(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6961053
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】接合構造体および接合構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
B23K20/12 330
B23K20/12 360
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-137789(P2020-137789)
(22)【出願日】2020年8月18日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小沢 帆太郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆一
(72)【発明者】
【氏名】栃山 繁信
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2018/3449(WO,A1)
【文献】
国際公開第2019/172300(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102012001778(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2017/304933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差部を有する第1の部材と、
前記第1の部材の前記段差部に重ねて配置された第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材の重なり部を摩擦攪拌接合することにより形成された接合部と、
前記接合部を覆うように前記接合部の接合線に沿って形成された絶縁性を有する封止剤と、を備えたことを特徴とする接合構造体。
【請求項2】
前記第2の部材の表面には、前記接合部の前記接合線が矩形状に形成されており、
前記封止剤は、前記接合部の角部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
前記封止剤は、前記接合部の前記接合線の全周に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合構造体。
【請求項4】
前記第2の部材には、前記重なり部の位置に溝または段差が設けられており、
前記封止剤は、前記溝または段差の内部に溜まった状態で設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接合構造体。
【請求項5】
前記第1の部材と前記第2の部材には、それぞれ前記接合部を囲む壁部が設けられており、
前記封止剤は、前記壁部に囲まれた内部空間に充填されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接合構造体。
【請求項6】
前記第1の部材は内部に冷媒を有する冷却器のジャケット、前記第2の部材は放熱ベース板であり、
前記放熱ベース板の上には、端子を有するパワーモジュールが実装されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の接合構造体。
【請求項7】
前記封止剤は、前記パワーモジュールの前記端子に対向した前記接合部に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の接合構造体。
【請求項8】
前記冷却器の中央部には、前記放熱ベース板と前記ジャケットを摩擦攪拌接合することにより形成された中央接合部が設けられており、
前記封止剤は、前記中央接合部を覆うように前記冷却器の前記中央部に設けられていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の接合構造体。
【請求項9】
前記封止剤の上方に設けられたサポート樹脂と、
前記サポート樹脂と前記パワーモジュールの前記端子との間に設けられたバスバーと、を有することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の接合構造体。
【請求項10】
段差部を有する第1の部材を準備する工程と、
前記第1の部材の前記段差部に第2の部材を重ねて配置する工程と、
前記第1の部材と前記第2の部材の重なり部を摩擦攪拌接合することにより接合部を形成する工程と、
前記接合部を覆うように前記接合部の接合線に沿って、絶縁性を有する封止剤を塗布する工程と、を備えたことを特徴とする接合構造体の製造方法。
【請求項11】
前記接合部の露出表面に生じたバリを切削加工により除去する工程と、
前記除去する工程の後に、切削加工部を含む前記接合部の前記露出表面に前記封止剤を塗布することを特徴とする請求項10に記載の接合構造体の製造方法。
【請求項12】
前記封止剤は、前記接合部の前記接合線の全周に塗布されていることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の接合構造体の製造方法。
【請求項13】
前記接合部の露出表面に生じたバリをプレス加工でつぶした後に、前記封止剤を塗布することを特徴とする請求項10に記載の接合構造体の製造方法。
【請求項14】
前記第1の部材は内部に冷媒を有する冷却器のジャケット、前記第2の部材は放熱ベース板であり、
前記放熱ベース板の上には、パワーデバイスを内蔵するパワーモジュールが実装されていることを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の接合構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、接合構造体および接合構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属を接合する技術の一つとして摩擦攪拌接合が挙げられる。摩擦攪拌接合は、被接合部材にツールと呼ばれる回転工具を挿入し、ツールを回転させて接合部を攪拌することにより固相接合する方法である。また、摩擦攪拌接合は、溶融温度以下で被接合部材の接合が可能であるため、金属組織の変態による接合部の強度低下または変形が小さいなど多くの利点がある。しかしながら、摩擦攪拌接合によって、被接合部材上面から攪拌した際にかき出された金属がバリとして多量に発生する。
【0003】
例えば、車両用電力変換装置のヒートシンクの製造で用いられる摩擦攪拌接合工程では、放熱ベース板をジャケットに摩擦攪拌接合した後、接合部の露出表面にバリが発生する。車両用電力変換装置に発生したバリが脱落し、パワーデバイスを内蔵するパワーモジュールの端子に付着すると、車両用電力変換装置が短絡し信頼性が低下する。また、被接合部材から突出したバリは、部品を取り扱う際に作業者の衣服または身体に引っ掛かり、不測の事態を招く恐れもある。
従来の摩擦攪拌接合による加工工程では、摩擦攪拌接合を実施した後に、バリ取りのために切削加工を実施している。また、バリの対策として、バリの発生を抑制するようにツール形状を工夫し、攪拌した際にかき出された金属を抑えるようにショルダーのサイズを大きくする等、バリの除去または抑制を図る装置も存在する(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4774256号公報
【特許文献2】特許第3285013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、摩擦攪拌接合ツールの幅を大きくすると、被接合部材を有する製品において広い加工領域を確保しないといけないことになり、サイズの増加によって製品としての価値が下がる。また、切削加工およびツール形状で対応した場合であっても、ある程度のバリを除去することができるものの、完全にバリを除去することができず、最終的に手動での手直しが必要となる。手直しによるバリ取りと目視検査は、工程数と人員を増加させるため生産性を低下させるだけではなく、それによって更なる微小なバリが脱落し製品の機能欠陥につながる恐れもあり、信頼性が低下する問題があった。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、生産性と信頼性の低下を抑制できる接合構造体および接合構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される接合構造体は、段差部を有する第1の部材と、前記第1の部材の前記段差部に重ねて配置された第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材の重なり部を摩擦攪拌接合することにより形成された接合部と、前記接合部を覆うように前記接合部の接合線に沿って形成された絶縁性を有する封止剤と、を備えたものである。
また、本願に開示される接合構造体の製造方法は、段差部を有する第1の部材を準備する工程と、前記第1の部材の前記段差部に第2の部材を重ねて配置する工程と、前記第1の部材と前記第2の部材の重なり部を摩擦攪拌接合することにより接合部を形成する工程と、前記接合部を覆うように前記接合部の接合線に沿って、絶縁性を有する封止剤を塗布する工程と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される接合構造体および接合構造体の製造方法によれば、生産性と信頼性の低下を抑制できる接合構造体および接合構造体の製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1による冷却器の製造方法を説明するための断面模式図である。
【
図2A】実施の形態1による冷却器を示す断面模式図である。
【
図2B】実施の形態1による冷却器を示す断面模式図である。
【
図3A】実施の形態1による冷却器を示す断面模式図である。
【
図3B】実施の形態1による冷却器を示す断面模式図である。
【
図4】実施の形態2による冷却器を示す断面模式図である。
【
図5】実施の形態2による冷却器を示す断面模式図である。
【
図6】実施の形態3による電力変換装置の斜視図である。
【
図7】実施の形態4による電力変換装置の斜視図である。
【
図8】実施の形態5による電力変換装置の斜視図である。
【
図9】実施の形態6による電力変換装置の斜視図である。
【
図10A】実施の形態7による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。
【
図10B】実施の形態7による冷却器を示す断面模式図である。
【
図11A】実施の形態8による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。
【
図11B】実施の形態8による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。
【
図11C】実施の形態8による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。
【
図12A】実施の形態9による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。
【
図12B】実施の形態9による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。
【
図12C】実施の形態9による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。
【
図13】実施の形態10による電力変換装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、図面に基づいて実施の形態1について説明する。なお、各図面において、同一符号は同一あるいは相当部分を示す。
【0011】
図1は、実施の形態1による冷却器の製造方法を説明するための断面模式図であり、摩擦攪拌接合前の放熱ベース板とジャケットを示す。また、
図2Aは、実施の形態1による冷却器を示す断面模式図であり、摩擦攪拌接合された接合部の露出表面にバリが付着している状態の冷却器を示す。また、
図2Bは、実施の形態1による冷却器を示す断面模式図であり、摩擦攪拌接合された接合部の露出表面に切削加工によるバリが付着している状態の冷却器を示す。また、
図3A、
図3Bは、実施の形態1による冷却器を示す断面模式図である。また、各図面における断面模式図は、紙面左側を中心に図示されており、紙面右側については図示を省略している。紙面右側の構造は紙面左側の構造と左右対称になっている。
【0012】
図1に示すように、実施の形態1の冷却器3の製造方法においては、例えば金属を含むジャケット2と例えば金属を含む放熱ベース板1を準備して、ジャケット2の段差部2aに放熱ベース板1を重ねて配置する。そして、
図2A、
図2Bに示すように、ジャケット2と放熱ベース板1の重なり部を摩擦攪拌接合することにより摩擦攪拌接合部4を形成して、例えばヒートシンクなどの冷却器3を形成する。
図2Aおよび
図2Bに示すように、実施の形態1による冷却器3においては、摩擦攪拌接合することにより摩擦攪拌接合部4の露出表面4aが形成され、それに付着する摩擦攪拌接合によるバリ5aが発生する。
【0013】
図3Aに示すように、実施の形態1による冷却器3は、摩擦攪拌接合部4の露出表面4aおよび摩擦攪拌接合によるバリ5aを覆うように封止剤6を塗布し、摩擦攪拌接合によるバリ5aが摩擦攪拌接合部4の露出表面4aから脱落しないように封止固定する。実施の形態1による冷却器3は、
図3Aに示すように、摩擦攪拌接合部4を覆うように摩擦攪拌接合部4の接合線9に沿って封止剤6を形成する。摩擦攪拌接合部4の露出表面4aと摩擦攪拌接合により発生したバリ5aを封止剤6で覆うことによって、振動などの外的要因によって金属を含むバリ5aが脱落し、例えば後述するパワーモジュール7の端子8に付着することを防止することができる。
【0014】
また、摩擦攪拌接合することにより発生したバリ5aが大きい場合、通常では切削加工で除去加工を行う。その際に
図2Bに示すように摩擦攪拌接合によるバリ5aよりも小さい切削加工によるバリ5bが発生する。この場合においても、
図3Bに示すように、摩擦攪拌接合部4の露出表面4aと切削加工によるバリ5bを覆うように摩擦攪拌接合部4の接合線9に沿って封止剤6を塗布する。
実施の形態1による冷却器の製造方法では、上述した工程に加えて、摩擦攪拌接合部4の露出表面4aに生じたバリ5aを切削加工により除去する工程と、除去工程の後に、切削加工部を含む摩擦攪拌接合部4の露出表面4aに封止剤6を塗布する工程とを有する。これにより、振動などの外的要因によって金属を含むバリ5bが脱落し、例えば後述するパワーモジュール7の端子8に付着することを防止することができる。
【0015】
実施の形態1の冷却器3において封止剤6は、例えば粘度が400から800CPSの絶縁性と気密性を有するシリコン系接着材を使用する。粘度が400から800CPSの接着剤を封止剤6として使用することで、封止剤6が塗布された直後に広がり、封じ込めたいバリ5a、5bが封止剤6から露出することを防止するだけでなく、封止剤6を塗布し易いため生産性が向上する。
【0016】
以上のように、実施の形態1による冷却器3は、バリ5a、5bが存在する領域を覆うように、後で凝固する封止剤6を塗布することでバリ5a、5bの脱落を防止する。バリ5a、5bの抑制で摩擦攪拌接合ツールのサイズを大きくする必要がなくなり、製品の小型化につながり価値が上昇する。また、封止剤6を利用することで、手直しそのものが不要となり生産性が向上する。実施の形態1による冷却器3によれば、接合線9に生じたバリ5a、5bを内包するように封止剤6を塗布して封止固定することでバリ5a、5bの脱落を抑制し、バリ5a、5bによる例えば車両用の電力変換装置100の短絡を防止できる。
【0017】
また、摩擦攪拌接合部4の上面を封止剤6で覆うことで、万が一に摩擦攪拌接合部4で微小リークが発生しても、冷却器3からの水漏れを軽減することができ、信頼性を向上させることができる。また、シリコン系接着剤を封止剤6として使用することで、凝固した封止剤6は一定レベル以下の水圧を封じ込めることができ、冷却器3の冷却液が漏れだし回路にダメージを与えることを防ぐことができる。さらに、バリ対策としての摩擦攪拌接合ツールのサイズ増大、追加工程または目視検査の必要性がなくなり、小型化することで製品としての価値が上昇するだけではなく、生産性の向上とコストの低減もできる。
【0018】
実施の形態1では、摩擦攪拌接合することにより形成された摩擦攪拌接合部4を有する接合構造体として冷却器3を事例として説明したが、冷却器3を有する例えば車両用の電力変換装置100についても、摩擦攪拌接合することにより形成された摩擦攪拌接合部4を有する接合構造体である。
実施の形態1による接合構造体は、段差部2aを有する例えばジャケット2である第1の部材と、第1の部材の段差部2aに重ねて配置された例えば放熱ベース板1である第2の部材と、第1の部材と第2の部材の重なり部を摩擦攪拌接合することにより形成された摩擦攪拌接合部4と、摩擦攪拌接合部4を覆うように摩擦攪拌接合部4の接合線9に沿って形成された絶縁性を有する封止剤6と、を備えている。
【0019】
また、実施の形態1による接合構造体の製造方法は、段差部2aを有する例えばジャケット2である第1の部材を準備する工程と、第1の部材の段差部2aに例えば放熱ベース板1である第2の部材を重ねて配置する工程と、第1の部材と第2の部材の重なり部を摩擦攪拌接合することにより摩擦攪拌接合部4を形成する工程と、摩擦攪拌接合部4を覆うように摩擦攪拌接合部4の接合線9に沿って、絶縁性を有する封止剤6を塗布する工程と、を備えている。
実施の形態1による接合構造体および接合構造体の製造方法によれば、生産性を向上させることができるとともに信頼性の低下を抑制することができる。
【0020】
実施の形態2.
図4、
図5は、実施の形態2による冷却器を示す断面模式図である。なお、実施の形態2による冷却器3の説明について、実施の形態1と同様の構成部分は、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
図4に示すように、実施の形態2による冷却器3の放熱ベース板1には、すでにパワーデバイスを内蔵したパワーモジュール7が実装されている。実施の形態2は、
図5に示すように、パワーモジュール7が実装された放熱ベース板1とジャケット2を摩擦攪拌接合により接合させた後、切削除去加工で発生した金属を含むバリ5bを封止剤6で覆うものである。
実施の形態2は、摩擦攪拌接合部4の露出表面4aと信号用の端子8の距離が近いため、バリ取りなどの手直しができなかった従来の問題を解決することができ、加工性と摩擦攪拌接合の加工方法としての自由度を向上させることができる。
【0021】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3による電力変換装置の斜視図である。実施の形態3の接合構造体である電力変換装置100では、放熱ベース板1の表面上に、複数のパワーモジュール7が搭載されている。また、放熱ベース板1の表面には、摩擦攪拌接合部4の接合線9が矩形状に形成されており、封止剤6は、摩擦攪拌接合部4の接合線9の角部に設けられている。実施の形態3では、接合線9においてバリ5a、5bが発生し易い、または付着しやすい箇所に封止剤6を塗布するものである。バリ5a、5bが発生し易い、または付着しやすい箇所は、摩擦攪拌接合ツールの進行方向が変化する箇所、例えば接合線9の角部である。実施の形態3の電力変換装置100においては、効率よくバリ5a、5bを封止剤6で封止することができ、生産性を向上させることができる。
【0022】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4による電力変換装置の斜視図である。実施の形態4の電力変換装置100では、放熱ベース板1の表面上に、複数のパワーモジュール7が搭載されている。また、放熱ベース板1の表面には、摩擦攪拌接合部4の接合線9が矩形状に形成されている。パワーモジュール7は端子8を有しており、封止剤6は、パワーモジュール7の端子8に対向した位置に形成された摩擦攪拌接合部4に設けられている。実施の形態4における電力変換装置100では、接合線9において、パワーモジュール7の端子8に近い箇所だけを覆うものである。実施の形態4は、パワーモジュール7を実装した放熱ベース板1とジャケット2を摩擦攪拌接合させた際、従来では難しかったパワーモジュール7の端子8に近い箇所のバリ取りなどの手直しそのものを不要にすることができ、設計の自由度を向上することができる。
【0023】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5による電力変換装置の斜視図である。実施の形態5の電力変換装置100では、放熱ベース板1の表面上に、複数のパワーモジュール7が搭載されている。また、放熱ベース板1の表面には、摩擦攪拌接合部4の接合線9が矩形状に形成されるとともに冷却器3の中央部に放熱ベース板1とジャケット2を摩擦攪拌接合することにより形成された中央接合部(図示なし)が設けられている。封止剤6は、中央接合部を覆うように冷却器3の中央部に設けられている。
【0024】
放熱ベース板1とジャケット2を摩擦攪拌接合することにより形成された中央接合部は、例えばヒートシンクなどの冷却器3のサイズが大きい場合に必要となる。封止剤6は、冷却器3の中央部に形成された摩擦攪拌接合部である中央接合部に塗布されるものである。実施の形態5は、パワーモジュール7実装済みの場合では取りにくかった、放熱ベース板1の中央にある中央接合部のバリ5a、5bを取らなくて済むようにでき、生産性を向上することができる。
【0025】
実施の形態6.
図9は、実施の形態6による電力変換装置の斜視図である。実施の形態6の電力変換装置100では、放熱ベース板1の表面上に、複数のパワーモジュール7が搭載されている。封止剤6は、摩擦攪拌接合部4の接合線9の全周に形成されている。また、実施の形態8に示すように、封止剤6は、中央接合部を覆うように冷却器3の中央部に設けられていてもよい。実施の形態9では、金属を含むバリ5a、5bが発生し得る接合線9および中央接合部のすべてを覆うことで、手直し処理を行う必要がなく、生産効率を上げることができる。
【0026】
実施の形態7.
図10Aは、実施の形態7による冷却器の製造方法を示す断面模式図であり、
図10Bは、実施の形態7による冷却器を示す断面模式図である。
図10Aに示すように、放熱ベース板1にはジャケット2の段差部2aとの重なり部の位置に予め溝または段差10が設けられている。実施の形態7による冷却器3は、摩擦攪拌接合することにより形成される摩擦攪拌接合部4の接合線9となる軌道に、予め溝または段差10が設けられている。封止剤6は、溝または段差10の内部に溜まった状態で設けられるため、実施の形態7の冷却器3は、
図10Bに示すように封止剤6の広がりを抑制し相対的に少量の封止剤6の使用で封止が可能となる。
【0027】
実施の形態8.
図11Aから
図11Cは、実施の形態8による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。実施の形態8による冷却器の製造方法では、
図11Aに示すように、まず、ジャケット2と放熱ベース板1の重なり部を摩擦攪拌接合することにより摩擦攪拌接合部4を形成する。そして、
図11Aおよび
図11Bに示すように、摩擦攪拌接合部4の露出表面4aを含む領域にプレス装置11によりプレス加工を実施してバリ5aまたは5bを押しつぶす。プレス加工でバリ5aまたは5bを押しつぶした後に、押しつぶされたバリ5cを含む露出表面4aを有する冷却器3に対して、
図11cに示すように封止剤6を塗布する。実施の形態8による冷却器3の製造方法においては、プレス装置11によりプレスでバリの高さを低減させることによって、バリが封止剤6から食み出ることを防止し、加工または検査工程の追加もなく相対的に少量の封止剤6を塗布することで封止が可能となる。
【0028】
実施の形態9.
図12Aから12Cは、実施の形態9による冷却器の製造方法を示す断面模式図である。
図12Aに示すように、実施の形態9では、例えば金属を含むジャケット2と例えば金属を含む放熱ベース板1を準備して、ジャケット2の段差部2aに放熱ベース板1を重ねて配置する。ジャケット2の外周には外壁12aが設けられている。また、放熱ベース板1には、外壁12aとともに摩擦攪拌接合部4を囲むように構成された内壁12bが設けられている。外壁12aと内壁12bは、封止剤6の壁部となる。
図12Bに示すように、ジャケット2と放熱ベース板1の重なり部を摩擦攪拌接合することにより摩擦攪拌接合部4を形成して、例えばヒートシンクなどの冷却器3を形成する。
図12Bに示すように、実施の形態9による冷却器3においては、摩擦攪拌接合することにより摩擦攪拌接合部4の露出表面4aが形成され、それに付着する摩擦攪拌接合によるバリ5aが発生する。
【0029】
実施の形態9による冷却器3は、
図12cに示すように、摩擦攪拌接合部4を覆うように摩擦攪拌接合部4の接合線9に沿って封止剤6を形成する。封止剤6は、外壁12a、内壁12bの壁部に囲まれた内部空間に充填されている。実施の形態9の冷却器3では、放熱ベース板1とジャケット2にそれぞれに壁部を設けることで、封止剤6の広がりを制限することができる。実施の形態9では、広がりを制限された封止剤6が壁部の間の内部空間を充填するため、加工または検査工程の追加もなく相対的に少量の封止剤6を塗布することで封止が可能となる。
【0030】
実施の形態10.
図13は、実施の形態10による電力変換装置の断面模式図である。
図13に示すように、実施の形態10による電力変換装置100は、封止剤6の上方に設けられたサポート樹脂13と、サポート樹脂13とパワーモジュール7の端子8との間に設けられたサポートバスバー14と、を有するものである。
実施の形態10の電力変換装置100においては、後から取り付けることになるサポート樹脂13を封止剤6が凝固する前に上方から組み付けるものである。従来の電力変換装置100の組付け工程でも、サポート樹脂13を冷却器3に組み付ける際、その間に接着材を塗布する。実施の形態10においては、封止剤6がサポート樹脂13と冷却器3との接着剤としての役割を果たすことで、工程数を減らし生産性を上げることができる。
【0031】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0032】
1 放熱ベース板、2 ジャケット、2a 段差部、3 冷却器、4 摩擦攪拌接合部、4a 露出表面、5a、5b、5c バリ、6 封止剤、7 パワーモジュール、8 端子、9 接合線、10 溝または段差、11 プレス装置、12a 外壁、12b 内壁、13 サポート樹脂、14 サポートバスバー、100 電力変換装置
【要約】 (修正有)
【課題】生産性と信頼性の低下を抑制できる接合構造体および接合構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】接合構造体は、段差部を有する第1の部材2と、第1の部材2の段差部に重ねて配置された第2の部材1と、第1の部材2と第2の部材1の重なり部を摩擦攪拌接合することにより形成された接合部4と、接合部4を覆うように接合部4の接合線に沿って形成された絶縁性を有する封止剤6と、を備えたものである。
【選択図】
図5