【実施例】
【0144】
以下の実施例を、本発明の種々の実施形態を説明する目的のために挙げ、それらは本発明をいかなる様式にも限定することを意味しない。本実施例は、本明細書に記載の方法とともに、目下好ましい実施形態の代表例であり、例示であり、本発明の範囲に対する限定を意図するものではない。特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の趣旨に包含されるその変更および他の使用は、当業者が行う。
【0145】
実施例1:真核細胞の核中のCRISPR複合体活性
例示的なII型CRISPR系は、4つの遺伝子Cas9、Cas1、Cas2、およびCsn1のクラスター、ならびに2つの非コードRNAエレメント、tracrRNAおよび非反復配列の短いストレッチ(スペーサー、それぞれ約30bp)により間隔が空いている反復配列の特徴的アレイ(ダイレクトリピート)を含有する化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)SF370からのII型CRISPR遺伝子座である。この系において、ターゲティングされるDNA二本鎖切断(DSB)を4つの連続ステップにおいて生成する(
図2A)。第1に、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAがCRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAがプレcrRNAのダイレクトリピートにハイブリダイズし、次いでそれが個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAにプロセシングされる。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体がCas9を、crRNAのスペーサー領域とプロトスペーサーDNAとの間のヘテロ二本鎖形成を介してプロトスペーサーおよび対応するPAMからなるDNA標的に指向する。最後に、Cas9は、PAMの上流の標的DNAの開裂を媒介してプロトスペーサー内でDSBを創成する(
図2A)。この例は、このRNAプログラマブルヌクレアーゼ系を適応させて真核細胞の核中のCRISPR複合体活性を指向する例示プロセスを記載する。
【0146】
哺乳動物細胞中のCRISPR成分の発現を改善するため、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes(S.pyogenes))SF370遺伝子座1からの2つの遺伝子Cas9(SpCas9)およびRNアーゼIII(SpRNアーゼIII)をコドン最適化した。核局在化を促進するため、核局在化シグナル(NLS)をSpCas9およびSpRNアーゼIIIの両方のアミノ(N)またはカルボキシル(C)末端に含めた(
図2B)。タンパク質発現の可視化を促進するため、蛍光タンパク質マーカーも両方のタンパク質のNまたはC末端に含めた(
図2B)。NおよびC末端の両方に付着しているNLSを有するSpCas9のバージョン(2×NLS−SpCas9)も生成した。NLS融合SpCas9およびSpRNアーゼIIIを含有する構築物を293FTヒト胚腎臓(HEK)細胞中に形質移入し、SpCas9およびSpRNアーゼIIIに対するNLSの相対的位置決めが、それらの核局在化効率に影響することが見出された。C末端NLSは標的SpRNアーゼIIIを核にターゲティングするために十分であった一方、SpCas9のNまたはC末端のいずれかへのこれらの特定のNLSの単一コピーの付着は、この系中の適切な核局在化を達成し得なかった。この例において、C末端NLSは、ヌクレオプラスミンのもの(KRPAATKKAGQAKKKK)であり、C末端NLSは、SV40ラージT抗原のもの(PKKKRKV)であった。試験されたSpCas9のバージョンのうち、2×NLS−SpCas9のみが核局在化を示した(
図2B)。
【0147】
化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370のCRISPR遺伝子座からのtracrRNAは、2つの転写開始部位を有し、89ヌクレオチド(nt)および171ntの2つの転写物を生じさせ、それは続いて同一の75nt成熟tracrRNAにプロセシングされる。より短い89ntのtracrRNAを哺乳動物細胞中の発現のために選択した(
図6に説明される発現構築物、
図6Bに示されるSurveryorアッセイの結果により決定された機能性を有する)。転写開始部位を+1として標識し、転写ターミネーターおよびノザンブロットによりプロ―ビングされる配列も示す。プロセシングされたtracrRNAの発現もノザンブロットにより確認した。
図7Cは、長鎖または短鎖tracrRNA、ならびにSpCas9およびDR−EMX1(1)−DRを担持するU6発現構築物により形質移入された293FT細胞から抽出されたトータルRNAのノザンブロット分析の結果を示す。左および右側のパネルは、それぞれSpRNアーゼIIIを用いず、または用いて形質移入された293FT細胞からのものである。U6は、ヒトU6snRNAをターゲティングするプローブによりブロットされたローディング対照を示す。短鎖tracrRNA発現構築物の形質移入は、十分なレベルのプロセシング形態のtracrRNA(約75bp)をもたらした。極めて少量の長鎖tracrRNAがノザンブロット上で検出される。
【0148】
正確な転写開始を促進するため、RNAポリメラーゼIIIベースU6プロモーターを選択してtracrRNAの発現をドライブした(
図2C)。同様に、U6プロモーターベース構築物を開発して2つのダイレクトリピート(DR、用語「tracrメイト配列」にも包含される;
図2C)によりフランキングされている単一スペーサーからなるプレcrRNAアレイを発現させた。最初のスペーサーは、大脳皮質の発達におけるキー遺伝子であるヒトEMX1遺伝子座中の33塩基対(bp)標的部位(30bpのプロトスペーサーと、Cas9のNGG認識モチーフを満たす3bpのCRISPRモチーフ(PAM)配列)をターゲティングするように設計した(
図2C)。
【0149】
哺乳動物細胞中のCRISPR系(SpCas9、SpRNアーゼIII、tracrRNA、およびプレcrRNA)の異種発現がターゲティングされる哺乳動物染色体の開裂を達成し得るか否かを試験するため、HEK293FT細胞をCRISPR成分の組合せにより形質移入した。哺乳動物核中のDSBは部分的には、インデルの形成をもたらす非相同末端結合(NHEJ)経路により修復されるため、Surveyorアッセイを使用して標的EMX1遺伝子座における潜在的な開裂活性を検出した(例えば、Guschin et al.,2010,Methods Mol Biol 649:247参照)。4つ全てのCRISPR成分の同時形質移入は、プロトスペーサーの最大5.0%の開裂を誘導し得た(
図2D参照)。SpRNアーゼIIIを除く全てのCRISPR成分の同時形質移入も、プロトスペーサーの最大4.7%のインデルを誘導し、このことはcrRNA成熟を支援し得る内因性哺乳動物RNアーゼ、例えば、関連DicerおよびDrosha酵素などが存在し得ることを示唆した。残り3つの成分のいずれかを除去すると、CRISPR系のゲノム開裂活性は停止する(
図2D)。標的遺伝子座を含有するアンプリコンのサンガーシーケンシングにより開裂活性を確認し;43個のシーケンシングされたクローンのうち5つの突然変異アレル(11.6%)が見出された。種々のガイド配列を使用する同様の実験は、29%と高いインデル割合を生じさせた(
図4〜8、10、および11参照)。これらの結果は、哺乳動物細胞中の効率的なCRISPR媒介ゲノム改変のための3成分系を定義する。
【0150】
開裂効率を最適化するため、本出願人らは、tracrRNAの異なるアイソフォームが開裂効率に影響するか否かも試験し、この例示的系において、短鎖(89bp)転写物形態のみがヒトEMX1ゲノム遺伝子座の開裂を媒介し得ることを見出した。
図9は、哺乳動物細胞中のcrRNAプロセシングの追加のノザンブロット分析を提供する。
図9Aは、2つのダイレクトリピートによりフランキングされている単一スペーサー(DR−EMX1(1)−DR)についての発現ベクターを示す模式図を説明する。ヒトEMX1遺伝子座プロトスペーサー1をターゲティングする30bpのスペーサーおよびダイレクトリピート配列を、
図9Aの下方の配列中に示す。線は、逆相補配列を使用してEMX1(1)crRNA検出のためのノザンブロットプローブを生成する領域を示す。
図9Bは、DR−EMX1(1)−DRを担持するU6発現構築物により形質移入された293FT細胞から抽出されたトータルRNAのノザンブロット分析を示す。左および右側のパネルは、それぞれSpRNアーゼIIIを用いず、または用いて形質移入された293FT細胞からのものである。DR−EMX1(1)−DRは、SpCas9が存在する場合のみ成熟crRNAにプロセシングされ、短鎖tracrRNAはSpRNアーゼIIIの存在に依存的でなかった。形質移入293FTトータルRNAから検出された成熟crRNAは、約33bpであり、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)からの39〜42bpの成熟crRNAよりも短かった。これらの結果は、CRISPR系を真核細胞中に移植し、リプログラミングして内因性哺乳動物標的ポリヌクレオチドの開裂を促進することができることを実証する。
【0151】
図2は、本実施例に記載の細菌CRISPR系を説明する。
図2Aは、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)SF370からのCRISPR遺伝子座1およびこの系によるCRISPR媒介DNA開裂の提案される機序を示す模式図を説明する。ダイレクトリピート−スペーサーアレイからプロセシングされた成熟crRNAは、Cas9を、相補的プロトスペーサーおよびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)からなるゲノム標的に指向する。標的−スペーサー塩基対形成時、Cas9は標的DNA中の二本鎖切断を媒介する。
図2Bは、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9(SpCas9)およびRNアーゼIII(SpRNアーゼIII)の、哺乳動物核中への輸送を可能とするための核局在化シグナル(NLS)によるエンジニアリングを説明する。
図2Cは、構成的EF1aプロモーターによりドライブされるSpCas9およびSpRNアーゼIIIならびに正確な転写開始および終結を促進するためのRNAPol3プロモーターU6によりドライブされるtracrRNAおよびプレcrRNAアレイ(DR−スペーサー−DR)の哺乳動物発現を説明する。十分なPAM配列を有するヒトEMX1遺伝子座からのプロトスペーサーを、プレcrRNAアレイ中のスペーサーとして使用する。
図2Dは、SpCas9媒介少数挿入および欠失についてのsurveyorヌクレアーゼアッセイを説明する。SpCas9を、SpRNアーゼIII、tracrRNA、およびEMX1標的スペーサーを担持するプレcrRNAアレイを用いてまたは用いずに発現させた。
図2Eは、標的遺伝子座とEMX1ターゲティングcrRNAとの間の塩基対形成の模式的表示、ならびにSpCas9開裂部位に隣接する微小欠失を示す例示的クロマトグラムを説明する。
図2Fは、種々の微小挿入および欠失を示す43個のクローンアンプリコンのシーケンシング分析から同定された突然変異アレルを説明する。点線は、欠失塩基を示し、アラインされず、またはミスマッチの塩基は挿入または突然変異を示す。スケールバー=10μm。
【0152】
3成分系をさらに簡略化するため、ステム−ループを介して成熟crRNA(ガイド配列を含む)を部分tracrRNAに融合させて天然crRNA:tracrRNA二本鎖を模倣するキメラcrRNA−tracrRNAハイブリッド設計を適応させた(
図3A)。
【0153】
ガイド配列は、アニールされたオリゴヌクレオチドを使用してBbsI部位間に挿入することができる。センスおよびアンチセンス鎖上のプロトスペーサーを、それぞれDNA配列の上方および下方に示す。ヒトPVALBおよびマウスTh遺伝子座についてそれぞれ6.3%および0.75%の改変比率が達成され、このことは複数の生物にわたる異なる遺伝子座の改変におけるCRISPR系の幅広い適用可能性を実証した。開裂はキメラ構築物を使用してそれぞれの遺伝子座について3つのスペーサーのうち1つについてのみ検出された一方、同時発現されるプレcrRNA配置を使用した場合、全ての標的配列が27%に達するインデル生成の効率で開裂された(
図4および5)。
【0154】
図5は、SpCas9をリプログラミングして哺乳動物細胞中の複数のゲノム遺伝子座をターゲティングすることができることのさらなる説明を提供する。
図5Aは、下線付き配列により示される5つのプロトスペーサーの局在を示すヒトEMX1遺伝子座の模式図を提供する。
図5Bは、プレcrRNAおよびtracrRNAのダイレクトリピート領域間のハイブリダイゼーションを示すプレcrRNA/trcrRNA複合体の模式図(上図)および20bpのガイド配列、ならびにヘアピン構造にハイブリダイズしている部分ダイレクトリピートおよびtracrRNA配列からなるtracrメイトおよびtracr配列を含むキメラRNA設計の模式図(下図)を提供する。ヒトEMX1遺伝子座中の5つのプロトスペーサーにおけるCas9媒介開裂の効力を比較するSurveyorアッセイの結果を、
図5Cに説明する。プロセシングされたプレcrRNA/tracrRNA複合体(crRNA)またはキメラRNA(chiRNA)のいずれかを使用してそれぞれのプロトスペーサーをターゲティングする。
【0155】
RNAの二次構造は分子間相互作用に重要であり得るため、最小自由エネルギーおよびボルツマン加重構造アンサンブルに基づく構造予測アルゴリズムを使用して本出願人らのゲノムターゲティング実験に使用される全てのガイド配列の推定二次構造を比較した(
図3B)(例えば、Gruber et al.,2008,Nucleic Acids Research,36:W70参照)。分析により、ほとんどの場合、キメラcrRNAコンテクスト中の有効なガイド配列は二次構造モチーフを実質的に含まない一方、無効なガイド配列は標的プロトスペーサーDNAとの塩基対形成を妨害し得る内部二次構造を形成する可能性がより高いことが明らかになった。したがって、スペーサー二次構造の変動性は、キメラcrRNAを使用する場合にCRISPR媒介干渉の効率に影響し得ることが考えられる。
【0156】
図3は、例示的発現ベクターを説明する。
図3Aは、合成crRNA−tracrRNAキメラ(キメラRNA)およびSpCas9の発現をドライブするためのバイシストロニックベクターの模式図を提供する。キメラガイドRNAは、ゲノム標的部位中のプロトスペーサーに対応する20bpのガイド配列を含有する。
図3Bは、ヒトEMX1、PVALB、およびマウスTh遺伝子座をターゲティングするガイド配列、ならびにそれらの予測二次構造を示す模式図を提供する。それぞれの標的部位における改変効率をRNA二次構造図の下方に示す(EMX1、n=216アンプリコンシーケンシングリード;PVALB、n=224リード;Th、n=265リード)。フォールディングアルゴリズムは、
図3Bにグレースケールで再現されるレインボースケールにより示されるとおり、それぞれの塩基が予測二次構造を仮定するその確率に従って着色されたアウトプットを生じさせた。SpCas9のためのさらなるベクター設計が
図3Aに示され、ガイドオリゴのための挿入部位に結合しているU6プロモーター、およびSpCas9コード配列に結合しているCbhプロモーターを取り込む単一発現ベクターが含まれる。
【0157】
CRISPRが天然に作動する原核細胞中で二次構造を含有するスペーサーが機能し得るか否かを試験するため、プロトスペーサー担持プラスミドの形質転換干渉を、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370CRISPR遺伝子座1を異種発現する大腸菌(E.coli)株中で試験した(
図3C)。CRISPR遺伝子座を低コピー大腸菌(E.coli)発現ベクター中にクローニングし、crRNAアレイをDRのペアによりフランキングされている単一スペーサーにより置き換えた(pCRISPR)。異なるpCRISPRプラスミドを保有する大腸菌(E.coli)株を、対応するプロトスペーサーおよびPAM配列を含有するチャレンジプラスミドにより形質転換した(
図3C)。細菌アッセイにおいて、全てのスペーサーが効率的なCRISPR干渉を促進した(
図3C)。これらの結果は、哺乳動物細胞中のCRISPR活性の効率に影響する追加の因子が存在し得ることを示唆する。
【0158】
CRISPR媒介開裂の特異性を調査するため、哺乳動物ゲノム中のプロトスペーサー開裂に対するガイド配列中の単一ヌクレオチド突然変異の効果を、単一点突然変異を有する一連のEMX1ターゲティングキメラcrRNAを使用して分析した(
図4A)。
図4Bは、異なる突然変異体キメラRNAと対形成した場合のCas9の開裂効率を比較するSurveyorヌクレアーゼアッセイの結果を説明する。PAMの5’側の最大12bpの単一塩基ミスマッチは、SpCas9によるゲノム開裂を実質的に停止させた一方、さらなる上流位置に突然変異を有するスペーサーは元のプロトスペーサー標的に対する活性を保持した(
図4B)。PAMの他、SpCas9は、スペーサーの最後の12bp内の単一塩基特異性を有する。さらに、CRISPRは、同一EMX1プロトスペーサーをターゲティングするTALEヌクレアーゼ(TALEN)のペアと同程度に効率的にゲノム開裂を媒介し得る。
図4Cは、EMX1をターゲティングするTALENの設計を示す模式図を提供し、
図4Dは、TALENおよびCas9の効率を比較するSurveyorゲルを示す(n=3)。
【0159】
エラープローンNHEJ機序を通した哺乳動物細胞中のCRISPR媒介遺伝子編集を達成するための成分のセットを樹立したため、相同組換え(HR)、ゲノム中の正確な編集を作製するための高フィデリティ遺伝子修復経路を刺激するCRISPRの能力を試験した。野生型SpCas9は、NHEJおよびHRの両方を通して修復され得る部位特異的DSBを媒介し得る。さらに、SpCas9のRuvC I触媒ドメイン中のアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)をエンジニアリングしてヌクレアーゼをニッカーゼに変換し(SpCas9n;
図5Aに説明)(例えば、Sapranausaks et al.,2011,Cucleic Acids Research,39:9275;Gasiunas et al.,2012,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,109:E2579参照)、その結果、ニック形成されたゲノムDNAが高フィデリティ相同性組換え修復(HDR)を受ける。Surveyorアッセイにより、SpCas9nはEMX1プロトスペーサー標的におけるインデルを生成しないことを確認した。
図5Bに説明されるとおり、EMX1ターゲティングキメラcrRNAとSpCas9との同時発現は標的部位中のインデルを生じさせた一方、SpCas9nとの同時発現は生じさせなかった(n=3)。さらに、327個のアンプリコンのシーケンシングは、SpCas9nにより誘導されるいかなるインデルも検出しなかった。同一の遺伝子座を選択し、HEK293FT細胞をEMX1をターゲティングするキメラRNA、hSpCas9またはhSpCas9n、およびプロトスペーサー付近に制限部位のペア(HindIIIおよびNheI)を導入するためのHRテンプレートにより同時形質移入することによりCRISPR媒介HRを試験した。
図5Cは、HR方針の模式的説明を、組換え場所の相対局在およびプライマーアニーリング配列(矢印)とともに提供する。SpCas9およびSpCas9nは、実際、EMX1遺伝子中へのHRテンプレートのインテグレーションを触媒した。標的領域のPCR増幅とそれに続くHindIIIによる制限消化により、予測断片サイズ(
図5Dに示される制限断片長多型ゲル分析中の矢印)に対応する開裂産物が明らかになり、SpCas9およびSpCas9nは類似レベルのHR効率を媒介した。本出願人らは、ゲノムアンプリコンのサンガーシーケンシングを使用してHRをさらに確認した(
図5E)。これらの結果は、哺乳動物ゲノム中のターゲティングされる遺伝子挿入を促進するためのCRISPRの有用性を実証する。野生型SpCas9の14bp(スペーサーからの12bpおよびPAMからの2bp)の標的特異性を考慮すると、ニッカーゼの利用可能性は、一本鎖分解物がエラープローンNHEJ経路のための基質でないため、オフターゲット改変の可能性を顕著に低減させ得る。
【0160】
アレイスペーサーを有するCRISPR遺伝子座の天然アーキテクチャーを模倣する発現構築物(
図2A)を構築して多重化配列ターゲティングの可能性を試験した。EMX1およびPVALBターゲティングスペーサーのペアをコードする単一のCRISPRアレイを使用して、両方の遺伝子座における効率的な開裂が検出された(
図4F、crRNAアレイの模式的設計および開裂の効率的な媒介を示すSurveyorブロットの両方を示す)。119bpにより間隔が空いているEMX1内の2つの標的に対するスペーサーを使用する同時DSBを通したより大きいゲノム領域のターゲティングされる欠失も試験し、1.6%の欠失効力(182個のアンプリコンのうち3つ;
図5G)が検出された。このことは、CRISPR系が単一ゲノム内の多重化編集を媒介し得ることを実証する。
【0161】
実施例2:CRISPR系改変および代替例
配列特異的DNA開裂をプログラミングするためにRNAを使用する技能は、種々の研究および産業用途のための新たなクラスのゲノムエンジニアリングツールを定義する。CRISPR系のいくつかの態様は、CRISPRターゲティングの効率および多用途性を増加させるようにさらに改善することができる。最適なCas9活性は、哺乳動物核中に存在するものよりも高いレベルにおけるフリーMg
2+の利用可能性に依存し得(例えば、Jinek et al.,2012,Science,337:816参照)、プロトスペーサーのすぐ下流のNGGモチーフについての優先性は、ヒトゲノム中で平均12bpごとでターゲティング能を制限する。これらの拘束の一部は、微生物メタゲノムにわたるCRISPR遺伝子座の多様性を利用することにより克服することができる(例えば、Makarova et al.,2011,Nat Rev Microbiol,9:467参照)。他のCRISPR遺伝子座を、実施例1に記載のものと同様の方法により哺乳動物細胞環境中に移植することができる。それぞれの標的部位における改変効率をRNA二次構造の下方に示す。この構造を生成するアルゴリズムは、それぞれの塩基を予測二次構造を仮定するその確率に従って着色する。RNAガイドスペーサー1および2は、それぞれ14%および6.4%を誘導した。これらの2つのプロトスペーサー部位における生物学的複製物にわたる開裂活性の統計的分析も
図7に提供する。
【0162】
実施例3:試料標的配列選択アルゴリズム
規定のCRISPR酵素についての所望のガイド配列長およびCRISPRモチーフ配列(PAM)に基づきインプットDNA配列の両方の鎖上の候補CRISPR標的配列を同定するためのソフトウェアプログラムを設計する。例えば、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)からのCas9についての標的部位は、PAM配列NGGを用いて、インプット配列およびインプットの逆相補鎖の両方の上の5’−N
x−NGG−3’を探索することにより同定することができる。同様に、S.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR1のCas9についての標的部位は、PAM配列NNAGAAWを用いて、インプット配列およびインプットの逆相補鎖の両方の上の5’−N
x−NNAGAAW−3’を探索することにより同定することができる。同様に、S.サーモフィラス(S.thermophilus)CRISPR3のCas9についての標的部位は、PAM配列NGGNGを用いて、インプット配列およびインプットの逆相補鎖の両方の上の5’−N
x−NGGNG−3’を探索することにより同定することができる。N
x中の値「x」は、プログラムにより固定し、または使用者により規定することができ、例えば、20である。
【0163】
DNA標的部位のゲノム中の複数の発生は、非特異的ゲノム編集をもたらし得るため、全ての潜在的な部位を同定した後、プログラムは配列が関連参照ゲノム中で出現する回数に基づき配列をフィルタリング除去する。配列特異性が「シード」配列、例えば、PAM配列自体を含め、PAM配列から5’側の11〜12bpにより決定されるそれらのCRISPR酵素について、フィルタリングステップはシード配列に基づき得る。したがって、追加のゲノム遺伝子座における編集を回避するため、結果を関連ゲノム中のシード:PAM配列の発生数に基づきフィルタリングする。使用者に、シード配列の長さを選択させることができる。使用者に、フィルタ通過の目的のためにゲノム中のシード:PAM配列の発生数を規定させることもできる。デフォルトは、ユニーク配列をスクリーニングすることである。フィルトレーションレベルは、シード配列の長さおよびゲノム中の配列の発生数の両方を変えることにより変更する。プログラムは、さらにまたは代替的に、同定された標的配列の逆相補鎖を提供することにより、報告された標的配列に相補的なガイド配列の配列を提供し得る。
【0164】
配列選択を最適化する方法およびアルゴリズムのさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願番号TBA(Broad参照番号BI−2012/084 44790.11.2022)に見出すことができる。
【0165】
実施例4:複数のキメラcrRNA−tracrRNAハイブリッドの評価
本実施例は、異なる長さの野生型tracrRNA配列を取り込むtracr配列を有するキメラRNA(chiRNA;ガイド配列、tracrメイト配列、およびtracr配列を単一転写物中で含む)について得られた結果を記載する。
図18aは、キメラRNAおよびCas9のためのバイシストロニック発現ベクターの模式図を説明する。Cas9はCBhプロモーターによりドライブされ、キメラRNAはU6プロモーターによりドライブされる。キメラガイドRNAは、からなる。示される種々の位置においてトランケートされたtracr配列(下方の鎖の最初の「U」から転写物の末端に及ぶ)に結合している20bpのガイド配列(N)からなる。ガイドおよびtracr配列は、tracrメイト配列GUUUUAGAGCUAと、それに続くループ配列GAAAにより離隔している。ヒト遺伝子座EMX1およびPVALB遺伝子座におけるCas9媒介インデルについてのSURVEYORアッセイの結果を、それぞれ
図18bおよび18cに説明する。矢印は、予測SURVEYOR断片を示す。chiRNAをそれらの「+n」表記により示し、crRNAは、ガイドおよびtracr配列が別個の転写物として発現されるハイブリッドRNAを指す。トリプリケートで実施されたこれらの結果の定量を、
図11aおよび11bにヒストグラムにより示し、それぞれ
図10bおよび10cに対応する(「N.D.」は、インデルが検出されなかったことを示す)。プロトスペーサーIDおよびそれらの対応するゲノム標的、プロトスペーサー配列、PAM配列、および鎖局在を表Dに提供する。ガイド配列は、ハイブリッド系における別個の転写物の場合、プロトスペーサー配列全体に相補的であるように、またはキメラRNAの場合、下線部にのみ相補的であるように設計した。
【0166】
【表17】
【0167】
細胞培養および形質移入
ヒト胚腎臓(HEK)細胞系293FT(Life Technologies)を、10%のウシ胎仔血清(HyClone)、2mMのGlutaMAX(Life Technologies)、100U/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンが補給されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で37℃において5%のCO
2インキュベーションで維持した。293FT細胞を24ウェルプレート(Corning)上に、形質移入24時間前に1ウェル当たり150,000個の細胞の密度において播種した。Lipofectamine2000(Life Technologies)を製造業者の推奨プロトコルに従って使用して細胞を形質移入した。24ウェルプレートのそれぞれのウェルについて、合計500ngのプラスミドを使用した。
【0168】
ゲノム改変についてのSURVEYORアッセイ
293FT細胞を上記プラスミドDNAにより形質移入した。細胞を37℃において形質移入後72時間インキュベートしてからゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAは、QuickExtract DNA Extraction Solution(Epicentre)を製造業者のプロトコルに従って使用して抽出した。手短に述べると、ペレット化細胞をQuickExtract溶液中で再懸濁させ、65℃において15分間および98℃において10分間インキュベートした。それぞれの遺伝子についてのCRISPR標的部位をフランキングするゲノム領域を、PCR増幅し(表Eに列記のプライマー)、QiaQuick Spin Column(Qiagen)を製造業者のプロトコルに従って使用して産物を精製した。合計400ngの精製PCR産物を2μlの10×Taq DNA Polymerase PCR緩衝液(Enzymatics)と混合し、超純水で20μlの最終容量とし、リアニーリングプロセスに供してヘテロ二本鎖形成を可能とした:95℃において10分間、−2℃/秒における傾斜で95℃から85℃、−0.25℃/秒における85℃から25℃、および25℃において1分間維持。リアニーリング後、産物をSURVEYORヌクレアーゼおよびSURVEYORエンハンサーS(Transgenomics)により製造業者の推奨プロトコルに従って処理し、4〜20%のNovex TBEポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)上で分析した。ゲルをSYBR Gold DNA染色(Life Technologies)により30分間染色し、Gel Docゲルイメージングシステム(Bio−rad)によりイメージングした。定量は、相対バンド強度に基づくものであった。
【0169】
【表18】
【0170】
ユニークCRISPR標的部位のコンピュータによる同定
ヒト、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ、ミバエ、および線虫(C.elegans)ゲノム中の化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370Cas9(SpCas9)酵素についてのユニーク標的部位を同定するため、本出願人らは、DNA配列の両方の鎖をスキャンし、考えられる全てのSpCas9標的部位を同定するためのソフトウェアパッケージを開発した。この実施例について、それぞれのSpCas9標的部位を20bp配列と、それに続くNGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列として操作上定義し、本出願人らは、全ての染色体上のこの5’−N
20−NGG−3’定義を満たす全ての配列を同定した。非特異的ゲノム編集を防止するため、全ての潜在的な部位を同定した後、全ての標的部位をそれらが関連参照ゲノム中で出現する回数に基づきフィルタリングした。例えば、PAM配列から5’側の約11〜12bp配列であり得る「シード」配列により付与されるCas9活性の配列特異性を利用するため、5’−NNNNNNNNNN−NGG−3’配列を関連ゲノム中でユニークであると選択した。全てのゲノム配列をUCSCゲノムブラウザからダウンロードした(ヒトゲノムhg19、マウスゲノムmm9、ラットゲノムrn5、ゼブラフィッシュゲノムdanRer7、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)ゲノムdm4および線虫(C.elegans)ゲノムce10)。全探索結果は、UCSCゲノムブラウザ情報を使用して閲覧利用可能である。ヒトゲノム中の一部の標的部位の例示的可視化を
図22に提供する。
【0171】
最初に、ヒトHEK293FT細胞中のEMX1遺伝子座内の3つの部位をターゲティングした。それぞれのchiRNAのゲノム改変効率は、DNA二本鎖切断(DSB)および非相同末端結合(NHEJ)DNA損傷修復経路によるその後続の修復から生じる突然変異を検出するSURVEYORヌクレアーゼアッセイを使用して評価した。chiRNA(+n)と表記される構築物は、野生型tracrRNAの最大+n個のヌクレオチドがキメラRNA構築物中に含まれることを示し、nについては48、54、67、および85の値が使用される。野生型tracrRNAのより長い断片を含有するキメラRNA(chiRNA(+67)およびchiRNA(+85))は、3つ全てのEMX1標的部位におけるDNA開裂を媒介し、特にchiRNA(+85)は、ガイドおよびtracr配列を別個の転写物中で発現する対応するcrRNA/tracrRNAハイブリッドよりも顕著に高いレベルのDNA開裂を実証した(
図10bおよび10a)。ハイブリッド系(別個の転写物として発現されるガイド配列およびtracr配列)を検出可能な開裂を生じなかったPVALB遺伝子座中の2つの部位も、chiRNAを使用してターゲティングした。chiRNA(+67)およびchiRNA(+85)は、2つのPVALBプロトスペーサーにおける顕著な開裂を媒介し得た(
図10cおよび10b)。
【0172】
EMX1およびPVALB遺伝子座中の5つ全ての標的について、tracr配列長さの増加に伴うゲノム改変効率の一貫した増加が観察された。いかなる理論によっても拘束されるものではないが、tracrRNAの3’末端により形成される二次構造は、CRISPR複合体形成の比率の向上における役割を担い得る。本実施例において使用されるキメラRNAのそれぞれについての予測二次構造の説明を、
図21に提供する。二次構造は、最小自由エネルギーおよび分配関数アルゴリズムを使用するRNAfold(http://rna.tbi.univie.ac.at/cgi−bin/RNAfold.cgi)を使用して予測した。それぞれの塩基についての疑似カラー(グレースケールで再現)は、対形成の確率を示す。より長いtracr配列を有するchiRNAは、天然CRISPRcrRNA/tracrRNAハイブリッドにより開裂されない標的を開裂し得たため、キメラRNAをCas9上にその天然ハイブリッド相当物よりも効率的にロードすることができることが考えられる。真核細胞および生物中の部位特異的ゲノム編集のためのCas9の適用を促進するため、化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9について予測される全てのユニーク標的部位をヒト、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ、線虫(C.elegans)、およびキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)ゲノムにおいてコンピュータにより同定した。キメラRNAは、他の微生物からのCas9酵素について設計してCRISPR RNAプログラマブルヌクレアーゼの標的スペースを拡大することができる。
【0173】
図11および21は、最大+85ヌクレオチドの野生型tracrRNA配列、および核局在化配列を有するSpCas9を含むキメラRNAの発現のための例示的なバイシストロニック発現ベクターを説明する。SpCas9は、CBhプロモーターから発現され、bGHポリAシグナル(bGHpA)により終結される。模式図の直下に説明される拡大配列は、ガイド配列挿入部位を包囲する領域に対応し、5’から3’でU6プロモーターの3’部分(最初の陰影領域)、BbsI開裂部位(矢印)、部分ダイレクトリピート(tracrメイト配列GTTTTAGAGCTA、下線付き)、ループ配列GAAA、および+85tracr配列(ループ配列後の下線付き配列)を含む。例示的なガイド配列インサートを、ガイド配列挿入部位の下方に説明し、選択される標的についてのガイド配列のヌクレオチドを「N」により表す。
【0174】
上記実施例に記載の配列は、以下のとおりである(ポリヌクレオチド配列は、5’から3’である)。
【0175】
U6−短鎖tracrRNA(化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)SF370):
【化2】
【0176】
U6−長鎖tracrRNA(化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)SF370):
【化3】
【0177】
U6−DR−BbsI骨格−DR(化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)SF370):
【化4】
【0178】
U6−キメラRNA−BbsI骨格(化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)SF370)
【化5】
【0179】
NLS−SpCas9−EGFP:
【化6】
【0180】
SpCas9−EGFP−NLS:
【化7】
【0181】
NLS−SpCas9−EGFP−NLS:
【化8】
【0182】
NLS−SpCas9−NLS:
【化9】
【0183】
NLS−mCherry−SpRNアーゼ3:
【化10】
【0184】
SpRNアーゼ3−mCherry−NLS:
【化11】
【0185】
NLS−SpCas9n−NLS(D10Aニッカーゼ突然変異は小文字である):
【化12】
【0186】
hEMX1−HRテンプレート−HindII−NheI:
【化13】
【化14】
【0187】
NLS−StCsn1−NLS:
【化15】
【0188】
U6−St_tracrRNA(7〜97):
【化16】
【0189】
U6−DR−スペーサー−DR(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370)
【化17】
【0190】
+48tracrRNAを含有するキメラRNA(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370)
【化18】
【0191】
+54tracrRNAを含有するキメラRNA(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370)
【化19】
【0192】
+67tracrRNAを含有するキメラRNA(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370)
【化20】
【0193】
+85tracrRNAを含有するキメラRNA(化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)SF370)
【化21】
【0194】
CBh−NLS−SpCas9−NLS
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【0195】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化26】
【0196】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化27】
【0197】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化28】
【0198】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化29】
【0199】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化30】
【0200】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化31】
【0201】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化32】
【0202】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化33】
【0203】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR1Cas9のための例示的キメラRNA(NNAGAAWのPAMの場合)
【化34】
【0204】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR3Cas9のための例示的キメラRNA(NGGNGのPAMの場合)
【化35】
【0205】
S.サーモフィラス(S.thermophilus)LMD−9CRISPR3遺伝子座からのCas9のコドン最適化バージョン(5’および3’末端の両方においてNLSを有する)
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0206】
実施例5:化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9(SpCas9と称される)についてのガイドRNAの最適化
本出願人らは、tracrRNAおよびダイレクトリピート配列を突然変異させ、またはキメラガイドRNAを突然変異させて細胞中のRNAを向上させた。
【0207】
最適化は、pol3プロモーターによる早期転写終結をもたらし得るtracrRNAおよびガイドRNA中にチミンのストレッチ(T)が存在した観察に基づく。したがって、本出願人らは、以下の最適化配列を生成した。最適化tracrRNAおよび対応する最適化ダイレクトリピートをペアで表す。
【0208】
最適化tracrRNA1(下線は突然変異):
【化40】
【0209】
最適化ダイレクトリピート1(下線は突然変異):
【化41】
【0210】
最適化tracrRNA2(下線は突然変異):
【化42】
【0211】
最適化ダイレクトリピート2(下線は突然変異):
【化43】
【0212】
本出願人らは、真核細胞中の最適な活性のためにキメラガイドRNAも最適化した。
【0213】
元のガイドRNA:
【化44】
【0214】
最適化キメラガイドRNA配列1:
【化45】
【0215】
最適化キメラガイドRNA配列2:
【化46】
【0216】
最適化キメラガイドRNA配列3:
【化47】
【0217】
本出願人らは、最適化キメラガイドRNAが
図3に示されるとおり、より良好に機能することを示した。本実験は、293FT細胞をCas9およびU6ガイドRNA DNAカセットにより同時形質移入して上記4つのRNA形態の1つを発現させることにより実施した。ガイドRNAの標的は、ヒトEmx1遺伝子座:「GTCACCTCCAATGACTAGGG」中の同一標的部位である。
【0218】
実施例6:ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)LMD−9 CRISPR1 Cas9(St1Cas9と称される)の最適化
本出願人らは、
図12に示されるガイドキメラRNAを設計した。
【0219】
St1Cas9ガイドRNAは、ポリチミンのストレッチ(T)を分解することによりSpCas9ガイドRNAに関して同一タイプの最適化を受け得る。
【0220】
実施例7:インビボ用途のためのCas9系の改善
本出願人らは、小分子量を有するCas9についてメタゲノム検索を実施した。ほとんどのCas9ホモログはかなり大きい。例えば、SpCas9は、約1368aa長であり、送達のためのウイルスベクター中に容易にパッケージングされるには大きすぎる。配列の一部は誤ってアノテートされており、したがって、それぞれの長さについての正確な頻度は、必ずしも的確であるとは限らない。それにもかかわらず、これは、Cas9タンパク質の分布における徴候を提供し、より短いCas9ホモログが存在することを示唆する。
【0221】
計算分析を通して、本出願人らは、細菌株カンピロバクター属(Campylobacter)において、1000未満のアミノ酸を有する2つのCas9タンパク質が存在することを見出した。カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)からの1つのCas9についての配列を以下に提示する。この長さにおいて、CjCas9をAAV、レンチウイルス、アデノウイルス、および初代細胞中へのおよび動物モデルにおけるインビボでの堅牢な送達のための他のウイルスベクター中に容易にパッケージングすることができる。
【0222】
>カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)Cas9(CjCas9)
【化48】
【0223】
このCjCas9のための推定tracrRNAエレメントは、以下である:
【化49】
【0224】
ダイレクトリピート配列は、以下である:
【化50】
【0225】
tracrRNAおよびダイレクトリピートの同時フォールド構造を
図6に提供する。
【0226】
CjCas9のためのキメラガイドRNAの一例は、以下である:
【化51】
【0227】
本出願人らはまた、インビトロ法を使用してCas9ガイドRNAを最適化した。
図18は、インビトロでのSt1Cas9キメラガイドRNA最適化からのデータを示す。
【0228】
本発明の好ましい実施形態を本明細書において示し、記載したが、そのような実施形態が例として提供されるにすぎないことは当業者に明らかである。当業者は目下、多数のバリエーション、変更、および置換を本発明から逸脱せずに行う。本明細書に記載の本発明の実施形態の種々の代替例を本発明の実施において用いることができることを理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、それらの特許請求の範囲の範囲内の方法および構造ならびにそれらの均等物は、特許請求の範囲により包含されるものとする。
【0229】
実施例8:Sa sgRNA最適化
本出願人らは、最大開裂効率を有する最適なトランケートアーキテクチャーのためのSaCas9のための5つのsgRNAバリアントを設計した。さらに、天然ダイレクトリピート:tracr二本鎖系をsgRNAと並行して試験した。示される長さを有するガイドをSaCas9と同時形質移入し、HEK293FT細胞中で活性について試験した。合計100ngのsgRNA U6−PCRアンプリコン(または50ngのダイレクトリピートおよび50ngのtracrRNA)および400ngのSaCas9プラスミドを200,000個のHepa1−6マウス肝細胞中に同時形質移入し、SURVEYOR分析のために形質移入から72時間後にDNAを回収した。結果を
図23に示す。
【0230】
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【0231】
本発明の好ましい実施形態を本明細書において示し、記載したが、そのような実施形態が例として提供されるにすぎないことは当業者に明らかである。当業者は目下、多数のバリエーション、変更、および置換を本発明から逸脱せずに行う。本明細書に記載の本発明の実施形態の種々の代替例を本発明の実施において用いることができることが理解されるべきである。