(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の一部の実施形態は、オン状態における出力光の色シフトが排除又は抑制されるように、及びオン状態における光出力が過度に減衰されないように、照明システムデザインのオフ状態の外観を制御することの問題に対処する。一部の実施形態は、サーモクロミック材料のオフ状態色を選択し、そして、照明システムのオン状態から照明システムのオフ状態へ遷移及びその逆の遷移を通じてサーモクロミック材料を制御するアプローチに向けられる。添付の図面及びここでの説明は、構造、デバイス、システム、及び方法の例を提示する。
【0017】
概説
本発明の実施形態においては、LEDのオフ状態の外観が、典型的な蛍光体被覆された外観から変えられ得る。一部の実施形態において、如何なるLED機能も失うことなく、又は実質的なLED機能を失うことなく、オフ状態の外観が変えられる。LEDの上に感熱色素(サーモクロミック材料と呼ばれる)を設けることにより、LEDのオフ状態の外観が、感熱色素(例えば、赤色、緑色、青色など)又は色素の組み合わせ(例えば、組み合わさって黒色になる混合物や、緑色及び青色の色素の混合物など)によって定められる。LEDが電源投入されると、LED装置によって発生された熱が、透明/半透明状態へのサーモクロミック材料の相転移を生じさせて、LEDからの通常の発光が達成されるようになる。サーモクロミック色素はまた、サーモクロミック色素の相転移を生じさせるために別個の熱発生器を実装することによって、又は、LEDからの光を吸収することにより相転移に必要な温度まで色素の温度が上昇される構造を設計することによって、LEDから離間されることができる。
【0018】
様々な実施形態が、図面を参照してここに記述される。留意すべきことには、図面は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、また、同様の構造又は機能の要素が、図面全体を通して、似通った参照符号によって表されるときがある。これまた留意すべきことには、図面は、開示される実施形態の説明を容易にすることのみを意図しており、全ての可能な実施形態の網羅的な取り扱いを代表するものではなく、また、請求項の範囲について何らかの限定を課すことを意図したものではない。さらに、例示される実施形態は、何らかの特定の環境における使用の全ての態様又は利点を表現する必要のないものである。特定の実施形態に関連して記載される態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、そのように示されていないとしても、その他の実施形態においても実施されることができる。本明細書全体にわたっての“一部の実施形態”又は“他の実施形態”への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれるとして言及するものである。故に、本明細書全体を通じて様々な箇所に“一部の実施形態において”又は“他の実施形態において”という言い回しが現れることは、必ずしも、1つ以上の同じ実施形態に言及しているわけではない。
【0019】
定義
本明細書で使用される用語の一部を、容易な参照のために以下に定義する。提示される用語及びそれらそれぞれの定義は、これらの定義に厳密に限定されるものではなく、用語は更に、本開示内での用語の使用によって定義され得る。用語“例示的”は、ここでは、例、実例、又は例示としての役割を果たすことを意味するために使用される。本明細書で“例示的”と記載されている任意の態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計に対して好ましい又は有利と解釈されるべきではない。むしろ、例示的なる用語の使用は、概念を具体的に提示することを意図している。本出願及び添付の請求項において使用されるとき、用語“又は”は、排他的な“又は”ではなく、包括的な“又は”を意味することを意図している。すなわち、別段の指定がない限り、又は文脈から明らかでない限り、“XはA又はBを使用する”は、自然な包括的な並べ替えのいずれかを意味することを意図している。すなわち、XがAを使用し、XがBを使用し、又はXがA及びBの双方を使用する場合、以上の場合のいずれの下でも“XはA又はBを使用する”が満足される。ここで使用されるとき、A又はBの少なくとも1つは、Aの少なくとも1つ、又はBの少なくとも1つ、又はA及びBの双方の少なくとも1つを意味する。換言すれば、この言い回しは選言的である。本出願及び添付の請求項で使用される冠詞“a”及び“an”は、別段の指定がない限り、又は単数形に向けられることが文脈から明らかでない限り、概して、“1つ以上”を意味するように解釈されるべきである。
【0020】
以下、特定の実施形態を詳細に参照する。開示される実施形態は、請求項を限定するようには意図していない。
【0021】
実施形態例の説明
図1Aは、オフ状態とオン状態との間で発光装置の色を変化させるように加熱及び冷却するための経路を示すサーモクロミック材料相転移チャート1A00を示している。
【0022】
このチャートは、着色状態110、相転移112、及び透明状態114に対応する時間及び温度を横断する加熱経路130を示している。示された温度及び温度範囲は、温度の関数として色及び透過率を変える特定のサーモクロミック材料の単なる例である。サーモクロミック材料が発光ダイオード(LED)の近傍に置かれ、そして、近接した発光ダイオードがターンオンされるとき、このような材料の温度は経時的(チャートの横座標参照)に上昇する。熱を発する発光ダイオードの近傍に置かれたサーモクロミック材料が相変化するように、例えばLEDランプ又はフラッシュユニットなどの装置を構築することができる。サーモクロミック材料の1つの現象は、材料が相間転移するときに視覚的外観を変えることである。
【0023】
サーモクロミック材料は、液晶又はロイコ染料の何れかに基づくことが多い。液晶は、比較的狭い温度範囲内で液晶応答が使用される用途にて使用される。
【0024】
液晶応答に関して、色変化は、材料の結晶構造による特定の波長の反射率の変化に由来する。材料の結晶構造が或る温度範囲にわたって(例えば、異方性キラル又は捩れネマチック相を介して低温結晶相と高温等方性液体相との間で)変化するとき、見かけの色も変化する。結晶構造を通り抜ける光は、ブラッグ回折を受ける。最大の建設的干渉を有する波長が反射し返され、それが、着色した外観を出す。材料の温度の変化は、結晶層同士の間の間隔の変化、ひいては、反射される波長の変化をもたらすことができる。サーモクロミック液晶の見た目の色は、非反射(例えば、黒色)からスペクトルカラーを通って透明領域まで及び得る。色、反射率、透明度は、温度に応じて変わることができる。
【0025】
ロイコ染料に関して、このような染料は、しばしば、広範囲の色を使用することを要求する用途で使用され、及び/又は応答温度が正確である必要がない場合に使用される。
【0026】
図1Aの描写を考えるに、ランプの電球部分を覆ってサーモクロミック材料を配置したLEDランプは、室温にあるとき(例えば、サーモクロミック材料が26℃又はその付近にあるとき)に色付き(カラー)に見える(オフ状態ランプ132を参照)。ランプの電球部分を覆って配置されたサーモクロミック材料の相転移の後、サーモクロミック材料が120℃又はその付近にあるとき(オン状態ランプ134を参照)、電球は透明になる。
【0027】
LEDランプへの電力がターンオフされると、サーモクロミック材料は冷め始めて、冷却経路140を辿る。サーモクロミック材料の相転移の後、バルブは色付きに見え始める。
【0028】
オン状態は、任意の継続時間にわたって維持されることができ(例えば、LEDに電力が印加されて温度を上昇させるようになっている間)、オフ状態は、任意の継続時間にわたって維持されることができる(例えば、LEDへの電力がオフであり、温度が周囲温度まで低下することが許されている間)。転移イベントに応答しての一連の状態遷移を、
図1Bに関して図示して説明する。
【0029】
図1Bは、オフ状態とオン状態との間で発光装置の色を変化させるように加熱及び冷却することの間の遷移を示す状態遷移チャート1B00である。
図1Bに示す実施形態は、サーモクロミック含有着色色素の使用を伴う単なる一例である。
【0030】
状態102(例えば、電源オフ状態)において、固体色素は色付きである。色は、色素及びその他の材料の選択によって制御され得る(
図3参照)。電源オンイベントの後、温度が上昇する。状態104において、上昇した温度が、液体への色素の相転移を生じさせる。当業者によって理解されるように、液体状態への転移後であっても色素がLEDに実質的に近接したままであるような、多くの可能なキャリアが存在する。例えば、色素は粉末としてディスペンスされてもよく、及び/又は、場合によって色素−顕色剤の組み合わせで、ビーズ又はカプセル内に封入されてもよい(
図3参照)。
【0031】
相転移が完了し、LEDが昇温下にある期間中、液体色素は、LEDから発せられる光に対して透明のままである状態106にある。この状態は、LEDが昇温下にある間(例えば、電源オンであることにより)維持されることができる。電源オフイベントがあるとき、低下した温度が、固体へと戻る色素の相転移を生じさせる(遷移状態108参照)。固体へと戻る相転移が完了した後、LEDは、電源オフ状態である状態102に遷移し、再び固体色素は色を有するように見える。
【0032】
固体から液体への転移及び液体から固体へと戻る転移は、比較的短期間で起こることができる。例えば、色素の温度は、固体から液体への相変化を何分の1秒かで生じさせるように、十分に速く変化することができる。以下の図は、近位の発光デバイスに印加される時変電流の関数として、高速な相転移を示している。
【0033】
図1Cは、配列された発光デバイスに印加される電流を変化させることに応答する高速切換サーモクロミック材料の時変挙動1C00を示している。この実施形態では、3つの変数が同相関係で一緒に変化する。具体的には、図示のように、時間T=0にて、電流116(例えば、2アンペアの電流)が印加される。LEDは、最大光出力まで(例えば、最大光出力の約100%まで)光出力118を生成し始め、その後、電流がゼロになった後、光出力もゼロになる。この期間中(例えば、T=0msからT=250msの間)、発光デバイスに近接している色素は、上述の透明への相転移と、その後に色付き状態へと戻る相転移とを受ける。カメラフラッシュユニットは、実質的に
図1Cに示されるように振る舞うよう構築され得る。
【0034】
図2Aは、オフ状態とオン状態との間で発光装置の色を変化させる構造を有する半導体発光装置2A00を示している。オプションとして、ここに記載される実施形態の何らかの環境及び/又は何らかの状況では、半導体発光装置2A00の1つ以上のバリエーション又はその何らかの態様が実装され得る。
【0035】
図示のように、サブマウント216を用いて半導体発光デバイス222が形成され、サブマウント216の上にn型材料214が成長される。p型材料210を配設する前に、活性領域212がドープされ得る。n型層及びp型層の上に電気コンタクトが形成される。十分な電圧の電位がコンタクトに(例えば、n型材料とp型材料との間に)印加されるとき、活性領域から光子が放出される。そのような光子は、実質的に単色(例えば、青色光)であり得る。半導体発光デバイス222の一部のバリエーションは、単色光子を異なるエネルギーの光子へと変換するように蛍光体層208を含み得る。従って、或る波長スペクトルに及ぶ光を作り出すように(例えば、波長変換材料の選択によって)、ダウンコンバート光子及び一部のケースではアップコンバート光子を工学設計することができる。蛍光体層は、半導体発光デバイスの活性領域に近接して配置されることができ、又は、例えば電球の内表面上など、遠隔に配置されることができる。
【0036】
サーモクロミック層202が、オフ状態の外観が透明な外観へと変化するように制御され得るような構造を提供する。具体的には、半導体発光デバイスが電源オンにされるとき、半導体発光デバイスによって発生された熱が、透明又は半透明の外観が達成されるように、サーモクロミック層の中又は上に配置されたサーモクロミック材料の相転移を生じさせる。この及びその他の実施形態において、光出力の減衰なしで、そして、望ましくないオン状態の色シフトなしで、発光が達成される。
【0037】
一部の実施形態において、加熱によってサーモクロミック色素の相転移を生じさせるように別個の熱発生器(例えば、加熱素子218
1、加熱素子218
2)を実装することによって、又は、LEDからの光子を吸収することによって色素の温度が相転移に必要な温度まで上昇される構造を設計することによって、LEDから遠位になるようにサーモクロミック色素を配置することができる。一部の実施形態において、LEDから全ての色素粒子への熱伝達を促進させるために、緻密化されたサーモクロミック色素の膜が使用される。サーモクロミック色素は、例えば
図2Aにガラス層204として示すように、導電性且つ/或いは熱伝導性のガラスの表面に設けられ得る。ガラスの上又は中に埋込導電体220を配置することができる。くれぐれも一例として、インジウム錫酸化物(ITO)ガラスは、LEDによって放たれた光の経路内に置かれるガラス層として機能することができる。ITOガラスに電流を流すことにより、オーム熱によって、ガラス及び適用された色素が加熱される。同様に、薄い導電ワイヤを、サーモクロミック色素マトリクスの内又は近くに埋め込むことができる。ワイヤに電流を流すことにより、サーモクロミック色素が加熱され得る。ガラス層の以上の説明は単なる一例である。熱を伝導するその他の構造部材が使用されてもよい。一部の実施形態において、サーモクロミック色素は、そのような構造部材と直に接触している。構造部材それ自体は、実質的に透明な材料(例えば、ガラス)で形成されることができ、又は実質的に半透明な材料で形成されてもよい。
【0038】
本発明の一部の実施形態において、サーモクロミック色素は、LED活性領域の光路内に配置された蛍光体層208の上のサーモクロミック色素層206にて、LEDの上に設けられる。
【0039】
サーモクロミック色素は、しばしば、粉末形態で、そして様々な色で、入手可能である。多くの場合、特定の相転移温度に基づいて、様々な色のサーモクロミック色素が選択可能である。
【0040】
図2Bは、オフ状態とオン状態との間で発光装置の色を変化させるようにサーモクロミック材料をレンズ上に配置した半導体発光装置2B00を示している。オプションとして、ここに記載される実施形態の何らかの環境及び/又は何らかの状況では、半導体発光装置2B00の1つ以上のバリエーション又はその何らかの態様が実装され得る。
【0041】
LED又は加熱素子の動作中にサーモクロミック色素が加熱されるようにLEDの光路内にサーモクロミック色素を配置することには数多くの可能な方法が存在する。サーモクロミック色素232は、例えばレンズ230などの補助的な光学系の上に設けられることができる。レンズに設けられたサーモクロミック色素は、LEDが電源オンされているときに、LEDによって放たれた光を吸収する。LEDからの光子の吸収がレンズ及びサーモクロミック材料の温度を上昇させ、この上昇した温度が、サーモクロミック材料を、次いで透明性又は半透明性を示す相変化へと押し通す。
【0042】
以上の実施形態の何れにおいても、サーモクロミック色素を加熱して温度を上昇させることは、LEDの動作による加熱、及び/又はサーモクロミック色素に(例えば、近接さによって、又は熱伝導性の構造部材の中又は上にサーモクロミック色素が存在することによって)熱的に結合された熱発生器を作動させることによる加熱、の任意の組み合わせを含むことができる。
【0043】
例えば以上の
図2A及び
図2Bに示されるものなどの装置は、カメラフラッシュユニット用途に適している。そのような用途では、フラッシュ継続時間は約200msである。1つの取り得る設計は、サーモクロミック材料の相変化を起こすために、LEDから発せられる光子に頼るのみである。故に、切換時間(例えば、サーモクロミック材料の相変化に必要とされる時間)は、フラッシュサイクルの初期の部分でサーモクロミック材料を透明状態に転換するのに十分な高速さであるべきである。このような設計要求は、選択されたサーモクロミック色素を混合してキャリアスラリー(例えば、シリコーンベースの混合物)を形成し、そのキャリアスラリーをLEDの蛍光体層の上に(又は近接して)堆積させることによって満足され得る。一実施形態において、黒色色素(例えば、62℃の切り換わり温度(切換温度)を持つ黒色色素)が選択される。同じ又はその他の実施形態において、例えば青色色素(例えば、47℃の切換温度を持つ青色色素)などのその他の材料を使用することができ、場合により、他の色素と一緒に混合され得る。
【0044】
所与の用途が、色素の選択に影響を及ぼし得る様々な設計要求を含むことがある。くれぐれも一例として、色付きの色素及び黒色色素を混ぜるときに選択を容易にするように、選択チャートを使用することができる。
【0045】
図3は、発光装置のオフ状態の色を変えるための波長変換材料及び/又はサーモクロミック材料を選択するための選択チャート300である。
図3のチャートは、楕円として描かれた選択の範囲をプロットしている。これらの楕円は、赤色(RED)から橙色(ORANGE)、黄色(YELLOW)、緑色(GREEN)、青色(BLUE)、藍色(INDIGO)、及び紫色(VIOLET)への色のスペクトルに対する切換温度の範囲(例えば、低い側の温度、高い側の温度)を近似するように配置されている。黒色(BLACK)も描かれている。黄色、橙色及び赤色は、所望色の外観を達成するために蛍光体本体それ自体を使用することができるクラス302に分類される。LEDから発せられた光子がクラス302の蛍光体と相互作用し、その相互作用が、デザイン・インされた色シフトを生み出す。
【0046】
このチャートはまた、緑色及び/又は青色のサーモクロミック色素が、赤色、橙色又は黄色の蛍光体と混合されることで、場合により(例えば、審美的な目的のため)基準色と一致するよう、所望の色相、強度及び色合いを生成するクラス304及びクラス306を描いている。青色及び黒色のサーモクロミック色素は、同様の切換時間特性を示す。クラス308は、他の色素及び蛍光体と混合するための青色又は黒色の色素を付加する選択肢が、広範囲の色付きのオフ状態外観を示すようにLED装置に適用可能な広範囲の色選択肢を提供することを描いている。
【0047】
このチャートは、相対的に低い温度から相対的に高い温度までの切換温度を示している。示されたクラス310
1は相対的に低い切換温度を示し、クラス310
2は相対的に高い切換温度を示している。
【0048】
サーモクロミックカプセル
サーモクロミック色素は、しばしば、顕色剤(例えば、ビスフェノール−Aなどフェノール化合物)と着色錯体を形成する染料(例えば、スピロラクトン、スピロピラン又はフルオラン)を有するカプセルとして供給される。染料及び顕色剤はどちらも、長鎖アルコール、エステル又は酸で充填された封止ポリマーカプセル内に存在する。アルコール、エステル又は酸の融点が、染料の切換温度を決定する。溶融すると、染料−顕色剤錯体が解離し、故に、材料の変色につながる。硬質で比較的温度安定性のあるポリマーであるメラミン又はその他のポリマーが、しばしば、ポリマーシェルに使用される。
【0049】
前述のように、望まれるのは、サーモクロミック材料が、固体状態にあるときには高い度合いの反射性(例えば、求められる色の)を示し、液体状態にあるときには高い度合いの透明性を示すことである。以下の
図4は、サーモクロミック材料が、或る範囲の可視光波長にわたって変化する反射率を示す状況を提示する。
【0050】
図4は、2つの温度でのサーモクロミック膜の透過率を示す透過スペクトルチャート400である。より具体的には、透過スペクトルチャート400は、温度が室温(例えば、25℃)と昇温(例えば、150℃)との間で変化されるときのサーモクロミック色素の一連の透過率変化の一例を示している。外観の変化は、他の検出法を用いることなく、裸眼によって又は顕微鏡下で容易に検出されることができる。
【0051】
この例では、カーブの全体的な形状が、2つの温度の間での透過率の変化が、比較的短い波長(例えば、青−緑色領域)でいっそう大きいことを例証している。より長い波長で(例えば、橙−赤色領域で)、サーモクロミック色素はよりいっそう高い透明性を示す。
【0052】
図示の加熱遷移402は、スペクトル内の低い点で開始し、その後、150℃に至るまでの温度変化を経る。冷却遷移404にて、材料は、以前の温度及び以前の状態(例えば、破線)に戻る。図示の遷移は単なる遷移例である。
【0053】
図5Aは、空気充填環境における発光デバイスの時変性能劣化5A00を示している。サーモクロミック色素は劣化することが知られている。劣化は、望ましくない熱的条件によって、及び/又は望ましくない光化学的環境によってもたらされ且つ/或いは進行され得る。
【0054】
光化学的劣化
光化学的劣化は、ほとんどの場合、例えば一重項酸素などの反応性酸素種及び/又は過酸化物に由来するラジカルに関わる。改善技術(例えば、酸素関連劣化を阻む技術)は、酸化防止剤及び例えばヒンダードアミン光安定剤(HALS)などのラジカル捕捉剤を導入することを含む。光化学的劣化を阻むための別の一手法は、サーモクロミックカプセルを有する1つ以上の層の上に、又はサーモクロミックカプセルそれ自体の上に、気密シール層を適用することによって、系から酸素を排除することである。薄層堆積は、下に位置する層又は材料を、酸素含有ガス(例えば、空気)及び/又は酸素含有液体(例えば、水)と接触することから保護する技術を提供する。
【0055】
薄層堆積への一般的なアプローチについての更なる詳細は、共通の出願人による特許出願刊行物であるWO2016/041838号に記載されている。
【0056】
異なる用途は、異なる劣化改善技術の余地がある。くれぐれも一用途例として、フラッシュユニット(例えば、カメラ用)が以下にて説明される。具体的な使用パターンと信頼性要求は、以下を含む:
− 1アンペアの駆動電流下での動作で光を約200msだけターンオンさせて、最低30,000回のフラッシュサイクル;
− 各フラッシュサイクル中に温度が120°C以上に達する;
− 高温動作寿命で、動作寿命が少なくとも168時間である。
【0057】
このような厳しい信頼性要求を達成するために、サーモクロミック材料と酸素との間の接触は回避されるべきである。
【0058】
酸素の排除による劣化改善
劣化に対する酸素の排除の効果を実証するために、空気雰囲気(例えば、比較的酸素リッチな雰囲気)での切り換えを、窒素雰囲気(例えば、比較的酸素プアな雰囲気)での切り換えと比較する。
【0059】
フラッシュユニットシステムが空気充填環境内で青色光に曝されるとき、高温での透過強度が経時的に低下する(低下傾向505参照)。カーブ504の減衰形状は、不完全な相間切り換わり及び/又は褐色化効果を指し示している。
図5Aの具体例において、カーブ504は、空気充填環境(例えば、大ざっぱに25%酸素)内で0.8W/cm
2の青色光強度にて20℃(低い積分強度における)から70℃(高い積分強度における)に切り換えるときに検出された青色光強度を示している。
【0060】
サーモクロミック材料の劣化は、サーモクロミック材料が置かれる環境から酸素を除去することによって停止又は減速され得る。酸素を除去する1つの技術は、酸素をパージするように窒素リッチな雰囲気を提供することである。性能劣化が抑制されることの証拠を、
図5Bに関して図示して説明する。
【0061】
図5Bは、酸素枯渇環境における発光デバイスの抑制された性能劣化5B00を示している。具体的には、このチャートは、
図5Aに関して図示して説明したものと同じ切換プロファイルを示している、
図5Bの条件は窒素フローを含んでいる。光強度は、
図5Aに示した条件と同じ又は同様なものである0.8W/cm
2である。試験条件は、透明状態で45分間の期間と着色状態で80分間の期間との間でのサイクルを含む。これらの期間にわたって測定された測定値(カーブ506参照)は、減衰も低下もしていない。酸素プア環境において、このデバイスは、感知できるほどの劣化を被っていない。
【0062】
図6は、オフ状態とオン状態との間でのAランプ装置のカラー・ツー・白色600遷移を示している。オプションとして、ここに記載される実施形態の何らかの環境及び/又は何らかの状況では、カラー・ツー・白色600の1つ以上のバリエーション又はその何らかの態様が実装され得る。
【0063】
この図は、青−緑カラースペクトルの端部にプロットされた2つのランプを示している。1つのランプは、半透明材料603
GREENで形成された本体に、緑色に見えるサーモクロミック材料のコーティングが適用されていることによって、比較的長い波長の色606を呈する。もう1つのランプは、半透明材料602
BLUEで形成された本体に、青色に見えるサーモクロミック材料のコーティングが適用されていることによって、比較的長い波長の色606を呈する。ランプの電源オンにされているとき、LEDからの光子がコーティングに突き当たってコーティングの相変化を生じさせ、ひいては、色及び/又は透過率の変化を生じさせる。図示のように、電源オンのランプは透き通って見える又は白く見える電源オン状態608を有し、これは、発せられる光の強度に応じて裸眼で見えることもあるし見えないこともある。
【0064】
照明ランプ及びカメラフラッシュユニット以外の用途は、ここに開示される技術を利用することができる。くれぐれも更なる例として、サーモクロミック材料は、フィラメント型LEDランプ、及び/又は手持ち型若しくは頭部装着型の懐中電灯、及び/又は自動車用LEDヘッドランプ、及び/又はLEDモジュール(具体的には、LEDモジュールの部分の上のコーティング)が消費者に見える任意の用途で使用されることができる。
【0065】
図7は、オフ状態からオン状態へのフラッシュユニット装置のカラー・ツー・透明700遷移を示している。オプションとして、ここに記載される実施形態の何らかの環境及び/又は何らかの状況では、カラー・ツー・透明700の1つ以上のバリエーション又はその何らかの態様が実装され得る。
【0066】
図示のように、フラッシュユニット装置は、例えばスマートフォン又はカメラなどの装置702に一体化される。オフ状態において、フラッシュユニット装置は緑色の外観を有する(緑状態704
GREENを参照)。オン状態への電源サイクルにおいて、フラッシュユニット装置の可視構造の中又は上のサーモクロミック材料は、透き通った状態に遷移する(透明状態704
TRANSPARENTを参照)。従って、フラッシュユニット装置から発せられた光は減衰されず、また、色シフトされない。
【0067】
本開示の更なる実施形態
更なる実用的用途例
図8Aは、本開示に従った装置を製造するための方法8A00を示している。図示のように、半導体発光デバイスが用意される(ステップ802)。半導体発光デバイスに近接して波長変換材料(蛍光体、染料、又は量子ドット)が配設される(ステップ804)。半導体発光デバイスの具体的な使用又は用途に基づいて、及び/又は半導体発光デバイスの意図された使用に基づいて、1つ以上のサーモクロミック材料が選択される(ステップ805)。選択された1つ以上のサーモクロミック材料が、半導体発光デバイスのオフ状態においてサーモクロミック材料が見えるように、キャリア(例えば、レンズ、電球本体、ガラス層など)を用いて配置(例えば、塗布、埋め込み、注入、塗装、接着、装填など)される(ステップ806)。サーモクロミック材料は、活性領域から発せられた光子の光路内にあっての動作によって加熱されることができ、又は、加熱素子によって加熱されることができる。一部の実施形態において、活性領域から発せられる光子の光路内にレンズが配設される(ステップ808)。ガラス層は実質的に平坦であることができ、又は、ガラス層はレンズとして機能するよう整形されることができ、又は、ガラス層は電球として機能することができる(ステップ810)。活性領域から発せられる光子の光路内にあるそのような層(例えば、ガラス又はその他の材料)は、サーモクロミック材料のためのキャリアとしての役割を果たすことができる(ステップ812)
図8Bは、本開示に従った構造体を製造するための方法8B00を示している。図示のように、半導体発光デバイスを用意し(ステップ820)、そして、半導体発光デバイスによって放たれる光の経路内にサーモクロミック色素を配置する(ステップ830)ことによって、構造体が組み立てられる。
【0068】
本開示の実施形態を使用する更なるシステム
更なる例
開示された実施形態又はそのバリエーションの何れかを、広範囲の照明用途及び/又は装置で使用することができる。以下に続くのは、代表的な装置における一部の照明用途例の描写及び説明である。
【0069】
図9Aは、ダウンライト装置の側面図を示している。図示のように、ダウンライト装置902は、発光デバイスアレイ906を支持する剛性又は半剛性のハウジング904を含んでいる。発光デバイスのアレイは、任意の構成に編成されることができ、例えば図示のように、プリント配線板モジュール908の境界内に配置された線形アレイに編成され得る。一部のダウンライトは、発光デバイスアレイ内のもっと多数(又は少数)のダウンライトエミッタ910で構成され得る。
【0070】
図9Bは、管状(tube)発光ダイオード(TLED)装置の側面図を示している。図示のように、TLED922は、TLED管の境界924によって形成されるTLED空洞内に収まるように編成された複数のTLEDエミッタ920の線形アレイを含んでいる。発光デバイスのアレイは、任意の構成に編成されることができ、例えば図示のように、プリント配線板モジュール908の境界内に配置された線形アレイに編成され得る。管状の剛性又は半剛性のハウジング926が、発光デバイスアレイ906を支持するリジッド又はフレキシブル基板928を支持する。リジッド又はフレキシブル基板928は、当該リジッド又はフレキシブル基板の片面又は両面に配置されたプリント配線構造(例えば、トレース、スルーホール、コネクタなど)又はその他の導電構造を含むことができる。
【0071】
図9Cは、トロファ装置の立面図を示している。図示のように、トロファ装置942は、発光デバイスのアレイを支持する剛性又は半剛性の整形されたハウジング946を含んでいる。発光デバイスのアレイは、任意の構成に編成されることができ、例えば図示のように、整形されたハウジングの境界内に配置されたプリント配線板モジュール908上の構成に編成され得る。一部のトロファは、プリント配線板モジュール上に装着されたもっと多数(又は少数)の発光デバイスで構成され得る。
【0072】
記載されているのは、LEDに基づく照明プロダクトにおいて、選択された色のサーモクロミック材料を使用するアプローチ、及びそれらに関連する利点である。
【0073】
本発明を詳細に記載してきたが、当業者が理解することには、本開示を所与として、ここに記載された発明概念の精神から逸脱することなく、本発明に変更が為され得る。故に、図示して説明した特定の実施形態に本発明の範囲を限定する意図はない。