特許第6960987号(P6960987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6960987-複合炭素繊維 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960987
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】複合炭素繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 14/36 20060101AFI20211025BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20211025BHJP
   D06M 15/61 20060101ALI20211025BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20211025BHJP
【FI】
   D06M14/36
   C08J5/06
   D06M15/61
   D06M101:40
【請求項の数】21
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-502594(P2019-502594)
(86)(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公表番号】特表2019-523350(P2019-523350A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】IB2017054336
(87)【国際公開番号】WO2018015883
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2020年7月17日
(31)【優先権主張番号】15/213,564
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503308494
【氏名又は名称】ヘクセル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユルチェンコ、マイケル
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0224470(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104195835(CN,A)
【文献】 特表2001−518141(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0076711(US,A1)
【文献】 米国特許第04844781(US,A)
【文献】 特開平03−065311(JP,A)
【文献】 特開2013−166923(JP,A)
【文献】 特公昭52−024132(JP,B2)
【文献】 特開昭60−252770(JP,A)
【文献】 特開昭62−199874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08 − 15/14
C08J 5/04 − 5/10
C08J 5/24
D06M 13/00 − 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上にアミン官能化ポリマーがグラフトされた炭素繊維を含む、複合炭素繊維であって、
前記アミン官能化ポリマーが、前記炭素繊維の表面に共有結合しており、
前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーがグラフトされていない元の炭素繊維の窒素表面濃度の1.5倍以上大きい窒素表面濃度を有する、
複合炭素繊維
【請求項2】
前記複合炭素繊維が、少なくとも0.125、少なくとも0.150、又は0.15〜0.3、又は0.15〜0.2である窒素/炭素(N/C)比を有する、請求項1に記載の複合炭素繊維。
【請求項3】
前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーがグラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%又は少なくとも250%増大した窒素表面濃度を有する、請求項1または2に記載の複合炭素繊維。
【請求項4】
前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーがグラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも495%増大した窒素表面濃度を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の複合炭素繊維。
【請求項5】
前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーがグラフトされていない元の炭素繊維と比較して、50〜500%増大した窒素表面濃度を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の複合炭素繊維。
【請求項6】
前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーがグラフトされていない元の炭素繊維と比較して、100〜500%、150〜500%、200〜500%、100〜250%は125〜200%増大した窒素表面濃度を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の複合炭素繊維。
【請求項7】
前記アミン官能化ポリマーが、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)及びブロックコポリマー、コア−シェル粒子並びにその組合せからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の複合炭素繊維。
【請求項8】
前記アミン官能化ポリマーが分枝ポリエチレンイミンを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の複合炭素繊維。
【請求項9】
前記炭素繊維が少なくとも400ksiの引張強度、または600〜1,050ksiの引張強度を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の複合炭素繊維。
【請求項10】
前記アミン官能化ポリマーが5,000〜35,000の範囲に及ぶ重量平均分子量を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の複合炭素繊維。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の複合炭素繊維を含む、繊維強化複合材料。
【請求項12】
表面上にアミン官能化ポリマーがグラフトされた炭素繊維を含む複合炭素繊維、及び前記炭素繊維に注入された樹脂マトリックスを含む繊維強化複合材料であって、ショートビーム剪断(SBS)試験によって特徴付けられるように、17〜25ksi、又は20〜22ksiの層間強度を示
前記アミン官能化ポリマーが、前記炭素繊維の表面に共有結合しており、
前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーがグラフトされていない元の炭素繊維の窒素表面濃度の1.5倍以上大きい窒素表面濃度を有する、
繊維強化複合材料。
【請求項13】
前記繊維強化複合材料が、前記炭素繊維の表面がアミン官能化ポリマーを含まないことを除いて前記炭素繊維が同一である、同様の繊維強化複合材料と比較して、5〜25%の範囲に及ぶ増大したSBSを有する、請求項11または12に記載の繊維強化複合材料。
【請求項14】
複合炭素繊維の表面が、0.15〜0.3である窒素/炭素(N/C)比を有する、請求項11〜13のいずれかに記載の繊維強化複合材料。
【請求項15】
前記樹脂がエポキシ系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、シアナートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂からなる群から選択される、請求項12〜14のいずれかに記載の繊維強化複合材料。
【請求項16】
前記炭素繊維が600から1,050ksiの引張強度を有する、請求項12から15のいずれかに記載の繊維強化複合材料。
【請求項17】
前記アミン官能化ポリマーが、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)並びにその組合せからなる群から選択される、請求項12〜16のいずれかに記載の繊維強化複合材料。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれかに記載の複合炭素繊維を作製する方法であって、
アミン官能化ポリマーを含む槽に炭素繊維を通過させること、
セルに電位を印加すること、及び
前記アミン官能化ポリマーを前記炭素繊維上に電解グラフトして、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた複合炭素繊維を製造すること、
を含、方法。
【請求項19】
前記複合炭素繊維が0.15〜0.3、0.15〜0.2、又は0.165〜0.195である炭素/窒素(N/C)比を示す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アミン官能化ポリマーが、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼン(PAADVB)によって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)並びにその組合せからなる群から選択される、請求項18または19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記アミン官能化ポリマーを前記炭素繊維上に電解グラフトするステップが、30秒〜2分間の期間にわたって、又は45秒から90秒の期間にわたって継続する、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に繊維強化複合材料の作製に使用するための炭素繊維に、特に表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維を含む複合炭素繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料は、その比較的軽い重量及び高い強度のために、多種多様な用途にますます使用されている。そのような用途の一例は、機体重量の低減による燃料効率改善の要望がある、航空産業である。繊維強化複合材料の構造体は、鋼鉄及びアルミニウムに匹敵する機械的特性を保持しながら、合金を含む対応する構造よりも低い密度を有する材料を与える。
【0003】
一般に、繊維強化複合材料は、炭素繊維などの繊維で強化されている樹脂マトリックスを含む。繊維強化複合材料は、通例、繊維を含む布又はトウに樹脂を含浸させていわゆるプリプレグを形成する方法で作製される。プリプレグという用語は、樹脂を含浸させた、未硬化又は部分硬化状態にある繊維を含む強化複合材料を説明するためによく使用される。次いで、樹脂の硬化に十分な条件にプリプレグを暴露することによって、プリプレグを最終又は半最終成形部品にまで成形することができる。通例、硬化は、樹脂の硬化に十分な温度で十分な時間にわたって、金型内でプリプレグを加熱することによって行われる。エポキシ樹脂は繊維強化複合材料の製造によく使用される。
【0004】
樹脂マトリックスへの炭素繊維の接着性は、部品の機械的強度を維持し、繊維−炭素界面の剥離を防止するために極めて重要である。接着性を改善するために、炭素繊維は通例、樹脂による含浸前に表面処理によって処理される。一般的な表面処理方法は、炭酸水素アンモニウムなどの溶液を含む電気化学槽又は電解槽中に炭素繊維を引き通すこと、電位を印加することを含み、結果として炭素繊維表面の陽極酸化が生じる。そのような処理は各フィラメントの表面をエッチング又は粗面化して、界面繊維/マトリックス結合に利用可能な表面積を増大させる。繊維表面積の増大は、樹脂マトリックスの繊維への機械的噛み合いを補助する。さらに、表面処理は繊維の表面も酸化し得て、結果として繊維の表面上にカルボン酸などの反応性化学基が形成される。
【0005】
しかし、表面処理に関連し得るいくつかの欠点がある。例えば、状況によっては、表面処理は繊維の望ましくない劣化をもたらし得て、結果として炭素繊維が供され得る表面処理の量が実用上制限される。結果として、表面処理は、繊維の表面上に所望のレベルの反応性化学基を十分に与えない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、改良炭素繊維及びその作製方法に対する要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、アミン官能化炭素繊維、及びアミン官能化炭素繊維を作製する方法に関する。本発明のさらなる態様は、樹脂マトリックス及びアミン官能化繊維を含む強化複合材料、並びにそのような強化複合材料を製造する方法に関する。
【0008】
一実施形態において、本発明の態様は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維を含む、複合炭素繊維に関する。本発明者は、アミン官能化ポリマーを炭素繊維表面上に電解グラフトすることによって、層間特性が改善された繊維強化複合材料を作製できることを発見した。
【0009】
本発明の実施形態は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維を含む、複合炭素繊維を提供し得る。一実施形態において、複合炭素繊維は、少なくとも0.125である窒素/炭素(N/C)比、特に約0.15〜0.3であるN/C比、さらにより詳細には約0.15〜0.2であるN/C比を有する。一実施形態において、複合炭素繊維は、少なくとも0.150であるN/C比、例えば約0.15〜0.3であるN/C比を有する。
【0010】
一実施形態において、複合炭素繊維は、炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%又は少なくとも250%である、窒素表面濃度の増加を示す。特定の一実施形態において、複合炭素繊維は、炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも495%である窒素表面濃度の増加を示す。
【0011】
いくつかの実施形態において、複合炭素繊維は、炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜500%である窒素表面濃度の増加を示す。例えば、一実施形態において、複合炭素繊維は、炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約100〜500%の窒素表面濃度の増加を示し得る。他の実施形態において、複合炭素繊維は、炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約150〜500%である窒素表面濃度の増加を示す。さらに別の実施形態において、複合炭素繊維は、炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約100〜250%、例えば約125〜200%の窒素表面濃度の増加を示し得る。
【0012】
一実施形態において、アミン官能化ポリマーは、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)及びブロックコポリマー、コア−シェル粒子並びにその組合せからなる群から選択される。好ましい実施形態において、アミン官能化ポリマーは分枝ポリエチレンイミンを含む。
【0013】
好ましくは、アミン官能化ポリマーは、約5,000〜35,000の範囲の重量平均分子量を有する。
【0014】
本発明に従って、多種多様の異なる炭素繊維が使用され得る。一実施形態において、炭素繊維は少なくとも400ksiの引張強度を有し得る。例えば、複合炭素繊維を作製するための炭素繊維は、約600〜1,050ksiの引張強度を有し得る。
【0015】
本発明による複合炭素繊維は、多種多様の異なる物品を作製するために使用され得る。例えば、複合炭素繊維は、繊維強化複合材料、例えばプリプレグ、又はプリプレグから形成された構造要素を作製するために使用され得る。
【0016】
一実施形態において、本発明は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維及び炭素繊維に注入された樹脂マトリックスを含む繊維強化複合材料を提供し得る。そのような一実施形態において、繊維強化複合材料は、ショートビーム剪断(Short Beam Shear(SBS))試験によって特徴付けられるように、約17〜25ksiの層間強度を示し得る。いくつかの実施形態において、繊維強化複合材料の層間強度は、SBSによって特徴付けられるように、約20〜22ksiである。
【0017】
一実施形態において、本発明は、炭素繊維の表面がアミン官能化ポリマーを含まないことを除いて炭素繊維が同一である、同様の繊維強化複合材料と比較して、約5〜25%の範囲に及ぶSBSの増加を示す繊維強化複合材料を提供し得る。
【0018】
一実施形態において、繊維強化複合材料は、エポキシ系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、シアナートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂からなる群から選択される樹脂を含み得る。
【0019】
一実施形態において、繊維強化複合材料を作製するための複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも325%、少なくとも350%、少なくとも375%、少なくとも400%、少なくとも425%、少なくとも450%、少なくとも475%又は少なくとも500%のいずれか1つ以上の窒素濃度の表面における増加を示し得る。いくつかの実施形態において、繊維強化複合材料に使用するための複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜3,000%、例えば約100〜500%、約150〜500%、約100〜250%又は約125〜200%の範囲に及ぶ窒素濃度の表面における増加を示し得る。
【0020】
一実施形態において、本発明の実施形態による繊維強化複合材料は、航空宇宙部品の製造に使用され得る。
【0021】
本発明の他の態様は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維を含む、複合炭素繊維であって、複合炭素繊維は以下を特徴とする:
【0022】
a)少なくとも0.125である窒素/炭素(N/C)比、及び/又は
【0023】
b)炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜500%である窒素表面濃度の増加。
そのような実施形態において、複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約0.15〜0.3、例えば約0.15〜0.2及び約0.165〜0.195の窒素/炭素(N/C)比、並びに少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも325%、少なくとも350%、少なくとも375%、少なくとも400%、少なくとも425%、少なくとも450%、少なくとも475%又は少なくとも500%のいずれか1つ以上の窒素濃度の表面における増加を示し得る。
【0024】
一実施形態において、前段落による複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜3,000%、例えば約100〜500%、約150〜500%、約100〜250%又は約125〜200%の範囲に及ぶ窒素濃度の表面における増加を示し得る。
【0025】
別の態様において、本発明の実施形態は、以下を含む複合炭素繊維を調製する方法であって、
【0026】
アミン官能化ポリマーを含む槽に炭素繊維を通過させること、
【0027】
セルに電位を印加すること、
【0028】
炭素繊維上にアミン官能化ポリマーを電解グラフトして、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフト化された複合炭素繊維を製造することを含み、複合炭素繊維が、以下の事項によって特徴付けられる:
【0029】
a)少なくとも0.125である炭素/窒素(N/C)比、及び/又は
【0030】
b)炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜500%である窒素表面濃度の増加。
【0031】
本方法の一態様において、複合炭素繊維は、約0.15から0.3、例えば約0.15〜0.2及び約0.165〜0.195である窒素/炭素(N/C)比を示す。
【0032】
本方法の別の態様において、複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも325%、少なくとも350%、少なくとも375%、少なくとも400%、少なくとも425%、少なくとも450%、少なくとも475%又は少なくとも500%のいずれか1つ以上の窒素濃度の表面における増加を示す。
【0033】
複合炭素繊維を製造する方法の一実施形態において、複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜3,000%、例えば約100〜500%、約150〜500%、約100〜250%又は約125〜200%の範囲に及ぶ窒素濃度の表面における増加を示し得る。
【0034】
複合炭素繊維を製造する方法の一実施形態において、アミン官能化ポリマーは、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)並びにその組合せからなる群から選択される。好ましい実施形態において、アミン官能化ポリマーは分枝ポリエチレンイミンを含む。
【0035】
一実施形態において、アミン官能化ポリマーは、約5,000〜35,000の範囲に及ぶ重量平均分子量を有する。
【0036】
有利には、アミン官能化ポリマーを炭素繊維の表面上に電解グラフトするステップは、比較的短時間で完了され得る。例えば、一実施形態において、アミン官能化ポリマーを炭素繊維上に電解グラフトするステップは、30秒〜2分継続する期間、特に45秒〜90秒、及び特に約60秒継続する期間を要し得る。
【0037】
本発明の実施形態は、複合炭素繊維及びそれから作製された成形部品を対象とし得る。本発明は複合炭素繊維を作製する方法及び複合炭素繊維を包含する繊維強化複合材料を作製する方法も含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
ここで添付の図面を参照するが、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【0039】
図1】アミン官能化ポリマーを炭素繊維上に電解グラフトするための機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明をここで、本発明のすべてではないが、いくつかの実施形態が示されている、添付の図面を参照して以下でさらに十分に説明する。実際に、本発明は多くの異なる形態で具体化され得て、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用可能な法的要件を満たすように提供されている。
【0041】
「第1」、「第2」など、「1次」、「例示的」、「2次」などの用語は、順序、量又は重要性を意味するものではなく、むしろ1つの要素を別の要素から区別するために使用する。さらに、「a」、「an」及び「the」という用語は、量の制限を意味するのではなく、むしろ言及された項目の「少なくとも1つ」の存在を示す。
【0042】
本明細書に開示された各実施形態は、他の開示された実施形態のそれぞれに適用可能であると考えられる。本明細書に記載する多様な要素のすべての組合せ及び下位の組合せは、本発明の範囲に含まれる。
【0043】
パラメータ範囲が与えられる場合、その範囲内のすべての整数、並びにその数割及び数分も本発明によって与えられることが理解される。例えば、「5〜10%」には、5%、6%、7%、8%、9%及び10%、5.0%、5.1%、5.2%・・・9.8%、9.9%及び10.0%並びに5.00%、5.01%、5.02%・・・9.98%、9.99%及び10.00%が含まれる。
【0044】
本明細書で使用する場合、数値又は範囲の文脈における「約」は、列挙又は請求されている数値又は範囲の±10%を意味する。
【0045】
一態様において、本発明の実施形態は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維を含む複合炭素繊維を提供する。以下により詳細に説明するように、アミン官能化ポリマーを炭素繊維の表面上に電解グラフトすると、複合炭素繊維が生じ、この複合炭素繊維においては、ポリマーが繊維に共有結合して、かなりの数の反応性アミン基が繊維強化複合材料の製造における後続の反応に、例えば樹脂マトリックスと反応するために利用可能である。結果として、複合炭素繊維は、改善された層間強度を示す繊維強化複合材料の製造に特に有用であり得る。
【0046】
本発明による複合炭素繊維は、ショートビーム剪断(Short Beam Shear(SBS))試験によって特徴付けられるような、高い層間強度を有する繊維強化複合材料が所望される、多種多様の用途に使用され得る。複合炭素繊維は単独で使用され得るが、複合炭素繊維は一般に樹脂と組合わされて、繊維強化複合材料を形成する。繊維強化複合材料は、プリプレグ又は硬化最終部品の形態であり得る。繊維強化複合材料は任意の意図された目的に使用され得るが、繊維強化複合材料は、好ましくは構造部品及び非構造部品の両方に航空宇宙用途において使用される。
【0047】
例えば、複合炭素繊維を使用して、胴体、翼及び尾翼アセンブリなどの航空機の構造部品に使用される、繊維強化複合材料が形成され得る。複合炭素繊維は、航空機の非構造部分で使用される、複合材料部品を製造するためにも使用され得る。例示的な非構造外装部品としては、エンジンナセル及び航空機外板が挙げられる。例示的な内装部品としては、航空機の調理室及び洗面所構造、並びに窓枠、フロアパネル、頭上収納庫、壁仕切り、ワードローブ、ダクト、天井パネル及び内部側壁が挙げられる。
【0048】
上記のように、複合炭素繊維は、後続の反応に利用可能である多数の反応性アミン基を与える。複合炭素繊維における利用可能な反応性アミン基の存在は、複合炭素繊維の炭素/窒素(N/C)比によって特徴付けられ得る。例えば、本発明による複合炭素繊維は、典型的に少なくとも0.125である窒素/炭素(N/C)比、より典型的には少なくとも0.150であるN/C比を示す。一実施形態において、複合炭素繊維は、約0.15〜0.3、例えば約0.15〜0.2及び約0.165〜0.195であるN/C比を有する。いくつかの実施形態において、複合炭素は、少なくとも0.120、例えば0.120〜0.200であるN/C比を有し得る。複合炭素繊維のN/C比は、X線光電子分光法(XPS)などの当分野で既知である分析方法を使用して決定され得る。
【0049】
本発明の実施形態による複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない同一の炭素繊維と比較して(例えばアミン官能化ポリマーの電解グラフト前の元の炭素繊維と比較して)、表面窒素濃度の増加も示し得る。例えば、本発明の実施形態による複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない同一の炭素繊維と比較して、少なくとも25%の窒素表面濃度の増加を示し得る。
【0050】
より詳細には、複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない同一の炭素繊維と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも325%、少なくとも350%、少なくとも375%、少なくとも400%、少なくとも425%、少なくとも450%、少なくとも475%及び少なくとも500%の窒素表面濃度の増加を示し得る。
【0051】
一実施形態において、複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない同一の炭素繊維と比較して、約50〜5,000%の範囲の窒素表面濃度の増加を示し得る。好ましくは、複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない同一の炭素繊維と比較して、約50〜500%、より好ましくは約100〜500%、さらにより好ましくは約150〜500%の範囲に及ぶ窒素表面濃度の増加を示す。他の実施形態において、複合炭素繊維は、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない同一の炭素繊維と比較して、約100から250%、より典型的には約125から200%、さらにより典型的には約150から200%の範囲に及ぶ窒素表面濃度の増加を示し得る。複合炭素繊維の表面窒素濃度は、X線光電子分光法(XPS)などの当分野で既知の分析方法を使用しても測定され得る。
【0052】
さらには、複合炭素繊維から作製された繊維強化複合材料は、層間強度の改善を示し得る。一実施形態において、本発明の実施形態による繊維強化複合材料は、炭素繊維の表面がアミン官能化ポリマーを含むように改質されていないことを除いて炭素繊維が同一である同様の繊維強化複合材料(以下、「非グラフト炭素繊維」と呼ぶ)と比較して、約5〜25%の範囲に及ぶSBSの増加を示し得る。好ましくは、繊維強化複合材料は、非グラフト炭素繊維を含む複合材料と比較して、約7から25%、より好ましくは約10〜25%の範囲に及ぶSBSの増加を示す。一実施形態において、繊維強化複合材料は、非グラフト炭素繊維を含む複合材料と比較して、約15〜25%の範囲のSBSの増加を示し得る。
【0053】
一実施形態において、複合炭素繊維から調製された繊維強化複合材料は、SBSによって特徴付けられるように約17〜25ksi、特に約18〜24ksi、より具体的には約20〜22ksiの層間強度を示す。
【0054】
本発明の諸態様による複合炭素繊維は、アミン官能化ポリマーを含む槽溶液に炭素繊維を浸漬することによって調製され得る。この槽は、水性又は非水性であり得て、1種以上の電解質を含み得る。
【0055】
好適な非水性溶媒の例としては、とりわけメタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラヒドロフラン及びアセトニトリルが挙げられ得る。
【0056】
好適な電解質の例としては、中でも、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、テトラエチルアンモニウムペルクロラート、テトラブチルアンモニウムペルクロラート、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、テトラブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、リチウムペルクロラート、リチウムヘキサフルオロホスファート、リチウムテトラフロオロボラート、リチウムトリフラート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びリチウムビス(トリフルオロエタンスルホニル)イミドが挙げられ得る。
【0057】
槽中の電解質の濃度は、槽中の電解質溶液の全体積に対して、約0.01〜1Mの範囲に及び得る。一実施形態において、槽中の電解質の量は、約0.01〜0.5M、特に約0.015〜0.1M、より詳細には約0.02〜0.05Mである。
【0058】
槽中のアミン官能化ポリマーの濃度は、槽の全重量に対して約0.5〜5重量%の範囲に及び得る。一実施形態において、槽中のアミン官能化ポリマーの量は、約0.5〜2.5重量%、特に約0.75〜2重量%、より詳細には約1.0〜2.0重量%である。
【0059】
図1に示すように、アミン官能化ポリマーを炭素繊維上に電解グラフトするための機構は、参照符号10によって表される。機構10は、電解槽12、電源14、陰極16及び炭素繊維18を含む。電源14は、導線20を介して(複数の)陰極16に接続され、導線22を介して炭素繊維18に接続されている。この機構は、その上に炭素繊維が方向付けられた1個以上のテフロン(登録商標)被覆プーリーも含み得る。この機構は、槽溶液を再循環させるためのポンプ(図示せず)も含み得る。炭素繊維が槽を通じて引き出された後、洗浄ステーション(洗浄機)30に誘導され、ここで繊維が脱イオン水によってすすがれる。次いで、複合繊維は乾燥機32を通過して、後で使用するために取上げスプーラ34に巻き取られ得る。いくつかの実施形態において、槽は電圧計(例えばデジタルマルチメータ)28に接続された参照電極24も含み得て、電圧計28は次いで導線26を介して陰極16に接続され得る。
【0060】
炭素繊維は、約30秒〜5分間の期間にわたって槽に暴露され得る。有利には、アミン官能化ポリマーは、約1〜2分間、特に約1分間に及ぶ暴露時間で炭素繊維上に電解グラフトされ得ることが見出されている。
【0061】
印加電圧は通例、約0.1〜10ボルトの範囲に及び、約0.5〜5ボルトの電圧が好ましい。
【0062】
本発明の実施形態において、多種多様のアミン官能化ポリマーが使用され得る。好ましくは、アミン官能化ポリマーは、炭素繊維表面への電解グラフトに利用可能であるか、又は樹脂マトリックスとの後続の反応に利用可能である、ポリマーの主鎖又は分枝に沿って分布する複数のアミン基を含む。例えば、好ましい実施形態において、アミン官能化ポリマーは、ポリマー構造に組入れられている複数のペンダントアミノ基、末端第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基又はその混合物を含む。
【0063】
一実施形態において、アミン官能化ポリマーは式(I)及び(II)のポリマーを含む。
【化1】

【化2】
【0064】
式(I)及び(II)において、R基は独立して水素、直鎖、分枝、環式若しくはアルキル基(飽和又は不飽和)、脂肪族基、芳香族基又はその混合物を表し得る。いくつかの実施形態において、Rは、上記の基に加えて、エトキシル化セグメント、複素環式化合物及びヘテロ原子を含み得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、Rは、アミン保護基、例えばカルボベンジルオキシ、メトキシベンジルカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、カルバマート、メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、p−メトキシフェニル、トシル及びスルホンアミドも含み得る。
【0066】
好ましい実施形態において、アミン官能化ポリマーは、炭素(例えば有機)系ポリマー主鎖を含み、このような主鎖は芳香族又は脂肪族(飽和又は不飽和)であり得る炭化水素系部分を含む。そのような主鎖は、C−C結合、C−O結合、C−N結合、C−S結合及びN−N結合を介して結合され得る。いくつかの実施形態において、主鎖は、ヘテロ原子、例えばO、N、Sが組入れられている炭化水素部分を含み得る。上述の部分は、複素環式性の部分であることもできる。他の実施形態において、アミン官能化ポリマーの主鎖は、シロキサン系ポリマーから誘導され得る。主鎖は架橋されていても、又は実質的に架橋がなくてもよい。
【0067】
一般に、アミン官能化ポリマーは、約2,000を超える、特に約2,500を超える重量平均分子量(Mw)を有することが所望であり得る。アミン官能化ポリマーのMwには一般的な実用上の制限はないが、ポリマーは約5,000〜1,000,000の範囲に及ぶMwを有し得て、約15,000〜750,000の範囲に及ぶMwが幾分かより典型的であり、約15,000〜100,000の範囲に及ぶMwがより一層典型的である。当分野において既知であるように、ポリマーのMwは、静的光散乱技術を用いて決定され得る。
【0068】
一実施形態において、アミン官能化ポリマーは、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン及び直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)並びにその混合物から選択される。好ましい実施形態において、アミン官能化ポリマーは、分枝ポリエチレンイミンである。
【0069】
一実施形態において、アミノ官能化ポリマーは、コポリマーを含み得る。例えば、アミン官能化ポリマーは、アミン官能基を含有するモノマーと含有しないモノマーとの混合物から誘導されるポリマー構造を含み得る。そのようなコポリマーの例としては、ブロックコポリマー及びこのようなコポリマーから誘導されるコア−シェル粒子が挙げられる。ブロックコポリマー(例えば、米国特許第6,894,113号を参照のこと)及びコア−シェル粒子(例えば、欧州特許出願公開第1632533A1号、米国特許出願公開第2008/0251203A1号、欧州特許出願公開第2123711A号、欧州特許出願公開第2135909A1号及び欧州特許出願公開第2256163A1号を参照のこと)の両方が、エポキシ系樹脂への強化添加剤として、文献に広く記載されている。Bergらによる文献に記載されている、そのようなコポリマー及びコア−シェル粒子の最も興味深くかつ関連性のある例の1つ(Nguyen,F.;Saks,A.;Berg,J.C.J.Adhesion Sci.Technol.2007,21,pp.1375−1393;Leonard,G.C.;Hosseinpour,D.;Berg,J.C.J.Adhesion Sci.Technol.2009,23,pp.2031−2046.)が挙げられ、ここで外部シェルは、ポリスチレン製のコア粒子上に重合されたポリエチレンイミンからなる。
【0070】
一実施形態において、アミン官能化ポリマーは、ポリシロキサンポリマー主鎖を有するものとすることができる。そのようなポリマーの例の1つは、表面上にアミン官能基を有し、コアとして架橋ポリシロキサン構造を有するゾルゲル粒子の調製について著者が記載した、国際公開第2004/035675A1号に見出すことができる。
【0071】
一実施形態において、アミン官能化ポリマーはポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーを含み得る。PAMAMデンドリマーは、通例エチレンジアミンコア、反復分枝アミドアミン内部構造及び第1級アミン表面を含む超分枝ポリマーである。デンドリマーは、各ステップが前の世代のおよそ2倍の数の反応性表面部位を有し、そしておよそ2倍の分子量を有する新しい世代のデンドリマーを生成する反復方法において、中心コアから成長する。PAMAMデンドリマーの世代0及び世代1の例を以下に示す。
【化3】

【化4】
【0072】
また別の実施形態において、アミン官能化ポリマーは、Buchmanらによって記載された高度分枝ポリアミドアミンを含み得る(Dodiuk−Kenig,H.;Buchman,A.;Kenig,S.Composite Interfaces 2004,11,pp.453−469 及びその中の参考文献)。そこでは、高度分枝アミン官能性ポリマーの合成はアミン−エポキシ反応に基づいている。
【0073】
いくつかの実施形態において、アミン官能化ポリマーは、ブロックコポリマー及びコア−シェル粒子を含み得る。例えば、一実施形態において、アミン官能化ポリマーは、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン及び直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)及びその組合せのブロックコポリマー及びコア−シェル粒子を含み得る。
【0074】
本発明の実施形態に従って、多種多様の異なる炭素繊維が使用され得る。一実施形態において、炭素繊維は航空宇宙グレードの炭素と考えられ、少なくとも400ksi(2,758MPa)の引張強度を有し得る。炭素繊維は、例えば450ksi、500ksi、550ksi、600、ksi、650ksi、700ksi、750ksi、800ksi、850ksi、900ksi、950ksi又は1,000ksiの少なくとも1つの引張強度を有し得る。一実施形態において、炭素繊維は、約400〜1200ksi、特に約600〜1,050ksi、より詳細には約700〜950ksiの引張強度を有し得る。
【0075】
好ましくは、炭素繊維はトウに配置される。「トウ」(「ロービング」又は単に「繊維」と呼ばれる場合がある)はマルチフィラメント繊維である。1トウ当たりのフィラメント数は、例えば100〜30,000であり得る。トウは、プリプレグ形成(例えばマトリックス樹脂組成物の硬化)条件下で熱的及び化学的に安定であるべきである。
【0076】
通例、繊維は、0.5〜30ミクロン、好ましくは2〜20ミクロン、より好ましくは2〜15ミクロンの範囲の直径を有する円形又は略円形の断面を有する。重量に関して、個々のトウは、例えば200〜3,000g/1000メートル、600〜2,000g/1000メートル又は750〜1750g/1000メートルの重量を有し得る。好ましい実施形態において、個々のトウは、200〜500g/1,000メートルの重量を有し得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、炭素繊維は、アミン官能化ポリマーを繊維上に電解グラフトする前に表面処理され得る。他の実施形態において、炭素繊維は電解グラフトの前に未処理であり得る。好ましくは、炭素繊維は、電解グラフトの前に、繊維の引張強度を低下させる可能性があるいずれの処理にも供されない。例えば、様々な実施形態において、炭素繊維は、800℃を超える温度などの蒸気雰囲気中での高温処理、又はプラズマ処理に供されない。
【0078】
いくつかの実施形態において、アミン官能化ポリマーの炭素繊維への結合前に、繊維がサイジング処理(size)されていない、又は少なくともサイジング除去(de−size)されていることが所望であり得る。一実施形態において、複合炭素繊維は、用途に応じて、当業者に既知である配合物によってサイジング処理又はサイジング除去のいずれかがなされたものとして使用され得る。
【0079】
好適な炭素繊維の例としては、HEXTOW(登録商標)AS−4、AS−7、IM−7、IM−8、IM−9及びIM−10並びにHM−63炭素繊維が挙げられ、そのすべてがヘクセル社(カリフォルニア州ダブリン)から入手可能なPAN系連続繊維である。IM−7からIM−10は、それぞれ820ksi、880ksi、890ksi及び1,010ksiの最小引張強度を有する12,000(12K)フィラメント数トウとして入手可能な、高性能、中間弾性率の連続PAN系炭素繊維である。
【0080】
他の炭素製造者による炭素繊維も、本発明のいくつかの実施形態において使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、好適な炭素繊維としては、トルコ、イスタンブールのDow Aksa Ileri Kompozit Malzemeler Saai Ltd,Stiから入手可能なAksaca 3K A−38、6K A−38、12K A−42、24K A−42、12K A−49及び24K A−49炭素繊維が挙げられ得る。これらの製品名称は、数千のフィラメント/ロービングのおおよその数(例えば、3Kは3,000フィラメントである)、及び数百MPaの繊維のおおよその引張強度(A−38は3,800MPaの引張強度を示す)を示す。本発明の実施形態に従って使用され得る他の炭素繊維は、東レ株式会社から入手可能である、T700及びT800を含むと考えられる。
【0081】
本発明の実施形態による複合炭素繊維は、多種多様の強化構造に使用することができる。例えば、複合繊維は、最終強化複合材料に必要な所望の特性に応じて1方向、2方向又は多方向の強化構造を形成するように配置され得る。複合炭素繊維は、トウ又は布の形態であり得て、ランダム、製編、不織、多軸(例えばノンクリンプ布)、編組又は他の任意の好適なパターンの形態であり得る。
【0082】
1方向繊維層が使用される場合、複合繊維の配向は同じであり得るか、又はプリプレグスタック全体にわたって変化して、いわゆるノンクリンプ布(NCF)を形成し得る。しかし、これは1方向繊維層のスタックで考えられる多くの配向の1つにすぎない。例えば、隣接層の1方向繊維は、隣接繊維層間の角度を示す、いわゆる0/90の配置で互いに直交して配置され得る。多くの他の配置の中でも、0/+45/−45/90などの他の配置ももちろん可能である。一実施形態において、炭素繊維は、150〜2,000g/m、特に300〜1600g/mの坪量を有する編組布又はノンクリンプ布を含み得る。
【0083】
本発明の実施形態によるプリプレグは、炭素繊維又は炭素繊維を含む布にエポキシ樹脂などの樹脂組成物を注入することによって製造され得る。
【0084】
本発明の実施において、多種多様の異なる樹脂組成物が使用され得る。好ましくは、樹脂組成物は架橋性熱硬化系を含む。熱硬化性樹脂の好適な例としては、エポキシ系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、シアネートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂が挙げられ得る。本発明において使用され得る適切なビスマレイミド(BMI)樹脂の例は、商品名HEXPLY(登録商標)でヘクセル社から入手可能である。
【0085】
いくつかの実施形態において、樹脂組成物は熱可塑性樹脂を含み得る。好適な熱可塑性樹脂の例としては、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ナイロンなどのポリアミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリベンズイミダゾール(PBI)及びポリカーボネート(PC)が挙げられ得る。
【0086】
一実施形態において、樹脂組成物はエポキシ樹脂組成物を含み得る。通例、樹脂組成物は、55〜75重量パーセントの、1種以上のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分を含み得る。エポキシ樹脂は、高性能航空宇宙用エポキシに使用されている任意のエポキシ樹脂から選択され得る。2官能性、3官能性及び4官能性エポキシ樹脂が使用され得る。一実施形態において、エポキシ樹脂は、実質的に3官能性エポキシ化合物から構成され得る。所望ならば、4官能性エポキシが含まれ得る。3官能価及び4官能価エポキシの相対量は、当業者に既知であるように変化させてよい。
【0087】
3官能性エポキシ樹脂は、化合物の主鎖中のフェニル環にてパラ配向又はメタ配向で直接又は間接的に置換された3個のエポキシ基を有すると理解される。4官能性エポキシ樹脂は、化合物の主鎖に4個のエポキシ基を有すると理解される。好適な置換基の例としては、水素、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アラルキル基、ハロ基、ニトロ基又はシアノ基が挙げられる。好適な非エポキシ置換基は、パラ位又はオルト位でフェニル環に結合され得るか、又はエポキシ基によって占有されていないメタ位で結合され得る。
【0088】
好適な3官能性エポキシ樹脂の例としては、フェノール及びクレゾールエポキシノボラック、フェノール−アルデヒド付加体のグリシジルエーテル、芳香族エポキシ樹脂、ジ脂肪族トリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエーテル、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン及びグリシジルエーテル、複素環式グリシジルイミジン及びアミド、グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂又はその任意の組合せを含んでなるものが挙げられる。好ましい三官能性エポキシは、パラアミノフェノールのトリグリシジルエーテルであり、これは、Huntsman Advanced Materials(モンテー、スイス)からAraldite MY 0500又はMY 0510として市販されている。特に好ましい3官能性エポキシはメタ−アミノフェノールのトリグリシジルエーテルであり、これはハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ(モンテー、スイス)から商品名Araldite MY0600及び住友化学株式会社(大阪、日本)から商品名ELM−120で市販されている。
【0089】
好適な4官能性エポキシ樹脂の例としては、フェノール及びクレゾールエポキシノボラック、フェノール−アルデヒド付加体のグリシジルエーテル、芳香族エポキシ樹脂、ジ脂肪族トリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエーテル、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン及びグリシジルエーテル、複素環式グリシジルイミジン及びアミド、グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂又はその任意の組合せを含んでなるものが挙げられる。好ましい4官能性エポキシは、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメチレンジアニリンであり、これはハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ(モンテー、スイス)からAraldite MY0720又はMY0721として市販されている。
【0090】
所望ならば、エポキシ樹脂成分は、2官能性エポキシ、例えばビスフェノールA(ビスA)又はビスフェノールF(ビスF)エポキシ樹脂も含み得る。
【0091】
好適なエポキシ樹脂の例としては、多価フェノール化合物のジグリシジルエーテル、例えばレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテル;脂肪族グリコール及びポリエーテルグリコールのジグリシジルエーテル、例えばC2−24アルキレングリコール及びポリ(エチレンオキシド)又はポリ(プロピレンオキシド)グリコールのジグリシジルエーテル;フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(エポキシノボラック樹脂)、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル;並びにその任意の組合せが挙げられ得る。
【0092】
好適なジグリシジルエーテルとしては、例えば、ダウ・ケミカル・カンパニーによってD.E.R.(登録商標)330樹脂、D.E.R.(登録商標)331樹脂、D.E.R.(登録商標)332樹脂、D.E.R.(登録商標)383樹脂、D.E.R.(登録商標)661樹脂及びD.E.R.(登録商標)662樹脂の名称で並びにAraldite GY6010(ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ)として販売されている、ビスフェノールA樹脂のジグリシジルエーテルが挙げられる。例示的なビス−Fエポキシ樹脂は、Araldite GY281及びGY285(ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ)として市販されている。
【0093】
市販のポリグリコールのジグリシジルエーテルとしては、ダウ・ケミカルによりD.E.R.(登録商標)732及びD.E.R.(登録商標)736として販売されているものが挙げられる。
【0094】
エポキシノボラック樹脂も使用され得る。このような樹脂は、ダウ・ケミカル・カンパニーからD.E.N.(登録商標)354、D.E.N.(登録商標)431、D.E.N.(登録商標)438及びD.E.N.(登録商標)439として市販されている。
【0095】
エポキシ樹脂成分は、任意選択で、5〜20重量%の熱可塑性強化剤を含み得る。熱可塑性強化剤は、高性能エポキシ樹脂の作製に使用されることが周知である。例示的な強化剤としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)及びポリアミドイミド(PAI)が挙げられる。PESは様々な化学薬品製造業者から市販されている。一例として、PESは住友化学株式会社(大阪、日本)から商品名スミカエクセル5003pで入手できる。ポリエーテルイミドは、Sabic(ドバイ)からULTEM 1000Pとして市販されている。ポリアミドイミドは、ソルベイ・アドバンスド・ポリマーズ(アルファレッタ、ジョージア州)から、TORLON 4000TFとして市販されている。熱可塑性成分は、硬化剤の添加前にエポキシ樹脂成分と混合される粉末として供給されることが好ましい。
【0096】
エポキシ樹脂組成物はまた、性能向上剤及び/又は改質剤などの追加成分も含み得る。性能向上剤又は改質剤は、例えば柔軟剤、粒状充填剤、ナノ粒子、コア/シェルゴム粒子、難燃剤、湿潤剤、顔料/染料、導電性粒子及び粘度調節剤から選択され得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、注入工程は、樹脂組成物の粘度がさらに低下するように、高められた温度で実施され得る。しかし、樹脂組成物の望ましくないレベルの硬化が起こるほど、十分な時間にわたってあまり高温であってはならない。
【0098】
本発明の好ましい実施形態において、樹脂組成物の炭素繊維への注入/含浸は、樹脂が繊維内及び繊維間を流れるのに十分な温度で行われる。例えば、樹脂組成物の注入温度は100〜200℃の範囲内、120〜180℃の範囲内であってよく、特に約150℃の温度がより好ましい。上記の範囲外の温度範囲も使用され得ることを認識すべきである。しかし、より高い又はより低い注入温度の使用には、注入工程が行われる機械速度の調整が通例必要である。例えば、約175℃より高い温度では、樹脂組成物が高温に暴露される期間を短縮して、樹脂組成物の望ましくない架橋を回避するために、より高い機械速度で注入工程を行うことが必要であり得る。
【0099】
同様に、所望のレベルの注入を得て、これによりプリプレグ中の空隙を減少させるために、より低い注入温度を使用すると、エポキシ樹脂組成物を繊維材料に注入するためにより低い機械速度が通例必要となる。
【0100】
通例、樹脂組成物は、この範囲の温度で炭素繊維に適用され、例えば1対以上のニップローラーを通過することにより加えられる圧力によって繊維内に圧密化される。
【0101】
本発明のさらなる態様は、本発明の実施形態に従ってプリプレグを調製する方法に関する。第1ステップにおいて、エポキシ樹脂組成物をシート材料上に押出して、その上に薄膜コーティングを形成する。シート材料は剥離フィルム又は剥離紙を含み、これからエポキシ樹脂組成物のフィルムコーティングが、プリプレグ加工工程中に繊維材料に転写され得る。エポキシ樹脂組成物のフィルムをシート材料上にデポジットさせた後、フィルムコーティングを有するシート材料をチルロール上に通過させてエポキシ樹脂組成物が冷却され得る。シート材料は次いで、将来使用するために、通例ロールに巻き取られる。
【0102】
実施例
【0103】
試験方法
【0104】
X線光電子分光法(XPS)
【0105】
炭素繊維試料のXPS分析は、受光角±7°及び取り出し角50°で、単色化されたAl kα 1486.6eVのX線源を備えた装置PHI 5701LSciで行った。分析面積は2mm×0.8mmであった。得られた値は、検出した元素を用いて100%に正規化した。微量元素は報告されなかった。
【0106】
試験試料は、スプールから20cmの試料を切り取り、続いて溶媒中で30分間超音波処理することによって調製した。15分後に溶媒を新しいものに変えた。繊維試料を減圧下80℃にて一晩乾燥させた。
【0107】
引張強度
【0108】
炭素繊維試料の引張強度は、ASTM D−4018に記載の手順に従って測定した。
【0109】
ショートビーム剪断(SBS)
【0110】
ASTM D 2344に従って、SBSを用いて繊維強化複合材料の層間強度を評価するために、様々な積層パネルを作製した。試料幅は0.25±0.005インチであった。4:1のスパン対深さ比を使用した。各試料につき9個の複製物を試験した。
【0111】
積層パネル試料は、BMI又はエポキシ樹脂のいずれかを使用して作製した。BMI注入積層体は190g/mの坪量を有し、12層の炭素繊維を敷設することによって作製した。エポキシ注入積層体は145g/mの坪量を有し、16層の炭素繊維を敷設することによって作製した。炭素繊維を手で又は張力スタンドを用いて敷設した。すべての層は0°の向きを有し、BMI又はエポキシテープ上に敷設した。次いでパネルを切断し、プレスしてプリプレグを形成した。炭素繊維の長さは約30メートルであった。積層パネルを以下に従って硬化させた。
【0112】
エポキシ注入積層パネルを、オートクレーブ内で、2つのサイクルを使用して硬化させた。
【0113】
1)硬化サイクル:積層パネルを240°Fまで加熱し、これを85PSIの圧力にて65分間保持した。次にパネルを350°Fまで加熱し、100PSIの圧力にて120分間保持した。次いでパネルを毎分3°Fの速度で140°Fまで冷却した。
【0114】
2)後硬化サイクル:次にパネルを350°Fに加熱し、この温度を4時間保持した。次にパネルを140°Fまで冷却した。
【0115】
BMI注入積層体を、2つのサイクルを使用して、オートクレーブ内で同様に硬化させた。
【0116】
1)硬化サイクル:積層パネルを250°Fまで加熱し、これを85PSIの圧力にて30分間保持した。次いでパネルを375°Fまでに加熱し、85PSIの圧力にて250分間にわたってこの温度に保持した。パネルを毎分3°Fの速度で140°Fまで冷却した。
【0117】
2)後硬化サイクル:次いでパネルを465°Fまで加熱し、これを6時間30分保持した。次にパネルを140°Fまで冷却した。
【0118】
接着剤組成物に使用した材料を以下に示す。別途記載しない限り、すべてのパーセンテージは重量パーセントである。別途記載しない限り、すべての物性及び組成値は近似値である。
【0119】
「B−PEI−1」は、シグマ−アルドリッチ(登録商標)から入手可能な(約25,000の平均Mw及び約10,000の平均Mnを有する)分枝ポリエチレンイミンを示す。
【0120】
「B−PEI−2」は、シグマ−アルドリッチ(登録商標)から入手可能な(約800の平均Mw及び約600の平均Mnを有する)分枝ポリエチレンイミンを示す。
【0121】
「L−PEI」は、ポリサイエンス社から入手可能な(約2,500の平均Mwを有する)直鎖ポリエチレンイミンを示す。
【0122】
「PAA」は、ポリサイエンス社から入手可能な(約15,000の平均Mwを有する)ポリ(アリルアミン)ポリエチレンイミンを示す。
【0123】
「TAEA」は、シグマ−アルドリッチ(登録商標)から入手可能なトリス(2−アミノエチル)アミン(96%)を示す。
【0124】
「TEABF」は、シグマ−アルドリッチ(登録商標)から入手可能なテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(99%)を示す。
【0125】
「MEOH」は、シグマ−アルドリッチ(登録商標)から入手可能なメタノール(無水)を示す。
【0126】
「NaSO」は、シグマ−アルドリッチ(登録商標)から入手可能な硫酸ナトリウム(99.0%以上、A.C.S.試薬級、無水)を示す。
【0127】
「IM−7」は、ヘクセル社から商品名HEXTOW(登録商標)で入手可能な、100%公称表面処理PAN系連続炭素繊維(820ksiの最小引張強度を有する12,000(12K)フィラメント数トウ)を示す。炭素繊維はサイジング処理されていなかった。
【0128】
「IM−X」は、ヘクセル社により作製された、5%公称表面処理PAN系連続炭素繊維(825ksiの最小引張強度を有する12,000(12K)フィラメント数トウ)を示す。炭素繊維はサイジング処理されていなかった。
【0129】
「IM−U」は、ヘクセル社により作製された、表面未処理PAN系連続炭素繊維(12,000(12K)フィラメント数トウ)を示す。炭素繊維はサイジング処理されていなかった。
【0130】
「BMI」は、ヘクセル社から名称HX1624で入手可能なビスマレイミド樹脂を示す。
【0131】
「エポキシ」(“EPOXY”)は、ヘクセル社から入手可能な専有のエポキシ樹脂を示す。
【0132】
以下の手順に従って複合炭素繊維を作製した。
【0133】
図1に示したものと同様の槽を使用して、アミン官能化ポリマーを炭素繊維の表面上に電解グラフトした。電解グラフト工程で使用した電源は、BKプレシジョン製の直流電源1030であった。この工程では炭素陰極を使用した。陰極は、概して細長い長方形の形状を有し、Americarb(グレードAX−50)によって供給された。陰極の寸法は、21cm×2.5cm×1.2cmであった。実験は、非水性Ag/Ag+参照電極又は水性Ag/AgCl参照電極のいずれかを用いた。非水性Ag/Ag+参照電極(CHI 112)は、テキサス州オースティンのCHインスツルメンツから購入し、有機溶媒中の10mM硝酸銀及び20mM支持電解質溶液を充填した。水性Ag/AgCl参照電極(CHI 112)を同じ供給元から購入し、1M KCl溶液を充填した。
【0134】
炭素繊維トウを制御張力供給スプーラから鋼鉄ローラ上へ供給した。鋼鉄ローラを電源の正末端に接続した。炭素陰極を槽に浸漬して、電源の負末端に接続した。炭素繊維トウを槽の底部に配置したテフロン(登録商標)コートローラ上に供給し、次いで槽外の第2の鋼鉄ローラ上を通過させた。次いで、炭素繊維を脱イオン水で洗浄し、乾燥させ、次いで巻き取りスプールに巻き取った。
【0135】
印加電圧は、炭素繊維トウのごく近傍に配置された銀参照電極によって読み取られる電位が、約1.6ボルトになるように調整した。陰極間の距離は2.5cmであり、繊維走行経路長は61cm(2フィート)であった。槽溶液を蠕動ポンプによって再循環させ、一定体積を維持するために必要に応じて補充した。炭素繊維の槽への暴露時間は、実験的試行に応じて1〜4分の間で変化させた。
【0136】
槽の容積は約1リットルであった。洗浄槽は脱イオン水を使用し、約2リットルの全水量を有する多経路及び多ローラ機構を含んでいた。洗浄槽をパージし、30分毎に新しい脱イオン水と完全に交換した。乾燥機は125℃の熱風を利用した乾燥塔であった。
【0137】
以下の例では、同じポリマーの電解グラフトと比較した、アミン官能化ポリマー(B−PEI−1)の単純吸着の差を評価した。電解グラフトは上記のように行った。電解質を除いて、同じ槽化学作用を吸着法及び電解グラフト法の両方で使用した。槽中のB−PEI−1の濃度は約1.25重量%であった。1.25重量%のB−PEI−1濃度が、一般に電解グラフトの最良の結果を与えることが見出された。ポリマー濃度の増加は、繊維表面の窒素濃度の増加をもたらさないように思われた。槽は非水性であり、MEOHを使用した。電解グラフトのために、槽は支持電解質としてTEABFを含有していた。炭素繊維トウを1〜2分間槽に暴露した。次いで炭素繊維を、XPSを使用して評価して、炭素(C)、窒素(N)及び酸素(O)の原子濃度パーセントを求めた。対照炭素繊維トウは、槽処理に供さなかった。結果を以下の表1にまとめる。
【表1】
【0138】
「湿式化学」手法としても既知である吸着法は、複数のアミン官能基を含有する有機分子と繊維との反応を利用する。一般に、アミンは、(塩及び/又はアミドを生じる)カルボン酸又はその他などの、炭素繊維上の表面官能基と反応することにより、炭素繊維上へのポリマーの吸着が生じると考えられている。表1の結果から、吸着法は、複合炭素繊維の表面上に(窒素原子濃度によって証明されるように)有意により低い濃度のアミン基を生じることがわかる。さらに、有機溶液からの単純な吸着によって炭素繊維上へのB−PEI−1の固定化が可能であっても、多くの場合、この種のデポジットは非常に不均一であることが認められた。表1に示すように、XPSの結果は再現不可能であり、いくつかの試料は様々な程度の窒素表面濃度の増加を示し、いくつかは対照炭素繊維(対照1)と比べて相対的に増加を示さなかった(例えば比較2)。
【0139】
対照的に、電解グラフト炭素繊維は非常に再現性があることが認められ、B−PEI−1の電解グラフトが、吸着手法と比較して、炭素繊維表面上にてはるかに均質であることが示唆されている。吸着されたB−PEI−1の最良の場合よりも高い窒素表面濃度を導入するためには、半分の期間(1分対2分)のみが必要であることも確認された。
【0140】
以下の例では、前述のようにアミン官能化ポリマーを炭素繊維上に電解グラフトした、種々の複合繊維を作製した。次いで、得られた複合炭素繊維を使用して、前述のように積層パネルを作製した。
【0141】
例3:IM−7炭素繊維トウ上へのB−PEI−1の電解グラフト
【0142】
支持電解質(S.E.)としてのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラートの20mM MEOH溶液及び1.25重量%のB−PEI−1を含む槽を調製した。B−PEI−1を上記の手順に従ってIM−7炭素繊維トウ上に電解グラフトした。得られた複合炭素繊維とエポキシ樹脂を用いて積層パネルを作製した。次に、SBS試験を使用して積層パネルの層間強度を評価した。結果を下の表2にまとめる。
【表2】
【0143】
表2に見られるように、XPS分析は、対照繊維(すなわち対照2)と比較して窒素表面濃度の有意な増加を示した。特に、表2は、電解グラフト炭素繊維(例3)が対照炭素繊維と比較して、192.7%の表面窒素濃度の増加を呈したことを示している。この窒素濃度はメタノール中での長期の超音波処理(30分)時に不変のままであり、B−PEI−1が炭素繊維の表面に共有結合していることを示した。電解グラフト炭素繊維は、支持電解質からの微量のフッ素及びホウ素も含有し、これらは超音波処理によって容易に除去された。
【0144】
さらに、複合炭素繊維から作製した積層パネルは、表2に示すSBSの結果によって証明されるように、層間強度の改善も示した。示されているように、例3の複合炭素繊維から作製した積層体は、対照繊維よりも7%を超える層間強度の増加を示した。
【0145】
例4:IM−7 12K繊維トウ上への分枝PEIの電解グラフト及びBMI樹脂を用いて作製した積層体のSBS評価
【0146】
本例では、例3の複合炭素繊維及びBMI樹脂を用いて積層パネルを作製した。例3と同様に、上のパネルをSBSで評価した。結果を以下の表3にまとめる。
【表3】
【0147】
例4と同様に、複合炭素繊維を用いて調製した積層体は、対照炭素繊維から作製した積層体と比較して、層間強度の改善を示した。例3で複合炭素繊維から作製した積層体は、対照繊維と比較して層間強度のほぼ10%の増加を示した。
【0148】
比較例4及び5:IM−7 12K繊維トウ上へのトリス(2−アミノエチル)アミン(TAEA)の電解グラフト及びエポキシ(EPOXY)樹脂を用いて作製した積層体のSBS評価
【0149】
比較例4及び5において、炭素繊維の表面上にTAEAをグラフトして複合炭素繊維を製造した。次に、エポキシ(EPOXY)樹脂(比較例4)又はBMI樹脂(比較例5)を用いて積層パネルを調製し、SBSによって評価した。支持電解質(S.E.)としてのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラートの20mM MEOH溶液及び1.25重量% TAEAを含む槽を調製した。上記の手順に従って、TAEAをIM−7炭素繊維トウ上に電解グラフトした。複合炭素繊維もXPSを用いて評価した。
【表4】
【0150】
XPS分析(表4)は、対照繊維と比較すると、75.6%の表面窒素濃度の増加を示した。この濃度はメタノール中での長期の超音波処理(30分)時に不変のままであり、TAEAが表面上に共有結合していることを示した。複合炭素繊維は支持電解質からの微量のフッ素及びホウ素も含有し、これらは超音波処理によって除去された。
【0151】
複合炭素繊維は、TAEAの電解グラフトのために窒素含有量の中程度の増加を示したが、表4に示すSBSの結果から明らかなように、この増加は層間強度の増加にはつながらなかった。従って、積層体の層間強度の改善を達成するためにアミン官能化ポリマーを使用することの重要性がわかる。
【0152】
例6及び7:IM−7 12K繊維トウ上へのB−PEI−2の電解グラフト並びにBMI及びエポキシ(EPOXY)樹脂を用いて作製した積層体のSBS評価
【0153】
この例では、複合炭素繊維を、B−PEI−2を用いて作製した。B−PEI−2は約800の重量平均分子量を有する。複合炭素繊維を例3に記載したように作製して、XPSで評価した。積層パネルもエポキシ(EPOXY)樹脂及びBMI樹脂を用いて作製し、次いでSBSによって評価した。結果を以下の表5にまとめる。
【表5】
【0154】
表5からのXPS分析は、対照繊維と比較して126.8%の表面窒素濃度の増加を示した。この窒素濃度の増加は、高分子量ポリマーの電解グラフトと比較して小さかった(例えば上記の例3を参照のこと)。窒素濃度はメタノール中での長期の超音波処理(30分)時に不変のままであり、B−PEI−2が炭素繊維の表面上に共有結合していることを示した。グラフト化繊維は支持電解質からの微量のフッ素及びホウ素も含有し、これらは超音波処理によって除去された。
【0155】
SBSデータは、対照炭素繊維と比較して、エポキシ(EPOXY)積層パネル(例6)及びBMI積層パネル(例7)の両方について、層間強度のごくわずかな増加を示した。表5から、低分子量PEIは積層パネルの層間強度特性を統計的に改善しなかったことがわかる。
【0156】
例8:IMU 12K繊維トウ上への分枝B−PEI−1の電解グラフト及びBMI樹脂で作製された積層体のSBS評価
【0157】
以下の例では、電解グラフトIMU炭素繊維(未処理12,000フィラメントトウ)を含む積層体の層間強度特性を評価した。1.25重量%の分枝B−PEI−1を含有するテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート支持電解質(S.E.)の20mM MeOH溶液を含む槽に、IMU炭素繊維を通過させることによって、複合炭素繊維を作製した。複合炭素繊維をXPSで評価した。積層パネルは複合炭素繊維とBMI樹脂によって作製した。積層パネルをSBSで評価した。結果を以下の表6にまとめる。
【表6】
【0158】
表6のXPS分析は、対照8の炭素繊維と比較すると、窒素濃度の有意な増加を示した。特に、例8の電解グラフト炭素繊維は、対照炭素繊維と比較して、495.5%の表面窒素濃度の増加を示した。この濃度はメタノール中での長期の超音波処理(30分)時に不変のままであり、B−PEI−1が炭素繊維の表面上に共有結合していることを示した。電解グラフト繊維は支持電解質からの微量のフッ素及びホウ素も含有し、これらは超音波処理によって除去することができた。
【0159】
さらに、電解グラフト繊維(例8)は、先の例と比較して、酸素表面濃度のかなり有意な増加を有することが認められた。この現象は、無水溶媒を使用したとしても完全に除去できない、試薬(特にPEI)中の水の存在及びIMU繊維表面自体の反応性のためであると考えられる。また、電解処理槽中でのすべてのIMUランの終了時に、少量の炭素性沈殿物の形成が認められた。これは、IMU繊維表面上で同時に発生している、複数の未確認プロセスの結果であり得る。(PEI又はTAEAなしの)ブランクラン中でも、多少の表面エッチング及び表面酸化が発生したものと見受けられた。
【0160】
この結果を受けて、槽がいずれのポリマーも含まない、ブランクランを作製した(対照9)。対照9の炭素繊維は、電解グラフト中の水の存在による可能性が最も高いと考えられる、酸素のいくらかの増加量を有することが見出された。結果として、例8と対照9のSBSデータを比較することが決定された。対照8の繊維のSBSデータは評価されなかった。見られるように、未処理のIMU炭素繊維も、対照9の炭素繊維と比較して、層間強度の改善を示した。この場合、本発明の複合炭素繊維は、対照9と比較して、ほぼ23%を超えるSBSの改善を示した。
【0161】
上記の複雑な状況により、表6の上記の例の結果の明確な解釈が困難であることに留意すべきである。IMU繊維のすべての場合において、認められたSBS強度は、(どちらも標準方法によって電気化学的に処理された)グラフトIM−7繊維及び供給IM−7繊維を含んで構成された積層体のSBS強度よりも、はるかに低い。IM−7グラフト繊維とIMUグラフト繊維のどちらも同程度の量のグラフトPEI又はTAEAを有する(XPS)ものと見受けられるので、これは興味深い観測である。この結果によって、繊維の表面トポロジー(粗度)の重要性が強調されるように思われる。
【0162】
比較例6:IMU 12K繊維トウ上へのTAEAの電解グラフト及びBMI樹脂を用いて作製した積層体の評価
【0163】
この例では、未処理のIMU炭素繊維上にTAEAを電解グラフトした。得られた複合繊維を使用して、BMI樹脂との積層体を作製した。複合炭素繊維及び積層パネルをそれぞれXPS及びSBSによって評価した。結果を以下の表7にまとめる。
【表7】
【0164】
XPS分析(表7)は、対照繊維と比較すると、177.3%の表面窒素濃度の増加を示した。この濃度はメタノール中での長期の超音波処理(30分)時に不変のままであり、TAEAが表面上に共有結合していることを示した。電解グラフト繊維は支持電解質からの微量のフッ素及びホウ素も含有し、これらは超音波処理によって除去された。先の例と同様に、電解グラフト繊維では酸素表面濃度の増加が認められ、そのため(槽中にTAEAを含まない)ブランクを作製した。ブランク炭素繊維(対照10)は、電解グラフト中の水の存在による可能性が最も高いと考えられる、酸素のいくらかの増加量を有することが見出された。比較例6及び対照繊維9にSBS評価を行った。結果を上の表7にまとめる。TAEAグラフト繊維は10%のSBS増加を示したが、PEIグラフト炭素繊維(例8)の改善は、はるかに有意であった。どちらの例(例8及び比較例5)も同じ対照を用いた。
【0165】
以下の例では、炭素繊維がIM−X炭素繊維を含む複合炭素繊維を作製した。先の例と同様に、複合炭素繊維をXPSで評価し、それから作製した積層パネルをSBSによって評価した。
【0166】
例9及び10:IM−X未処理12K繊維トウ上へのB−PEI−1の電解グラフト並びにBMI及びエポキシ(EPOXY)樹脂を用いて作製した積層体のSBS評価
【0167】
この例では、複合炭素繊維を、B−PEI−1及びIM−X炭素繊維を用いて作製した。複合炭素繊維を例3に記載したように作製して、XPSで評価した。具体的には、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート支持電解質(S.E.)の20mM MeOH溶液及び1.25重量%のB−PEI−1を含む槽を調製した。複合炭素繊維を前述のように作製した。次いで繊維をXPSで評価した。結果を以下の表8にまとめる。表8に見られるように、電解グラフト炭素繊維は、対照炭素繊維と比較して、53.2%の表面N濃度の増加を有した。
【0168】
積層パネルもエポキシ(EPOXY)(例9)樹脂及びBMI(例10)樹脂を用いて作製し、次いでSBSによって評価した。XPS及びSBS評価についての結果を以下の表8にまとめる。
【表8】
【0169】
エポキシ系積層体(例9)について、SBSの結果は、対照炭素繊維から作製した積層体と比較して、層間強度の12%の改善を示した。BMI系積層体(例10)は、対照炭素繊維から作製した積層体と比較して、45.9%を超える層間強度の改善を示した。
【0170】
例11及び12:IM−X未処理12K繊維トウ上への分枝B−PEI−1の水性電解グラフト並びにエポキシ(EPOXY)樹脂及びBMI樹脂で作製した積層体の評価
【0171】
硫酸ナトリウム支持電解質(S.E.)の0.5M水溶液及び1.25重量%の分枝B−PEI−1の槽を調製した。B−PEI−1を前述の方法及び条件で炭素繊維上に電解グラフトした。槽がポリマーを含有しない「ブランクラン」繊維(対照13及び対照15)も作製した。得られた炭素繊維で、エポキシ(EPOXY)樹脂(例11)及びBMI樹脂(例12)を含む積層パネルを作製した。前述のように、複合炭素繊維及び積層パネルをそれぞれXPS及びSBSによって評価した。結果を以下の表9にまとめる。表9に見られるように、電解グラフト炭素繊維は、対照炭素繊維と比較して、106.5%のN表面濃度の増加を有した(対照12)。
【表9】
【0172】
水性グラフトは、多少より複雑であった。IMU(表面未処理)繊維のように、及びIM−7(100%表面処理)とは異なり、IM−X繊維はさらに改質が容易であり、このことは「ブランクラン」繊維のXPS分析により明らかとなっている(対照13及び15)。表面の化学的性質の非常に有意な変化、すなわちO濃度のほぼ2倍の増加が認められた。そのため、IMU繊維の場合と全く同様に、SBS特性の比較のために、「ブランクラン」繊維を製造した。供給繊維からの積層体と比較すると、「ブランクラン」繊維を含んで構成された積層体においてSBS特性の改善が認められたため、この添加は正しいとされた。この結果は、水性ブランク条件におけるIM−X供給繊維の追加の表面処理によるものと考えられる。しかし、PEI(水性)でグラフトした繊維は、初期のIM−X 12K繊維と比較すると、ならびにエポキシ複合材料及びBMI複合材料の両方で互いに比較すると、SBS特性で「ブランクラン」繊維よりはるかに有意な増加をなお示していた。
【0173】
表9から、炭素繊維上へのB−PEI−1の水性電解グラフトによって、対照−12と比較して、繊維表面上の窒素濃度の106.5%の増加および複合炭素繊維を用いて作製した積層パネルの層間強度の増加が生じることがわかる。特に、エポキシ(EPOXY)を含んで構成された積層パネル(例11)は、対照繊維(対照12)と比較して、16%を超える層間強度の増加を示した。同様に、BMI系積層パネル(例12)は、対照繊維(対照−14)と比較して、59%を超える層間強度の増加を示した。
【0174】
例13及び14:IM−7処理12K繊維トウ上への直鎖PAHの電解グラフト並びにエポキシ(EPOXY)樹脂及びBMI樹脂で作製した積層体の評価
【0175】
この例では、アミン官能化ポリマーとしてPAHを使用した電解グラフトを評価した。テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート支持電解質(S.E.)の20mM MEOH溶液及び1.25重量%のPAHの槽を調製した。上記の手順に従って、PAHをIM−7 12,000フィラメントトウ上に電解グラフトした。得られた炭素繊維で、エポキシ(EPOXY)樹脂及びBMI樹脂を含む積層パネルを作製した。前述のように、複合炭素繊維及び積層パネルをそれぞれXPS及びSBSによって評価した。結果を以下の表10にまとめる。
【表10】
【0176】
表10から、炭素繊維上へのPAHの電解グラフトは、対照炭素繊維と比較して、炭素繊維の表面上の窒素濃度の60.3%の増加をもたらすことがわかる。さらに、炭素繊維上へのPAHの電解グラフトも、複合炭素繊維を用いて作製した積層パネルの層間強度の増加をもたらした。特に、エポキシ(EPOXY)を含んで構成された積層パネル(例13)は、対照繊維(対照16)と比較して、5%を超える層間強度の増加を示した。同様に、BMI系積層パネル(例14)は、対照繊維(対照17)と比較して、12%を超える層間強度の増加を示した。
【0177】
例15:IM−7 12K繊維トウ上へのL−PEIの電解グラフト化及びエポキシ(EPOXY)樹脂で作製した積層体の評価
【0178】
この例では、アミン官能化ポリマーとしてL−PEIを使用した電解グラフトを評価した。テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート支持電解質(S.E.)の20mM MEOH溶液及び1.25重量%のL−PEIの槽を調製した。上記の手順に従って、L−PEIをIM−7 12,000フィラメントトウ上に電解グラフトした。得られた炭素繊維を、エポキシ(EPOXY)樹脂を含む積層パネルに調製した。前述のように、複合炭素繊維及び積層パネルをそれぞれXPS及びSBSによって評価した。結果を以下の表11にまとめる。
【表11】
【0179】
表11から、炭素繊維上へのL−PEIの電解グラフトによって、繊維の表面上の窒素濃度の増加、並びに複合炭素繊維を用いて作製した積層パネルの層間強度の増加が生じることがわかる。特に電解グラフト炭素繊維は、対照と比較して55.5%の表面窒素濃度の増加を示し、エポキシ(EPOXY)系積層パネル(例15)は、対照繊維(対照18)と比較して、6%を超える層間強度の増加を示した。
【0180】
特にポリマーは、分枝ポリエチレンイミン(PEI)とは、第2級アミン基のみが存在するという点で、全く異なる構造を有していた。第2級アミンは基材に電解グラフトすることが既知であったが、第1級アミンよりも効率が低かった。それにもかかわらず、これらの種類のポリマーは繊維上にグラフトすることができ、エポキシ複合材料の場合には層間特性の明らかな改善が認められた。
【0181】
例16:IM−7 12K繊維トウ上へのB−PEI−1の自発的グラフト及びエポキシ(EPOXY)樹脂中で作製した積層体の評価
【0182】
テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート支持電解質(S.E.)の20mM MEOH溶液及び1.25重量%のB−PEI−1の槽を調製した。槽にトウを通過させることによって、IM−7 12,000フィラメントトウ上にB−PEI−1をグラフトした。槽には電圧を印加しなかった。得られた炭素繊維を、エポキシ(EPOXY)樹脂を含む積層パネルに調製した。前述のように、複合炭素繊維及び積層パネルをそれぞれXPS及びSBSによって評価した。結果を以下の表12にまとめる。
【表12】
【0183】
本発明者が驚いたことに、XPS分析は、対照炭素繊維(対照19)と比較した場合、表面窒素濃度の有意な増加(76.2%)を示した。特に、この濃度増加は、B−PEI−1、L−PEIおよびPAHが炭素繊維上に電解グラフトされた例の濃度増加に匹敵した。
【0184】
例16において、本発明者は、炭素繊維上へのアミン含有ポリマーの自発的グラフト/付着の可能性を評価した。セルにいかなる電位が印加されなくても、分枝PEIは、エポキシ樹脂で得られる積層体のショートビーム剪断強度の改善に有意に十分な量でIM−7繊維に付着できると思われる。セルに電位が全く印加されていなくても、通常0.7〜0.8Vの電位が繊維で測定され(開路電位)、とりわけ、第1級アミン(通常、第1級アミノ基では1.5〜1.6Vの範囲)よりも低い電位にてラジカルカチオンを生成することが既知である第2級及び第3級アミノ基を含有する、PEIの場合には、この電位がカチオンラジカルを生成するのに十分であり得ることに留意すべきである。アミンの自発的グラフトは、典型的な電解グラフトよりもはるかに効率が低いと報告している人もいる。しかし、これまで「小形」分子のみが研究されており、「大形」ポリマー分子については、表面上に多くの官能基を導入するために繊維表面と多くの結合を形成する必要がないかもしれないことを指摘しなければならない。このため、第二級アミン(例15)及び自発的グラフト(例16)で示したように、たとえ低効率グラフトであっても、樹脂マトリックスとのさらなる反応及び層間特性の改善に足るアミン官能基を導入にするために十分であり得る。
【0185】
例17:HM−63 12K繊維トウ上へのB−PEI−1のグラフト化及びエポキシ(EPOXY)樹脂で作製した積層体の評価
【0186】
この例では、アミン官能化ポリマーとしてB−PEI−1を使用した電解グラフトを評価した。テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート支持電解質(S.E.)の20mM MEOH溶液及び1.25重量%のB−PEI−1の槽を調製した。上記の手順に従って、HM−63 12,000フィラメントトウ上にB−PEI−1を電解グラフトした。得られた炭素繊維を、エポキシ(EPOXY)樹脂を含む積層パネルに調製した。前述のように、複合炭素繊維及び積層パネルをそれぞれXPS及びSBSによって評価した。結果を以下の表13にまとめる。
【表13】
【0187】
表13から、炭素繊維上へのB−PEI−1の電解グラフトによって、繊維の表面上の窒素濃度の増加、および複合炭素繊維を用いて作製した積層パネルの層間強度の増加が生じることがわかる。特に、電解グラフト炭素繊維は、2,900%の表面窒素濃度の増加を示し、エポキシ(EPOXY)系積層パネル(例17)は、対照繊維(対照20)と比較して5%を超える層間強度の増加を示した。
【0188】
特許請求の範囲の概要
【0189】
1.表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維を含む、複合炭素繊維。
【0190】
2.前記複合炭素繊維が少なくとも0.125である窒素/炭素(N/C)比を有する、請求項1に記載の複合炭素繊維。
【0191】
3.前記複合炭素繊維が少なくとも0.150であるN/C比を有する、請求項1に記載の複合炭素繊維。
【0192】
4.前記複合炭素繊維が約0.15〜0.3であるN/C比を有する、請求項1〜3のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0193】
5.複合炭素繊維が約0.15〜0.2であるN/C比を有する、請求項1〜4のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0194】
6.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも50%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜5のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0195】
7.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも75%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜6のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0196】
8.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも100%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜7のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0197】
9.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも125%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜8のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0198】
10.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも150%、例えば少なくとも175%、少なくとも200%又は少なくとも250%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜9のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0199】
11.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも495%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜10のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0200】
12.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜500%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜11のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0201】
13.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約100〜500%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜12のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0202】
14.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約150〜500%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜13のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0203】
15.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約200〜500%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜14のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0204】
16.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約100〜250%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜15のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0205】
17.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約125〜200%である窒素表面濃度の増加を示す、請求項1〜16のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0206】
18.前記アミン官能化ポリマーが、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)及びブロックコポリマー、コア−シェル粒子並びにその組合せからなる群から選択される、請求項1〜17のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0207】
19.前記アミン官能化ポリマーが分枝ポリエチレンイミンを含む、請求項1〜18のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0208】
20.前記炭素繊維が少なくとも400ksiの引張強度を有する、請求項1〜19のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0209】
21.前記炭素繊維が約600〜1,050ksiの引張強度を有する、請求項1〜20のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0210】
22.前記アミン官能化ポリマーが、約5,000〜35,000の範囲に及ぶ重量平均分子量を有する、請求項1〜21のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0211】
23.請求項1〜22のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維を含む、繊維強化複合材料。
【0212】
24.表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維及び前記炭素繊維に注入された樹脂マトリックスを含む繊維強化複合材料であって、ショートビーム剪断(SBS)試験によって特徴付けられるように、約17〜25ksiの層間強度を示す、繊維強化複合材料。
【0213】
25.前記繊維強化複合材料の層間強度が、SBSによって特徴付けられるように、約20〜22ksiである、請求項24に記載の繊維強化複合材料。
【0214】
26.前記繊維強化複合材料が、前記炭素繊維の表面がアミン官能化ポリマーを含まないことを除いて前記炭素繊維が同一である、同様の繊維強化複合材料と比較して、約5〜25%の範囲に及ぶSBSの増加を示す、請求項24又は25に記載の繊維強化複合材料。
【0215】
27.前記複合炭素繊維の表面が、約0.15〜0.3である窒素/炭素(N/C)比を有する、請求項24〜26のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料。
【0216】
28.前記樹脂が、エポキシ系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、シアナートエステル系樹脂及びフェノール系樹脂からなる群から選択される、請求項24〜27に記載の繊維強化複合材料。
【0217】
29.前記炭素繊維が、約600〜1,050ksiの引張強度を有する、請求項24〜28のいずれか一項以上に記載の繊維強化複合材料。
【0218】
30.前記アミン官能化ポリマーが、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)およびその組合せからなる群から選択される、請求項24〜29のいずれか一項以上に記載の繊維強化複合材料。
【0219】
31.前記アミン官能化ポリマーが分枝ポリエチレンイミンを含む、請求項24〜30のいずれか一項以上に記載の繊維強化複合材料。
【0220】
32.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも325%、少なくとも350%、少なくとも375%、少なくとも400%、少なくとも425%、少なくとも450%、少なくとも475%又は少なくとも500%のいずれか1つ以上の窒素濃度の表面における増加を示す、請求項24〜31のいずれか一項以上に記載の繊維強化複合材料。
【0221】
33.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜3,000%、例えば約100〜500%、約150〜500%、約100〜250%又は約125〜200%の範囲に及ぶ窒素濃度の表面における増加を示す、請求項24〜31のいずれか一項以上に記載の繊維強化複合材料。 34.請求項24〜33のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料を含む、航空宇宙部品。
【0222】
35.表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた炭素繊維を含む複合炭素繊維であって、
a)少なくとも0.125である窒素/炭素(N/C)比、及び/又は
b)前記炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜3,000%である窒素表面濃度の増加
を特徴とする、複合炭素繊維。
【0223】
36.前記複合炭素繊維が、約0.15から0.3、例えば約0.15〜0.2及び約0.165〜0.195である窒素/炭素(N/C)比を示す、請求項35に記載の複合炭素繊維。
【0224】
37.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも325%、少なくとも350%、少なくとも375%、少なくとも400%、少なくとも425%、少なくとも450%、少なくとも475%又は少なくとも500%のいずれか1つ以上の窒素濃度の表面における増加を示す、請求項35又は36に記載の複合炭素繊維。
【0225】
38.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜500%、例えば約100〜500%、約150〜500%、約100〜250%又は約125〜200%の範囲に及ぶ窒素濃度の表面における増加を示す、請求項35〜37のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維。
【0226】
39.前記アミン官能化ポリマーが、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)およびその組合せからなる群から選択される、請求項35〜38のいずれか一項に記載の複合炭素繊維。
【0227】
40.前記アミン官能化ポリマーが、分枝ポリエチレンイミンを含む、請求項35〜39のいずれか一項に記載の複合炭素繊維。
【0228】
41.前記炭素繊維が、少なくとも400ksiの引張強度を有する、請求項35〜40のいずれか一項に記載の複合炭素繊維。
【0229】
42.前記炭素繊維が、約600から1,050ksiの引張強度を有する、請求項35〜41のいずれか一項に記載の複合炭素繊維。
【0230】
43.前記アミン官能化ポリマーが約5,000〜35,000の範囲に及ぶ重量平均分子量を有する、請求項35〜42のいずれか一項に記載の複合炭素繊維。
【0231】
44.請求項35〜43のいずれか一項以上に記載の複合炭素繊維を含む繊維強化複合材料。
【0232】
45.請求項1〜44のいずれか一項に記載の複合炭素繊維を作製する方法であって、アミン官能化ポリマーを含む槽に炭素繊維を通過させること、セルに電位を印加すること、及び前記アミン官能化ポリマーを前記炭素繊維上に電解グラフトして、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた複合炭素繊維を製造すること、を含む方法。
【0233】
46.複合炭素繊維を作製する方法であって、アミン官能化ポリマーを含む槽に炭素繊維を通過させること、セルに電位を印加すること、及び前記アミン官能化ポリマーを前記炭素繊維上に電解グラフトして、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされた複合炭素繊維を製造することを含み、前記複合炭素繊維がa)少なくとも0.125である窒素/炭素(N/C)比、及び/又はb)前記炭素繊維の表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜500%である窒素表面濃度の増加を特徴とする、方法。
【0234】
47.前記複合炭素繊維が約0.15〜0.3、例えば約0.15〜0.2及び約0.165〜0.195である炭素/窒素(N/C)比を示す、請求項46に記載の方法。
【0235】
48.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも325%、少なくとも350%、少なくとも375%、少なくとも400%、少なくとも425%、少なくとも450%、少なくとも475%又は少なくとも500%のいずれか1つ以上の窒素濃度の表面における増加を示す、請求項46又は47に記載の方法。
【0236】
49.前記複合炭素繊維が、表面上にアミン官能化ポリマーが電解グラフトされていない元の炭素繊維と比較して、約50〜3,000%、例えば約100〜500%、約150〜500%、約100〜250%又は約125〜200%の範囲に及ぶ窒素濃度の表面における増加を示す、請求項46〜48のいずれか一項以上に記載の方法。
【0237】
50.前記アミン官能化ポリマーが、直鎖ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリエチレンイミン(PEI)、分枝ポリプロピレンイミン、直鎖ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ(アリルアミン)をジビニルベンゼンによって分枝させることにより調製された分枝ポリ(アリルアミン)(PAADVB)およびその組合せからなる群から選択される、請求項46〜49のいずれか一項以上に記載の方法。
【0238】
51.前記アミン官能化ポリマーが分枝ポリエチレンイミンを含む、請求項46〜50のいずれか一項以上に記載の方法。
【0239】
52.前記炭素繊維が少なくとも400ksiの引張強度を有する、請求項46から51のいずれか一項以上に記載の方法。
【0240】
53.前記炭素繊維が約600〜1,050ksiの引張強度を有する、請求項46〜52のいずれか一項以上に記載の方法。
【0241】
54.前記アミン官能化ポリマーが約5,000〜35,000の範囲に及ぶ重量平均分子量を有する、請求項46〜53のいずれか一項以上に記載の方法。
【0242】
55.前記アミン官能化ポリマーを前記炭素繊維上に電解グラフトするステップが、30秒〜2分間の期間にわたって継続する、請求項46〜54のいずれか一項以上に記載の方法。
【0243】
56.前記アミン官能化ポリマーを前記炭素繊維上に電解グラフトするステップが、45秒から90秒の期間にわたって継続する、請求項46〜54のいずれか一項以上に記載の方法。
図1