(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度計測器は、前記静電容量の計測値に影響を及ぼす前記温度として、前記電極の表面温度、前記静電容量計測器の温度、前記冷媒管の表面温度、前記冷媒管の外周を覆う断熱材の温度、および、前記冷媒漏洩検知装置が設置された設置環境の気温のうちの少なくともいずれか1つを計測する、
請求項1または2に記載の冷媒漏洩検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る冷媒漏洩検知装置および冷媒漏洩検知方法の実施の形態、並びに、冷媒漏洩検知システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の実施の形態に示す構成のうち、組み合わせ可能な構成のあらゆる組み合わせを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係または形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10の構成を模式的に示した図である。なお、
図1においては、説明のために、一部の構成を透過させ破線で示している。
【0018】
冷媒漏洩検知装置10は、冷媒管1からの冷媒の漏洩を検知する。冷媒漏洩検知装置10は、
図1に示すように、電極3と、静電容量計測器5と、制御部6と、温度計測器7とを備えている。
【0019】
冷媒管1は、冷凍機または空調機等の冷凍サイクル装置に設けられている。冷媒は、冷媒管1の内部を流通する。冷媒管1は、金属製の円管から構成されている。冷媒管1の外周には、
図1に示すように、冷媒管1の外表面を覆う断熱材2が設けられている。冷媒管1を構成する金属としては、例えば銅が用いられる。
【0020】
冷媒管1の内部を流れる冷媒と周囲の気温との間には温度差があることが多い。特に、冷媒管1が屋外に配置されている場合には、屋内に配置されている場合に比べて、当該温度差が大きくなる。当該温度差を考慮して、冷媒管1内の冷媒の温度が周囲の気温によって変化することを抑制する目的で、多くの場合、断熱材2で冷媒管1を覆っている。また、予め断熱材に覆われた状態で市販されている配管部材もある。断熱材2を構成する材質としては、例えば発泡ポリエチレンが用いられる。実施の形態1では、そのような市販の配管部材を冷媒管1として用いてもよい。また、断熱材2は、必ずしも設けなくてもよい。その場合、コンデンサ4は、電極3と冷媒管1とから構成される。なお、静電容量Cの計測の精度を上げるために、電極3と冷媒管1との間に誘電体部材を挟む必要がある場合には、電極3を冷媒管1に取り付ける際に、何らかの誘電体部材を電極3と冷媒管1との間に挟むようにしてもよい。
【0021】
なお、以下の説明においては、
図1に示すように、冷媒管1を基準にして、他の部材についても、冷媒管1が延びる方向を「長手方向」と呼び、「長手方向」に直交する冷媒管1の径方向を「径方向」と呼ぶこととする。
【0022】
次に、冷媒漏洩検知装置10の電極3と、静電容量計測器5と、制御部6と、温度計測器7とについて説明する。
【0023】
電極3は、
図1に示すように、断熱材2の外周に取り付けられている。断熱材2は誘電体から構成されている。これにより、冷媒管1と、電極3と、断熱材2とから、コンデンサ4が形成される。
【0024】
電極3は、例えば一枚の金属薄板から構成される。金属薄板としては、例えばアルミニウム薄板、ステンレス薄板、あるいは、銅薄板などが用いられる。電極3は、
図1に示されるように、断熱材2の外周表面を一周するようにして巻き付けられている。
図1では、冷媒管1に対して、電極3が1つのみ設けられている例が示されているが、その場合に限定されない。複数の電極3を、冷媒管1の長手方向に沿って配列するようにしてもよい。その場合、電極3同士が接触しないように配置する。
【0025】
静電容量計測器5は、1対の端子5aおよび5bを有している。端子5aおよび5bは、ピンなどから構成される。端子5aは冷媒管1に電気的に接続され、端子5bは電極3に電気的に接続されている。これにより、静電容量計測器5は、コンデンサ4の静電容量Cを計測することができる。静電容量Cは、2つ以上の導電体が誘電体を挟んで絶縁されて配置されている場合に発生する。冷媒管1と電極3とは導電体であり、断熱材2は誘電体である。従って、冷媒管1と電極3とが断熱材2を挟んでいるため、静電容量Cが発生する。当該静電容量Cを、コンデンサ4の静電容量Cと呼ぶ。
【0026】
温度計測器7は、冷媒漏洩検知装置10が設置された設置環境の気温を計測する。温度計測器7は、望ましくは、電極3または静電容量計測器5の近傍の気温を計測する。実施の形態1では、温度計測器7は、電極3に接触せずに、電極3に対向して配置されている。
【0027】
制御部6は、静電容量計測器5と温度計測器7とに接続されている。制御部6は、静電容量計測器5で計測された静電容量Cと、温度計測器7で計測された温度とに基づいて、冷媒の漏洩を検知する。
【0028】
制御部6は、処理回路により実現される。処理回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの専用のハードウェア、または、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサなどの演算装置、もしくは、その両方で構成される。メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスクなどから構成される。制御部6は、当該処理回路を用いて処理を行い、冷媒の漏洩の有無を判定して、冷媒の漏洩を検知する。
【0029】
次に、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10が、冷媒漏洩を検知する動作原理について、
図2および
図3を用いて説明する。
図2は、
図1のA−A断面を模式的に示した図である。また、
図3は、
図1のコンデンサ4の等価回路を示す図である。
【0030】
金属製の冷媒管1は、内部に、冷媒と冷凍機油とが混合した流体が流れている。上述したように、冷媒管1と断熱材2と電極3とからコンデンサ4が形成されている。
図2に示すように、冷媒管1と断熱材2との間にはわずかな空隙20が形成される。従って、コンデンサ4は、
図3の等価回路に示されるように、電極3と空隙20との間の第1コンデンサ4aと、空隙20と冷媒管1との間の第2コンデンサ4bとが直列接続されたものとして考えることができる。このとき、空隙20の径方向の幅gが、冷媒管1の外周全体において一様であると仮定すると、コンデンサ4の静電容量Cは、第1コンデンサ4aの静電容量Cinsと第2コンデンサ4bの静電容量Cgapとの合成静電容量となる。従って、コンデンサ4の静電容量Cは、下記の式(1)〜(3)で表される。なお、「一様」とは、バラツキがなく、すべて同じであることをいう。
【0034】
ここで、ε
0は空気の誘電率、ε
insは断熱材2の比誘電率、Lは電極3の長手方向の幅、D
1は冷媒管1の外径、D
2は電極3の内径、gは空隙20の径方向の幅である。
【0035】
ここで、経年劣化等の要因で冷媒管1にピンホールまたは亀裂が生じ、冷媒の漏洩が発生すると、冷媒管1と電極3との間に、冷媒もしくは冷凍機油といった流体が流出する。この流体が冷媒管1と断熱材2との間の空隙20に溜まると、冷媒または冷凍機油の誘電率が空気の誘電率よりも大きいため、第2コンデンサ4bの静電容量Cgapが増加する。また、それに伴い、コンデンサ4の静電容量Cが増加する。制御部6は、コンデンサ4の静電容量Cの増加に基づいて、冷媒の漏洩を検知する。
【0036】
次に、静電容量計測器5の構成および動作について説明する。
図4は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10の静電容量計測器5の回路構成を示す回路図である。
図4に示すように、静電容量計測器5は、充放電回路109と、カウンター回路110と、演算器111とを備えている。
【0037】
充放電回路109は、
図4に示すように、電源102と、第1スイッチ108aと、第2スイッチ108bとを有している。電源102は、定電流源である。第1スイッチ108aの一端は電源102に接続され、他端は第2スイッチ108bに接続されている。第2スイッチ108bの一端は第1スイッチ108aに接続され、他端は接地されている。第1スイッチ108aと第2スイッチ108bとは、接続点112で直列接続されている。接続点112は、コンデンサ4の一端に接続されている。コンデンサ4の他端は接地されている。
【0038】
充放電回路109は、コンデンサ4の電圧の値に応じて、第1スイッチ108aおよび第2スイッチ108bのいずれか一方がONになり、他方がOFFになるように動作する。
【0039】
第1スイッチ108aがONで、第2スイッチ108bがOFFとなっている場合は、電源102から出力される電流により、コンデンサ4が充電されて、コンデンサ4の電圧が増加する。この状態を第1の状態と呼ぶ。
【0040】
一方、第1スイッチ108aがOFFで、第2スイッチ108bがONとなっている場合は、コンデンサ4に溜まった電荷がアースに向けて放電され、コンデンサ4の電圧が減少する。この状態を第2の状態と呼ぶ。
【0041】
充放電回路109において、第1の状態と第2の状態とが交互に切り替わることで、コンデンサ4の電圧は予め設定された範囲内に維持される。第1の状態と第2の状態の切り替えは、演算器111の指示によって行われる。演算器111はコンデンサ4の電圧を参照し、コンデンサ4の電圧が、演算器111が指定する電圧の或る最大値以上になると、第1の状態から第2の状態に切り替える。また、第2の状態により、コンデンサ4の電圧が、演算器111が指定する電圧の或る最小値以下となると、第2の状態から第1の状態へと切り替える。
【0042】
カウンター回路110は、予め設定された一定期間の間に、第1スイッチ108aがONになった回数をカウントする。カウンター回路110でカウントされるカウント数は、コンデンサ4の静電容量Cに応じて変化する。具体的には、コンデンサ4の静電容量が大きくなると、カウント数が小さくなり、コンデンサ4の静電容量が小さくなると、カウント数が大きくなる。
【0043】
演算器111には、カウント信号として、カウンター回路110からカウント数が入力される。演算器111は、カウント数をコンデンサ4の静電容量Cに変換する変換式を有している。当該変換式は、例えば下記の式(4)で表される。演算器111は、当該変換式を用いることで、カウント数からコンデンサ4の静電容量Cを演算する。
【0045】
ここで、Cはコンデンサ4の静電容量、AおよびBは充放電回路109の動作条件によって定まる補正係数、Countsはカウント数である。
【0046】
このようにして演算器111によって求められるコンデンサ4の静電容量Cが、静電容量計測器5で計測された静電容量Cの計測値となる。
【0047】
なお、カウンター回路110は、第1スイッチ108aがONになった回数をカウントすると説明したが、この場合に限定されない。カウンター回路110は、第2スイッチ108bがONになった回数をカウントしてもよい。さらに、カウンター回路110は、コンデンサ4の静電容量に応じてカウント回数が変動するものであるならば、他のものをカウントしてもよい。例えば、コンデンサ4の電圧、すなわち、接続点112の電圧の変動幅を実験などにより求め、当該変動幅の最大値と最小値との間の中央値を閾値Th1として設定する。そして、予め設定された一定期間に、接続点112の電圧が閾値Th1を超えた回数を、カウンター回路110がカウントするようにしてもよい。
【0048】
なお、静電容量計測器5は、例えばマイクロコントローラを用いて構成することができる。すなわち、静電容量計測器5を構成している、演算器111、カウンター回路110および充放電回路109を、1つのマイクロコントローラで構成することが可能である。マイクロコントローラは、廉価であり、且つ、小さい部品であるため、静電容量計測器5をコンパクトかつ低コストに構成することができる。なお、このように、静電容量計測器5全体を1つのマイクロコントローラで構成してもよいが、その場合に限定されない。すなわち、静電容量計測器5の一部分を1つのマイクロコントローラで構成し、他の部分を別の部品で構成するようにしてもよい。
【0049】
なお、静電容量計測器5において、演算器111を用いてコンデンサ4の静電容量Cを演算するとして説明したが、必ずしも、静電容量計測器5においてこの処理を行う必要はない。例えば、演算器111を静電容量計測器5に設けずに、静電容量計測器5が、カウンター回路110でカウントしたカウント値を制御部6に送信するようにしてもよい。この場合、制御部6が、演算器111の代わりに、カウント値に基づいて、コンデンサ4の静電容量Cを演算して、当該静電容量に基づいて冷媒の漏洩を検知する。静電容量Cの演算方法としては、例えば、上記の式(4)などの変換式を用いて演算すればよい。あるいは、制御部6は、静電容量Cを求めずに、静電容量Cに応じて変化する信号としてカウント値を読み取り、冷媒の漏洩を検知する構成としても構わない。
【0050】
このように、静電容量計測器5に演算器111を設けない構成にすれば、冷媒漏洩検知装置10内で使用する演算器の数を削減でき、冷媒漏洩検知装置10の製造コストを低減することができる。また、演算器111に限らず、静電容量計測器5を構成する他の部材も制御部6のものと共用しても構わない。さらに、静電容量計測器5と制御部6とを一体化しても構わない。その場合には、静電容量計測器5と制御部6とを同一の回路で形成して同一基板上に配置する。静電容量計測器5と制御部6とを一体化した場合には、一部分の部品を静電容量計測器5と制御部6とで共用できる。そのため、冷媒漏洩検知装置10の構成に必要な部品数を減らすことができ、冷媒漏洩検知装置10の製造コストの低減およびコンパクト化ができる。
【0051】
また、静電容量計測器5は、コンデンサ4の静電容量C、もしくは、静電容量Cに応じて変動する物理量を計測できるものであれば、
図4の構成に限定されない。静電容量計測器5は、例えば自動平衡ブリッジ回路あるいはホイートストンブリッジを用いた回路などから構成されてもよい。
【0052】
次に、制御部6が冷媒の漏洩の有無を判定する方法について説明する。
【0053】
制御部6は、一定時間ごとに、静電容量計測器5から、コンデンサ4の静電容量Cの計測値を取得する。制御部6は、取得した静電容量Cの計測値を用いて、冷媒の漏洩が発生していない状態の静電容量Cを基準値Crefに設定する。静電容量Cの基準値Crefは、静電容量Cの計測を開始してから、一定時間経過後の静電容量Cの計測値とする。この際の一定時間は、静電容量Cの計測開始直後としてもよいが、計測開始直後は、静電容量計測器5の動作が不安定である場合があるため、1時間〜5時間の範囲で設定することが好適である。基準値Crefの設定は、例えば、冷凍サイクル装置を設置したときに行う。さらに、制御部6は、静電容量Cの基準値Crefに、一定値αを加算した値、すなわち、Cref+αを、静電容量Cの閾値Cthとして設定する。ここで、αは、予め設定される任意の正の値である。制御部6は、静電容量計測器5で計測した静電容量Cの計測値が、閾値Cthを超えた場合に、冷媒管1からの冷媒の漏洩があると判定する。但し、この際に、実施の形態1では、制御部6は、静電容量計測器5で計測した静電容量Cの計測値をそのまま用いない。すなわち、制御部6は、静電容量Cの計測値に対して、温度による静電容量Cの変動の影響を除去する補正を行った上で、冷媒の漏洩の有無を判定する。当該補正については後述する。
【0054】
また、制御部6は、冷媒の漏洩の判定において、静電容量Cの計測値が閾値Cthを超えたときに、すぐに、冷媒管1からの冷媒の漏洩があると判定してもよいが、次のようにすることが望ましい。すなわち、制御部6は、静電容量Cの計測値が閾値Cthを超えた状態が、予め設定された一定時間Pの間、連続した場合に、冷媒管1からの冷媒の漏洩があると判定することが望ましい。静電容量Cはノイズの影響を受けやすいため、瞬時的に静電容量Cの大きな変化が検出される可能性がある。そのため、一過性の静電容量Cの計測値で、冷媒漏洩の有無を判定すると、誤検出になる可能性がある。そのため、制御部6は、静電容量Cの計測値が閾値Cthを超えても、すぐに、冷媒漏洩として検知せずに、一定時間Pの間、その状態が連続するか否かをモニタリングする。これにより、ノイズによる誤検知を抑制でき、より正確に冷媒の漏洩を検知できる。
【0055】
さらに、静電容量Cの閾値Cthを、一定周期で更新するようにしても構わない。コンデンサ4の静電容量Cには、冷媒の漏洩以外の要因で、長期的に微少な変動が発生する。変動が静電容量Cを増加させる方向に働けば、冷媒漏洩を誤検知することになり、逆に、変動が静電容量Cを減少させる方向に働けば、冷媒の漏洩の検知が遅れることになる。そのため、静電容量Cの閾値Cthを一定周期で更新することで、静電容量Cの長期的な微少な変動の影響を抑制し、適切に冷媒の漏洩を検知することができる。閾値Cthの更新は、例えば6時間から1年の周期で行う。なお、閾値Cthの更新の周期が短い場合には、冷媒の漏洩に伴う静電容量Cの変化を検知できなくなる恐れがあるため、適切な更新の周期の設定が必要である。
【0056】
次に、温度計測器7による温度測定と、制御部6による温度に基づく静電容量の補正処理との動作について説明する。
【0057】
静電容量計測器5が計測するコンデンサ4の静電容量Cの値は、温度変化に伴って発生する下記の2つの要因(A)および(B)により変動する。変動したコンデンサ4の静電容量Cの値は、本来のコンデンサ4の静電容量Cの値とは異なる。そのことは、冷媒漏洩を精度よく検出することの妨げとなる。そこで、実施の形態1では、制御部6が、温度計測器7が計測した温度に基づいて、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cを補正する。
【0058】
(A)気温の変化による電極3または冷媒管1の寸法の変化、および、誘電体である断熱材2の誘電率の変化
(B)静電容量計測器5の温度特性
【0059】
以下、上記要因(A)および(B)について詳細に説明する。
【0060】
まず、要因(A)について説明する。冷媒漏洩検知装置10は、屋内だけでなく、屋外での運用が想定される。屋外で運用する場合では、冷媒漏洩検知装置10は、年間および日間を通して温度の変化に晒される。上述したように、静電容量は、2つ以上の導電体が誘電体を挟んで絶縁されて配置されている場合に発生することが知られている。静電容量の値は、誘電体の誘電率と導電体の幾何形状によって決定される。実施の形態1では、上述したように、断熱材2が誘電体であり、冷媒管1と電極3とが導電体である。従って、コンデンサ4の静電容量Cは、断熱材2の誘電率と、冷媒管1と電極3との幾何形状によって変化する。周囲の気温の変化が発生すると、電極3および冷媒管1のうちの少なくとも1つが膨張もしくは収縮することで、電極3および冷媒管1の寸法または形状が変化する。また、周囲の気温の変化が発生すると、誘電体である断熱材2の誘電率も変化する。これらの微小な変化に伴い、コンデンサ4の静電容量Cにも変動が生じる。
図5は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10におけるコンデンサ4の静電容量Cと周囲の気温との関係を示した図である。
図5において、横軸は、温度計測器7で測定された温度すなわち周囲の気温を示し、縦軸は、コンデンサ4の静電容量Cを示す。
図5に示すように、コンデンサ4の静電容量Cは、周囲の気温が上昇するほど増加する。
【0061】
冷媒の漏洩に伴う静電容量Cの変動は微小であるため、気温の変化による上記の変動は、冷媒漏洩を検知する際の誤検知の要因となる。従って、気温の変化を伴う環境下で冷媒漏洩検知装置10を使用する場合には、静電容量Cの測定と同時に周囲の気温を測定し、当該気温に基づいて、静電容量Cを補正する処理を行うことが好ましい。そこで、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10では、制御部6が、温度計測器7から制御部6へ入力される気温または気温に関する信号を用いて、静電容量計測器5が計測した静電容量Cの補正処理を行う。当該補正処理の演算量に応じて、制御部6のスペックを適宜増加させる必要があるものの、最低限の部品増加で当該補正処理を実現することが可能である。従って、当該補正処理を行う場合においても、冷媒漏洩検知装置10の製造コストは殆ど増加しない。
【0062】
制御部6は、例えば
図5に示すように、或る基準となる閾値Th2を予め設定しておき、温度計測器7で計測した気温が閾値Th2以上になる場合には、制御部6は、静電容量Cの計測値が小さくなるように補正する。逆に、温度計測器7で計測した気温が閾値Th2よりも低くなる場合には、制御部6は、静電容量Cの計測値が大きくするように補正する。制御部6の補正方法としては、気温に対する静電容量Cの変化の傾向を実験などにより予め把握し、当該傾向に基づく補正式を作成するか、あるいは、補正のためのマップを作成し、補正式またはマップに基づいて補正する。補正式としては、静電容量Cの計測値が小さくなるように補正する場合には、例えば、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cから正の定数β1を減算するか、あるいは、1より小さい正の係数β2を乗算する補正式を用いる。逆に、静電容量Cの計測値が大きくなるように補正する場合には、例えば、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cに正の定数β3を加算するか、あるいは、1より大きい正の係数β4を乗算する補正式を用いる。なお、定数β1およびβ3、並びに、係数β2およびβ4は、固定された値でもよいが、静電容量Cの計測値の大きさのレベルに応じて可変にしてもよい。また、マップを用いる場合には、温度計測器7で計測した気温ごとに、静電容量Cの計測値を補正する補正量を予め設定したマップを用意する。制御部6は、当該マップから、温度計測器7で計測した気温に対応する補正量を抽出して、コンデンサ4の静電容量Cを補正する。あるいは、温度計測器7で計測した気温ごとに、補正された静電容量Cの計測値を予め設定したマップを用意して、制御部6が、当該マップから、温度計測器7で計測した気温に対応する補正された静電容量Cの計測値を抽出するようにしてもよい。
【0063】
次に、要因(B)について説明する。静電容量計測器5を構成する回路素子は温度特性を有している場合がある。静電容量計測器5を構成する回路素子が温度特性を有していない場合もあるが、以下では、静電容量計測器5を構成する回路素子が温度特性を有している場合を例に挙げて説明する。
【0064】
実際にはコンデンサ4の静電容量Cが変化していない場合でも、静電容量計測器5を構成する回路素子の温度特性の影響によって、周囲の気温の変化に伴い静電容量Cの計測値が変動することがある。当該変動は、測定誤差となり、正確な静電容量Cの計測値が得られないことになる。
図6は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10の静電容量計測器5による静電容量Cの計測値と周囲の気温との関係を示す図である。
図6において、横軸は、温度計測器7で測定された温度すなわち周囲の気温を示し、縦軸は、静電容量計測器5で計測したコンデンサ4の静電容量Cの計測値を示す。
図6に示すように、静電容量計測器5によって計測されたコンデンサ4の静電容量Cの計測値は、周囲の気温が上昇するほど低下する。
【0065】
制御部6は、例えば
図6に示すように、或る基準となる閾値Th3を予め設定しておき、温度計測器7で計測した気温が閾値Th3以上になる場合には、制御部6は、静電容量Cの計測値が大きくなるように補正する。逆に、温度計測器7で計測した気温が閾値Th3よりも低くなる場合には、制御部6は、静電容量Cの計測値が小さくするように補正する。制御部6の補正方法としては、温度に対する静電容量計測器5の静電容量Cの計測値の変化の傾向を実験などにより予め把握し、当該傾向に基づく補正式を生成するか、あるいは、補正のためのマップを作成し、それに基づいて補正する。補正式としては、静電容量Cの計測値が小さくなるように補正する場合には、例えば、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cから正の定数β5を減算するか、あるいは、1より小さい正の係数β6を乗算する補正式を用いる。逆に、静電容量Cの計測値が大きくなるように補正する場合には、例えば、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cに正の定数β7を加算するか、あるいは、1より大きい正の係数β8を乗算する補正式を用いる。なお、定数β5およびβ7、並びに、係数β6およびβ8は、固定された値でもよいが、静電容量Cの計測値の大きさのレベルに応じて可変にしてもよい。また、マップを用いる場合には、温度計測器7で計測した温度ごとに、静電容量Cの計測値を補正する補正量を予め設定したマップを用意する。制御部6は、当該マップから、温度計測器7で計測した気温に対応する補正量を抽出して、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cを補正する。あるいは、温度計測器7で計測した気温ごとに、補正された静電容量Cの計測値を予め設定したマップを用意して、制御部6が、当該マップから、温度計測器7で計測した気温に対応する補正された静電容量Cの計測値を抽出するようにしてもよい。
【0066】
図7は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10の制御部6によって補正された補正後の静電容量C1の値を示す図である。
図7では、要因(A)に対する補正と、要因(B)に対する補正との両方を行った場合の、補正後の静電容量C1の値を示している。
図7において、横軸は、時間を示し、縦軸は、静電容量の値および温度を示す。また、
図7において、70は、静電容量計測器5で計測された静電容量Cを示し、71は、温度計測器7で計測した周囲の気温を示す。また、72は、制御部6によって補正された補正後の静電容量C1の値を示す。
【0067】
図7に示すように、制御部6によって、温度計測器7で計測した周囲の気温に基づき、静電容量計測器5で計測された静電容量Cの値が補正されている。
図7のグラフに示した例では、静電容量計測器5の温度特性の影響が強く表れている。すなわち、周囲の気温71の変化に伴い、静電容量Cの計測値70が脈動している。具体的には、周囲の気温71が上昇するほど、静電容量Cの計測値70が低下している。一方、制御部6による補正後の静電容量72は、脈動がなくなり、冷媒の漏洩による静電容量Cの増加のみが現れるようになっている。制御部6では、補正後の静電容量72の値が閾値Cthを超えた場合に、冷媒管1からの冷媒の漏洩が有ると判定する。一方、制御部6では、補正後の静電容量72の値が閾値Cth未満の場合には、冷媒管1からの冷媒の漏洩が無いと判定する。以上のように、制御部6が静電容量Cの補正を行うことで、周囲の気温の変化に伴う静電容量Cの変化の影響を取り除き、誤検知を抑制するとともに、正確な冷媒の漏洩の検知が可能となる。
【0068】
図8は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図8のフローは、例えば、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10によって実行される。
【0069】
図8において、ステップS1では、静電容量計測器5が、冷媒管1と電極3とから構成されたコンデンサ4の静電容量Cを計測する。
【0070】
次に、ステップS2では、温度計測器7が、周囲の気温を計測する。
【0071】
次に、ステップS3では、制御部6が、温度計測器7によって計測された周囲の気温に基づいて、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cを補正する。なお、当該補正は、上記要因(A)に対する補正と上記要因(B)に対する補正の両方の補正とする。
【0072】
次に、ステップS4では、制御部6が、補正後のコンデンサ4の静電容量Cと閾値Cthとを比較する。比較の結果、補正後のコンデンサ4の静電容量Cが閾値Cthを超えた場合には、ステップS5に進む。一方、比較の結果、補正後のコンデンサ4の静電容量Cが閾値Cth以下の場合には、ステップS7に進む。
【0073】
ステップS5では、ステップS4で補正後のコンデンサ4の静電容量Cが閾値Cthを超えていると最初に判定された時点から、一定時間Pが経過したか否かを判定する。一定時間Pが経過していなければ、ステップS4の処理に戻る。一方、一定時間Pが経過していれば、ステップS6に進む。
【0074】
ステップS6では、制御部6は、冷媒管1からの冷媒の漏洩が有ると判定する。
【0075】
ステップS7では、制御部6は、冷媒管1からの冷媒の漏洩は無いと判定する。
【0076】
なお、冷凍サイクル装置が運転中の場合には、冷媒管1内の圧力が高くなることから冷媒の漏洩が発生しやすい。そのため、冷凍サイクル装置の運転中の方が、冷凍サイクル装置の停止中よりも、冷媒の漏洩を検出しやすい。そこで、冷媒漏洩検知の効率化を図るため、冷凍サイクル装置の運転中のみ、冷媒漏洩検知装置10を動作させるようにしてもよい。冷媒漏洩検知装置10の動作時間が短縮されることで、消費電力を抑制することができる。また、その場合、制御部6のトータルの演算量を低減させることができる。一方で、冷凍サイクル装置が停止中の場合は、冷媒の漏洩が発生しにくくなるものの、冷凍サイクル装置が再度運転を始めた時の急激な圧力変動に伴って、冷媒の漏洩が顕著に発生する場合がある。従って、冷凍サイクル装置の停止中においても、冷媒漏洩検知装置10を動作させておけば、上記のような起動時の冷媒漏洩を逃さず検知することが可能となる。
【0077】
実施の形態1では、制御部6が、上記の要因(A)に対する補正と要因(B)に対する補正の両方を行う場合について説明した。上記の要因(A)および(B)の両方が発生する可能性があれば、制御部6が、使用する環境に応じて上記の要因(A)および(B)の両方に対する補正を行うことが望ましい。ただし、例えば電極3等の温度による変化に比べて、静電容量計測器5の計測値の温度変化が小さく、電極3等の温度による変化が支配的である場合等においては、制御部6が、上記の要因(A)に対する補正のみを行うようにしてもよい。また、逆に、電極3等の温度による変化に比べて、静電容量計測器5の計測値の温度変化が支配的である場合には、制御部6が、上記の要因(B)に対する補正のみを行うようにしてもよい。このように、冷媒漏洩検知装置10を使用する環境および動作条件によって、制御部6が、要因(A)および(B)の中から、補正を行う要因の項目を適宜選択することが好ましい。また、要因(A)および要因(B)以外に、温度変化により変化する要因の項目が更にあるのであれば、それに応じて、制御部6が補正を行う要因の項目を増やしても構わない。補正する際には、いずれの要因の項目に関しても、事前に温度に対する静電容量の変化の傾向を予め把握し、それに基づく補正式を生成するか、補正のためのマップを作成し、当該補正式またはマップに基づいて補正することが望ましい。ただし、要因の項目が増えれば、制御部6にはそれに応じたメモリおよび演算能力が必要となる。従って、必要とされる冷媒漏洩の検出の精度、および、制御部6のメモリおよび演算能力などに応じて、補正を行う要因の項目を適宜設定すればよい。
【0078】
なお、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10において、電極3は断熱材2の外周表面を一周し、電極3の一方の端部と他方の端部との間に隙間がないことが好ましい。原理上、冷媒が漏洩した際に、液体状の冷媒と冷凍機油との混合流体が、電極3と冷媒管1との間に侵入するような配置になっていれば静電容量Cが増加するため、必ずしも、電極3を隙間なく断熱材2に一周させる必要はない。しかしながら、電極3を隙間なく断熱材2に一周させておけば、確実に静電容量Cの変化が生じるため、冷媒漏洩の検出確率を向上させることができる。
【0079】
また、電極3の内表面と断熱材2の外表面との間には空隙がないようにすることが好ましい。電極3と断熱材2との間に空隙があると、断熱材2に対して電極3が移動しやすくなる。電極3が移動した場合、当該移動は、静電容量Cを変動させるノイズ要因となり、誤検知を引き起こしやすくなる。
【0080】
また、
図1に示す電極3の長手方向の幅Lは特に限定しないが、3cm以上15cm以下が好適である。実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10は、原理的に冷媒の漏洩に伴い、液体状の冷媒と冷凍機油との混合流体が冷媒管1と電極3との間に侵入することにより、静電容量Cが増加する。そのため、電極3を取り付けた部分でしか、冷媒の漏洩を検知することができない。従って、電極3の幅Lが小さすぎると、冷媒の漏洩を検知できる範囲が狭くなり、検知できない箇所ができてしまう。一方、電極3の幅Lが長すぎると、漏洩箇所の特定が困難になる。
【0081】
さらに、電極3は導電体であればその材質は限定されない。例えば、電極3にアルミニウムを用いた場合には、軽量かつ安価で加工性に優れる。また、電極3にステンレスを用いた場合には、耐食性に優れる。また、電極3に銅を用いた場合には、導電性に優れるため、静電容量Cの変化を正確に検知しやすくなる。
【0082】
また、電極3は断熱材2の表面上に配置できるものであれば、その形状および取り付けの方法は限定されない。実施の形態1では、電極3を一枚の金属板で構成して断熱材2表面に巻き付けたものについて説明した。電極3の変形例としては、例えば断熱材2上に導電性のペーストを直接塗布して硬化させたものを、電極3として使用しても構わない。この場合、冷媒管1または断熱材2の寸法の影響を受けず、電極3をより容易に備え付けることができる。あるいは、シート状の絶縁体上に導電体層を貼付、蒸着あるいは塗布したものを、電極3として使用しても構わない。あるいは、薄い絶縁体フィルム上に金属箔を張り付けたものを、電極3として使用しても構わない。この場合の電極3は、金属薄板で構成した電極3に比べて、より柔らかく、且つ、断熱材2への取り付けがしやすいという効果が得られる。さらに、絶縁体フィルムが金属箔を保護する効果があるため、より長期間劣化しない電極3を実現することができる。
【0083】
また、温度計測器7は、温度が測定でき、その計測値を制御部6に伝達することができるのであれば、材質および形状は限定されない。例えば、温度計測器7として、サーミスタ、熱電対、および、測温抵抗体などが使用できる。
【0084】
静電容量計測器5は、電極3に隣接した位置に配置され、且つ、静電容量計測器5と冷媒管1とを接続する端子5aの配線および静電容量計測器5と電極3とを接続する端子5bの配線は、可能な限り短くすることが望ましい。静電容量計測器5が計測する静電容量Cには、配線が有する浮遊容量も含まれている。冷媒の漏洩の検知において、配線の浮遊容量は不要である。また、配線が長くなると、配線を通じて電磁ノイズなどの影響を受けやすくなる。配線の浮遊容量および電磁ノイズは誤検知の要因となるため、配線を短くできるように、静電容量計測器5は電極3の近傍に配置すべきである。ただし、静電容量計測器5と電極3とが直接接触しないように、静電容量計測器5と電極3とは離間して配置される。静電容量計測器5の本体が電極3に接触してしまうと、静電容量Cに影響を与え、冷媒の漏洩の検知が困難となる。従って、例えば、静電容量計測器5と電極3とが重ならないように、冷媒管1の長手方向に沿って、電極3の設置位置から左右のいずれかの方向にシフトした位置に静電容量計測器5を配置する。また、静電容量計測器5の取り付け方としては、断熱材2の上から、冷媒管1及び断熱材2に固定するように配置するなどが好ましい。
【0085】
また、電極3の外側に、電極3と絶縁された金属製のシールドを設け、当該シールドの外表面上に、静電容量計測器5を固定してもよい。当該シールドを設けた場合には、静電容量計測器5の静電容量Cの計測値において、ノイズによる静電容量Cの変動が抑制されるため、冷媒の漏洩をより正確に検知できる。
【0086】
以上のように、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10は、コンデンサ4の静電容量Cの計測値に影響を及ぼす温度を計測する温度計測器7を備えている。また、制御部6が、静電容量計測器5で計測されたコンデンサ4の静電容量Cと温度計測器7で計測された温度とに基づいて、冷媒管1からの冷媒の漏洩を検知する。このように、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10は、コンデンサ4の静電容量Cの計測値に影響を及ぼす温度の変化を考慮して、コンデンサ4の静電容量Cを補正した上で、冷媒の漏洩の有無を判定する。その結果、冷媒漏洩の誤検知の発生を抑制することができる。
【0087】
また、実施の形態1においては、電極3を、冷媒管1の外表面を覆う断熱材2の外表面に配置するようにしたので、電極3の冷媒管1への取り付けが容易である。また、電極3を無理に冷媒管1に直接取り付けずに、断熱材2の外表面に配置するようにしたので、断熱材2を破壊する必要がない。
【0088】
また、実施の形態1においては、制御部6が、冷媒管1からの冷媒の漏洩の有無を判定するための第1の閾値としての閾値Cthを有している。制御部6は、温度計測器7が計測した温度に基づいて、静電容量計測器5が計測した静電容量Cを補正する。制御部6は、補正後の静電容量Cが閾値Cthを超えた場合に、冷媒管1から冷媒が漏洩したと判定する。このように、制御部6が、静電容量Cの計測値を補正することで、温度による変動の影響を除去し、正確に、冷媒の漏洩を検知することができる。
【0089】
また、実施の形態1においては、静電容量計測器5は、電極3の外表面に対向して配置される。このように、静電容量計測器5は、電極3の外表面に隣接して配置されるので、静電容量計測器5の冷媒管1への取り付けが容易である。また、静電容量計測器5と電極3との間の配線、および、静電容量計測器5と冷媒管1との間の配線の長さを短くすることができる。これにより、配線の浮遊容量および電磁ノイズの影響を低減できる。その結果、冷媒漏洩の検知精度を向上させることができる。
【0090】
<実施の形態1の変形例>
図9は、実施の形態1に係る冷媒漏洩検知装置10の変形例を示した図である。本変形例は、実施の形態1と比して、制御部6の補正の方法が異なる。実施の形態1では、静電容量Cの計測値を温度に基づいて補正していたが、本変形例では、閾値Cthを補正する。
【0091】
図9において、横軸は、時間を示し、縦軸は、静電容量の値および温度を示す。また、
図9において、70は、静電容量計測器5で計測された静電容量Cの計測値を示し、71は、温度計測器7で計測した周囲の気温を示す。また、Cthは実施の形態1で説明した固定値の閾値であり、Cth1は、制御部6によって補正された補正後の閾値を示す。
【0092】
図9においては、
図7のグラフと同様に、周囲の気温71に変化があり、それに伴い、静電容量Cの計測値70も変動している。
図9と
図7との相違点は、
図9においては、制御部6が、静電容量Cの計測値70を補正せずに、周囲の気温71に基づいて閾値Cthを補正して閾値Cth1とする点である。制御部6は、補正後の閾値Cth1を用いて、冷媒の漏洩の有無を判定する。他の構成および動作については、実施の形態1と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。
【0093】
制御部6の閾値Cthの補正方法としては、周囲の気温71が低くなった場合に、閾値Cthを大きくするように補正し、逆に、周囲の気温71が高くなる場合には、閾値Cthを小さくするように補正する。以下では、補正した閾値Cthの値を、補正後の閾値Cth1と呼ぶ。補正方法としては、周囲の気温71と補正後の閾値Cth1との関係を定義した補正式または補正マップを予め用意しておき、制御部6が、当該補正式または補正マップを用いて、周囲の気温71に基づいて閾値Cthを補正して、補正後の閾値Cth1を得る。
【0094】
当該変形例では、制御部6が、静電容量計測器5が計測した静電容量Cが、補正後の閾値Cth1を超えたときに、冷媒の漏洩があると判断する。制御部6が、温度によって補正した閾値Cth1を用いることで、静電容量計測器5が計測した静電容量Cが温度によって変動する場合においても、精度良く冷媒の漏洩を検知することができる。
【0095】
以上のように、実施の形態1の変形例においては、制御部6が、冷媒管1からの冷媒の漏洩の有無を判定するための第2の閾値として閾値Cth1を有している。制御部6は、温度計測器7が測定した温度に基づいて閾値Cthを補正して、補正後の閾値Cth1を得る。制御部6は、静電容量計測器5が計測した静電容量Cが、補正後の閾値Cth1を超えた場合に、冷媒管1から冷媒が漏洩したと判定する。このように、制御部6が、温度に応じて閾値Cthを補正することで、温度による静電容量Cの変動の影響を除去し、正確に、冷媒の漏洩を検知することができる。
【0096】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係る冷媒漏洩検知装置10Aの構成を模式的に示した図である。実施の形態2では、実施の形態1と比して、温度計測器7の個数および配置位置が異なる。すなわち、温度計測器7が、3つの温度計測器7a、7b、7cから構成されている。他の構成および動作は、実施の形態1と同様であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0097】
実施の形態2では、
図10に示すように、3つの温度計測器7a、7b、7cが配置されている。第1の温度計測器7aは、電極3の表面上に取り付けられている。第1の温度計測器7aは、電極3の表面温度を計測する。第2の温度計測器7bは、静電容量計測器5のいずれか一箇所に取り付けられている。すなわち、第2の温度計測器7bは、例えば、静電容量計測器5の本体、端子5aまたは5b、あるいは、端子5aまたは5bに接続された配線に取り付けられている。第2の温度計測器7bは、静電容量計測器5の当該箇所の表面温度を計測する。第3の温度計測器7cは、断熱材2の内部に埋め込まれている。第3の温度計測器7cは、冷媒管1の表面温度または断熱材2の内部の温度を計測する。温度計測器7a、7b、7cのそれぞれは、計測した温度を制御部6へと伝達する。
【0098】
上記の実施の形態1では、上記の要因(A)の電極3の寸法の変化に対する補正のために、温度計測器7が周辺の気温を計測していたが、実施の形態2では、第1の温度計測器7aにより、直接、電極3の温度を測定する。制御部6は、電極3の温度に基づいて、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cの値を補正する。実施の形態2では、電極3の温度変化によるコンデンサ4の静電容量Cの変動の傾向を実験などにより予め把握し、それに基づく補正式、もしくは、補正のためのマップを作成しておく。制御部6は、当該補正式またはマップを用いることで、電極3の温度の変化に伴う静電容量Cの変動を補正することができる。
【0099】
また、上記の実施の形態1では、上記の要因(A)の断熱材2の誘電率の変化に対する補正のために、温度計測器7が周辺の気温を計測していたが、実施の形態2では、第3の温度計測器7cにより、直接、断熱材2の温度を測定する。このとき、断熱材2の内部に第3の温度計測器7cを取り付けることが難しい場合には、冷媒管1の外表面に第3の温度計測器7cを設置してもよい。第3の温度計測器7cは、断熱材2または冷媒管1の温度を計測する。冷媒が流れているときの冷媒管1の温度は周囲の気温とは異なる。そのため、断熱材2の内部は、均一の温度ではなく、温度の分布を持つことになる。その結果、断熱材2の誘電率に微小な変化が生じ、コンデンサ4の静電容量Cの変動が生じる。そのため、実施の形態2では、断熱材2の温度変化によるコンデンサ4の静電容量Cの変動の傾向を実験などにより予め把握し、それに基づく補正式、もしくは、補正のためのマップを作成しておく。制御部6は、当該補正式またはマップを用いることで、断熱材2の温度の変化に伴う静電容量Cの変動を補正することが検知できる。
【0100】
上記の実施の形態1では、上記の要因(B)の静電容量計測器5の温度特性に対する補正のために、温度計測器7が周辺の気温を計測していたが、実施の形態2では、第2の温度計測器7bにより、直接、静電容量計測器5の温度を測定する。制御部6は、静電容量計測器5の温度に基づいて、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cの値を補正する。実施の形態2では、静電容量計測器5の温度変化によるコンデンサ4の静電容量Cの変動の傾向を実験などにより予め把握し、それに基づく補正式、もしくは、補正のためのマップを作成しておく。制御部6は、当該補正式またはマップを用いることで、静電容量の温度の変化に伴う静電容量Cの変動を補正することができる。
【0101】
さらに、上記要因(A)では、冷媒管1の寸法も変化する。上記の実施の形態1では、上記の要因(A)の冷媒管1の寸法の変化に対する補正のために、温度計測器7が周辺の気温を計測していたが、実施の形態2では、第3の温度計測器7cにより、直接、冷媒管1または断熱材2の温度を測定することができる。制御部6は、冷媒管1または断熱材2の温度に基づいて、静電容量計測器5が計測したコンデンサ4の静電容量Cの値を補正してもよい。その場合には、冷媒管1または断熱材2の温度変化によるコンデンサ4の静電容量Cの変動の傾向を実験などにより予め把握し、それに基づく補正式、もしくは、補正のためのマップを作成しておく。制御部6は、当該補正式またはマップを用いることで、冷媒管1の温度による寸法の変化に伴う静電容量Cの変動を補正することができる。
【0102】
さらに、第3の温度計測器7cによって計測した温度を用いて、制御部6が、冷凍サイクル装置が運転中か停止中かを判定してもよい。冷凍サイクル装置が運転中か停止中かの判定方法の一例について説明する。冷凍サイクル装置が運転中であれば、第1の温度計測器7aが計測した温度と、第3の温度計測器7cで計測した温度における差が大きくなる。そのため、制御部6は、当該差を演算し、当該差が予め設定された値よりも大きくなった場合に、冷凍サイクル装置が運転中であると判定する。また、制御部6が第3の温度計測器7cの計測結果に基づいて冷凍サイクル装置の運転状態を判定した場合、制御部6は、冷凍サイクル装置の運転状態の判定の結果に基づき、静電容量計測器5の動作を制御しても構わない。例えば、冷凍サイクル装置が停止していると判定した場合には、制御部6は、静電容量計測器5を待機させ静電容量Cの計測を行わないようにする。一方、冷凍サイクル装置が運転していると判定した場合には、制御部6は、静電容量計測器5を動作させ、静電容量Cを計測し、冷媒の漏洩の有無を重点的に監視する。冷凍サイクルが運転している場合の冷媒管1内の圧力は、冷凍サイクル装置が停止している場合の圧力よりも高くなる。そのため、冷媒の漏洩が発生している場合、その漏洩量は、冷凍サイクル装置が運転している場合の方が停止している場合よりも多くなる。従って、制御部6が、冷媒の漏洩が少ない冷凍サイクル装置の停止時に、静電容量計測器5を待機させることで、冷媒漏洩検知装置10の消費する電力を抑制することができる。
【0103】
なお、実施の形態2において、温度計測器7として、3つの温度計測器7a、7b、7cを設置する例について示したが、その設置箇所および数量は制限しない。冷媒漏洩検知装置10を使用する環境に応じて、温度計測器の数量を増減させてもよく、また、設置箇所を変更しても構わない。例えば、第1の温度計測器7aは、電極3の表面に配置されるが、周辺の気温と電極3の表面温度との間に差が無い場合には、電極3の表面に配置する必要はない。そのため、その場合には、第1の温度計測器7aの設置は省略できる。また、第2の温度計測器7bについては、静電容量計測器5を構成する回路が、温度を計測できる素子または装置を副次的に有している場合には、当該素子または装置を用いても構わない。その場合には、第2の温度計測器7bの設置は省略できる。さらに、例えば静電容量Cの変動が、3つの温度計測器7a、7b、7cで計測した3箇所の温度のうち、いずれか1箇所によるものが支配的である場合には、支配的な1箇所のみの計測としても構わない。その場合には、3つの温度計測器7a、7b、7cのうちの2つについては、その設置を省略できる。温度計測器の配置が多ければ、より精度よく温度の影響を補正できる。一方で、温度計測器の配置数が少なければ、制御部6のメモリおよび演算器の能力が小さいものでも動作が可能となり、入力端子数を減らしてコンパクト化できる。従って、精度のレベル、および、制御部6のメモリおよび演算器の能力などに応じて、温度計測器7a、7b、7cの個数および設置箇所を、適宜、変更すればよい。
【0104】
以上のように、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、温度による静電容量Cの変動を補正するようにしたので、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0105】
さらに、実施の形態2においては、温度計測器7を複数個設けて、静電容量Cの計測値に影響を及ぼす温度として、電極3の表面温度、静電容量計測器5の温度、冷媒管1の表面温度、断熱材2の内部の温度のうちの少なくともいずれか1つを計測する。これにより、具体的な温度データを取得することができるので、実施の形態1よりも、さらに精度よく、冷媒漏洩を検知することができる。
【0106】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係る冷媒漏洩検知システムの構成を模式的に示した図である。実施の形態3に係る冷媒漏洩検知システムは、複数の冷媒漏洩検知装置10と、監視装置11とを備えている。
【0107】
図11では、複数の冷媒漏洩検知装置10を、冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eと表記している。冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eは、実施の形態1〜2で示した冷媒漏洩検知装置10または10Aと同様の構成を有しているため、ここでは、詳細な説明は省略する。また、
図11では、冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eの個数は5個であるが、これに限定されない。冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eの個数は、任意の個数でよい。
【0108】
監視装置11は、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eに設けられた制御部6に通信回線12を介して通信可能に接続されている。監視装置11は、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eの制御部6と通信することで、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eにおける冷媒の漏洩の検知結果をモニタリングする。なお、監視装置11のハードウェア構成としては、例えば、コンピュータ端末とサーバとメモリから構成すればよい。
【0109】
実施の形態3に係る冷媒漏洩検知システムにおいては、監視装置11を用いて、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eの検知結果をモニタリングすることで、冷媒漏洩の状況の把握が容易となる。
【0110】
さらに、冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eのそれぞれには、互いに重複しない識別番号が振られている。冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eのそれぞれの制御部6は、監視装置11に冷媒漏洩検知結果を送信する際に、識別番号を付して送信する。制御部6は、識別番号に基づいて、冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eのうちのどの冷媒漏洩検知装置で冷媒の漏洩を検知したかを明確に把握することができる。そのため、制御部6は、冷媒漏洩の発生とともに、冷媒の漏洩箇所を同時に把握することができる。
【0111】
実施の形態3では、監視装置11を設けることで、モニタリングを遠隔で行うことができるため、冷媒管1および冷媒漏洩検知装置10の点検作業が簡便化され、メンテナンス作業の負荷を軽減できる。特に、目視では確認できない箇所に配置された冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eについても、監視が容易となる。
【0112】
監視装置11は、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eで計測された、コンデンサ4の静電容量C、温度、設定されている閾値Cth、補正後の静電容量C1、および、補正後の閾値Cth1の少なくとも1つについて、ログを取得してもよい。
【0113】
また、監視装置11は、冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eのそれぞれの静電容量Cの計測値を比較してもよい。その場合、監視装置11は、冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eの中で、他と比較して静電容量Cの変位が大きい冷媒漏洩検知装置がないか判定する。監視装置11は、該当する冷媒漏洩検知装置があった場合には、当該冷媒漏洩検知装置の設置箇所において、冷媒の漏洩が発生していると判定する。なお、冷媒の漏洩が発生していても、それに伴う流体の漏洩が微量で、静電容量Cが基準値Cref、および、閾値CthまたはCth1の更新期間以内に、閾値CthまたはCth1を超えるほどの増加を示さない場合がある。そのような場合には、1つの冷媒漏洩検知装置10では当該冷媒の漏洩を検知することができない。しかしながら、監視装置11が、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eで計測された静電容量Cを比較することで、閾値CthまたはCth1を超えない微少な静電容量Cにおいても、その変化を検出することができる。これにより、実施の形態3に係る冷媒漏洩検知システムにおいては、精度よく微量な冷媒の漏洩を検知することが可能となる。
【0114】
また、監視装置11が、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eからログを取得すると同時に、実施の形態1および2における制御部6が行っていた温度による補正等の演算を、制御部6の代わりに行うようにしても構わない。この場合、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eの制御部6のメモリおよび演算器を削減することができる。
【0115】
なお、各冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eの制御部6と監視装置11との間の接続は、その手法を制限しない。例えば、通信回線12として、ケーブルを使用しても構わないし、無線を用いても構わない。
【0116】
以上のように、実施の形態3においては、実施の形態1および2で説明した冷媒漏洩検知装置10を設けるようにしたので、実施の形態1および2と同様の効果を得ることができる。
【0117】
さらに、実施の形態3においては、複数の冷媒漏洩検知装置10a、10b、10c、10d、および、10eを設け、監視装置11が、識別番号に基づいて、冷媒漏洩を検知した冷媒漏洩検知装置を特定することができる。これにより、監視装置11は、冷媒が漏洩している漏洩箇所を特定することができるので、当該漏洩箇所を速やかに修理することができる。その結果、漏洩する冷媒量を最小限に抑えることができる。