特許第6960979号(P6960979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960979
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】駐車支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20211025BHJP
   B60W 50/035 20120101ALI20211025BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20211025BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20211025BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B60W30/06
   B60W50/035
   B60W50/04
   B60W50/10
   G08G1/16 C
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-225930(P2019-225930)
(22)【出願日】2019年12月13日
(65)【公開番号】特開2021-94930(P2021-94930A)
(43)【公開日】2021年6月24日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 悠記
(72)【発明者】
【氏名】中田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】照田 八州志
(72)【発明者】
【氏名】山中 浩
(72)【発明者】
【氏名】辻野 美樹
【審査官】 平井 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−155992(JP,A)
【文献】 特開2012−140995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進装置、ブレーキ装置及びステアリング装置を含む車両の駐車支援システムであって、
前記車両を現在位置から目標位置に自律的に移動させる自動移動処理を実施するべく前記車両を制御する制御装置と、
前記車両の周囲に存在する障害物を検出する外界センサとを備え、
前記推進装置は変速機を含み、
前記車両は前記変速機を操作するべく運転者によって操作可能なシフト装置を含み、
前記ブレーキ装置はパーキングブレーキ装置を含み、
前記制御装置は、前記自動移動処理における前記目標位置への移動途中に前記車両を停止させ、その後、前記車両の移動の再開を許容せずに前記自動移動処理を中止する場合において、パーキングブレーキ作動条件が成立した場合は、前記シフト装置のシフト位置をPに切り替えるとともに、前記パーキングブレーキ装置を作動させるように構成され、
前記パーキングブレーキ作動条件が成立する場合は、前記自動移動処理の開始から所定の時間が経過しても前記自動移動処理が終了しないため前記制御装置が前記車両を停止させた場合と、前記自動移動処理の実行中に前記駐車支援システムに失陥が発生して前記制御装置が前記車両を停止させた場合との少なくとも一方を含み、
前記制御装置は、前記自動移動処理における前記目標位置への移動途中に前記車両を停止させ、その後、前記車両の移動の再開を許容せずに前記自動移動処理を中止する場合において、パーキングブレーキ非作動条件が成立した場合は、前記シフト装置の前記シフト位置をPに切り替えるが、前記パーキングブレーキ装置を作動させないように構成され、
前記パーキングブレーキ非作動条件が成立する場合は、(i)前記運転者が前記シフト装置を操作したことに起因して前記制御装置が前記車両を停止させた場合、(ii)前記車両を停止させるべき事象が発生してから前記車両が停止するまでの間に前記運転者が前記シフト装置を操作した場合、(iii)前記車両が停止した時点で前記シフト装置の前記シフト位置がNである場合、(iV)前記外界センサが前記車両に衝突するおそれのある前記障害物を検出したことに起因して前記制御装置が前記車両を停止させ、前記障害物の検出又は前記車両の停止から所定の時間以内に前記障害物が除去されない場合、(v)前記車両が車両挙動安定化制御システムを備え、前記車両挙動安定化制御システムが作動したことに起因して前記制御装置が前記車両を停止させた場合、及び(vi)前記駐車支援システムが一時作動不能な場合の少なくとも1つを含むことを特徴とする駐車支援システム。
【請求項2】
前記駐車支援システムは、前記自動移動処理の終了時に前記制御装置によって前記シフト位置がPに切り替えられた場合に、前記パーキングブレーキ装置を作動させるか否かのパーキングブレーキ設定を前記運転者があらかじめ設定できるように構成され、
前記制御装置は、前記パーキングブレーキ作動条件が成立した場合の制御を前記パーキングブレーキ設定による制御よりも優先させ、かつ、前記パーキングブレーキ非作動条件が成立した場合の制御を前記パーキングブレーキ設定による制御よりも優先させるように構成されたことを特徴とする請求項に記載の駐車支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を現在位置から駐車位置に移動させ、また、駐車位置からその近傍の位置まで移動させる駐車支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動駐車処理の終了時に、シフトレバーのシフト位置をP(パーキング)に切り替えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−120403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動駐車処理を軌道(移動経路)の途中で中止する場合、運転者の意図に反して車両が走行すること等がないように、駐車支援システムから運転者への運転権限の委譲が安全に行われることが望まれる。一方、運転権限を委譲された運転者がスムーズに運転を実施できる利便性も求められている。
【0005】
このような状況に鑑み、本発明は、車両の出庫及び入庫に関する自動移動処理において、自動移動処理が中止された場合の安全性を向上させることができる駐車支援システムを提供することを目的とする。また、本発明のある実施形態は、車両の出庫及び入庫に関する自動移動処理において、自動移動処理が中止された場合に安全性と運転者の利便性を両立させることができる駐車支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある実施形態は、推進装置(4)、ブレーキ装置(5)及びステアリング装置(6)を含む車両の駐車支援システム(1)であって、前記車両を現在位置から目標位置に自律的に移動させる自動移動処理を実施するべく前記車両を制御する制御装置(15)と、前記車両の周囲に存在する障害物を検出する外界センサ(7)とを備え、前記推進装置は変速機(16)を含み、前記車両は前記変速機を操作するべく運転者によって操作可能なシフト装置(25)を含み、前記ブレーキ装置はパーキングブレーキ装置(53)を含み、前記制御装置は、前記自動移動処理における前記目標位置への移動途中に前記車両を停止させ、その後、前記車両の移動の再開を許容せずに前記自動移動処理を中止する場合において、パーキングブレーキ作動条件が成立した場合は、前記シフト装置のシフト位置をPに切り替えるとともに、前記パーキングブレーキ装置を作動させるように構成され、前記パーキングブレーキ作動条件が成立する場合は、前記自動移動処理の開始から所定の時間が経過しても前記自動移動処理が終了しないため前記制御装置が前記車両を停止させた場合と、前記自動移動処理の実行中に前記駐車支援システムに失陥が発生して前記制御装置が前記車両を停止させた場合との少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、タイムアウトやシステム失陥のように、運転者が車両の停止の原因を把握して次の行動を決定するために多少の時間が必要だと想定される場合や、油圧ブレーキである常用ブレーキの制動力が低下すると想定される場合に、駐車支援システムは、シフト位置をPに切り替えるとともにパーキングブレーキ装置を作動させるため、車両が2重に固定されて、運転者の意図に反して車両が発進することが防止され、安全性が向上する。
【0008】
本発明のある実施形態は、上記構成において、前記制御装置は、前記自動移動処理における前記目標位置への移動途中に前記車両を停止させ、その後、前記車両の移動の再開を許容せずに前記自動移動処理を中止する場合において、パーキングブレーキ非作動条件が成立した場合は、前記シフト装置の前記シフト位置をPに切り替えるが、前記パーキングブレーキ装置を作動させないように構成され、前記パーキングブレーキ非作動条件が成立する場合は、(i)前記運転者が前記シフト装置を操作したことに起因して前記制御装置が前記車両を停止させた場合、(ii)前記車両を停止させるべき事象が発生してから前記車両が停止するまでの間に前記運転者が前記シフト装置を操作した場合、(iii)前記車両が停止した時点で前記シフト装置の前記シフト位置がNである場合、(iV)前記外界センサが前記車両に衝突するおそれのある前記障害物を検出したことに起因して前記制御装置が前記車両を停止させ、前記障害物の検出又は前記車両の停止から所定の時間以内に前記障害物が除去されない場合、(v)前記車両が車両挙動安定化制御システムを備え、前記車両挙動安定化制御システムが作動したことに起因して前記制御装置が前記車両を停止させた場合、及び(vi)前記駐車支援システムが一時作動不能な場合の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、パーキングブレーキ非作動条件が成立する場合は、シフト装置のシフト位置はPになるが、パーキングブレーキ装置は作動しないため、安全性と運転者の利便性が両立する。
【0010】
本発明のある実施形態は、上記構成において、前記駐車支援システムは、前記自動移動処理の終了時に前記制御装置によって前記シフト位置がPに切り替えられた場合に、前記パーキングブレーキ装置を作動させるか否かのパーキングブレーキ設定を前記運転者があらかじめ設定できるように構成され、前記制御装置は、前記パーキングブレーキ作動条件が成立した場合の制御を前記パーキングブレーキ設定による制御よりも優先させ、かつ、前記パーキングブレーキ非作動条件が成立した場合の制御を前記パーキングブレーキ設定による制御よりも優先させるように構成されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、自動移動処理の中止時に、原則として運転者の設定に基づいてパーキングブレーキ装置の作動・非作動が決まるが、例外として、安全性が重視されるパーキングブレーキ作動条件が成立する場合と、利便性が重視されるパーキングブレーキ非作動条件が成立する場合とでは、これらの条件の成立による制御が優先されるため、安全性と運転者の利便性が両立する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の出庫及び入庫に関する自動移動処理において、自動移動処理が中止された場合の安全性を向上させる駐車支援システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る駐車支援システムが搭載される車両の機能構成図
図2】実施形態に係る駐車支援システムの自動入庫処理のフローチャート
図3】実施形態に係る駐車支援システムの(A)取得処理中、(B)駆動処理中、及び(C)車両の駐車位置への移動が完了したときのタッチパネルの画面表示を示す図
図4】実施形態に係る駐車支援システムの自動駐車処理のフローチャート
図5】実施形態に係る駐車支援システムを搭載した車両の自動駐車時の軌道を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
駐車支援システム1は車両を自律走行させる車両制御システム2を備えた自動車等の車両に搭載される。
【0016】
図1に示すように、車両制御システム2は、推進装置4、ブレーキ装置5、ステアリング装置6、外界センサ7、車両センサ8、ナビゲーション装置10、運転操作子11、運転操作センサ12、状態検出センサ13、HMI14、及び制御装置15を有している。車両制御システム2の各構成は、CAN(Controller Area Network)等の通信手段によって信号伝達可能に互いに接続されている。
【0017】
推進装置4は車両に駆動力を付与する装置であり、例えば動力源及び変速機を含む。動力源はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関及び電動機の少なくとも一方を有する。本実施形態では、推進装置4は自動変速機16と、自動変速機16のシフトポジション(シフト位置)を変更するシフトアクチュエータ17とを含む。ブレーキ装置5は車両に制動力を付与する装置であり、例えばブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダとを含む。ブレーキ装置5はワイヤケーブルによって車輪の回転を規制する電動のパーキングブレーキ装置を含んでもよい。ステアリング装置6は車輪の舵角を変えるための装置であり、例えば車輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータとを有する。推進装置4、ブレーキ装置5、及びステアリング装置6は、制御装置15によって制御される。
【0018】
外界センサ7は車両の周辺からの電磁波や音波等を捉えて、車外の物体等を検出し、車両の周辺情報を取得する装置(外界取得装置)である。外界センサ7はソナー18及び車外カメラ19を含んでいる。外界センサ7はミリ波レーダやレーザライダを含んでいてもよい。外界センサ7は検出結果を制御装置15に出力する。
【0019】
ソナー18はいわゆる超音波センサであり、超音波を車両の周囲に発射し、その反射波を捉えることにより物体の位置(距離及び方向)を検出する。ソナー18は車両の後部及び前部にそれぞれ複数設けられている。本実施形態では、ソナー18はリアバンパに左右2対、フロントバンパに左右2対、車両の左右側面前端及び後端にそれぞれ1対ずつ、合計6対設けられている。リアバンパに設けられたソナー18は主に車両の後方にある物体の位置を検出し、フロントバンパに設けられたソナー18は主に車両の前方にある物体の位置を検出する。車両の左右側面前端に設けられたソナー18はそれぞれ車両前端の左右外方にある物体の位置を検出し、車両の左右側面後端に設けられたソナー18はそれぞれ車両後端の左右外方にある物体の位置を検出する。
【0020】
車外カメラ19は車両の周囲を撮像する装置であり、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。車外カメラ19は車両の前方を撮像する前方カメラと後方を撮像する後方カメラとを含んでいる。車外カメラ19は車両のドアミラー設置場所近傍に設けられ、左右側部を撮像する左右1対の側方カメラを含んでいるとよい。
【0021】
車両センサ8は、車両の速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両の向きを検出する方位センサ等を含む。ヨーレートセンサは、例えばジャイロセンサである。
【0022】
ナビゲーション装置10は車両の現在位置を取得し、目的地への経路案内等を行う装置であり、GPS受信部20、及び地図記憶部21を有する。GPS受信部20は人工衛星(測位衛星)から受信した信号に基づいて車両の位置(緯度や経度)を特定する。地図記憶部21は、フラッシュメモリやハードディスク等の公知の記憶装置によって構成され、地図情報を記憶している。
【0023】
運転操作子11は車室内に設けられ、車両を制御するためにユーザが行う入力操作を受け付ける。運転操作子11は、ステアリングホイール22、アクセルペダル23、ブレーキペダル24(制動操作子)、及び、シフトレバー25を含む。
【0024】
運転操作センサ12は、対応する運転操作子11の操作量を検出する。運転操作センサ12は、ステアリングホイール22の舵角センサ26、及び、ブレーキペダル24の踏込量を検出するブレーキセンサ27、及び、アクセルペダル23の踏込量を検出するアクセルセンサ28を含む。運転操作センサ12は検出した操作量をそれぞれ制御装置15に出力する。
【0025】
状態検出センサ13は乗員の操作による車両の状態変化を検出するためのセンサである。状態検出センサ13が検出する乗員の操作には、降車意志に対応する乗員の操作、及び、駐車動作中の車両周辺監視を放棄することに対応する乗員の操作を含む。状態検出センサ13は、降車意志に対応する乗員の操作を検出するためのセンサとして、車両のドアの開閉を検出するドア開閉センサ29と、シートベルトの装着状態を検出するシートベルトセンサ30とを含む。状態検出センサ13は、駐車動作中の車両周辺監視を放棄することに対応する乗員の操作を検出するためのセンサとして、ドアミラーの位置を検出するドアミラー位置センサ31を含む。状態検出センサ13は検出した車両の状態変化を示す信号をそれぞれ制御装置15に出力する。
【0026】
HMI14は、乗員に対して表示や音声によって各種情報を通知するとともに、乗員から入力操作を受け付ける出入力装置である。HMI14は、例えば、液晶や有機EL等の表示画面を有し、乗員からの画面への入力操作を受け付けるタッチパネル32と、ブザーやスピーカ等の音発生装置33と、駐車メインスイッチ34と、選択操作子35とを含む。駐車メインスイッチ34は乗員から自動入庫や自動出庫等の自動駐車に係る入力操作を受け付ける。駐車メインスイッチ34は乗員から押圧(プッシュ)操作が行われたときにのみオンとなる、いわゆるモーメンタリスイッチである。選択操作子35は乗員から自動入庫や自動出庫等の自動駐車に係る選択操作を受け付ける。選択操作子35は回転式であり、より好ましくは押し込むことで選択可能なセレクトスイッチであるとよい。
【0027】
制御装置15は、CPU、不揮発性メモリ(ROM)、及び、揮発性メモリ(RAM)等を含む電子制御装置(ECU)である。制御装置15はCPUでプログラムに沿った演算処理を実行することで、各種の車両制御を実行する。制御装置15は1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。また、制御装置15の各機能部の少なくとも一部は、LSIやASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0028】
また、制御装置15はプログラムに沿った演算処理を実行することで、車外カメラ19により撮影された画像(映像)の変換処理を行い、車両及びその周辺の平面視に相当する俯瞰画像や、車両及びその進行方向の周辺を上方から見た三次元画像に相当する鳥瞰画像を生成する。制御装置15は、前方カメラ、後方カメラ及び左右の側方カメラの各画像を組み合わせて俯瞰画像を生成し、進行方向を向く前方カメラ又は後方カメラの画像と左右の側方カメラの画像とを組み合わせて鳥瞰画像を生成するとよい。
【0029】
駐車支援システム1は乗員によって選択された所定の目標位置(目標駐車位置、又は目標出庫位置)に車両を自律的に移動させて入庫及び出庫させる、いわゆる自動駐車を行うためのシステムである。
【0030】
駐車支援システム1は、制御装置15、制動操作子としてのブレーキペダル24、運転操作センサ12、及び状態検出センサ13を含む。
【0031】
制御装置15は、推進装置4やブレーキ装置5、ステアリング装置6を制御して、車両に、目標駐車位置に自律的に移動させて入庫させる自律的な入庫動作、及び目標出庫位置に車両を自律的に移動させて出庫させる自律的な出庫動作をそれぞれ実行させることができる。このような制御を行うため、制御装置15は、外界認識部41、自車位置特定部42、行動計画部43、走行制御部44、車両異常検出部45、及び車両状態判定部46を含む。
【0032】
外界認識部41は、外界センサ7の検出結果に基づいて、車両の周辺に存在する。例えば、駐車車両や壁などの障害物を認識し、障害物に関する位置や大きさ等の情報を取得する。また、外界認識部41は車外カメラ19によって取得した画像をパターンマッチング等の公知の画像解析手法に基づいて解析し、輪止めや障害物の有無及びその大きさを取得する。更に、外界認識部41はソナー18からの信号を用いて障害物までの距離を算出し、障害物の位置を取得するとよい。
【0033】
外界認識部41はまた、外界センサ7の検出結果、より具体的には車外カメラ19によって撮像された画像をパターンマッチング等の公知の画像解析手法に基づいて解析し、例えば、道路標示により区画された道路上の車線や、道路や駐車場等の路面に描かれた白線等により区画された駐車枠を取得することができる。
【0034】
自車位置特定部42は、ナビゲーション装置10のGPS受信部20からの信号に基づいて、自車両の位置を検出する。また、自車位置特定部42はGPS受信部20からの信号に加えて、車両センサ8から車速やヨーレートを取得し、いわゆる慣性航法を用いて自車両の位置及び姿勢を特定してもよい。
【0035】
走行制御部44は、行動計画部43からの走行制御の指示に基づいて、推進装置4、ブレーキ装置5、及びステアリング装置6を制御し、車両を走行させる。
【0036】
車両異常検出部45は各種装置やセンサからの信号に基づいて車両の異常を検出する。車両の異常には推進装置4、ブレーキ装置5、及びステアリング装置6を含む車両の駆動に要する装置の故障や、外界センサ7又は車両センサ8、GPS受信部20等の車両の自律的な走行に要する各種センサの故障が含まれる。また、車両の異常にはHMI14の故障が含まれる。
【0037】
本実施形態では、車両異常検出部45は少なくとも、タッチパネル32からの信号に基づいて、タッチパネル32の画面表示における異常を検出することができる。
【0038】
車両状態判定部46は車両に設けられた各種センサからの信号に基づいて車両の状態を取得し、車両が走行を禁止すべき禁止状態にあるかを判定する。車両状態判定部46は、乗員によって車両の自律的な移動を覆そうとする運転操作子11への運転動作(オーバライド操作)が有ったときに、車両の状態が走行を禁止すべき禁止状態にあると判定する。
【0039】
より具体的には、車両状態判定部46はブレーキセンサ27によって取得されたブレーキペダル24の踏込量が所定の閾値(以下、踏込閾値)以上となったときに、オーバライド操作が有ったと判定するとよい。車両状態判定部46はアクセルセンサ28によって取得されたアクセルペダル23の踏込量が所定の閾値以上となったときに、オーバライド操作が有ったと判定してもよい。車両状態判定部46は舵角センサ26によって取得された舵角が変化したときには、オーバライド操作が有ったと判定するとよい。
【0040】
更に、車両状態判定部46は状態検出センサ13の検出結果に基づいて、車両が乗員の降車意志を反映した状態にあるときに、車両が禁止状態にあると判定する。より具体的には、車両状態判定部46は、ドア開閉センサ29においてドアが開かれていることを検出したときには、車両は禁止状態にあると判定する。車両状態判定部46は、シートベルトセンサ30においてシートベルトが解除されていることを検出したときには、車両は禁止状態にあると判定する。
【0041】
また、車両状態判定部46は状態検出センサ13からの信号に基づいて、車両が乗員の周辺監視を行う意志がないことを反映した状態にあるときには、車両が禁止状態にあると判定する。より具体的には、車両状態判定部46は、ドアミラー位置センサ31においてドアミラーが閉じられた状態にあるときには、車両は禁止状態にあると判定する。
【0042】
また、車両状態判定部46は状態検出センサ13からの信号に基づいて、ドアが開かれた状態にあり、且つシートベルトが解除された状態にあると判定したときには、乗員の降車意志がより確実であり、車両が走行を中止すべき状態である中止状態にあると判定する。また、車両状態判定部46は、車両移動中にタッチパネル32に表示された中止ボタンに入力があったときには、車両が走行を中止すべき状態である中止状態にあると判定するとよい。
【0043】
本実施形態では、車室内に設けられた車両用シートには乗員の着座を検出する着座センサが設けられている。車両状態判定部46は、着座センサからの信号に基づいて乗員の着座位置を割り出し、着座位置におけるシートベルトが解除され、且つ、着座位置近傍のドアが開かれた状態にあるときに、車両は中止状態にあると判定する。
【0044】
このように、運転操作センサ12及び状態検出センサ13はそれぞれ、車両の自律的な駐車動作を禁止するべき車両の状態を検知する車両状態検知装置に対応し、車両状態判定部46は運転操作センサ12及び状態検出センサ13の検知結果に基づいて車両の状態を判定する。運転操作センサ12を用いることによって、車両の自律的な移動を覆そうとする乗員のオーバライド操作を容易に検知することができ、乗員の降車動作や、ドアミラーの開閉動作による車両の状態変化を状態検出センサ13によって容易に検知することができる。
【0045】
行動計画部43は、車両が所定の状態にあり、且つHMI14や駐車メインスイッチ34にユーザから自動駐車を希望することに対応する所定の入力があったときに、自動駐車処理を行う。具体的には、行動計画部43は、車両が停止している又は車両が所定の駐車位置候補探索可能車速以下の低速で走行しているときに、対応する所定の入力があった場合に、自動入庫処理を行う。また、行動計画部43は、車両が停止しているときに、対応する所定の入力があったときに、自動出庫処理(縦列駐車出庫処理)を行う。自動駐車処理及び自動出庫処理のうち、行うべき処理の選択は、行動計画部43が車両の状態に基づいて判定してもよく、タッチパネル32、又は選択操作子35を介して乗員により選択されてもよい。自動入庫処理を行う場合には、行動計画部43は、最初に目標駐車位置を設定するための駐車検索画面をタッチパネル32に表示させ、目標駐車位置の設定後、入庫画面をタッチパネル32に表示させる。自動出庫処理を行う場合には、行動計画部43は、目標出庫位置を設定するための出庫検索画面を表示させ、目標出庫位置の設定後、出庫画面をタッチパネル32に表示させる。
【0046】
自動入庫処理について図2を参照して説明を行う。行動計画部43は最初に駐車可能位置の取得を行う取得処理(ステップST1)を行う。より具体的には、車両が停止している場合には、行動計画部43はまず、HMI14のタッチパネル32に乗員に車両を直進させるように指示する通知を表示させる。運転席に着座する乗員(以下、運転者)が車両を直進させている間に、外界認識部41は外界センサ7からの信号に基づいて、障害物の位置及び大きさと、路面に描かれた白線の位置とを取得する。外界認識部41は取得した障害物の位置及び大きさと白線とに基づいて、自車を駐車可能な大きさの利用可能な駐車空間(障害物がない空間)及び白線等により区画される他車両が停まっていない利用可能な空き駐車枠(以下、空き駐車空間と空き駐車枠とを併せて駐車可能位置という)を抽出する。
【0047】
次に、行動計画部43は、車両の現在地から抽出した駐車可能位置に至るまでの車両の軌道を算出する軌道算出処理(ST2)を行う。車両の軌道を算出可能である場合、行動計画部43は駐車可能位置を入庫可能な駐車位置候補に設定し、駐車位置候補をタッチパネル32の画面(駐車検索画面)上に表示させる。障害物の存在により車両の軌道を算出できない場合、行動計画部43は駐車可能位置を駐車位置候補に設定せず、駐車可能位置をタッチパネル32の画面上に表示させない。行動計画部43は、車両の軌道を算出可能な複数の駐車位置候補を設定した場合、これらの駐車位置候補をタッチパネル32に表示させる。
【0048】
次に、行動計画部43は、タッチパネル32に表示した駐車位置候補の中から乗員が駐車させたい目標駐車位置の選択操作を乗員から受け付ける目標駐車位置受付処理(ST3)を行う。より具体的には、行動計画部43は、図3(A)に示す駐車検索画面にて、俯瞰画像及び進行方向の鳥瞰画像を表示させる。行動計画部43は、駐車位置候補を少なくとも1つ取得すると、これらの周辺画像の少なくとも1つに駐車位置候補を示す枠と、枠に対応するアイコン(駐車位置候補であることを示す記号(図3(A)の「P」を参照))とを重ねて表示する。また行動計画部43は、目標駐車位置の選択操作を受け付けるべく、運転者に車両を停止させて駐車位置(目標駐車位置)を設定するように指示する通知をタッチパネル32の駐車検索画面上に表示させる。目標駐車位置の選択操作は、タッチパネル32を介して行われてもよく、選択操作子35を介して行われてもよい。
【0049】
車両が停止し、目標駐車位置が運転者により選択された後、行動計画部43は、タッチパネル32の画面を駐車検索画面から入庫画面に切り替える。入庫画面は、図3(B)に示すように、タッチパネル32の左半分に車両進行方向の正面画像を、右半分に車両及びその周辺を含む俯瞰画像をそれぞれ表示した画面である。このとき、行動計画部43は駐車位置候補から選択された目標駐車位置を示す太線の枠と、枠に対応するアイコン(目標駐車位置であることを示す、駐車位置候補のアイコンとは異なる色で表示された記号)とを俯瞰画像に重ねて表示するとよい。
【0050】
目標駐車位置が設定され、タッチパネル32の画面が入庫画面に切り替わった後、行動計画部43は車両を算出された軌道に沿って走行させる駆動処理(ST4)を行う。このとき、行動計画部43はGPS受信部20によって取得した車両の位置や、車外カメラ19、車両センサ8等の信号に基づいて、車両を算出された軌道に沿って走行するように制御する。このとき、行動計画部43は、推進装置4、ブレーキ装置5、及びステアリング装置6を制御して、車両に前進及び後退を繰り返し行わせる切り返しを実行する。
【0051】
駆動処理中において、行動計画部43は車外カメラ19から車両の進行方向の画像を取得し、タッチパネル32の左半分に表示させるとよい。より具体的には、例えば、図3(B)に示すように、行動計画部43は、車両が後退しているときにはタッチパネル32の左半分に車外カメラ19によって撮像された車両後方の画像を表示させるとよい。行動計画部43が駆動処理を実行している間、タッチパネル32の右半分の俯瞰画像上の自車周辺の周辺画像は車両の移動に合わせて変化する。行動計画部43は車両が駐車位置に到達すると、車両を停止させて、駆動処理を終了する。
【0052】
駆動処理が終了すると、行動計画部43は駐車処理(ST5)を実行する。駐車処理において行動計画部43は最初に、シフトアクチュエータ17を駆動させてシフトポジション(シフト位置、シフトレンジ)を駐車位置(駐車レンジ、パーキング(P)レンジ)にする。その後、行動計画部43は、パーキングブレーキ装置を駆動させ、行動計画部43はタッチパネル32の画面上に駐車が完了したことを示すポップアップ(図3(C)参照)を所定時間表示させる。その後、行動計画部43は、タッチパネル32の画面表示を、ナビゲーション装置10の操作画面や地図画面に切り替えるとよい。
【0053】
また、駐車処理において、行動計画部43は、シフトアクチュエータ17に異常がありシフトポジションを駐車位置に変更できない場合や、パーキングブレーキ装置に異常があり、パーキングブレーキ装置を駆動させることができない場合には、タッチパネル32の画面に異常原因を表示させるとよい。
【0054】
次に、図1図4及び図5を参照して、自動駐車処理の実行中に停車した場合の制御について説明する。なお、現在位置から駐車位置に車両を移動させる自動駐車処理(自動入庫処理)を例に説明するが、駐車位置からその近傍の目標位置まで車両を移動させる処理(自動出庫処理)も同様に処理できる。なお、ブレーキ装置5は、運転者がブレーキペダル24を踏み込むことによって制動力が生じるように作動する常用ブレーキ装置51と、運転者が運転操作子11の1つであるパーキングブレーキレバー52を引くことによって制動力が生じるように作動する電動パーキングブレーキ装置53とを含む(以下、ブレーキ装置5について、制動力が生じるように作動させることを、単に「作動させる」と記す)。制御装置15は、常用ブレーキ装置51及び電動パーキングブレーキ装置53を作動させることができる。
【0055】
現在位置から前進し、切り返し位置で停車し、そこから後退して目標位置に停車する軌道(移動経路)が、行動計画部43よって算出されている(図2のST2参照)。まず、制御装置15の走行制御部44は、軌道に沿って車両を移動させる(ST11)。制御装置15は、車両の移動中に、自動駐車処理を中止させる中止条件が成立して車両が停止したか否かを監視する(ST12)。切り返し位置での停車は予定された停車であり、切り返し位置での停車後、制御装置15は、シフトレバー25のシフト位置をD(ドライブ)からR(リバース)に切り替え、自動駐車処理に基づく車両の移動を続行する。車両が駐車位置に到達すると(ST13のYes)、制御装置15は、車両を停止させて駐車処理(ST14、図2のST5参照)を行って制御を終了する。
【0056】
自動駐車処理における車両の移動中に予定外に停車する場合(ST12のYes)、すなわち、切り返し位置以外で停車した場合がある。例えば、外界センサ7が車両に衝突するおそれのある障害物を検出した場合や、運転者がブレーキ操作を行った場合に、車両は停止する。このように予定外に車両が停止した場合、原則として(ST15のNo)、行動計画部43はシフトレバー25のシフト位置をP(パーキング)に切り替える(ST16)が、例外として、所定のシフト維持条件が成立した場合(ST15のYes)は、行動計画部43はシフトレバー25のシフト位置を維持する。
【0057】
シフト維持条件として、(1)車両が切り返し位置の手前の所定の範囲以外で停止し、かつ運転者によるブレーキペダル24の踏み込みに起因して車両が停止すること、(2)車両を停止させた原因の発生又は車両の停止後から所定の時間内にその原因が除去されたこと、又は(3)運転者によるステアリングホイール22の操作に起因して走行制御部44が車両を停止させることが挙げられる。一方、車両が切り返し位置の手前の所定の範囲内に存在し、かつ運転者によるブレーキ操作子の操作に起因して車両が停止したこと、及び、駐車支援システム1に故障が生じたことに起因して車両が停止したことは、シフト維持条件に含まれず、行動計画部43はシフトレバー25のシフト位置をPに切り替える。
【0058】
制御装置15は、外界センサ7、ナビゲーション装置10及び/又は走行距離計等を含む車両位置検出装置によって検出された情報に基づいて、切り返し位置を含む軌道に対する車両の位置を認識する。切り返し位置の手前から所定の範囲とは、車両が切り返し位置に近づいている段階における切り返し位置から所定の距離(例えば1〜3m)以内の範囲であり、車両が切り返し位置から遠ざかっている場合の車両の位置を含まない。
【0059】
条件(2)は、運転者によるブレーキペダル24の踏み込みに起因して車両が停止し、かつ運転者が所定の時間内にブレーキペダル24の踏み込みを解除し又は緩めた場合と、外界センサ7が衝突予測範囲内に障害物を検出したことにより走行制御部44が車両を停止させ、かつ所定の時間内に障害物が衝突予測範囲の外に移動したと外界センサ7が検出した情報に基づいて行動計画部43が判断した場合とを含む。
【0060】
なお、運転者によるブレーキペダル24の踏み込みに起因して車両が停止した場合とは、制御装置15がブレーキセンサ27からの情報に基づいて運転者によるブレーキ操作(ブレーキに対するオーバライド操作)が行われたと判定して常用ブレーキ装置51を駆動して車両を停止させた場合、又は、ブレーキペダル24の踏み込みが直接に常用ブレーキ装置51を作動させて車両を停止させた場合である。
【0061】
駐車支援システム1では、運転者は、自動駐車処理の実施中に車両が停止して行動計画部43がシフトレバー25のシフト位置をPに切り替えたときに、電動パーキングブレーキ装置53を作動させるか否かを決めるパーキングブレーキ設定(ST20)をあらかじめ設定できる。また、駐車支援システム1では、パーキングブレーキ設定に優先して強制的に電動パーキングブレーキ装置53を作動させるパーキングブレーキ作動条件(ST18)と、パーキングブレーキ設定に優先して強制的に電動パーキングブレーキ装置53を作動させないパーキングブレーキ非作動条件(ST19)とが設けられている。行動計画部43は、シフト位置をPに切り替えた場合は、更に電動パーキングブレーキ装置53を作動させるか否かを判断する(ST18〜ST20)。なお、パーキングブレーキ作動条件及びパーキングブレーキ非作動条件は、シフト維持条件に含まれず、パーキングブレーキ作動条件又はパーキングブレーキ非作動条件が成立する場合、行動計画部43は、シフトレバー25のシフト位置をPに切り替える(ST16)。
【0062】
行動計画部43は、パーキングブレーキ作動条件が成立する場合(ST18のYes)又は、パーキングブレーキ非作動条件が成立せず(ST19のNo)かつパーキングブレーキ設定がオンの場合(ST20のYes)は、パーキングブレーキレバー52を引くとともに電動パーキングブレーキ装置53を作動させる(ST21)。また、パーキングブレーキ非作動条件が成立した場合(ST19のYes)、又は、パーキングブレーキ作動条件が成立せず(ST18のNo)かつパーキングブレーキ設定がオフの場合(ST20のNo)は、電動パーキングブレーキ装置53を作動させない(ST22)。なお、行動計画部43がパーキングブレーキ装置を作動させない場合であっても、運転者がパーキングブレーキレバー52を引いて電動パーキングブレーキ装置53を作動させることは許容される。
【0063】
パーキングブレーキ作動条件が成立する場合として、自動駐車処理の開始から所定の時間(例えば10分)が経過しても自動駐車処理が終了しないため走行制御部44が車両を停止させた場合と、自動駐車処理の実行中に駐車支援システム1に失陥が発生して走行制御部44が車両を停止させた場合とが挙げられる。駐車支援システム1に失陥が発生した場合とは、駐車支援システム1に故障が発生して自動駐車処理を安全に実行できなくなった場合であり、例えば、外界センサ7が故障して駐車支援システム1が障害物を検出できない場合や、タッチパネル32が故障して駐車支援システム1が運転者に伝達するべき情報を伝達できない場合等を含む。
【0064】
パーキングブレーキ非作動条件が成立する場合として、(i)運転者がシフトレバー25を操作したことに起因して走行制御部44が車両を停止させた場合と、(ii)車両を停止させるべき事象が発生してから車両が停止するまでの間に運転者がシフトレバー25を操作した場合と、(iii)車両が停止した時点でシフトレバー25のシフト位置がNである場合と、(iv)外界センサ7が衝突予測範囲内に障害物を発見したことに基づき走行制御部44が車両を停止させ(衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が作動した場合を含む)、障害物の検出又は車両の停止から所定の時間以内に前記障害物が除去されない場合と、(v)車両挙動安定化制御システム(VSA)が作動したことに基づき走行制御部44が車両を停止させた場合と、(vi)駐車支援システム1が一時作動不能な場合とが挙げられる。
【0065】
車両挙動安定化制御システムとは、従来の「車輪のロックを防ぐ」ABS、「車輪の空転を抑制する」TCSに加え、クルマの横滑り(曲がる)を制御し、「走る・曲がる・止まる」の全領域で車両の安定性を確保するためのシステムである。自動駐車処理中に車両挙動安定化制御システムが作動した場合として、例えば、駆動輪が空転した際にトラクションコントロールを実施した場合や、制動時にタイヤがロックした際にアンチロックブレーキが作動した場合等が挙げられる。駐車支援システム1が一時作動不能な場合とは、ブレーキ装置5や外界センサ7等の関連する装置・センサ類において、故障は確定していないものの、動作が継続できず、又は、駐車支援システム1からの作動要求を受け付けられない状況になった場合である。駐車支援システム1が一時作動不能な場合として、例えば、何らかの電源異常によって自動駐車処理中に装置・センサ類が一度シャットダウンして再起動した等の場合が挙げられる。
【0066】
行動計画部43は、シフト位置をPに切り替えた場合、及びシフト維持を維持した場合の何れの場合であっても、シフト位置を出力装置で報知する(ST23)ことが好ましい。具体的には、行動計画部43は、タッチパネル32にシフト位置を表示し、及び/又はスピーカ等の音発生装置33から音声でシフト位置を報知する。なお、行動計画部43は、車両が停止した原因も出力装置に報知させることが好ましい。その後、制御装置15は、運転者がブレーキペダル24を踏み込み常用ブレーキ装置51を作動させたことを契機に自動駐車処理を中止して(ST24)、運転権限を運転者に委譲する。
【0067】
このような処理の効果について説明する。
【0068】
自動駐車処理中に運転者が切り返し位置の手前の所定の範囲内でブレーキ操作を行う場合として、運転者が既に切り返しを行うのに適した位置に車両が到達したと判断した場合や、運転者が障害物を見つけた場合等が想定される。運転権限を委譲された運転者は、前者の場合はそれまでの進行方向とは逆向きに車両を進めようとし、後者の場合は障害物がなくなった後にそれまでの進行方向に向かって更に車両を進めた後に切り返しを行うと考えられる。運転権限を委譲された直後の運転者は、シフトレバー25のシフト位置が自分の進みたい方向に対応した位置にあると思い込むおそれがあり、特に前者の場合において、シフトレバー25のシフト位置がそれまでの進行方向に対応した位置に維持された状態にあると、手動運転開始直後の車両が運転者の意図する方向と逆向きに進むおそれがある。また、停車した位置に関係なく、障害物が検出されて停車し、障害物が移動しないため自動駐車処理が中止されて運転権限が運転者に委譲された場合、運転者は、障害物を避けるためそれまでの進行方向とは逆方向に車両を移動させる可能性が高い。しかし、この場合でも、シフト位置に基づく実際の進行方向と運転者が想定する進行方向とが互いに逆向きになるおそれがある。また、停車後、障害物を避けて車両を駐車位置に移動できる走行経路が算出できた場合は、駐車支援システム1は、新たな走行経路に基づいて自動駐車処理を再開してシフト位置の変更を行うが、自動駐車処理が中止される場合もあり、運転者はシフト位置を把握し難い。そこで、駐車支援システム1は、原則として、シフトレバー25のシフト位置をPに切り替えることにより、運転者に手動運転の開始時にシフトレバー25を操作することを要求し、運転者の意図と逆向きに車両を移動することを防止する。また、駐車支援システム1に故障が発生した場合は、制御装置15は、シフトレバー25のシフト位置をPに切り替え、不用意に車両が発進することを防止して、安全性を高めている。
【0069】
しかし、例外として、シフト位置に基づく実際の進行方向と運転者が想定する進行方向とが互いに一致すると想定される場合は、駐車支援システム1は、シフト位置を維持して運転者の利便性を高めている。シフト維持条件(1)が成立した場合、すなわち、車両が切り返し位置の手前の所定の範囲以外で停止し、かつ運転者によるブレーキペダル24の踏み込みに起因して車両が停止した場合は、車両が切り返し位置から十分に離れているため、車両が切り返し位置に到達したと運転者が判断しているとは推定できず、手動運転に切り替わった直後は、運転者はそれまでの進行方向と同じ向きに車両を動かそうとすると考えられる。従って、シフトレバー25のシフト位置を変更しないことが運転者に利便性を与える。
【0070】
シフト維持条件(2)が成立した場合の一例である、運転者によるブレーキペダル24の踏み込みに起因して車両が停止し、かつ運転者が所定の時間内にブレーキペダル24の踏み込みを解除し又は緩めた場合は、運転者が車両に衝突するおそれのある障害物を発見したが、そのおそれが短時間で解消されたと想定され、運転者はそれまでの進行方向と同じ向きに車両を動かそうとすると考えられる。従って、シフトレバー25のシフト位置を変更しないことが運転者に利便性を与える。また、シフト維持条件(2)が成立した場合の他の例である、外界センサ7が衝突予測範囲内に障害物を検出したことにより走行制御部44が車両を停止させ、かつ行動計画部43が外界センサ7の検出情報に基づいて所定の時間内に障害物が衝突予測範囲の外に移動したと判断した場合も、車両に衝突するおそれのある障害物が短時間で移動したと想定され、運転者はそれまでの進行方向と同じ向きに車両を動かそうとすると考えられる。従って、シフトレバー25のシフト位置を変更しないことが運転者に利便性を与える。
【0071】
シフト維持条件(3)が成立した場合、すなわち、運転者によるステアリングホイール22の操作に起因して走行制御部44が車両を停止させた場合は、ステアリングホイール22の操作は車両の舵角を変更するものなので、運転者に前進と後退とを切り替える意図はないと推定でき、手動運転に切り替わった直後は、運転者はそれまでの進行方向と同じ向きに車両を動かそうとすると考えられる。従って、シフトレバー25のシフト位置を変更しないことが運転者に利便性を与える。
【0072】
パーキングブレーキ作動条件の1つであるシステム失陥の場合は、運転者が車両の停止の原因がシステム失陥であることを把握して次の行動を決定するために、多少の時間が必要であると想定される。そのため、駐車支援システム1は、シフトレバー25のシフト位置をPにするだけでなく、電動パーキングブレーキ装置53を作動させることにより、車両の固定を確実にして安全性を高めている。
【0073】
パーキングブレーキ作動条件の1つである所定時間の経過の場合は、障害物が存在するため駐車位置に車両を移動させることができない場合と、運転者がブレーキペダル24を長時間にわたって踏み続けている場合とが想定される。前者の場合は、運転者が車両の停止の原因を把握して次の行動を決定するために、多少の時間が必要であると想定される。そのため、駐車支援システム1は、シフトレバー25のシフト位置をPにするだけでなく、電動パーキングブレーキ装置53を作動させることにより、車両の固定を確実にして安全性を高めている。後者の場合は、駐車支援システム1がシフトレバー25のシフト位置をPにするだけでなく、電動パーキングブレーキ装置53を作動させることにより、運転者に不測の事態が生じても確実に車両を固定でき、油圧ブレーキである常用ブレーキ装置51の使用の継続に伴う油圧の低下によって常用ブレーキ装置51の制動力が減少しても確実に車両を固定でき、常用ブレーキ装置51を保護することができる。
【0074】
パーキングブレーキ非作動条件が成立する場合は、パーキングブレーキ作動条件が成立した場合に比べて早い時点で、運転者は運転操作を開始することが想定されるが、シフト位置に基づく実際の進行方向と運転者が想定する進行方向とが互いに逆向きとなっているおそれがある。そこで、駐車支援システム1は、運転者にシフトレバー25の操作を要求することにより両方向を一致させるとともに、運転者にパーキングブレーキレバー52の操作を要求しないことにより運転者の利便性の低下を抑制している。
【0075】
パーキングブレーキ作動条件が成立する場合は安全性を重視するべき状態であり、パーキングブレーキ非作動条件が成立する場合は運転者の利便性を重視するべきであるため、パーキングブレーキ作動条件又はパーキングブレーキ非作動条件が成立した時は、運転者によりあらかじめ入力されたパーキングブレーキ設定による制御よりもパーキングブレーキ作動条件又はパーキングブレーキ非作動条件の成立による制御を優先させることにより安全性又は利便性が高まる。
【0076】
また、シフト位置を切り替えた場合でもシフト位置を維持した場合でも、シフトレバー25のシフト位置を出力装置が報知することにより、運転者の利便性が高まる。
【0077】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。シフトレバー25は、レバー以外の形状のシフト装置でもよい。行動計画部43は、シフト装置のシフト位置をPに切り替えることに代えて、シフト位置をN(ニュートラル)に切り替えてもよい。駐車支援システム1は、予定外に停車した場合でも、自動駐車処理を再開可能であれば自動駐車処理を中止せずに再開してもよい。この場合、行動計画部43が、タッチパネル32に中止ボタン及び再開ボタンを表示して、運転者が自動駐車処理を中止するか再開するかを選択できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1:駐車支援装置
7,10:車両位置検出装置(外界センサ,ナビゲーション装置)
15:制御装置
25:シフト装置(シフトレバー)
32,33:出力装置(タッチパネル、音発生装置)
図1
図2
図3
図4
図5