特許第6960897号(P6960897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960897
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20211025BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20211025BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20211025BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
   H02J7/00 302C
   H01M50/20
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-204644(P2018-204644)
(22)【出願日】2018年10月31日
(65)【公開番号】特開2020-72544(P2020-72544A)
(43)【公開日】2020年5月7日
【審査請求日】2020年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 直樹
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
(72)【発明者】
【氏名】種村 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】大塚 一雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 成晶
(72)【発明者】
【氏名】泉 純太
(72)【発明者】
【氏名】木村 健治
【審査官】 原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/179774(WO,A1)
【文献】 特開2014−143771(JP,A)
【文献】 特開2012−050272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
H01M 50/20−50/298
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を有する電池モジュールを複数含み、制御コントローラからのゲート駆動信号に応じて前記電池モジュールに含まれる前記二次電池が相互に直列接続され、前記ゲート駆動信号を前記電池モジュールの各々に含まれるゲート駆動信号処理回路において遅延させた後に前記直列接続の上流から下流に向けて伝達させる電源装置であって、
前記電池モジュールに対する固有のIDを与えるID設定信号を前記ゲート駆動信号を伝達させるためのゲート信号線を利用して伝達させることによって前記電池モジュールにIDを付与することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記ゲート駆動信号処理回路は、
前記ID設定信号が予め定められたID設定モードに移行するための信号波形に一致する場合にIDを設定するモードとなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、
前記ゲート駆動信号処理回路は、
前段の前記電池モジュールから受信した前記ID設定信号を後段の前記電池モジュールに固有のID設定のための信号波形に変更することを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電源装置であって、
前記ID設定信号は、パルス波形であり、
前記ゲート駆動信号処理回路は、
前段の前記電池モジュールから受信した前記ID設定信号のパルス数を後段の前記電池モジュールに固有のID設定のためのパルス数に変更することを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源装置であって、
前記ゲート駆動信号は最下流の前記電池モジュールから前記制御コントローラに戻され、
前記制御コントローラは、戻された前記ID設定信号に基づいて前記電池モジュールの接続数を取得することを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールを直列接続して電力を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池モジュールを直列に接続して、負荷に電力を供給(力行)する電源装置が利用されている。電池モジュールに含まれる電池を二次電池とした場合、負荷側から電池へ充電(回生)を行うこともできる。
【0003】
このような電源装置において、ゲート駆動信号に基づいて各電池モジュールを負荷に接続したり、切り離したりするスイッチング回路を備えた構成が提案されている。このような回路構成において、遅延回路を介したゲート駆動信号で各電池モジュールのスイッチング回路を駆動させることで電圧制御を行っている。
【0004】
このような電源装置に関して、電池モジュールの各々において固有のIDを付与する信号や故障信号を通信する技術が開示されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−244794号公報
【特許文献2】特開2008−282236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電源装置では、電源装置を構成する電池モジュールの各々に対してIDを付与するための専用の信号線が設けられている。また、故障信号を通信する際にゲート駆動信号を通信するためのゲート信号線を使用する構成が開示されているが、ゲート信号線を用いて各電池モジュールにIDを設定する技術は開示されていない。
【0007】
すなわち、従来の電源装置では、ゲート信号線を利用して電池モジュールにIDを付与することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、二次電池を有する電池モジュールを複数含み、制御コントローラからのゲート駆動信号に応じて前記電池モジュールが相互に直列接続され、前記ゲート駆動信号を前記電池モジュールの各々に含まれるゲート駆動信号処理回路において遅延させた後に前記直列接続の上流から下流に向けて伝達させる電源装置であって、前記電池モジュールに対する固有のIDを与えるID設定信号を前記ゲート駆動信号を伝達させるためのゲート信号線を利用して伝達させることによって前記電池モジュールにIDを付与することを特徴とする電源装置である。
【0009】
ここで、前記ゲート駆動信号処理回路は、前記ID設定モード指令信号が予め定められたID設定モードに移行するための信号波形に一致する場合にIDを設定するモードとなることが好適である。
【0010】
また、前記ゲート駆動信号処理回路は、前段の前記電池モジュールから受信した前記ID設定信号を後段の前記電池モジュールに固有のID設定のための信号波形に変更することが好適である。
【0011】
また、前記ID設定信号は、パルス波形であり、前記ゲート駆動信号処理回路は、前段の前記電池モジュールから受信した前記ID設定信号のパルス数を後段の前記電池モジュールに固有のID設定のためのパルス数に変更することが好適である。
【0012】
また、前記ゲート駆動信号は最下流の前記電池モジュールから前記制御コントローラに戻され、前記制御コントローラは、戻された前記ID設定信号に基づいて前記電池モジュールの接続数を取得することが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲート信号線を利用して電池モジュールにIDを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る電源装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係るゲート駆動信号を用いたスイッチング制御を説明する図である。
図3】本発明の実施の形態に係るゲート駆動信号を用いたスイッチング制御を説明する図である。
図4】本発明の実施の形態に係る電源装置の制御を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係るゲート駆動信号へのID設定モード命令パルス信号の重畳方法について説明する図である。
図6】本発明の実施の形態に係るゲート駆動信号を用いたID設定処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態における電源装置100は、図1に示すように、電池モジュール102及び制御コントローラ104を含んで構成される。電源装置100は、複数の電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)を含んで構成される。複数の電池モジュール102は、制御コントローラ104による制御によって互いに直列に接続可能である。電源装置100に含まれる複数の電池モジュール102は、端子T1及びT2に接続される負荷(図示しない)に対して電力を供給(力行)し、又は、端子T1及びT2に接続される電源(図示しない)から電力を充電(回生)することができる。
【0016】
電池モジュール102は、電池10、チョークコイル12、コンデンサ14、第1スイッチ素子16、第2スイッチ素子18、ゲート駆動信号処理回路20、AND素子22、OR素子24及びNOT素子26を含んで構成される。本実施の形態において、各電池モジュール102は同一の構成を備える。
【0017】
電池10は、少なくとも1つの二次電池を含む。電池10は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等を複数直列又は/及び並列接続した構成とすることができる。チョークコイル12及びコンデンサ14は、電池10からの出力を平滑化して出力する平滑回路(ローパスフィルタ回路)を構成する。すなわち、電池10として二次電池を使用しているので、内部抵抗損失の増加による電池10の劣化を抑制するため、電池10、チョークコイル12及びコンデンサ14によってRLCフィルタを形成して電流の平準化を図っている。なお、チョークコイル12及びコンデンサ14は、必須の構成ではなく、これらを設けなくてもよい。
【0018】
第1スイッチ素子16は、電池10の出力端を短絡するためのスイッチング素子を含む。本実施の形態では、第1スイッチ素子16は、スイッチング素子である電界効果トランジスタに対して並列に環流ダイオードを接続した構成としている。第2スイッチ素子18は、電池10と第1スイッチ素子16との間において電池10に直列接続される。本実施の形態では、第2スイッチ素子18は、スイッチング素子である電界効果トランジスタに対して並列に環流ダイオードを接続した構成としている。第1スイッチ素子16及び第2スイッチ素子18は、制御コントローラ104からのゲート駆動信号によってスイッチング制御される。なお、本実施の形態では、第1スイッチ素子16及び第2スイッチ素子18は、電界効果トランジスタとしたが、これ以外のスイッチング素子を適用してもよい。
【0019】
ゲート駆動信号処理回路20は、制御コントローラ104から電池モジュール102に入力されるゲート駆動信号(後述するようにID設定信号が重畳されることがある)に基づいて電池モジュール102を制御する回路である。ゲート駆動信号処理回路20は、ゲート駆動信号を所定の時間だけ遅延させる遅延回路を含む。電源装置100では、各電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)にそれぞれゲート駆動信号処理回路20が設けられており、それらが直列接続されている。したがって、制御コントローラ104から入力されたゲート駆動信号は所定の時間ずつ遅延させられながら各電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)に順次入力されることになる。ゲート駆動信号に基づく制御については後述する。
【0020】
AND素子22は、制御コントローラ104からの強制切断信号に応じて電池モジュール102aを直列接続状態から強制的に切り離す切断手段を構成する。また、OR素子24は、制御コントローラ104からの強制接続信号に応じて電池モジュール102aを直列接続状態に強制的に接続する接続手段を構成する。AND素子22及びOR素子24は、制御コントローラ104によって制御される。AND素子22の一方の入力端子には制御コントローラ104からの制御信号が入力され、他方の入力端子にはゲート駆動信号処理回路20からのゲート駆動信号が入力される。また、OR素子24の一方の入力端子には制御コントローラ104からの制御信号が入力され、他方の入力端子にはゲート駆動信号処理回路20からのゲート駆動信号が入力される。AND素子22及びOR素子24からの出力信号は、第2スイッチ素子18のゲート端子に入力される。また、AND素子22及びOR素子24からの出力信号は、NOT素子26を介して第1スイッチ素子16のゲート端子に入力される。
【0021】
通常制御時においては、AND素子22に対して制御コントローラ104からハイ(H)レベルの制御信号が入力され、OR素子24に対して制御コントローラ104からロー(L)レベルの制御信号が入力される。したがって、ゲート駆動信号がそのまま第2スイッチ素子18のゲート端子に入力され、ゲート駆動信号を反転した信号が第1スイッチ素子16のゲート端子に入力される。これによって、ゲート駆動信号がハイ(H)レベルのときに第1スイッチ素子16がオフ状態及び第2スイッチ素子18がオン状態となり、ゲート駆動信号がロー(L)レベルのときに第1スイッチ素子16がオン状態及び第2スイッチ素子18がオフ状態となる。すなわち、ゲート駆動信号がハイ(H)レベルのときに電池モジュール102は他の電池モジュール102と直列に接続された状態となり、ゲート駆動信号がロー(L)レベルのときに電池モジュール102は他の電池モジュール102と切り離されたスルー状態となる。
【0022】
強制切断時においては、制御コントローラ104は、強制的に切り離す対象となった電池モジュール102のAND素子22に対してロー(L)レベルの制御信号を入力し、当該電池モジュール102のOR素子24に対してロー(L)レベルの制御信号を入力する。これによって、AND素子22からはロー(L)レベルが出力され、OR素子24を介して、第1スイッチ素子16のゲート端子にはNOT素子26によってハイ(H)レベルが入力され、第2スイッチ素子18のゲート端子にはロー(L)レベルが入力される。したがって、第1スイッチ素子16は常時オン状態となり、第2スイッチ素子18は常時オフ状態とされ、電池モジュール102はゲート信号の状態によらず強制的に切り離された状態(パススルー状態)となる。このような強制切断制御は、電源装置100における電池モジュール102のSOCのアンバランスを抑制する制御に利用することができる。
【0023】
強制接続時には、制御コントローラ104は、強制的に接続する対象とする電池モジュール102のOR素子24にハイ(H)レベルの信号を入力する。これによって、OR素子24からはハイ(H)レベルが出力され、第1スイッチ素子16のゲート端子にはNOT素子26によってロー(L)レベルが入力され、第2スイッチ素子18のゲート端子にはハイ(H)レベルが入力される。したがって、第1スイッチ素子16は常時オフ状態となり、第2スイッチ素子18は常時オン状態とされ、電池モジュール102はゲート信号の状態によらず強制的に直列接続に繋がれた状態となる。このような強制接続制御は、電源装置100における電池モジュール102のSOCのアンバランスを抑制する制御に利用することができる。
【0024】
なお、強制切断状態又は強制接続状態となった電池モジュール102のゲート駆動信号処理回路20は、受信したゲート駆動信号を遅延させずに次の電池モジュール102へ伝達させる。
【0025】
[通常制御]
以下、電源装置100の制御について図2を参照して説明する。通常制御時において、各電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)のAND素子22に対して制御コントローラ104からハイ(H)レベルの強制切断信号が入力される。また、各電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)のOR素子24に対して制御コントローラ104からロー(L)レベルの強制接続信号が入力される。したがって、第1スイッチ素子16のゲート端子にはゲート駆動信号処理回路20からのゲート駆動信号がNOT素子26を介して反転信号として入力され、第2スイッチ素子18のゲート端子にはゲート駆動信号処理回路20からのゲート駆動信号がそのまま入力される。
【0026】
図2は、電池モジュール102aの動作に関するタイムチャートを示す。また、図2では、電池モジュール102aを駆動するゲート駆動信号D1のパルス波形、第1スイッチ素子16のスイッチング状態を示す矩形波D2、第2スイッチ素子18のスイッチング状態を示す矩形波D3、及び、電池モジュール102aにより出力される電圧Vmodの波形D4を示している。
【0027】
電池モジュール102aの初期状態、すなわち、ゲート駆動信号が出力されていない状態では、第1スイッチ素子16はオン状態、第2スイッチ素子18はオフ状態である。そして、制御コントローラ104からゲート駆動信号が電池モジュール102aに入力されると、電池モジュール102aはPWM制御によってスイッチング制御される。このスイッチング制御では、第1スイッチ素子16と第2スイッチ素子18とが交互にオン状態/オフ状態にスイッチングされる。
【0028】
図2に示すように、制御コントローラ104からゲート駆動信号D1が出力されると、このゲート駆動信号D1に応じて、電池モジュール102aの第1スイッチ素子16及び第2スイッチ素子18が駆動される。第1スイッチ素子16は、ゲート駆動信号D1の立ち上がりに応じたNOT素子26からの信号の立ち下がりによって、オン状態からオフ状態に切り替わる。また、第1スイッチ素子16は、ゲート駆動信号D1の立ち下がりから僅かな時間(デッドタイムdt)遅れて、オフ状態からオン状態に切り替わる。
【0029】
一方、第2スイッチ素子18は、ゲート駆動信号D1の立ち上がりから僅かな時間(デッドタイムdt)遅れて、オフ状態からオン状態に切り替わる。また、第2スイッチ素子18は、ゲート駆動信号D1の立ち下がりと同時に、オン状態からオフ状態に切り替わる。このように、第1スイッチ素子16と第2スイッチ素子18とは交互にオン状態/オフ状態が切り替わるようにスイッチング制御される。
【0030】
なお、第1スイッチ素子16がゲート駆動信号D1の立ち下がり時に僅かな時間(デッドタイムdt)遅れて動作することと、第2スイッチ素子18がゲート駆動信号D1の立ち上がり時に僅かな時間(デッドタイムdt)遅れて動作することは、第1スイッチ素子16素子と第2スイッチ素子18とが同時に動作することを防止するためである。すなわち、第1スイッチ素子16と第2スイッチ素子18とが同時にオンして電池が短絡することを防止している。この動作を遅らせているデッドタイムdtは、例えば、100nsに設定しているが、適宜設定することができる。なお、デッドタイムdt中はダイオードを還流し、その還流したダイオードと並列にあるスイッチング素子がオンしたときと同じ状態になる。
【0031】
このような制御によって、電池モジュール102aは、図2に示すように、ゲート駆動信号D1がオフ時(すなわち、第1スイッチ素子16がオン、第2スイッチ素子18がオフ)では、コンデンサ14が電池モジュール102aの出力端子から切り離される。したがって、出力端子には電池モジュール102aから電圧が出力されない。この状態では、図3(a)に示すように、電池モジュール102aの電池10(コンデンサ14)がバイパスされたパススルー状態となっている。
【0032】
また、ゲート駆動信号がオン時(すなわち、第1スイッチ素子16がオフ、第2スイッチ素子18がオン)では、コンデンサ14が電池モジュール102aの出力端子に接続される。したがって、出力端子には電池モジュール102aから電圧が出力される。この状態では、図3(b)に示すように、電池モジュール102aにおけるコンデンサ14を介して電圧Vmodが出力端子に出力されている。
【0033】
図1に戻り、制御コントローラ104による電源装置100の制御について説明する。制御コントローラ104は、電源装置100の全体を制御する。すなわち、電池モジュール102a,102b,102c,・・・の動作をそれぞれ制御して電源装置100としての出力電圧を制御する。
【0034】
制御コントローラ104は、矩形波のゲート駆動信号を出力する。電池モジュール102a,102b,102c,・・・に含まれているゲート駆動信号処理回路20は、制御コントローラ104から出力されたゲート駆動信号を遅延させて順次出力する遅延回路を備えている。ゲート駆動信号処理回路20は、遅延回路によってゲート駆動信号を一定時間遅延させて隣接する電池モジュール102に出力する。この結果、制御コントローラ104から出力されたゲート駆動信号は、電池モジュール102a,102b,102c,・・・に順次遅延されて伝達される。
【0035】
図1において、制御コントローラ104から最上流側の電池モジュール102aにゲート駆動信号が出力されると、電池モジュール102aが駆動されて、図3(a)、(b)に示すように、電池モジュール102aにおける電圧が出力端子OTに出力される。また、ゲート駆動信号は、電池モジュール102aのゲート駆動信号処理回路20よって一定時間遅延された後、隣接する電池モジュール102bに入力される。このゲート駆動信号により電池モジュール102bが電池モジュール102aと同様に駆動される。また、ゲート駆動信号は、電池モジュール102bのゲート駆動信号処理回路20によってさらに一定時間遅延されて、次に隣接する電池モジュール102cに入力される。以下、同様に、ゲート駆動信号は遅延されて下流側の電池モジュールにそれぞれ入力される。そして、電池モジュール102a,102b,102c,・・・は、順次駆動されて、電池モジュール102a,102b,102c,・・・の電圧が各出力端子OTに順次出力される。
【0036】
電池モジュール102a,102b,102c,・・・が順次駆動される状態を図4に示す。図4に示すように、ゲート駆動信号に応じて、電池モジュール102a,102b,102c,・・・が、一定の遅延時間(Tdelay)を持って上流側から下流側に次々と駆動される。
【0037】
図4において、符号E1は、電池モジュール102a,102b,102c,・・・の第1スイッチ素子16がオフ、第2スイッチ素子18がオンの状態であって、電池モジュール102a,102b,102c,・・・が出力端子OTから電圧を出力している状態(接続状態)を示している。また、符号E2は、電池モジュール102a,102b,102c,・・・の第1スイッチ素子16がオン、第2スイッチ素子18がオフの状態であって、電池モジュール102a,102b,102c,・・・が出力端子OTから電圧を出力していない状態(パススルー状態)を示す。このように、電池モジュール102a,102b,102c,・・・は、一定の遅延時間(Tdelay)を持って順次駆動される。
【0038】
次に、ゲート駆動信号やゲート駆動信号の遅延時間(Tdelay)の設定について説明する。ゲート駆動信号の周期Tは、電池モジュール102a,102b,102c,・・・の遅延時間(Tdelay)を合計することによって設定される。例えば、N個の電池モジュール102a,102b,102c,・・・102nが同じ遅延時間(Tdelay)で動作する場合、ゲート駆動信号の周期Tは、T=N×Tdelayで表される。このため、遅延時間(Tdelay)を長く設定すると、ゲート駆動信号の周波数は低周波になる。逆に、遅延時間(Tdelay)を短く設定すると、ゲート駆動信号の周波数は高周波になる。また、ゲート駆動信号を遅延する遅延時間(Tdelay)は、電源装置100に求められる仕様に応じて適宜設定することができる。
【0039】
ゲート駆動信号の周期Tにおけるオン時比率(オンデューティ)D、すなわち、周期Tのうちのオン期間TONの比率は、(電源装置100の出力電圧)/(すべての電池モジュール102a,102b,102c,・・・の合計電圧)により算出することができる。すべての電池モジュール102a,102b,102c,・・・の合計電圧は、電池モジュール電池電圧×電池モジュール数により算出することができる。すなわち、オン時比率D=電源装置出力電圧/(電池モジュール電池電圧×電池モジュール数)となる。なお、厳密には、デッドタイムdtだけオン時比率がずれてしまうので、チョッパ回路で一般的に行われているようにフィードバックまたはフィードフォワードでオン時比率の補正を行う。
【0040】
電源装置100の出力電圧Voutは、上述したように、電池モジュール電池電圧(の平均電圧Vmean)×接続状態の電池モジュール数(NON)によって表すことができる。このとき、オン期間TONは、電源装置100の出力電圧Vout、電池モジュール電池電圧の平均電圧Vmean、遅延時間Tdelayを用いて、TON=Vout×Tdelay/Vmeanで表される。
【0041】
電池モジュール102a,102b,102c,・・・を順次駆動すると、図4における符号H1で示す矩形波状の出力特性が得られる。すなわち、ゲート駆動信号の周期T/電池モジュール数により算出される周期で変動する電圧となる。この変動は、電池モジュール102a,102b,102c,・・・の配線による寄生インダクタンスでフィルタリングされ、符号H2で示すように、電源装置100全体としてより安定した電圧Voutが出力される。
【0042】
以上説明したように、電源装置100を駆動する場合、最上流側の電池モジュール102aに出力したゲート駆動信号を、下流側の電池モジュール102bに一定時間遅延して出力して、さらに、このゲート駆動信号を一定時間遅延して下流側の電池モジュールに順次伝達するので、電池モジュール102a,102b,102c,・・・は、一定時間遅延しながら順次電圧をそれぞれ出力する。そして、これらの電圧が合計されることによって、電源装置100としての電圧が出力されることになり、所望の電圧を得ることができる。
【0043】
また、オン時比率Dを調整することによって、所望の電圧に容易に対応することができ、電源装置100としての汎用性を向上することができる。特に、電池モジュール102a,102b,102c,・・・に故障が発生して、使用困難な電池モジュールが発生した場合でも、その故障した電池モジュールを除外して、正常な電池モジュールを使用して所望の電圧を得ることができる。すなわち、電池モジュール102a,102b,102c,・・・に故障が発生しても所望の電圧の出力を継続することができる。
【0044】
さらに、ゲート駆動信号を遅延する遅延時間を長く設定することによって、ゲート駆動信号の周波数が低周波になるので、第1スイッチ素子16及び第2スイッチ素子18のスイッチング周波数も低くなり、スイッチング損失を低減することができ、電力変換効率を向上することができる。逆に、ゲート駆動信号を遅延する遅延時間を短くすることによって、ゲート駆動信号の周波数が高周波になるので、電圧変動の周波数が高くなり、フィルタリングが容易になって、安定した電圧を得ることができる。また、電流変動をRLCフィルタによって平準化することも容易になる。このように、ゲート駆動信号を遅延する遅延時間を調整することによって、求められる仕様、性能に応じた電源装置100を提供することができる。
【0045】
[ID設定処理]
以下、電源装置100に含まれる電池モジュール102の各々に対して固有のIDを設定する処理について説明する。本実施の形態では、ゲート駆動信号を伝達させるためのゲート信号線を利用してID設定信号を上流の電池モジュール102aから下流の電池モジュール102nに向けて伝達させることで電池モジュール102の各々にIDを設定する。
【0046】
図5は、制御コントローラ104からのゲート駆動信号に電池モジュール102に対するID設定信号を伝達させる方法の一例を示す。制御コントローラ104は、ゲート駆動信号のオン期間中に通常の制御では使用されないようなID設定モード指令パルスを加える。図5の例では、ゲート駆動信号の周期Tにおいて3回のパルスを含むID設定モード指令パルス信号を伝達させた例を示す。
【0047】
電池モジュール102の各々のゲート駆動信号処理回路20では、ID設定モード指令パルスを受け取ると、ID設定モードに移行する。ID設定モードでは、ゲート駆動信号処理回路20の各々は受け取ったゲート駆動信号に基づいて第1スイッチ素子16及び第2スイッチ素子18を制御しないものとする。ゲート駆動信号処理回路20は、受け取ったID設定モード指令パルスを順次後段の電池モジュール102へ送出する。これによって、電源装置100に含まれるすべての電池モジュール102をID設定モードに移行させることができる。
【0048】
本実施の形態では、3回のパルスを含むID設定モード指令パルスを受信した際にゲート駆動信号処理回路20はID設定モードに移行するものとしたが、ID設定モード指令信号が予め定められたID設定モードに移行するための信号波形に一致する場合にIDを設定するモードとなるようにすればよい。
【0049】
制御コントローラ104は、ID設定モード指令パルスを送出する。電池モジュール102の各々のゲート駆動信号処理回路20は、ID設定用信号を受信すると、当該ID設定用信号に応じて電池モジュール102に固有のIDを設定する。また、電池モジュール102のゲート駆動信号処理回路20は、前段の電池モジュール102から受信したID設定信号を後段の電池モジュール102に固有のID設定のための信号波形に変更して送出する。
【0050】
例えば、制御コントローラ104は、最上流の電池モジュール102aに対して1パルスからなるID設定用信号を送出する。最上流の電池モジュール102aのゲート駆動信号処理回路20は、当該ID設定用信号を受信すると、パルス数に対応するID番号を自己の電池モジュール102aのIDとして設定する。すなわち、最上流の電池モジュール102aには、ID番号=1が設定される。電池モジュール102aのゲート駆動信号処理回路20は、受け取ったパルスに1つのパルスを付加して、次段の電池モジュール102bへ送出する。電池モジュール102bのゲート駆動信号処理回路20は、当該ID設定用信号を受信すると、パルス数に対応するID番号を自己の電池モジュール102bのIDとして設定する。すなわち、電池モジュール102bには、ID番号=2が設定される。電池モジュール102bのゲート駆動信号処理回路20は、受け取ったパルスに1つのパルスを付加して、次段の電池モジュール102cへ送出する。このような処理を繰り返すことによって、最下流の電池モジュール102nまでID番号が設定される。
【0051】
電池モジュール102nのゲート駆動信号処理回路20は、受け取ったパルスに1つのパルスを付加して、制御コントローラ104へ送出する。制御コントローラ104は、電池モジュール102nから信号を受け取ると、受け取ったパルス数から1を減ずることによって電源装置100に含まれる電池モジュール102の接続数を取得することができる。
【0052】
制御コントローラ104は、ゲート駆動信号のオン期間中に通常の制御では使用されないようなID設定モード解除パルスを加えて送出する。電池モジュール102の各々のゲート駆動信号処理回路20は、ゲート駆動信号を伝達させるためのゲート信号線を利用してID設定モード解除パルスを受け取るとID設定モードを解除する。
【0053】
以上のように、本実施の形態における電源装置100では、ゲート駆動信号を伝達させるためのゲート信号線を利用してID設定信号を各電池モジュール102に対してID番号を設定することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、ゲート駆動信号処理回路20が受け取ったパルス数に応じて各電池モジュール102に対してID番号を設定するものとしたが、パルス幅(パルスの時間的長さ)やパルスの振幅に応じて各電池モジュール102に対してID番号を設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 電池、12 チョークコイル、14 コンデンサ、16 第1スイッチ素子、18 第2スイッチ素子、20 ゲート駆動信号処理回路、22 AND素子、24 OR素子、26 NOT素子、100 電源装置、102 電池モジュール、104 制御コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6