326A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】511064096
【氏名又は名称】エア・ウォーター・ベルパール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 直人
(72)【発明者】
【氏名】北戸 雄大
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭56−005593(JP,B2)
【文献】 特開昭53−071677(JP,A)
【文献】 特開昭53−043674(JP,A)
【文献】 特開昭53−042178(JP,A)
【文献】 特開平04−277079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00−1/78
C02F3/00−3/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒドを含む排水に対して、前記排水中に含まれるホルムアルデヒド1モル部に対して0.5モル部〜1.5モル部の下記一般式で示される尿素系化合物を添加する添加工程と、
前記尿素系化合物の添加によって生じる非水溶性固体を前記排水中から除去する除去工程と、を含み、
前記添加工程において、前記排水は、pHが3以下であり、温度が10℃〜50℃である、排水処理方法。
【請求項2】
前記添加工程において、前記排水は、pHが1以下である、請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記尿素系化合物は、1分子中に3〜5個の活性水素を有する、請求項1または2に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記尿素系化合物は、尿素、チオ尿素、ジシアンジアミド、ビウレットおよびシアノ尿素から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の排水処理方法。
【請求項5】
ホルムアルデヒドを含む排水から少なくとも一部のホルムアルデヒドを除去する、ホルムアルデヒドの除去方法であって、
ホルムアルデヒドを含む排水に対して、前記排水中に含まれるホルムアルデヒド1モル部に対して0.5モル部〜1.5モル部の下記一般式で示される尿素系化合物を添加する添加工程と、
前記尿素系化合物の添加によって生じる非水溶性固体を前記排水中から除去する除去工程と、を含み、
前記添加工程において、前記排水は、pHが3以下であり、温度が10℃〜50℃である、ホルムアルデヒドの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒド(HCHO)を含む産業排水としては、フェノール樹脂製造工程、病院または研究機関での生理標本などを固定または廃棄する工程、飲料缶殺菌処理工程、縫製製品のホルムアルデヒド架橋処理設備などから排出されるホルムアルデヒド含有排水、食品製造工場から排出される殺菌缶排水などが有る。
【0003】
ホルムアルデヒドは、毒性が有り適切な排水処理が必要である。通常の活性汚泥法による生物処理には、ホルムアルデヒドが微生物に対する毒性を有しているため、活性汚泥にダメージを与えて、適切ではない。活性炭に吸着させる方法はホルムアルデヒドの活性炭吸着量が小さく適切ではない。
【0004】
特許文献1(特開平11−19685号公報)にはペニシリウム属に属するホルムアルデヒド分解能力を有する菌を用いてホルムアルデヒドを分解するホルムアルデヒド分解方法があげられている。しかし、活性汚泥法では、広い設置面積が必要となることが問題であり、また生物を保持するための安定した有機物負荷が必要という欠点が有る。
【0005】
特許文献2(特許第5527473号公報)には、ホルムアルデヒドを含む排水に亜硫酸塩を添加した後、逆浸透膜分離処理により有害成分の濃縮が提案されている。しかし逆浸透膜分離はエネルギーコストが必要となる。さらに濃縮されたヒドロキシメタンスルホン酸塩の廃棄にあたっては、焼却によれば有害な亜硫酸ガスが発生し、また酸性ガスが焼却炉を傷める懸念が有る。あるいは安定型廃棄物処理場での埋め立て廃棄では亜硫酸塩化合物が硫化水素の発生原因となる懸念が有る。
【0006】
特許文献3(特開2010−247009号公報)では、過酸化水素を添加した被処理水を触媒活性炭に接触させ、発生するヒドロキシラジカルによりアルデヒドを除去するアルデヒド除去方法が提案されている。しかし過酸化水素が残留し混入する場合や、ルテニウム等の触媒や貴金属が溶出すること、ルテニウム等の触媒は高価であり経済的ではないとの指摘が有る。
【0007】
特許文献4(特許第6151500号公報)には、オゾンや紫外線等を用いた酸化処理を行おうとする場合、生物処理に比べて処理速度は速いが、ラジカルスカベンジャ等の影響により処理効率が低下してしまう等の問題点や、オゾン処理を行う場合、排水中に共存する物質の種類によっては、トリハロメタン等の副生成物を生じる場合があるなどの課題があげられている。
【0008】
特許文献5(特公昭56−5593号公報)には、排水中のホルムアルデヒドを、尿素などの特定の化合物と反応させて、アルカリ土類金属の水酸化物または酸化物を添加して処理することにより、排水中のホルムアルデヒドを除去する方法が提案されている。ホルムアルデヒドは、酸性条件で尿素と反応して非水溶性沈殿(尿素樹脂)を生じるので、これを固液分離により除去することで、排水中のホルムアルデヒドを除去することができる。
【0009】
この提案は、ホルムアルデヒド1モルに対して、特定の化合物を0.25モル以上、好ましくは0.5〜1モル加え、常温から100℃、好ましくは60℃〜100℃にて所定時間加熱撹拌する。なお、実施例では、例えば、pH4程度の酸性条件で反応温度は70℃であった。さらに、これらにアルカリ土類金属の水酸化物または酸化物を少量添加すれば、さらにホルムアルデヒドが除去される。
【0010】
上記特定の化合物としては、アミノ基に結合した少なくとも3個の水素を有する、カルバミド類やチオカルバミド類、シアナミド類、それらの結合体などが提案されている。すなわちホルムアルデヒドと反応する活性点であるアミノ基水素が分子当たり3個以上存在するため、複雑な架橋化合物を生成して水に難溶となり沈殿すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−19685号公報
【特許文献2】特許第5527473号公報
【特許文献3】特開2010−247009号公報
【特許文献4】特許第6151500号公報
【特許文献5】特公昭56−5593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
アルカリ土類金属の水酸化物または酸化物がホルムアルデヒドの除去に有効であるのは、所謂ホルモース生成反応により、ホルムアルデヒドが糖類に転化するため、ホルムアルデヒド濃度が減少したと考えられる。しかしホルモース生成反応によりホルムアルデヒド濃度が減少したとしても、COD(化学的酸素要求量)、BOD(生物学的酸素要求量)などの有機物量に関する水質汚濁指標は改善しないという欠点が有る。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ホルムアルデヒドを含む排水のホルムアルデヒド濃度および有機物量に関する水質汚濁指標(特にCOD)を減少させることのできる排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで我々はこの特定の化合物とホルムアルデヒドの反応によりホルムアルデヒドを沈殿除去する処理方法に着目し、特に低pH領域での適用を試みた結果、単に上記特許の適用ではホルムアルデヒドを処理できない領域が有ることを見出した。
【0015】
(1) ホルムアルデヒドを含む排水に対して、前記排水中に含まれるホルムアルデヒド1モル部に対して0.5モル部〜1.5モル部の下記一般式で示される尿素系化合物を添加する添加工程と、
前記尿素系化合物の添加によって生じる非水溶性固体を前記排水中から除去する除去工程と、を含み、
前記添加工程において、前記排水は、pHが3以下であり、温度が10℃〜50℃である、排水処理方法。
【0016】
【化1】
【0017】
(2) 前記添加工程において、前記排水は、pHが1以下である、(1)に記載の排水処理方法。
【0018】
(3) 前記尿素系化合物は、1分子中に3〜5個の活性水素を有する、(1)または(2)に記載の排水処理方法。
【0019】
(4) 前記尿素系化合物は、尿素、チオ尿素、ジシアンジアミド、ビウレットおよびシアノ尿素から選択される少なくとも1種である、(3)に記載の排水処理方法。
【0020】
(5) ホルムアルデヒドを含む排水から少なくとも一部のホルムアルデヒドを除去する、ホルムアルデヒドの除去方法であって、
ホルムアルデヒドを含む排水に対して、前記排水中に含まれるホルムアルデヒド1モル部に対して0.5モル部〜1.5モル部の下記一般式で示される尿素系化合物を添加する添加工程と、
前記尿素系化合物の添加によって生じる非水溶性固体を前記排水中から除去する除去工程と、を含み、
前記添加工程において、前記排水は、pHが3以下であり、温度が10℃〜50℃である、ホルムアルデヒドの除去方法。
【0021】
【化2】
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ホルムアルデヒドを含む排水のホルムアルデヒド濃度および有機物量に関する水質汚濁指標(特にCOD)を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の排水処理方法の一例を説明するためのフロー図である。
図2】実施例2における時間経過に伴うホルムアルデヒド濃度の推移を示すグラフである。
図3】表2の結果を示すグラフである。
図4】表1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、「%」は、特に記載のない場合、「質量%」を意味する。
【0025】
図1は、本実施形態の排水処理方法の一例を説明するためのフロー図である。図1を参照して、本実施形態の排水処理方法は、少なくとも尿素系化合物添加工程(S3)および除去工程(S4)を含む。なお、さらにpH調整工程(S1)および温度調整工程(S2)をしてもよい。以下、本実施形態の排水処理方法における各工程について説明する。
【0026】
[pH調整工程(S1)]
本工程では、ホルムアルデヒドを含む排水のpHを3以下に調整する。最初から排水のpHが3以下であれば、本工程は実施しなくてもよい。
【0027】
[温度調整工程(S2)]
本工程では、排水の温度を10℃〜50℃(好ましくは15〜45℃、より好ましくは20〜40℃)に調整する。最初から排水の温度が10〜50℃であれば、本工程は実施しなくてもよい。
【0028】
[尿素系化合物添加工程(S3)]
本工程では、前記排水中に含まれるホルムアルデヒド1モル部に対して0.5モル部〜1.5モル部(好ましくは0.9〜1.3モル部、より好ましくは0.95〜1.1モル部)の下記一般式で示される尿素系化合物を排水中に添加する。
【0029】
【化3】
【0030】
上記尿素系化合物は、1分子中に3〜5個の活性水素(Nに結合した水素)を有していることが好ましく、1分子中に3〜4個の活性水素を有することがより好ましい。
【0031】
前記尿素系化合物は、尿素、チオ尿素、ジシアンジアミド、ビウレットおよびシアノ尿素から選択される少なくとも1種であることが好ましい。尿素系化合物は、コスト面や入手し易さの観点からは、尿素であることがより好ましい。
【0032】
[除去工程(S4)]
本工程では、尿素系化合物の添加によって生じる非水溶性固体を排水中から除去する。除去方法としては、種々公知の固液分離法を用いることができる。
【0033】
以上のようにして、ホルムアルデヒドを含む排水のホルムアルデヒド濃度と、有機物量に関する水質汚濁指標と、を減少させることができる。
【0034】
なお、特許文献5に記載された方法においては、処理後に排水中に残存する可能性のある低分子量の尿素樹脂は水溶性であるために、CODとして検出されてしまう。このため、処理後も排水のCODが十分に低下せず、排水のCODを基準値以下にするために、さらなる処理が必要になる可能性がある。これに対して、本実施形態の排水処理方法によれば、低分子量の尿素樹脂が生じ難いため、排水の有機物量に関する水質汚濁指標のうち特にCODを十分に低下させることが可能である。
【0035】
なお、本発明者らの検討により、強酸性(pH3以下。特にpH1以下)の条件下では、特許文献5のように高温で処理すると廃液自体がゲル化し固液分離できなくなる場合があることが判明した。
【0036】
一般的な化学反応では、通常は、反応温度を高くすれば、反応速度も速まると考えられる。しかし、高温(例えば、50℃超)でホルムアルデヒドを含む排水(pH3以下)に尿素系化合物を添加し反応させると、尿素樹脂が析出せずに全て溶解した。反応後冷却しても、冷却後に全量析出することはなく、完全に固液分離することは困難であると考えられる。
【0037】
本実施形態の排水処理方法によれば、例えば、COD15000ppm程度のホルムアルデヒドを含む塩酸酸性(pH1以下)の排水に、モル比率0.9〜1.1の尿素(50%尿素液)を添加し、4時間程反応させ、得られる固形物(尿素樹脂)を固液分離法(ろ過など)により除去する。除去後の排水(ろ液)のCODは、800〜1500ppm程度に低下する。
【0038】
上述の排水処理方法が実施された処理後の排水に対しては、各種の2次処理を実施してもよい。2次処理方法としては、例えば、オゾンなど酸化剤処理、生物処理などが挙げられる。本実施形態においては、2次処理として、基本的にはアルカリ処理(ホルモース反応による糖転化など)は行わなくてもよい。
【0039】
なお、本実施形態における温度条件およびpH条件では固体にならなかった成分は、ホルムアルデヒドではなく、2級アミン構造を含む尿素樹脂水溶性オリゴマーとして、排水中に残存する。このオリゴマーは、ポリカルボン酸など置換水溶性高分子と、ポリイオン複合体を形成させ沈殿させて、一部を除去することもできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1) 尿素処理の反応時間
例えば、ベルパール製造工程からCOD成分としてホルムアルデヒドと塩酸を含む廃液が排出される(例えば、ホルムアルデヒド濃度:最高約7質量%、HCl濃度:約18質量%)。本実施例では、ホルムアルデヒドを含む排水として、ホルマリン2.0質量%、塩酸5.0質量%と微量のフェノール誘導体を含む排水を用いた。なお、排水のpHは0以下であった。
【0042】
排水500gに50wt%尿素水溶液をホルマリンに対する尿素のモル比が1.0となるように添加した(すなわち、50wt%尿素水溶液を40g添加した)。室温(20〜30℃)で攪拌すると、白色の尿素樹脂が1分程度で沈殿する。
【0043】
各反応時間におけるCODの測定結果を表1および図4に示す。なお、CODの測定は、JIS K 0102−17 工場排水試験法のCODMn条件によって実施した。
【0044】
【表1】
【0045】
原液(処理前の排水)のCODは15250ppmであり、攪拌開始1時間後のCODは1670ppmであり、5時間後のCODは1190ppmであった。5時間後のホルムアルデヒド濃度は200ppmであるため、その他のCOD源は低分子量の尿素とホルムアルデヒドとの反応物であると考えられる。
【0046】
撹拌速度の増加と反応容器中における尿素樹脂の残渣(residue)量が、尿素処理の反応時間に有効であると考えられる。
【0047】
(実施例2) 攪拌時間とホルムアルデヒド除去量の関係性
実施例1と同じ排水(pH:0以下)200gに対し、50wt%の尿素水溶液を30g添加(モル比0.534)し、時間経過とホルムアルデヒド濃度の関係性を調べた。結果を図2に示す。
【0048】
図2に示されるように、尿素水溶液を添加した直後から、ホルムアルデヒドが尿素との反応で約40分までに激しく消費され、濃度が薄くなった40分以降では反応速度が下がり、濃度変化は緩やかになった。しかし、攪拌を続けると緩やかではあるが、反応は進行する傾向も確認された。
【0049】
(実施例3)
実施例1においてモル比を0.8〜1.5まで推移させてCODの減少度を調査した。攪拌時間は、反応が終了しているであろう17時間とした。NaOHで中和後にCODを測定した。結果を表2および図3に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
CODの測定値は、原液の15250ppmに対し、モル比0.8では6300ppm(表2および図3に表示せず)、モル比0.9では1980ppm、モル比1.0では990ppm、モル比1.1では870ppm、モル比1.5では910ppmであった。
【0052】
この結果から、モル比0.9〜1.5(ホルマリン1モル部に対して0.9〜1.5モル部)の量の尿素系化合物を添加することが好ましく、モル比1.0〜1.1(ホルマリン1モル部に対して1.0〜1.1モル部)の量の尿素系化合物を添加することがより好ましいと考えられる。
【0053】
一方、総窒素量(T−N)を測定し尿素由来の残存度を調べた。T−Nの測定結果は、表2および図3に示した。T−Nは、モル比0.9で1000ppm、モル比1.0で930ppm、モル比1.1で1600ppm、モル比1.5で6300ppmとなった。このことから、モル比1.0以上の場合は窒素系化合物が過剰となり、尿素が濾液中に残存する傾向があると考えられる。したがって、T−Nも考慮すれば、窒素系化合物のモル比は0.9〜1.1であることがより好ましく、0.9〜1.0であることがさらに好ましいと考えられる。
【0054】
(実施例4) ETPテスト
500Lの排水に対して、表3に示す#1〜#5の条件での尿素処理を行った。CODおよびT−Nの測定結果を表2に示す。なお、尿素樹脂の水分含有率は33〜40質量%であった。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示されるように、多くの例において、CODが2000ppm以下まで低下しており、最も低いもので、CODが1000ppm以下に低下していた。また、撹拌を多くするほど、CODは低下すると考えられる。
【0057】
(比較例1)
従来の排水処理方法について処理後の排水のCODを測定した。具体的には、特許文献5(特公昭56−5593号公報)の実施例4と同様の処理を実施して、処理後の排水のCODを測定した。
【0058】
まず、市販のホルマリン液27g(HCHO:37%、CHOH:6%)を希釈し、HCHO:2%、CHOH:0.33%となる反応液500gを調製した。そこに16.5gの尿素を添加し、70℃で1時間半攪拌した。反応終了後25℃まで冷却し、CODを測定した。CODは、尿素投入前で18250ppm、反応終了後で7980ppmとなった。特許文献5の情報によると、この際HCHO濃度は340ppm程度であり、このCOD源の大部分は、尿素とホルムアルデヒドの誘導体で、分子量が小さく析出せず、溶液中に残存しているものと推測される。液中のメタノールは、3000ppm程度であり、70℃という温度はメタノールの沸点より高いため多少は揮発していると考えられる。同反応液に(本発明と同様の)モル比1.0で20.0gの尿素を添加し、同様の試験を行ったが、結果は9120ppmであった。
【0059】
これに対して、本発明では、例えば、排水(HCHO:2%、CHOHの含有はない)に尿素を添加し、CODを15200ppmから1190ppmまで落とすことが可能である。
【0060】
(実施例5) 尿素反応に対する温度の影響
一般的な化学反応は、反応温度を高くすることで反応速度が速まる傾向にある。しかし、尿素とHCHOの反応で生成する尿素樹脂の一部は40℃程度で溶解し、それがCOD源となる。一度溶解した尿素樹脂は、単純に冷却しても析出しにくく、尿素とHCHOの反応は、高温下(50℃超)で行うことは相応しくない。室温でも十分に速い反応とするために液中の酸性度を上げることが有効な手段である。
【0061】
実施例1に対して温度条件のみを変化させた際の尿素反応の影響を調べるための試験を行った。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4の結果から、温度を上げると、濾液中に溶解する尿素樹脂が増すためCODが増加することが分かる。40℃での反応は、反応終了後冷却すれば尿素樹脂は析出するが、50℃以上で生じた尿素樹脂は冷却しても析出せず、そのままCOD源として残ってしまい、排水中のCODはそれほど下がらない。
【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4