特許第6961070号(P6961070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クンシャン ゴー−ビシオノクス オプト−エレクトロニクス カンパニー リミテッドの特許一覧

特許6961070ディスプレイ溝加工方法及びディスプレイ
<>
  • 特許6961070-ディスプレイ溝加工方法及びディスプレイ 図000002
  • 特許6961070-ディスプレイ溝加工方法及びディスプレイ 図000003
  • 特許6961070-ディスプレイ溝加工方法及びディスプレイ 図000004
  • 特許6961070-ディスプレイ溝加工方法及びディスプレイ 図000005
  • 特許6961070-ディスプレイ溝加工方法及びディスプレイ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961070
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ディスプレイ溝加工方法及びディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/023 20060101AFI20211025BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C03B33/023
   G09F9/00 338
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-501466(P2020-501466)
(86)(22)【出願日】2018年9月18日
(65)【公表番号】特表2020-527528(P2020-527528A)
(43)【公表日】2020年9月10日
(86)【国際出願番号】CN2018106318
(87)【国際公開番号】WO2019205466
(87)【国際公開日】20191031
【審査請求日】2020年1月14日
(31)【優先権主張番号】201810373241.9
(32)【優先日】2018年4月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516189213
【氏名又は名称】クンシャン ゴー−ビシオノクス オプト−エレクトロニクス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Kunshan Go−Visionox Opto−Electronics Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ミン
(72)【発明者】
【氏名】フー ジィアオク
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−178453(JP,A)
【文献】 特開2012−197224(JP,A)
【文献】 特表2017−526603(JP,A)
【文献】 特開2013−152525(JP,A)
【文献】 特開2005−097107(JP,A)
【文献】 特開2017−109911(JP,A)
【文献】 特開2004−256380(JP,A)
【文献】 特開昭56−072416(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/039232(WO,A1)
【文献】 特表2016−523724(JP,A)
【文献】 特開2006−035362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00 −33/14
C03C 15/00、 19/00、 23/00
B24B 3/00、 7/20、 19/00
B26F 1/38、 3/00
B28D 5/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ溝加工方法であって、
ディスプレイに対し割断加工で加工することにより、前記ディスプレイに隣接する二つの側面が第一の弧状つなぎ面により接続される第一の取付溝を形成するステップと、
前記第一の取付溝に対し研磨加工で加工することにより、隣接する二つの側面が第二の弧状つなぎ面により接続される第二の取付溝を形成するステップと、を含み、
ここで、前記ディスプレイは対向設置された上面と下面を含み、前記第一の取付溝及び前記第二の取付溝が前記上面と前記下面を貫通し、前記第二の弧状つなぎ面を前記上面が所在される平面に投影した曲率半径は、前記第一の弧状つなぎ面を前記上面が所在される平面に投影した曲率半径より小さい、ディスプレイ溝加工方法。
【請求項2】
前記第一の弧状つなぎ面と前記第二の弧状つなぎ面はいずれも円弧状つなぎ面であり、前記第一の弧状つなぎ面を前記上面が所在される平面に投影した半径と前記第二の弧状つなぎ面を前記上面が所在される平面に投影した半径との比率は、1.1以上である請求項1に記載のディスプレイ溝加工方法。
【請求項3】
前記第一の取付溝に対して研磨加工で加工することにより、隣接する二つの側面が第二の弧状つなぎ面により接続される第二の取付溝を形成する前記ステップは、前記第一の弧状つなぎ面と、前記第一の弧状つなぎ面に接続された前記側面を研磨するステップ或いは前記第一の弧状つなぎ面を研磨するステップを含む請求項1に記載のディスプレイ溝加工方法。
【請求項4】
記第二の取付溝は軸対称形状となり、前記第一の取付溝は前記ディスプレイの一端の中央部に形成される請求項1に記載のディスプレイ溝加工方法。
【請求項5】
対向設置された上面及び下面を含むディスプレイに対するディスプレイ溝加工方法であって、
ディスプレイの予め設定された溝加工部分に第一のサブトラクティブ加工を行い、前記予め設定された溝加工部分に前記上面と前記下面を貫通する初加工溝を形成し、前記初加工溝の溝壁は連続的な曲面部であり、或いは、前記初加工溝の溝壁は少なくとも一つの第一の平面状溝壁部と、前記第一の平面状溝壁部をなだらかに接続された第一の弧状溝壁部を含み、
前記初加工溝に対し第二のサブトラクティブ加工を行って仕上溝を形成し、前記仕上溝の溝壁は、少なくとも二つの第二の平面状溝壁部と、隣接する二つの前記第二の平面状溝壁部がそれぞれに接続される第二の弧状溝壁部を含み、
前記第一のサブトラクティブ加工は、切欠き加工であり、前記第二のサブトラクティブ加工は、研磨加工或いは切欠き加工と研磨加工を併用することであり、
前記第一の弧状溝壁部の曲率半径は、前記第二の弧状溝壁部の曲率半径より大きい、ディスプレイ溝加工方法。
【請求項6】
前記第一の弧状溝壁部と前記第二の弧状溝壁部は対向設置されて、いずれも円弧形である請求項に記載のディスプレイ溝加工方法。
【請求項7】
前記初加工溝の一部の溝壁は前記仕上溝の一部の溝壁と重なり合う請求項に記載のディスプレイ溝加工方法。
【請求項8】
前記初加工溝及び前記仕上溝はいずれも開口溝であり、前記初加工溝の溝壁は、さらに開口部に設置される第三の弧状溝壁部を含み、前記第三の弧状溝壁部が隣接する溝壁部になだらかに接続され、前記仕上溝の溝壁は、さらに開口部に設置される第四の弧状溝壁部を含み、前記第四の弧状溝壁部が隣接する溝壁部になだらかに接続される請求項に記載のディスプレイ溝加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの加工方法に関し、特にディスプレイ溝加工方法及びディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等のスマートデバイスに対する要求がますます高くなることに連れて、スマートフォンの分野等に対して極高スクリーン占有率を有するいわゆる全面スクリーンが進歩しつつある。しかし、全画スクリーンの枠が極めて狭いため、ディスプレイに収納溝を開けて電子デバイスを収容する十分な空間を設置する必要がある。このように、収納溝を有する異形ディスプレイを切欠き加工により形成することは作業に大きな難点の一つである。
【0003】
具体的には、ディスプレイに対する切欠き加工の難点は、主に切欠き加工精度と割断(分割)の難しさにある。切欠き加工装置にとっては、面取りの寸法が小さいほど加工難度が高くなり、異形切欠き加工により収納溝を形成する必要があるディスプレイにとっては、収納溝の底部の両端にある面取り部が加工の難点になり、加工精度を保証できないことがある。
【発明の概要】
【0004】
これに鑑みて、異形ディスプレイの収納溝に対する加工難度が高い且つ精度が低いという問題に対して、この課題を解決できるディスプレイ溝加工方法及びディスプレイを提供する必要がある。
【0005】
本発明はディスプレイ溝加工方法を提供し、前記ディスプレイ溝加工方法は、前記ディスプレイに対しサブトラクティブ法で加工することにより、前記ディスプレイに隣接する二つの側面が第一の弧状つなぎ面により接続される第一の取付溝を形成するステップと、前記第一の取付溝に対しサブトラクティブ法で加工することにより、隣接する二つの側面が第二の弧状つなぎ面により接続される第二の取付溝を形成するステップを含み、ここで、前記ディスプレイは対向設置された上面と下面を含み、前記第一の取付溝及び前記第二の取付溝は前記上面と前記下面を貫通し、前記第二の弧状つなぎ面を前記上面が所在される平面に投影した曲率半径は、前記第一の弧状つなぎ面を前記上面が所在される平面に投影した曲率半径より小さい。
【0006】
上記ディスプレイ溝加工方法によれば、弧状つなぎ面を上面が所在される平面に投影した曲率半径が減少するにつれて弧状つなぎ面の加工難度は増加するため、まずサブトラクティブ法で比較的大きい曲率半径を有する第一の弧状つなぎ面を形成し、その後、さらにサブトラクティブ法で比較的小さい曲率半径を有する第二の弧状つなぎ面を形成するから、現在の一回のサブトラクティブ法で直接に比較的小さい曲率半径を有する弧状つなぎ面を形成する方法と異なり、加工設備に対する要求や加工難度を低下させ、ディスプレイの切欠き加工精度と良品率を向上させる。
【0007】
一実施例において、前記第一の弧状つなぎ面と前記第二の弧状つなぎ面はいずれも円弧状つなぎ面である。
【0008】
一実施例において、前記第一の弧状つなぎ面を前記上面が所在される平面に投影した半径と前記第二の弧状つなぎ面を前記上面が所在される平面に投影した半径との比率は、1.1以上である。
【0009】
一実施例において、前記第一の取付溝に対しサブトラクティブ法で加工することにより、隣接する二つの側面が第二の弧状つなぎ面により接続される第二の取付溝を形成する前記ステップは、前記第一の弧状つなぎ面と、前記第一の弧状つなぎ面に接続された前記側面をサブトラクティブ法で加工するステップを含む。
【0010】
一実施例において、前記第一の取付溝に対しサブトラクティブ法で加工することにより、隣接する二つの側面が第二の弧状つなぎ面により接続される第二の取付溝を形成する前記ステップは、前記第一の弧状つなぎ面をサブトラクティブ法で加工するステップを含む。
【0011】
一実施例において、割断加工により前記ディスプレイに前記第一の取付溝を形成する。
【0012】
一実施例において、前記第一の取付溝を研磨することにより前記第二の取付溝を形成する。
【0013】
一実施例において、前記第二の取付溝は軸対称形状となっている。
【0014】
一実施例において、前記第一の取付溝は前記ディスプレイの一端の中央部に形成される。
【0015】
一実施例において、初加工溝の一部の溝壁は仕上溝の一部の溝壁と重なり合う。
【0016】
一実施例において、前記初加工溝及び前記仕上溝はいずれも開口溝である。
【0017】
一実施例において、前記初加工溝の溝壁は、さらに開口部に設置される第三の弧状溝壁部を含み、前記第三の弧状溝壁部が隣接する溝壁部になだらかに接続され、前記仕上溝の溝壁は、さらに開口部に設置される第四の弧状溝壁部を含み、前記第四の弧状溝壁部が隣接する溝壁部になだらかに接続される。
【0018】
一実施例において、前記仕上溝は略矩形または略台形である。
【0019】
一実施例において、前記初加工溝及び前記仕上溝はいずれも閉口溝である。
【0020】
一実施例において、第一のサブトラクティブ加工での加工方法が、前記第二のサブトラクティブ加工での加工方法と異なる。
【0021】
一実施例において、前記第一のサブトラクティブ加工が、切欠き加工により前記初加工溝を形成する。
【0022】
一実施例において、前記切欠き加工方法は割断加工法である。
【0023】
一実施例において、前記第二のサブトラクティブ加工は研磨加工により前記仕上溝を形成し、或いは、前記第二のサブトラクティブ加工は切欠き加工と研磨加工とを組み合わせた方法より前記仕上溝を形成する。
【0024】
一実施形態において、前記第一のサブトラクティブ加工と前記第二のサブトラクティブ加工はいずれも切欠き加工方法を用いる。
【0025】
また、本発明は、上記ディスプレイ溝加工方法により形成された溝が設置されたディスプレイを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態におけるディスプレイの加工概略図である。
図2】他の実施形態におけるディスプレイの加工概略図である。
図3】別の実施形態におけるディスプレイの加工概略図である。
図4】一実施形態におけるディスプレイ溝加工方法のフローチャートである。
図5】一実施形態におけるディスプレイの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の理解を容易にするために、次に、図面を参照しながら、本発明についてより詳しく説明する。図面には、本発明の最適な実施例が示されている。しかし、本発明は様々な形で実現でき、ここで記述される実施例に限らない。逆に、これらの実施例を挙げる目的は、本発明の開示の理解をより徹底的かつ完全にすることにある。
【0028】
本明細書において、ある要素がもう一つの要素「に固定」されているように記載する場合、この要素が前記もう一つの要素に直接に固定され、或いは、中間要素を介して固定されていることを意味する。また、ある要素がもう一つの要素「に接続」されているように記載する場合、この要素が前記もう一つの要素に直接に接続され、或いは、中間要素を介して接続されていることを意味する。逆に、ある要素がもう一つの要素「に直接に固定」されているように記載する場合、中間要素が存在しないことを意味する。また、本明細書で使用する「垂直」、「水平」、「左」、「右」などの用語及び類似する表現は説明のためのものに過ぎない。
【0029】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本明細書で使用される「及び/或いは」という用語は、関連する列挙された項目のうちの一つまたは複数のもの、及びそのあらゆる組合せを含む。
【0030】
図1及び図4に示すように、好ましい実施形態はディスプレイ溝加工方法を提供する。この溝加工方法は、例えば、ディスプレイ100に溝加工を行うことにより、取付溝を有するディスプレイ200(図5参照)を形成する。ディスプレイ溝加工方法は以下のステップを含む。
【0031】
S110:ディスプレイ100に対しサブトラクティブ法で加工することにより、ディスプレイ100に第一の取付溝(例えば、初加工溝とも呼ばれる)120を形成し、第一の取付溝120における隣接する二つの側面は第一の弧状つなぎ面122により接続される。
【0032】
S120:第一の取付溝120に対しサブトラクティブ法で加工することにより、第二の取付溝(例えば、仕上溝とも呼ばれる)140を形成し、第二の取付溝140の隣接する二つの側面が第二の弧状つなぎ面142により接続される。ここで、ディスプレイ100は対向設置された上面110及び下面(図示せず)を含み、第一の取付溝120及び第二の取付溝140は上面110及び/または下面を貫通し、第一の弧状つなぎ面122を上面110が所在される平面に投影した曲率は第二の弧状つなぎ面142を上面110が所在される平面に投影した曲率より小さい。本実施形態において、サブトラクティブ法とは、被加工物が加工中に材料がどんどん減少していく加工方法であり、例えば、切欠き加工(ブレード切欠き、レーザー切欠き、押し抜き切欠き等を含む)、研磨加工等の加工方法が挙げられる。
【0033】
さらに、第一の取付溝120と第二の取付溝140はいずれも複数の側面を含み、側面と第一の弧状つなぎ面122により第一の取付溝120が限定され、側面と第二の弧状つなぎ面142により第二の取付溝140が限定される。また、第一の取付溝120は少なくとも二つの側面が第一の弧状つなぎ面122により接続され、第二の取付溝140は少なくとも二つの側面が第二の弧状つなぎ面142により接続される。
【0034】
従来技術において、ディスプレイ100の底部に弧状面を有する取付溝を加工する場合、一般的には割断加工(分割加工)により仕上溝を一気に成形する。この場合、弧状面が取付溝の底部の内面取りに位置するため、加工応力が集中しやすく、加工難度を増加させ、切欠き加工精度と良品率を低下させてしまう。一方、上記したディスプレイ100の溝加工方法において、弧状つなぎ面を上面110が所在される平面に投影した曲率半径の減少に伴って弧状つなぎ面の加工難度は増加するため、まずサブトラクティブ法で比較的大きい曲率半径を有する第一の弧状つなぎ面122を形成し、その後、さらにサブトラクティブ法で比較的小さい曲率半径を有する第二の弧状つなぎ面142を形成する。このように、直接に比較的小さい曲率半径を有する弧状つなぎ面を形成する従来技術と異なって、まず初加工溝を形成し、そして初加工溝を加工して仕上溝を形成するような段階的な加工方法により、加工設備に対する要求や加工難度を低下させ、ディスプレイ100の切欠き加工精度と良品率を向上させる。
【0035】
具体的に、本実施形態では、第一の弧状つなぎ面122と第二の弧状つなぎ面142はいずれも円弧状つなぎ面であり(すなわち、第一の弧状つなぎ面122と第二の弧状つなぎ面142を上面110が所在される平面に投影した形状は円弧状であり)、円弧状の内面取りを有する異形ディスプレイ200が形成される。理解できるように、他の実施形態において、第一の弧状つなぎ面122と第二の弧状つなぎ面142の少なくとも一つは楕円弧状つなぎ面であり、形状の異なる異形ディスプレイ200が形成されてもよい。
【0036】
また、第一の弧状つなぎ面122と第二の弧状つなぎ面142が両方とも円弧状つなぎ面である場合、第一の弧状つなぎ面122の半径と第二の弧状つなぎ面142の半径との比率は1.1以上である。これにより、加工応力が集中しすぎることを回避できるため、まず第一の弧状つなぎ面122を形成する困難さが直接に第二の弧状つなぎ面142を形成する困難さより遥かに低く、第一の弧状つなぎ面122から第二の弧状つなぎ面142を形成する困難さが直接に第二の弧状つなぎ面142を形成する困難さよりも遥かに低い。
【0037】
好ましくは、第一の弧状つなぎ面122を上面110が所在される平面に投影した半径と第二の弧状つなぎ面142を上面110が所在される平面に投影した半径との比率は1.2である。例えば、第二の弧状つなぎ面142を上面110が所在される平面に投影した半径が2mmである場合、第一の弧状つなぎ面122を上面110が所在される平面に投影した半径は2.4mmであり、また、第二の弧状つなぎ面142を上面110が所在される平面に投影した半径が3mmである場合、第一の弧状つなぎ面122を上面110が所在される平面に投影した半径は3.6mmである。このように、まず第一の弧状つなぎ面122を形成し、そして第二の弧状つなぎ面142を形成することにより直接に第二の弧状つなぎ面142を形成する加工難度を低減するとともに、第一の弧状つなぎ面122から第二の弧状つなぎ面142を形成する取り代が大きすぎて加工時間が長すぎることを回避し、それにより、良品率を向上させるとともに高い加工効率を保証できる。理解されるように、第一の弧状つなぎ面122を上面110が所在される平面に投影した半径と第二の弧状つなぎ面142を上面110が所在される平面に投影した半径との比率はこれに限定されず、装置及び加工プロセス等に応じて1.2、1.3、1.4等の値とすることができる。
【0038】
具体的に、本実施形態では、ディスプレイ100の割断加工により第一の取付溝120を形成し、第一の取付溝120を研磨することにより第二の取付溝140を形成する。
【0039】
具体的には、まず、ディスプレイ100に切断線を描く。ここで、切断線の経路は、第一の取付溝120の縁の延長経路と同じである。その後、ディスプレイ100を割断装置の作業台に置き、割断押さえ板等の切断構造により押圧衝撃により切断線に沿ってディスプレイ100を分割して第一の取付溝120を形成することによって、高い加工効率及び加工精度を確保する。そして、第一の取付溝120が形成されたディスプレイ100を仕上げ研磨機に置き、研磨機により第一の取付溝120を研磨して第二の取付溝140を形成することにより、高い加工精度及び良品率を向上させる。このように、ディスプレイ100の溝加工方法は、割断加工と研磨加工を併用することにより、高い加工効率を有するとともに、高い加工精度及び良品率も有する。理解できるように、第一の取付溝120と第二の取付溝140の具体的な加工方法は、これに限定されず、必要に応じて異なる加工方法を採用することができる。
【0040】
さらに、S120において、第一の取付溝120に対しサブトラクティブ法で加工することにより第二の取付溝140を形成し、第二の取付溝140の隣接する二つの側面は第二の弧状つなぎ面142により接続されるステップは、第一の弧状つなぎ面122と第一の弧状つなぎ面122に接続された側面に対しサブトラクティブ法で加工するステップを含む。
【0041】
具体的には、図1に示すように、一実施例において、第一の取付溝120の溝壁は、二つの第一の弧状つなぎ面122、二つの第一の弧状つなぎ面122を接続する第一の側面124、及び二つの第一の弧状つなぎ面122の第一の側面124から離れた端部を接続する第二の側面126を含み、かつ、二つの第一の弧状つなぎ面122と第一の側面124は弧状面を形成する。第二の取付溝140の溝壁は、二つの第二の弧状つなぎ面142、二つの第二の弧状つなぎ面142を接続する第三の側面144、及び二つの第二の弧状つなぎ面142の第三の側面144から離れた端部を接続する第四の側面146を含み、かつ、第一の側面124の上面110が所在する平面における正投影が直線であり、第二の側面126と第四の側面146とは少なくとも一部が重なり合ってもよい。このように、第一の弧状つなぎ面122及び第一の側面124を同時に研磨して第二の弧状つなぎ面142及び第三の側面144をそれぞれ形成することができ、ここで、加工時間を節約できるように第一の側面124における取り代が小さい。
【0042】
図2に示すように、他の実施例において、第一の取付溝120の溝壁は、二つの第一の弧状つなぎ面122、二つの第一の弧状つなぎ面122を接続する第一の側面124、及び二つの第一の弧状つなぎ面122の第一の側面124から離れた端部を接続する第二の側面126を含み、かつ、第一の側面124の上面110が所在する平面における正投影は直線である。第二の取付溝140の溝壁は、二つの第二の弧状つなぎ面142、二つの第二の弧状つなぎ面142を接続する第三の側面144、及び二つの第二の弧状つなぎ面142の第三の側面144から離れた端部を接続する第四の側面146を含み、第二の弧状つなぎ面142と第四の側面146との間は平面状つなぎ溝壁部により接続される。第一の側面124の上面110が所在する平面における正投影も直線であり、つなぎ溝壁部の上面110が所在する平面における正投影も直線であり、第二の側面126と第四の側面146は少なくとも一部が重なり合ってもよい。このように、第一の弧状つなぎ面122及び第一の側面124を同時に研磨して第二の弧状つなぎ面142、つなぎ溝壁部及び第三の側面144をそれぞれ形成する。好ましくは、加工利便性のために、第一の側面124における取り代と第一の弧状つなぎ面122における取り代は大体同じ程度である。
【0043】
図3に示すように、別の実施形態において、第一の取付溝120の溝壁は、二つの第一の弧状つなぎ面122、二つの第一の弧状つなぎ面を接続する第一の側面124、及び二つの第一の弧状つなぎ面122の第一の側面124から離れた端部を接続する第二の側面126を含み、第一の弧状つなぎ面122と第二の側面126との間は平面状つなぎ溝壁部により接続される。第一の側面124及び第一の取付溝120のつなぎ溝壁部の上面110の所在する平面における正投影は直線である。第二の取付溝140の溝壁は、二つの第二の弧状つなぎ面142、二つの第二の弧状つなぎ面142を接続する第三の側面144、及び二つの第二の弧状つなぎ面142の第三の側面144から離れた端部を接続する第四の側面146を含み、第二の弧状つなぎ面142と第四の側面146との間は平面状つなぎ溝壁部により接続される。かつ、第二の側面126と第四の側面146は少なくとも一部が重なり合って、第三の側面144の上面110が所在する平面における正投影は直線でありかつ第一の側面124と少なくとも部分的に重なり合い、第二の取付溝140のつなぎ溝壁部の上面110の所在する平面における正投影は直線である。したがって、S120において、第一の取付溝120に対してサブトラクティブ法で加工することにより第二の取付溝140を形成し、第二の取付溝140の隣接する二つの側面が第二の弧状つなぎ面142により接続されるステップは具体的に、第一の弧状つなぎ面122に対してサブトラクティブ法で加工するステップを含む。このように、第一の弧状つなぎ面122に対してサブトラクティブ加工を行って第二の弧状つなぎ面142を得る場合、第一の側面124の加工を必要としないため、加工効率をさらに向上させることができる。
【0044】
また、上記した三つの実施例において、二つの第二の弧状つなぎ面142は第二の取付溝140の中心対称軸線を対称軸として第三の側面144の両端に対称的に設けられ、二つの第二の弧状つなぎ面142の半径は同じである。すなわち、第二の取付溝140は軸対称形状となっている。
【0045】
また、図1図3に示すように、本実施形態において、第一の取付溝120はディスプレイ100の一端の中央部に形成される。具体的には、ディスプレイ100は二つの対称に設置された短辺及び二つの短辺をそれぞれ接続して対称に設置された長辺を含み、第一の取付溝120はそのうちの一つの短辺に形成される。このように、該ディスプレイ100は長方形であり、ディスプレイ100の一側における短辺にカメラ等の電子部品を収容するための取付溝が設置され、カメラ等の電子部品を矩形のディスプレイ100の縁部に置く従来技術とは異なる。理解できるように、他の実施形態において、第一の取付溝120と第二の取付溝140の形状及び位置はこれに限定されず、第一の取付溝120と第二の取付溝140は弧状面取りを有する閉鎖的な形状であってもよい。
【0046】
上記したディスプレイ100の溝加工方法において、まず割断等の方法でディスプレイ100に対してサブトラクティブ法で加工することにより第一の取付溝120を形成し、次に、研磨等の方法で第一の弧状つなぎ面122を有する第一の取付溝120に対してさらにサブトラクティブ加工を行って第二の弧状つなぎ面142を有する第二の取付溝140を形成する。第二の弧状つなぎ面142の曲率が比較的大きくて高い加工難度を有するため、まず比較的曲率の小さい第一の弧状つなぎ面122を形成し、その後に、第一の弧状つなぎ面122を基にして第二の弧状つなぎ面142を形成することにより、加工難度と設備への要求を低減でき、切断効果と良品率を向上させる。
【0047】
好ましくは、本発明の提供するディスプレイ溝加工方法は以下のとおりであってもよい。
【0048】
A)ディスプレイ100の予め設定された溝加工部分に第一のサブトラクティブ加工を行い、予め設定された溝加工部分に上面110及び下面を貫通する初加工溝120を形成する。好ましくは、本実施例における初加工溝120は開口溝である。例えば、図1に示すように、初加工溝120の溝壁は連続的な曲面部であってもよく、初加工溝120の中心線に対して対称に配置された第二の側面126、第一の弧状つなぎ面122及び第一の側面124を含む。或いは、図2及び図3に示すように、初加工溝120の溝壁は少なくとも一つの第一の平面状溝壁部(例えば図2及び図3における第一の側面124)と、第一の平面状溝壁部となだらかに接続された第一の弧状溝壁部(図2及び図3における第一の弧状つなぎ面122)を含んでもよい。初加工溝120が開口溝である場合、初加工溝120の溝壁は開口部に設置された第三の弧状溝壁部(図1図3における第二の側面126)をさらに含んでもよく、該開口部における第三の弧状溝壁部は隣接する溝壁部となだらかに接続される。図1及び図2において、第三の弧状溝壁部は隣接する第一の弧状つなぎ面122となだらかに接続される。図3において、第二の側面126と第一の弧状つなぎ面122とは平面状つなぎ溝壁部(図3では符号なし)により接続され、該初加工溝120のつなぎ溝壁部はそれぞれ第二の側面126と第一の弧状つなぎ面122となだらかに接続される。
【0049】
B)初加工溝120に対し第二のサブトラクティブ加工を行い、仕上溝140を形成する。本実施例において、初加工溝120は開口溝であり、140も開口溝である。例えば、図1図3に示すように、仕上溝140の溝壁は、少なくとも二つの第二の平面状溝壁部(例えば、図1図3における第三の側面144、及び符号のない、第二の弧状つなぎ面142と第四の側面146との間に位置する二つの平面状つなぎ溝壁部を含む)と、各隣接する二つの第二の平面状溝壁部を接続する第二の弧状溝壁部(図1〜3における第二の弧状つなぎ面142)を含む。仕上溝140が開口溝である場合、仕上溝140の溝壁はさらに開口部に設置された第四の弧状溝壁部(図1〜3における第四の側面146)を含んでもよく、第四の弧状溝壁部は隣接する溝壁部となだらかに接続される。図1図3において、第二の弧状つなぎ面142と第四の側面146との間は平面状つなぎ溝壁部(図示では符号なし)により接続され、第四の側面146は仕上溝140のつなぎ溝壁部となだらかに接続され、仕上溝140のつなぎ溝壁部は第二の弧状つなぎ面142となだらかに接続される。
【0050】
本発明では、ディスプレイ100の予め設定された溝加工部分に初加工溝120を予め形成し、そして初加工溝120を基にして仕上溝140を形成することにより、従来技術においてディスプレイ100に一気に仕上溝を形成する時に仕上溝の内面取りの半径が小さいことによって加工時の応力集中によって生ずるスクリーンの割れを回避できる。
【0051】
好ましくは、初加工溝120の面積は仕上溝140の面積の50%以上である。好ましくは、初加工溝120の面積は仕上溝140の面積の90%よりも小さい。また、第一の弧状溝壁部(第一の弧状つなぎ面122)と第二の弧状溝壁部(第二の弧状つなぎ面142)は対向して設置されかついずれも円弧形とすることができ、第一の弧状溝壁部の曲率半径は第二の弧状溝壁部の曲率半径より大きい。このように、ディスプレイ100に溝を加工する場合、本発明では段階的加工方法を採用し、すなわち、まずサブトラクティブ法により比較的曲率半径の大きい第一の弧状溝壁部(第一の弧状つなぎ面122)を有する初加工溝120を形成し、その後に、初加工溝120に対してさらにサブトラクティブ加工を行って比較的小さい曲率半径を有する第二の弧状溝壁部(第二の弧状つなぎ面142)を有する仕上溝140を形成する。この加工方法は比較的小さい曲率半径を有する弧状つなぎ面を直接形成する従来技術と異なり、加工設備への要求と加工難度を低下させるだけでなく、ディスプレイ100の切欠き加工精度と良品率を大幅に向上させることもできる。
【0052】
好ましくは、初加工溝120の一部の溝壁は仕上溝140の一部の溝壁と重なり合う。図1及び図2に示すように、第二の側面126と第四の側面146とは重なり合う部分を有している。図3では、第二の側面126と第四の側面146とが重なり合う部分を有するだけでなく、第一の側面124と第三の側面144とも重なり合う部分を有する。
【0053】
好ましくは、本実施例において、初加工溝120及び仕上溝140は開口溝であり、仕上溝140は略台形である。理解できるように、他の実施例において、仕上溝140は例えば略矩形であってもよい。好ましくは、初加工溝120は略台形または略矩形であってもよく、楕円形または円弧形等の形状であってもよい。また、他の実施例において、初加工溝120及び仕上溝140は閉口溝であってもよい。仕上溝140が閉口溝である場合、仕上溝140は、例えば、円形、矩形、長楕円形、楕円形、台形などの任意形状であってもよい。
【0054】
好ましくは、第一のサブトラクティブ加工での加工方法は第二のサブトラクティブ加工での加工方法と異なる。初加工溝120の屈折部の弧度半径が比較的大きいため、第一のサブトラクティブ加工での加工方法は切欠き加工(例えば、レーザー切欠き、ブレード切欠き、押し抜き切欠きなど)により初加工溝120を形成することができ、好ましくは割断加工により初加工溝120を形成する。仕上溝140の屈折部(コーナー)の弧度半径が比較的小さいため、第二のサブトラクティブ加工での加工方法は研磨加工により加工精度が高い仕上溝140を形成することができる。或いは、第二のサブトラクティブ加工は切欠き加工と研磨加工との組み合わせた方法より仕上溝140を形成することができ、例えば、まず初加工溝120を粗切断し、その後に仕上げ研磨して仕上溝140を得る。理解できるように、他の実施例において、第一のサブトラクティブ加工及び第二のサブトラクティブ加工はいずれも切欠き加工により行われることができる。理解できるように、サブトラクティブ加工の具体的な加工方式は上記列挙されたものに限定されず、必要に応じて異なる加工方式を採用することができる。
【0055】
図5に示すように、本発明はさらに、上記ディスプレイ溝加工方法により形成された溝が設置される異形ディスプレイ200を提供する。
【0056】
このように、異形ディスプレイ200は取付溝(仕上溝)を有し、取付溝はカメラ等の電子部品に収容空間を提供することができるため、縁部の周囲に上記電子部品を設置するための空間を必要とせず、異形ディスプレイ200が設置されたスマートデバイスのスクリーン占有率を向上させることができる。また、異形ディスプレイ200の良品率が高いため、異形ディスプレイ200が設けられたスマートデバイスの製造コストが低減される。
【0057】
上述した実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせることができる。記述の簡潔化のために、上述した実施例における各技術的特徴のあらゆる組合せについて説明していないが、これらの技術的特徴の組合せは矛盾しない限り、本明細書に記述されている範囲内であると考えられるべきである。
【0058】
上述した実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示したものにすぎず、その記述が具体的かつ詳細であるが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。なお、当業者にとって、本発明の趣旨から逸脱しないかぎり、若干の変形および改良を行うことができ、これらもすべて本発明の保護範囲内にある。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5