特許第6961043号(P6961043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961043ターボマシンの構成要素を製造する方法、ターボマシンの構成要素、および、ターボマシン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961043
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ターボマシンの構成要素を製造する方法、ターボマシンの構成要素、および、ターボマシン
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/08 20060101AFI20211025BHJP
   C23C 4/11 20160101ALI20211025BHJP
   C23C 4/073 20160101ALI20211025BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   F01D11/08
   C23C4/11
   C23C4/073
   F04D29/42 P
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-102285(P2020-102285)
(22)【出願日】2020年6月12日
(62)【分割の表示】特願2016-567073(P2016-567073)の分割
【原出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2020-169645(P2020-169645A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2020年6月12日
(31)【優先権主張番号】CO2014A000016
(32)【優先日】2014年5月15日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513243790
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】NUOVO PIGNONE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンネッティ,ヤコポ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンノッジ,マッシーモ
(72)【発明者】
【氏名】サルヴェストリーニ,ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】トリポリ,ジローラモ
(72)【発明者】
【氏名】ボンチネッリ,マルコ
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−041603(JP,A)
【文献】 米国特許第04594053(US,A)
【文献】 特開2001−152310(JP,A)
【文献】 特表2013−509533(JP,A)
【文献】 特開2001−234707(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0110247(US,A1)
【文献】 特開2013−170578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/11
C23C 4/073
F01D 11/08
F01D 25/00
F04D 29/42
F02C 7/00
F02C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法であって、
前記構成要素(109)が、パターニングされた複数の突出部(414)を有するベース表面を備えた本体(406)を備えるように、前記複数の突出部(414)を前記本体(406)の前記ベース表面上に形成するステップであって、当該ベース表面上の前記複数の突出部(414)は、前記ベース表面の平坦部(416)によって互いに隔てられた、台形の断面形状を有する隆起部として形成される、形成するステップと
前記ベース表面を結合層(404)で被覆するステップであって、当該結合層(404)が、パターニングされた複数の突出部(410)を有し、当該結合層(404)の前記複数の突出部(410)が、前記ベース表面の前記平坦部(416)に対応する平坦な低地部によって互いに隔てられている、被覆するステップと、
前記結合層(404)を被覆するように、前記構成要素(109)の上端面を形成する摩耗可能セラミック材料から形成される上端層(402)を塗布するステップであって、前記構成要素(109)の上端面が、機械加工されたものでなく、前記ベース表面と前記結合層(404)の前記複数の突出部(414)の形状に類似した形状を有するパターニングされた複数の突出部(410)を有する、塗布するステップと、
を含み、
前記結合層(404)の前記平坦な低地部を覆う前記上端層(402)の部分の厚さ(h1)が、前記結合層(404)の前記突出部を覆う前記上端層(402)の部分の厚さ(h2)よりも、大きく
前記ベース表面および前記上端面の突出部(410、414)が、互いに平行な一組の成形された隆起部(210、510)であり、
前記隆起部(210、510)は、それぞれ、前記ターボマシン(100)の回転軸方向にシールの始端側から終端側に向かって、
第1の直線部分(514)と、
前記第1の直線部分(514)と連続する第2の湾曲部分(516)と、
前記第2の湾曲部分(516)と連続する第3の直線部分(518)と、
を有する、
ターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法。
【請求項2】
記本体(406)の前記ベース表面の前記突出部(414)を、鋳造、切削、研削、放電機械加工、または、付加製造によって形成するようにした、
請求項1に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法。
【請求項3】
記結合層(404)、拡散法によってNiAlから形成される、
請求項1または2に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法。
【請求項4】
記上端層(402)、溶射によって、DVC YSZまたはDVC DySZから形成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法。
【請求項5】
記本体、ニッケル系超合金から形成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法。
【請求項6】
前記第1の直線部分(514)と前記第3の直線部分(518)は、互いに異なる長さを有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法。
【請求項7】
前記第1の直線部分(514)は、前記第2の湾曲部分(516)よりも長い、
請求項1から6のいずれか1項に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法。
【請求項8】
前記ターボマシン(100)の回転軸に垂直な面と前記ベース表面との交線と、前記第1の直線部分(514)とのなす鋭角(λ)が、前記ターボマシン(100)の回転軸に垂直な面と前記ベース表面との交線と、前記第3の直線部分(514)とのなす鋭角(μ)よりも小さい、
請求項1から7のいずれか1項に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)を製造する方法。
【請求項9】
ターボマシン(100)の構成要素(109)であって、
前記構成要素(109)の本体(406)と、
前記本体(406)のベース表面を被覆する結合層(404)と、
耗可能セラミック材料から形成され、前記結合層(404)を被覆して前記構成要素(109)の上端面を形成する上端層(402)と、
を備えており
前記ベース表面は、パターニングされた複数の突出部(414)を有し、前記ベース表面の前記複数の突出部(414)は、前記ベース表面の平坦部(416)によって互いに隔てられた、台形の断面形状を有する隆起部として形成されており、
前記結合層(404)は、パターニングされた複数の突出部を有し、前記結合層(404)の前記複数の突出部は、前記ベース表面の前記平坦部(416)に対応する平坦な低地部によって互いに隔てられており、
前記上端層(402)によって形成される前記構成要素(109)の前記上端面が、機械加工されたものではなく、前記ベース表面及び前記結合層(404)の前記複数の突出部(414)の形状に類似した形状を有するパターニングされた複数の突出部(410)を有し
記結合層(404)の前記平坦な低地部を覆う前記上端層(402)の部分の厚さ(h1)が、前記結合層(404)の前記突出部を覆う前記上端層(402)の部分の厚さ(h2)よりも、大きく、
前記ベース表面および前記上端面の前記突出部(410、414)が、互いに平行な一組の成形された隆起部(210、510)であり、
前記隆起部(210、510)は、それぞれ、前記ターボマシン(100)の回転軸方向にシールの始端側から終端側に向かって、
第1の直線部分(514)と、
前記第1の直線部分(514)と連続する第2の湾曲部分(516)と、
前記第2の湾曲部分(516)と連続する第3の直線部分(518)と、
を有する、
ターボマシン(100)の構成要素(109)。
【請求項10】
記本体が、ニッケル系超合金から形成される、
請求項9に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)。
【請求項11】
前記第1の直線部分(514)と前記第3の直線部分(518)は、互いに異なる長さを有する、
請求項9または10に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)。
【請求項12】
前記第1の直線部分(514)は、前記第2の湾曲部分(516)よりも長い、
請求項9から11のいずれか1項に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)。
【請求項13】
前記ターボマシン(100)の回転軸に垂直な面と前記ベース表面との交線と、前記第1の直線部分(514)とのなす鋭角(λ)が、前記ターボマシン(100)の回転軸に垂直な面と前記ベース表面との交線と、前記第3の直線部分(514)とのなす鋭角(μ)よりも小さい、
請求項9から12のいずれか1項に記載のターボマシン(100)の構成要素(109)。
【請求項14】
求項9から13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの構成要素(109)を備えたターボマシン(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示される主題の実施形態は、ターボマシンの構成要素を製造する方法、ターボマシンの構成要素、および、ターボマシンに関する。
【0002】
特に、本発明の用途は、ターボマシンのためのシールシステムの分野にある。
【背景技術】
【0003】
ターボマシンのための多くのタイプの公知のシールシステムが存在し、これらのタイプのうちの1つは、一般に「摩耗可能シール」と呼ばれ、摩耗可能部分と研磨部分とを備える。一般に、摩耗可能部分は、ターボマシンの固定された構成要素(例えば、タービンのケーシングの内面、すなわち、シュラウド面)に設けられ、また、研磨部分は、ターボマシンの回転可能な構成要素(例えば、タービンのバケットアセンブリのブレードのエーロフォイルチップ)に設けられる。ターボマシンの始動中、ターボマシンロータが回転し始め、その結果、回転可能な構成要素が回転すると、研磨部分が摩耗可能部分を(僅かに)擦り減らし、その後、研磨部分および摩耗可能部分がそれらの間に隙間を画定する。好適には、摩耗可能部分は、セラミック材料から形成されるパターニングされた突出部を有し、摩耗可能部分のために使用される材料は、非常に硬質であり、一般に90 HR15Yよりも大きいが、研磨部分のために使用される材料よりも硬くない。
【0004】
そのようなセラミックパターニング突出部を実現するために、最初に、構成要素の本体の滑らかな平坦な表面が、望ましい場合には、セラミック層で被覆され、その後、突出部を形成するようにセラミック層が機械加工される。
【0005】
セラミック層の機械加工は、非常に長くかかり、高価であり、また、機械加工工具寸法が層の機械加工のサイズを制限する(例えば、隣り合う突出部間の距離が数ミリメートル以上になる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0256790号明細書
【発明の概要】
【0007】
したがって、特にターボマシンの構成要素で、特に摩耗可能シールにおいて使用されるべきパターニングされた突出部を実現する改良された方法の必要性がある。
【0008】
本発明者等は、そのようなパターニングされた突出部を実現するために今まで使用されたプロセスの複雑さに起因して、そのようなパターニングされた突出部の形状(横形状及び縦形状の両方)およびサイズ(横サイズ及び縦サイズの両方)が実際に制限された、すなわち、それらの最良の性能にしたがって選択され得なかったことも考慮してきた。
【0009】
本発明者等は、構成要素の本体に直接に突出部を形成した後にそれを1または複数のセラミック材料の1つ以上の層によってコーティングすることについて考えてきた。構成要素の本体は、金属材料から形成され、したがって比較的容易に機械加工することができるが、その上に横たわる1または複数のセラミック層は機械加工される必要がない。
【0010】
また、突出部の前述の改良された製造の結果、本発明者等は、突出部を最良に成形して寸法付けることについて考えてきた。
【0011】
本発明の第1の態様は、ターボマシンの構成要素を製造する方法である。この方法は、
A)ベース表面を有する構成要素の本体を設けるステップと、
B)ベース表面を結合層で被覆するステップと、
C)結合層を摩耗可能セラミック材料から形成される上端層で被覆し、それにより、構成要素の上端面を形成するステップと、
を備え、
ベース表面がパターニングされた突出部を有し、また、2つの被覆ステップにより、構成要素の上端面もパターニングされた突出部を有する。
【0012】
このようにすると、上端面のパターニングされた突出部の形状がベース表面のパターニングされた突出部の形状に類似する。
【0013】
本発明の第2の態様は、ターボマシンの構成要素である。構成要素は、
− 構成要素の本体と、
− 本体のベース表面を被覆する結合層と、
− 結合層を被覆するとともに摩耗可能セラミック材料から形成される上端層と、
を備え、
構成要素のベース表面および上端面がいずれもパターニングされた突出部を有する。
【0014】
本発明の第3の態様はターボマシンである。
【0015】
ターボマシンは、前述した少なくとも1つの構成要素を備える。
【0016】
本明細書中に組み入れられて明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の典型的な実施形態を示すとともに、詳細な説明と共にこれらの実施形態を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の典型的な実施形態に係る燃焼ガスタービンエンジンのタービンセクションのタービンステージを概略的に示す。
図2図1のタービンセクションのタービンケーシングの内面の典型的な部分を概略的に示す。
図3図2の典型的な実施形態の隆起部の部分断面(横断面図)を示す。
図4】パターニングされた摩耗可能部分の「隆起部」および「低地部」の部分断面(横断面図)を概略的に示し、この図は本発明の幾つかの典型的な実施形態を説明するために使用される。
図5】パターニングされた摩耗可能部分の部分的な縦方向の図(「隆起部」及び「低地部」を含む)を概略的に示し、この図は本発明の幾つかの典型的な実施形態を説明するために使用される。
図6】本発明の典型的な実施形態に係る3つのパターニングされた摩耗可能部分の隆起部の3つの想定し得る縦方向の形状を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
典型的な実施形態の以下の説明は、添付図面を参照する。
【0019】
以下の説明は本発明を限定せず、本発明は、特に、燃焼ガスタービンエンジンに限定されず、他の種類のターボマシンに適用されてもよい。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0020】
明細書の全体にわたる「1つの実施形態」または「一実施形態」への言及は、一実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または、特性が開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、明細書の全体にわたる様々な場所における「1つの実施形態」または「一実施形態」なる表現の出現は、必ずしも同じ実施形態に言及していない。更に、特定の特徴、構造、または、特性は、1つ以上の実施形態において任意の適した態様で組み合わされてもよい。
【0021】
図1は燃焼ガスタービンエンジン100を示し、ガスタービンエンジンの基本的なセクションは、圧縮機セクション、燃焼器セクション、および、タービンセクションであり、図1は、タービンセクション108のタービンステージ140を概略的に示す。タービンセクション108はタービンケーシング109内に収容される。タービンセクションはロータアセンブリとステータアセンブリとを備え、ロータアセンブリは、タービンシャフト115と、タービンシャフト115に結合される1つ以上のバケットアセンブリとを備え、各バケットアセンブリが複数のタービンブレード(またはバケット)160を備え、ステータアセンブリは、タービンケーシング109と、タービンケーシング109に結合される1つ以上のノズルアセンブリとを備え、各ノズルアセンブリが複数のタービンベーン(またはノズル)125を備える。タービンバケットアセンブリと隣り合うノズルアセンブリとのそれぞれの組み合わせがタービンステージ140を画定する。
【0022】
図1には、燃焼ガスタービンエンジン100と共に、特にそのタービンセクション108と共に使用されてもよい典型的なシールシステム200の概略図が示される。各タービンブレード160はエーロフォイルチップ184を備え、ブレード160はタービンシャフト115から外側に突出する。タービンケーシング109は内面188を備え、ベーン125はタービンケーシング109から内側に突出する。この典型的な実施形態において、シールシステム200は、内面188上にわたって位置される摩耗可能部分202、すなわち、「シュラウド面」と、エーロフォイルチップ184上にわたって位置される研磨部分204とを備える。摩耗可能部分202は第1の硬度値を有し、また、研磨部分204は、第1の硬度値よりも大きい第2の硬度値を有する。燃焼ガスタービンエンジン100の動作時(始動時)には、タービンシャフト115において回転動作206がもたらされ、それにより、研磨部分204が摩耗可能部分202に擦り付き、エーロフォイルチップ184に位置される研磨部分204とタービンケーシング109に形成される摩耗可能部分202との間に隙間208が画定される。隙間208は、タービンブレード160とタービンケーシング109との間での作動流体(図1に示されない)の流れを減少させることを容易にし、それにより、燃焼ガスタービンエンジンの効率を高める一方で、タービンブレードとタービンケーシングとの擦れも減らし、それにより、タービンブレードの有効平均寿命を延ばす一定範囲の値を有する。
【0023】
図2は、図1における内面188の典型的な部分、すなわち、摩耗可能部分202により部分的に被覆される「シュラウド面」を概略的に示す。摩耗可能部分202は、複数の平行(又は略平行)な成形された「隆起部」210の形態を成すパターニングされた突出部を伴う上端面を有し、隣り合う「隆起部」210のそれぞれの対は「低地部」212によって分離される。この実施形態において、それぞれの成形された隆起部は、第1の初期直線部分(シールのBEGIN側から始まる)と、第1の直線部分と連続する第2の中間湾曲部分と、第2の湾曲部分と連続する第3の最終直線部分(第1の部分よりも長い)(シールのEND側で終わる)とを備える。
【0024】
図3は、図2の典型的な実施形態の隆起部210の部分断面を示す。図3は「マウンド」の「頂点」を示し、この「頂点」は先が尖っているが、もう一つの方法として、頂点が例えば「平坦域」に対応してもよい。図3には、タービンケーシング109の本体の部分306、本体のベース表面を被覆する結合層304(すなわち、タービンケーシング109の内面188の部分)、および、結合層304を被覆するとともに摩耗可能セラミック材料から形成される上端層302が見える。
【0025】
図3の構造は、以下のステップによって得られる。
【0026】
A)平坦ではないベース表面を有する本体306を設け、
その後、
B)このベース表面を結合層(304)で被覆し、
その後、
C)結合層304を摩耗可能セラミック材料の上端層302で被覆し、それにより、前記構成要素の上端面を形成する(図2参照)。
【0027】
図2に部分的に示されるように、被覆されるべきベース表面は、内面188の一部であり、コーティングされる前に予め前処理される。すなわち、パターニングされた突出部が本体306に設けられる(図2および図3参照)。2つの被覆ステップの後、構成要素の上端面もパターニングされた突出部を有する(この典型的な実施形態では、突出部が「隆起部」210に対応する)。
【0028】
また、図4は、「隆起部」および「低地部」を断面で示す。ベース表面の突出部には414の符号が付され、また、上端面の突出部には410の符号が付される。より具体的には、ベース表面の「隆起部」には414の符号が付され、また、ベース表面の「低地部」には416の符号が付され(これらの要素は、製造終了後には、結合層および上端層の背後に隠されるため見えない)、一方、上端面の「隆起部」には410の符号が付され(図2における「隆起部」210と同様)、また、上端面の「低地部」には412の符号が付される(図2における「低地部」212と同様)。
【0029】
本体(図4における406)のベース表面のパターニングされた突出部(図4における414)は、例えば、鋳造、切削、研削、放電機械加工、または、付加製造によって得られてもよい。
【0030】
本体(図4における406)は、金属材料から形成され、例えばAISI300系のステンレス鋼、ニッケル系超合金、「インコネル738」、「ハステロイx」、「レネ108」、または、「レネ125」から形成されてもよい。金属材料は、容易に且つ急速に成形され、例えば機械加工され得る。
【0031】
結合層(図4における404)は、例えばMCrAIY(ここで、M=Co、NiまたはCo/Ni−d)から形成されてもよく、或いは、Ni3Al(ニッケルアルミナイド)から形成されてもよい。この層は、溶射によって、例えば、物理蒸着(PVD)、低圧
プラズマ溶射(LPPS)、真空プラズマ溶射(VPS)、空気プラズマ溶射(APS)、または、高速度オキシ燃料(HVOF)溶射によって得られてもよく、或いは、この層は、拡散によって、例えば、固体拡散、液体状態拡散、または、化学蒸着拡散によって得られてもよく、MCrAIYは、より一般的には、溶射によって得られ、また、Ni3Alは、より一般的には、拡散によって得られる。
【0032】
結合層(図4における404)の厚さtk(図4参照)は略均一である。厚さtkは、0.01〜1.0mmの範囲内、より好ましくは0.05〜0.3mmの範囲内であってもよい。
【0033】
上端層(図4における402)は、セラミック材料から形成され、例えば、DVC YSZ(稠密縦割れイットリア安定化ジルコニア)またはDVC DySZ(稠密縦割れジスプロシア安定化ジルコニア)から形成されてもよく、また、溶射によって、例えば、物理蒸着(PVD)、低圧プラズマ溶射(LPPS)、真空プラズマ溶射(VPS)、空気プラズマ溶射(APS)、または、高速度オキシ燃料(HVOF)溶射によって得られてもよい。
【0034】
上端層の厚さは、均一であってもよく或いは可変であってもよい。典型的な実施形態によれば、ベース表面の「低地部」で第1の厚さh1(図4参照)があり、また、ベース表面の「隆起部」の「頂点」で第2の厚さh2(図4参照)があり、第1の厚さh1は第2の厚さh2よりも大きい。厚さh1、h2は0.6〜6.0mmの範囲内であってもよく、また、厚さh2は好ましくは0.6〜3.0mmの範囲内である。
【0035】
図2および図4の構造(この構造は、同様の構造の大きな組に対応する)は、前述した方法によって得られてもよく、また、固定シュラウド上で実現されてもよい。
【0036】
典型的な実施形態によれば、「隆起部」は、互いに平行であるとともに、一定の距離またはピッチPを隔てて配置され(図4参照)、ピッチPは2.5〜15.0mmの範囲内であってもよい。なお、上端面の突出部(図4における410)のピッチは、ベース表面の突出部(図4における414)のピッチに等しい。
【0037】
本発明に係る「隆起部」は、異なる形状およびサイズ(いずれも横方向及び縦方向で)を有してもよく、なお、図4に関連して、摩耗可能シールのシール機能にとって第一に重要な形状およびサイズは、突出部410の形状およびサイズであり、とにかく、突出部410の形状およびサイズは、2つの被覆ステップによって突出部414の形状およびサイズに基づき、したがって、これらの形状およびサイズの全てが互いに関連付けられる。
【0038】
「低地部」512によって分離される図5の典型的な方法における「隆起部」510は、
− 第1の初期直線部分514(シールのBEGIN側から始まる)と、
− 部分514と連続する第2の中間湾曲部分516と、
− 部分516と連続する第3の最終直線部分518(シールのEND側で終わる)と、
を備え、
この典型的な実施形態では、部分514、518が異なる長さを有し、特に、部分514が部分518よりも長い。
【0039】
部分514と外周ライン(具体的には、ターボマシンの回転軸に対して垂直な平面内に位置してシールのBEGINに対応する)との間の角度λ(図5における522)は、25°〜85°の範囲内であってもよい。部分518と外周ライン(具体的には、ターボマ
シンの回転軸に対して垂直な平面内に位置してシールのENDに対応する)との間の角度μ(図5における524)は、25°〜85°の範囲内であってもよい。角度λ、μは等しくてもよく或いは異なってもよく、典型的な実施形態では、これらの角度が異なる。
【0040】
図5とは異なり、図6の典型的な実施形態における「隆起部」602、604、606はそれぞれ、直線部分を伴うことなく1つ、2つ、および、3つの湾曲部分を備える。
【0041】
図4は、突出部、特に「隆起部」の多くの想定し得る横断形状を理解するために使用されてもよく、既に述べたように、ベース表面の突出部(図4における414)の形状およびサイズは、たとえ同一でなくても、上端面の突出部(図4における410)の形状およびサイズに類似する。
【0042】
ベース表面の突出部(図4における414)の断面形状は、例えば丸みを帯びた角を伴う(特に、例えば0.5mmの半径の丸みを帯びた「頂点」を伴う)三角形または台形(すなわち、一対の平行な辺を有する四辺形)であってもよい。上端面の突出部(図4における410)の断面形状は、例えば丸みを帯びた角を伴う(特に、例えば0.5mmの半径の丸みを帯びた「頂点」を伴う)三角形または台形(すなわち、一対の平行な辺を有する四辺形)であってもよい。1つの可能性は、要素414が三角形であり且つ要素410が台形であることである。なお、要素410の初期形状が三角形でもよく、また、擦れの後、要素410の最終形状が台形であってもよい。
【0043】
ベース表面の台形の一方の辺における角度α(図4参照)は、25°〜90°の範囲内、好ましくは30〜75°の範囲内、より好ましくは約45°であってもよい。ベース表面の台形の他方の辺における角度β(図4参照)は、25°〜90°の範囲内、好ましくは30〜75°の範囲内、より好ましくは約45°であってもよい。角度α、βは等しくてもよく或いは異なっていてもよく、図4の典型的な実施形態では、それらの角度が等しく、想定し得る典型的な組み合わせは、45°および45°、30°および30°、60°および60°、30°および60°、60°および30°である。
【0044】
上端面の台形の一方の辺における角度γ(図4参照)は、25°〜90°の範囲内、好ましくは30〜75°の範囲内、より好ましくは約45°であってもよい。上端面の台形の他方の辺における角度δ(図4参照)は、25°〜90°の範囲内、好ましくは30〜75°の範囲内、より好ましくは約45°であってもよい。角度γ、δは等しくてもよく或いは異なっていてもよく、図4の典型的な実施形態では、それらの角度が等しく、想定し得る典型的な組み合わせは、45°および45°、30°および30°、60°および60°、30°および60°、60°および30°である。
【0045】
角度γが一般的に角度αよりも(ほんの僅かだけ、例えば5°〜10°)小さく、また、角度δが一般的に角度βよりも(ほんの僅かだけ)小さいことも予期されるべきである。
【0046】
ベース表面の台形に関する限り、その高さH1(図4参照)は0.5〜5.0mmの範囲内であってもよく、また、その上底L1(図4参照)は0.0〜5.0mmの範囲内であってもよく、上底が0.0〜0.5mmの範囲内であれば、台形が三角形と見なされてもよい。上端面の台形に関する限り、その高さH2(図4参照)は0.5〜5.0mmの範囲内であってもよく、また、その上底L2(図4参照)は0.0〜5.0mmの範囲内であってもよく、上底が0.0〜0.5mmの範囲内であれば、台形が三角形と見なされてもよい。
【0047】
高さH2が一般的に高さH1よりも(ほんの僅かだけ)小さく、また、上底L2が一般的に上底L1よりも(ほんの僅かだけ)大きいことも予期されるべきである。
【符号の説明】
【0048】
100 燃焼ガスタービンエンジン
108 タービンセクション
109 タービンケーシング
115 タービンシャフト
125 タービンベーン(またはノズル)
140 タービンステージ
160 タービンブレード(またはバケット)
184 エーロフォイルチップ
188 内面
200 シールシステム
202 摩耗可能部分
204 研磨部分
208 隙間
210 隆起部
212 低地部
302 上端層
304 結合層
306 本体
402 上端層
404 結合層
406 本体
410 突出部
414 突出部
510 隆起部
512 低地部
514 第1の初期直線部分
516 第2の中間湾曲部分
518 第3の最終直線部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6