特許第6960904号(P6960904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インペリアル イノベイションズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000046
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000047
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000048
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000049
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000050
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000051
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000052
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000053
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000054
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000055
  • 特許6960904-マルチブロックコポリマー 図000056
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960904
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】マルチブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/58 20060101AFI20211025BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20211025BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08G63/58
   C08G63/08
   C08G63/82
【請求項の数】27
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2018-507704(P2018-507704)
(86)(22)【出願日】2016年8月12日
(65)【公表番号】特表2018-523740(P2018-523740A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】GB2016052511
(87)【国際公開番号】WO2017029479
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年6月18日
(31)【優先権主張番号】1514506.3
(32)【優先日】2015年8月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511175325
【氏名又は名称】インペリアル イノベイションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Imperial Innovations Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,シャーロット キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー,ユンチン
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−017252(JP,A)
【文献】 特表2013−544911(JP,A)
【文献】 特表2014−526572(JP,A)
【文献】 特表2016−518502(JP,A)
【文献】 Chemoselective Polymerization Control:From Mixed-Monomer Feedstock to Copolymers,Angew. Chem. Int. Ed.,2014年,53,p1607-1610
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−63/91
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーであって、
ブロックAは、ラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、
ブロックBは、エポキシドと無水物との重合によって形成されたコポリエステルまたはエポキシドと二酸化炭素との重合によって形成されたポリカーボネートを含み、
特徴(i)〜(iii)の1つ以上を特徴とする、マルチブロックコポリマー:
(i)ブロックAの結晶化度(χ)がDSCにより測定して20%以下であり、および/または
(ii)ブロックAの結晶化度(χ)がWAXSによって測定して20%以下であり、および/または
(iii)ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有し、
【化1】
【請求項2】
ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する、請求項1に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項3】
ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも100℃の差異を有する、請求項1または2に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項4】
ブロックBが、30℃以上および250℃以下のTgを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項5】
前記マルチブロックコポリマーのブロックBがアモルファスである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項6】
特徴(i)または特徴(ii)および特徴(iii)を特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項7】
ブロックBの重量含有率が、ブロックAに対して10〜90%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項8】
ブロックBの重量含有率が、ブロックAに対して20〜80%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項9】
ブロックBの重量含有率が、ブロックAに対して30〜55%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項10】
少なくとも1kg/molのMn(数平均分子量)を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項11】
少なくとも10kg/molのMn(数平均分子量)を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項12】
1MPa〜7000MPaのヤング率を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項13】
少なくとも50MPaのヤング率を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項14】
200MPa〜7000MPaのヤング率を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項15】
223MPa〜6600MPaのヤング率を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項16】
ブロックAが、ε−デカラクトンの重合によって形成されたポリエステルを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項17】
ブロックBが、(a)シクロヘキセンオキシドおよび無水フタル酸の重合から形成された交互コポリエステルであるポリ(シクロヘキシレンフタル酸)エステル、(b)シクロヘキセンオキシドおよび二酸化炭素、もしくは4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2−エポキシドおよび二酸化炭素の重合から形成されたポリカーボネート、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項18】
ブロックBがポリ(シクロヘキシレンフタル酸)エステルを含む、請求項17に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項19】
ブロックA−B−Aを含むマルチブロックコポリマーを製造するためのワンポット法であって、
ブロックAはラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、ブロックBは、エポキシドと無水物との重合によって形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素との重合によって形成されたポリカーボネートを含み、
重合が起こって少なくともブロックA−B−Aを含むマルチブロックコポリマーを形成するように、下記を含む反応混合物を形成することを含み:
i.エポキシド、
ii.無水物または二酸化炭素、および
iii.ラクトンおよび/またはラクチド、および
iv.式(I)の触媒と開始剤とを含む触媒系、
前記触媒は、式(I)のとおりであり:
【化2】

ここで、
[M]は配位子系によって配位された少なくとも1つの金属原子Mを有する金属錯体であり、MはZn、Cr、Co、Mn、Mg、Fe、Ti、Ca、Ge、Al、Mo、W、Ru、NiまたはVであり、
Zは存在しないか、または独立して−E−、−EX(E)−または−EX(E)E−から選択され、
各Eは、独立して、O、SまたはNRから選択され、ここで、Rは、Hまたは置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリールであり、
XはCまたはSであり、
Rは水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シリルもしくはポリマーであり;Zが存在しない場合には、Rは、ハロゲン化物、ホスフィネート、アジドおよび硝酸塩からさらに選択されてもよい、
前記開始剤は、−OH、−SH、−C(O)OHもしくは−NH−から独立して選択される少なくとも2つの部分を含む多官能性プロトン性化合物であるか、または前記開始剤は水であり、
【化3】
【請求項20】
式(I)の触媒は、式(IA)の錯体である、請求項19に記載の方法:
【化4】

ここで、
およびRは独立して水素、ハロゲン化物、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルフィン酸基、またはアセチリド基または置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂環式もしくはヘテロ脂環式であり、
は置換されてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンまたはシクロアルキレンであり、ここで、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンおよびヘテロアルキニレンは、場合により、アリール、ヘテロアリール、脂環式またはヘテロ脂環式で中断されていてもよく、
はH、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールまたはアルキルアリールであり、
はH、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールまたはアルキルアリールであり;
がCであってEがO、SもしくはNHであるか、または、EがNであってEがOであり、
Zは存在しないか、または−E−、−EX(E)−または−EX(E)E−から選択され、
XはCまたはSであり、
Eは、−O−、−S−またはNRであり、ここで、Rは、Hまたは置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールであり、
Rは水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シリルもしくはポリマーであり;Zが存在しない場合には、Rは、ハロゲン化物、ホスフィネート、アジドおよび硝酸塩からさらに選択されてもよく、
各Gは独立して、存在しないか、またはルイス塩基である中性または陰イオン供与体配位子であり、G基が存在する場合、G基は、式(IA)に示される単一のMと会合していてもよく、または単一のG基は、両方の金属中心に結合し、2つの金属中心の間に架橋を形成してもよく、かつ、
MはZn(II)、Cr(II)、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Fe(II)、Ti(II)、Cr(III)−Z−R、Co(III)−Z−R、Mn(III)−Z−R、Fe(III)−Z−R、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)−Z−R、Ti(III)−Z−R、V(III)−Z−R、Ge(IV)−(−Z−R)またはTi(IV)−(−ZR)である。
【請求項21】
式(IA)の触媒において、Zは存在しないか、または−E−であり、Eは−O−、−S−またはNRであり、ここでRはH、置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリールであり、Rは、置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールである、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
Zは存在しないか、または−O−である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒は、[LMgCl(メチルイミダゾール)]、[LMgCl(ジメチルアミノピリジン)]、[LMgBr(ジメチルアミノピリジン)]、[LZn(C]または[LZn(C]である、請求項19〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
触媒:開始剤(CTA)の担持量は、1:2〜1:1000である、請求項19〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
少なくともブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成し、ここで、前記マルチブロックコポリマーは、特徴(i)〜(iii)の1つ以上を特徴とする、請求項19〜24のいずれか1項に記載の方法:
(i)ブロックAの結晶化度(χ)がDSCにより測定して20%以下であり、および/または
(ii)ブロックAの結晶化度(χ)がWAXSによって測定して20%以下であり、および/または
(iii)ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する。
【請求項26】
ブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーの製造方法であって、
ブロックAはラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、
ブロックBは、エポキシドと無水物との重合によって形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素との重合によって形成されたポリカーボネートを含み、
前記マルチブロックコポリマーは、特徴(i)〜(iii)の1つ以上を特徴とし:
(i)ブロックAの結晶化度(χ)がDSCにより測定して20%以下であり、および/または
(ii)ブロックAの結晶化度(χ)がWAXSによって測定して20%以下であり、および/または
(iii)ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する、
以下の(a)および(b)を含む、反応混合物を形成することを含み:
(a)反応混合物中の、下記から選択されるモノマーまたはモノマーの組み合わせを、式(I)の触媒および開始剤を含む触媒系と接触させることにより、前記第1のモノマーまたはモノマーの組み合わせを重合することによって、第1のブロックAまたはBを形成すること、
(i)エポキシドおよび無水物、
(ii)エポキシドおよび二酸化炭素、および
(iii)ラクトンおよび/またはラクチド、
(b)反応混合物に第2のモノマーまたはモノマーの組み合わせを添加することによってブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成すること、この際、重合が起こってブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成するように、第1のモノマーが(i)または(ii)である場合、第2のモノマーは(iii)であり、第1のモノマーが(iii)である場合、第2のモノマーは(i)または(ii)である、
前記触媒は、式(I)のとおりである:
【化5】

ここで、
[M]は配位子系によって配位された少なくとも1つの金属原子Mを有する金属錯体であり、MはZn、Cr、Co、Mn、Mg、Fe、Ti、Ca、Ge、Al、Mo、W、Ru、NiまたはVであり、
Zは存在しないか、または独立して−E−、−EX(E)−または−EX(E)E−から選択され、
各Eは、独立して、O、SまたはNRから選択され、ここで、Rは、Hまたは置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリールであり、
XはCまたはSであり、
Rは水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シリルもしくはポリマーであり;Zが存在しない場合には、Rは、ハロゲン化物、ホスフィネート、アジドおよび硝酸塩からさらに選択されてもよい、
前記開始剤は、−OH、−SH、−C(O)OHもしくは−NH−から独立して選択される少なくとも2つの部分を含む多官能性プロトン性化合物であるか、または前記開始剤は水であり、
【化6】
【請求項27】
前記触媒が請求項0〜23のいずれかに定義される通りであり、および/または、前記ポリマーが請求項2〜18のいずれか1項に定義される通りである、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチブロックコポリマーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ゴムとしても知られている熱可塑性エラストマー(TPE)は、異なるポリマーブロックからなるブロックコポリマーの一種であり、熱可塑性およびエラストマー性の両方を有する。熱硬化性エラストマーと熱可塑性エラストマーとの根本的な相違は、高い弾性特性に寄与する架橋点のタイプである。
【0003】
ポリスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリスチレン(SBS)は、共役ジエンモノマー(ブタジエン)とビニル芳香族モノマー(スチレン)とのポリマーブロックから構成され、最も良好に市販されている熱可塑性エラストマーと考えられる。しかし、SBSおよびその誘導体は、非分解性であり、かつ現在その原料が化石油から取得されている。製造上、ポリブタジエンブロックの各繰り返し単位に炭素二重結合が存在するという事実に起因する。SBSおよびその誘導体は、高温で熱架橋反応を受ける。この結果、処理中の粘度が増加し、最終的に、過剰な架橋密度に起因して高い弾性特性が危うくされる。
【0004】
既に商業的に成功したコポリエステルエラストマーがあり、例えば、米国DuPont社の登録商標製品ハイトレル(Hytrel)が固体タイヤおよび他の自動車部品を製造するために使用されてきた。この種のコポリエステルエラストマーは、通常、ポリブチレンテレフタレート(硬質結晶ドメインとしてのPBT)と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の軟質/柔軟性マトリックスとしての広範囲のポリエステルまたはポリエーテルのいずれか1つと、からなる。しかしながら、PBTの調製は、非常に遅い(低い重合速度)およびエネルギーを消費するプロセスである多段階重縮合反応に依存する。また、ポリエーテルが軟質/柔軟性ドメインとして選択される場合、コポリエステルエラストマーはほとんど分解されない(例えば、ハイドレル)。
【0005】
本発明は、SBSおよびその誘導体の代替物として、調整可能なエラストマー特性および分解可能な骨格を有するマルチブロックコポリマーに関する。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本発明は、少なくともブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを提供し、ブロックAは、ラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、ブロックBは、エポキシドと無水物との重合によって形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素との重合によって形成されたポリカーボネートを含み、マルチブロックコポリマーは、特徴(i)〜(iii)の1つ以上を特徴とする:
(i)ブロックAの結晶化度(χ)がDSCにより測定して20%以下であり、および/または
(ii)ブロックAの結晶化度(χ)がWAXSによって測定して20%以下であり、および/または
(iii)ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する。
【0007】
第2の態様では、本発明は、ブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを製造するためのワンポット法を提供し、ブロックAはラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、ブロックBは、エポキシドと無水物との重合によって形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素との重合によって形成されたポリカーボネートを含み、該方法は、下記を含む反応混合物を形成することを有し:
i.エポキシド、
ii.無水物または二酸化炭素、および
iii.ラクトンおよび/またはラクチド、および
iv.式(I)の触媒と開始剤とを含む触媒系、
重合が起こってブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成するように、
触媒は、式(I)のとおりであり:
【0008】
【化1】
【0009】
ここで、
[M]は配位子系によって配位された少なくとも1つの金属原子Mを有する金属錯体であり、MはZn、Cr、Co、Mn、Mg、Fe、Ti、Ca、Ge、Al、Mo、W、Ru、NiまたはVであり、
Zは存在しないか、または独立して−E−、−EX(E)−または−EX(E)E−から選択され、
各Eは、独立して、O、SまたはNRから選択され、ここで、Rは、Hまたは置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリールであり、
XはCまたはSであり、
Rは水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シリルもしくはポリマーであり;Zが存在しない場合には、Rは、ハロゲン化物、ホスフィネート、アジドおよび硝酸塩からさらに選択されてもよく、
開始剤は−OH、−SH、−C(O)OHもしくは−NH−から独立して選択される少なくとも2つの部分を含む多官能性プロトン性化合物であり、または開始剤は水である。
【0010】
第3の態様では、本発明は、ブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーの製造方法を提供し、ここで、ブロックAはラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、ブロックBは、エポキシドと無水物との重合によって形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素との重合によって形成されたポリカーボネートを含み、マルチブロックコポリマーは、特徴(i)〜(iii)の1つ以上を特徴とし:(i)ブロックAの結晶化度(χ)がDSCにより測定して20%以下であり、および/または(ii)ブロックAの結晶化度(χ)がWAXSによって測定して20%以下であり、および/または(iii)ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する;該方法は、以下の(a)および(b)を含む、反応混合物を形成することを含み:
(a)反応混合物中の、下記から選択されるモノマーまたはモノマーの組み合わせを、式(I)の触媒および開始剤を含む触媒系と接触させることにより、前記第1のモノマーまたはモノマーの組み合わせを重合することによって、第1のブロックAまたはBを形成すること、
(i)エポキシドおよび無水物、
(ii)エポキシドおよび二酸化炭素、および
(iii)ラクトンおよび/またはラクチド、
(b)反応混合物に第2のモノマーまたはモノマーの組み合わせを添加することによってブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成すること、この際、重合が起こってブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成するように、第1のモノマーが(i)または(ii)である場合、第2のモノマーは(iii)であり、第1のモノマーが(iii)である場合、第2のモノマーは(i)または(ii)であり、触媒は、式(I)のとおりである:
【0011】
【化2】
【0012】
ここで、
[M]は配位子系によって配位された少なくとも1つの金属原子Mを有する金属錯体であり、MはZn、Cr、Co、Mn、Mg、Fe、Ti、Ca、Ge、Al、Mo、W、Ru、NiまたはVであり、
Zは存在しないか、または独立して−E−、−EX(E)−または−EX(E)E−から選択され、各Eは、独立して、O、SまたはNRから選択され、ここで、Rは、Hまたは置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリールであり、
XはCまたはSであり、
Rは水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シリルもしくはポリマーであり;Zが存在しない場合には、Rは、ハロゲン化物、ホスフィネート、アジドおよび硝酸塩からさらに選択されてもよい、
開始剤は−OH、−SH、−C(O)OHもしくは−NH−から独立して選択される少なくとも2つの部分を含む多官能性プロトン性化合物であるか、または開始剤は水である。
【0013】
本発明の第4の態様では、本発明の第3の態様による方法から得られうるポリマーが提供される。
【0014】
本発明の第5の態様では、包装材料、生物医学材料、シーラント、接着剤、エンジニアリング材料等として使用するための本発明の第1、第2または第4の態様のポリマーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、錯体1によって触媒されるROCOPおよびROP反応を示す図である。
図2図2は、(A)化学選択的配列制御重合を示す図および(B)(A)に示す工程に対応する反応、を示す図である。
図3図3は、(PDL−b−PCHPE−b−PDL)形成中(表3、2欄)に得られた代表的なATR−IRスペクトルを示す図である。PA共鳴は1790cm−1であり、PCHPE共鳴は1065〜1068cm−1であり、ε−DL共鳴は1735cm−1であり、PDL共鳴は1190cm−1である。
図4図4は、配列選択的重合中に起こると推測される反応を例示するスキームを示す図である。「[Zn][Zn]」は複合体1の活性部位であり、「P」は増殖するポリマー鎖である。
図5図5は、PDLブロック(表3、#3)の伝搬前後のポリマーアリコートのSECトレース、およびb)SEC RIおよびUV出力のオーバーレイ(内部標準としてトルエンを使用して検出器間遅延を補正した)を示す図である。
図6図6は、(A)PDL−b−PCHPE−b−PDL(表3、#3)および(B)PCHPE/PDLブレンド(表3、#1および#6)のDSCサーモグラムを示す図である。
図7図7は、表(4)のマルチブロックコポリエステル#(1−3)の応力−歪み曲線を示す図である。
図8図8は、45℃に加熱し、その後18℃に冷却したときの異なる最大歪み(400%及び500%)後の歪回復再現性を示す図である。
図9図9は、18℃(AからBまで)およびその後の加熱(45℃)/冷却(18℃)サイクル(BからCまで)での冷間延伸変形の間に観察された一軸可逆形状変換を示す図である。
図10図10は、(A)42重量%のPCHPE−b−PDLマルチブロックコポリエステルの繰返し引張応力−歪み挙動を示し、サンプルバーは、室温(19℃)で自由に緩和して、第2の伸長を行う前に一定の歪みに達し;(B)文献からのポリスチレン48重量%を含有するSBSの繰返し引張応力−歪み挙動を示す図である。
図11図11は、PDL−b−PvCHC−b−PCHPE−b−PvCHC−b−PDLペンタブロックコポリマー形成中に得られたATR−IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、熱可塑性エラストマー特性を提供することができるマルチブロックコポリマーに関する。マルチブロックコポリマーは、好ましくは硬質および非晶質ドメインであるポリエステルまたはポリカーボネートを含んでもよく、前記ポリエステルまたはポリカーボネートは、軟質/柔軟性ポリエステルマトリックス中に分散するか、または軟質/柔軟性ポリエステルドメインを有する双晶ナノ構造を形成する。したがって、本発明のマルチブロックコポリマーは、相分離ナノ構造を含むことができ、その結果、ゴム状弾性を有しながらプラスチックのように成形および再成形することが可能な熱可塑性樹脂となる。
【0017】
驚くべきことに、本発明者らは、単一の触媒系を使用して、モノマーの後入れによって、または反応の開始時にモノマーの全てが反応混合物に存在する「ワンポット」法によって、マルチブロックコポリマーを製造することが可能であることを見出した。
【0018】
本明細書で使用される様々な用語は、以下に定義される通りである。
【0019】
本発明の目的のために、脂肪族基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、完全に飽和していてもよく、または1個以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない炭化水素部分である。「不飽和」という用語は、1つ以上の二重結合および/または三重結合を有する部分を意味する。したがって、「脂肪族」という用語は、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、およびそれらの組み合わせを包含するものとする。脂肪族基は、好ましくはC1〜20の脂肪族基であり、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子を有する脂肪族基である。脂肪族基は、好ましくC1〜15の脂肪族であり、より好ましくはC1〜12の脂肪族であり、さらに好ましくはC1〜10の脂肪族であり、特に好ましくはC1〜8の脂肪族であり、例えばC1〜6の脂肪族基である。
【0020】
アルキル基は、好ましくは「C1〜20のアルキル基」であり、すなわち、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基である。したがって、アルキル基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子を有する。アルキル基は、好ましくC1〜15のアルキルであり、より好ましくはC1〜12のアルキルであり、さらに好ましくはC1〜10のアルキルであり、さらにより好ましくはC1〜8のアルキル、特に好ましくはC1〜6のアルキル基である。特定の実施形態では、アルキル基は、「C1〜6のアルキル基」であり、すなわち、C1〜6の直鎖または分枝鎖のアルキル基である。したがって、アルキル基は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−オクチル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−エチルブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基等が挙げられる。アルケニルおよびアルキニル基は、好ましくはそれぞれ「C2〜20のアルケニル」および「C2〜20のアルキニル」であり、すなわち、炭素数2〜20の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはアルキニル基である。したがって、アルケニル基またはアルキニル基は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13,14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子を有する。アルケニル基またはアルキニル基は、好ましくは「C2〜15のアルケニル」および「C2〜15のアルキニル」であり、より好ましくは「C2〜12のアルケニル」および「C2〜12のアルキニル」であり、さらに好ましくは「C2〜10のアルケニル」および「C2〜10のアルキニル」であり、さらにより好ましくは「C2〜8のアルケニル」および「C2〜8のアルキニル」であり、最も好ましくは「C2〜6のアルケニル」および「C2〜6のアルキニル」基である。
【0021】
ヘテロ脂肪族基は、1つ以上のヘテロ原子を付加的に含む上記のような脂肪族基である。したがって、ヘテロ脂肪族基は、好ましくは2〜21個の原子、より好ましくは2〜16個の原子、さらに好ましくは2〜13個の原子、さらに好ましくは2〜11個の原子、さらに好ましくは2〜9個の原子、さらにより好ましくは2〜7個の原子、ここで少なくとも1つの原子が炭素原子である。特に好ましいヘテロ原子は、O、S、N、PおよびSiから選択される。ヘテロ脂肪族基が2個以上のヘテロ原子を有する場合、ヘテロ原子は同じであっても異なっていてもよい。
【0022】
脂環式基は、3〜20個の炭素原子を有する飽和または部分不飽和の環状脂肪族単環式または多環式(縮合、架橋およびスピロ縮合を含む)環系であり、すなわち、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子を含む。脂環式基は、好ましくは3〜15個、より好ましくは3〜12個、さらにより好ましくは3〜10個、特に好ましくは3〜8個の炭素原子を有する。用語「脂環式」は、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル基を包含する。脂環式基は、−CH−シクロヘキシル等の1つ以上の結合または非結合アルキル置換基を有する脂環式環を含んでいてもよい。
【0023】
シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル基は、3〜20個の炭素原子を有する。したがって、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル基は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有する。シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル基は、好ましくは3〜15個、より好ましくは3〜12個、さらにより好ましくは3〜10個、さらにより好ましくは3〜8個の炭素原子を有する。脂環式基が3〜8個の炭素原子を有する場合、これは、脂環式基が3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有することを意味する。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0024】
ヘテロ脂環式基は、炭素原子に加えて、好ましくはO、S、N、PおよびSiから選択される1個以上の環ヘテロ原子を有し、上記で定義した脂環式基である。ヘテロ脂環式基は、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を含み、これは同じでも異なっていてもよい。複素環式基は、好ましくは4〜20個の原子、より好ましくは4〜14個の原子、さらにより好ましくは4〜12個の原子を含む。
【0025】
アリール基は、5〜20個の炭素原子を有する単環系または多環系である。アリール基としては、炭素数6、7、8、9、10、11または12のアリール基であり、単環または二環の縮合環基等が挙げられる。具体的には、「C6〜10のアリール基」としては、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基等が挙げられる。インダンおよびテトラヒドロナフタレンのような縮合環もアリール基に含まれることに留意すべきである。
【0026】
ヘテロアリール基は、炭素原子に加えて、好ましくはO、S、N、PおよびSiから選択される1〜4個の環ヘテロ原子を有するアリール基である。ヘテロアリール基は、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜14個の環原子を有する。具体的には、ヘテロアリール基としては、ピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0027】
脂環式、ヘテロ脂環式、アリールおよびヘテロアリール基の例としては、限定されないが、シクロヘキシル、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、シンノリン、ジオキシン、ジチアン、ジチアジン、ジチアゾール、ジチオラン、フラン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、インドリン、インドリジン、インダゾール、 オキサジアゾール、オキサジアジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナジン、フタラジン、ピペラジン、ピペリジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピリダジン、 テトラゾール、テトラゾール、チオフェン、チアジアジン、チアジアゾール、チアジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオモルホリン、チアナフタレン、チオピラン、トリアジン、トリアゾールおよびトリチアン等が挙げられる。
【0028】
「ハロゲン化物」または「ハロゲン」という用語は互換的に使用され、本明細書中で使用される場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等、好ましくはフッ素原子、臭素原子または塩素原子、より好ましくはフッ素原子または臭素原子である。
【0029】
ハロアルキル基としては、「C1〜20のハロアルキル基」が好ましく、「C1〜15のハロアルキル基」がより好ましく、「C1〜12のハロアルキル基」がより好ましく、「C1〜10のハロアルキル基」がさらに好ましく、「C1〜8のハロアルキル基」がさらにより好ましく、「C1〜6のハロアルキル基」が特に好ましく、前述したC1〜20のアルキル、C1〜15のアルキル、C1〜12のアルキル、C1〜10のアルキル、C1〜8のアルキルまたはC1〜6のアルキル基がそれぞれ少なくとも1個のハロゲン原子、好ましくは1、2または3個のハロゲン原子で置換されたものである。具体的には、「C1〜20のハロアルキル基」としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基等が挙げられる。
【0030】
アルコキシ基としては、「C1〜20のアルコキシ基」が好ましく、「C1〜15のアルコキシ基」がより好ましく、「C1〜12のアルコキシ基」がより好ましく、「C1〜10のアルコキシ基」がさらに好ましく、「C1〜8のアルコキシ基」がさらにより好ましく、「C1〜6のアルコキシ基」が特に好ましく、先に定義したC1〜20のアルキル基、C1〜15のアルキル基、C1〜12のアルキル基、C1〜10のアルキル基、C1〜8のアルキル基またはC1〜6のアルキル基にそれぞれ結合したオキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、iso−ヘキシルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基、1,1−ジメチルプロポキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、2−メチルブトキシ基、1−エチル−2−メチルプロポキシ基、1,1,2−トリメチルプロポキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
アルキルチオ基としては、好ましくは「C1〜20のアルキルチオ基」であり、より好ましくは「C1〜15のアルキルチオ基」であり、より好ましくは「C1〜12のアルキルチオ基」であり、より好ましくは「C1〜10のアルキルチオ基」であり、より好ましくは「C1〜8のアルキルチオ基」、さらにより好ましくは「C1〜6のアルキルチオ基」であり、先に定義したC1〜20のアルキル、C1〜5のアルキル、C1〜12のアルキル、C1〜10のアルキル、C1〜8のアルキルまたはC1〜6のアルキル基にそれぞれ結合したチオ(−S−)基である。
【0032】
アルキルアリール基は、上記のアルキル基またはアリール基のいずれかを含むことができる。好ましくは、アルキルアリール基は「C6〜12のアリールC1〜20のアルキル基」であり、より好ましくは「C6〜12のアリールC1〜16のアルキル基」であり、さらに好ましくは「C6〜12のアリールC1〜6のアルキル基」であり、先に定義したアルキル基に任意の位置で結合した上記のアリール基である。分子へのアルキルアリール基の結合点は、アルキル部分を介していてもよく、したがって、好ましくは、アルキルアリール基は−CH−Phまたは−CHCH−Phである。アルキルアリール基はまた、「アラルキル」と呼ぶことができる。
【0033】
アルキルヘテロアリール基は、上記のアルキルまたはヘテロアリール基のいずれかを含むことができる。好ましくは、アルキルヘテロアリール基は「ヘテロアリールC1〜20のアルキル基」、より好ましくは「ヘテロアリールC1〜16のアルキル基」、さらにより好ましくは「ヘテロアリールC1〜6のアルキル基」であり、任意の位置で上記に定義したアルキル基に結合する。分子へのアルキルヘテロアリール基の結合点は、アルキル部分を介することができる。アルキルヘテロアリール基は、「ヘテロアラルキル」とも呼ばれる。
【0034】
エーテル基は、OR基であることが好ましく、前記Rが、上記定義の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基であり得る。特定の実施形態において、Rは、非置換脂肪族、脂環式またはアリールであり得る。好ましくは、Rは、メチル、エチルまたはプロピルから選択されるアルキル基である。チオエーテル基は、好ましくは、SR(Rは先に定義した通りである)の基である。
【0035】
シリル基は、−Si(R基であることが好ましく、各Rが、独立して、上記の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基であり得る。特定の実施形態では、各Rは、独立して、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、各Rは、メチル、エチルまたはプロピルから選択されるアルキル基である。
【0036】
シリルエーテル基は、OSi(R8)基であることが好ましく、各Rが、独立して、上記で定義した脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基であり得る。特定の実施形態において、各Rは、独立して、非置換脂肪族、脂環式またはアリールであり得る。好ましくは、各Rは、メチル、エチルまたはプロピルから選択されるアルキル基である。
【0037】
ニトリル基はCN基である。
【0038】
アジド基は−N基である。
【0039】
イミン基は、−CRNR基であり、好ましくは−CHNR基であり、ここでRは、上記定義の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基である。特定の実施形態において、Rは、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、Rは、メチル、エチルまたはプロピルから選択されるアルキル基である。
【0040】
アセチリド基は、三重結合−C≡C−R10を含み、好ましくは、R10は、上記定義の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基であり得る。本発明の目的のために、R10がアルキルである場合、三重結合は、アルキル鎖に沿った任意の位置に存在することができる。特定の実施形態において、R10は、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R10は、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。
【0041】
アミノ基は、−NH、−NHR11または−N(R11であることが好ましく、ここでR11は、上記定義の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、シリルアルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり得る。アミノ基がN(R11である場合、各R11基は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、シリルアルキル基、ヘテロアリールまたは上記のアリール基から独立して選択することができる。特定の実施形態では、各R11は、独立して、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R11はメチル、エチル、プロピル、SiMeまたはフェニルである。連鎖移動剤のWがアミンである場合、アミンは好ましくはNHまたはNHR11である。
【0042】
アルキルアミノ基は、上で定義した−NHR11基または−N(R11)2基であってもよい。
【0043】
アミド基は、−NR12C(O)−または−C(O)−NR12−であることが好ましく、ここでR12は、水素、上記定義の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基であり得る。特定の実施形態において、R12は、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R12は、水素、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。
【0044】
エステル基は、好ましくは−OC(O)R13−または−C(O)OR13−であり、R13は、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基である。特定の実施形態において、R13は、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R13は、水素、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。
【0045】
スルホネート基は、好ましくは−SOR14であり、スルホネート基は好ましくは−OS(O)14であり、スルフィン酸基は−S(O)O−R14であり、R14は水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、ヘテロアリール基である。特定の実施形態において、R14は、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R14は、水素、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。
【0046】
カルボキシレート基は、好ましくはOC(O)R15であり、ここでR15は水素、上記定義の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基であり得る。特定の実施形態において、R15は、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R15は水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(例えばn−ブチル、iso−ブチルまたはtert−ブチル)、フェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、トリフルオロメチルまたはアダマンチルである。
【0047】
アセトアミドは、好ましくはMeC(O)N(R16であり、ここでR16は水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基であることができる。特定の実施形態において、R16は、非置換脂肪族、脂環式またはアリールである。好ましくは、R16は、水素、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。
【0048】
ホスフィナート基は、好ましくは、−OP(O)(R17基であり、ここで、各R17は、水素、または上記のような脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基から独立して選択される。特定の実施形態では、R17は脂肪族、脂環式またはアリールであり、脂肪族、脂環式、アリールまたはC1〜6アルコキシで置換されていてもよい。R17は、好ましくは置換されていてもよいアリールまたはC1〜20のアルキル、より好ましくはC1〜6のアルコキシ(好ましくはメトキシ)または非置換C1〜20アルキル(例えば、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ステアリル)。
【0049】
上記の基のいずれかがルイス塩基G中に存在する場合、原子価を完成させるために、適宜、1つ以上の追加のR基が存在してもよい。例えば、エーテルの場合には、RORを与えるために追加のR基が存在してもよく、ここでRは水素、場合により置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基である。好ましくは、Rは水素または脂肪族、脂環式またはアリールである。
【0050】
上記の定義で言及された任意の一つのアリール、ヘテロアリール、ハロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアリール、エーテル、エステル、スルホキシド、スルホネート、スルフィン酸塩、カルボン酸塩、シリルエーテル、イミン、アセチリド、アミノ、アルキルアミノ、ホスフィン酸塩またはアミド基は、ヘテロシクリルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミン、ニトリル、アセチリド、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール基(例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、 ニトロ、カーボネート、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミン、ニトリルまたはアセチリドによって置換されたもの)によって置換されてもよい。
【0051】
したがって、エポキシドという用語は、エポキシド部分を含む任意の化合物に関する。
【0052】
無水物という用語は、環系(すなわち、環状無水物)中に無水物部分を含む任意の化合物に関する。
【0053】
ラクトンという用語は、環に−C(O)O−部分を含む任意の環状化合物に関する。
【0054】
ラクチドという用語は、2つのエステル基を含む環状化合物である。
【0055】
本明細書で使用される用語「ラクトンおよび/またはラクチド」は、ラクトン、ラクチドおよびラクトンとラクチドとの組み合わせを包含する。好ましくは、「ラクトンおよび/またはラクチド」という用語は、ラクトンまたはラクチドを意味する。
【0056】
本明細書で言及する「開始剤」は、本発明の方法において連鎖移動剤として作用し、従って、代わりに連鎖移動剤(CTA)と呼ばれてもよい。連鎖移動剤は、−OH、−SH、−C(O)OHまたは−NH−から独立して選択される2つの部分、または水を含む化合物である。例えば、CTAは、式(II)の化合物であってもよい。
【0057】
【化3】
【0058】
ここで、Yは、連鎖移動剤のコアであり、1個以上、好ましくは2個以上のそれに結合した「W」基を有し、かつ、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される置換されてもよい部分を含みうる。各Wは、ヒドロキシル(−OH)、アミン(−NHR)、チオール(−SH)またはカルボキシレート(−C(O)OH)から独立して選択され、Rは、水素、置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール、またはこれらの組み合わせ(すなわち、脂肪族アリール、脂肪族ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族アリール等)である。そして、nは少なくとも2である整数である。好ましい実施形態において、nは2〜10の整数(例えば、nは2、3、4、5、6、7、8、9または10であり得る)であり、好ましくは2〜10である。より好ましくは、nは2〜6の整数である。いくつかの実施形態では、Yは脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される置換されてもよい部分である。例えば、Yは、置換されてもよい芳香脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂肪族脂環式等の基であってもよい。好ましくは、Yは、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびポリエーテルから選択される。Yは、場合により置換されていてもよい。特定の実施形態では、Yはハロゲン、ニトリル、イミン、ニトロ、脂肪族、アセチル、アミド、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0059】
2つの別個の「−OH」基を有さない水は、2つの別個の「−OH」基を有する分子と同様の連鎖移動特性を示すことが理解されるべきである。
【0060】
Yがポリマーである場合(すなわち、Yがポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテルまたはポリカーボネート基を含む場合)、そのようなポリマーの分子量(Mn)は、好ましくは10,000g/モル未満である。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリ乳酸(PLA)を含む。
【0061】
特定の実施形態では、Wの各存在は同じであっても異なっていてもよい。他の実施形態では、Wの各存在はヒドロキシルである(すなわち連鎖移動剤はポリオール、例えばジオール、トリオール、テトラオール等である)。他の実施形態では、Wの各存在はアミンである(すなわち連鎖移動剤はポリアミン、例えばジアミン、トリアミン、テトラアミン等である)。他の実施形態では、Wの各存在はカルボン酸である(すなわち、連鎖移動剤はポリカルボン酸、例えば二酸、三酸、四酸等である)。他の実施形態では、Wの各存在はチオール(すなわち、連鎖移動剤はポリチオール、例えばジオール、トリチオール、テトラチオール等である)である。他の実施形態では、連鎖移動剤は水である。
【0062】
一重連鎖移動剤または連鎖移動剤の混合物を使用することができる。
【0063】
本発明に有用な連鎖移動剤の例としては、水、ジオール(例えば、1,2−エタンジオール、1−2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1−3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ジフェノール、1,3−ジフェノール、1,4−ジフェノール、カテコールおよびシクロヘキセンジオール)、トリオール(グリセロール、ベンゼントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリス(メチルアルコール)プロパン、トリス(メチルアルコール)エタン、トリス(メチルアルコール)ニトロプロパン、好ましくはグリセロールまたはベンゼントリオール)、テトラオール(例えば、カリックス[4]アレーン、2,2−ビス(メチルアルコール)−1,3−プロパンジオール、好ましくはカリックス[4]アレーン)、ポリオール(例えば、D−(+)−グルコースまたはD−ソルビトール)、ジヒドロキシ末端化ポリエステル(例えば、ポリ乳酸)、ジヒドロキシ末端ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、デンプン、リグニン、ジアミン(例えば、1,4−ブタンジアミン)、トリアミン、ジアミン末端ポリエーテル、ジアミン末端ポリエステル、ジカルボン酸(例えばマレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸またはテレフタル酸、好ましくはマレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸)、トリカルボン酸(例えば、クエン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸または1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、好ましくはクエン酸)、モノ−チオール、ジチオイル、トリチオール、並びに乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類(ピラノースおよびフラノース形態を含む)の混合物を有する化合物が挙げられる。特定の実施形態において、連鎖移動剤は、シクロヘキセンジオール、1,2,4−ブタントリオール、トリス(メチルアルコール)プロパン、トリス(メチルアルコール)ニトロプロパン、トリス(メチルアルコール)エタン、2,2−ビス(メチルアルコール)−1,3−プロパンジオール、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ジフェニルホスフィン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジオール、D−ソルビトール、1−ブチルアミン、テレフタル酸、D−(+)−グルコース、3,5−ジ−tert−ブチル安息香酸、4−エチルベンゼンスルホン酸および水から選択される。
【0064】
ブロックAの結晶化度(χ)は、本明細書に記載のDSC手順を用いて計算することができる。ポリマー試料が結晶材料を含む場合、融解ピークが観察される。融解ピークが観察されない場合、結晶化度は0%であると仮定する。融点が観察される場合、結晶化度は、以下の式より計算され得る:
【0065】
【数1】
【0066】
ここで、ΔHはソフトウェアで提供される積分関数(普遍的な解析、バージョン4.3A)を用いた融解ピークの積分であり、単位はJ/gである。ΔHは、1gの100%結晶化ポリラクトンまたはポリラクチドがJ/gの単位で融解するときの熱量である。ΔHの値は、ポリラクトンまたはポリラクチド標準(既知の結晶性を有する)のΔHを結晶化度を外挿することによって計算することができる。異なるポリラクトンまたはポリラクチド標準のΔH値は、これらの標準の結晶化度(χ)に対してプロットされている。プロットは100%の結晶度に外挿され、対応するΔH値はΔHとして定義される。場合によっては、ΔHの値は文献(Crescenzi.V, G.Manzini, Calzolari.G and C.Borri, Eur. Polym. J., 1972,8,4449)を参照することができる。
【0067】
もしくは、結晶化度(χ)は、W. Huら、Macromolecules 2002,35,5013−5024またはP.J. Raeら、Polymer 2004,45,7615−7625に記載されているように、広角X線散乱(WAXS)手順を用いて決定することができる。その内容は参照により本明細書に組み込まれる。CuターゲットおよびNiフィルターを備えた回転アノードX線発生器(例えばRigaku ROTAFLEX RTP300)により、CuKα(λ=0.154nm)のX線が生成される。ゴニオメーターをNaClで0.5°以内に較正した。ポリマー試料は、1deg・min−1の速度で4〜50°(または対応するベクトルq)を連続的に走査する。X線データは、結晶ピークについてはローレンツ型線形を含み、非晶質散乱についてはローレンツ型と二次型とを含む形態を用いて最初にモデル化された。次に、散乱範囲にわたってCPLOT非線形最小二乗フィッティングルーチンを使用してデータをフィットさせた。結晶化度(χ)は、この式によって計算される:
【0068】
【数2】
【0069】
ここで、Aはアモルファス寄与の積分であり、Aは結晶ピークの積分である。
【0070】
第1の態様では、本発明は、少なくともブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを提供し、ブロックAは、ラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、ブロックBは、エポキシドと無水物の重合によって形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素の重合によって形成されたポリカーボネートを含み、マルチブロックコポリマーは、特徴(i)〜(iii)の1つ以上を特徴とする:
(i)ブロックAの結晶化度(χ)がDSCで測定して20%以下である;および/または
(ii)ブロックAの結晶化度(χ)がWAXSにより測定して20%以下である;および/または
(iii)ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する。
【0071】
いくつかの実施形態において、マルチブロックコポリマーは、ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する。好ましくは、20℃以上、40℃以上、60℃以上、80℃以上、または100℃以上の差異を有する。
【0072】
ブロックBは、Tgが≧30℃、≧40℃、または≧50℃であってもよい。いくつかの実施形態では、ブロックBのTgは250℃以下、200℃以下、150℃以下または100℃以下である。いくつかの実施形態において、ブロックBのTgは50℃〜70℃である。処理の観点から、Tgが100℃未満の場合、200℃よりはるかに低い温度で処理を行うことができる。
【0073】
マルチブロックコポリマーのブロックBは、好ましくは実質的に非晶質である。ブロックBは、その中に検出可能な結晶成分が存在しない場合、実質的に非晶質であると考えられる。例えば、ブロックBは、溶融ピークがDSCで観察されない場合、または本明細書で定義されるDSCおよびWAXS手順に対応するWAXSにおいて鋭い結晶ピークが観察されない場合、実質的に非晶質であると判定され得る。
【0074】
好ましい実施形態において、マルチブロックコポリマーは、特徴(i)または(ii)および特徴(iii)を特徴とする。
【0075】
いくつかの実施形態において、ブロックAの結晶化度(χ)は、DSCによって測定して、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下である。
【0076】
いくつかの実施形態において、ブロックAの結晶化度(χ)は、WAXSによって測定して、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下である。
【0077】
ブロックAのポリエステル並びにブロックBのコポリエステルまたはポリカーボネートは、直接または間接的に結合していてもよい。例えば、本発明のマルチブロックコポリマーのブロックAおよびBは、直接結合されていてもよく、またはマルチブロックコポリマーは、ブロックAおよびBの間にリンカー基および/または追加のポリマー基を含んでいてもよい。ラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステル、エポキシドと無水物の重合により形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素の重合によって形成されたポリカーボネートであってよい。さらに、マルチブロックコポリマーは、3つ以上のブロックABAまたはBABを含んでいてもよい。例えば、マルチブロックコポリマーは、A−B−A−B−AまたはA−B−A−B−A−B−A等の5、7またはそれ以上の交互のブロックを含むことができる。もしくは、マルチブロックコポリマーは、例えばA−B−A−A−B−AまたはB−A−B−B−A−Bの形態の2つ以上の連結トリブロック単位A−B−AまたはB−A−Bを含んでもよい。ブロックA−B−AまたはB−A−Bは、リンカー、例えばウレタンリンカーを介して結合されていてもよい。もしくは、マルチブロックコポリマーは、A−B−B−B−AまたはB−A−A−A−Bの形態のブロックを含むことができ、隣接するAまたはBブロックは同一性が異なり、および/またはリンカーを介して間接的に連結され得る。
【0078】
本発明のマルチブロックコポリマーにおいて、ブロックBの重量含有量は、ブロックAに対して、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜55重量%または30〜50重量%重量%である。重量含有量は、以下の式によって計算される:
【0079】
【数3】
【0080】
aは、H NMR(a=[m−A]/[m−B])から得られるブロックAおよびBの繰り返し単位のモル比である。Mはm−Aの分子量であり、Mはm−Bの分子量であり、m−Aおよびm−BはそれぞれブロックAおよびBを形成するモノマーまたはモノマーの組み合わせを表す。いくつかの実施形態では、例えば、丈夫なプラスチックを製造するために、ブロックBの重量含有量は、ブロックAに対して、55重量%以上であり、例えば55〜90重量%または55〜80重量%である。いくつかの実施形態では、例えば形状記憶材料を製造するために、ブロックBの重量含有量は、ブロックAに対して、30〜55重量%、35〜55重量%または35〜50重量%である。いくつかの実施形態では、例えば、熱可塑性エラストマーを製造するために、ブロックBの重量含有量は、ブロックAに関して、30重量%以下であり、例えば10〜30重量%または20〜30重量%である。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明のマルチブロックコポリマーは、Mn(数平均分子量)が少なくとも1kg/molであり、好ましくは少なくとも10kg/molである。いくつかの実施形態では、本発明のマルチブロックコポリマーのブロックA−B−AまたはB−A−Bは、Mnが少なくとも1kg/molであり、好ましくは少なくとも10kg/molである。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明のマルチブロックコポリマーは、1MPa〜7000MPaのヤング率を有し得る。いくつかの実施形態では、ヤング率は10〜200MPa、好ましくは40〜100MPaである。例えば、いくつかの実施形態において、ブロックBの重量含有量がブロックAに対して30〜55重量%、35〜55重量%または35〜50重量%である場合に適用され得る。他の実施形態では、ヤング率は1〜10MPaである。例えば、これはブロックBの重量含有量がブロックAに対して30重量%以下、例えば10〜30重量%または20〜30重量%であるいくつかの実施形態において適用されてもよい。さらに他の実施形態では、ヤング率は少なくとも50MPa、例えば200MPa〜7000MPa、好ましくは223MPa〜6600MPaである。いくつかの実施形態では、マルチブロックコポリマーは、100%〜1200%、好ましくは少なくとも200%、例えば350%〜1000%の破断時伸びを有することができる。これは、いくつかの実施形態において、ブロックBの重量含有量が、ブロックAに対して、55重量%以上、例えば55〜90重量%または55〜80重量%である場合に適用され得る。
【0083】
好ましい実施形態では、エポキシドは、以下の式を含む:
【0084】
【化4】
【0085】
各R、R、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、イミン、ニトリル、アセチリド、カルボキシレート、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、分枝鎖アルキルヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリール、またはポリマー種(例えば、ポリビスフェノールA)から選択され;または、R、R、RおよびRの2つ以上が一緒になって、1つ以上のヘテロ原子を含有してもよい飽和、部分飽和または不飽和の3〜12員の、置換されてもよい環系を形成することができる。
【0086】
エポキシドの好ましい例として、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、置換シクロヘキセンオキシド(リモネンオキシド、C1016O、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、C1122Oまたは4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2−エポキシド、C12O等)、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドおよび置換エチレンオキシド)、置換オキシラン(例えば、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシブタン、グリシジルエーテル)、スチレンオキシドまたは置換スチレンオキシドである。例えば、エポキシドは、以下の構造を有することができる:
【0087】
【化5】
【0088】
R’は、置換されてもよいC2〜12(好ましくはC2〜8、より好ましくはC2〜6)の脂肪族である。脂肪族は好ましくはアルキルである。アルキルは、好ましくは直鎖アルキルであり、好ましくは非置換である。
【0089】
好ましい実施形態では、無水物は次の式を有することができる:
【0090】
【化6】
【0091】
nは1、2、3、4、5、または6(好ましくは1または2)であり、各R1’、R2’、R3’およびR4’は、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、イミン、ニトリル、アセチリド、カルボキシレート、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、分枝アルキルヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリール、またはポリマー種(例えば、ポリビスフェノールA)から選択され;または、R1’、R2’、R3’およびR4’の2つ以上が一緒になって、1つ以上のヘテロ原子を含有してもよい飽和、部分飽和または不飽和の3〜12員の、置換されてもよい環系を形成するか、一緒になって二重結合を形成することができる。各Qは、独立して、C、O、NまたはS、好ましくはCであり、ここで、R3’およびR4’は、Qの原子価に従って、存在しても存在しなくてもよく、
【0092】
【化7】
【0093】
いくつかの実施形態では、無水物は芳香族部分を含む。好ましい無水物には以下のものが含まれる。
【0094】
【化8】
【0095】
好ましい実施形態では、ラクトンは、以下の式を有することができる:
【0096】
【化9】
【0097】
ここで
【0098】
【化10】
【0099】
は、−C(O)O部分の炭素以外に2〜20個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20、好ましくは4以上、例えば4、5または14)の炭素原子を有する炭化水素環を表し、ここで、環は、飽和または1つ以上のC=C二重結合を含み、各飽和環炭素原子はRおよびRで置換されており、各不飽和炭素原子はRに置換されており、RおよびRは、独立して水素、ハロゲン、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、イミン、ニトリル、アセチリド、カルボキシレートまたは任意に置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、分岐アルキルヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールから選択される。隣接する環炭素原子上のRおよびRの2つ以上は一緒になって、1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい飽和、部分飽和または不飽和の3〜15員の、置換されてもよい環系を形成することができる。好ましくは、RaおよびRbの各例は、独立して、水素またはアルキルから選択される。好ましくは、RaおよびRbの少なくとも1つは、水素以外の置換基から選択される。好ましくは、ラクトンは、炭化水素環上の置換されてもよいアルキル置換基(例えば、C1〜10アルキル、好ましくはC3〜8アルキル)、芳香族成分または少なくとも1つのC=C二重結合を含む。好ましいラクトンには以下のものが含まれる:
【0100】
【化11】
【0101】
好ましい実施形態では、ラクチドは、以下の式を有することができる:
【0102】
【化12】
【0103】
ここで、m’は1、2、3、4、5、6、7、8、9または10(好ましくは1または2、より好ましくは1)であり、RL3およびRL4は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミン、ニトリル、アセチリド、カルボキシレート、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、またはアルキルヘテロアリールから選択される。RL3およびRL4のうちの2つ以上が一緒になって、飽和、部分飽和または不飽和の3〜2員の、置換されてもよい環系を形成してもよく、m’が2以上の場合、RL3およびRL4の各炭素原子は同一でも異なってもよく、または隣接する炭素原子上のRL3およびRL4の1つ以上が存在しなくてもよく、それによって二重または三重結合を形成する。化合物が(−CRL3L4m’で表される2つの部分を有する場合、2つの部分が同一である。特に好ましい実施形態では、m’は1であり、RL4はHであり、RL3はH、ヒドロキシルまたはC1〜6のアルキル、好ましくはメチルである。(−CRL3L4m’で表される部分の立体化学は同じであってもよく(例えば、RR−ラクチドまたはSS−ラクチド)、または異なっていてもよい(例えば、メソ−ラクチド)。ラクチドはラセミ混合物であってもよく、または光学的に純粋な異性体であってもよい。好ましいラクチドには以下のものが含まれる:
【0104】
【化13】
【0105】
好ましくは、クラチドはラセミクラチドである:
【0106】
【化14】
【0107】
L1、RL2、RL3およびRL4基の好ましい任意の置換基は、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル、非置換脂肪族、非置換ヘテロ脂肪族非置換アリール、非置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミン、ニトリル、アセチリド、およびカルボキシレートを含む。
【0108】
好ましい実施形態において、ブロックAは、ε−デカラクトンの重合によって形成されたポリエステルを含むことができる。ブロックBは、例えば、シクロヘキセンオキシドおよび無水フタル酸の重合から形成された交互コポリエステルであるポリ(シクロヘキシレンフタル酸)エステル、シクロヘキセンオキシドもしくは4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2−エポキシドおよび二酸化炭素の重合から形成されたポリカーボネート(ポリ(シクロヘキシレンカーボネート)(PCHC)またはポリ(ビニルシクロヘキセンカーボネート)(PvCHC))、またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、ブロックBはポリ(シクロヘキシレンフタル酸)エステルを含む。
【0109】
上記の実施形態のいずれにおいても、ブロックAは、例えばラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルから本質的になることができ、ブロックBは、エポキシドと無水物の重合によって形成されたコポリエステルまたはエポキシドと二酸化炭素の重合によって形成されたポリカーボネートから本質的になることができ、ブロックAおよびBは直接結合していてもよい。
【0110】
本明細書に記載のマルチブロックコポリマーは、例えば、マルチブロックコポリマーの全体としての結晶化度(χ)が20%以下、15%以下、10%以下または5%以下であるマルチブロックポリマーであってもよく、前記結晶化度(χ)はWAXSまたはDSCによって決定される。
【0111】
別の態様では、本発明は、少なくともブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを提供し、ブロックAは、ラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含む。ブロックBは、エポキシドと無水物の重合によって形成されたコポリエステルまたはエポキシドと二酸化炭素の重合によって形成されたポリカーボネートを含み、ここで、ブロックBは芳香族部分を含み、および/またはラクトンは本明細書で定義されたとおりであり、下記の1つ以上を有し:(i)水素以外の置換基から選択される1つ以上のRおよびR;(ii)炭化水素環上の置換されていてもよいアルキル置換基(例えば、C1〜10のアルキル、好ましくはC3〜8のアルキル)、(iii)芳香族成分;(iv)少なくとも1つのC=C二重結合;および/またはラクトンがε−カプロラクトンでないことを条件とする。ブロックAおよびブロックBについて本明細書に記載された実施形態は、この態様に関して準用される。
【0112】
いくつかの実施形態において、ブロックAは、ε−デカラクトンの重合によって形成されたポリエステルを含むことができる。ブロックBは、例えば、シクロヘキセンオキシドおよび無水フタル酸の重合から形成された交互コポリエステルであるポリ(シクロヘキシレンフタル酸)エステル、シクロヘキセンオキシドもしくは4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2−エポキシドおよび二酸化炭素の重合から形成されたポリカーボネート(ポリ(シクロヘキシレンカーボネート)(PCHC)またはポリ(ビニルシクロヘキセンカーボネート)(PvCHC))、またはそれらの組み合わせを含むことができる。好ましくは、ブロックBはポリ(シクロヘキシレンフタル酸)エステルを含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、ブロックAは、本質的に、ラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルからなる。ブロックBは、本質的に、エポキシドと無水物の重合によって形成されたコポリエステルまたはエポキシドと二酸化炭素の重合によって形成されたポリカーボネートからなり、ブロックAおよびBは直接結合している。
【0114】
第2の態様では、本発明は、少なくともブロックA−B−Aを含むマルチブロックコポリマーを製造するためのワンポット法を提供し、ブロックAは、ラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、ブロックBは、エポキシドと無水物の重合によって形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素の重合によって形成されたポリカーボネートを含み、該方法は、下記を含む反応混合物を形成することを有し:
i.エポキシド、
ii.無水物または二酸化炭素、および
iii.ラクトンおよび/またはラクチド、および
iv.式(I)の触媒と開始剤とを含む触媒系、
重合が起こってブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成するように、
触媒は、式(I)のとおりであり:
【0115】
【化15】
【0116】
ここで、
[M]は配位子系によって配位された少なくとも1つの金属原子Mを有する金属錯体であり、MはZn、Cr、Co、Mn、Mg、Fe、Ti、Ca、Ge、Al、Mo、W、Ru、NiまたはVであり、
Zは存在しないか、または独立して−E−、−EX(E)−または−EX(E)E−から選択され、
各Eは、独立して、O、SまたはNRから選択され、ここで、Rは、H、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリールであり、
XはCまたはSであり、
Rは水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シリルもしくはポリマーであり;Zが存在しない場合には、Rは、ハロゲン化物、ホスフィネート、アジドおよび硝酸塩からさらに選択されてもよい、
開始剤は、−OH、−SH、−C(O)OHもしくは−NH−から独立して選択される少なくとも2つの部分を含む多官能性プロトン性化合物であり、または開始剤は水である。
【0117】
本発明の方法における使用のための触媒系の定義は、式(I)の触媒、特に、エポキシドを二酸化炭素または無水物と重合させてポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールをそれぞれ形成することに適した任意の式(I)の触媒を限定するものではない。
【0118】
そのような公知の触媒系は、一般に、金属および配位子を含む。金属は、Zn、Ni、Ru、Mo、Fe、Mn、Mo、Cr、V、Co、Ti、W、Al、Ca、GeまたはMgから選択することができる。好ましい実施形態では、金属はZn、MgまたはCoであり、より好ましくはMgまたはZnである。触媒は、1つ以上の金属原子、例えば2つの金属原子を含むことができる。配位子は、二座、三座または四座配位子等の単座または多座配位子であってもよい。
【0119】
特に、本発明の方法は、WO2010/028362に開示されているような以下の四座配位子を含む金属配位化合物を使用することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる:サラン配位子誘導体;ビス−2−ヒドロキシベンズアミド誘導体;トロスト配位子誘導体;ポルフィリン誘導体;テトラベンゾポルフィリン配位子誘導体;コルク配位子誘導体;フタロシアニン誘導体;ジベンゾテトラメチルテトラトラザ[14]アンヌレン誘導体が挙げられる。
【0120】
本発明は、WO2012/037282に開示されているような1つ以上の多座配位子に錯体化された2つ以上の金属原子を含む金属錯体を含む触媒に関する。
【0121】
本発明はさらに、嵩高いβ−ジイミネート(BDI)配位子、例えばCoatesら、J.A.C.S.,(2001),123,3229−3238に開示されている(BDI)−ZnOPrを含む触媒の使用を含み、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。このような触媒のさらなる例は、Luら、J.A.C.S.,(2012),134,17739−17745に開示されているサレンCo(III)X/オニウム塩触媒系を含み、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
本発明はさらに、WO2009/130470、WO2013/034750およびWO2014/184578に開示されているような多座配位子系に錯体化された2つの金属原子を含む触媒を包含する。
【0123】
本発明の方法において使用するための公知の触媒系の他の例には、R.C.Jeske,A.M. DiCiccio,G.W. Coates,J.Am. Chem. Soc. 2007,129,11330−11331に開示された(BDI)Zn−OAc、D.J. Darensbourg, R.R. Poland, C. Escobedo, Marcomolecules 2012, 45, 2242−2248に開示された(サレン)Cr−Cl、C. Robert, F. De Montigny, C.M. Thomas, Nature Comm. 2011, 2, 586に開示された(サレン)M−Cl(MはCr、Al、CoまたはMn)、M. DiCicco, G.W. Coates, J. Am. Soc. 2011, 133, 10724−10727に開示された(salen)−Co−OCPH、T. Aida, S. Inoue, J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 1358−1364 and T. Aida, K. Sanuki, S. Inoue, Marcomolecules 1985, 18, 1049に開示された(Tp−porph)Al−Cl、E. Hosseini Nejad, C.G.W. van Melis, T.J. Vermeer, C.E. Koning, R. Duchateau, Macromolecules, 2012, 45, 1770−1776に開示された(sal*)MCl(MはAl、Cr、またはCo)、E. Hosseini Nejad, A. Paoniasari, C.E. Koning, R. Duchateau, Polym. Chem, 2012, 3, 1308に開示された(Ph−salen)Cr−Cl、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
第1の態様の好ましい実施形態において、式(I)の触媒は、好ましくは、式(IA)の錯体であり:
【0125】
【化16】
【0126】
ここで、
およびRは独立して水素、ハロゲン化物、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルフィン酸基またはアセチリド基または 置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂環式もしくはヘテロ脂環式であり、
は置換されてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンまたはシクロアルキレンであり、ここで、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンおよびヘテロアルキニレンは、場合により、アリール、ヘテロアリール、脂環式またはヘテロ脂環式で中断されていてもよく、
はH、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールまたはアルキルアリールであり、
はH、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールまたはアルキルアリールであり;
がCであってEがO、SもしくはNHであるか、または、EがNであってEがOであり、
Zは存在しないか、または−E−、−EX(E)−または−EX(E)E−から選択され、
XはCまたはSであり、
Eは、−O−、−S−またはNRであり、ここで、Rは、Hまたは置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールであり、
Rは水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シリルもしくはポリマーであり;Zが存在しない場合には、Rは、ハロゲン化物、ホスフィネート、アジドおよび硝酸塩からさらに選択されてもよく、
各Gは独立して、存在しないか、またはルイス塩基である中性または陰イオン供与体配位子であり、G基が存在する場合、G基は、式(IA)に示される単一のMと会合していてもよく、または単一のG基は、両方の金属中心に結合し、2つの金属中心の間に架橋を形成してもよく、かつ、
MはZn(II)、Cr(II)、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Fe(II)、Ti(II)、Cr(III)−Z−R、Co(III)−Z−R、Mn(III)−Z−R、Fe(III)−Z−R、Ca(II)、Ge(II)、Al(III)−Z−R、Ti(III)−Z−R、V(III)−Z−R、Ge(IV)−(−Z−R)またはTi(IV)−(−ZR)である。
【0127】
およびRは独立して水素、ハロゲン化物、ニトロ基、ニトリル基、イミン、アミン、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルフィン酸基またはアセチリド基または置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、脂環式またはヘテロ脂環式である。RおよびRは同じであっても異なっていてもよい。RおよびRは、好ましくは水素、tBu、Me、CF3、フェニル、F、Cl、Br、I、NMe、NEt、NO、OMe、OSiEt、CNMe、CNまたはCCPhであり、より好ましくは水素、OMe、Me、NO、ハロゲンまたはtBu(例えば水素またはtBu)である。特定の実施形態では、Rは水素であり、Rは上記で定義した基のいずれか1つ、好ましくはNO、ハロゲン、tBu、OMeまたはMe、より好ましくはtBu、OMeまたはMeである。
【0128】
は、場合によりアリール、ヘテロアリール、脂環式またはヘテロ脂環式基によって中断されていてもよい二置換アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルまたはヘテロアルキニル基であるか、または式(IA)の触媒中の2つの窒素中心の間の架橋基として作用する二置換アリール基またはシクロアルキル基であってもよい。従って、Rがジメチルプロピレンのようなアルキレン基である場合、R基は構造−CH−C(CH−CH−を有する。従って、上記のアルキル、アリール、シクロアルキル等の基の定義は、それぞれRについて記載したアルキレン、アリーレン、シクロアルキレン等の基にも関連する。特定の実施形態において、Rは、置換されてもよいアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンまたはシクロアルキレンであり、ここで、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレンおよびヘテロアルキニレンは、場合により、アリール、ヘテロアリール、脂環式またはヘテロ脂環式で中断されていてもよい。特に好ましい実施形態では、Rは脂肪族(好ましくはC1〜6のアルキル)またはアリール基で置換されていてもよいプロピレン基である。好ましくは、Rはエチレン、2,2−ジメチルプロピレン、プロピレン、ブチレン、フェニレン、シクロヘキシレンまたはビフェニレンであり、より好ましくは2,2−ジメチルプロピレンである。Rがシクロヘキシレンである場合、ラセミ、RR−またはSS−形態であり得る。
【0129】
はH、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールもしくはアルキルアリールである。好ましくは、Rは水素、または置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールもしくはヘテロアリールから独立して選択される。Rの典型的な選択肢には、H、Me、Et、Bn、iPr、tBuまたはPhが含まれる。より好ましくは、Rは水素である。
【0130】
は、H、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリールもしくはアルキルアリールである。好ましくは、Rは、水素、または置換されてもよい脂肪族もしくはアリールから独立して選択される。より好ましくは、Rは、水素、アルキルまたはアリールから選択される。例示的なR基には、水素、メチル、トリフルオロメチル、エチルおよびフェニル(好ましくは、水素、トリフルオロメチルおよびメチル)が含まれる。特に好ましい実施形態では、Rの全ての例は水素である。
【0131】
特定の実施形態において、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、カーボネート、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノよりちかんされ、または非置換の脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールもしくはヘテロアリールである。好ましくは、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、カーボネート、アルコキシ、アリールオキシ、イミン、ニトリル、アセチリドより置換され、非置換脂肪族、非置換脂環式および非置換アリールである。
【0132】
ある好ましい実施形態では、EはCであり、EはO、SまたはNHであり、好ましくは、EはOである。他の実施形態では、EはNであり、EはOである。
【0133】
Gは存在しても存在しなくてもよい。Gが存在しない場合、それは孤立電子対を供与することができる基(すなわち、ルイス塩基)である。特定の実施形態において、Gは窒素含有ルイス塩基である。各Gは独立して中性または負に帯電していてもよい。Gが負に荷電している場合、錯体の変化をバランスさせるために1つ以上の正の対イオンが必要となる。適切な正の対イオンには、第1族金属イオン(Na、K等)、第2族金属イオン(Mg2+、Ca2+等)、イミダゾリウムイオン、正に帯電した置換されてもよいヘテロアリール、ヘテロ脂環式もしくはヘテロ脂肪族基、アンモニウムイオン(すなわち、N(R12)、イミニウムイオン(すなわち、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムイオンのような(R12)2C=N(R12)またはホスホニウムイオン(P(R12)を含み、各R12は、水素または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールから独立して選択される。例示的な対イオンには、[H−B]が含まれ、ここで、Bは、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンおよび7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エンから選択される。
【0134】
Gは、好ましくは、置換されてもよいヘテロ脂肪族基、置換されてもよいヘテロ脂環式基、置換されてもよいヘテロアリール基、ハロゲン化物、水酸化物、水素化物、カルボン酸塩、エーテル、チオエーテル、カルベン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、アミン、アセトアミド、アセトニトリル、エステル、スルホキシド、スルホネートおよび水より独立して選択される。より好ましくは、Gは、水、アルコール、置換または非置換のヘテロアリール(イミダゾール、メチルイミダゾール、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピラゾール等)、エーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、環状エーテル等)、チオエーテル、カルベン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、置換または非置換のヘテロ脂環式(モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン等)、アミン、アルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)、アセトニトリル、エステル(酢酸エチル等)、アセトアミド(ジメチルアセトアミド等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、カルボン酸塩、水酸化物、水素化物、ハロゲン化物、硝酸塩、スルホン酸塩等より独立して選択される。いくつかの実施形態では、Gの一方または両方の例は、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されているヘテロ脂肪族、必要に応じて置換されたヘテロ脂環式、ハロゲン化物、水酸化物、水素化物、エーテル、チオエーテル、カルベン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、アミン、アルキルアミン、アセトニトリル、エステル、アセトアミド、スルホキシド、カルボン酸塩、硝酸塩またはスルホン酸塩より独立して選択される。特定の実施形態では、Gはハロゲン化物;水酸化物;水素化物;水;アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロまたはニトリルで置換されてもよいヘテロアリール、ヘテロ脂環式またはカルボキシレート基である。好ましい実施形態では、Gは、ハロゲン化物;水;アルキル(例えばメチル、エチルなど)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ(好ましくはメトキシ)、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロまたはニトリルで置換されてもよいヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Gの一方または両方の場合が負に帯電する(例えば、ハライド)。さらなる実施形態において、Gの一方または両方の例は、置換されてもよいヘテロアリールである。例示的なG基には、塩化物、臭化物、ピリジン、メチルイミダゾール(例えば、N−メチルイミダゾール)およびジメチルアミノピリジン(例えば、4−メチルアミノピリジン)が含まれる。
【0135】
好ましくは、Gは存在しない。
【0136】
G基が存在する場合、G基は、式(IA)に示されるように、単一のM金属中心と会合してもよく、またはG基は、両方の金属中心に会合し、2つの金属中心間に架橋を形成してもよい。
【0137】
好ましくは、MはZn(II)、Cr(III)、Cr(II)、Co(III)、Co(II)、Mn(III)、Mn(II)、Mg(II)、Fe(II)、Fe(III)、Ca(II)、Ge(II)、Ti(II)、Al(III)、Ti(III)、V(III)、Ge(IV)またはTi(IV)であり、より好ましくはZn(II)、Cr(III)、Co(II)、Mn(II)、Mg(II)、Fe(II)またはFe(III)であり、さらに好ましくはZn(II)またはMg(II)である。MがCr(III)、Co(III)、Mn(III)またはFe(III)である場合、式(IA)の触媒は、金属中心に配位した追加の−ZR基を含み、−ZRは、本明細書で定義される通りである。MがGe(IV)またはTi(IV)である場合、式(IA)の触媒は金属中心に配位した2つの追加の−Z−R基を含有し、ここで−Z−Rは上記定義の通りである。特定の実施形態において、MがGe(IV)またはTi(IV)である場合、両方のGは存在しなくてもよい。
【0138】
当業者であれば、各Mは同じであってもよく(例えば、両方のMがMg、Zn、FeまたはCoであってもよい)、または各Mは異なっていてもよく、任意の組み合わせであってもよい(例えばFeおよびZn、CoおよびZn、MgおよびFe、CoおよびFe、MgおよびCo、CrおよびMg、CrおよびZn、MnおよびMg、MnおよびZn、MnおよびFe、CrおよびFe、CrおよびCo、AlおよびMg、AlおよびZn等)。Mが同じ金属である場合、各Mは同じ酸化状態(例えば、Mは両方ともCo(II)、Fe(II)またはFe(III)であり得る)、または異なる酸化状態であってもよい(例えば、1つのMはCo(II)であり、他のMはCo(III)であり、1つのMはFe(II)であり、他のMはFe(III)であり、または1つのMはCr(II)であり、他のMはCr(III)でもよい)。
【0139】
−Z−は、存在しないか、または−E−、−E−X(E)−もしくは−E−X(E)−E−から選択される。
【0140】
XはCまたはS、好ましくはCである。
【0141】
EはO、SまたはNRである。
【0142】
Zが−EX(E)−である場合、−EX(E)−は−O−(CO)−、−NR−C(O)−、−OC(=NR)−、−OC(S)−、−OS(O)−、−NR−S(O)−または−OS(=NR)−であることが好ましい。
【0143】
Zが−E−X(E)−E−である場合、−E−X(E)−E−は−O−(CO)−O−、−NR−C(O)−O−、−NR−C(O)−NR、−OC(=NR)−O−、−OC(=NR)−NR−、−OC(S)−O−、−OC(O)−NR、−OS(O)−O−、−NR−S(O)−O−、−OS(O)−NRであることが好ましい。
【0144】
好ましくは、EはそれぞれOである。
【0145】
特定の実施形態では、各EはOであり、XはCである。
【0146】
各NRは、独立して、H、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリールである。好ましくは、NRは、水素またはC1〜6のアルキルである。
【0147】
Rは、水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリールもしくはシリルである。好ましくは、Rは、置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、アルキルヘテロアリールまたはシリルである。より好ましくは、RはC1〜12のアルキル、シクロアルキルまたはアリール(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、フェニル、シクロヘキシル等)である。
【0148】
−Z−が存在しない場合、上記の基に加えて、Rはハロゲン化物、ホスフィン酸塩、アジドまたは硝酸塩であってもよい。
【0149】
好ましくは、Rは、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロで置換されていてもよく、非置換アリール、非置換アルキル、非置換アルケニル、非置換アルコキシおよび非置換アリールオキシである。例えば、Rはハロゲンで置換されたアルキル基であってもよく、例えばRはCFであってもよい。
【0150】
Rはポリマー鎖であり得る。例えば、Rはポリカーボネートまたはポリエステルであってもよい。
【0151】
式(IA)の触媒は、金属Mの酸化状態に依存して、2つ以上の−Z−Rを有する。各−Z−Rは同じであっても異なっていてもよい。
【0152】
当業者であれば、−Z−基に結合している−R基中の部分は、ヘテロ原子(例えば、O、SまたはN)または基C=E’であることがなく、ここで、E’はヘテロ原子(例えば、O、SまたはN)である。
【0153】
特に好ましい実施形態において、RおよびRは、独立して、水素、または置換されてもよいアルキル、アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールおよびアルキルヘテロアリールであり、Rは置換されてもよいアルキレンまたはアリーレンであり、Rは水素、または置換されてもよいアルキルまたはヘテロアリールであり、Rは水素または置換されてもよいアルキルであり、EはCであり、EはOであり、MはMg、Zn、FeまたはCoであり、Zは存在しないか、または−O−R、O−C(O)−Rまたは−OC(O)−O−Rから選択され、Rは置換されてもよいアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールであり、またはZが存在しない場合、Rはホスフィン酸またはハロゲン化物であり、Gは存在しないか、または置換されてもよいヘテロアリールもしくはハロゲン化物から選択され、Gがハロゲンである場合、対イオンが存在しなければならない。好ましくは、対イオンは[H−B]であり、ここで、Bは、好ましくはNEt、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)および7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エン(MTBD)から選択される。
【0154】
式(IA)の例示的な触媒には以下を含む:
【0155】
【化17A】
【0156】
【化17B】
【0157】
、[LMgCl(ジメチルアミノピリジン)]、[LMgCl(ジメチルアミノピリジン)]、[LMgBr(ジメチルアミノピリジン)]、[LZn(FCCOO)]、[LZn(OOCC(CH]、[LZn(OC]、[LFeCl]、[LCo(OAc)]、[LZn(炭酸アダマンチル)]、[LZn(ペンタフルオロベンゾエート)]、[LZn(ジフェニルホスフィン酸)]、[LZn(ビズ(4−メトキシ)フェニルホスフィン酸)]、[LZn(ヘキサノエート)]、[LZn(オクタノエート)]、[LZn(ドデカノエート)]、[LMg(FCCOO)]、[LMgBr]、[LZn(C]、[LZn(C]および[LZn(OiPr)]、ここで、LはLZnOAcについて上記に示した通りである。
【0158】
いくつかの実施形態では、Zが存在しないか、または−EX(E)−もしくは−EX(E)E−から選択される基である場合、触媒系は、−ZR基を変換することができる化合物[Y]を含んでもよく、ここで、Zが存在しないか、または−EX(E)−もしくは−EX(E)E−から選択される基を−ZR基(式中、Zは−E−である)に結合する。
【0159】
化合物[Y]は、−Z−R基を変換できる能力を有してもよく、
ここで、Zが存在しないか、または−EX(E)−もしくは−EX(E)E−から選択される基を−ZR基(式中、Zは−E−である)に結合する。すなわち、化合物[Y]は、金属原子に結合した配位子を−R、−E−C(E)−RまたはE−C(E)−E−Rから−E−Rへ切り替えるために、金属錯体〔M〕中の金属原子と−Z−R基との結合に挿入することができる。
【0160】
化合物[Y]は、3,4または5員飽和環およびO、SまたはNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する化合物であってよい。好ましい実施形態において、化合物[Y]は、エポキシド、アジリジン、エピスルフィド、オキセタン、チエタン、アゼチジン、飽和フラン、飽和チオフェンまたはピロリジンである。
【0161】
特定の実施形態において、化合物[Y]は、以下の式を有する:
【0162】
【化18】
【0163】
ここで、
AはO、SまたはNRであり(好ましくは、AはOである)、
jは1,2または3であり、
は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、または脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールであり、
A1、RA2、RA3およびRA4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミン、ニトリル、アセチリド、カルボキシレートまたは置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールであり、または、RA1、RA2、RA3およびRA4の2つ以上が一緒になって、飽和、部分飽和または不飽和の3〜12員を形成し、環系を形成してもよく、1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。例えば、各RA1、RA2、RA3およびRA4は、Hであってもよく;RA1、RA2およびRA3はHであってもよく、そして1以上のRA4はアリールまたは脂肪族、好ましくはフェニルまたはアルキルであってもよく、RA1およびRA4はHであってもよく、RA2およびRA3は一緒になって6〜10員炭素環(飽和、不飽和または部分飽和)を形成してもよい。例えば、化合物[Y]は以下であってもよい:
【0164】
【化19】
【0165】
A1、RA2、RA3およびRA4基の好ましい任意の置換基は、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル、非置換脂肪族、非置換ヘテロ脂肪族非置換アリール、非置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミン、ニトリル、アセチリドおよびカルボキシレートを含む。
【0166】
好ましい実施形態において、化合物[Y]はエポキシドである。化合物[Y]がエポキシドである場合、重合されるエポキシドモノマーと同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、化合物[Y]は、第1の態様の方法によって重合されるエポキシドと同じエポキシドである。
【0167】
式(IA)の触媒のいくつかの実施形態において、Zは存在しないか、または−E−であり、Eは−O−、−S−またはNRZであり、RがH、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールであり、Rは、置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリールである。好ましくは、Zは存在しないかまたは−O−であり、より好ましくは、Zは存在しない。
【0168】
したがって、式(IA)の好ましい触媒は、[LMgCl(メチルイミダゾール)]、[LMgCl(ジメチルアミノピリジン)]、[LMgBr(ジメチルアミノピリジン)] [LZn(C]および[LZn(C]を含む。
【0169】
本発明の第2の態様の方法において、開始剤(CTA)は、式(I)の触媒に対して少なくとも1:1のモル比で存在してもよい。例えば、触媒:開始剤(CTA)のモル担持量は、好ましくは1:2〜1:1000である。
【0170】
「ワンポット」とは、ブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーが、触媒系の存在下で、モノマーの逐次添加を必要とすることなくその場で形成されることを意味する。換言すれば、全てのモノマーは、反応の開始時に触媒系と共に反応混合物に添加される。次いで、反応は、利用可能なモノマーのプールからマルチブロックコポリマーを選択的に形成する。ワンポット法でのトリブロックコポリマーの形成を可能にするには、多官能性開始剤の含有が重要である。A−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーの形成に続いて、さらなるモノマーおよび/または触媒を反応混合物に添加して、例えば追加のブロックを形成することができる。例えば、この方法は、A−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーの形成後に、ラクトン、ラクチド、エポキシド、無水物または二酸化炭素から選択される追加のモノマーを反応混合物に添加する工程を含み得る。
【0171】
本発明の第2の態様の方法は、約50℃〜約200℃、例えば約60℃〜約140℃、例えば約80℃〜約120℃の温度で行うことができる。
【0172】
本発明の第2の態様の方法は、不活性雰囲気下、例えばN雰囲気下で行うことができる。
【0173】
本発明の第2の態様の方法は、本発明の第1の態様に関して本明細書で定義されるマルチブロックコポリマーを調製するために使用され得る。したがって、本発明の第2の態様の方法は、少なくともブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成することができ、前記マルチブロックコポリマーが、特徴(i)〜(iii)の1つ以上を特徴とする:(i)ブロックAの結晶化度(χ)がDSCによって測定して20%以下である;および/または(ii)ブロックAの結晶化度(χ)がWAXSによって測定して20%以下である;および/または(iii)ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する。本発明の第1の態様は、本発明の第2の態様について準用する。
【0174】
本発明の第2の態様のワンポット法の代替として、本発明のマルチブロックコポリマーは、例えばWO2014/184578に記載されているような逐次添加法によって調製することができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
第3の態様において、本発明はブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーの製造方法を提供し、ここでブロックAはラクトンおよび/またはラクチドの重合によって形成されたポリエステルを含み、ブロックBは、エポキシドと無水物との重合によって形成されたコポリエステル、またはエポキシドと二酸化炭素との重合によって形成されたポリカーボネートを含み、マルチブロックコポリマーは、特徴(i)〜(iii)の1つ以上を特徴とし:(i)ブロックAの結晶化度(χ)がDSCにより測定して20%以下である;および/または(ii)ブロックAの結晶化度(χ)がWAXSによって測定して20%以下である;および/または(iii)ブロックAおよびBのそれぞれについて測定可能なTgを有し、ブロックAおよびBのTgの間に少なくとも10℃の差異を有する;ここで、当該方法は、以下の(a)および(b)を含む、反応混合物を形成することを含み:
(a)反応混合物中の、下記から選択されるモノマーまたはモノマーの組み合わせを、式(I)の触媒および開始剤を含む触媒系と接触させることにより、第1のモノマーまたはモノマーの組み合わせを重合することによって、第1のブロックAまたはBを形成すること、
(i)エポキシドおよび無水物、
(ii)エポキシドおよび二酸化炭素、および
(iii)ラクトンおよび/またはラクチド、
(b)反応混合物に第2のモノマーまたはモノマーの組み合わせを添加することによってブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成すること、この際、重合が起こってブロックA−B−AまたはB−A−Bを含むマルチブロックコポリマーを形成するように、第1のモノマーが(i)または(ii)である場合、第2のモノマーは(iii)であり、第1のモノマーが(iii)である場合、第2のモノマーは(i)または(ii)であ;触媒は、式(I)のとおりである:
【0176】
【化20】
【0177】
ここで、
[M]は配位子系によって配位された少なくとも1つの金属原子Mを有する金属錯体であり、MはZn、Cr、Co、Mn、Mg、Fe、Ti、Ca、Ge、Al、Mo、W、Ru、NiまたはVであり、
Zは存在しないか、または独立して−E−、−EX(E)−または−EX(E)E−から選択され、
各Eは、独立して、O、SまたはNRから選択され、ここで、Rは、Hまたは置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールもしくはアルキルヘテロアリールであり、
XはCまたはSであり、
Rは水素、または置換されてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シリルもしくはポリマーであり;Zが存在しない場合には、Rはさらに、ハロゲン化物、ホスフィネート、アジドおよび硝酸塩から選択されてもよい、
開始剤は、−OH、−SH、−C(O)OHもしくは−NH−から独立して選択される少なくとも2つの部分を含む多官能性プロトン性化合物であるか、または、開始剤は水である。
【0178】
本発明の第1の態様のブロックAおよびBおよび本発明の第2の態様の方法に関連して本明細書に記載されるすべての実施形態は、本発明の第3の態様について準用する。
【0179】
本発明の第4の態様では、本発明の第3の態様による方法から得られうるポリマーが提供される。
【0180】
本発明の第5の態様では、包装材料、生物医学的材料、シーラント、接着剤、エンジニアリング材料、合成繊維、自動車部品や発泡材等として使用するための本発明の第1、第2または第4の態様のポリマーが提供される。
【0181】
本発明のマルチブロックコポリマーを形成するために使用されるモノマー組成を単に変化させることによって、タフプラスチック、形状記憶材料から熱可塑性エラストマーまで、広い範囲の機械的特性を達成することができる。例えば、タフプラスチック(例えば、ブロックAに対してブロックBの重量含有量が55重量%以上であり、例えばPCHPEが59〜100重量%であるPDL−b−PCHPE−b−PDL)の場合、ヤング率は223MPaから6600MPaに調整することができまる。したがって、包装材料(LDPE等)、合成繊維(ナイロン等)、エンジニアリングプラスチック(アクリロニトリルブタジエンスチレン、ABS等)に適用することが可能である。形状記憶材料(例えば、ブロックAに対してブロックBの重量含有量が、35〜50重量%であり、例えばPCHPEが約42重量%であるPDL−b−PCHPE−b−PDL)の場合は、生物医学的用途整形外科手術、静脈カニューレ、自己調整縫合糸、血管ステントなどのシーラント、接着剤等のような、様々な用途に使用することができる。熱可塑性エラストマー(例えば、ブロックAに対してブロックBの重量含有量が30重量%以下、例えばPCHPEが約26重量%以下であるPDL−b−PCHPE−b−PDL)の場合は、SBS TPEは、自動車部品、靴底、接着剤、電気ケーブルジャケット等に使用できる。
【実施例】
【0182】
略語
ATR−IR 減衰全反射率−赤外線
CHD 1,2−シクロヘキサンジオール
CHO シクロヘキセンオキシド
vCHO 4−ビニル−1−シクロヘキセン 1,2−エポキシド
DCM ジクロロメタン
DSC 示差走査熱量測定
ε−DL ε−デカラクトン
rac−LA ラセミラクチド
PA 無水フタル酸
PCHPE ポリ(シクロヘキシレンフタル酸)エステル
PDL ポリデカラクトン
PCHC ポリ(シクロヘキシレンカーボネート)
PvCHC ポリ(ビニルシクロヘキセンカーボネート)
ROCOP 開環共重合
ROP 開環重合
SAXS 小角X線散乱
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
SEC−MALLS SEC−マルチアングルレーザー光散乱
THF テトラヒドロフラン
TOF 回転頻度
WAXS 広角X線散乱
SEC:40℃で1.0 mL・min−1の流速でGPCグレードのTHFを溶離液とするAgilent PL GPC−50装置を使用して、分子量および分散度を特定した。2つのポリマーラボ混合Dカラムを連続して使用した。ほぼ単分散のポリスチレン標準を用いて機器を較正した。ポリエステルをGPCグレードのTHFに溶解し、分析前に濾過した。2つの混合床PSS SDVリニアSカラムおよび溶離剤としてのTHFを用い、MALLS検出器を用いて30℃で1.0mL・分−1の流速で分子量および分散を特徴付けるために、別のGPC、Shimadzu LC−20ADを用いた。MALLS検出器をポリスチレン標準で較正し、分析するポリマーの少なくとも3つの異なる濃度を有する外部RID検出器(Knauer)を用いてdn/dc値を測定した。別段の記載がない限り、粗製ポリマーをSEC特性評価に使用した。
【0183】
NMR:H、13C{H}、31P{H}および2D NMR (HSQC, DOSY)スペクトルは、Bruker AV 400MHz分光計を用いて室温(特に明記しない限り)で記録した。末端基の計算に用いた全ての31P{H} NMRデータは、15秒の延長緩和遅延(d)(最長のtは3秒と判定された)で記録した。
【0184】
MALDI−ToF MS:ポリエステルのMALDI−ToFスペクトルはWaters/Micromass MALDIマイクロMX分光計で行った。ポリマー試料をTHF中に1mg・mL−1の濃度で溶解した。トランス−2−[3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチル−2−プロペニリデン]マロノニトリル(DCTB)を、THF中で10mg・mL−1の濃度でマトリックスとして使用した。カチオン化剤としては、トリフルオロ酢酸カリウム(KTFA)を1mg・mL−1の濃度で用いた。ポリマー、マトリックスおよび塩の溶液をそれぞれ1/1/1(v/v/v)の比率で混合した。混合溶液をステンレス鋼MALDIプレート上に繰り返し(5回)スポットし、ヒュームフード内で一晩乾燥させた。スペクトルは、リフレクトロンモードを用いて記録した。
【0185】
In situ ATR−IR分光法:MCT検出器およびハロゲン化銀DiCompプローブを備えたMettler−Toledo ReactIR 4000分光計を用いて重合をモニターした。
【0186】
熱分析:DSC Q2000(TA Instruments、UK)を用いて熱特性を測定した。シールされた空のるつぼを基準として使用し、DSCをインジウムで較正した。PDL−PCHPE−PDLのようなマルチブロック共重合体の試料を、ヘリウム流下で室温から125℃まで10℃/分の速度で加熱し、熱履歴を消去するために125℃で2分間保持した。次に、サンプルを10℃/分の速度で−100℃に冷却し、−100℃/分でさらに2分間保持し、続いて−100℃〜30℃の加熱処理を10℃/分の速度で実施した。各試料を3回の加熱−冷却サイクルで運転した。新しいブロックコポリマーについては、TGAによる評価後に実験の温度範囲を決定しなければならない。温度の上限は、熱分解のオンセットよりも低くする必要がある。
【0187】
報告されたガラス転移温度(Tg)は、第3サイクルから得られたものである。Tg値は、熱容量の変化に対応するDSCトレースから観察される「ステップ」から得られる。正確なTg値は、ソフトウェア(普遍的な解析、バージョン4.3A)中のTg遷移関数で決定された「ステップ」の傾斜の真中の温度と見なされた。
【0188】
ブロックAの結晶化度(χ)は、同じDSC手順を用いて計算することができる。ポリマー試料が結晶材料を含む場合、融解ピークが観察される。融解ピークが観察されない場合、結晶化度は0%であると仮定する。融点が観察される場合、結晶化度は、以下の式より計算され得る:
【0189】
【数4】
【0190】
ここで、ΔHはソフトウェアで提供される積分関数(普遍的な解析、バージョン4.3A)を用いた融解ピークの積分であり、単位はJ/gである。ΔHは、1gの100%結晶化ポリラクトンまたはポリラクチドがJ/gの単位で融解するときの熱量である。ΔHの値は、ポリラクトンまたはポリラクチド標準(既知の結晶性を有する)のΔHを結晶化度を外挿することによって計算することができる。異なるポリラクトンまたはポリラクチド標準のΔH値は、これらの標準の結晶化度(χ)に対してプロットされている。プロットは100%の結晶度に外挿され、対応するΔH値はΔHとして定義される。場合によっては、ΔHの値は文献(Crescenzi.V, G.Manzini, Calzolari.G and C.Borri, Eur. Polym. J., 1972,8,4449)を参照することができる。
【0191】
結晶化度(χ)は、W. Huら、Macromolecules 2002,35,5013−5024またはP.J. Raeら、Polymer 2004,45,7615−7625に記載されているように、広角X線散乱(WAXS)手順を用いて決定することができる。その内容は参照により本明細書に組み込まれる。CuターゲットおよびNiフィルターを備えた回転アノードX線発生器(例えばRigaku ROTAFLEX RTP300)により、CuKα(λ=0.154nm)のX線が生成される。ゴニオメーターをNaClで0.5°以内に較正した。ポリマー試料は、1deg・min−1の速度で4〜50°(または対応するベクトルq)を連続的に走査する。X線データは、結晶ピークについてはローレンツ型線形を含み、非晶質散乱についてはローレンツ型と二次型とを含む形態を用いて最初にモデル化された。次に、散乱範囲にわたってCPLOT非線形最小二乗フィッティングルーチンを使用してデータをフィットさせた。結晶化度(χ)は、この式によって計算される:
【0192】
【数5】
【0193】
ここで、Aはアモルファス寄与の積分であり、Aは結晶ピークの積分である(W. Huら、Macromolecules 2002,35,5013−5024またはP. J. Raeら、Polymer 2004,45,7615−7625に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0194】
ポリマーの分子量(Mn、数平均分子量)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、例えば、ポリマーラボ社製のGPC−60を用い、THFを溶離液として流速1ml/分で、ポリマーラボ社製の混合Bカラムで測定することができる。狭い分子量のポリスチレン標準を使用して装置を較正することができる。
【0195】
すべての溶媒および試薬は、商業的供給元(AldrichおよびFischer)から得られ、別段の記載がない限り、受け取ったまま使用した。シクロヘキセンオキシド(CHO)を使用前に水素化カルシウム上で分別蒸留し、不活性雰囲気下で貯蔵した。減圧蒸留する前に4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2−エポキシド(vCHO)を水素化カルシウム上で乾燥させ、−35℃でN保護下で貯蔵した。ε−デカラクトン(ε−DL)を水素化カルシウムで乾燥し、N下で保存した。THFおよびトルエンをナトリウムから蒸留し、N下で貯蔵した。無水フタル酸(PA)をベンゼンに溶解し、不溶性不純物(フタル酸、H NMRにより確認)を濾過し、続いてCHClから再結晶し、昇華させることにより精製した。トランス−1,2−シクロヘキサンジオール(CHD)を酢酸エチルから再結晶し、N雰囲気下に保った。2−クロロ−4,4,5,5−テトラメチルジオキサホスホランおよび1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エン(TBD)を受け取ったまま使用した。
【0196】
ジ亜鉛錯体1の調製
【0197】
【化21】
【0198】
配位子HLは、WO2009/130470に記載されているように調製することができ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。HL(318.0mg、0.57mmol)の予冷したTHF溶液(−40℃、5mL)に、予冷したジフェニル亜鉛(253mg、1.15mmol)のTHF溶液(−40℃、2mL)を添加した。数分後、溶液は曇った。混合物を25℃で20時間反応させ、次いで生成物を濾過した。冷THF(10mL)で洗浄し、白色粉末として単離した(381mg、0.46mmol、収率81%)。
H NMR(TCE−d、403K)d:7.40(br、アリール−H、6H)、7.00(br、アリール−H、4H)、5.22−3.90(br、4H)、3.60−2.30(br、16H)、1.36(br、Bu、18H)、1.31(br、CH、6H)、1.06(br、CH、6H)。13C NMR(TCE−d、403K)d:128.1、126.8、63.5、56.8、31.4、27.9および21.5。(低温で異なる複合立体配座により信号が広がるのを避けるために、NMRは403Kで実施した)元素分析:計算値(%):C、66.10;N、7.72;H、6.70;実測値(%):C、66.03、H、7.72、N、6.66。
【0199】
錯体1はエポキシド/無水物ROCOPの良好な性能を示し、以下の表1に、錯体1およびCHDを用いたPA/CHO ROCOPの結果を示す。
【0200】
【表1】
【0201】
a)[1]:[PA]:[CHO]=1:100:800、100℃、3−4時間,PA変換率>99%。Diolは1,2−シクロヘキサンジオール(CHD)を意味する。b){([PA]+[CHO])×(PA変換率)}/[CHD]に基づいて決定される(kg・mol−1単位を使用)。c)狭い分子量ポリスチレン(PS)標準を用いて校正されたSECによって決定される(kg・mol−1単位を使用)。d)THF中のSEC−MALLS(dn/dc=0.133±0.001mL・g−1)に基づいて決定される(kg・mol−1単位を使用)。
【0202】
TOF値が25h−1であり、ポリエステルに対する優れた選択性(>99%)が観察された。高速度および可逆的連鎖移動反応を示す特徴であり、ジオールの添加量および狭い分散度(≦1.30)から予想される分子量(MW)を有するポリエステルを用いて、高度の重合制御があった。重合制御は、α、ω−ジヒドロキシ基でエンドキャップされた完全に交互のポリエステル鎖の単一系列を示すMALDI−ToF分析によってさらに実証される。
【0203】
CHDを有する錯体1もまた、溶媒としてCHOを用いて、ε−DLのROPのための触媒として試験した。結果を以下の表2に示す。
【0204】
【表2】
【0205】
a)[1]:[ε−DL]:[CHO]=1:200:800、100℃、1.25時間、ε−DL変換率>95%。Diolは1,2−シクロヘキサンジオール(CHD)を意味する。b){[ε−DL]×(ε−DL変換率)}/[CHD]/に基づいて決定される(kg・mol−1単位を使用)。 c)狭い分子量ポリスチレン(PS)標準を用いて校正されたSECによって決定される(kg・mol−1単位を使用)。 d)THF中でSEC−MALLSによって決定され(1欄ではdn/dc=0.054±0.001mL・g−1、2欄では0.067±0.001mL・g−1および3〜5欄では0.072±0.002mL・g−1)、kg・mol−1単位を使用。
【0206】
良好な活性が観察され、TOF値は160h−1であり、エポキシドの単独重合またはPDL鎖への挿入についての証拠はなかった。
【0207】
図1は、錯体1によって触媒されるROCOPおよびROP反応を示す。
【0208】
実施例1:錯体1を用いたPA/CHO/ε−DLの配列制御化学選択的三元共重合
ラクトン(ε−DL)、エポキシド(CHO)および無水物(PA)モノマーの混合物を、錯体1およびCHDを含む触媒系と反応させた。三元共重合は全て成功し、予想外のモノマー選択性が観察され、ABA型ブロックコポリエステルの制御された形成がもたらされた。化学選択性制御された重合を図2に示す。PDL−b−PCHPE−b−PDLトリブロックコポリエステルの典型的な調製を以下に列挙する。
【0209】
33重量%のPCHPEを含むPDL−b−PCHPE−b−PDLトリブロックコポリエステルを得るために、錯体1(10.0mg、1.25×10−2mmol)、無水フタル酸(93.0mg、0.63mmol)、ε−DL(325.0μL、1.88mmol)およびCHDのストック溶液(116.0μL、CHO中24.0mg・mL−1)を、攪拌棒を入れたスクリューキャップバイアル中、N保護下で、CHO(884.0μL、8.91mmol)に溶解した。次いで、混合物を100℃に加熱し、不活性雰囲気下で4.0時間反応させた。相対モル比[1]/[CHD]/[CHO]/[PA]/[ε−DL]は1/2/800/50/100であった。
【0210】
42重量%のPCHPEを含むPDL−b−PCHPE−b−PDLトリブロックコポリエステルを得るために、錯体1(10.0mg、1.25×10−2mmol)、無水フタル酸(186.0mg、1.26mmol)、ε−DL(650.0μL、3.76mmol)およびCHDのストック溶液(116.0μL、CHO中24.0mg・mL−1)を、攪拌棒を入れたスクリューキャップバイアル中、N保護下で、CHO(884.0μL、8.91mmol)に溶解した。次いで、混合物を100℃に加熱し、不活性雰囲気下で4.0時間反応させた。相対モル比[1]/[CHD]/[CHO]/[PA]/[ε−DL]は1/2/800/100/200であった。
【0211】
59重量%のPCHPEを含むPDL−b−PCHPE−b−PDLトリブロックコポリエステルを得るために、錯体1(10.0mg、1.25×10−2mmol)、無水フタル酸(186.0mg、1.26mmol)、ε−DL(325.0μL、1.88mmol)およびCHDのストック溶液(116.0μL、CHO中24.0mg・mL−1)を、攪拌棒を入れたスクリューキャップバイアル中、N保護下で、CHO(884.0μL、8.91mmol)に溶解した。次いで、混合物を100℃に加熱し、不活性雰囲気下で4.0時間反応させた。相対モル比[1]/[CHD]/[CHO]/[PA]/[ε−DL]は1/2/800/100/100であった。
【0212】
81重量%のPCHPEを含むPDL−b−PCHPE−b−PDLトリブロックコポリエステルを得るために、錯体1(10.0mg、1.25×10−2mmol)、無水フタル酸(279.0mg、1.89mmol)、ε−DL(162.5μL、0.94mmol)およびCHDのストック溶液(116.0μL、CHO中24.0mg・mL−1)を、攪拌棒を入れたスクリューキャップバイアル中、N保護下で、CHO(884.0μL、8.91mmol)に溶解した。次いで、混合物を100℃に加熱し、不活性雰囲気下で4.0時間反応させた。相対モル比[1]/[CHD]/[CHO]/[PA]/[ε−DL]は1/2/800/150/50であった。
【0213】
いずれの場合も、周囲温度に冷却することによって重合を停止させた。過剰の揮発性物質(CHO)を除去することにより、粗ポリマーを単離した。冷MeOHを用いた沈殿によって、精製されたポリエステルを得ることができる。
【0214】
種々のモノマー混合物を利用した重合から得られた結果を以下の表3に示す。
【0215】
【表3】
【0216】
a)[1]:[CHD]:[CHO]=1:2:800,100℃,PAおよびε−DL変換率>95%;b)ポリエステル(PDL−b−PCHPE−b−PDL)中のPCHPEブロックの重量含有量; c){([PA]+[CHO])×(PA変換率)+[ε−DL]×(ε−DL変換率)}/[CHD]により決定される(kg・mol−1単位を使用); d)ポリスチレン較正を使用するSECにより、kg・mol−1単位で決定される。MALLSはこのようなブロックコポリマー分析には適しない。[Goresら、Chromatography of Polymers (本)またはKellerら、Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies, 2010, 33, 1587−1600.に記載される] e)第3サイクルで3回の加熱−冷却サイクルの後に決定される。
【0217】
三元共重合は、ATR−IR分光法によってモニターし、1790cm−1の診断PA共鳴の消失および特徴的なポリエステル(PCHPE)共鳴(1065〜1068cm−1)の成長によって示されるように、最初にエポキシド/無水物ROCOPが起こったことを示した。図3は、表3の2欄について得られたATR−IRスペクトルを示す。
【0218】
この時間中に、ラクトン(ε−DL)に関連するいかなる共鳴に変化はなく、完全に交互するポリエステル(PCHPE)および残留ε−DLのシグナルのみを示すH NMR分光法を用いたアリコート分析によって確認された。H NMR分光法によって独立して確認され、過剰のCHOの存在下でPAが消費されると、反応が第2相に入り、ε−DL ROPが生じ、トリブロックポリエステル形成を生じた。この段階の間、ATR−IRモニタリングは、1735cm−1におけるε−DL共鳴の減少を示し、同時に1190cm−1でのその共鳴によって示されるポリ(デカラクトン)のブロックが成長した。IR吸収は、純粋な単離されたモノマー/ポリマーを用いた対照実験において全て独立に確認された。
【0219】
モノマー配列選択性は、独立して生じる2つのプロセスのTOF値に基づいて予想されない。図4は、重合中に存在する重要な中間体を示す。Pは成長するポリマー鎖を表す。両方の触媒サイクルに共通する、亜鉛アルコキシド中間体へのモノマーの異なる挿入速度は、選択性の原因であると考えられる。したがって、亜鉛アルコキシド結合へのPA挿入の速度は、ε−DLの挿入よりも著しく速い(すなわち、k>>k)。また、PA挿入によって形成されたカルボン酸亜鉛中間体がラクトンと反応しないことも重要である。したがって、カルボン酸亜鉛中間体は、CHOとゆっくりとしか反応することができず、亜鉛アルコキシド中間体を(再)形成することができない。PAの完全な変換の後、ある種のエポキシドの存在下でのみ、亜鉛アルコキシド中間体はε−DL ROPを促進する。
【0220】
一般的に言えば、本発明の方法で形成されるポリマーブロックの性質は、金属錯体[M]に結合した成長中のポリマー鎖の末端部分、および相対速度(k)に応じて制御することができる。モノマーが金属錯体と配位子−Z−Rとの間の結合に挿入される。モノマーの相対的な挿入速度は、1つ以上のモノマーを式(I)の触媒に暴露し、モノマーが消費される速度、またはポリマーが生成される速度をモニターすることによって決定することができる。これは、例えば、減衰全反射IR分光法(ATRIR)、NMR、光吸収分光法、IR、または滴定のような当技術分野で周知の定量的分光または分析技術を用いて行うことができる。
【0221】
例えば、以下のスキームにおいて、kは無水物またはCOの挿入速度を表し、kはエポキシドの挿入速度を表し、kはラクトン/ラクチドの挿入速度を表す。Pは成長するポリマー鎖を表し、その構造は重合されるモノマーの種類に依存する。相対的な挿入速度は、ブロックが生成される順序に影響を与える。
【0222】
【化22】
【0223】
場合によっては、kはkよりも速く、kはkより速くてもよい。
【0224】
ABAポリマー構造を確認するために、アリコートを、PAの完全変換(約95%)の直前およびPDLブロックの増殖(ε−DLの約96%変換)の後(図5a)にSECで分析した。ε−DL ROPの後、ポリマーはより高いMWを有し、両方の場合に分布はモノモーダルであり、分散が狭いことは明らかである。ROCOP(PCHPE)によって形成されるブロックは芳香族反復単位を有するので、UV検出器を備えたSECを用いた分析はまた、PCHPEおよびPDLブロックが互いに結合していることを確認するのに役立った。一方、過剰の2−クロロ−4,4,5,6−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンとの反応後の化学シフトに基づいて、ポリマーブロックの2つヒドロキシル基(それぞれPCHPEおよびPDLから)を区別するために、31P{H} NMR分光法を用いた(内部標準としてビフェノールAを使用する)。スペクトルは、147.1ppm(重合の第1相後のPCHPE末端基に帰属する)のピークから149.2ppm(ABAトリブロックのPDL末端基のみに帰属する)へのシフトがあることを示した。さらに、H DOSY NMRスペクトルは、すべてのNMR信号が同じ拡散係数を有する単一のコポリマーに属することを示した。対照的に、PCHPE/PDLのブレンドはほぼ同等のMWであり、2つの異なる拡散係数を示した。
【0225】
コポリマーは、−59〜61℃の範囲で調整可能なTg値を示した。ホモポリマーは、それぞれ−58℃(PDL)および97℃(PCHPE)のTg値を有する非晶質である。それらのブレンドはホモポリマーと同一のTg値を示した。対照的に、低(33wt%)または高(81wt%)のPCHPE組成物を有するコポリエステルは、優勢なブロック材料(PDLまたはPCHPE)に近い単一のTgしか示さなかった。ブロック組成がより均等にバランスしている場合(42〜59重量%のPCHPE)、2つのTg値が観察され、相分離が生じたことを示唆した。
【0226】
実施例2:PDL−b−PvCHPE−b−PDLトリブロックコポリエステルを得るための錯体1を用いたPA/vCHO/ε−DLの配列制御化学選択的三元共重合
錯体1(10.0mg、1.25×10−2mmol)、無水フタル酸(186.0mg、1.26mmol)、ε−DL(325.0μL、1.88mmol)およびCHDのストック溶液(116.0μL、vCHO中24.0mg・mL−1)を、撹拌棒を入れたスクリューキャップバイアル中で、N保護下、vCHO(884.0μL、8.91mmol)に溶解した。次いで、混合物を100℃に加熱し、不活性雰囲気下で4.0時間反応させた。相対モル比[1]/[CHD]/[vCHO]/[PA]/[ε−DL]は1/2/800/100/100であった。周囲温度に冷却することによって重合を停止させた。過剰の揮発性物質(CHO)を除去することにより粗ポリマーを単離した。冷MeOHを用いた沈殿によっても、精製されたポリエステルを得ることができる。この重合から得られた結果を以下の表4の1欄に示す。
【0227】
三元共重合は、ATR−IR分光法によってモニターし、1790cm−1の診断PA共鳴の消失および特徴的なポリエステル(PCHPE)共鳴(1065〜1068cm−1)の成長によって示されるように、最初にエポキシド/無水物ROCOPが起こったことを示した。
【0228】
この時間中に、ラクトン(ε−DL)に関連するいかなる共鳴に変化はなく、完全に交互するポリエステル(PCHPE)および残留ε−DLのシグナルのみを示すH NMR分光法を用いたアリコート分析によって確認された。H NMR分光法によって独立して確認され、過剰のCHOの存在下でPAが消費されると、反応が第2相に入り、ε−DL ROPが生じ、トリブロックポリエステル形成を生じた。この段階の間、ATR−IRモニタリングは、1735cm−1におけるε−DL共鳴の減少を示し、同時に1190cm−1でのその共鳴によって示されるポリ(デカラクトン)のブロックが成長した。IR吸収は、純粋な単離されたモノマー/ポリマーを用いた対照実験において全て独立に確認された。
【0229】
実施例3:PLA−b−PCHPE−b−PLAトリブロックコポリエステルを得るための錯体1を用いたPA/CHO/rac−LAの配列制御化学選択的三元共重合
錯体1(10.0mg、1.25×10−2mmol)、無水フタル酸(186.0mg、1.26mmol)、ラセミラクチド(271.0μL、1.88mmol)およびCHDのストック溶液(116.0μL、CHO中24.0mg・mL−1)を、撹拌棒を入れたスクリューキャップバイアル中で、N保護下、CHO(884.0μL、8.91mmol)に溶解した。次いで、混合物を100℃に加熱し、不活性雰囲気下で4.0時間反応させた。相対モル比[1]/[CHD]/[CHO]/[PA]/[ラセミラクチド]は1/2/800/100/100であった。周囲温度に冷却することによって重合を停止させた。過剰の揮発性物質(CHO)を除去することにより粗ポリマーを単離した。冷MeOHを用いた沈殿によっても、精製されたポリエステルを得ることができる。この重合から得られた結果を以下の表4の2欄に示す。
【0230】
PAの完全変換の前に、H NMR分光法は、完全に交互するポリエステル(PCHPE)および残留rac−DLのシグナルのみを示した。H NMR分光法によって確認されるように、PAが消費され、過剰のCHOの存在下で、反応が第2相に入り、rac−DL ROPが生じ、トリブロックポリエステル形成に至った。この重合から得られた結果を以下の表4の第2欄に示す。
【0231】
【表4】
【0232】
実施例4:[PDL−b−PCHPE−b−PDL]マルチブロックコポリエステルの合成
以下の典型的な合成に従って、実施例1に従って合成されたトリブロックコリメステルを鎖延長してより高分子量(MW)に到達させた。これによって、ウレタン結合を有するマルチブロックコポリエステル[PDL−b−PCHPE−b−PDL]を形成した。
【0233】
典型的には、PDL−b−PCHPE−b−PDLトリブロックコポリエステル(3000.0mg、1.35×10−2mmol)、Sn(Oct)(24.0μL、4.73x10−2mmol)および4,4’−メチレンビス(イソシアネート)(37.0mg、1.48×10−2mmol)を、撹拌棒を入れたシュレンク管中、N保護下でトルエン(20mL)に溶解した。次いで、混合物を60℃に加熱し、不活性雰囲気下で2.0時間反応させた。MeOHを用いて沈殿させることにより純粋なマルチブロックコポリエステルを得た。
【0234】
表5に示すように、分子量は3つの試料すべてにおいて約2倍であるが、分子量分布は1.5未満のままである。この観察結果は、3つの試料すべてにおいて鎖伸長が成功したことを示唆している。SAXSを用いて[PDL−b−PCHPE−b−PDL]マルチブロックコポリエステルの相分離構造を特定した。3つの試料すべてにおいて、強いおよび鋭い散乱ピークが観察され、ナノ相分離構造が確認された。#1#3のピークの2θは、それぞれ0.605°、0.705°および0.605°であると同定された。従って、分離した相の大きさはそれぞれ14.6nm、12.4nmおよび13.9nmと計算された。
【0235】
【表5】
【0236】
a){([PA]+[CHO])×(PA変換率)+[ε−DL]×(ε−DL変換率)}/[CHD]によって決定される。b)狭い分子量のポリスチレン標準を用いて較正されたSECによって決定される。c)鎖伸長反応は、60℃で鎖延長剤としてのMDIを用いたSn(Oct)によって触媒された。d)DSCによって決定される。
【0237】
実施例5:ペンタ/ヘプタブロックコポリエステル:(PDL−b)−PCHPE−b−PDL−b−PCHPE−b−PDL−b−PCHPE−(b−PDL)
ブロックコポリエステルのブロック数は、トリブロックに限定されない。より高いブロック数を有するブロックコポリエステル(例えば、ペンタブロック、ヘプタブロック等)もまた、逐次付加法によって調製することができる。
【0238】
典型的には、ペンタブロックブロックコポリエステル(表6、3欄)を以下の手順に従って合成する。錯体1(10.0mg、1.25×10−2mmol)、無水フタル酸(186.0mg、1.26mmol)、ε−DL(410.0μL、2.52mmol)およびCHDのストック溶液(116.0μL、CHO中に24.0mg・mL−1)を、撹拌棒を装填したアンプル中、N保護下で、CHO(884.0μL、8.91mmol)に溶解した。次いで、混合物を100℃に加熱し、不活性雰囲気下で4.0時間反応させて、無水フタル酸およびε−DLの完全変換に到達させた。次いで、追加の無水フタル酸(93.0mg、6.3×10−1mmol)をN流下でアンプルに加えた。[1]/[CHD]/[CHO]/[PA]/[ε−DL]/[PA(2回目の添加)]の相対モル比は、100℃でN2保護下でさらに2.0時間反応させた。[1]/[CHD]/[CHO]/[PA]/[ε−DL]/[PA(2回目)]の相対モル比は1/2/800/100/200/50であった。周囲温度に冷却することによって重合を停止させた。過剰の揮発性物質(CHO)を除去することにより粗ポリマーを単離した。精製されたポリエステルは、冷MeOHを用いた沈殿によっても得ることができる。
【0239】
典型的には、ヘプタブロックブロックコポリエステル(表6、4欄)は、以下の手順に従って合成される。錯体1(10.0mg、1.25×10−2mmol)、無水フタル酸(186.0mg、1.26mmol)、ε−DL(325.0μL、1.88mmol)およびCHDのストック溶液(116.0μL、CHO中24.0mg・mL−1)を、撹拌棒を入れたスクリューキャップバイアル中で、N保護下、CHO(884.0μL、8.91mmol)に溶解した。次いで、混合物を100℃に加熱し、不活性雰囲気下で4.0時間反応させて、無水フタル酸およびε−DLの完全変換に到達させた。次いで、追加の無水フタル酸(93.0mg、6.3×10−1mmol)およびε−DL(410.0μL、2.52mmol)をN流下でアンプルに添加した。混合物を100℃でN保護下でさらに3.0時間反応させた。[1]/[CHD]/[CHO]/[PA]/[ε−DL]/[PA(2回目添加)]/[ε−DL(2回目添加)]の相対モル比は、1/2/800/100/200/50/200である。周囲温度に冷却することによって重合を停止させた。過剰の揮発性物質(CHO)を除去することにより粗ポリマーを単離した。冷MeOHを用いた沈殿によっても、精製されたポリエステルを得ることができる。
【0240】
上述したのと同じ逐次的付加方法は、繰返し逐次添加を介してより多くのブロック番号を有するブロックコポリエステルの製造に適用することができる。
【0241】
【表6】
【0242】
a)ポリスチレン較正を使用するSECによって決定される(kg・mol−1単位を使用)。
【0243】
実施例6:組成が異なる[PDL−b−PCHPE−b−PDL]マルチブロックコポリエステルの引張試験
引張試験のためにサンプルを以下のように準備した。溶媒−キャストポリエステルシートを、テフロン(登録商標)型中のDCM溶液(50mLのDCM中のマルチブロックコポリエステルが2.2g)から調製した。溶媒を、ヒュームフード中、室温で2週間ゆっくりと蒸発させた。次いで、Zwick Punch(Zwick D−7900、Ulm−Einsingen Type 7102、Werk−Nr.85688)を用いて、ダンベル形状の試料棒をポリエステルシート(長さ35mm、幅2.1mm、厚さ0.4mm)を切断刃で切断した。Linkam TST350引っ張り応力試験機で10mm/分の伸長速度で、周囲温度および湿度(21.8℃および21%)で、強度、伸びおよびヤング率を含む機械的特性を測定した。
【0244】
[PDL−b−PCHPE−b−PDL] nマルチブロックコポリエステル、PDL、PCHPEホモポリエステルおよびPDL/PCHPEのブレンドのような異なるポリエステルを用いて、テフロン(登録商標)型の溶媒キャスティング法によりポリエステルサンプルバーを調製した。しかし、引張り試験に適したサンプルバーは、PCHPE−b−PDLマルチブロックコポリエステルからのみ製造することができる。PDLは、その低いTgおよび非晶質性のために形状を維持することができない。PCHPEは脆すぎて型から取り出すことができず、切断時に容易に破断する。PDL/PCHPEのブレンドは、PDLホモポリエステルと同じ物理的状態を示す。従って、[PDL−b−PCHPE−b−PDL]マルチブロックコポリエステルから製造されたサンプルバーのみが引張試験に適していた。相分離構造を有するブロック共重合体の場合、異なるブロック間の比が機械的特性を決定する役割を果たす。表5(#1−3)に列挙された3つ全てのサンプルの機械的特性を評価するために、引張試験を行った。
【0245】
#1の応力−歪み曲線(PCHPEブロック26wt%)は、エラストマーと同じ形状を示します(図7参照)。降伏点は観察されない。また、収縮後に若干低いヤング率(1.4MPa)および残留歪み(εr=26%)がその優れた弾性を示す。しかし、この実験に使用される引張り試験機のトラック長が限られているため、破断時の歪みではなく、「最大」ひずみとしてのみ約450%が記録された。エラストマー様の挙動に基づいて、#1が島状相分離構造(マトリックスとしてのPDLブロック)を有すると仮定することは合理的である。
【0246】
#2の応力−歪み曲線は、歪みが100%に達する前のエラストマーよりも、プラスチックに似た引っ張り挙動を示す(図7では明白な降伏点および降伏段階が観察される)。ヤング率は降伏点で12%の歪みを有する応力−歪み曲線の初期勾配から65MPa(#1より1桁高い)にも導かれた。興味深いことに、歪みが100%を超えると、材料はエラストマーと同様の歪み応力挙動を示す。次の収縮試験の間に、歪みが約450%に伸長した後に205%に減少した。さらに、サンプルバーが一晩自由に緩和された場合、残留歪みはさらに約100%まで減少する可能性がある。この観察は、#2が低い歪み範囲(0〜100%)でプラスチックとして機能し、一方、高い歪み範囲(>100%)でエラストマーと同様の挙動を示すことを明らかにする。
【0247】
#1に関しては、引張り試験機の限界のために、最大歪みは450%としてしか記録されない。破断点伸びを概算するために、一方の試料棒を手で一軸に引き伸ばして破断点に達し、破断点伸びを約800%と記録した。
【0248】
PCHPEの重量含量が59重量%に達すると(#3)、ブロックコポリエステルは、応力−歪み曲線(図7参照)によって示されるように、プラスチックの機械的性質を示す。比較的高いヤング率(223MPa)が記録され、9%の歪みで降伏点が現れた。試料棒は約350%の歪みで破断したので、残留歪みを測定するための引っ込み試験は行われなかった。高いPCHPE重量含有量とプラスチックのような機械的性質を考慮して、#3が島状の相分離構造(マトリックスとしてのPCHPEブロック)を有すると仮定することは合理的である。
【0249】
異なる組成を有する[PDL−b−PCHPE−b−PDL]マルチブロックコポリエステルの機械的性質を以下の表7に要約する。
【0250】
【表7】
【0251】
a)このサンプルでは降伏点は観察されなかった。b)350%に破損のために引っ込み試験を実施しなかった。c)この実験に使用した引張り試験機の軌跡は、試料を破断するのに十分な長さではなかった。d)残留歪みは、450%の歪みに達した後の引っ込み試験によって得られた。
【0252】
#2の機械的試験の間に、自動引き締め目等の生物医学的応用の可能性を有する、珍しい形状記憶効果が観察された。[PDL−b−PCHPE−b−PDL]マルチブロックコポリエステルは、硬質セグメントのTg(約55℃)より低い周囲温度(18℃)で、400または500%の歪みまで試験片を繰り返し伸ばして特性評価した。所定の最大歪みに達した後、試料を周囲温度で30分間自由に弛緩させて一定の歪み(εc)を得た。その後、試料を加熱プレート(45℃)上に30秒間置いた後、室温まで冷却した。図8は、8つの連続的な熱機械サイクルを示す(サイクル1〜4では最大歪みは400%であり、サイクル5〜8では最大歪みは500%である)。100%を超える残留歪み(定義は実験セクション参照)は、ε=400%まで延伸された後に達成され、500%まで延伸された後に140%の最大残留歪みが観察される。冷間延伸法により変形を行ったこの残留歪み値は印象的であり、特に、通常、高ひずみ残留値は、転移温度より上の温度で試験片を引き伸ばし、次に試験片を低温(例えば、−20℃)に冷却してチェーンの動きを固定することによって達成される。また、45℃に加熱した後も優れた歪回復能(>96)を示した(形状記憶効果も図9の写真で記録した)。
【0253】
上述のように、表5の#2は、プラスチックからゴムへの興味深い遷移を示している。このような現象は非常にまれであり、SBSエラストマーおよびその誘導体(「歪み誘発プラスチック−ゴム転移」としても知られている)において初めて観察される。PCHPE−b−PDLとSBSポリマー(低Tgを有する脂肪族ソフトブロックと高Tgを有する芳香族ハードブロックとの組み合わせ)の類似性を考慮すると、「ひずみ誘導プラスチック−ゴム転移」は両方のケースで同じメカニズムを共有している。基本的には、島状の相分離構造を形成するのではなく、共連続相分離ナノ構造を形成した。したがって、低歪み(0〜100%)では、試料は、PCHPE連続相がせん断、ねじれ、破壊および配向によって徐々に変形する間、連続PCHPE相の存在のためにプラスチックのように振る舞う。最後に、PCHPE連続相は、PDLマトリックス中にランダムに分散したPCHPEドメインに断片化し、ゴム様の機械的性質を与える。この仮説を証明するために、サイクル引張試験を行った(図10A参照)。サンプルバーを最初に450%の歪みまで引き伸ばしてPCHPE連続相を破砕し、続いて室温(19℃)で自由に弛緩させて一定の残留歪み(ε=80%)にした。次に、サンプルバーを同じ延伸速度で再び延伸した。第2の応力−歪み曲線では、降伏点は観察されず、はるかに低いヤング率が記録され、これはゴム/エラストマーの機械的特性に一致する。また、#2から得られた周期的引張応力−歪み曲線は、文献(図10B)により与えられるSBS(ポリスチレンの48重量%)から得られたものに匹敵する。したがって、#2によって示される歪み誘発プラスチック−ゴム転移は、実際には、SBSポリマーと同じ二連続相変形メカニズムに起因する。
【0254】
#2と#3の両方の応力−歪み曲線の降伏点の後に、プラットフォーム(一定の応力を伴う歪みの増加)が観察された。このプラットフォームの存在は、多くの剛性非晶質ポリマーで観察された、強制的な高弾性変形(または冷間引抜き)として知られるセグメント運動のタイプに起因する。この変形は、Tg以下の剛性非晶質ポリマーに高い外力が加えられた場合に起こる。このように、ポリマーセグメントは、せん断力、キンク(kink)および再配向を余儀なくされる。しかしながら、この変形は熱的に有利ではない。したがって、ポリマーセグメントがより低い自由エネルギーでステージに戻る傾向があるため、強制的に高い弾性変形によって引き起こされる歪みは回復可能である。この回復プロセスは、ポリマーのTgよりもゆっくりと達成されるか、またはポリマーをTgより上の温度に加熱することによって促進され得る。
【0255】
熱可塑性エラストマー特性をもたらす主な要因は、相分離効果である。相分離は、ブロックコポリマーまたはポリマーブレンド内で、異なるブロック/ポリマー種が、互いに混和性ではなく、各種の分離領域(通常、ナノスケール)を形成することを意味する。例えば、PDL−b−PCHPE−b−PDLマルチブロックコポリエステルの場合、PCHPEブロックは硬質領域を形成し、PDLブロックは軟質領域を形成する。特定の組成(例えば、26wt%のPCHPE)が与えられると、PCHPE硬質領域が連続的な軟質PDL領域に分散し、島状の相分離ナノ構造をもたらす。分離されたPCHPE硬質領域は、機械的試験中に物理的架橋点として作用し、エラストマー/ゴム特性を与える。しかし、化学的架橋点とは異なり、物理的架橋点は加熱により可逆的である。従って、PDL−b−PCHPE−b−PDLマルチブロックコポリエステルは、熱可塑性エラストマーの特性を示す。
【0256】
実施例7:PCHPE−b−PCLとの特性比較
ε−カプロラクトン(ε−CL)およびε−デカラクトン(ε−DL)は同様の化学構造を有し、ε−カプロラクトンおよびε−デカラクトンの両方のホモポリマーは同じガラス転移温度を共有するが、PCHPE−b−PCLの場合には明らかな弾力性は観察されなかった。これは、PCLブロックの高い結晶化度(通常、χ>40%)に起因する。したがって、PCHPEの高いTg(60℃以上)とPCLの高い結晶性を考慮すると、PCHPE−b−PCLの両方のブロックは、特定の温度範囲(T≦−60℃または0℃≦T≦60)で硬質セグメントとして分類することができる材料(PCHPE−b−PCL)を周囲温度(例えば約25℃)で弾性よりも脆くする。しかしながら、ε−DLのホモポリマーは、5−炭素アルキル置換基のために、その低いTgのために、はるかに少ない結晶化度(通常0%≦x≦20%)および軟質ポリマー鎖(−60℃より高い温度)を示す。したがって、PCHPE−b−PCLとは異なり、PCHPE−b−PDLは特定の温度範囲(例えば−60℃≦T≦120℃)で硬質セグメント(PCHPE)と軟質セグメント(PDL)周囲温度(例えば、約25℃)での機械的性質に似ている。
【0257】
ジ亜鉛錯体2の調製
【0258】
【化23】
【0259】
Zn(CFCOO)・xHOをPの存在下、40℃で24時間真空乾燥した。配位子HL(0.80g、1.45mmol)をメタノール(70mL)およびZn(CFCOO)に溶解した。xHO(0.85g、2.91mmol)を添加した。混合物を18時間撹拌し、メタノールを減圧除去した。生成物をジクロロメタン(10mL)に溶解し、濾過し、溶媒を減圧除去した。生成物である白色粉末をPの存在下、40℃で10時間減圧乾燥した。白い粉;収量:0.96g、1.05mmol、74%。
H NMR(CDCl);δ6.92(s,4H,Ar−H),4.32−4.26(m,4H,Ar−CH−N),3.25(d,J=12.0Hz,4H,Ar−CH−N),3.01(m,4H,N−CH−C),2.68(d,J=11.5Hz,4H,N−CH−C),2.40(t,J=12.7Hz,4H,NH),1.24(s,18H,Ar−CH),1.18(s,6H,N−C−CH),1.03(s,6H,N−C−CH) EA:計算値C3854Zn:C 50.29,H 6.00,N 6.17;実測値:C 45.64,H 6.76,N 5.24 計算値C3854Zn・5HO:C 46.75,H 6.47,N 5.62
実施例8:31重量%のPCHCを有するPDL−b−PCHC−b−PDLトリブロックコポリマーを得るための、錯体2を用いたCO/CHO/ε−DLの配列制御化学選択的三元共重合
下、撹拌棒を入れたシュレンク管に錯体2(0.02g、0.04mmol)、CHO(4.57mL、48mmol)およびε−DL(1.72mL、8.8mmol)を入れた。相対モル比[2]:[CHO]:[ε−DL]は1:2000:200であった。反応混合物を脱気し、次いで1バールのCO圧で80℃に加熱した。所定の時間後、COを6回の真空/Nサイクルによって除去した。反応をH NMR分光法によってモニターし、開環重合が約70%に達したとき、粗反応混合物を空気に暴露し、粗混合物のH NMRスペクトルを記録した。真空下でCHOを除去し、ポリマーをTHF溶液のメタノールへの沈殿により精製した。この重合から得られた結果を以下の表8の1欄に示す。
【0260】
実施例9:50wt%のPCHCを有するPDL−b−PCHC−b−PDLトリブロックコポリマーを得るための、錯体2を用いたCO/CHO/ε−DLの配列制御化学選択的三元共重合
下、撹拌棒を装備したシュレンク管に錯体2(0.02g、0.04mmol)、CHO(4.57mL、48mmol)およびε−DL(0.86mL、4.4mmol)を入れた。相対モル比[2]:[CHO]:[ε−DL]は1:2000:100であった。反応混合物を脱気し、次いで1バールのCO圧で80℃に加熱した。所定の時間後、COを6回の真空/窒素サイクルによって除去した。反応をH NMR分光法によってモニターし、開環重合が約70%に達したとき、粗反応混合物を空気に暴露し、粗混合物のH NMRスペクトルを記録した。真空下でCHOを除去し、ポリマーをTHF溶液のメタノールへの沈殿により精製した。この重合から得られた結果を以下の表8の2欄に示す。
【0261】
【表8】
【0262】
a)触媒に対するモノマーのモル当量; b)H NMRスペクトルに基づいて計算したPCHCブロック対PDLブロックの重量比; c)モノマーの変換率に従って計算された理論分子量; d)SEC特性から得られた実験的分子量および分子量分布; e)DSC特性から得た。
【0263】
実施例10:PDL−b−PvCHC−b−PCHPE−b−PvCHC−b−PDLペンタブロックコポリマーを得るための、錯体1を用いたCO/PA/vCHO/ε−DLの配列制御化学選択的三元共重合
錯体1(0.01g、0.012mmol)、PA(0.08g、0.57mmol)、ε−DL(0.86mL、4.6mmol)およびCHDのストック溶液(55.0μL;CHO中50mg/mL)を、攪拌棒を入れたシュレンク管中、N下で、CHO(2.51mL、17.8mmol)に溶解した。相対モル比[1]/[CHD]/[PA]/[VCHO]/[ε−DL]は1/2/50/1550/400であった。溶液を100℃に加熱した。重合中にH NMRのアリコートを採取した。所定の時間後、短いN/真空サイクルを用いて雰囲気を窒素に変更した。所定の反応時間後、周囲温度に冷却することによって重合を停止させ、粗混合物のH NMRスペクトルを記録した。真空下でvCHOを除去し、ポリマーをTHF溶液のメタノールへの沈殿により精製した。この重合から得られた結果を以下の表9の1欄に示す。LZnPh/CHDとCO/PA/vCHO/ε−DLとの反応も、in−situ ATR−IR分光法によってモニターした(図11参照)。
【0264】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11