特許第6961040号(P6961040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961040
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】可撓性医療用品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/06 20060101AFI20211025BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20211025BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20211025BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20211025BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20211025BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20211025BHJP
   B29C 48/00 20190101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61L29/06
   A61L29/14
   A61L31/06
   A61L31/14
   A61M25/00 500
   A61M25/06 550
   B29C48/00
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-92224(P2020-92224)
(22)【出願日】2020年5月27日
(62)【分割の表示】特願2018-150683(P2018-150683)の分割
【原出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2020-171713(P2020-171713A)
(43)【公開日】2020年10月22日
【審査請求日】2020年6月25日
(31)【優先権主張番号】61/610,885
(32)【優先日】2012年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507268097
【氏名又は名称】スミス メディカル エーエスディー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SMITHS MEDICAL ASD, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ビアマン、スティーヴン、エフ.
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6710728(JP,B2)
【文献】 特表2001−522654(JP,A)
【文献】 特表2009−525814(JP,A)
【文献】 特表2008−539962(JP,A)
【文献】 特開平10−071208(JP,A)
【文献】 特表2010−524586(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0252965(US,A1)
【文献】 米国特許第07931619(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 29/00
A61L 31/00
A61M 25/00
B29C 48/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性医療用品の少なくとも一部を形成する方法において、前記方法は、
ポリカーボネートウレタンコポリマーを押し出して、前記医療用品のチューブ状部材を形成するステップと;
前記医療用品の前記チューブ状部材をアニールして、前記医療用品の前記チューブ状部材の可撓性を高めるステップと;及び
アニールされた前記医療用品の前記チューブ状部材の第1の端部にハブを結合するステップと、
を備えることを特徴とする、可撓性医療用品の少なくとも一部を形成する方法。
【請求項2】
前記ポリカーボネートウレタンコポリマーとして、熱に曝されると剛性が低下するという特性を有するポリカーボネートウレタンコポリマーが選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医療用品の前記チューブ状部材を切断するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アニールするステップが、およそ摂氏120度で約1時間、前記医療用品の前記チューブ状部材をアニールするステップを備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの管腔を有する可撓性中空軸を備える医療用品において、前記中空軸は以下の工程によって形成され、前記工程は、
ポリカーボネートウレタンコポリマーを押し出して、前記医療用品の前記中空軸を形成するステップと;
前記医療用品の前記中空軸をアニールして、前記医療用品の前記中空軸の可撓性を高めるステップと;及び
アニールされた前記医療用品の前記中空軸の第1の端部にハブを結合するステップと、
を備えることを特徴とする、少なくとも一つの管腔を有する可撓性中空軸を備える医療用品。
【請求項6】
前記ポリカーボネートウレタンコポリマーとして、熱に曝されると剛性が低下するという特性を有するポリカーボネートウレタンコポリマーが選択されることを特徴とする、請求項に記載の医療用品。
【請求項7】
前記医療用品の前記中空軸部材を切断するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項5又は6に記載の医療用品。
【請求項8】
針軸および針ハブを有する針と、拡張器軸および拡張器ハブを有する拡張器と、ガイドワイヤとをさらに備え、前記拡張器軸は、前記針ハブと前記拡張器ハブとが並んだ状態で前記針軸上に同軸に配置され、前記ガイドワイヤは前記針内に少なくとも部分的に配置され、前記中空は前記拡張器軸に同軸に配置されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の医療用品。
【請求項9】
前記針ハブが移動する通路をさらに備え、前記通路が前記拡張器ハブに装着されることを特徴とする、請求項8に記載の医療用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年3月14日に出願された米国仮出願番号第13/420,343号の35U.S.C.§119(e)の下での優先権の利益を主張する。なお、この内容すべてが本明細書において参照として組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、例えば動脈、静脈、血管、体腔、またはドレナージ部位など体内空間への導入および搬送またはそのいずれかのための医療用品(例えばカテーテル、カニューレおよびシース)を製造する方法に関する。本開示はまた、この医療用品と、動脈、静脈、血管、体腔、またはドレナージ部位にこの医療用品を配置するアクセス装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えばカテーテル、カニューレ、シースなどの様々な医療用品は、流体を患者に送り込む、または患者から抜き取るために、多くの場合、例えば動脈、静脈、体腔またはドレナージ部位において患者に導入される。例えば、カテーテルまたは血管シースは、セルジンガー法または改良セルジンガー法によって患者の血管内に導入され得る。これらの方法では、アクセス針を患者の血管内に挿入し、その後、針を介して血管にガイドワイヤを挿入することが求められる。針を取り外し、拡張器とシースが、別々にまたは組み合わされて、組織を介して血管内にガイドワイヤ上で挿入される。拡張器とガイドワイヤは、その後、取り外されて廃棄される。シースは、例えば薬液を患者に送り込むために血管内に留置されてもよく、また、カテーテルもしくは他の医療用品が、シースを介して血管内で所望の位置まで挿入されてもよい。
【0004】
医療提供者は、使用の際に、シースおよびカテーテル、またはそのいずれかを挿入中並びに挿入後、またはそのいずれかに曲げて操作することが必要となる場合がある。このような操作を可能とするためのある程度の可撓性を有するシースおよびカテーテルも存在するが、既存の装置は、ある曲率半径への曲げ、例えば90度の曲げが行われると、捩れる可能性がある。医療用品が捩れると、装置内での流体の流れを妨害し、装置の性能を妨げる可能性がある。さらには、シースおよびカテーテルの中には、最初に捩れた後、再び捩れ易くなったりまたは再び折り目がつき易くなったりするものもあり、その後、早期に、例えばより小さな曲げ角度で捩れる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、改良した医療用品および改良した可撓性、形状記憶、耐捩れ、および弾性またはそのいずれかを有する医療用品を製造する方法が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態では、可撓性医療用品を形成する方法は、ポリマー、例えばポリカーボネートウレタンコポリマーまたは他の形態のウレタンを押し出すステップを備える。本方法は、例えば華氏248度で一時間の条件でアニールを行うことによって可撓性医療用品を熱処理するステップをさらに備えることが出来る。いくつかの実施形態では、熱に曝すと、剛性が低下する(すなわち可撓性が増大する)という特性を有するポリマーが選択される。本方法は、アニールの前および後またはそのいずれかに、医療用品を望ましい長さに切断するステップをさらに備えることが可能である。任意には、本方法は、ハブに結合する医療用品の一端部をフレアにするステップと、フレアにした端部をハブ上にオーバーモールドするステップと、医療用品の一端部を先端に形成するステップとを、またはそのいずれかを備えることが可能である。
【0007】
いくつかの実施形態では、可撓性医療用品を形成する方法は、ポリマー、例えばポリカーボネートウレタンコポリマーまたは他の形態のウレタンを押し出して、少なくとも一つの管腔を有する中空軸を形成するステップを備える。本方法は、例えば華氏248度で一時間の条件でアニールを行うことによって中空軸を熱処理するステップをさらに備えることが出来る。いくつかの実施形態では、熱に曝すと、剛性が低下する(すなわち可撓性が増大する)という特性を有するポリマーが選択される。本方法は、アニールの前および後またはそのいずれかに、中空軸を望ましい長さに切断するステップをさらに備えることが可能である。本方法は、ハブに結合する中空軸の一端部をフレアにするステップと、フレアにした端部をハブ上にオーバーモールドするステップと、チューブの一端部を先端に形成するステップとを、またはそのいずれかを備えることが可能である。一実施形態では、中空軸は、捩れることなく約120度まで曲げられるように充分にアニールされる。他の実施形態では、ポリマーは、300psiまでの圧力と130ml/分までの流量に耐えることが出来る。
【0008】
いくつかの実施形態では、例えば、患者の体管腔に導入されるシースまたはカテーテルとして使用可能な可撓性医療用品またはチューブが、ポリマーを押し出してチューブを形成し、そのチューブをアニールすることによって形成される。
【0009】
一実施形態では、可撓性医療用品が、針軸および針ハブを有する針と、拡張器軸および拡張器ハブを有する拡張器と、ガイドワイヤとをさらに備え、拡張器軸は、針ハブと拡張器ハブとが並んだ状態で針軸上に同軸に配置され、ガイドワイヤは針内に少なくとも部分的に配置され、軸は、ハブと拡張器ハブとが並んだ状態で拡張器軸に同軸に配置される。
【0010】
一実施形態では、アニールされたウレタンカーボネートを含有する可撓性軸を有する医療用品を使用する方法が、ガイドワイヤ上で軸を血管に挿入するステップと、ガイドワイヤを引き抜くステップと、皮膚にほぼ平行に位置するように軸を曲げるステップと、軸を捩ることなく曲げ位置に保持するステップとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
医療用品を製造する方法およびそれに対応する医療用品の前記および他の特徴、態様および利点が、様々な実施形態の図面を参照して以下で詳細に述べられる。これらの実施形態は、例証するためのものであり、本発明の実施形態を制限することを意図したものではない。添付図面は、一実施形態に関して以下の図を有する。
【0012】
図1A】は、アクセス装置の実施形態の斜視図である。
【0013】
図1B】は、図1Aに示す実施形態の平面図である。
【0014】
図2】は、図1Aの拡張器の平面図である。
【0015】
図3A】は、図1Aのシースの平面図であり、シースの近位端部に接続されたシースハブを示す。
【0016】
図3B】は、図3Aのシースの近位部の拡大斜視図である。
【0017】
図4】は、血管シースを形成する例示的方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は添付の図面を参照して述べられ、同じ参照符号は以下の説明および図面全体を通じて同じ構成要素を示す。いくつかの実施形態、実施例、および例証を以下で開示するが、ここで述べる発明は、具体的に開示された実施形態、実施例、および例証の範囲を超えており、本発明の他の用途ならびにその明らかな変形例および均等物をも含み得ると、当業者には理解されるであろう。ここで述べる説明で使用する用語は、本発明のある具体的な実施形態の詳細な説明に関連して用いられているという理由だけで、限定的または制限的に解釈されることを意図していない。さらに、本発明の実施形態は、いくつかの新規な特徴を有することが可能であり、その望ましい属性について単に責任を負うだけの特徴は存在しないか、またはここで述べる発明を実施することにおいて必須である特徴は存在しない。
【0019】
本開示は、アクセス装置によって、血管またはドレナージ部位のような空間に搬送され得る医療用品(例えばカテーテル、カニューレ、またはシース)を提供する。図1Aはアクセス装置20を図示し、アクセス装置20は、その好ましい実施形態に従って血管(例えば静脈または動脈)に挿入されるように構成されている。アクセス装置20は、これに関連して(つまり血管アクセスに関して)以下に記載されるが、医療用品を患者の体内の他の部位(例えばドレナージ部位)にアクセスして配置するために、また、他の目的のために(例えば膿瘍を排出するために)使用することも可能である。
【0020】
様々な状況において、医療提供者は、例えば血管またはドレナージ部位などの患者の体内の空間にカテーテルおよびシース、またはそのいずれかを導入し、その空間に流体を送り込むか、または空間から流体を抜き取ることを望むかもしれない。様々なアクセス装置が当技術分野で周知である。改良したアクセス装置の例が、2012年5月25日に出願された「アクセス装置」と題する国際出願番号第PCT/US2012/039740号に記載されており、本明細書にその全内容が参照として組み込まれる。
【0021】
アクセス装置の本実施形態が、例示的な一体成形型医療用品の、患者の体内空間への配置に関連して開示される。医療用品を一旦配置すると、その後、他の医療用品(例えばガイドワイヤ)を受けて、体内空間にアクセスするために使用可能であり、且つ、体内空間に流体を送り込む、もしくは体内空間から流体を取り除く(例えば排出させる)ための通路を設けるために使用可能であるか、またはそのいずれかである。図1Aに示す実施形態において、医療用品とは、主に静脈への流体通路を設けるように構成されるシース26またはカテーテルである。しかし、本発明の原理は、一体成形型シースまたはカテーテルの配置やシースまたはカテーテルを介する医療用品のその後の挿入に限定されるものではない。代わりに、本開示に鑑み、ここで開示するアクセス装置はまた、他の型式のシース、流体ドレナージおよび搬送チューブ、ならびにシングルまたはマルチルーメンカテーテルを含む1つ以上の他の型式の医療用品を、患者の体内に直接的にまたは他の医療用品を介して間接的に配置することに関連して順当に利用され得るということが理解されるであろう。
【0022】
例えば、限定するものではないが、ここで開示するアクセス装置はまた、中心静脈カテーテル、末梢挿入中心静脈カテーテル、血液透析カテーテル、外科的ドレナージチューブ、引き離しシース、マルチピースシース、PICCライン、静脈ライン、内視鏡、さらには外部型または埋め込み型の電子装置またはセンサに接続されるワイヤーまたはケーブル用の電気導管を直接的または間接的に配置するように構成することもできる。上記のように列挙した医療用品は、アクセス装置の拡張器、針およびガイドワイヤを介して患者の体内に直接的に配置されてもよく、また、アクセス装置の拡張器、針、およびガイドワイヤを介して患者の体内に配置された医療用品を介して、その後、患者の体内に配置されてもよい。
【0023】
さらに、ここで開示する実施形態は、単一の医療用品の同軸挿入に限定されるものではない。例えば、2つのカテーテルを挿入済みのシースを介して患者に挿入してもよいか、または第2のカテーテルを挿入済みの第1のカテーテルを介して患者に挿入してもよい。さらに、導管を血管または他の体内空間に提供するだけでなく、拡張器、針およびガイドワイヤを介して挿入された医療用品は、後に挿入された医療用品の1つ以上の管腔に加えて別の管腔を形成し得る。当業者はまた、ここで開示した装置およびシステムの他の用途をも見出し得る。よって、シースに関連するアクセス装置(例えば微小穿刺用途)の図示および説明は、アクセス装置の単なる可能な適用例にすぎない。
【0024】
図1Aおよび図1Bは、アクセス装置20の好ましい実施形態を示す。アクセス装置20は、針22と、拡張器24と、シース26とを有する。図示した実施形態において、アクセス装置はまた、ガイドワイヤ部28とトラック30とを有する。図1Bで最もよく分かるように、拡張器24は針22上に同軸に据え付けられてもよく、シース26は拡張器24上に同軸に据え付けられてもよい。アクセス装置の部品の入れ子式の性質はまた、その軸が同軸よりはむしろ実質的に平行に並べられた(例えばモノレール式設計)部品を配置することでも達成され得る。使用時に、拡張器24およびシース26、またはそのいずれかは、空洞に挿入されるように針32上で遠位側に摺動可能であり、針ハブ34は、トラック30に沿って相対的に摺動可能である。
【0025】
これらの部品の各々は、終端部または遷移部(例えばハブ)に管腔取付具と、その取付具から延在する細長い構造とを有することも可能である。よって、図示されている実施形態において、針22は、針ハブ34から遠位側に延在する針本体32を有し、拡張器24は、拡張器ハブ38から遠位側に延在する拡張器軸36を有し、シース26は、シースハブ42から遠位側に延在するシース本体40を有する。ガイドワイヤ部28は、ガイドワイヤ44を備え、好ましくはガイドワイヤハブまたはキャップ46を備えることも可能である。図示の実施形態においては、ガイドワイヤハブ46は、ガイドワイヤ44の近位端部に配置されているが、他の用途では、ハブ46は、ガイドワイヤ44の端部間の位置に配置することも可能である。
【0026】
針本体32は、目標となっている皮下の体内空間にアクセスするのに充分な長さを有し、過度の外傷を生じることなく体内空間にアクセスする際に挿入力に耐えるのに充分なゲージサイズを有することも可能である。多くの用途では、針本体は3〜20cmの長さを有し、より好ましくは、3〜10cmの長さを有し得る。例えば、成人の胸部の体内空間(例えば血管)にアクセスするためには、針本体32は、好ましくは7cmまたはそれ以上の長さを有し、より好ましくは9cmまたはそれ以上の長さを有し、最も好ましくは9〜10cmの長さを有する。微小穿刺用途(例えば末梢IV)に関しては、針の大きさは、好ましくは18ゲージまたはそれ以下であり、より好ましくは18〜28ゲージであり、最も好ましくは18〜26ゲージである。新生児に適用する場合は、針本体32の長さとゲージは、かなり短く且つ小さくなければならず、例えば3〜4cmおよび26〜28ゲージが好ましい。
【0027】
より詳細に以下で述べるように、ガイドワイヤ44は、針ハブ34における中空で好ましくは先細りの部分を通過し、針本体32を介して、穿刺された血管に導入することも可能である。好都合なことに、先細り部分は、針22の孔に向けてガイドワイヤ44を案内できる。さらに、いくつかの実施形態において、この先細り部分により雌型ルアー接続が提供され得る。ガイドワイヤ44は、医療サービス提供者が拡張器24とシース26とを血管内に案内することを可能にする。
【0028】
図2は、図1Aに示す実施形態の拡張器24の平面図である。図2に示すように、図示した拡張器24は、拡張器軸36と、拡張器ハブ38と、遠位側領域70と、近位側領域72とを備えることが可能である。上記のように、拡張器ハブ38は、拡張器軸36を支持する終端部における取り付け具となり得る。
【0029】
図3Aは、図1Aに示す実施形態のシース26の平面図である。図3Bは、図3Aのシース26のシースハブ42の拡大斜視図である。図3Aおよび図3Bに示すように、シース26は、シース本体40とシースハブ42とを備えることが可能である。シース本体40は、部分的にまたは完全に、鮮明、半透明、透明、または部分的に不透明な材料から製造出来る。上記のように、シースハブ42は、シース本体40を支持する終端部での取付け具となり得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、図3Bに最も分かりやすく示されているように、シース26は、シースハブ42(例えばシースハブ42の遠位部)から延在するリリーフエレメント140を備えてもよい。リリーフエレメント140は、シース本体40の近位部92がシースハブ42に対して屈曲するときに、その近位部92を支持するように、シース本体40の近位部92の周りに配置することが可能である。
【0031】
リリーフエレメント140は、シース本体40に可撓性をある程度与えながら、シース本体40をさらに支持するような様々な形状および構造を備えることが可能である。例えば、リリーフエレメント140は、実質的に中空の細長い部材を備え、ほぼ矩形または円筒形のチューブ形状であり、支持および可撓性をある程度与える壁厚と壁材から構成されてもよい。リリーフエレメント140は、実質的に連続した、または切れ目のない表面から構成してもよく、また捩じれに抗して可撓性をさらに与えるために、自身の表面を介して部分的にまたは完全に延在する間隙、開口部、くぼみ、または他の構造を有してもよい。リリーフエレメント140は、周方向または長手方向(軸方向)のリブ、支柱などの様々な支持構造物を備えてもよい。
【0032】
他の実施形態においては、リリーフエレメントは設けられていない。以下で述べるアニール工程によって、屈曲した医療用品(例えばシース)の開通性が向上する。このような実施形態において、短い外側スリーブがシースハブからシース軸まで延在し、比較的なめらかな遷移領域を形成することが可能となる。
【0033】
シース本体40は、そこから流体(例えばIV溶液または造影剤)が血管内に送り込まれるか、または血管から抜き取られる一体成型シースであってもよい。一つの形態においては、シース本体40は、約80mmの長さの単一の管腔を備える4または5フレンチ伸長留置(例えば最大29日)末梢性カテーテルである。或いは、シース本体40は、そこから他の医療装置が血管に導入されるシングルピースまたはマルチピース本体であってもよい。例えば、カテーテルまたは他の医療用品(例えばガイドワイヤ)がシース本体を介して血管内に挿入されてもよい。このような実施形態においては、シース本体40がカテーテルまたは他の医療用品(例えばガイドワイヤ)を挿入するための導管を形成する。いくつかの実施形態において、シース本体40は、カテーテルまたは他の医療用品(例えばPICC)が患者の体内に一旦配置されると、自身の長さに沿って分割され、シースを取り外し易く出来る。いくつかの実施形態において、シースまたはシースの一部は、導管を設けるだけでなく、カテーテルの1つ以上の管腔に加えて別の管腔を形成し得る。例えば、シース本体40自体が第3の管腔を形成している状態で、デュアルルーメンカテーテルをシース本体40に挿入することで、トリプルルーメンカテーテルの同等物が形成され得る。
【0034】
シース26を患者の体内への挿入中または挿入後、シース本体40の従来の形状では、過度に屈曲し、捩じれ、且つ永久的に変形するか、またはそのいずれかの可能性があり、それによって、それ自体の機能性が低減されるか、または妨げられる。それ故に、従来のシース本体40は、例えば、シース本体40とシースハブ42との間の境界面において、またはシース本体40とシースハブ42との間の境界面の上流部もしくは下流部において、このような捩れまたは永久的変形の影響を受けやすくなる。捩れまたは永久的な変形は、血液または薬剤などの流体がシース本体40を通って流れるのを阻害する。さらには、アクセス装置20が、例えばIVライン、PICCライン、および他のより高い圧力用途に使用される場合、シース本体40の近位端部は、加圧流体がシース26を通って流れるときに「急激な」動きで不規則に移動する可能性がある。シース本体40のこのような捩れまたは永久的変形が発生する可能性を低減するために、且つアクセス装置20を展開中に急激な動きが発生する可能性を低減するために、またはそのいずれかのために、いくつかの実施形態において、シース26は、上記のように、シース26を支持し得る様々な材料と任意のリリーフエレメント140とを備えることも可能である。
【0035】
いくつかの実施形態において、シースは、患者の体内へのシースの挿入とシースを介する流体の輸送とを容易にするのに充分な可撓性を有する材料から製造されてもよい。いくつかの実施形態において、シースは、露呈される環境次第で可撓性が変化するような材料から製造することも出来る。例えば、シースは、露呈される温度を基準として、可撓性および剛性、またはそのいずれかが変化する材料から製造可能である。いくつかの実施形態において、シースは、例えば気温の上昇など、熱に曝すと剛性が低減し且つ可撓性が増大する、またはそのいずれかである材料から製造出来る。いくつかの実施形態において、シースは、同様の特性(同様の弾性率、剛性率(せん断弾性率)および体積弾性率、またはそのいずれか)を与えるウレタンポリカーボネートもしくはウレタンの別の形状、または別の塑性もしくは非塑性材料から製造出来る。このような実施形態において、シースを患者の体内に挿入中に、シースが患者の身体または別の熱源から熱を吸収することが出来、それに応じて、その剛性が低減し得る。このように剛性が低減することによって、患者にとっての快適さが増すことになり、さらにシースの挿入および使用中に患者が怪我をしたり組織が損傷したりする可能性をも低減する、またはそのいずれかとなり得る。いくつかの実施形態において、シース本体40は、高圧注入に関連する比較的高い圧力(例えば300psi)および流量(例えば130ml/分)に耐え得る材料から製造され得る。
【0036】
シース本体40に使用でき、さらに、ここで述べた1つ以上の特性、例えば可撓性、高圧注入可能性、熱に曝した際の可撓性の向上、またはそのうちのいずれかを備え得る生体親和性材料の例が、アドバンソース・バイオマテリアルズ(AdvanSource Biomaterials)社(例えばクロノフレックス C (ChronoFlex C(登録商標)) およびルーブリゾール(Lubrizol)(例えばカーボサン TPU(Carbothane TPU(登録商標))によって製造される。シースの材料がある特性、例えば可撓性を有するように選択される場合、ある程度まで、例えば約90度曲げた際に、シースが捩れることがある。ここで述べた方法は、可撓性、形状記憶、耐捩れ性、および弾性、またはそのいずれかが改良されたシースを有益に製造し得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、シースは、選択した材料、例えば上記のようなポリカーボネートウレタンコポリマーを押し出して医療用品またはチューブを形成し、その後、押し出したチューブをアニールすることで形成され得る。結晶領域および非晶領域の混合物を含有するように形成することが可能なポリマーも存在する。アニールは、一般に、材料の結晶性を増大することが出来、さらに、材料をその融点より低い温度まで加熱し、その温度を一定期間維持し、その後、材料を冷却することを求め得る。その熱は、エネルギーを与えて、材料内の現存する結合を破壊し、その結果、材料内の原子が拡散し、再分布し、新たな結合を形成して、より結晶性の高い、または組織化された構造体を作ることが可能になる。いくつかの実施形態において、押し出したチューブは、チューブをおよそ華氏248度の温度まで加熱し、その温度を約1時間維持することでアニールされ得る。他の継続時間および選択した材料の融点を下回る温度も適用可能となる。
【0038】
アニールを利用して、強度および硬度など、材料の構造上の、または機械的な特性を変えることが出来る。一般に、アニールを行うことによって結晶性が増大したために、結果的に、より高い剛性の材料が生成されることになる。しかし、上記のようにポリカーボネートウレタンコポリマー押出チューブは、ある条件下でアニールされると、この押出チューブの耐捩れ性が向上することが分かった。例えば、本開示の実施形態に従って押し出されアニールされたチューブは、捩れる前に約120度まで曲げることが出来た。従って、ここで述べた工程を用いて、チューブの可撓性を増大することが可能である。その代わりに、またはそれに付け加えて、本工程によって、より優れた耐捩れ・折れ特性をチューブに提供することも可能となる。
【0039】
一実施形態において、アニール済みのウレタンポリカーボネートから製造された可撓性のある軸を有する医療用品を使用する方法として、ガイドワイヤ上で血管内に軸を挿入し、ガイドワイヤを引き出し、皮膚に対してほぼ平行になるように軸を曲げ、軸を捩らせずに曲げ位置に軸を保持する。このような実施形態では、軸を一旦血管内に配置すると、軸は曲がり、皮膚に置かれた状態になる。その結果、使用中に捩れることなく(例えばテープまたは他の固定装置によって)皮膚に固定され得る。
【0040】
押出チューブは、アニール前またはアニール後に所望の長さに切断可能である。アニール工程では、例えばチューブが若干収縮する等、チューブの寸法がある程度変化する場合がある。従って、いくつかの実施形態において、押出チューブをアニール前に切断する場合、チューブを切断する際、その後のアニールにより起こり得る寸法変化を考慮する。さらにまたは代わりに、チューブは、アニール前に荒切りされ、その後、所望の長さ(例えば80mm)に切り取ることが可能である。
【0041】
ここで述べた、より可撓性がある、またはより捩れ耐性が優れたチューブを形成する方法は、多数の用途向けのチューブを形成するために使用出来る。例えば、本方法は、ここで述べるように、血管アクセス装置用のシースを形成するために使用出来る。このような、さらに他の同様の用途向けに、本方法は、使用するためのチューブを形成するさらなるステップを備えることも可能である。例えば、本方法は、チューブの一端部をフレアにするステップを備えてもよい。この端部は、使用する際に、患者の体外に位置するように構成される。その後、フレアは、アクセス装置の一部となるハブ上にオーバーモールドされ得る。本方法は同様に、または代わりに、先端にチューブの端部を形成するステップを備えてもよい。この端部は、使用する際に、患者の体内に挿入されるように構成される。
【0042】
図4は、ここで述べる可撓性医療用品を形成する例示的な方法200を示す。本方法200は、選択したポリマーから材料部分を形成するステップを備える。その部分は、操作ブロック202で説明するような押出工程によって生成されてもよい。他の実施形態において、可撓性材料用品は、射出成形、圧縮成形、あるいは同様の技術によって製造されてもよい。いくつかの実施形態において、可撓性医療用品を形成する方法は、ポリマー、例えばポリカーボネートウレタンコポリマーまたはウレタンの別の形状を押し出して、少なくとも1つの管腔を有する中空軸を形成するステップを備える。別の実施形態において、可撓性医療用品は管腔がない状態で製造されてもよい。
【0043】
図4を参照すると、チューブ状押出工程202において、ポリマー原材料が押出機のバレル内に溶融加工出来る。いくつかの実施形態においては、ポリマー材料が、ポリカーボネートウレタンコポリマーまたはウレタンの別の形状から生成出来る。1つもしくはそれ以上のポリマーまたは複合ポリマーを形成方法200に関連して使用可能であることが認識されるべきである。溶融加工は、ナードル(nurdles)または小さなビーズ状の原材料を取り込み、上置きホッパーから押出機のバレル内にその原材料を重力送りすることで実施可能となる。一旦バレル内に送り込まれると、材料は回転スクリュと接触し、それによってポリマー材料をバレル内へと前方に推し進める。バレル内のヒーターならびにバレル内の圧力および摩擦、またはそのいずれかによって、望ましい溶融温度までポリマー材料を加熱することが出来る。バレルの前部で、溶融した材料がスクリュから離れ、チューブ状断面を形成するために使用する金型に入り込むことが可能である。1つまたはそれ以上のピンを金型の内部に配置して、望ましい数の管腔を生成することによって、チューブ状部材の中空断面を押し出すことが可能となる。管腔の大きさおよび形状は、ピンのサイズおよび形状によって、さらに個々のピンに陽圧をかけることによって調整され得る。
【0044】
図4を引き続き参照すると、一旦ポリマーチューブを形成すると、本方法は、チューブの捩じれまたは折れ耐性を改良するために、操作ブロック204に示すようにアニールによってチューブを熱処理するステップを備えることが可能になる。アニールは、材料をその融点よりも低い温度まで加熱し、一定期間その温度を維持し、その後、材料を冷却するステップを備えることも可能である。いくつかの実施形態では、およそ華氏248度の温度までチューブを加熱し、約1時間その温度を維持することにより、押し出しチューブをアニールすることが可能である。他の持続期間および選択した材料の融点よりも低い温度もまた実施可能である。一実施形態では、本開示の実施形態により押し出されてアニールされたチューブは、捩れることなく約120度まで曲げることが可能である。他の実施形態では、本開示の実施形態により押し出されアニールされたチューブは、300psiまでの圧力および130ml/分までの流量に耐えることが可能である。いくつかの実施形態では、ポリマーは、熱に曝すと可撓性が増大した(すなわち、剛性が低減した)。
【0045】
図4をさらに参照すると、いくつかの実施形態において、本方法は、操作ブロック206に示すようにチューブのサイズ決定を行う工程を備えることが可能である。チューブのサイズ決定は、切断、機械加工、研磨仕上げ(例えば、研削またはエッチング)等によって実施可能である。一実施形態では、チューブのサイズ決定に続いて、尖った端縁やバリを除去するために、チューブのさらなる処理(例えば、研磨またはサンディング)を行うことも可能である。チューブのサイズ決定は、操作ブロック206に示すアニールステップの前または後に行うことが可能である。上記のように、アニール工程は、チューブの寸法を変えることが出来る(例えば、収縮)。このように、アニールの前にチューブのサイズを決定する場合、チューブのサイズを決定する際にアニールによる寸法変化を考慮することが可能となる。さらに、または代わりに、チューブは、アニール前におおよそのサイズに荒切りされ、アニール後に、所望の長さ(例えば80mm)に切り取ることが可能である。
【0046】
引き続き図4を参照すると、いくつかの実施形態では、方法200は操作ブロック208に示すように、チューブの端部をフレアにするステップも備えることが可能である。その後、フレアになった端部は、アクセス装置の一部となるハブ上にオーバーモールドすることが可能である。さらに、または代わりに、方法200は、操作ブロック210に示すように、チューブの端部を先端(例えば、チューブのフレア端部の反対側端部)に形成するステップを備えることも可能である。この端部は、使用の際に患者に挿入されるように構成される。
【0047】
ここで使用するように、用語“チューブ”、“チューブ状”等は、少なくとも一つの管腔を有する構造を言及するのに充分広い意味を表し、(i) 一つまたはそれ以上の管腔(例えば、多数の管腔)と;(ii) 構造の長さ方向中央軸線から相殺された一つまたはそれ以上の管腔と;(iii) 一般に均一の壁厚を有する単一管腔構造と;(iv) 構造の長さ方向中央軸線と同軸の単一管腔と;を有する構造を含む。ここで用いる条件付き用語、特に“出来る”、“可能である”、“可能性がある”、“してもよい”、“例えば”等は、特に記述されない限り、または用いる文脈内で理解される限り。ある実施形態が一定の特徴やエレメントおよび状態、またはそのいずれかを含み、他の実施形態がそれらを含まないということを伝えることを一般に意図している。このように、条件付き用語が、特徴、エレメントおよび状態、またはそのいずれかが、1つ以上の実施形態に必要であること、またはこれらの特徴、エレメントおよび状態、またはそのいずれかが含まれるか、もしくは特定の実施形態で実施されるべきであるかどうかを判断するための論理を1つ以上の実施形態が必然的に含むことを意味するようには一般に意図されていない。
【0048】
この開示はある一定の実施形態および実施例に関連して述べられているが、この開示が、具体的に開示された実施形態の範囲を超えて他の実施形態および用途またはそのいずれか、並びに明らかな変更およびその均等物にまで及ぶことは当業者には理解されるであろう。さらに、開示された実施形態におけるいくつかの変更を示し、詳細に述べているが、本開示の範囲内の他の変更は、当業者に容易に明らかとなるであろう。実施形態の具体的な特徴および態様の様々な組み合わせまたは部分的組み合わせを実施してもよいこと、また本開示の範囲内のままであることも企図されている。開示した実施形態の様々な特徴および態様は、本開示の実施形態の様々なモードを形成するために、互いに組み合わされ、または代用することが可能であることを理解するべきである。このように、ここでの開示の範囲は上記特定の実施形態によって限定されるべきものでないことが意図されている。


図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4