特許第6961082号(P6961082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961082
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】移動体の速度計測装置およびエレベータ
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20211025BHJP
   B66B 3/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G01P3/36 C
   B66B3/02 P
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-525022(P2020-525022)
(86)(22)【出願日】2018年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2018022646
(87)【国際公開番号】WO2019239536
(87)【国際公開日】20191219
【審査請求日】2020年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 義人
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 欣穂
(72)【発明者】
【氏名】井上 真輔
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/068301(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0100438(US,A1)
【文献】 特開2010−190675(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/073015(WO,A1)
【文献】 特開2002−340923(JP,A)
【文献】 特開2002−274765(JP,A)
【文献】 国際公開第98/53327(WO,A1)
【文献】 国際公開第95/01549(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/00− 3/80
G01B11/00−11/30
B66B 1/00− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート信号を発生するタイミング制御部と、
前記ゲート信号に応答して、移動体の移動路に沿って配置された静止構造物を照明する光を送信する光送信部と、
前記ゲート信号に応答して、前記ゲート信号で規定される露光時間だけ、複数の画素を含む撮像面に前記静止構造物からの反射光を取り込み、前記反射光による光信号をその輝度に応じた電気信号に変換するゲートイメージセンサと、
前記静止構造物に相対向して配置されて、前記静止構造物で反射した前記反射光を取り込み、前記反射光を前記ゲートイメージセンサの前記撮像面に結像させる結像光学系と、
前記ゲートイメージセンサの出力による前記電気信号を画像として処理し、処理結果から前記移動体の速度を算出する画像処理部と、を備え、
少なくとも前記光送信部と前記ゲートイメージセンサ及び前記結像光学系は、
前記移動体に配置され、
前記露光時間は、
前記撮像面に結像した画像の空間分解能と前記移動体の移動可能な最大移動速度との比から得られる時間よりも小さい値に設定されていることを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体の速度計測装置において、
前記空間分解能が、0.5mmであって、前記最大移動速度が、5m/sである場合、前記露光時間は、100μs未満であることを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体の速度計測装置において、
前記画像処理部は、
前記ゲートイメージセンサから、前記ゲート信号の発生周期に相当するフレーム周期で前記電気信号を順次取り込み、前記各電気信号からフレーム毎の暗視野画像を生成し、生成した複数フレームの暗視野画像のうち第1のフレームの暗視野画像における第1の計測対象画像と、第2のフレームの暗視野画像における計測対象画像であって、前記第1の計測対象画像に対応した第2の計測対象画像との間に生じる、暗視野画像上のずれを算出し、算出した前記暗視野画像上のずれと、前記第1のフレームと前記第2のフレームとの差を示す時間との比から、前記移動体の速度を算出することを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の移動体の速度計測装置において、
前記結像光学系は、
前記静止構造物に相対向して配置されて、前記静止構造物で反射した散乱光を集光する第1のレンズと、
前記第1のレンズで集光された前記散乱光の光量を制限し、前記光量の制限された前記散乱光を前記ゲートイメージセンサの前記撮像面に向けて送出する絞りと、を備え、
前記絞りは、
その中心が、前記第1のレンズの光軸と同一直線上に配置され、且つ前記第1のレンズの焦点位置の配置されていることを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の移動体の速度計測装置において、
前記結像光学系は、
前記静止構造物に相対向して配置されて、前記静止構造物で反射した散乱光を集光する第1のレンズと、
前記第1のレンズで集光された前記散乱光の光量を制限する絞りと、
前記絞りと前記ゲートイメージセンサとの間に配置されて、前記絞りからの前記散乱光を集光し、集光した前記散乱光を前記ゲートイメージセンサの前記撮像面に向けて送出する第2のレンズと、を備え、
前記絞りは、
その中心が、前記第1のレンズの光軸と同一直線上に配置され、且つ前記第1のレンズの焦点位置であって、前記第2のレンズの焦点位置に配置され、
前記第2のレンズは、
その光軸が、前記第1のレンズの光軸と同一直線上に配置されていることを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の移動体の速度計測装置において、
前記光送信部は、
光源と、前記光源からの光を集光し、集光した前記光を前記静止構造物に向けて拡散させて照射する照明レンズとから構成されることを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の移動体の速度計測装置において、
前記光送信部は、
その光軸が、前記静止構造物に形成される仮想の軸であって、前記移動体の移動方向と平行な軸に対して傾斜した方向であって、前記静止構造物の表面を照明する前記光が、前記静止構造物の表面に対して斜方向から入射する方向に配置され、
前記結像光学系は、
前記静止構造物の表面で反射した前記反射光のうち正反射光の伝搬経路から外れた領域であって、前記散乱光が伝搬する領域に配置されていることを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の移動体の速度計測装置において、
前記光送信部から送信される前記光の偏光方向を一定方向に揃える偏光子と、
前記静止構造物の表面で反射した前記反射光のうち正反射光の伝搬経路から外れた領域であって、前記反射光に属する前記散乱光が伝搬する領域に配置され、前記正反射光の偏光方向と同一方向の光を除去し、前記散乱光を透過する検光子と、を含む正反射光分離光学系を更に備え、
前記光送信部は、
その光軸が、前記偏光子に相対向して配置されていることを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項9】
請求項4又は5に記載の移動体の速度計測装置において、
前記光送信部から送信される前記光の偏光方向を一定方向に揃える偏光子と、
前記結像光学系と前記静止構造物との間に配置されて、前記偏光子を透過した光を、前記静止構造物に形成される仮想の軸であって、前記移動体の移動方向と平行な軸と直交する方向に反射し、反射した光を前記静止構造物の表面に向けて照射し、且つ前記静止構造物の表面で反射した前記反射光を、前記仮想の軸と交差する方向に透過するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタを透過した前記反射光のうち少なくとも前記散乱光が伝搬する領域に配置され、前記反射光に属する正反射光の偏光方向と同一方向の光を除去し、前記散乱光を透過する検光子と、を含む正反射光分離光学系を更に備え、
前記光送信部は、
その光軸が、前記偏光子と相対向して配置され、
前記検光子は、
その中心が、前記結像光学系の光軸と同一直線上に配置されていることを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項10】
請求項4又は5に記載の移動体の速度計測装置において、
前記光送信部から送信される前記光を、前記光送信部の光軸に対して直交方向に中空状の照度分布を有する光ビームに変換するリング絞りと、
前記光送信部の光軸と交差する方向に配置された環状のミラーであって、前記リング絞りを透過した前記光ビームを、前記静止構造物に形成される仮想の軸であって、前記移動体の移動方向と平行な軸と直交する方向に反射する穴あきミラーと、
前記穴あきミラーと前記静止構造物との間に配置されて、前記穴あきミラーで反射した前記光ビームを集光し、集光した前記光ビームを前記静止構造物の表面に向けて照射するリング状集光レンズと、を含む正反射光分離光学系を更に備え、
前記光送信部は、
その光軸が、前記リング絞りと相対向して配置され、
前記リング状集光レンズは、
その空間部の中心が、前記結像光学系の光軸と同一直線上に配置され、前記静止構造物の表面で反射した前記反射光のうち正反射光を前記空間部から外れた領域で集光し、前記反射光に属する前記散乱光を、前記空間部を介して前記結像光学系に送出することを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項11】
請求項1に記載の移動体の速度計測装置において、
前記画像処理部は、
前記ゲートイメージセンサから出力された前記電気信号を処理して得られた絶対位置検出画像と、前記静止構造物における絶対位置を特定する画像として記憶された絶対位置基準画像とを比較し、前記絶対位置検出画像と前記絶対位置基準画像とが一致したことを条件に、前記移動体の位置を計測するときの基準時間をリセットし、リセットされた前記基準時間からの経過時間と前記移動体の速度とを基に、前記移動体の前記絶対位置からの移動距離を示す、前記移動体の位置を算出することを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項12】
請求項1に記載の移動体の速度計測装置において、
前記タイミング制御部は、
前記光送信部と前記ゲートイメージセンサに対して、同一のタイミングで第1のゲート信号を出力し、その後、前記ゲートイメージセンサに対して、前記第1のゲート信号とは異なるタイミングで第2のゲート信号を出力し、
前記ゲートイメージセンサは、
前記撮像面として、少なくとも前記第1のゲート信号に応答して、前記結像光学系からの前記反射光を前記露光時間だけ結像する第1の撮像面と、前記第2のゲート信号に応答して、前記結像光学系からの前記反射光を前記露光時間だけ結像する第2の撮像面を有し、
前記画像処理部は、
前記第1の撮像面に結像した第1の画像と前記第2の撮像面に結像した第2の画像及び前記露光時間を基に、前記光送信部から送信された前記光が、前記反射光として前記ゲートイメージセンサの前記第1の撮像面に入射するまでの伝達時間を算出し、算出した前記伝達時間と前記光の速度とを基に、前記移動体から前記静止構造物までの距離を算出することを特徴とする移動体の速度計測装置。
【請求項13】
かごが昇降路に沿って移動するエレベータであって、
前記かごの速度を計測する速度計測装置を有し、
前記速度計測装置は、
ゲート信号を発生するタイミング制御部と、
前記ゲート信号に応答して、前記昇降路に沿って配置された静止構造物を照明する光を送信する光送信部と、
前記ゲート信号に応答して、前記ゲート信号で規定される露光時間だけ、複数の画素を含む撮像面に前記静止構造物からの反射光を取り込み、前記反射光による光信号をその輝度に応じた電気信号に変換するゲートイメージセンサと、
前記静止構造物に相対向して配置されて、前記静止構造物で反射した前記反射光を取り込み、前記反射光を前記ゲートイメージセンサの前記撮像面に結像させる結像光学系と、
前記ゲートイメージセンサの出力による前記電気信号を画像として処理し、処理結果から前記かごの速度を算出する画像処理部と、を備え、
少なくとも前記光送信部と前記ゲートイメージセンサ及び前記結像光学系は、
前記かごに配置され、
前記露光時間は、
前記撮像面に結像した画像の空間分解能と前記かごの移動可能な最大移動速度との比から得られる時間よりも小さい値に設定されていることを特徴とするエレベータ。
【請求項14】
請求項13に記載のエレベータにおいて、
前記空間分解能が、0.5mmであって、前記最大移動速度が、5m/sである場合、前記露光時間は、100μs未満であることを特徴とするエレベータ。
【請求項15】
請求項13に記載のエレベータにおいて、
前記画像処理部は、
前記ゲートイメージセンサから、前記ゲート信号の発生周期に相当するフレーム周期で前記電気信号を順次取り込み、前記各電気信号からフレーム毎の暗視野画像を生成し、生成した複数フレームの暗視野画像のうち第1のフレームの暗視野画像における第1の計測対象画像と、第2のフレームの暗視野画像における計測対象画像であって、前記第1の計測対象画像に対応した第2の計測対象画像との間に生じる、暗視野画像上のずれを算出し、算出した前記暗視野画像上のずれと、前記第1のフレームと前記第2のフレームとの差を示す時間との比から、前記かごの速度を算出することを特徴とするエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の速度を計測する移動体の速度計測装置およびエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータにおけるかごの位置や速度を計測するセンサとして、非接触式の速度センサがある。非接触式の速度センサを用いてかごの位置や速度を計測することにより、昇降速度を監視する安全装置としての役割を果たすガバナロープのような、長尺な構造物が不要となり、接触式の速度センサのような、滑りによる測定誤差も発生しない。特許文献1には、かごに設置されたイメージセンサにより、昇降路内に存在する構造物を撮影し、かごの位置及び速度を計測する光学式のかご位置・速度計測の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−73885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高速移動するかごの上から、静止した構造物を撮影すると、かごの移動方向に被写体ぶれが発生し、速度計測精度を悪化させる要因となる。
【0005】
本発明の目的は、移動体から静止構造物を撮影した画像に、移動体の移動方向に被写体ぶれが発生するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、ゲート信号を発生するタイミング制御部と、前記ゲート信号に応答して、移動体の移動路に沿って配置された静止構造物を照明する光を送信する光送信部と、前記ゲート信号に応答して、前記ゲート信号で規定される露光時間だけ、複数の画素を含む撮像面に前記静止構造物からの反射光を取り込み、前記反射光による光信号をその輝度に応じた電気信号に変換するゲートイメージセンサと、前記静止構造物に相対向して配置されて、前記静止構造物で反射した前記反射光を取り込み、前記反射光を前記ゲートイメージセンサの前記撮像面に結像させる結像光学系と、前記ゲートイメージセンサの出力による前記電気信号を画像として処理し、処理結果から前記移動体の速度を算出する画像処理部と、を備え、少なくとも前記光送信部と前記ゲートイメージセンサ及び前記結像光学系は、前記移動体に配置され、前記露光時間は、前記撮像面に結像した画像の空間分解能と前記移動体の移動可能な最大移動速度との比から得られる時間よりも小さい値に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動体から静止構造物を撮影した画像に、移動体の移動方向に被写体ぶれが発生するのを抑制することができ、結果として、移動体の速度の測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1におけるエレベータ光学式速度計測装置の全体構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施例1におけるゲートイメージセンサで撮像した画像であって、静止構造物表面の散乱輝度分布の画像を示す模式図。
図3】本発明の実施例1におけるタイミング制御部からゲートイメージセンサに送信するゲート信号のタイミングチャート。
図4】本発明の実施例1における画像処理部の速度計測処理を示すフローチャート。
図5】本発明の実施例2における結像光学系の構成を示す概略図。
図6】本発明の実施例3における結像光学系の構成を示す概略図。
図7】本発明の実施例4における光送信部の構成を示す概略図。
図8】本発明の実施例5におけるエレベータ光学式速度計測装置の各部の位置関係を示す概略図。
図9】本発明の実施例6におけるエレベータ光学式速度計測装置の全体構成を示す概略図。
図10】本発明の実施例6における正反射光分離光学系の概略構成を示す概念図。
図11】本発明の実施例7における正反射光分離光学系の概略構成を示す概念図。
図12】本発明の実施例8における正反射光分離光学系の概略構成を示す概念図。
図13】本発明の実施例9におけるエレベータ光学式速度計測装置の全体構成を示す概略図。
図14】本発明の実施例10におけるタイミング制御部の出力によるゲート信号とゲートイメージセンサに入射する散乱光のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例は、移動体として、例えば、エレベータかごを用い、エレベータかごから、被写体である静止構造物の表面に向けて照明光を照射し、静止構造物の表面で反射した反射光を、結像光学系を介してゲートイメージセンサの撮像面に入射し、ゲートイメージセンサで光信号を電気信号に変換し、変換された電気信号から生成された画像を基に、エレベータかごの移動速度を計測するものであって、ゲートイメージセンサにおける露光時間を100μs未満に設定したものである。
【0011】
図1は、本発明の実施例1におけるエレベータ光学式速度計測装置の全体構成を示す概略図である。図1において、エレベータ光学式速度計測装置10は、建屋の昇降路(図示せず)内を昇降するエレベータかご12の上部に配置されている。昇降路(移動体の移動路)内には、ガイドレールを含む静止構造物11が昇降路に沿って配置されている。エレベータ光学式速度計測装置10は、エレベータかご12の運行制御を行うのに有用な信号情報、例えば、エレベータかご12の移動速度および位置に関する信号情報を、エレベータかご12の運行制御を行う制御盤(図示せず)に出力する。
【0012】
具体的には、エレベータ光学式速度計測装置10は、光送信部100と、ゲートイメージセンサ101と、画像処理部102と、全体制御部103と、タイミング制御部104と、結像光学系105を備えている。なお、図1では、説明をわかりやすくするため、光路を太い実線の矢印、電気信号の経路を細い実線の矢印で示している。
【0013】
光送信部100は、光源(図示せず)を備え、エレベータ昇降路内の静止構造物11、例えば、ガイドレールの表面に光を照射するように配置されている。ここで、光とは、電磁波を指し、例えば、可視光であってもよく、赤外線、紫外線などであってもよい。光源としては、LED(Light Emitting Diode)やハロゲンランプのような時間的かつ空間的にインコヒーレントな光源を用いてもよく、あるいはレーザー光源のような時間的かつ空間的にコヒーレントな光源を用いてもよい。
【0014】
結像光学系105は、光送信部100から静止構造物11の表面に向けて照射された出射光線(出射光)であって、静止構造物11の表面で反射した散乱光をゲートイメージセンサ101の撮像面に結像させる光学系として構成されている。ゲートイメージセンサ101は、結像光学系105からの光信号(静止構造物11の表面の散乱輝度分布を示す光信号)であって、複数の画素(ピクセル)を含む撮像面に結像した光信号を、その輝度に応じた電気信号に変換し、この電気信号を、暗視野画像を示す画像信号として画像処理部102に送信する。ゲートイメージセンサ101としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることができる。また、ゲートイメージセンサ101は、二次元のエリアセンサであってもよく、あるいはエレベータかご12の移動方向に空間分解の機能を有する一次元のラインセンサであってもよい。なお、入射光および散乱光の経路中に、結像光学系105以外にバンドパスフィルタなどの波長選択式フィルタを設けて、所望の波長以外の外光を除去する役割を持たせてもよい。また、砂塵や埃等がエレベータ光学式速度計測装置10に入らないように、エレベータ光学式速度計測装置10を防護する目的で、入射光および散乱光の経路中に窓材などを設けてもよい。
【0015】
タイミング制御部104は、全体制御部103からの情報を基に複数のゲート信号(ゲートパルス信号)を生成し、生成した複数のゲート信号のうち一方のゲート信号を光送信部100に送信し、他方のゲート信号をゲートイメージセンサ101に送信する。一方のゲート信号は、光送信部100における光源の駆動時間を規定するタイミング信号として用いられ、他方のゲート信号は、ゲートイメージセンサ101における露光時間を規定するタイミング信号として用いられる。画像処理部102は、ゲートイメージセンサ101からの電気信号(暗視野画像を示す画像信号)を、例えば、静止構造物11の表面の散乱輝度分布に応じた画像であって、空間分解した画像として処理し、この画像処理の結果から、エレベータかご12に関する信号情報、例えば、エレベータかご12の移動速度および位置に関する信号情報を算出し、算出した信号情報を全体制御部103に出力する。全体制御部103は、画像処理部102及びタイミング制御部104の制御を行うと共に、画像処理部102からの信号情報(エレベータかご12に関する信号情報)を外部(制御盤)に出力する。
【0016】
次に、静止構造物表面を撮像して得られた散乱輝度分布の画像について説明する。図2は、ゲートイメージセンサ101で撮像した画像であって、静止構造物表面の散乱輝度分布の画像を示す模式図である。ゲートイメージセンサ101の画素の空間分解能とエレベータかご12の最大移動速度(エレベータかご12が移動可能な最大移動速度)との比から得られる時間より長い(大きい)時間を、ゲートイメージセンサ101の露光時間Tとして、高速移動(移動速度V)するエレベータかご12から、被写体である静止構造物11を撮影すると、図2に示すように、被写体表面(静止構造物表面)の散乱輝度分布の画像101aには、エレベータかご12の移動方向yに被写体ぶれが発生する(複数の画像が重なりぼける)。すなわち、ゲートイメージセンサ101における露光時間Tに比例したV(移動速度)×T(露光時間)の幅だけ、画像101aにぼけが発生する。画像101aにぼけが発生した状態で画像処理すると、エレベータかご12の移動速度や位置を正確に算出することができない。
【0017】
画像101aのぼけによる、速度分解能・位置検出分解能を低減し、画像101aに、エレベータかご12の移動方向yに被写体ぶれが発生するのを抑制するためには、エレベータかご12の移動速度Vを考慮して、露光時間Tを十分に抑える必要がある。そこで、本実施例では、ゲートイメージセンサ101の画素の空間分解能とエレベータかご12の最大移動速度Vmとの比から得られる時間よりも短い(小さい)時間を、ゲートイメージセンサ101の露光時間Tとして、高速移動(移動速度V)するエレベータかご12から、静止構造物11を撮影したところ、被写体表面(静止構造物表面)の散乱輝度分布の画像101aとして、エレベータかご12の移動方向yに被写体ぶれが発生しない画像が得られた。
【0018】
この際、要求される空間分解能δxに対し、露光時間Tと、エレベータかご12の最大移動速度Vmとの間には、T<δx/Vmの関係がある。ここで、例えば、最大移動速度5m/sで移動するエレベータかご12に対して、0.5mmの空間分解能δxを得るには、ゲートイメージセンサ101の露光時間Tは、100μs未満となる。すなわち、ゲートイメージセンサ101の露光時間T=100μs未満(タイミング制御部104からゲートイメージセンサ101に送信するゲート信号のパルス幅=100μs未満)とすれば、高速移動(移動速度V)するエレベータかご12から、静止構造物11を撮影しても、被写体表面(静止構造物表面)の散乱輝度分布の画像101aとして、エレベータかご12の移動方向yに被写体ぶれが発生しない画像が得られる。
【0019】
図3は、タイミング制御部104からゲートイメージセンサ101に送信するゲート信号のタイミングチャートである。タイミング制御部104は、ゲートイメージセンサ101に対して、フレーム周期Δt毎にゲート信号Gを送信する。このゲート信号Gのパルス幅Wは、露光時間T=100μs未満に相当する値に設定されている。すなわち、ゲートイメージセンサ101は、タイミング制御部104からのゲート信号Gのパルスに応答して、パルス幅Wの時間(露光時間T=100μs未満)だけ露光を行う。この際、タイミング制御部104から光送信部100に送信するゲート信号Gのパルス幅Wを、露光時間T=100μs未満に相当する値に設定し、光源の点灯期間を露光時間Tの間だけ行ってもよい。これにより、光送信部100の単位時間当たりの平均出力パワーを下げることが可能であり、駆動に必要なパワー及び放熱を抑えることが可能である。
【0020】
次に、画像処理部102における速度計測処理について説明する。図4は、本実施例におけるエレベータ光学式速度計測装置10による速度計測処理を示すフローチャートである。本実施例では、わかりやすさのため、相関関数法による速度計測処理で説明するが、速度の算出方法は、相関関数法には限定されない。
【0021】
画像処理部102は、まず、全体制御部103から測定開始の信号を受信したことを条件に処理を開始し(S501)、フレームiごとに暗視野画像I(i)をゲートイメージセンサ101から取得する(S502)。
【0022】
次に、画像処理部102は、取得したフレームiの暗視野画像I(i)を、画像処理部102内の記憶素子(メモリ)に格納する(S503)。なお、記憶素子は、画像処理部102や全体制御部103内に含まれるレジスタなどの揮発性メモリを用いてもよく、あるいは外部に配置した不揮発性メモリを用いてもよい。
【0023】
次に、画像処理部102は、ステップS502で記憶素子に格納した、フレームiの暗視野画像I(i)を記憶素子から読み出すと共に、フレームiよりも前に、記憶素子に格納されたフレーム(i−k)の暗視野画像I(i−k)を記憶素子から読み出し、読み出した暗視野画像I(i)と暗視野画像I(i−k)との相互相関関数Cを計算する(S504)。なお、前のフレームの暗視野画像の選択方法いついては、直前の1フレーム前の暗視野画像を選択してもよいし、あるいは複数フレーム前の暗視野画像を選択してもよい。また、相互相関関数の計算方法についても他の計算方法を採用してもよい。
【0024】
次に、画像処理部102は、相互相関関数Cの計算により、相互相関関数Cのピーク座標位置Δxを推定し、ステップS504で読み出した暗視野画像のうち暗視野画像I(i−k)から暗視野画像I(i)までの時間k×Δtを算出し、ピーク座標位置Δxと時間k×Δtとの比から、エレベータかご12の移動速度V=Δx/(k×Δt)を計算する。なお、ピーク座標位置Δxの推定方法に関しても、最大位置のピーク座標としてもよいし、あるいは最大位置近傍の数点を用いて最小二乗フィッティングを行って推定してもよく、その方法については限定しない。
【0025】
次に、画像処理部102は、移動速度Vの情報を全体制御部103に出力し、フレームiに「1」を加算し(S505)、全体制御部103からの測定終了の信号を受信したか否かを判定し(S506)、全体制御部103から測定終了の信号を受信しいてない場合、ステップS502に戻り、ステップS502〜S506の処理を繰り返す。一方、画像処理部102は、ステップS506で全体制御部103から測定終了の信号を受信したと判定した場合、このルーチンの処理を終了する(S507)。
【0026】
また、画像処理部120は、ゲートイメージセンサ101から、タイミング制御部104の出力によるゲート信号の発生周期に相当するフレーム周期で電気信号を順次取り込み、各電気信号からフレーム毎の暗視野画像を生成し、生成した複数フレームの暗視野画像のうち第1のフレームの暗視野画像における第1の計測対象画像(特徴的な画像を含む計測対象画像)と、第2のフレームの暗視野画像における計測対象画像であって、第1の計測対象画像に対応した第2の計測対象画像(第1の計測対象画像と同一の特徴的な画像を含む計測対象画像)との間に生じる、暗視野画像上のずれを算出し、算出した暗視野画像上のずれと、第1のフレームと第2のフレームとの差を示す時間との比から、エレベータかご(移動体)12の速度を算出することができる。
【0027】
全体制御部103は、画像処理部102から移動速度Vに関する情報を受信した場合、受信した情報を記憶素子に格納するか、あるいは、移動速度Vに関する情報を管理装置(図示せず)へ送信する。この際、管理装置は、速度ベクトルに関する情報を表示することにより、エレベータの管理者へ通知してもよい。なお、画像処理部102は、エレベータかご12の移動方向のかご移動速度のみを算出してもよい。
【0028】
本実施例によれば、ゲートイメージセンサ101の露光時間Tを100μs未満に短縮したので、エレベータかご12から静止構造物11を撮影した画像に、エレベータかご12の移動方向に被写体ぶれが発生するのを抑制することができる。すなわち、エレベータかご12の移動方向に被写体ぶれが発生しない画像を得ることができ、結果として、エレベータかご12の移動速度の測定精度を高めることができる。
【実施例2】
【0029】
本実施例は、実施例1の結像光学系105よりも、エレベータかご12のz軸方向のゆれに対して結像倍率を不変に保つ、ロバストな結像光学系105を有するものであり、他の構成は、実施例1と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0030】
図5は、本発明の実施例2における結像光学系105の構成を示す概念図である。なお、図5では、静止構造物11からの散乱光線(散乱光)L11〜L19を点線の矢印で示している。図5において、結像光学系105は、静止構造物11に相対向して配置されて、静止構造物11で反射した散乱光を集光する対物レンズ(第1のレンズ)81と、対物レンズ81で集光された散乱光の光量を制限し、光量の制限された散乱光をゲートイメージセンサ101の撮像面に向けて送出する絞り82を備えている。この際、結像光学系105は、被写体(検出対象)となる静止構造物11が、エレベータかご12に対して、相対的にz軸方向(エレベータかご12の移動方向(y軸方向)に対して直交する方向)にぶれたときの倍率の変化の影響をなくすために、物体側(静止構造物11側)にテレセントリックな光学配置となっている。
【0031】
すなわち、本実施例における結像光学系105は、ゲートイメージセンサ101の撮像面の中心と、絞り82の中心と、対物レンズ81の光軸の中心が同一直線上に位置するように配置され、且つ、絞り82は、対物レンズ81のゲートイメージセンサ101側の焦点位置に配置されている。静止構造物11からの散乱光L11〜L19は、対物レンズ81を透過した後、ゲートイメージセンサ101の撮像面に結像される。この際、散乱光L11〜L19のうち、散乱光L12、L15、L18は、他の散乱光よりも光量が多く、主光線となって、常に、対物レンズ81の光軸と平行となって対物レンズ81に入射する。なお、y軸とz軸は、静止構造物11に形成される仮想の軸であって、y軸は、エレベータかご12の移動方向と平行な軸を示し、z軸は、エレベータかご12の移動方向と直交する軸であって、結像光学系105の光軸と平行な軸を示す。
【0032】
本実施例によれば、静止構造物11からの散乱光L12、L15、L18は、主光線となって、常に、対物レンズ81の光軸と平行となって対物レンズ81に入射するので、エレベータかご12のz軸方向のゆれに対して、静止構造物11の画像が光軸(z軸)方向にぶれても、ゲートイメージセンサ101の撮像面で結像する像の倍率は一定となり、エレベータかご12のy方向の移動量Δyの計測値を、エレベータかご12のz軸方向のゆれに対して、常に一定に保つことができる。
【0033】
また、本実施例では、対物レンズ81を、静止構造物11から50mm以上離して配置している。例えば、エレベータかご12が奥行き方向(z軸方向)に±5mm程度ぶれる場合、対物レンズ81を、静止構造物11から50mm以上離して配置することによって、エレベータかご12のz軸方向のぶれに対して発生する画像のピントぼけを抑えることが可能である。また、対物レンズ81の材質をガラスにすることもできる。対物レンズ81をガラスレンズとすることにより、プラスチックレンズに比べ、十分高い耐久性を得ることができる。また、対物レンズ81のうち光線が通過する面の形状を、両側が球面もしくは片側が球面でもう一方の側を平面として構成することもできる。本構成により、対物レンズ81をガラスレンズとしても、非球面形状に比べ、安価に結像光学系105を構成することが可能である。
【実施例3】
【0034】
本実施例は、実施例1の結像光学系105よりも、エレベータかご12のz軸方向のゆれに対して、ゲートイメージセンサ101における結像倍率を不変に保つ、ロバストな結像光学系であって、実施例2よりも、ゲートイメージセンサ101で生じる幾何収差を抑える結像光学系105を有するものであり、他の構成は、実施例1と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0035】
図6は、実施例3における結像光学系105の構成を示す概念図である。なお、図6では静止構造物11からの散乱光線(散乱光)L11〜L19を点線の矢印で示している。図6において、結像光学系105は、静止構造物11に相対向して配置されて、静止構造物11で反射した散乱光を集光する対物レンズ(第1のレンズ)81と、対物レンズ81で集光された散乱光の光量を制限する絞り82と、絞り82とゲートイメージセンサ101との間に配置されて、絞り82からの散乱光を集光し、集光した散乱光をゲートイメージセンサ101の撮像面に向けて送出する集光レンズ(第2のレンズ)83を備えている。
【0036】
この際、結像光学系105は、被写体(検出対象)となる静止構造物11が、エレベータかご12に対して、相対的にz軸方向にぶれたときの倍率の変化の影響をなくするために、物体側(静止構造物11側)をテレセントリックな光学配置にすると共に、ゲートイメージセンサ101で生じる幾何収差を抑えるために、像側(ゲートイメージセンサ101側)もテレセントリックな光学配置にしている。
【0037】
すなわち、ゲートイメージセンサ101の撮像面の中心と、集光レンズ83の光軸と、絞り82の中心と、対物レンズ81の光軸が、それぞれ同一直線上に位置するように、配置され、且つ、絞り82は、対物レンズ81のゲートイメージセンサ101側の焦点位置に配置されていると共に、集光レンズ83の対物レンズ側の焦点位置に配置されている。また、静止構造物11からの散乱光L11〜L19は、対物レンズ81を透過した後、集光レンズ83を介してゲートイメージセンサ101の撮像面に結像される。この際、散乱光L11〜L19のうち、散乱光L12、L15、L18は、他の散乱光よりも光量が多く、主光線となって、常に、対物レンズ81の光軸と平行となって対物レンズ81に入射すると共に、集光レンズ83の光軸と平行となってゲートイメージセンサ101に入射する。
【0038】
本実施例によれば、実施例2と同様に、静止構造物11の画像が、光軸(z軸)方向にぶれても、ゲートイメージセンサ101の撮像面で結像する像の倍率を不変にでき、さらにゲートイメージセンサ101のz軸方向の取り付け位置のずれに対しても、ゲートイメージセンサ101の撮像面で結像する像の倍率を不変にできる。結果として、結像光学系105やゲートイメージセンサ101の取り付け時の寸法公差を大きく取ることができ、よりロバストな光学系を構成することができる。また、結像光学系105に、対物レンズ81と集光レンズ83を含む2つのレンズを用いているので、結像光学系105の幾何収差の影響を小さくすることも可能となる。
【0039】
また、本実施例では、実施例2と同様に、対物レンズ81を静止構造物11から50mm以上離して配置し、対物レンズ81を、両側が球面もしくは片側が球面でもう一方の側を平面とするガラスレンズとして構成することもできる。集光レンズ83も、光線が通過する面の形状を、両側が球面もしくは片側が球面でもう一方の側を平面である、ガラスレンズとして構成することができる。本構成により、安価で高い耐久性を有する結像光学系105を構成することが可能となる。
【実施例4】
【0040】
本実施例は、光送信部100として、被写体(被検出対象)である静止構造物11を効率的に照明する光送信部100を構成したものであり、ゲートイメージセンサ101、タイミング制御部104、画像処理部102、全体制御部103の構成は、実施例1と同様であって、結像光学系105の構成は、実施例2又は実施例3と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0041】
図7は、本発明の実施例4における光送信部100の構成を示す概念図である。なお、図7では、光源21からの出射光線(静止構造物11に対して入射する入射光)L1〜L3を実線の矢印で示している。図7において、光送信部100は、光源21と、光源21からの光を集光し、集光した光を静止構造物11に向けて拡散させて照射する照明レンズ22を備えている。照明レンズ22は、光源21と、被写体(被検出対象)である静止構造物11との間に配置されている。照明レンズ22は、その材質が、ガラスであっても、プラスチックであってもよい。また、照明レンズ22のうち、光線が通過する面の形状は、どちらの面も球面であっても、平面であっても、非球面であってもよい。また、照明レンズ22は、1つの凸レンズによって構成されているが、複数枚の組み合わせによって構成されるレンズ組であってもよい。また、照明レンズ22は、レンズのような透過屈折型の集光光学素子に限らず、凹面鏡のような反射型の集光光学素子であってもよい。
【0042】
本実施例によれば、照明レンズ22は、光源21からの出射光線L1〜L3を集光して、静止構造物11の表面を広範囲に亘って照明することができるので、結像光学系105及びゲートイメージセンサ101によって検出する、静止構造物11表面の領域を効率的に照明することができる。さらに、照明レンズ22の形状を適切に設計することにより、静止構造物11における照度ムラを低減することも可能である。また、光源21の出力強度を抑えることにより、光源21の消費電力を小さくでき、かつ所望の検出範囲外の領域からの迷光の発生も抑えることが可能である。
【実施例5】
【0043】
本実施例は、結像光学系105への正反射光成分の取り込みを抑えることにより、露光時間Tを100μs未満に短くしても、十分高コントラストな画像を得るための配置関係として、光送信部100と結像光学系105との位置関係を設定したものであり、ゲートイメージセンサ101、タイミング制御部104、画像処理部102、全体制御部103の構成は、実施例1と同じである。また、結像光学系105の構成は、実施例2又は実施例3と同じである。また、光送信部100内の構成は、実施例1又は実施例4と同じである。
【0044】
図8は、本発明の実施例5におけるエレベータ光学式速度計測装置10の各部の位置関係を示す概略図である。なお、図8では、光送信部100からの出射光線(静止構造物11に対して入射する入射光)L1〜L3を実線の矢印、静止構造物11からの正反射光線(正反射光)L51〜L53を破線の矢印、散乱光線(散乱光)L11〜L13を点線の矢印で示している。
【0045】
図8において、光送信部100は、光源の光軸となる出射光線L2が、静止構造物11の表面に対して(エレベータかご12の移行方向となるy軸に対して)、傾斜して入射するように配置される。結像光学系105は、静止構造物11の表面で反射した反射光のうち正反射光の伝搬経路から外れた領域であって、散乱光が伝搬する領域に配置される。すなわち、結像光学系105は、静止構造物11の表面で反射した散乱光線(散乱光)L11〜L13と正反射光線(正反射光)L51〜L53のうち、散乱光線(散乱光)L11〜L13のみが入射するように配置されている。光送信部100は、静止構造物11の表面に対して、出射光線L1〜L3が、照明光として斜入射で入射し、結像光学系105に対して、正反射光L51〜L53の取り込みを抑える暗視野照明系として構成される。
【0046】
また、光送信部100は、静止構造物11の表面に存在する傷11aによる、結像光学系105方向への正反射光の発生を抑えるために、静止構造物11上に存在する特徴的な傷11aの方向に対して、平行な方向(図8におけるy軸方向)に、出射光線L1〜L3の入射面(図8におけるyz面)が位置するように照明する。この際、特徴的な傷11aは、例えば、静止構造物11の加工時の仕上げで行われる研磨加工による傷などが挙げられる。
【0047】
本実施例によれば、結像光学系105への正反射光成分の取り込みを抑えるようにしたので、露光時間Tを100μs未満に短くしても、十分高コントラストな画像を得ることができる。また、ゲートイメージセンサ101で画像を生成する前の光学系における位置関係であって、結像光学系105と光送信部100との位置関係を、予め光学的に高コントラストな画像を得ることができる位置関係にすることで、タイミング制御部104で露光時間Tを、100μs未満に短くしても、ゲートイメージセンサ101で発生する電気ノイズによって、静止構造物11の表面の凹凸に対応する散乱輝度パターンが埋もれることを避けることができる。
【0048】
すなわち、結像光学系105と光送信部100との位置関係が、予め光学的に高コントラストな画像を得ることができる位置関係でない場合、ゲートイメージセンサ101の画像信号を画像処理部102で処理する際に、ゲートイメージセンサ101で発生する電気ノイズと静止構造物11の表面の凹凸に対応する散乱輝度パターンとを識別することが困難である。これに対して、結像光学系105と光送信部100との位置関係が、予め光学的に高コントラストな画像を得ることができる位置関係である場合、ゲートイメージセンサ101の画像信号を画像処理部102で処理する際に、ゲートイメージセンサ101で発生する電気ノイズと静止構造物11の表面の凹凸に対応する散乱輝度パターンとを容易に識別することができる。
【実施例6】
【0049】
本実施例は、光学系として、正反射光分離光学系106を追加し、結像光学系105への正反射光成分の取り込みを抑えることにより、露光時間Tを100μs未満に短くしても、十分高コントラストな画像を得るようにしたものであり、ゲートイメージセンサ101、タイミング制御部104、画像処理部102、全体制御部103の構成は、実施例1と同じである。また、結像光学系105の構成は、実施例2又は実施例3と同じである。また、光送信部100内の構成は、実施例1又は実施例4と同じである。
【0050】
図9は、本発明の実施例6におけるエレベータ光学式速度計測装置10の全体構成を示す概略図である。図9において、エレベータ光学式速度計測装置10は、実施例1の光学系に対して追加された光学系として、正反射光分離光学系106を備えている。正反射光分離光学系106は、光送信部100と静止構造物11との間及び結像光学系105と静止構造物11との間に配置されて、静止構造物11の表面で反射した反射光のうち、正反射光と散乱光とを分離することができる。
【0051】
図10は、本発明の実施例6における正反射光分離光学系106の概略構成を示す概念図である。なお、図10では、光送信部100から静止構造物11への出射光線L1〜L3を実線の矢印、静止構造物11からの正反射光線(正反射光)L51〜L53を破線の矢印、散乱光線(散乱光)L11〜L13を点線の矢印で示している。
【0052】
実施例5では、被検出対象の静止構造物11における表面の凹凸パターンの特徴に注目し、正反射光線(正反射光)L51〜L53の発生を抑えた。これに対して、本実施例では、正反射光分離光学系106として、偏光子61と検光子62を用い、偏光子61を、光送信部100と静止構造物11との間に配置し、検光子62を、静止構造物11と結像光学系105との間に配置している。この正反射光分離光学系106は、光送信部100から送信される光の偏光方向を一定方向に揃える偏光子61と、静止構造物11の表面で反射した反射光のうち正反射光の伝搬経路から外れた領域であって、反射光に属する散乱光が伝搬する領域に配置され、正反射光の偏光方向と同一方向の光を除去し、散乱光を透過する検光子62とから構成される。
【0053】
この際、光送信部100は、その光軸が、偏光子61と相対向して配置され、且つy軸に対して傾斜した方向であって、静止構造物11の表面を照明する光が、静止構造物11の表面に対して斜方向から入射する方向に配置される。さらに、偏光子61は、光送信部100からの出射光線L1〜L3が、静止構造物11の表面に対して、斜め方向に入射する位置に配置されており、偏光子61における出射光線L1〜L3の偏光方向は、一定の方向に予め制限されている。また、検光子62は、その光軸が、結像光学系105の光軸とゲートイメージセンサ101の撮像面の中心とを結ぶ直線と、同一直線上に位置するように配置される。また、検光子62は、偏光子61で偏光された出射光線が静止構造物11で反射した反射光を検出する際に、出射光線L1〜L3の偏光方向とは垂直な方向の散乱光L11〜L13のみを透過し、透過した散乱光L11〜L13を結像光学系105に送出し、正反射光線(正反射光)L51〜L53の取り込みを抑えるように配置されている。
【0054】
検光子62を配置する位置は、静止構造物11と結像光学系105との間でもよく、結像光学系105とゲートイメージセンサ101との間でもよい。偏光子61、検光子62としては、液晶の配向方向を利用した偏光フィルムや結晶の複屈折性を利用した偏光プリズム、あるいはワイヤグリッドポーラライザでもよい。また、偏光子61を用いる代わりに、光送信部100における光源をレーザーなど、予め出力が偏光している光源素子を用いてもよい。
【0055】
本実施例によれば、偏光検波の方法により、実施例5に比べ正反射光の取り込みを高効率に抑えることができ、結果として、より高コントラストな画像を得ることが可能となる。また、静止構造物11の表面にオイル等の液体が塗布されている場合、液体による表面正反射の影響を検出する偏光方向を選択することにより、液体による表面正反射の影響を除去することも可能である。
【実施例7】
【0056】
本実施例は、正反射光分離光学系106に、エレベータかご12のz軸方向のゆれに対して、静止構造物11への照明位置を不変に保つ機能を付加したものであり、ゲートイメージセンサ101、タイミング制御部104、画像処理部102、全体制御部103の構成は、実施例1と同じである。また、結像光学系105の構成は、実施例2又は実施例3と同じである。また、光送信部100内の構成は、実施例1又は実施例4と同じである。
【0057】
図11は、本発明の実施例7における正反射光分離光学系106の概略構成を示す概念図である。なお、図11では、光送信部100から静止構造物11への出射光線L1を実線の矢印、静止構造物11からの正反射光線(正反射光)L51を破線の矢印、散乱光線(散乱光)L11〜L13を点線の矢印で示している。
【0058】
実施例6では、正反射光成分の取り込みを抑えるために、光送信部100からの出射光線(照明光)を、静止構造物11に対して斜入射し、さらに、静止構造物11で反射した反射光の偏光検波を行う光学配置を示した。これに対して、本実施例では、偏光検波により十分正反射光の取り込みを抑えた上で、照明光を、静止構造物11に対して垂直に照射する同軸落射照明の光学配置としている。
【0059】
具体的には、本実施例における正反射光分離光学系106は、光送信部100から送信される光の偏光方向を一定方向に揃える偏光子61と、結像光学系105と静止構造物11との間に配置されて、偏光子61を透過した光を、y軸と直交する方向に反射し、反射した光を静止構造物11の表面に向けて照射し、且つ静止構造物11の表面で反射した反射光を、y軸と交差する方向に透過するビームスプリッタ63と、ビームスプリッタ63を透過した反射光のうち少なくとも散乱光が伝搬する領域に配置され、反射光に属する正反射光の偏光方向と同一方向の光を除去し、散乱光を透過する検光子62を備えている。
【0060】
この際、光送信部100は、その光軸が、偏光子61と相対向して配置され、且つy軸に対して平行な方向に配置される。なお、光送信部100の光軸は、z軸に対して垂直な方向であれば、z軸と垂直なx軸に対して平行な方向でもよく、xy面内であれば、いずれの方向でもよい。また、偏光子61は、その光軸が、光送信部100の光軸(出射光線L1の光軸)と同一直線上にあって、且つ静止構造物11と平行(y軸と平行)となる位置に配置され、出射光線L1に対する偏光方向が予め一定の方向に制限されている。検光子62は、その光軸が、結像光学系105の光軸とゲートイメージセンサ101の撮像面の中心とを結ぶ直線と、同一直線上に位置するように配置される。
【0061】
ビームスプリッタ63は、その中心が、偏光子61の光軸と検光子62の光軸とが交差する位置に配置される。ビームスプリッタ63は、偏光子61を透過した光を、その光の入射角に対して垂直方向(z軸の負の方向)であって、静止構造物11側に反射し、その反射した光を静止構造物11の表面に対して垂直に入射させる。さらに、ビームスプリッタ63は、静止構造物11の表面で反射した反射光(散乱光と正反射光を含む)を検光子62側に透過させる。検光子62は、ビームスプリッタ63を透過した反射光のうち散乱光線(散乱光)L11〜L13のみを透過する。
【0062】
なお、実施例6と同様に、検光子62は、結像光学系105とゲートイメージセンサ101との間でもよい。また、光送信部100と、結像光学系105及びゲートイメージセンサ101の配置を入れ替えてもよい。すなわち、光送信部100からの出射光線L1を、検光子62を介してビームスプリッタ63を透過させた後、静止構造物11に入射させ、静止構造物11の表面で反射した反射光を、ビームスプリッタ63で結像光学系105側に反射させる光学配置としてもよい。
【0063】
本実施例によれば、実施例6と同様の効果を奏することができると共に、静止構造物11の表面には、光送信部100からの出射光線L1が垂直に入射されるので、エレベータかご12のz軸方向のゆれに対して、静止構造物11への照明位置を不変に保つことができ、結果として、照明強度の時間的変動を最小限に抑えることが可能である。
【実施例8】
【0064】
本実施例は、エレベータかご12のz軸方向のゆれに対して、静止構造物11への照明位置を不変に保ち、かつ高価な偏光子を使わずに安価に同軸落射型の暗視野照明光学系を構成したものであり、ゲートイメージセンサ101、タイミング制御部104、画像処理部102、全体制御部103の構成は、実施例1と同じである。また、結像光学系105の構成は、実施例2又は実施例3と同じである。また、光送信部100内の構成は、実施例1又は実施例4と同じである。
【0065】
図12は、本発明の実施例8における正反射光分離光学系106の概略構成を示す概念図である。なお、図10では、光送信部100から静止構造物11への出射光線L1〜L3を実線の矢印、静止構造物11からの正反射光線(正反射光)L51、L52を破線の矢印、散乱光線(散乱光)L11〜L13を点線の矢印で示している。
【0066】
実施例6と実施例7では、偏光子61と検光子62を含む偏光素子により、正反射光と散乱光とを分離する光学配置を示した。これらに対して、本実施例では、正反射光と散乱光とを空間的に分離する光学配置を示す。
【0067】
正反射光分離光学系106は、光送信部100から送信される光を、光送信部100の光軸に対して直交方向に中空状の照度分布を有する光ビームに変換するリング絞り71と、光送信部100の光軸と交差する方向に配置された環状のミラーであって、リング絞り71を透過した光ビームを、y軸と直交する方向に反射する穴あきミラー73と、穴あきミラー73と静止構造物11との間に配置されて、穴あきミラー73で反射した光ビームを集光し、集光した光ビームを静止構造物11の表面に向けて照射するリング状集光レンズ72を備えている。
【0068】
この際、光送信部100は、その光軸が、リング絞り71と相対向して配置され、且つz軸に対して垂直な方向(y軸方向又はx軸方向)に配置される。また、リング状集光レンズ72は、その空間部の中心が、結像光学系105の光軸と同一直線上に配置され、静止構造物11の表面で反射した反射光のうち正反射光を空間部から外れた領域で集光し、反射光に属する散乱光を、空間部を介して結像光学系105に送出する。また、リング絞り71は、その中心が、光送信部100の光軸と同一直線上であって、静止構造物11の表面と平行(y軸方向に平行)になって配置され、光送信部100からの出射光線L1〜L3を、光軸に対して断面方向(直交する方向)に中空状の照度分布を有する光ビーム(L1、L3)に変換して、穴あきミラー73側に送出する。穴あきミラー73は、中心部に穴(空間)を有するミラーであって、穴の中心が、光送信部100の光軸と同一直線上で、且つ、結像光学系105の光軸と同一直線上に位置するように配置されると共に、全体として、光送信部100の光軸及び結像光学系105の光軸と交差する方向(斜め方向)に配置されている。穴あきミラー73は、リング絞り71からの光ビーム(L1、L3)をリング状集光レンズ72側に反射する。
【0069】
リング状集光レンズ72は、中心部に空間を有するリング状のレンズであって、その光軸が、結像光学系105の光軸と同一直線上に位置するように配置される。リング状集光レンズ72は、リング絞り71からの光ビーム(L1、L3)を集光して、静止構造物11の表面に照射する。静止構造物11の表面で反射した反射光のうち正反射光線(正反射光)L51は、リング状集光レンズ72を透過した後、穴あきミラー73側に送出される。静止構造物11の表面で反射した反射光のうち散乱光線(散乱光線)L11〜L13は、リング状集光レンズ72の空間部と、穴あきミラー73の穴(空間部)を透過した後、結像光学系105に入射する。
【0070】
なお、リング絞り71で、光送信部100からの出射光線L1〜L3を中空状の照度分布を有する光ビームに変換する場合、出射光線L1〜L3をラゲールガウシアンビームに変換してもよい。また、光送信部100からの出射光線L1〜L3は、平行光であっても、そうでなくてもよい。この際、正反射光分離光学系106に属する要素は、静止構造物11の表面での正反射光線(正反射光)L51が穴あきミラー73によって反射され、結像光学系105に入射しないように設計されるものとする。
【0071】
本実施例によれば、エレベータかご12のz軸方向のゆれに対して、静止構造物11への照明位置を不変に保ち、かつ高価な偏光子を使わずに安価に同軸落射型の暗視野照明光学系を構成することができる。
【実施例9】
【0072】
本実施例は、エレベータかご12の絶対位置をリセットする位置リセット処理部107を設け、エレベータかご12の累積位置精度を高めるようにしたものであり、ゲートイメージセンサ101、タイミング制御部104、画像処理部102、全体制御部103の構成は、実施例1と同じである。また、結像光学系105の構成は、実施例2又は実施例3と同じである。また、光送信部100内の構成は、実施例1又は実施例4と同じである。また、光送信部100、静止構造物11、結像光学系105の位置関係は、実施例5と同じでもよく、あるいは正反射光分離光学系106を構成してもよく、その場合の構成は、実施例6、実施例7又は実施例8と同じである。
【0073】
図13は、本発明の実施例9におけるエレベータ光学式速度計測装置10の全体構成を示す概略図である。図13において、エレベータ光学式速度計測装置10には、実施例1の構成に対して、位置リセット処理部107が追加されており、位置リセット処理部107は、全体制御部103に接続されている。
【0074】
位置リセット処理部107は、全体制御部103と情報の送受信を行い、全体制御部103からの画像に関する情報を基に、静止構造物11の表面に設定された絶対位置を検出した場合、全体制御部103に対して、エレベータかご12の位置を算出する際の基準位置となる絶対位置をリセットするためのリセット信号を出力する。
【0075】
この際、位置リセット処理部107は、位置リセット処理部107内の記憶素子に、予め凹凸パターンに関する画像(絶対位置基準画像)の情報を記憶しており、エレベータかご12の移動に伴って、全体制御部103からの画像に関する情報であって、例えば、静止構造物11の表面に存在する継ぎ目等の特徴的かつ周期性の高い凹凸パターンの画像に関する情報を受信する毎に、受信した情報であって、凹凸パターンによる絶対位置検出画像に関する情報と記憶素子内に記憶された情報(凹凸パターンによる絶対位置基準画像に関する情報)とを比較し、両者の間に強い相関が現れる(両者の画像が一致する)毎に、全体制御部103に対して、リセット信号を出力する。
【0076】
全体制御部103は、リセット信号を受信したことを条件に、絶対位置をリセットし、その後、画像処理部102からの信号情報を基に、リセットされた絶対位置を基準に、エレベータかご12の昇降路における位置(相対位置)を算出し、算出結果を制御盤に送信する。このため、全体制御部103は、エレベータかご12の移動方向が上又は下にランダムに変化しても、エレベータかご12の昇降路における位置(相対位置)を正確に算出することができ、エレベータかご12の累積位置精度を高めることができる。
【0077】
また、本実施例において、全体制御部103の機能と位置リセット処理部107の機能を画像処理部102に付加することができる。この際、画像処理部102は、例えば、ゲートイメージセンサ101から出力された電気信号を処理して得られた絶対位置検出画像(静止構造物11の表面に存在する継ぎ目等の特徴的かつ周期性の高い凹凸パターンの画像)と、静止構造物11における絶対位置を特定する画像として、予め設定されて記憶された絶対位置基準画像(凹凸パターンによる絶対位置基準画像)とを比較し、絶対位置検出画像と絶対位置基準画像とが一致したことを条件に、エレベータかご12の位置を計測するときの基準時間(計測開始時期間)をリセットし、リセットされた基準時間からの経過時間とエレベータかご12の速度とを基に、エレベータかご12の絶対位置からの移動距離を示す、エレベータかご12の位置を算出し、算出結果を全体制御部103に出力することができる。この場合、画像処理部102は、全体制御部103と位置リセット処理部107を用いたときよりも、少ない要素で、エレベータかご12の昇降路における位置(相対位置)を正確に算出することができ、エレベータかご12の累積位置精度を高めることができる。
【0078】
特徴的な凹凸パターンとしては、静止構造物11に既存の凹凸パターンを利用してもよいし、あるいは静止構造物11の表面に、凹凸パターンを有するマーカーを取り付ける場合、このマーカーの凹凸パターンを利用してもよい。また、エレベータかご12の絶対位置を検出する手段としては、磁気センサや大気圧センサ等、光学式とは異なる、別方式の位置検出センサを組み合わせたものを用いることもできる。
【0079】
本実施例によれば、エレベータかご12の移動に応じて、エレベータかご12の昇降路における絶対位置を検出する毎に、絶対位置をリセットするようにしたので、エレベータかご12の累積位置精度を高めることができる。
【実施例10】
【0080】
本実施例は、光送信部100から出射された出射光線(出射光)が結像光学系105を介してゲートイメージセンサ101に入射されるまでの時間を測定し、測定結果を基にエレベータかご12から静止構造物11までの距離を計測するものであり、ゲートイメージセンサ101、画像処理部102、全体制御部103の構成は、実施例1と同じである。また、結像光学系105の構成は、実施例2又は実施例3と同じである。また、光送信部100内の構成は、実施例1又は実施例4と同じである。また、光送信部100、静止構造物11、結像光学系105の位置関係は、実施例5と同じでもよく、あるいは正反射光分離光学系106を構成してもよく、その場合の構成は、実施例6又は実施例7或いは実施例8と同じである。また、位置リセット処理部107を構成してもよく、その場合の構成は、実施例8と同じである。
【0081】
図14は、タイミング制御部104から光送信部100及びゲートイメージセンサ101へ送信されるゲート信号と静止構造物11からゲートイメージセンサ101へ入射する散乱光のタイミングチャートである。
【0082】
図14(a)に示すように、タイミング制御部104から光送信部100に対して、時間t1〜時間t3までの期間がハイレベルとなる、第1のゲート信号(ゲートパルス信号)G1を送信すると、光送信部100から静止構造物11に対して出射光線(照明光)が照射され、静止構造物11の表面で反射した反射光のうち散乱光が結像光学系105を介してゲートイメージセンサ101に入射する。この際、ゲートイメージセンサ101には、図14(b)に示すように、時間t2〜時間t4までの期間がハイレベルとなる散乱光(輝度がハイレベルとなる散乱光)L12が入射する。すなわち、ゲートイメージセンサ101には、光送信部100から出射される出射光線に対して、時間遅れ=(時間t2−時間t1)を有する散乱光L12が入射する。
【0083】
一方、図14(c)に示すように、タイミング制御部104からゲートイメージセンサ101に対して、光送信部100に送信する、第1のゲート信号G1と同じタイミングで、時間t1〜時間t3までの期間がハイレベルとなる、第1のゲート信号(ゲートパルス信号)G1を送信すると、ゲートイメージセンサ101は、時間t1〜時間t3の期間を露光時間Tとして、結像光学系105からの散乱光L12を撮像面(第1の撮像面)に取り込み、第1のゲート信号G1に応答して撮像した画像信号(画像V1を含む画像信号)を生成する。この際、結像光学系105からゲートイメージセンサ101に対して、ハイレベルの散乱光L12が入射する期間は、露光時間T(時間t1〜時間t3)のうち、時間t2〜時間t3の期間であり、この期間に撮像された画像信号(画像V1を含む画像信号)がゲートイメージセンサ101から画像処理部102に出力される。
【0084】
次に、図14(d)に示すように、タイミング制御部104からゲートイメージセンサ101に対して、時間t3〜時間t5までの期間がハイレベルとなる、第2のゲート信号(ゲートパルス信号)G2を送信すると、ゲートイメージセンサ101は、時間t3〜時間t4の期間を露光時間Tとして、結像光学系105からの散乱光L12を撮像面(第2の撮像面)に取り込み、第2のゲート信号G2に応答して撮像した画像信号(画像V2を含む画像信号)を生成する。この際、結像光学系105からゲートイメージセンサ101に対して、ハイレベルの散乱光L12が入射する期間は、露光時間T(時間t3〜時間t5)のうち、時間t3〜時間t4の期間であり、この期間に撮像された画像信号(画像V2を含む画像信号)が画像処理部102に出力される。
【0085】
ここで、光送信部100から静止構造物11に向けて出射された出射光線が、静止構造物11で反射し、静止構造物11の表面で反射した反射光のうち散乱光L12がゲートイメージセンサ101に入射するまでの伝達時間T0(=時間t1〜時間t2までの期間)を算出するに際して、画像処理部102は、ゲートイメージセンサ101から、画像V1を含む画像信号と、画像V2を含む画像信号を取り込み、伝達時間T0を、次の(1)式に従って算出する。
【0086】
T0=T・V2/(V1+V2)・・・・(1)
ここで、Tは、第1のゲート信号G1と第2のゲート信号G2で規定される露光時間であり、V1、V2は、ゲートイメージセンサ101から出力される画像信号に属する画像の大きさに相当する面積である。
【0087】
画像処理部102は、伝達時間T0×光速から、エレベータかご12から静止構造物11までの距離を算出し、算出した距離の情報を全体制御部103に送信する。この際、画像処理部102又は全体制御部103において、画像処理部102で算出した距離と設定値(基準値)とを比較して、エレベータかご12にz軸方向のぶれがあるか否かを判定することができる。
【0088】
本実施例によれば、エレベータかご12から静止構造物11までの距離を計測することができるので、計測結果からエレベータかご12に、z軸方向のぶれがあるか否かを判定することができる。
【0089】
以上述べた各実施例は、本発明を分かりやすく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、画像処理部102、全体制御部103、タイミング制御部104を、エレベータかご12の外部に配置し、タイミング制御部104と光送信部100との情報の送受信と、タイミング制御部104とゲートイメージセンサ101との間の情報の送受信と、ゲートイメージセンサ101と画像処理部102との間の情報の送受信を有線又は無線で行うことも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0090】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0091】
10…エレベータ光学式速度計測装置、11…静止構造物、12…エレベータかご、21…光源、22…照明レンズ、61…偏光子、62…検光子、63…ビームスプリッタ、71…リング絞り、72…リング状集光レンズ、73…穴あきミラー、81…対物レンズ、82…絞り、83…集光レンズ、100…光送信部、101…ゲートイメージセンサ、102…画像処理部、103…全体制御部、104…タイミング制御部、105…結像光学系、106…正反射光分離光学系、107…位置リセット処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14