(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、光学コーティングおよびクリーニング容易なコーティングでコーティングされたガラス物品、当該ガラス物品を形成する方法および機器の実施形態について詳細に言及し、その実施例を、添付の図面に示す。可能であればいつでも、同じまたは同様の部分を参照するために、図面全体を通して同じ参照番号が使用されるであろう。コーティング機器の一実施形態を、
図1Aに図式的に示す。当該コーティング機器は、概して、中に磁性ドームが位置決めされている真空槽を具備する。当該コーティング機器はさらに、eビーム源、熱蒸発源、およびプラズマ源も具備する。コーティングされるガラス基板は、ドームの下側に磁気的に取り付けられ、それぞれeビーム源および熱蒸発源を使用して光学コーティングおよびETCコーティングでコーティングされ得る。実施形態において、被着された光学コーティング材料を高密度化させるためにプラズマ源が使用され得る。ガラス基板に光学コーティングおよびETCコーティングを連続して適用するための機器および方法の様々な実施形態について、添付の図面を具体的に参照しながら本明細書においてより詳細に説明されるであろう。
【0015】
本明細書において、用語「プロセス」および「方法」は、互換性を持って使用され得る。さらに本明細書において、用語「シャドウレス」および「シャドウフリー」は、本明細書において説明される方法および機器を使用して被着されたコーティングを有するガラス物品は、光学コーティングがガラス基板の表面全体に均一に被着されているため、従来の光学コーティング法および機器を使用して調製された光学コーティングを有するガラス物品において観察されるような影が観察されないことを意味する。従来法によりコーティングされたガラス物品において観察される当該影は、コーティングされている基板のエリアが光学コーティング材料の被着から基板の表面を遮る場合に生じる。これらの影は、多くの場合、コーティングプロセスの際にコーティングされる基板を適切な場所に保持するために使用される要素、あるいはキャリアおよびコーティングされる要素をコーターの中およびコーター外へ移動させるための基板キャリア上に存在する要素に隣接して観察される。
【0016】
用語「ガラス物品」および「ガラス基板」は、本明細書において互換性を持って使用され、概して、本明細書において説明される方法および機器を使用してコーティングされる任意のガラスアイテムを意味する。
【0017】
本開示は、高屈折率材料および低屈折率材料による交互の層を含む光学コーティング、例えばARコーティングなど、ならびにETCコーティング、例えば、ペルフルオロアルキルシランコーティングなど、の両方を、光学コーティングおよびETCコーティングの適用の際のいかなる時も物品を空気または周囲大気に晒すことなく、実質的に同じ手順を用いて、逐次段階においてガラス基板に適用する(すなわち、最初に光学コーティングを適用し、次いで当該光学コーティング上にETCコーティングを適用する)ことができるプロセスに関する。信頼できるETCコーティングは、ガラス、透明導電性コーティング(TCC)、および光学コーティングに潤滑を提供する。さらに、ガラスおよび光学コーティングの耐摩耗性は、
図10、11、および17Bに示されるように、コーティングが連続して適用されるその場での一段階プロセスを使用することにより、従来のコーティングプロセスの10倍を超えて良好であるか、あるいはETCコーティングを有さないARコーティングの100〜1000倍良好であろう。そのような技術を用いることにより、ETCコーティングは、設計の際に光学コーティングの一部と見なすことができ、そのため、ETCコーティングの所望の光学性能は変わらないであろう。本明細書において説明されるガラス物品は、光学コーティングされたガラスの表面においてシャドウフリーである。
【0018】
その場プロセスの特定の例は、
図1Aに図式的に表されたボックス型コーターである。当該ボックス型コーターは、光学コーティングのための電子ビーム(eビーム)源、ETCコーティング材料のための熱蒸発源、ならびにコーティング前の表面清浄化のためおよびコーティングの密度およびコーティング表面の平滑性を増加させさせるためのコーティングの際の光学コーティングの埋伏のためのイオンビームもしくはプラズマ源を備える。
【0019】
当該光学コーティングは、高屈折率材料と、中屈折率材料または低屈折率材料とで構成される。1.7以上3.0以下の屈折率nを有する例示的高屈折率材料としては、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、Y
2O
3、Si
3N
4、SrTiO
3、WO
3が挙げられ;1.5以上1.7以下の屈折率nを有する例示的中屈折率材料は、Al
2O
3であり;ならびに1.3以上1.6以下の屈折率nを有する例示的低屈折率材料としては、SiO
2、MgF
2、YF
3、YbF
3が挙げられる。基板上に被着された光学コーティングスタックは、指定された光学機能を提供するために、少なくとも1つの材料/層を含む。多くの場合、例えば、高屈折率材料としてのHfO
2と低屈折率材料としてのSiO
2など、高屈折率材料および低屈折率材料を使用することによって、複雑な光学フィルター(ARコーティングを含む)を設計することができる。当該コーティングにおける使用にとって好適なTCC(二成分コーティング)材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)、AZO(Alドープされた酸化亜鉛)、IZO(Zn安定化酸化インジウム)、In
2O
3、ならびに二成分および三成分酸化物化合物が挙げられる。
【0020】
実施形態において、光学コーティングは、PVDコーティング(ETCコーティングの熱蒸発によってスパッタまたはIAD−EBコーティングされた光学コーティング)を用いてガラス基板に適用され、PVDは、基板温度が100℃未満である「低温」プロセスである。結果として、コーティングが適用される、化学的に強化されたまたは焼き戻しされたガラス基板において強度の劣化は生じない。
【0021】
本明細書において説明される実施形態において、本明細書において説明されるシャドウフリーの光学コーティングおよびETCコーティングされたガラス物品を作製するために使用されるガラスは、イオン交換ガラスまたは非イオン交換ガラスであり得る。例示的ガラスとしては、シリカガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸塩ガラス、およびソーダ石灰ガラスが挙げられる。当該ガラス物品は、0.2mm〜1.5mmの範囲の厚さ、ならびに意図される目的にとって好適な長さおよび幅を有する。したがって、当該ガラス物品の長さおよび幅は、携帯電話からタブレット式コンピュータに至るその長さおよび幅の範囲であり得、またはさらに大きくあり得る。
【0022】
本明細書において言及される光学コーティングとしては、H. Angus Macleod,「Thin Film Optical Filters」,第三版,Institute of Physics Publishing,ブリストルおよびフィラデルフィア,2001年に記載されるような、反射防止コーティング(ARコーティング)、バンドバスフィルターコーティング、エッジニュートラルミラーコーティングおよびビームスプリッター、多層高反射率コーティングおよびエッジフィルターが挙げられる。そのような光学コーティングを使用する用途としては、ディスプレイ、カメラレンズ、通信機器部品、計器、医療装置、フォトクロミックおよびエレクトロクロミックデバイス、光起電デバイス、ならびに他の素子およびデバイスが挙げられる。
【0023】
高屈折率材料および低屈折率材料の交互の層を使用することにより、光学コーティング、例えば、紫外(「UV」)、可視(「VIS」)、および赤外(「IR」)用途のための反射防止もしくはアンチグレアコーティングなど、を作製することができる。当該光学コーティングは、様々な方法を用いて被着させることができる。本明細書では、当該光学コーティングを被着するために、例示的方法としてPVD法(すなわち、イオンアシスト電子ビーム蒸着)を使用する。当該光学コーティングは、高屈折率材料Hの少なくとも1層と低屈折率材料Lの少なくとも1層とを含む。多層コーティングは、複数の交互の高屈折率層および低屈折率層、例えば、HL,HL,HL...など、またはLH,LH,LH...など、からなる。一対のHL層(またはLH層)は、「周期」または「コーティング周期」と呼ばれる。全てまたはいくつかの低屈折率層において、低屈折率材料の代わりに中屈折率材料Mを使用することができる。用語「屈折率」は、本明細書において使用される場合、材料の屈折率を意味する。多層コーティングにおいて、周期の数は、意図される製品の機能に応じて大きく変わり得る。例えば、ARコーティングの場合、周期の数は、2以上20以下の範囲であり得る。SiO
2の最終光学キャッピング層を、最終層としてARコーティングの上に被着させることもできる。光学コーティングを周囲大気に晒すことなく、ETC材料を当該光学コーティングの上に被着させるために、様々な技術を使用することができ、そのような技術の例としては、これに限定されるわけではないが、熱蒸発、化学蒸着(CVD)、または原子層蒸着(ALD)が挙げられる。
【0024】
本明細書において説明されるガラス基板上に被着された光学コーティングは、高屈折率材料および低屈折率材料による少なくとも1つの周期を含む多層光学コーティングであり得る。高屈折率材料は、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、Y
2O
3、Si
3N
4、SrTiO
3、およびWO
3から選択することができるが、ただし、他の好適な高屈折率材料も使用することができることは理解されたい。低屈折率材料は、SiO
2、MgF
2、YF
3、およびYbF
3から選択することができるが、ただし、他の好適な低屈折率材料も使用することができることは理解されたい。いくつかの実施形態では、低屈折率材料は、中屈折率材料、例えばAl
2O
3、または別の好適な中屈折率材料で置き換えることができる。
【0025】
一実施形態において、本開示は、第一工程において、多層光学コーティングがガラス基板上に被着され、続く第二工程において、ETCコーティングが光学コーティングと同じ槽において熱的に蒸発されて被着するプロセスに関する。別の実施形態において、多層光学コーティングが、ある槽においてガラス基板上に被着され、続いて、第二槽において、熱蒸発によってETCコーティングが当該多層コーティング上に被着され、ただし、第一槽から第二槽への多層コーティングされた基板の移送が、多層コーティングの適用とETCコーティングの適用との間において当該基板が空気に晒されないような方式によりインラインにおいて実施される。採用されるコーティング技術としては、これらに限定されるわけではないが、PVD、CVD/PECVD、およびALDコーティング技術が挙げられる。槽のサイズおよびコーティングされる基板のサイズに応じて、1つまたは複数の基板を単一の槽内において同時にコーティングすることができる。
【0026】
当該多層光学コーティングは、典型的には、高屈折率コーティングがランタノイド系酸化物、例えば、La、Nb、Y、Gd、または他のランタノイド金属など、であり、ならびに低屈折率コーティングはSiO
2である、酸化物コーティングである。例えば、ETC材料は、フッ化シラン、典型的には、式(R
F)
xSiX
4−x[式中、R
Fは直鎖状C
6〜C
30アルキルペルフルオロカーボンであり、X=Clまたは−OCH
3−であり、ならびにx=2または3である]を有するアルキルペルフルオロカーボンシランであり得る。当該フルオロカーボンは、3nm以上50nm以下の範囲の炭素鎖長を有する。当該フルオロカーボンは、これらに限定されるわけではないが、Dow−Corning(例えば、フルオロカーボン2604および2634)、3M Company(例えば、ECC−1000および4000)、Daikin Corporation、Canon、Don(韓国)、Ceko(韓国)、Cotec−GmbH(例えば、DURALON UltraTec)、およびEvonikなどの供給元から商業的に得ることができる。
【0027】
図1Aは、本明細書において開示される1つまたは複数の実施形態による、コーティング機器100および当該機器の様々な操作要素を図式的に表している。参考のために座標軸を提供する。正面図において、xは横方向(すなわち、左右)であり、yは前後(すなわち、ページの奥および手前)であり、およびzは上下である。コーティング機器100は、概して、ドーム110を支持するフレーム160(
図3Bに詳細に示される)の一部であるリップ161(
図3Aに詳細に示される)を有する回転可能な磁性ドーム110を中に有する真空槽102を備える。当該ドームは、
図2に示されるように、ドームの下側に磁気的に取り付けられた複数の基板キャリア130を具備する。プラズマ源118が、真空槽102内のドーム110の下方に位置されており、これは、概して、ドーム110の下側に向かって、イオンまたはプラズマを上方に放出するように向けられている。当該プラズマ源は、光学コーティング材料が被着される時および/または被着後にそれを高密度化するために使用され、それにより、完成された光学コーティングの硬度が高められる。詳細には、当該プラズマ源から放出されたイオンまたはプラズマが、被着中および/またはコーティング層が適用された後にコーティングに衝突し、結果として、当該被着された材料の高密度化を生じる。当該被着された光学コーティングの密度を高めることにより、光学コーティングの耐摩耗性が向上する。例えば、いくつかの実施形態において、当該被着された光学コーティングは、プラズマ源を使用せずに被着された光学コーティングの少なくとも2倍の摩耗信頼性または耐摩耗性を有する。
【0028】
当該コーティング機器はさらに、光学材料を蒸発させるために、ドーム110の下方に位置されたeビーム源120、およびeビーム源からのeビームを、ガラス基板に適用される光学コーティング材料に向けるためのeビーム反射板122を有する。シャドウマスク125がドーム110の下方に位置されており、当該シャドウマスクがドームの全域での均一なコーティングを可能にする。当該シャドウマスク125の形状および位置は調節可能であり、それにより、当該シャドウマスクは、所望のコーティング均一性を達成するように「チューナブル」である。シャドウマスク125は、支持体125a上に位置決めされており、それにより、シャドウマスク125の位置を、両端が矢印の点線によって示されるように支持体125aに沿って垂直に調節することができる。支持体125a上のシャドウマスク125の位置は、光学コーティングが適用されるときにシャドウマスクがプラズマ源118から放出されるイオンまたはプラズマからドーム110の下側に位置されたガラス基板を遮らないように、必要に応じて調節することができる。
図1Aは、単一のeビーム源120を表しているが、光学コーティングのために材料による必要な数の個々の層を被着することが必要な場合、例えば、Nb
2O
5からSiO
2への変更および再び元に戻すなど、あるコーティング材料を別のコーティング材料に変更するための時間を最小限に抑えるために、複数のeビーム源を使用することも可能であることは理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、当該コーティング機器は、2つ以上6つ以下のeビーム源を有し得る。複数のeビーム源が使用される場合、各eビーム源を、コーティングされる材料を保持している別々の容器(すなわち、本明細書において詳細に説明される舟形容器126)に向けることもできる。
【0029】
コーティング機器100はさらに、光学コーティング材料を収容する複数の舟形容器126を有する光学コーティングキャリア124を備える。当該舟形容器126は、光学コーティング層を被着させるために使用される異なる材料を収容するために使用される別々の供給源容器である。光学コーティングキャリア124は、eビーム源120から放出されるeビームがeビーム反射板122によって舟形容器126に収容されている光学コーティング材料上へと反射され、それにより当該光学コーティング材料を蒸発させることができるように真空槽102内に位置決めされる。舟形容器126は、一度に1つのタイプのコーティング材料(例えば、高屈折率材料、低屈折率材料、または中屈折率材料のいずれか)のみが適用されるように、異なる光学コーティング材料を収容する。1つのコーティング材料が適切な厚さに達した後、対応する舟形容器の蓋(図示されず)が閉じられ、適用される異なるコーティング材料を収容する別の舟形容器の蓋が開かれる。この方式において、高屈折率材料、低屈折率材料、または中屈折率材料を交互に適用することにより、所望の光学特性を有する光学コーティング材料を形成することができる。
【0030】
コーティング機器100はさらに、ドーム110の下側に維持されているガラス基板上へのコーティング材料の被着を容易にするためにETCコーティング材料を蒸発させるための少なくとも1つの熱蒸発源128も備える。当該少なくとも1つの熱蒸発源128が、真空槽102内のドーム110の下方に位置決めされる。
【0031】
引き続き
図1Aを参照すると、ドーム110は、磁性であるかまたは磁性材料を含有する軽質材料、例えば、これらに限定されるわけではないが、アルミニウム含有鉄または他の好適な磁性材料など、で作製されている。ドーム110は、時計回りまたは反時計回りのいずれかに回転させることができる。ドームの中心の上部には、開口部164(
図3Bに図示される)があり、当該開口部を覆うようにドームの下側に透明ガラスプレート116が位置されている。当該透明ガラスプレート116は、
図1Bに表された当該透明ガラスプレート116の拡大図に表されるような開口部116aを具備し得る。クォーツモニター114が、その中に受け入れられて透明ガラスプレート116を貫通する。図示されるように、光ファイバー112は透明ガラスプレート116の上方に位置決めされる。クォーツモニター114は、コーティング材料の被着速度が実質的に一定に維持されるようにeビーム電源にフィードバックすることによって、光学材料の被着速度を制御する。光ファイバー112は、真空槽102内において被着材料から保護されるように、透明ガラスプレート116の上方に位置決めされる。当該光ファイバーは、目的とする設計厚さに達したことによるコーティング材料の各層の被着を止めるべきタイミングを特定するために、反射率を測定する。
【0032】
図1Cは、
図1Aの透明ガラスプレート116の丸で囲まれたエリアの拡大図であり、光ファイバー112、クォーツモニター114、および透明ガラスプレート116の相対配向を示している。クォーツモニター114は、透明ガラスプレート116の中央に位置決めされ、開口部116aを貫通している。光ファイバー112は、クォーツモニター114の横に位置決めされる。光ファイバー112によって伝送された光は、透明ガラスプレート116を通り抜け、ならびに透明ガラスプレートの表面がコーティングされるに伴って反射される。%Rの横の矢印は、透明ガラスプレートがコーティングされている場合の透明ガラスプレートの表面116bからの光の反射を図式的に表している。当該反射は、透明ガラスプレートの表面116bに適用されるコーティングの厚さと共に増加する。透明ガラスプレートの表面116bから反射される光は、eビーム源のコントローラー(図示されず)に連結された光センサー(図示されず)へと戻される。当該光センサーの出力(適用された光学コーティングおよび/またはETCコーティングの厚さの標示である)は、コーティングの被着厚さを特定するためにコントローラーによって利用される。そのため、当該反射光を使用することにより、個々の層、コーティング周期、および光学コーティング全体の被着された厚さ、ならびにETCコーティングの被着厚さを制御することができる。
【0033】
ドーム110の上部には、平行な点線で示されている真空シールドされた回転シャフト117が取り付けられている。当該真空シールドされた回転シャフト117は、当該真空シールドされた回転シャフト117およびドーム110を回転させるために当該真空シールドされた回転シャフトに取り付けられた真空密封ベアリング119を有する。したがって、当該真空シールドされた回転シャフト117は、ドーム110の上に対して真空密封されていることを理解されたい。当該真空シールドされた回転シャフト117は、真空槽102の外部に位置された外部モーター(図示されず)によって駆動される。ある実施形態において、ドーム110は、約20rpm〜約120rpmの範囲の回転数において回転させることができる。別の実施形態において、当該回転数は、約40rpm〜約83rpmの範囲である。
【0034】
図2は、ドーム110のセグメント110aを図式的に表している。
図2に示されているように、複数の基板キャリア130が、ドーム110に磁気的に取り付けられている。当該基板キャリア130は、コーティング機器100においてコーティングのためにガラス基板を固定するために用いられる。
【0035】
図3Aは、複数の基板キャリア130がドーム110に磁気的に取り付けられているリップ161を示している、ドーム110のセグメント110aの下方斜視図を示す図である。
図3Bは、複数のセグメント110aを支持するために使用されるフレーム160の図である。フレーム160は、外側リップ161(
図3Aに表されるような)、真空シールドされた回転シャフト117を取り付けることができる(図示されず)開口部164に隣接する内側リム(付番されていない)、および当該内側リムから外側に放射状に延びている複数のスポーク162を有する。スポーク162は、168において図示されるように、ドームセグメントの横端部を収容できるほど十分に広い。
【0036】
図17Aは、光学コーティングおよびETCコーティングを基板上に被着させるためのコーティング機器の代替の実施形態の簡略図である。この実施形態において、当該コーティング機器は、基板上に被着された光学コーティングの均一性を高めるためにドームの選択されたエリアを覆うシャドウマスク127を具備する。シャドウマスク127を調節可能に支持するための支持体は、
図17Aには描かれていない。
図17Aのコーティング機器において、プラズマ源は、イオン源118aである。光学コーティング材料を蒸発させるために使用されるイオン源118aおよびeビーム源120は、真空槽の異なる側に位置されているため、イオン源はシャドウマスクによって遮蔽されず、したがって、被着された光学コーティング材料の硬化におけるイオン源118aの効力が向上する。当該イオン源は、光学コーティング材料の密度をバルク密度近くまで高めるために使用され、その結果、光学コーティングの硬度が高まり、光学コーティングの摩耗信頼性/耐摩耗性が向上する。
【0037】
ここで、
図4Aおよび4Bを参照すると、単一のサイズの基板を担持するように作製された基板キャリア130が図式的に描かれている。
図4Aに示されているように、基板キャリア130は、非磁性基板キャリアベース131と、当該キャリアをドーム110に磁気的に取り付けるためおよび当該基板キャリアをドームからある距離を離して位置決めするための複数の磁石134とを有する。基板キャリア130はさらに、ガラス基板140の表面を支持する(
図4Bに示されている)ための複数のピン136およびバネシステム132も具備する。バネシステム132は、概して、矢印によって示される方向に格納可能なピン138aを付勢するバネ133(矢印として図式的に描かれている)によって適切な場所に保持される格納可能なピン138aと、複数の固定されたピン138bとを具備する。ピン138aおよび138bは、ガラス基板がコーティングされる間、当該ガラス基板140(点線で示されている)を基板キャリア130上の適切な場所に保持するために使用される。
図4Bは、基板キャリアベース表面131aからある距離を非磁性基板キャリアベース131中へと延びているピン136上に支持されているガラス基板140、基板キャリア130の表面131aから当該基板キャリアを貫通しベース131bを超えてある距離を延びる複数の磁石134、非磁性基板キャリアベース131から、ガラス基板140の上面140aからある距離まで延びるサイドストッパー150を示している、
図4Aの側面図である。サイドストッパー150は、コーティングの適用に影響を及ぼすことはなく、非磁性基板キャリアベース131上のガラス基板を配向させ、したがって、ガラス基板の表面上に「影」が生じるのを防ぐ。詳細には、ガラス基板の上面140aは、光学コーティングおよびクリーニング容易なコーティングによってコーティングされるであろう表面である。厚さ5mmのガラス基板の場合、サイドストッパー150の上部は、ガラス基板140の上面140aの下方2〜3mmの範囲に位置されるであろう。基板キャリアの中央の開口部(付番されず)は、キャリアの重さを減じる。
【0038】
ここで、
図15を参照すると、
図4Aに示された固定式の基板キャリア130に類似する調節可能な基板キャリア130aが表されている。当該調節可能な基板キャリア130aは、上記において説明したようなコーティング機器のドームに当該調節可能な基板キャリアを取り付けるための複数の磁石134を具備する非磁性基板キャリアベース131を有する。当該調節可能な基板キャリア130aはさらに、当該調節可能な基板キャリア130a上に位置決めされたガラス基板の表面を支持するために当該基板キャリアの表面から延びる複数のピン136も具備する。ハウジング138aaは、当該調節可能な基板キャリア130aの端部に近接して位置決めされ、格納可能なピン138a(ハウジングから部分的に延びている様子が描かれている)を収容する。ハウジング138aaは、当該ハウジング138aa内に位置決めされたバネ(図示されず)を具備する。当該バネは、格納可能なピン138aを、ハウジング138aaから外向きに付勢する。当該調節可能な基板キャリア130aは、任意により、当該調節可能な基板キャリア130a上のガラス基板を配向させるためのサイドストッパー150a(
図15には示されていない)を具備していてもよい。
図15に表される実施形態において、調節可能な基板キャリア130aはさらに、ガラス基板の端部を保持するための複数の可動式のピン139も具備する。当該可動式のピン139は、当該可動式のピン139を調節可能な基板キャリア130aに対して調節可能に位置決めするのを容易にするために、トラック137中に位置決めされる。当該可動式のピン139は、格納可能なピン138aとの組合せにおいて、異なるサイズの基板に対する単一のキャリアの使用を可能にする。基板上にシャドウフリーコーティングが形成されるように、当該ピンと、
図4Aに関して上記において説明したのと同じ方式の任意選択のサイドストッパー150aとによって基板が保持され得る。
【0039】
前述の文章に示されるように、基板キャリア130、130aは、非磁性基板キャリアベース131と、当該キャリアをドーム110からある距離を離して当該ドームに固定するための複数の磁石134とを有する。これらの磁性キャリアの使用は、レンズなどの光学要素のコーティングにおいて使用されるドームキャリアに対する改良である。例えば、
図16Aは、コーティングされるレンズを位置決めするための複数の開口部302を有する従来のドームキャリア300を例示している。レンズがコーティングされる時、それらは、キャリアの開口部に挿入される。しかしながら、この従来の設計では、ドームの内側と外側の両方を均一にコーティングすることが困難である。コーティングしないレンズ表面からコーティング材料を遠ざけておくことも困難である。さらに、コーティングされる部分は、ドームが加熱されるときにドームの開口部に対して移動する可能性があり、結果として、コーティング後にドームが冷却されるときに損傷する。例えば、
図16Bには、支持体の一方の肩部306からドームキャリアの開口部302の内側へと滑り落ちているレンズ304が示されている。容易に分かるように、キャリアがレンズ304より急速に冷却される場合、キャリアの収縮がレンズの破壊の原因となり得る。本出願において、基板キャリアは、キャリアをドームに保持している磁石によってドームからある距離に離されているので、熱伝達が最小限に抑えられ、ドームが冷却されるときにレンズの破壊が生じない。さらに、キャリア/基板の組合せがドームの内側表面に近接しているため、コーティングされるガラス物品の片面のみがコーティング材料に晒される。結果として、従来のドームキャリアにおける上記において言及された欠点を回避することができる。
【0040】
ここで、
図5を参照すると、格納可能なピン138aによってガラス基板に対して加えられる力によってガラス基板を保持しているピン138aおよび138bの断面が図式的に表されている。ガラス基板は、ピン138aおよび138bのヘッド138hとピンの本体の残りと部分との間に適合するように成形された端部を有する。ガラス基板の端部は、141において示されるように角が面取りされ得るか、丸められ得るか、丸い角に加工され得るか、または別の形状に輪郭形成され得る。ガラス基板140が、ピン138a、138bと嵌合される場合、ガラス基板の上部140aは、ピン138aまたは138bの上部より2〜3mm下方に位置される。この図において、符番140bは、ガラス基板140の底面を示している。
【0041】
ここで
図4Aおよび
図6を参照すると、ガラス基板140は基板キャリア130上に載置されており、ガラス基板140と基板キャリア130との当該組合せは、ドーム110の下側に磁気的に取り付けられている。コーティングのために、ガラス基板140(点線)を伴う基板キャリア130がドーム110上に載置される場合、格納可能なピン138aは、矢印で示されるようなドーム110の回転方向に対して垂直に位置決めされ、すなわち、当該ピンは、ドーム110の上部Tにおける開口部に対して、固定されたピン138bよりも近くに位置されている。基板キャリアがそのように位置決めされる場合、光学コーティングがガラス基板140の表面全体に均一に被着されて、「シャドウレス」または「シャドウフリー」のコーティングされたガラス基板140が形成される。これらの用語「シャドウレス」および「シャドウフリー」は、
(1)格納可能なピン138aは、
図6において説明および図示されるように、ドーム110上に接して位置決めされておらず、ならびに
(2)ガラス基板140の上面140aは、ピン138aのヘッド138hより1mmを超えて下方に位置されており、ならびに
(3)サイドストッパー150の上部は、上面140aよりも低い位置にある、
場合には、基板を保持するこれらの要素および他の要素が位置されているエリアでは光学コーティングの被着は不均一となるであろうという事実を意味する。結果として、当該光学コーティングは、これらの要素の近くにおいてより薄く、それらから離れるほどより厚くなるであろう。この結果は、不均一な光学被着または物品の使用者が認識できる「影」である。そのような影は、本開示において説明される機器および方法を使用することにより避けることができる。
【0042】
図1Aを参照すると、調節可能な基板キャリア130aがドーム110に磁気的に取り付けられると、ガラス基板に光学コーティングを適用するための材料が光学コーティングキャリア124の別々の舟形容器126(すなわち、別々の供給源容器)に装入される。上述において述べたように、光学コーティングは、高屈折率材料と低屈折率材料との交互の層あるいは高屈折率材料と中屈折率材料との交互の層で構成される。1.7以上3.0以下の屈折率nを有する例示的な高屈折率材料は、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、Y
2O
3、Si
3N
4、SrTiO
3、WO
3であり、1.5以上1.7以下の屈折率nを有する例示的な中屈折率材料は、Al
2O
3であり、1.3以上1.6以下の屈折率nを有する例示的低屈折率材料は、SiO
2、MgF
2、YF
3、YbF
3である。いくつかの実施形態において、低屈折率層Lを形成するために、中屈折率材料が使用され得る。したがって、いくつかの実施形態において、低屈折率材料は、SiO
2、MgF
2、YF
3、YbF
3、およびAl
2O
3から選択され得る。例示的実施形態において、光学コーティング材料は、高屈折率コーティングがランタノイド系酸化物、例えば、La、Nb、Y、Gd、または他のランタノイド金属などであり、低屈折率コーティングがSiO
2である、酸化物コーティングである。さらに、クリーニング容易な(ETC)コーティングを適用するための材料が、少なくとも1つの熱蒸発源128に装入される。上述において述べられているように、ETC材料は、例えば、フッ化シラン、典型的には、式(R
F)
xSiX
4−x[式中、R
Fは直鎖状C
6〜C
30アルキルペルフルオロカーボンであり、X=Clまたは−OCH
3−であり、ならびにx=2または3である]を有するアルキルペルフルオロカーボンシランであり得る。フルオロカーボンは、3nm以上50nm以下の炭素鎖長を有する。
【0043】
コーティング材料が装入されると、真空槽102が密封されて、10
−4Torr以下まで減圧される。次いで、ドーム110が、真空シールドされた回転シャフト117によって真空槽内において回転される。次いで、プラズマ源118が活性化されて、イオンおよび/またはプラズマが、ドーム110の下側に位置決めされたガラス基板に向かって放出され、光学コーティング材料が当該ガラス基板に適用されていると共に当該コーティング材料が高密度化される。その後、光学コーティングおよびETCコーティングが、当該ガラス基板に連続して適用される。最初に、光学コーティングキャリア124の舟形容器126に入れられた光学材料を蒸発させることによって光学コーティングが適用される。詳細には、eビーム源120が稼働され、eビーム反射板122によって光学コーティングキャリア124の舟形容器126上に向けられた電子ストリームが放出される。ガラス基板は、ドーム110内で回転されながら、蒸発した材料が当該ガラス基板の表面上に被着される。ドーム110の回転は、シャドウマスク125および基板キャリア130上でのガラス基板の配向と併せて、光学コーティング材料が基板キャリア上に均一にコーティングされるのを可能にし、それにより、ガラス基板のコーティングされた表面に「影」が生じるのを防ぐことができる。上述において説明したように、eビーム源120は、高屈折率材料および低屈折率材料もしくは中屈折率材料の層を連続して被着させて所望の光学特性を有する光学コーティングを達成するために用いられる。本明細書において説明されるように、被着された材料の厚さをモニターし、それにより光学コーティングの被着を制御するために、クォーツモニター114および光ファイバー112が用いられる。
【0044】
所望のコーティング材料を使用して所望の厚さまで光学コーティングがガラス基板に適用されると、光学コーティングが停止され、ドーム110と共にガラス基板を回転させながら熱蒸発によって、当該光学コーティングの上にETCコーティングが適用される。詳細には、少なくとも1つの熱蒸発源128に位置決めされたETC材料が加熱され、それにより、真空槽102内においてETC材料が蒸発する。蒸発したETC材料は、凝縮によりガラス基板上に被着される。ドーム110の回転は、基板キャリア130上のガラス基板の配向と併せて、ガラス基板上へのETC材料の均一なコーティングを容易にする。本明細書において説明されるように、被着された材料の厚さをモニターし、それによりETCコーティングの被着を制御するために、クォーツモニター114および光ファイバー112が用いられる。
【0045】
図7(a)〜(c)は、ガラスまたは酸化物光学コーティングとのフッ化シランのグラフト化反応(すなわち、ETCコーティング材料とガラスまたは酸化物光学コーティングとの間の反応)の概略図である。
図7cは、フルオロカーボントリクロロシランがガラスへグラフト化された場合、シランのケイ素原子は、(1)ガラス基板または基板上の多層酸化物コーティングの表面に三重に結合(3つのSi−O結合)し得るか、または(2)ガラス基板に二重に結合し、ならびに隣接するR
FSi部分に結合した1つのSi−OーSi結合を有し得ることを示している。ETCコーティングのプロセス時間は、非常に短く、ならびに、真空を破ることなく(すなわち、光学コーティングを周囲大気に晒すことなく)、新たに適用された光学コーティング材料上に3nm以上50nm以下の範囲の厚さを有するETCコーティングを提供するために使用することができる。本明細書において説明されるコーティングプロセスにおいて、ETC材料は、単一の供給源から蒸発される。ただし、ETC材料は、同時に複数の供給源から蒸発させることもできることを理解されたい。例えば、2〜5つの別々のETC材料供給源が有利であり得ることが見出されている。詳細には、ETC材料を収容する複数の供給源の使用により、結果として、より均一なETCコーティングが得られ、コーティングの耐久性を増強することができる。用語「供給源」は、本明細書において使用される場合、そこからETCが熱的に蒸発される容器またはるつぼを意味する。
【0046】
本明細書において説明される実施形態において、SiO
2層は、概して、光学コーティングのためのキャッピング層として適用される。当該SiO
2層は、概して、ETCコーティングの被着の前に、光学コーティングの一部として被着される。このSiO
2層は、これらの層が遊離OHの不在下で高真空(10
−4〜10
−6Torr)において被着される場合、ETCコーティングのケイ素原子のグラフト化および架橋のための高密度の表面を提供する。遊離OHは、ETC材料中のケイ素原子が金属酸化物または酸化ケイ素表面、すなわち光学コーティング表面、の酸素原子と結合するのを妨害するので、遊離OH、例えば、ガラスまたはAR表面上の水の薄層は、ETC材料被着の際に有害である。被着機器における真空が破られる場合、すなわち、機器が大気に対して開放される場合、環境から空気(水蒸気を含有する)が流入し、空気に晒されると、ETCコーティングのケイ素原子が光学コーティング表面と反応することによりETCケイ素原子と表面酸素原子との間に少なくとも1つの化学結合が形成され、ならびにアルコールまたは酸が放出される。ETCコーティング材料は、典型的には、1〜2つのフッ化基と、2〜3つの反応性基、例えばCH
3O−基など、を有するので、ETCコーティングは、光学コーティング表面において2〜3個の酸素原子と結合するか、または
図7(c)に示されるような別のコーティング分子と架橋して、強く結合したETCコーティングを形成することができる。PVD蒸着されたSiO
2表面は、純粋な元の状態のままであり、反応性表面を有している。例えば、PVD蒸着されたSiO
2キャップ層の場合、
図8に示されるように、結合反応は、複雑な表面化学を有するガラス、またはその上に環境汚染物を有するガラス、またはガラス表面上に水の相を有するようなガラス上よりも、はるかに低い活性化エネルギーを有する。
【0047】
したがって、ETCコーティングが光学コーティング上に適用されると、光学コーティングおよびETCコーティングを有するガラス基板が槽から取り出され、空気中において硬化される。単に室温(およそ18〜25℃、相対湿度(RH)40%)に置くことによって硬化させる場合、当該硬化は、1〜3日を要するであろう。硬化を促進させるために、高温を利用することもできる。例えば、一実施形態において、ETCコーティングされた物品は、約10分〜約30分間、50%〜100%の範囲のRHにおいて、80〜100℃の温度に加熱され得る。典型的には、相対湿度は、50〜85℃の範囲である。
【0048】
ETCコーティングが硬化されると、光学コーティングに結合していない任意のETC材料を除去するために、当該コーティングの表面が、柔らかいブラシまたはイソプロピルアルコールワイプで拭かれる。
【0049】
本明細書において説明される方法および機器は、コーティングされたガラス物品、例えば、光学コーティング(例えば、ARコーティングまたは同様の光学的機能性コーティング)および当該光学コーティング上に位置決めされたETCコーティングの両方を有するコーティングされたガラス基板など、を製造するために使用することができる。本明細書において説明される方法および機器を用いることにより、コーティングされたガラス物品は、概して、ガラス物品の光学的にコーティングされた表面全域においてシャドウフリーである。実施形態において、ガラス物品に適用された光学コーティングは、1.7以上3.0以下の屈折率nを有する高屈折率材料Hの層と、1.3以上1.6以下の屈折率nを有する低屈折率材料Lの層とからなる複数の周期を有し得る。高屈折率材料の層は、各周期の第一層であり得、低屈折率材料Lの層は、各周期の第二層であり得る。あるいは、低屈折率材料の層は、各周期の第一層であり得、ならびに高屈折率材料Hの層は、各周期の第二層であり得る。いくつかの実施形態において、光学コーティングにおけるコーティング周期の数は、2以上1000以下であり得る。当該光学コーティングはさらに、SiO
2のキャッピング層も含み得る。当該キャッピング層は、1つまたは複数の周期の上に適用され得、ならびに20nm以上200nm以下の範囲の厚さを有し得る。本明細書において説明される実施形態において、光学コーティングは、100nm以上2000nm以下の範囲の厚さを有し得る。しかしながら、コーティングされた物品の意図される使用法に応じて、さらに厚くすることも可能である。例えば、いくつかの実施形態において、光学コーティングの厚さは、100nm〜2000nmの範囲であり得る。いくつかの他の実施形態において、光学コーティングの厚さは、400nm〜1200nmの範囲、さらには400nm〜1500nmの範囲であり得る。
【0050】
高屈折率材料および低屈折率材料の各層の厚さは、5nm以上200nm以下の範囲であり得る。高屈折率材料および低屈折率材料の各層の厚さは、5nm以上100nm以下の範囲であり得る。本明細書においてさらに詳細に説明されるであろうように、コーティングされたガラス物品は、本明細書において用いた特定のコーティング方法および技術に対し、向上した耐摩耗性を示す。ガラス物品に適用されたコーティングの劣化は、ガラスコーティングに摩耗試験を行った後の水接触角によって評価することができる。摩耗試験は、グレード0000#のスチールウールにより10kg垂直負荷下においてガラス基板のコーティング表面を擦ることによって実施した。摩耗エリアは10mm×10mmである。摩耗の頻度は60Hzであり、スチールウールの移動距離は50mmである。摩耗試験は、相対湿度RH<40%において実施される。本明細書において説明される実施形態において、ガラス物品は、6,000回の摩耗サイクル後に少なくとも75°の水接触角を有する。いくつかの実施形態において、ガラス物品は、6,000回の摩耗サイクル後に少なくとも105°の水接触角を有する。さらに他の実施形態において、ガラス物品は、10,600回の摩耗サイクル後に90°を超える水接触角を有する。
【0051】
摩耗および劣化に対するガラス物品の耐性は、摩耗試験後のガラス物品に存在するスクラッチの長さによっても評価することができる。本明細書において説明される実施形態において、当該コーティングされたガラス物品は、8000回の摩耗サイクルの後での表面スクラッチ長さは2mm未満である。
【0052】
さらに、摩耗および劣化に対するガラス物品の耐性は、本明細書においてより詳細に説明されるように、摩耗試験後のガラス物品の反射率および/または透過率における変化によっても評価することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも8,000回の摩耗/ワイピングサイクル後のガラス物品の反射率%は、未摩耗/未ワイプのガラス物品の反射率%と実質的に同じである。いくつかの実施形態において、少なくとも8,000回の摩耗/ワイピングサイクル後のガラス物品の透過率%は、未摩耗/未ワイプのガラス物品の透過率%と実質的に同じである。
【0053】
本明細書において説明される被着方法を使用することにより、シャドウフリーの光学コーティングを製造することができる。これは、光学コーティングが、ガラス基板のコーティング面全体に均一に被着されていることを意味している。本明細書において説明されるコーティングされたガラス基板の実施形態において、ガラス基板の光学コーティングの第一端部から当該光学コーティングの第二端部までの光学コーティングの厚さにおける変動は4%未満である。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス基板の光学コーティングの第一端部から当該光学コーティングの第二端部までの光学コーティングの厚さにおける変動は3%以下である。いくつかの実施形態において、ガラス基板の光学コーティングの第一端部から当該光学コーティングの第二端部までの光学コーティングの厚さにおける変動は2%以下である。さらなる他の実施形態において、ガラス基板の光学コーティングの第一端部から当該光学コーティングの第二端部までの光学コーティングの厚さにおける変動は1%以下である。
【0054】
イオンアシスト電子ビーム蒸着は、小さいサイズまたは中程度のサイズのガラス基板、例えば、槽サイズに応じて、およそ40mm×60mmからおよそ180mm×320mmの範囲の面寸法を有するものなど、へのコーティングに対して独特な利点を提供する。イオンアシストコーティングプロセスは、ETCコーティングの性能および信頼性に影響を及ぼすかもしれない表面汚染(水または他の環境性のもの)が存在しないので、ガラス表面に、後続のETCコーティングの適用に対して、低い表面活性化エネルギーを有する新しく被着された光学コーティングを提供する。光学コーティングの完了直後でのETCコーティングの適用は、2つのフルオロカーボン官能基の間の架橋を向上させ、耐摩耗性を向上させ、ならびにコーティングに対する数千回の摩耗サイクル後の接触角性能を向上させる(より高い撥油性および撥水性の接触角)。さらに、イオンアシスト電子ビームコーティングは、コーティングサイクル時間を大幅に減少させ、それによりコーター利用率およびスループットを高める。さらに、光学コーティング表面の低い活性化エネルギーが、加熱のできない後続のETCプロセスに対して当該プロセスを適合可能にするため、被着後のETCコーティングの熱処理またはUV硬化を必要としない。本明細書において説明されるイオンアシスト電子ビームPVDプロセスを使用することにより、選択された領域にETC材料をコーティングすることができ、基板の他の場所への汚染を防ぐことができる。
【実施例1】
【0055】
4層SiO
2/Nb
2O
5/SiO
2/Nb
2O
5/基板のAR光学コーティングを、およそ115mmL×60mmW×0.7mmTの寸法(長さ、幅、厚さ)のGorilla(商標) Glass(Corning Incorporatedから市販されている)60枚の上に被着させた。当該コーティングを、本明細書において説明した方法を用いて被着させた。当該ARコーティングは、およそ600nmの厚さを有していた。ARコーティングの被着後、5nm〜20nmの範囲の炭素鎖長を有するペルフルオロアルキルトリクロロシラン(Optool(商標)フルオロコーティング(Datkin Industries)を例示的種として使用した)を用いた熱蒸発により、ETCコーティングを当該ARコーティングの上に適用した。ARおよびETCコーティングの被着は、
図1Aに示されるような単一の槽コーティング機器において実施した。ARコーティングを被着させた後、当該ARコーティングの供給源材料を遮断し、ETC材料を熱的に蒸発させて、当該ARコーティングされたガラスに被着させた。当該コーティングプロセスは、部品の導入/導出を含めて73分間であった。続いて、ETCコーティングを硬化させた後、表1に示されるような様々な摩耗サイクルを使用して表面を擦った後に水接触角を測定した。摩耗試験は、#0スチールウールにより1kgの荷重において実施した。表1のデータは、試料が非常に良好な摩耗特性および撥水性を有していることを示している。表2には、ガラス基板上の6層のNb
2O
5/SiO
2コーティングのコーティング順および層厚が示されている。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【実施例2】
【0058】
この実施例において、実施例1において使用したのと同じフルオロコーティングを、ラップトップコンピュータにおいて使用される光ファイバー206での使用のための
図9に示されるような光コネクターのためのGRINレンズ上にコーティングした。数字200および矢印は、粒子および摩耗抵抗性を提供するために850nmのARコーティングの上にETCコーティングを位置するためのGRINレンズ208の選択領域を指し示している。数字202は、ラップトップまたはタブレット型デバイスへの光ファイバーの接続を示しており、数字204は、メディアドックにラップトップを接続するための、コーティングされた光ファイバーの使用を示している。
【0059】
図10は、基板/(Nb
2O
5/SiO
2)×3からなる6層のARコーティング上に熱的に被着された8〜10nmのETCコーティング(ETC/6L−ARコーティング)を有するガラス物品と、それに対する、スプレーコーティングされたETCコーティングのみを有するガラス試料との摩耗試験データである。当該ガラスは0.7mmの厚さの化学的に強化された(イオン交換された)ガラスである市販のCorning code 2319ガラスであった。摩耗試験は、以下の条件下:グレード0000#のスチールウール、10mm×10mmエリアでの10kgの荷重、60Hz、50mmの移動距離、RH<40%、において実施した。75°を超える水接触角は、コーティング破損を判断するための評価基準である。ETCコーティングなしのARコーティングを有するガラスは、10〜20回だけのワイピングサイクル後にスクラッチ損傷したことが見出された。
図10は、両方のガラス試料が、120°の水接触角において開始され、6000回の摩耗サイクル後に、ETCコーティングのみを有するガラス試料は、80°の水接触角を有しているのに対し、本明細書において説明されるように作製されたガラス試料、すなわち、ETC/6層のARコーティングを有するガラス試料は、少なくとも105°の水接触角を有していたことを示している。10,000回の摩耗サイクル後、ETC/6層のARコーティングをコーティングされた物品の水接触角は90°を超えていた。当該試験は、ARコーティングの上に被着されたETCコーティングを有するガラス物品は、ガラスにETCコーティングのみが適用されているガラス物品よりも、はるかに優れた耐スクラッチ性を有することを明確に示している。
【0060】
図11は、(1)6層のPVD IAD−EB ARコーティングと当該ARコーティングの上に熱的に被着された8〜10nmのETCコーティングとを有するガラス物品(数字220および菱形のデータマーカーによって示される)と、それに対する、(2)第一の市販のコーター機器によって被着されたPVD−ARコーティングと市販のプロセス、例えば、浸漬または噴霧など、によって第二槽において被着されたETCとを有する市販のガラス物品(数字222および四角形のデータマーカーで示される)との摩耗耐久性の比較である。両コーティングを、同じ化学的に強化された(イオン交換された)0.7mm厚のCorning Code 2319ガラスの試料に被着させた。ガラス物品220は、本明細書において説明した方法に従ってコーティングした。市販のガラス物品は、市販のコーティングベンダーによってコーティングした。摩耗耐久性は、40%の相対湿度において実施した。矢印224で示された点では、長さ2mm未満の短く浅いスクラッチのみが、8,000サイクル後に現れた。対照的に、矢印226によって示される点では、たったの200回のワイプ後に、5mmを超える長さの深くて長いスクラッチが現れた。試験結果は、本明細書において説明されるようにコーティングされたARコーティング−ETCガラスの摩耗耐久性が、市販の製品の耐久性の少なくとも10倍を超えることを示している。
【0061】
図17Bは、
図17Aに表されたように構成されたコーティング機器を使用して得られる向上を示している、摩耗サイクルに対する水接触角をグラフ表示している。水接触角の結果は、
図10および11の結果と比較することができる。
図17Bにおけるデータは、10,000回の摩耗サイクル後に、
図17Bに示されるすべての基板が110°を超える水接触角を有しており、ならびに実質的にすべての基板が、112°以上の水接触角を有することを示している。対照的に、
図10および11のデータは、10,000回の摩耗サイクル後の水接触角は、100°未満であった。さらに、
図17Bにおけるデータは、12,000回の摩耗サイクルを受けた基板では、当該基板の水接触角が106°を超えることを示している。
【0062】
図12は、波長に対する反射率%のグラフであり、この場合、反射率は、本明細書において説明されるようなARコーティングおよびETCコーティングでコーティングされたコーティング済みガラス物品の表面で反射された光の割合を意味する。各ワイピング試験には、新しい(非摩耗または非ワイプ)物品を使用した。摩耗/ワイピングは、以下の条件下:グレード0000#のスチールウール、10mm×10mmのエリアでの10kgの荷重、60Hz、50mmの移動距離、RH<40%、において実施した。反射率は、6K、7K、8K、および9K回の摩耗の後に測定した。グラフは、新しい物品と8K回までワイプされた物品とが実質的に同じ反射率を有することを示している。8K回のワイプ後、反射率は増加している。この反射率の増加は、多くの回数のワイプの結果としてのガラス表面のわずかな摩耗によるものと考えられる。グラフにおいて、文字「A」は「ワイピング後」を意味し、文字「B」は「ワイピング前」(ゼロ回のワイプ)を意味する。文字「K」は、「キロ」または「千」を意味する。
【0063】
図13は、波長に対する透過率%のグラフである。当該試験は、本明細書において説明されるようなARコーティングおよびETCコーティングでコーティングされたコーティング済みガラス物品において実施した。各ワイピング試験には、新しい(非摩耗または非ワイプ)物品を使用した。反射率試験と同じ物品を透過率試験においても用いた。グラフは、新しい物品と8K回までワイプされた物品とが実質的に同様の透過率を有しており、当該透過率が95〜96%の範囲であることを示している。8K回のワイプ後、透過率は、波長全範囲においておよそ92%まで低下している。この透過率の低下は、多くの回数のワイプの結果としてのガラス表面のわずかな摩耗によるものと考えられる。グラフにおいて、文字「A」は「ワイピング後」を意味し、文字「B」は「ワイピング前」(ゼロ回のワイプ)を意味する。文字「K」は、「キロ」または「千」を意味する。
【0064】
図12および13のデータは、ガラス物品上の光学コーティングが、
図10および11によって示されるような素晴らしい水接触角保持を有することに加え、非常に耐久性のあることを示している。
【0065】
図14は、波長に対する反射率%のグラフであり、ARコーティングを有さないガラスにおける、反射率に対するARコーティング層/周期の数の効果を示している。曲線240は、未コーティングのイオン交換ガラスであるCorning Code 2319を表している。曲線244は、SiO
2/Nb
2O
3からなる2層または1周期のコーティングである。曲線246および248は、SiO
2/Nb
2O
3の層対からなる4層(2周期)および6層(3周期)のコーティングである。曲線242は、Nb
2O
3の1層コーティングである。データは、ARコーティングのスタック数(層/周期)を増すことにより、ARコーティングのスペクトル範囲の有用性が広がり、さらに反射率%を減少させるであろうことを示している。
【実施例3】
【0066】
図18は、6層ARコーティング(Nb
2O
5/SiO
2)およびETCコーティングでコーティングされたガラス基板の、波長(x軸)の関数としての反射率(y軸)のコンピュータシミュレーションである。ARコーティングは、2%の厚さ変動でシミュレートした。したがって、結果として得られる反射率プロファイルは、6層ARコーティング(Nb
2O
5/SiO
2)とETCコーティングとによる反射率をシミュレートしており、この場合、当該ETCコーティングは2%の厚さ変動を有している。
図19は、本明細書において説明される方法および機器を使用して6層のARコーティング(Nb
2O
5/SiO
2)およびETCコーティングをコーティングした複数の実際の試料の、波長の関数としての反射率(y軸)をグラフ表示している。
図19に表されているように、実際の試料の反射率プロファイルは、シミュレートされた試料の反射率プロファイルと類似しており、したがって、説明された方法を用いてコーティングされた試料が、コーティングされた基板全域での光学コーティングの(すなわち、光学コーティングの第一端部から第二端部までの)厚さ変動が3%未満である光学コーティングを有していることを示している。
【0067】
本明細書において説明されるAR/ETCコーティングは、多くの商業的物品において利用することができる。例えば、結果として得られるコーティングは、テレビ、携帯電話、電子タブレット、ならびにブックリーダーおよび日光の下で読み取り可能な他のデバイスを作製するために使用することができる。当該AR/ETCコーティングはさらに、反射防止ビームスプリッター、プリズム、ミラー、およびレーザー製品;光ファイバーおよび電気通信のための部品;生物学的用途および医学的用途での使用のための光学コーティング;ならびに抗菌性表面、に対する有用性も有する。
【0068】
第一態様において、本開示は、光学コーティングおよび当該光学コーティング上のクリーニング容易な(ETC)コーティングを有するガラス物品を作製する方法を提供する。当該方法は、光学コーティングおよびETCコーティングの被着のための真空槽を有するコーティング機器を提供する工程;コーティングされるガラス基板をその上に受け入れる磁性基板キャリアを磁気的に位置決めするために、当該真空槽内の回転可能な磁性ドームを提供する工程;当該真空槽内に、光学コーティングのための供給源材料およびETCコーティングのための供給源材料を提供する工程;ガラス基板を磁性基板キャリア上に載置し、ガラス基板が上に載置されている当該磁性基板キャリアを、回転可能な磁性ドームに磁気的に取り付ける工程;真空槽を脱気する工程;回転可能な磁性ドームを回転させてガラス基板上に光学コーティングを被着させる工程;当該回転可能な磁性ドームを回転させて光学コーティングの被着の後に当該光学コーティングの上にETCコーティングを被着させる工程であって、ETCコーティングの被着の前に当該光学コーティングが周囲大気に晒されない、工程;ならびに、光学コーティングおよびETCコーティングを有するガラス基板を槽から取り出して、シャドウフリーの、ガラス基板上に被着された光学コーティングと当該光学コーティング上に被着されたETCコーティングとを有するガラス基板を得る工程、を含む。
【0069】
第二態様において、本開示は、ETCコーティングを硬化させる工程をさらに含む、第一態様の方法を提供する。
【0070】
第三態様において、本開示は、ETCコーティングを室温において空気中で硬化させる、第一または第二態様のいずれか一態様による方法を提供する。
【0071】
第四態様において、本開示は、ETCコーティングが、当該ETCコーティングを加熱することによって硬化される、第一または第二態様のいずれか一態様による方法を提供する。
【0072】
第五態様において、本開示は、真空槽が10
−4Torr以下の圧力まで脱気される、第一態様から第四態様までのいずれか一態様による方法を提供する。
【0073】
第六態様において、本開示は、光学コーティングを被着させるときに当該光学コーティングを高密度化させる工程をさらに含む、第一態様から第五態様までのいずれか一態様による方法を提供する。
【0074】
第七態様において、本開示は、真空槽が、光学コーティングのための供給源材料を蒸発させるために少なくとも1つのeビーム源を収容する、第一態様から第六態様までのいずれか一態様による方法を提供する。
【0075】
第八態様において、本開示は、当該少なくとも1つのeビーム源が2つ以上6つ以下のeビーム源を含み、各供給源からのeビームが、コーティングされる材料を保持している別々の容器に向けられる、第七態様による方法を提供する。
【0076】
第九態様において、本開示は、磁性基板キャリアが、固定式の磁性基板キャリアおよび調節可能な磁性基板キャリアからなる群より選択される、第一態様から第八態様までのいずれか一態様による方法を提供する。
【0077】
第十態様において、本開示は、光学コーティングを被着する工程が、高屈折率材料および低屈折率材料による少なくとも1つの周期を含む多層の光学コーティングを被着させる工程を含み、当該高屈折率材料が、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、Y
2O
3、Si
3N
4、SrTiO
3、WO
3からなる群より選択され、ならびに当該低屈折率材料が、SiO
2、MgF
2、YF
3、YbF
3、およびAl
2O
3からなる群より選択される、第一態様から第九態様までのいずれか一態様による方法を提供する。
【0078】
第十一態様において、本開示は、ガラス基板が、イオン交換シリカガラス、非イオン交換シリカガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸塩ガラス、またはソーダ石灰ガラスから形成される、第一態様から第十態様までのいずれか一態様による方法を提供する。
【0079】
第十二態様において、本開示は、ETCコーティングのための供給源材料が式(R
F)
xSiX
4−x[式中、R
Fは直鎖状C
6〜C
30アルキルペルフルオロカーボンであり、X=Clまたは−OCH
3−であり、ならびにx=2または3である]のアルキルペルフルオロカーボンシランである、第一態様から第十一態様までのいずれか一態様による方法を提供する。
【0080】
第十三態様において、本開示は、コーティングプロセスの際に基板を保持するための磁性基板キャリアを提供する。当該磁性基板キャリアは、非磁性基板キャリアベース;当該非磁性基板キャリアベースに取り付けられた複数の磁石;当該磁性基板キャリア上に載置されたガラス基板の表面を支持するための複数のピン;格納可能なピンを格納するバネによって適切な位置に保持される当該格納可能なピンであって、当該バネと反対方向に延長可能である当該格納可能なピンと、複数の固定されたピンと、非磁性基板キャリアベースからある距離を延びる複数のサイドストッパーであってガラス基板が当該複数のピン上に位置されたときにその上部が当該ガラス基板の上面の下に位置されるサイドストッパーとを備えるバネシステム、を備える。
【0081】
第十四態様において、本開示は、コーティングプロセスの際に基板を保持するための磁性基板キャリアを提供する。当該磁性基板キャリアは、非磁性キャリアベース;当該非磁性キャリアベースに取り付けられた複数の磁石;ガラス基板の表面を支持するための複数のピン;中に格納可能なピンが配置されているハウジングであって、当該格納可能なピンがバネによって適切な場所に保持されかつ当該ハウジングから外向きに付勢されているハウジング;任意選択のストッパー;ならびにガラス基板の端部を保持するための可動式ピン、を備える。
【0082】
第十五態様において、本開示は、光学コーティングおよび当該光学コーティングの上のクリーニング容易なコーティングを備えるガラス物品であって、当該ガラス物品が、当該ガラス物品の光学的コーティングされた表面全域においてシャドウフリーであり、この場合、当該光学コーティングが、1.7以上3.0以下の屈折率nを有する高屈折率材料Hの層および1.3以上1.6以下の屈折率nを有する低屈折率材料Lの層からなる複数の周期(高屈折率材料Hの当該層は各周期の第一層であり、低屈折率材料Lの層は各周期の第二層である)と、当該複数の周期の上に適用された、20nm以上200nm以下の範囲の厚さを有するSiO
2キャッピング層とを含む、ガラス物品を提供する。
【0083】
第十六態様において、本開示は、コーティング周期の数が2以上1000以下の範囲である、第十五態様のガラス物品を提供する。
【0084】
第十七態様において、本開示は、光学コーティングが100nm以上2000nm以下の範囲の厚さを有する、第十五態様から第十六態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0085】
第十八態様において、本開示は、コーティング周期の数が2以上20以下の範囲であり、高屈折率材料Hおよび低屈折率材料Lの各層の厚さが5nm以上200nm以下の範囲である、第十五態様から第十七態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0086】
第十九態様において、本開示は、コーティング周期の数が2以上20以下であり、高屈折率材料Hおよび低屈折率材料Lの各層の厚さが5nm以上100nm以下の範囲である、第十五態様から第十七態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0087】
第二十態様において、本開示は、高屈折率材料Hの層が、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、Y
2O
3、Si
3N
4、SrTiO
3、およびWO
3からなる群より選択される、第十五態様から第十九態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0088】
第二十一態様において、本開示は、低屈折率材料が、SiO
2、MgF
2、YF
3、YbF
3、およびAl
2O
3からなる群より選択される、第十五態様から第二十態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0089】
第二十二態様において、本開示は、ガラス物品が6,000回の摩耗サイクル後に少なくとも75°の水接触角を有する、第十五態様から第二十一態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0090】
第二十三態様において、本開示は、ガラス物品が、6,000回の摩耗サイクル後に少なくとも105°の水接触角を有する、第十五態様から第二十二態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0091】
第二十四態様において、本開示は、ガラス物品が、10,600回の摩耗サイクル後に90°を超える水接触角を有する、第十五態様から第二十三態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0092】
第二十五態様において、本開示は、8,000回の摩耗サイクル後のガラス物品の表面上のスクラッチが2mm未満の長さである、第十五態様から第二十四態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0093】
第二十六態様において、本開示は、少なくとも8,000回の摩耗/ワイピングサイクル後のガラス物品の反射率%が、未摩耗/未ワイプのガラス物品の反射率%と実質的に同じである、第十五態様から第二十五態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0094】
第二十七態様において、本開示は、少なくとも8,000回の摩耗/ワイピングサイクル後のガラス物品の透過率%が、未摩耗/未ワイプのガラス物品の透過率%と実質的に同じである、第十五態様から第二十六態様までのいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0095】
第二十八態様において、本開示は、光学コーティングおよびETCコーティングで基板をコーティングするためのコーティング機器を提供する。当該コーティング機器は、真空槽;当該真空槽内に位置決めされた回転可能な磁性ドーム;当該真空槽内に位置決めされた少なくとも1つの電子ビーム源;当該真空槽内に位置決めされた少なくとも1つの熱蒸発源;および当該真空槽内の支持体上に調節可能に位置決めされたシャドウマスク、を備える。
【0096】
第二十九態様において、本開示は、真空槽内に位置されたプラズマ源をさらに備える、第二十八態様のコーティング機器を提供する。
【0097】
第三十態様において、本開示は、回転可能な磁性ドームが、当該回転可能な磁性ドームの中央上部における開口部:当該回転可能な磁性ドームの開口部を覆う透明ガラスプレート;ならびに、真空槽内において被着されるコーティング材料の被着速度をモニターするために透明ガラスプレートの開口部に位置されたクォーツモニター、を備える、第二十八態様から第二十九態様のいずれか一態様によるコーティング機器を提供する。
【0098】
第三十一態様において、本開示は、透明ガラスプレートの上方に位置決めされた光ファイバーをさらに備えるコーティング機器であって、透明ガラスプレートの反射率の変化を測定することにより当該透明ガラスプレートに適用されたコーティングの厚さを特定するために、当該光ファイバーが、透明ガラスプレートがコーティングされるに伴って透明ガラスプレートから反射される光を収集する、第三十態様によるコーティング機器を提供する。
【0099】
第三十二態様において、本開示は、回転可能な磁性ドームの回転を容易にするために、回転可能な磁性ドームが、真空シールドされた回転シャフトに取り付けられている、第二十八態様から第三十一態様のいずれか一態様によるコーティング機器を提供する。
【0100】
第三十三態様において、本開示は、回転可能な磁性ドームに磁気的に取り付けられた少なくとも1つの磁性基板キャリアをさらに備える、第二十八態様から第三十二態様のいずれか一態様によるコーティング機器を提供する。
【0101】
第三十四態様において、本開示は、ガラス物品における光学コーティングおよび当該光学コーティングの上のクリーニング容易な(ETC)コーティングを有するガラス物品を作製する方法であって、光学コーティングおよびETCコーティングの被着のための槽を有するコーティング機器を提供する工程;コーティングされるガラス基板が載せられた基板キャリアを磁気的に位置決めするための当該槽内の回転可能なドームであって、凹型であり、クォーツおよび光ファイバー測定素子の設置のために上部に開口部を有するドームを提供する工程;当該槽内に、光学コーティングのための供給源材料およびETCコーティングのための供給源材料を提供する工程であって、光学コーティングを作製するために複数の供給源材料が必要とされる場合に、当該複数の材料のそれぞれが別々の供給源容器において提供される、工程;ガラス基板を提供し、当該ガラス基板を基板キャリア上に載せ、上にガラス基板を有する当該基板キャリアをドームに磁気的に取り付ける工程;当該槽を10
−4Torr以下まで脱気する工程;当該ドームを回転させてガラス基板上に光学コーティングを被着させる工程;光学コーティングの被着の後で光学コーティングの被着を停止し、ドームを回転させて当該光学コーティングの上にETCコーティングを被着させる工程;ETCコーティングの被着を停止する工程;ETCコーティングを硬化させる工程;ならびに、光学コーティングおよびETCコーティングを有する基板を槽から取り出して、基板上に被着された光学コーティングおよび当該光学コーティング上に被着されたETCコーティングを有するガラス基板を得る工程、を含む方法を提供する。
【0102】
第三十五態様において、本開示は、光学コーティングが、高屈折率の金属酸化物および低屈折率の金属酸化物の交互の層からなる多層コーティングであり、層の各高/低屈折率対が1つのコーティング周期と見なされる、第三十五態様の方法を提供する。周期の数は、2〜1000の範囲である。当該多層コーティングは、100nm〜2000nmの範囲の厚さを有する。ETC材料は、式(R
F)
xSiX
4−x[式中、R
Fは直鎖上C
6〜C
30アルキルペルフルオロカーボンであり、X=Clまたは−OCH
3−であり、ならびにx=2または3である]のアルキルペルフルオロカーボンシランである。当該アルキルペルフルオロカーボンは、3nm〜50nmの範囲の炭素鎖長を有する。上記のSiX
4−x部分に結合したペルフルオロ化エーテルも、ETCコーティング材料として使用することができる。
【0103】
第三十六態様において、本開示は、光学コーティングおよびETCコーティングが槽内において被着され、当該光学コーティングが、被着の際にイオンビームもしくはプラズマを使用して高密度化される、第三十三態様から第三十五態様による方法を提供する。さらなる実施形態において、当該光学コーティングが酸化物コーティングの場合、コーティングされる金属酸化物の化学量論が維持されるのを確実にするために、酸素または酸素イオンが槽内に存在する。
【0104】
第三十七態様において、本開示は、光学コーティングおよびETCコーティングが被着された「シャドウレス」または「シャドウフリー」のガラス物品を作製するための機器であって、光学コーティング材料の供給源およびETCコーティング材料の供給源を中に有する真空槽と、基板を保持するための複数の基板キャリアを有する回転可能なドームとを備え、担持される当該基板が当該回転可能なドームに磁気的に取り付けられる、機器にも関する。
【0105】
第三十八態様において、本開示は、ガラス基板の表面上の光学コーティングおよび当該光学コーティング上のクリーニング容易なコーティングを有するガラス物品であって、当該ガラスの光学コーティングされた表面全域においてシャドウフリーであり;当該光学コーティングが、高屈折率材料H(n=1.7〜3.0)および低屈折率材料L(n=1.3〜1.61)の層からなる複数の周期であり、H層が、各周期の第一層であり、L層が各周期の第二層であり;光学コーティングの最後のL層がSiO
2ではない場合、20〜200nmの範囲の厚さを有するSiO
2キャッピング層が当該複数の周期の上に適用される、ガラス物品を提供する。光学コーティングの最後の周期がSiO
2の場合、20〜200nmの範囲の厚さを有する追加のSiO
2層を、任意により、キャッピング層として被着させてもよい。一実施形態において、光学コーティング周期の数は、2〜1000の範囲である。別の実施形態において、光学コーティングの厚さは、100〜2000nmの範囲である。光学コーティング周期の数は、2〜20の範囲であり、高屈折率材料および低屈折率材料のそれぞれの厚さは、5〜200nmの範囲である。別の実施形態において、光学コーティング周期の数は、2〜20の範囲であり、高屈折率材料および低屈折率材料のそれぞれの厚さは5〜100nmの範囲である。当該高屈折率コーティング材料は、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、TiO
2、Y
2O
3、Si
3N
4、SrTiO
3、およびWO
3からなる群より選択される。当該低屈折率コーティング材料は、SiO
2、MgF
2、YF
3、およびYbF
3からなる群より選択される。一実施形態において、低屈折率材料の代わりにAl
2O
3(n=1.5〜1.7)が使用され、SiO
2のキャッピング層が最終層として適用される。
【0106】
第三十九態様において、本開示は、ガラス基板もしくはガラス物品の光学コーティングの第一端部から光学コーティングの第二端部までの光学コーティングの厚さにおける変動が3%以下である、第一態様〜第十二態様のいずれか一態様による方法および第十五態様〜第二十七態様のいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0107】
第四十態様において、本開示は、ガラス物品の光学コーティングの第一端部から光学コーティングの第二端部までの光学コーティングの厚さにおける変動が2%以下である、第一態様〜第十二態様のいずれか一態様による方法および第十五態様〜第二十七態様のいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0108】
第四十一態様において、本開示は、ガラス基板もしくはガラス物品の光学コーティングの第一端部から光学コーティングの第二端部までの光学コーティングの厚さにおける変動が1%以下である、第一態様〜第十二態様のいずれか一態様による方法および第十五態様〜第二十七態様のいずれか一態様によるガラス物品を提供する。
【0109】
特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において説明される実施形態に様々な修正および変更を為すことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書において説明される様々な態様の修正および変更も網羅することが意図されるが、ただし、そのような修正および変更が、添付の請求項およびそれらの同等物の範囲内である場合に限る。