特許第6961008号(P6961008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961008プローブ案内部品、プローブカードおよびパッケージ検査用ソケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961008
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】プローブ案内部品、プローブカードおよびパッケージ検査用ソケット
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/5835 20060101AFI20211025BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20211025BHJP
   C04B 35/596 20060101ALI20211025BHJP
   C04B 35/488 20060101ALI20211025BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C04B35/5835
   C04B35/577
   C04B35/596
   C04B35/488
   G01R1/073 D
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-548833(P2019-548833)
(86)(22)【出願日】2018年10月19日
(86)【国際出願番号】JP2018039052
(87)【国際公開番号】WO2019078364
(87)【国際公開日】20190425
【審査請求日】2020年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2017-203052(P2017-203052)
(32)【優先日】2017年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591034280
【氏名又は名称】株式会社フェローテックマテリアルテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】山岸 航
(72)【発明者】
【氏名】森 一政
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 俊一
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−500704(JP,A)
【文献】 特開2000−327402(JP,A)
【文献】 特開平08−012440(JP,A)
【文献】 特開平01−183465(JP,A)
【文献】 特開昭60−260197(JP,A)
【文献】 特開2012−215527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
G01R 1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブカードのプローブを案内するプローブ案内部品であって、
セラミックスを用いた板状の本体部と、
前記本体部に、前記プローブを挿通する複数の貫通孔および/またはスリットとを備え、
前記セラミックスが、質量%で、
BN:20.0〜55.0%、
SiC:5.0〜40.0%、
ZrO、または、ZrOおよびSi:3.0〜60.0%を含み、
残部は、1.0〜15.0%の焼結助剤である、
プローブ案内部品。
【請求項2】
前記セラミックスの−50〜500℃における熱膨張係数が1.0×10−6〜5.0×10−6/℃である、
請求項1に記載のプローブ案内部品。
【請求項3】
前記セラミックスの体積抵抗率が、10〜1014Ω・cmである、
請求項1または2に記載のプローブ案内部品。
【請求項4】
前記セラミックスの吸水率が、0.5%以下である、
請求項1から3までのいずれかに記載のプローブ案内部品。
【請求項5】
複数のプローブと、
請求項1から4までのいずれかに記載のプローブ案内部品とを備える、
プローブカード。
【請求項6】
質量%で、
BN:20.0〜55.0%、
SiC:5.0〜40.0%、
ZrO、または、ZrOおよびSi:3.0〜60.0%を含み、
残部は、1.0〜15.0%の焼結助剤である、セラミックスを用いた、
パッケージ検査用ソケット。
【請求項7】
前記セラミックスの−50〜500℃における熱膨張係数が1.0×10−6〜5.0×10−6/℃である、
請求項6に記載のパッケージ検査用ソケット。
【請求項8】
前記セラミックスの体積抵抗率が、10〜1014Ω・cmである、
請求項6または7に記載のパッケージ検査用ソケット。
【請求項9】
前記セラミックスの吸水率が、0.5%以下である、
請求項6から8までのいずれかに記載のパッケージ検査用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ案内部品、プローブカードおよびパッケージ検査用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の精密機器を製造する工程においては、静電気放電による製造物へのダメージ、不良発生等を抑制するため、また、環境中に浮遊しているパーティクルの静電気吸着を防止するため、静電気対策を施した低帯電性材料が用いられている。
【0003】
例えば、ICチップの検査工程においては、プローブカードが用いられる。図1には、プローブカードの構成を例示した断面図を示し、図2には、プローブガイドの構成を例示した上面図を示す。図1に示すように、プローブカード10は、針状のプローブ11と、各プローブ11を挿通させるための複数の貫通孔12aを有するプローブガイド(プローブ案内部品)12を備える検査治具である。そして、ICチップ14の検査は、複数のプローブ11をシリコンウエハ13上に形成されたICチップ14に接触させることにより行われる。このとき、プローブガイド12には、静電気対策を施した低帯電性材料が用いられている。
【0004】
一般的な低帯電性材料としては、体積抵抗率で10〜1012Ω・cm程度の材料、例えば、導電性フィラーを添加した樹脂(特許文献1、2など)、導電性セラミックスを分散焼結させたセラミックス焼結体(特許文献3〜5など)などが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−226031号公報
【特許文献2】国際公開第2002/082592号
【特許文献3】特開2013−136503号公報
【特許文献4】特開2008−094688号公報
【特許文献5】特開2006−199586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年のデバイスの微細化や高性能化に伴い、それを製造する装置に用いられる静電気対策材には、低帯電性だけでなく、快削性、耐熱性、機械特性、熱膨張率などの各種性能の向上が要求されている。
【0007】
例えば、ICチップの検査工程の検査効率は、ICチップに同時に接触できるプローブの本数に依存する。このため、近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により、数万本の微小なプローブを高密度に立設したプローブカードが実用化されつつある。前掲の図2に示すように、プローブガイド12には、プローブカード10の各プローブ11に対応する位置に貫通孔12aを設ける必要がある。プローブカード10のプローブ11の設置位置や形状などは、その検査装置の仕様によって様々であり、それに応じて、貫通孔12aの設置位置や形状なども様々である。例えば、プローブ11がピン形状の場合は、貫通孔12aとしては円形の穴が採用される。穴の内径や穴のピッチもプローブ11の種類や配置によるが、例えば、直径50μmの貫通孔を60μmピッチ(貫通孔間の壁厚は10μm程度)で設ける場合がある。このような小さな貫通孔を数万個設ける必要があるため、快削性が必要となる。
【0008】
プローブガイドには、検査を様々な温度環境で行なうために、耐熱性に優れることが求められる。プローブガイドには、シリコンウエハと同程度の熱膨張率であることも求められる。プローブガイドには、検査時の接触などに耐えるため、機械的特性に優れることも求められる。以上、主として、プローブガイドについて説明したが、優れた低帯電性と、快削性が要求される用途としては、パッケージ検査用ソケットなどの検査用ソケットがある。
【0009】
ここで、特許文献1および2に記載される導電性フィラーを添加した樹脂の場合、剛性や耐熱性(使用温度)が低いことから、検査治具として用いる場合にプローブ数(耐荷重)や検査温度域が限られる。また、このような樹脂は、低熱伝導率で高熱膨張率であるため、加工中の熱により素材が膨張するので、加工後に所望の寸法精度が得られないことがある。
【0010】
一方、Alを主相とするセラミックス(特許文献3)、ZrOを主相とするセラミックス(特許文献4および5)の場合、低帯電性に優れているものの、硬度が高すぎるため、微細加工、特に、機械加工による切削が困難である。このため、例えば、これらの材料を用いてプローブガイドを製作する場合には、極端に製造時間が長期化するという問題がある。
【0011】
本発明は、低帯電性(体積抵抗率で10〜1014Ω・cm)および快削性に優れるセラミックス、そのセラミックスを用いたプローブ案内部品、プローブカードおよび検査用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
(a)本発明者らは、まず、セラミックス焼結体の快削性を向上させるための主相について検討したところ、Alを主相とするセラミックス、ZrOを主相とするセラミックスの場合、硬度が高すぎるため、微細加工が困難であるのに対して、BNを主相とするセラミックス焼結体は、優れた快削性を有することが分かった。よって、セラミックスの主相はBNとするのがよい。
(b)しかし、BNは、体積抵抗率が1015Ω・cmオーダーと高すぎるため、検査工程で使用し続けた際に電荷が蓄積される。蓄積した電荷をゆっくりと放出することができないため、静電気放電を起こす。その結果、検査対象物に電流が瞬間的に流れてしまい、場合によっては検査対象物が破損するという問題がある。よって、セラミックス焼結体の体積抵抗率を10〜1014Ω・cmの範囲に制御して低帯電性を付与するためには、セラミックス焼結体の母材に10Ω・cm以下程度の粒子を分散させるのが有効である。この分散粒子としては、特に、SiC、WC、C、TiN、TiOなどがある。しかし、WC、C、TiN、TiOの場合、SiCに比べて単体の体積抵抗率が低い。よって、BNを主相とするセラミックスに適量のSiCを分散させるのがよい。
(c)BNを主相とするセラミックスに適量のSiCを分散させただけでは、機械特性に劣る場合があるので、SiCとともに、ZrOおよび/またはSiを分散させるのが有効である。
(d)快削性と機械特性を両立させるには、緻密なセラミックス焼結体が望ましい。そのためには、加圧雰囲気下で焼成を行なう、ホットプレス焼成法を用いて作製するのがよい。
【0013】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、下記の発明を要旨とする。
【0014】
(1)質量%で、
BN:20.0〜55.0%、
SiC:5.0〜40.0%、
ZrOおよび/またはSi:3.0〜60.0%で構成されるセラミックス。
【0015】
(2)−50〜500℃における熱膨張係数が1.0×10−6〜5.0×10−6/℃である、
上記(1)のセラミックス。
【0016】
(3)体積抵抗率が、10〜1014Ω・cmである、
上記(1)または(2)のセラミックス。
【0017】
(4)吸水率が、0.5%以下である、
上記(1)〜(3)のいずれかのセラミックス。
【0018】
(5)プローブカードのプローブを案内するプローブ案内部品であって、
上記(1)〜(4)のいずれかのセラミックスを用いた板状の本体部と、
前記本体部に、前記プローブを挿通する複数の貫通孔および/またはスリットとを備える、
プローブ案内部品。
【0019】
(6)複数のプローブと、
上記(5)のプローブ案内部品とを備える、
プローブカード。
【0020】
(7)上記(1)〜(4)のいずれかのセラミックスを用いた、
パッケージ検査用ソケット。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低帯電性(体積抵抗率で10〜1014Ω・cm)および快削性に優れるセラミックスを得ることができるので、プローブ案内部品、プローブカードおよび検査用ソケットとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、プローブカードの構成を例示した断面図である。
図2図2は、プローブガイドの構成を例示した上面図である。
図3図3は、実施例1の微細化試験後の写真である。
図4図4は、比較例6の微細化試験後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.セラミックス
本発明に係るセラミックスは、質量%で、BN:20.0〜55.0%、SiC:5.0〜40.0%、ZrOおよび/またはSi:3.0〜60.0%で構成される。以下、含有量についての「%」は「質量%」を意味する。
【0024】
BN:20.0〜55.0%
本発明に係るセラミックスは、超硬工具で加工できる程度の快削性材料であることが求められるので、セラミックスに優れた快削性を付与するために、必須の成分として、20.0%以上のBNを含有させる。しかし、BNの含有量が55.0%を超えると、材料強度が低下し、貫通孔の加工時に貫通孔間の壁が崩れるという問題が生じる。よって、BNの含有量は、20.0〜55.0%とする。下限は25.0%とするのが好ましく、30.0%とするのがより好ましい。上限は、50.0%とするのが好ましく、45.0%とするのがより好ましい。
【0025】
なお、BNには、六方晶系BN(h−BN)と、立方晶系BN(c−BN)があるが、c−BNは、高硬度であるため、h−BNを用いるのがよい。BNの粒径は、特に制約はないが、大きすぎると材料強度の低下を生じることがあるため、平均粒径で5μm未満であることが好ましい。
【0026】
SiC:5.0〜40.0%
SiCは、セラミックスの体積抵抗率を10〜1014Ω・cmの範囲に制御するために必須の成分である。よって、SiCの含有量を5.0%以上とする。ただし、SiCの含有量が40.0%を超えると、体積抵抗率が10Ω・cmを下回ってしまい低帯電性材料として好適な体積抵抗率ではなくなってしまうだけでなく、材料硬度が上昇しすぎて快削性が損なわれるという問題が生じる。よって、SiCの含有量は、5.0〜40.0%とする。下限は10.0%とするのが好ましく、15.0%とするのがより好ましい。上限は、35.0%とするのが好ましく、30.0%とするのがより好ましい。
【0027】
なお、SiCの粒径は、特に制約はないが、大きすぎると、体積抵抗率のバラツキが大きくなるため、平均粒径で2.0μm未満であることが好ましい。また、BNを主体とするセラミックス中に分散状態で存在していることが好ましい。分散状態は、EDX(Energy dispersive X-ray spectrometry)により、Siの元素分析を行なうことで確認することができる。
【0028】
ZrOおよび/またはSi:3.0〜60.0%
ZrOおよびSiは、いずれもセラミックスの機械的特性を向上させるために必須の成分である。よって、ZrOおよび/またはSiの含有量を3.0%以上とする。ただし、ZrOおよび/またはSiの含有量が60.0%を超えると、硬度が上昇しすぎて、快削性が劣化し、高精度に微細穴を形成することができなくなる。よって、ZrOおよび/またはSiの含有量は、3.0〜60.0%とする。下限は5.0%とするのが好ましく、10.0%とするのがより好ましい。上限は、55.0%とするのが好ましく、50.0%とするのがより好ましい。なお、ZrOおよびSiの両方を含む場合には、合計の含有量を3.0〜60.0%とする。
【0029】
なお、ZrOおよび/またはSiの粒径は、特に制約はないが、大きすぎると、機械的特性のバラツキが大きくなるため、平均粒径で2μm未満であることが好ましい。また、BNを主体とするセラミックス中に分散状態で存在していることが好ましい。分散状態は、EDXによる元素分析により確認することができる。
【0030】
本発明に係るセラミックスには、上記の各成分のほか、緻密なセラミックスを得るために必要な焼結助剤が含まれる。焼結助剤としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al)、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化イットリウム(イットリア、Y)、およびランタノイド金属の酸化物およびスピネルなどの複合酸化物から選択される1種以上が挙げられる。これらの中でも好ましいのは、アルミナとイットリアの混合物、またはさらにマグネシアを含有させた混合物である。
【0031】
焼結助剤の含有量は、特に制約はないが、1.0〜15.0%とすることが望ましい。配合量が少なすぎると焼結が不十分となり、焼結体であるセラミックスの強度が低下する。一方、配合量が多すぎると、強度の低いガラスや結晶などで構成される粒界相が増加し、やはりセラミックスの強度低下を招く。さらに、粒界相は体積抵抗率が高いことから、配合量が多すぎるとセラミックスの体積抵抗率の増加を招き、低帯電性に悪影響を及ぼす。焼結助剤の含有量は、3.0%以上とするのが好ましく、5.0%以上とするのがより好ましい。また、焼結助剤の含有量は、12.0%以下とするのが好ましく、10.0%以下とするのがより好ましい。
【0032】
なお、各成分の含有量(質量%)は、ICP発光分光分析法により測定することができる。
【0033】
−50〜500℃における熱膨張係数:1.0×10−6〜5.0×10−6/℃
本発明に係るセラミックスをプローブガイドに用いる場合には、各ICチップが搭載されるシリコンウエハの熱膨張係数と同程度であることが求められる。これは、検査時の温度が変化したときに、シリコンウエハの熱膨張に従ってICチップの位置が変動する。このとき、プローブガイドが、シリコンウエハと同程度の熱膨張係数を有しておれば、シリコンウエハの膨張、収縮に同調して移動するので、高精度な検査を維持することができる。この点、本発明に係るセラミックスが検査用ソケットに用いられる場合も同様である。よって、−50〜500℃における熱膨張係数は、1.0×10−6〜5.0×10−6/℃であることを基準とする。
【0034】
体積抵抗率:10〜1014Ω・cm
本発明に係るセラミックスは、低帯電性を有することを特徴としており、体積抵抗率が10〜1014Ω・cmであることを基準とする。
【0035】
吸水率:0.5%以下
本発明に係るセラミックスは、必要な機械的特性を得るために緻密であることを要する。気孔の残留が多いと十分な機械的特性が得られないことがあるので、吸水率が0.5%以下であることを基準とする。
【0036】
曲げ強度:200MPa以上
本発明に係るセラミックスは、プローブガイドに使用したときには、検査時にプローブなどとの接触や荷重に耐えうるように、十分な機械的特性を有していることが求められる。この点、本発明に係るセラミックスが検査用ソケットに用いられる場合も同様である。このため、曲げ強度は、200MPa以上であることを基準とする。
【0037】
快削性
快削性は、超硬マイクロドリルによる切削加工によって、直径50μmおよび直径100μmの貫通孔を60μmピッチで1000個(8個×125列)設けたときの加工精度を、画像測定機(例えば(株)ミツトヨ製クイックビジョン)で観察することにより評価する。このとき、加工精度が±3.0μm以下である場合に快削性が良好であると判断する。
【0038】
2.セラミックスの製造方法
以下、本発明に係るセラミックスの製造方法の例について説明する。
【0039】
BN、SiC、ならびに、ZrOおよび/またはSiの粉末を焼結助剤とともに、ボールミルなどの公知の方法で混合する。すなわち、容器内で各粉末とともに、溶媒と、セラミックス製または鉄心入りの樹脂製ボールとともに混合してスラリー化する。この際、溶媒には水またはアルコールを用いることができる。さらには、必要に応じ分散剤やバインダーなどの添加物を用いてもよい。
【0040】
得られたスラリーをスプレードライや減圧エバポレーターなどの公知の方法で造粒する。すなわちスプレードライヤーで噴霧乾燥して顆粒化あるいは、減圧エバポレーターで乾燥して粉末化する。
【0041】
得られた粉末を高温高圧下で、例えばホットプレスまたはHIP(熱間等方圧加圧法)などの公知の方法で焼結して、セラミックス焼結体を得る。ホットプレスの場合、窒素雰囲気あるいは加圧窒素中で焼成してよい。また焼成温度は1400〜1900℃の範囲がよい。温度が低すぎると焼結が不十分になり、高すぎると酸化物成分の溶出などの問題が発生する。
【0042】
加圧力は15〜50MPaの範囲が適当である。また加圧力持続時間は温度や寸法によるが通常1〜4時間程度である。またHIPの場合においても、温度や加圧力などの焼成条件を適宜設定すればよい。このほか、常圧焼成法や雰囲気加圧焼成法などの公知の焼成方法を採用してもよい。
【実施例】
【0043】
本発明の効果を確認するべく、配合比を変化させた、BN(h−BN)、SiC、ならびに、ZrOおよび/またはSiの粉末を、焼結助剤(アルミナとイットリアの混合物、またはさらにマグネシアを含有させた混合物)とともに、水、分散剤、樹脂、セラミックス製のボールとともに混合し、得られたスラリーをスプレードライヤーで噴霧乾燥して顆粒状にした。得られた顆粒を黒鉛製のダイス(型)に充填し、窒素雰囲気中30MPaの圧力を加えながら1700℃で2時間ホットプレス焼成を行って、縦150×横150×厚さ30mmの試験材を得た。
【0044】
参考のため、市販の炭素繊維を添加した樹脂(比較例8)、市販のAlを主相とするセラミックス(比較例9)、市販のZrOを主相とするセラミックス(比較例10)を試験材として用意した。
【0045】
得られた試験材から試験片を採取して、各種の試験を行なった。
【0046】
<体積抵抗率>
上記の試験材の体積抵抗率をJIS C2141に従って求めた。
【0047】
<熱膨張率>
上記試験材の−50〜500℃における熱膨張係数をJIS R1618に従って求めた。
【0048】
<吸水率>
上記の試験材の吸水率をJIS C2141に従って求めた。
【0049】
<曲げ強度>
上記の試験材の三点曲げ強度をJIS R1601に従って求めた。
【0050】
<快削性>
快削性は、超硬マイクロドリルによる切削加工によって、直径50μmおよび直径100μmの貫通孔を60μmピッチで1000個(8個×125列)設けたときの加工精度(加工性精度が±3.0μm以下の場合を良好と判断する。)を目視観察により評価した。このとき、加工精度が±3.0μm以下である場合に快削性が良好であると判断し、「○」とし、加工精度が±3.0μm超の場合を「△」、ドリルが折れるなどして、穴開け加工そのものができない場合を「×」として、表1に記入した。
【0051】
【表1】
【0052】
図3には、実施例1の微細化試験後の写真を示し、図4には、比較例6の微細化試験後の写真を示している。
【0053】
表1に示すように、比較例1〜3は、BNを主相とし、ZrOおよび/またはSiを含む例であるが、SiCが少ないか、含まれないため、体積抵抗率が高くなりすぎた。比較例4は、BNが少なすぎるため、硬質なSiCが多すぎるため、微細加工試験において、快削性が劣化していた。比較例5、6は、SiCではなく、Cを含ませたものであるが、比較例5では、体積抵抗率が高くなりすぎ、比較例6では、快削性が劣化していた。比較例7は、Siを主相とし、TiOを含む例であるが、体積抵抗率が高すぎる上、快削性も劣化していた。比較例8〜10は、いずれも快削性が劣化していた。
【0054】
これに対して、実施例1〜16は、体積抵抗率および快削性ともに良好であった。実施例16は、求められる性能を満たしているものの、吸水率が0.8と高く、曲げ強度が若干劣っていた。また、図3および図4に示すように、比較例6では、切削加工時に貫通孔間の壁に崩れが生じたが、実施例1では、そのような崩れがなく、高精度に貫通孔を形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、低帯電性(体積抵抗率で10〜1014Ω・cm)および快削性に優れるセラミックスを得ることができるので、プローブ案内部品、プローブカードおよび検査用ソケットとして特に有用である。
図1
図2
図3
図4