(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持機構は、化学反応により膨張可能な樹脂又は前記外装体内へ所定の充填圧で充填可能な樹脂により構成され、前記樹脂の膨張圧又は充填圧により、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバッテリ装置。
前記バッテリセル群を前記外装体内に保持している前記樹脂に隣接した部位に、前記樹脂への荷重入力によって変形した際の前記樹脂の侵入を許容する逃げ空間を有する、請求項5に記載のバッテリ装置。
前記保持機構は、前記バッテリセルの積層方向に沿って配置された二枚の平行な支持板と、二枚の前記支持板に亘って回動可能に連結される複数の平行な連結部材と、を有し、前記支持板同士が前記バッテリセルの積層方向に沿って互いに反対方向へ相対移動することにより前記支持板同士の間隔を拡大可能なリンク機構により構成され、
前記リンク機構は、前記支持板同士の間隔の拡大により、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバッテリ装置。
前記充填部材は、前記気体充填層に前記気体を充填するためのジョイント部、及び、前記樹脂充填層に前記硬化性樹脂を充填するためのジョイント部を末端部に有する、請求項17に記載のバッテリ装置。
二つの外側壁を有する外装体の前記二つの外側壁の間に、それぞれ複数積層されるバッテリセルにより構成される複数のバッテリセル群を並列させて配置した後、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させることにより、前記複数のバッテリセル群を前記二つの外側壁に向けて押し付けた状態で前記外装体内に保持する、バッテリ装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の技術では、バッテリセルを保持するために、バッテリセルを一つずつ冷却プレートに締付け固定しなくてはならず、バッテリ装置の組立て作業性が悪い問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、複数のバッテリセルを高密度に搭載できると共に、複数のバッテリセルを容易に保持することができるバッテリ装置及びバッテリ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るバッテリ装置(例えば、後述のバッテリ装置1)は、二つの外側壁(例えば、後述の外側壁33)を有する外装体(例えば、後述の外装体30)と、二つの前記外側壁の間に並列に配置され、それぞれ複数積層されるバッテリセル(例えば、後述のバッテリセル60)により構成される複数のバッテリセル群(例えば、後述のバッテリセル群6)と、前記複数のバッテリセル群の間に配置され、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させることにより、前記複数のバッテリセル群をそれぞれ前記外装体内に保持する保持機構(例えば、後述の保持機構7)と、を備える。
【0008】
上記(1)に記載のバッテリ装置によれば、複数のバッテリセルを高密度に搭載できると共に、個々のバッテリセルを個別に固定する必要なく、並列される複数のバッテリセル群をまとめて容易に保持可能である。
【0009】
(2) (1)に記載のバッテリ装置において、前記二つの外側壁は、前記外側壁を介して前記バッテリセルと熱交換可能な温調媒体が流れる温調媒体流路(例えば、後述の温調媒体流路36)をそれぞれ有していてもよい。
【0010】
上記(2)に記載のバッテリ装置によれば、外側壁を介して温調媒体流路内の温調媒体との熱交換が可能となり、より効率的な熱交換が可能となる。
【0011】
(3) (2)に記載のバッテリ装置において、前記温調媒体流路は、前記外側壁の内部に設けられてもよい。
【0012】
上記(3)に記載のバッテリ装置によれば、外装体に対して温調媒体流路を構築するための溝等の加工を後から行う必要がない。また、外装体をコンパクトに構成することができるため、バッテリ装置の小型化が可能である。
【0013】
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記外装体は、前記バッテリセルの積層方向に沿う方向を押出し方向とする押出し成形品であってもよい。
【0014】
上記(4)に記載のバッテリ装置によれば、外装体を容易に成形できる。また、外装部は板材同士の接合部を有しないため、組み付けばらつきや熱歪みが発生するおそれがなく、保持機構による押し付け圧力による接合部の歪みが発生するおそれもない。
【0015】
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記保持機構は、化学反応により膨張可能な樹脂又は前記外装体内へ所定の充填圧で充填可能な樹脂(例えば、後述の樹脂710)により構成され、前記樹脂の膨張圧又は充填圧により、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させるものであってもよい。
【0016】
上記(5)に記載のバッテリ装置によれば、樹脂の膨張圧又は充填圧により、バッテリセル群の個々のバッテリセルに合わせて押し付け方向の圧力を作用させることができるので、個々のバッテリセルの寸法のばらつきを許容できる。また、保持機構を構築するためのスペースは、樹脂を充填可能な狭小スペースで足りるため、バッテリ装置をより小型化することができる。しかも、保持機構に絶縁機能を同時に付加することもできる。
【0017】
(6) (5)に記載のバッテリ装置において、前記バッテリセル群を前記外装体内に保持している前記樹脂に隣接した部位に、前記樹脂への荷重入力によって変形した際の前記樹脂の侵入を許容する逃げ空間(例えば、後述の逃げ空間302)を有していてもよい。
【0018】
上記(6)に記載のバッテリ装置によれば、衝突荷重等の荷重入力時に変形した樹脂は、バッテリセルを攻撃することなく逃げ空間に侵入することができる。このため、荷重入力時にバッテリセルに与える影響を低減でき、バッテリセルの変形等を抑制することができる。
【0019】
(7) (1)〜(4)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記保持機構は、形状記憶合金性の板ばね(例えば、後述の板ばね720)により構成され、前記板ばねは、ばね反力により、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させるものでもよい。
【0020】
上記(7)に記載のバッテリ装置によれば、形状記憶合金性の板ばねを低温状態で圧縮させ、その圧縮状態で外装体内に挿入した後、昇温に伴って元の形状に回復することでばね反力を発生させることができる。従って、保持機構を構築するためのスペースは、圧縮状態の板ばねを挿入可能な狭小スペースで足りるため、バッテリ装置をより小型化することができる。
【0021】
(8) (1)〜(4)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記保持機構は、軸線方向が前記バッテリセルの積層方向に沿うように配置された弾性を有するコイル(例えば、後述のコイル730)により構成され、前記コイルは、弾性的に拡径されることにより、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させるものでもよい。
【0022】
上記(8)に記載のバッテリ装置によれば、個々のバッテリセルの寸法ばらつきに対して、コイルのピッチ毎の拡径度合を変化させて容易に対応することができ、個々のバッテリセルに対して押し付け方向の圧力を容易に付与することができる。また、コイルの中心部のスペースを、配線等のバッテリ装置の構造部品の収容又は挿通空間として利用することができ、バッテリ装置内のスペースを有効利用することができる。
【0023】
(9) (8)に記載のバッテリ装置において、前記コイルは、巻方向と逆方向に回転変位されることにより拡径されていることが好ましい。
【0024】
上記(9)に記載のバッテリ装置によれば、コイルを回転変位させるだけで容易に拡径させ、個々のバッテリセルに対して押し付け方向の圧力を付与することができる。
【0025】
(10) (8)又は(9)に記載のバッテリ装置において、前記コイルは、伝熱性を有する中空線材からなり、前記中空線材の内部が第2の温調媒体流路(例えば、後述の温調媒体流路731)を構成していることが好ましい。
【0026】
上記(10)に記載のバッテリ装置によれば、コイルがバッテリセル群の押付け保持機能と同時に温調機能を兼ねることができるため、熱交換効率を高めることができる。
【0027】
(11) (1)〜(4)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記保持機構は、回転中心から回転方向に対して半径が連続的に変化する断面形状を有する剛体からなるカム部材(例えば、後述のカム部材740)により構成され、前記カム部材は、前記バッテリセル群の押し付け方向に沿う半径を増加させた回転変位位置に配置されることにより、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させるものでもよい。
【0028】
上記(11)に記載のバッテリ装置によれば、カム部材の回転変位量を調整することにより、バッテリセル群の押し付け圧力を一定に維持することができる。また、カム部材は剛体からなるため、バッテリセル群に瞬間的なGが発生しても、押し付け圧力を維持することができる。
【0029】
(12) (11)に記載のバッテリ装置において、前記カム部材の少なくとも一方の端部に、前記カム部材の回転変位位置を維持する固定部材(例えば、後述の固定部材742)を有することが好ましい。
【0030】
上記(12)に記載のバッテリ装置によれば、固定部材によって、カム部材の回転変位位置を容易に維持することができる。
【0031】
(13) (1)〜(4)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記保持機構は、塑性変形により前記バッテリセル群の押し付け方向の幅寸法を増大可能な押し付け部材(例えば、後述の押し付け部材750)により構成され、前記押し付け部材は、塑性変形されることにより、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させるものでもよい。
【0032】
上記(13)に記載のバッテリ装置によれば、塑性変形前の押し付け部材を外装体内に容易に装着させることができると共に、外装体内で押し付け部材をかしめ治具等を用いて塑性変形させることにより、バッテリセル群に対して容易に安定した押し付け圧力を付与することができる。
【0033】
(14) (1)〜(4)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記保持機構は、前記バッテリセルの積層方向に沿って配置された二枚の平行な支持板(例えば、後述の支持板761)と、二枚の前記支持板に亘って回動可能に連結される複数の平行な連結部材(例えば、後述の連結部材762)と、を有し、前記支持板同士が前記バッテリセルの積層方向に沿って互いに反対方向へ相対移動することにより前記支持板同士の間隔を拡大可能なリンク機構(例えば、後述のリンク機構760)により構成され、前記リンク機構は、前記支持板同士の間隔の拡大により、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させるものであってもよい。
【0034】
上記(14)に記載のバッテリ装置によれば、支持板の間隔を拡大させる前のリンク機構を外装体内に容易に装着させることができると共に、外装体内で支持板の間隔を拡大させることにより、バッテリセル群に対して容易に安定した押し付け圧力を付与することができる。
【0035】
(15) (14)に記載のバッテリ装置において、前記バッテリセル群における前記バッテリセルの積層方向の両端にそれぞれエンドプレート(例えば、後述のエンドプレート4、側壁部201)が配置され、前記リンク機構の前記支持板は、前記エンドプレート間に挟着されることにより、間隔を拡大した状態に維持されてもよい。
【0036】
上記(15)に記載のバッテリ装置によれば、バッテリセル群を両側からエンドプレートで挟着するだけでリンク機構を作動させることができるため、バッテリセル群に対して押し付け圧力を容易に付与することができる。
【0037】
(16) (1)〜(4)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記保持機構は、前記外装体を貫通する貫通穴(例えば、後述の貫通穴771)と、先端に斜面(例えば、後述の斜面772b)を有する楔部材(例えば、後述の楔部材772)と、を有する楔機構(例えば、後述の楔機構770)により構成され、前記貫通穴に挿入された前記楔部材の前記斜面が、前記バッテリセル群と接触することにより、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させるものであってもよい。
【0038】
上記(16)に記載のバッテリ装置によれば、外装体の外側から貫通穴に楔部材を挿入することにより、外装体内のバッテリセル群に対して容易に押し付け圧力を付与することができる。
【0039】
(17) (1)〜(4)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記保持機構は、気体が充填される気体充填層(例えば、後述の気体充填層781)と、前記気体充填層の外周に配置され、硬化性樹脂が充填される樹脂充填層(例えば、後述の樹脂充填層782)と、を有する充填部材(例えば、後述の充填部材780)により構成され、前記充填部材は、前記樹脂充填層に充填された前記硬化性樹脂が前記気体充填層に充填された前記気体の圧力により前記バッテリセル群を押圧した状態で硬化することにより、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させるものであってもよい。
【0040】
上記(17)に記載のバッテリ装置によれば、充填部材の気体充填層へ気体を充填することにより、樹脂充填層内の硬化性樹脂の硬化を待たずに、外装体内のバッテリセル群に対して押し付け方向の圧力を作用させることができると共に、その後に樹脂充填層内の硬化性樹脂を硬化させることにより、その押し付け圧力を維持することができるため、外装体内のバッテリセル群に対して安定した押し付け圧力を容易に付与することができる。
【0041】
(18) (17)に記載のバッテリ装置において、前記充填部材は、前記気体充填層に前記気体を充填するためのジョイント部(例えば、後述の第1ジョイント部785)、及び、前記樹脂充填層に前記硬化性樹脂を充填するためのジョイント部(例えば、後述の第2ジョイント部786)を末端部(例えば、後述の末端部784)に有してもよい。
【0042】
上記(18)に記載のバッテリ装置によれば、バッテリセルの積層方向に沿うバッテリセル群の端部側から充填部材内に気体及び硬化性樹脂の充填を行うことができるため、作業性に優れる。
【0043】
(19) (18)に記載のバッテリ装置において、前記ジョイント部は、メス型のジョイント部であってもよい。
【0044】
上記(19)に記載のバッテリ装置によれば、充填部材の末端部からのジョイント部の突出量が抑制され、末端部を小型化することができる。
【0045】
(20) (17)〜(19)のいずれかに記載のバッテリ装置において、前記樹脂充填層は、前記バッテリセル群の押し付け方向に沿って前記気体充填層を横断するパス部(例えば、後述のパス部782a)を有してもよい。
【0046】
上記(20)に記載のバッテリ装置によれば、バッテリセル群の押し付け方向の充填部材の強度を高めることができる。
【0047】
(21) 本発明に係るバッテリ装置(例えば、後述のバッテリ装置1)の製造方法は、二つの外側壁(例えば、後述の外側壁33)を有する外装体(例えば、後述の外装体30)の前記二つの外側壁の間に、それぞれ複数積層されるバッテリセル(例えば、後述のバッテリセル60)により構成される複数のバッテリセル群(バッテリセル群6)を並列させて配置した後、前記複数のバッテリセル群に対して、前記バッテリセル群同士を引き離して相反する前記二つの外側壁に向けて押し付ける方向の圧力を作用させることにより、前記複数のバッテリセル群を前記二つの外側壁に向けて押し付けた状態で前記外装体内に保持する。
【0048】
上記(21)に記載のバッテリ装置の製造方法によれば、複数のバッテリセルを高密度に搭載できると共に、個々のバッテリセルを個別に固定する必要なく、並列される複数のバッテリセル群をまとめて容易に保持可能なバッテリ装置を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、複数のバッテリセルを高密度に搭載できると共に、個々のバッテリセルを個別に固定する必要なく、並列される複数のバッテリセル群をまとめて容易に保持可能なバッテリ装置及びバッテリ装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明に係るバッテリ装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すバッテリ装置の分解斜視図である。
【
図3】
図2中の矩形枠で示す領域Aの拡大図である。
【
図4】バッテリ装置におけるI/Fボックスのみを示す平面図である。
【
図5】二つのバッテリ装置を連結した状態を示す平面図である。
【
図6】バッテリ装置の外装体にバッテリセル群を収容する様子を示す要部拡大斜視図である。
【
図7】
図6中の矩形枠で示す領域Bの拡大図である。
【
図8】保持機構の一実施形態を示すバッテリ装置の外装体内部を示す図である。
【
図9】保持機構の他の一実施形態を示すバッテリ装置の外装体内部を示す図である。
【
図10】
図9に示す外装体に衝突荷重が入力した様子を説明する図である。
【
図11】保持機構の他の一実施形態を示すバッテリ装置の外装体内部を示す図である。
【
図12A】
図11に示す保持機構に使用される板ばねの非圧縮状態を示す図である。
【
図12B】
図11に示す保持機構に使用される板ばねの圧縮状態を示す図である。
【
図12C】
図11に示す保持機構に使用される板ばねが圧縮状態から回復する様子を示す図である。
【
図13】保持機構の他の一実施形態に係るコイルを示す斜視図である。
【
図14A】バッテリセル群に対する押し付け圧力を発生させる前のコイル、バッテリセル群及び外側壁の関係をバッテリセルの積層方向から見た模式図である。
【
図14B】バッテリセル群に対する押し付け圧力を発生させる前のコイル、バッテリセル群及び外側壁の関係を平面視した模式図である。
【
図15A】バッテリセル群に対する押し付け圧力を発生させた状態のコイル、バッテリセル群及び外側壁の関係をバッテリセルの積層方向から見た模式図である。
【
図15B】バッテリセル群に対する押し付け圧力を発生させた状態のコイル、バッテリセル群及び外側壁の関係を平面視した模式図である。
【
図16】コイルとバッテリセルとの間に接触部材を介在させた様子を示す模式図である。
【
図17A】外装体内のバッテリセル群とコイルとの配置関係の一例を示す模式図である。
【
図17B】外装体内のバッテリセル群とコイルとの配置関係の他の一例を示す模式図である。
【
図17C】外装体内のバッテリセル群とコイルとの配置関係の他の一例を示す模式図である。
【
図17D】外装体内のバッテリセル群とコイルとの配置関係の他の一例を示す模式図である。
【
図17E】外装体内のバッテリセル群とコイルとの配置関係の他の一例を示す模式図である。
【
図17F】外装体内のバッテリセル群とコイルとの配置関係の他の一例を示す模式図である。
【
図18A】保持機構の他の一実施形態に係るカム部材が押し付け圧力を発生させていない状態を示す模式図である。
【
図18B】
図18Aに示すカム部材が押し付け圧力を発生させた状態を示す模式図である。
【
図20】保持機構の他の一実施形態に係る押し付け部材が押し付け圧力を発生させていない状態を示す模式図である。
【
図21A】
図20に示す押し付け部材を塑性変形させる方法の一例を示す模式図である。
【
図21B】
図20に示す押し付け部材が押し付け圧力を発生させた状態を示す模式図である。
【
図22A】保持機構の他の一実施形態に係るリンク機構が押し付け圧力を発生させていない状態を示す模式図である。
【
図22B】
図22Aに示すリンク機構が押し付け圧力を発生させた状態を示す模式図である。
【
図23】楔部材を使用した保持機構を有する外装体を示す斜視図である。
【
図24】楔部材を使用した保持機構を有する外装体内部を示す図である。
【
図25】保持機構の他の一実施形態に係る充填部材を使用した外装体内部を示す図である。
【
図28】充填部材の他の実施形態の要部を示す斜視図である。
【
図30】充填部材の更に他の実施形態の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照して詳細に説明する。
[バッテリ装置の全体構造]
本実施形態に示すバッテリ装置1は、
図1及び
図2に示すように、一つのI/F(インターフェース)ボックス2と、二つのバッテリセル搭載部3、3と、を備える。なお、本明細書の各図中の矢印で示す方向において、D1方向に沿う方向は、バッテリ装置1の長さ方向を示す。D2方向に沿う方向は、バッテリ装置1の幅方向を示す。D3方向に沿う方向は、バッテリ装置1の高さ方向を示す。D3方向がバッテリ装置1の「上」を示し、その反対方向がバッテリ装置1の「下」を示す。
【0052】
バッテリ装置1は、中央部にI/Fボックス2が配置され、このI/Fボックス2のD1方向に沿う両端にそれぞれバッテリセル搭載部3、3が配置される。バッテリセル搭載部3、3は、バッテリセル群6をそれぞれ備えている。バッテリセル搭載部3のバッテリセル群6は、詳細には後述するが、保持機構7により熱交換面に対して熱交換可能に接触すると共に、その接触状態が保持されて位置決めされている。
【0053】
各バッテリセル搭載部3、3におけるI/Fボックス2から遠い側の端面3aには、それぞれエンドプレート4、4が配置されている。二つのバッテリセル搭載部3、3は、I/Fボックス2を経由してバッテリセル搭載部3、3間に亘って挿通される複数本(本実施形態では6本)の長尺な連結ボルト5によって連結される。本実施形態に示すエンドプレート4、4は、連結ボルト5による締め付け力によって二つのバッテリセル搭載部3、3を互いに近接する方向に締め付け、I/Fボックス2を両側から挟着している。なお、バッテリセル搭載部3とI/Fボックス2との連結方法は、連結ボルト5を採用するものに限らず、溶接や、その他の適宜公知の接合方法を採用してもよい。
【0054】
[I/Fボックス]
I/Fボックス2は、バッテリセル搭載部3、3への温調媒体の供給流路部品、配電部品、ECU(engine control unit)等の構成部品22を収容する。具体的には、
図2及び
図3に示すように、I/Fボックス2は、ボックス本体20と、ボックス本体20の上面を被蓋する蓋体21とを有し、ボックス本体20の内部に構成部品22を収容している。構成部品22は、ボックス本体20内でカバー23により保護されている。
【0055】
ボックス本体20は、アルミニウム、アルミニウム合金等の剛体からなる容器であり、平面視で矩形状に形成されている。D1方向に面するボックス本体20の二つの平行な側壁部201、201は、バッテリセル搭載部3、3と接続される側にそれぞれ配置される。本実施形態に示すバッテリ装置1において、この側壁部201、201は、バッテリセル搭載部3、3内に収容される後述のバッテリセル群6、6をエンドプレート4、4と共に両側から挟んで締め付けるためのもう一方のエンドプレートとしても機能する。このため、側壁部201、201は、大きな締め付け荷重に耐えることができる十分な板厚を有する。側壁部201、201には、それぞれバッテリセル搭載部3、3内のバッテリセル群6、6から延びる配線類(図示せず)を、構成部品22の集配電部と電気的に接続させるために挿通させる複数の配線挿通穴201aがそれぞれ設けられている。
【0056】
図4に示すように、D2方向に沿う方向に面するボックス本体20の二つの側壁部202、203には、低電圧用コネクタ24と、高電圧用コネクタ25と、温調媒体供給用コネクタ26と、がそれぞれD1方向に沿って一直線上に並んで突設されている。低電圧用コネクタ24及び高電圧用コネクタ25は、構成部品22の集配電部にそれぞれ電気的に接続している。また、温調媒体供給用コネクタ26は、バッテリセル搭載部3、3の後述の温調媒体流路36とそれぞれ連通している。温調媒体供給用コネクタ26は、低電圧用コネクタ24と高電圧用コネクタ25との間に配置されている。
【0057】
二つの側壁部202、203のうちの一方の側壁部202に配置される低電圧用コネクタ24は、雄型のコネクタ241であり、他方の側壁部203に配置される低電圧用コネクタ24は、雌型のコネクタ242である。また、同様に、一方の側壁部202に配置される高電圧用コネクタ25は、雄型のコネクタ251であり、他方の側壁部203に配置される高電圧用コネクタ25は、雌型のコネクタ252である。更に、同様に、一方の側壁部202に配置される温調媒体供給用コネクタ26は、雄型のコネクタ261であり、他方の側壁部203に配置される温調媒体供給用コネクタ26は、雌型のコネクタ262である。
【0058】
これら雄型のコネクタ241、251、261と雌型のコネクタ242、252、262とは、相補的に接続可能な構造を有する。また、両側壁部202、203における低電圧用コネクタ24、24同士、高電圧用コネクタ25、25同士及び温調媒体供給用コネクタ26、26同士は、それぞれD2方向に沿う同一直線上に配置されている。このため、
図5に示すように、バッテリ装置1は、同一構造を有する他のバッテリ装置1との間で、低電圧用コネクタ24、24同士、高電圧用コネクタ25、25同士及び温調媒体供給用コネクタ26、26同士をそれぞれ接続することにより、D2方向に沿って連結することが可能である。各コネクタ24、25、26が接続されることにより、バッテリ装置1、1同士は電気的に接続されると共に、温調媒体供給用コネクタ26、26を介して相互に温調媒体の流通が可能とされる。これにより、複数のバッテリ装置1、1を機能的に一体化させることができ、バッテリ装置1の連結数を増加させることによって大容量のバッテリ装置を簡単に構成することができる。
【0059】
ボックス本体20において、側壁部202、203のうちの一方の側壁部202は、バッテリセル搭載部3、3と接続される二つの側壁部201、201の端部(
図4における下側の端部)201b、201bよりもやや内側(側壁部203側)に奥まった位置に配置されている。このため、複数のバッテリ装置1、1同士を連結した際、各コネクタ24、25、26の接続部位は、二つの側壁部201、201の端部201b、201bの間及び隣接するI/Fボックス2、2の側壁部202、203の間に収容される。これにより、連結方向に隣接するバッテリセル搭載部3、3同士を可及的に近接又は当接させることができ、接続部位に掛かる負担を軽減することができる。
【0060】
[バッテリセル搭載部]
二つのバッテリセル搭載部3、3は、I/Fボックス2を挟んでその両側に配置される。二つのバッテリセル搭載部3、3は同一構造であるため、ここでは一つのバッテリセル搭載部3の構成について、
図6〜
図8を用いて説明する。
バッテリセル搭載部3は、外装体30と、外装体30内に収容されるバッテリセル群6と、バッテリセル群6を外装体30内に保持する保持機構7と、を有する。本実施形態に示すバッテリセル搭載部3は、外装体30内に並列に配置された二つのバッテリセル群6、6を有する。これにより、バッテリ装置1は、後述のバッテリセル60を高密度に配置させることができる。しかし、一つの外装体30内に配置されるバッテリセル群6は一つだけでもよい。
【0061】
(外装体)
本実施形態に示す外装体30は、アルミニウム、アルミニウム合金等の剛体により四角筒状に形成されている。外装体30の長さ方向(D1方向に沿う方向)の両端は、それぞれ横長矩形状に開口している。この外装体30は、上側壁31と、下側壁32と、左右に相対峙する二つの外側壁33、33と、二つの外側壁33、33の間に配置される中間壁34と、を有する。
図8に示すように、外装体30は、連結ボルト5(
図8において図示せず)を挿通させる適宜数のボルト挿通穴35を有する。ボルト挿通穴35は、外装体30の長さ方向に延びて外装体30を貫通している。
【0062】
二つの外側壁33、33には、それぞれ温調媒体が流通する温調媒体流路(第1の温調媒体流路)36、36が設けられる。これにより、外側壁33の内面33aは、温調媒体流路36内の温調媒体との熱交換面を構成する。各外側壁33における温調媒体流路36は、上位に配置される上側流路361と、下位に配置される下側流路362との二つの流路にそれぞれ区画されている。上側流路361及び下側流路362は、外装体30の長さ方向(D1方向)の全長に亘って延びて外装体30の両端面30a、30aにそれぞれ開口している。温調媒体流路36のI/Fボックス2側の端部は、図示しないが、I/Fボックス2の側壁部201及びI/Fボックス2の内部を介して温調媒体供給用コネクタ26と連通している。
【0063】
温調媒体としては、一般にはバッテリセル群6を構成する後述のバッテリセルを冷却するための冷却空気又は冷却液が用いられるが、必要に応じて、バッテリセルを加温するための所定温度に加温された空気又は液体を用いることもできる。また、本実施形態に示す温調媒体流路36は、外側壁33の内部に完全に埋設されているが、温調媒体流路36は、例えば外側壁33の外側から凹設された溝により構成されてもよい。この場合では、プレート等によって外側壁33の外側から溝に蓋をすることによって、外側壁33の内部に温調媒体が流通可能な流路が構成される。温調媒体流路36は、伝熱性を有する配管によって形成されてもよい。この場合では、その配管を外側壁33に熱交換可能に埋設又は固着することにより、温調媒体流路36が設けられた外側壁33が構成される。
【0064】
中間壁34は、外装体30の内部をD2方向に二等分している。中間壁34は、バッテリセル群6の高さ方向の中央部から上側壁31との連結部位に亘って薄肉状に形成された薄壁部341と、この薄壁部341の下端から下側壁32との連結部位に亘って厚肉状に形成された厚壁部342と、を有する。この中間壁34によって区画される外装体30内の二つの空間は、バッテリセル群収容部301、301を構成する。各バッテリセル群収容部301、301に、それぞれ一つずつのバッテリセル群6、6が収容される。これにより、外装体30内に二つのバッテリセル群6、6が並列に配置される。但し、中間壁34は、外装体30に必須のものではなく、必要に応じて設けることができる。
【0065】
外装体30の外側壁33の内面33aには、バッテリセル群6の下部の一側面から突出する後述の凸部641を係合可能な凹部37が設けられている。また、外装体30の中間壁34の厚壁部342の両面には、それぞれバッテリセル群の下部の他側面から突出する後述の凸部611を係合可能な凹部38が設けられている。本実施形態に示す凹部37、38は、外側壁33の内面33aから凹設され、外装体30の長さ方向に沿って延びている。凹部37、38の両端部は、外装体30の両端面30a、30aに開口している。凹部37は、外側壁33の内部の温調媒体流路36よりも下位に配置されており、温調媒体流路36と干渉することはない。
【0066】
本実施形態に示す筒状の外装体30は、ボルト挿通穴35、温調媒体流路36、凹部37、38、バッテリセル群収容部301を、D1方向に沿って同一形状に形成することにより、D1方向に沿って押出し成形された押出し成形品により構成することができる。これにより、外装体30を容易に形成することができる。また、押出し成形品からなる筒状の外装体30は、板材同士を接合した接合部を有しないため、接合部に起因する組み付けばらつきや熱歪みが発生することがない。しかも、バッテリセル群6が後述の保持機構7により外側壁33に向けて押し付けられた際の応力が接合部に集中して歪みを発生させることもない。このため、形状が安定した外装体30を有するバッテリ装置1を構成することができる。
【0067】
(バッテリセル群)
バッテリセル群6は、
図6、
図7に示すように、例えばリチウムイオン二次電池からなる直方体形状のバッテリセル60をD1方向に沿って複数積層することにより構成される。積層方向に隣り合うバッテリセル60、60の間には、平板状の絶縁性のセパレータ61がそれぞれ配置され、隣り合うバッテリセル60、60によって挟着されている。バッテリセル60は、アルミニウム、アルミニウム合金等からなるセルケース内に電極体を収容することにより構成され、上面に正負一対の電極端子(図示せず)を有する。積層方向に隣り合う二つのバッテリセル60、60の電極端子同士は電気的に接続されている。これにより、バッテリセル群6の全てのバッテリセル60は、直列又は並列に電気的に接続される。
【0068】
バッテリセル群6の上面には、バッテリセル60の電圧検出を行うCVS(Cell Voltage Sensor)等のバッテリ状態を検出するための状態検出部62が配置される。状態検出部62の周囲には、バッテリセル群6の全てのバッテリセル60に亘るカバー63が配置され、上面に配置される電極端子等を保護している。
【0069】
バッテリセル群6の下面には、絶縁シート64が配置される。絶縁シート64は、バッテリセル群6の全長に亘って延びており、各バッテリセル60の底面と外装体30の下側壁32との間を絶縁している。絶縁シート64は、外装体30の外側壁33側に配置される側端部がバッテリセル群6の側面に沿って僅かに立ち上げられ、その上端に外側壁33に向けて張り出す凸部641を有する。凸部641は、バッテリセル群6の全長に亘って延びており、外側壁33の内面33aに設けられた凹部37に係合している。
【0070】
バッテリセル群6は、絶縁シート64の上面に高密度に複数積層されたバッテリセル60を載置させた状態で、外装体30の一方の端面30a(I/Fボックス2から遠い側の端面30a)の側から、バッテリセル群収容部301にスライドさせながら挿入される。このとき、バッテリセル群6は、凸部641と凹部37との係合によりガイドされながら、バッテリセル群収容部301に円滑に挿入することができる。挿入時の各バッテリセル60の積層状態を維持するため、図示しないが、バッテリセル群6の各バッテリセル60は、拘束バンド等によって簡易的に拘束されて一体化されていてもよい。
【0071】
各セパレータ61は、
図6、
図8に示すように、外装体30の中間壁34側に配置される側端面に、中間壁34に向けて僅かに突出する凸部611を有する。この凸部611は、中間壁34の厚壁部342に設けられた凹部38に係合している。このため、バッテリセル群6は、この凸部611と凹部38との係合によっても、バッテリセル群収容部301への円滑な挿入がガイドされるようになっている。また、外装体30内に収容されたバッテリセル群6は、凹部37、38と凸部641、611との係合により、上下方向に位置決めされる。
【0072】
バッテリセル群6と外側壁33の内面33aとの間には、伝熱シート331が配置される。伝熱シート331は、バッテリセル60の積層方向に沿って長尺に形成されてもよいし、バッテリセル60毎に対応して複数に分割されていてもよい。また、バッテリセル群6が外装体30に収容される前の伝熱シート331は、バッテリセル60に予め貼着されていてもよいし、外側壁33の内面33aに予め貼着されていてもよい。伝熱シート331は、バッテリセル群6が後述の保持機構7によって外側壁33に向けて押し付けられることにより、各バッテリセル60と外側壁33の内面33aとの双方に密着する。これにより、各バッテリセル60と外側壁33の内面33aとの熱交換可能な接触状態を安定させると同時に、より効率の良い熱交換を可能にしている。
【0073】
バッテリセル60とセパレータ61の組が複数積層されることによってバッテリセル群6が構成される。外装体30内に収容されたバッテリセル群6は、連結ボルト5によって、エンドプレート4とI/Fボックス2の側壁部201との間で締め付けられる。これにより、バッテリセル60の膨張は抑制される。本実施形態では、
図6に示すように、外装体30内に並列に配置される二つのバッテリセル群6、6に対して一枚のエンドプレート4が使用され、I/Fボックス2を挟んで配置される二つのバッテリセル搭載部3、3の各バッテリセル60が、連結ボルト5によってエンドプレート4、4の間で一体に締め付けられている。
【0074】
エンドプレート4は、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属、エンジニアリングプラスチック等の樹脂又はこれら金属と樹脂との複合体等の剛体によって形成される。エンドプレート4は、温調媒体流路36と連通する連通流路(図示せず)を内部に有していてもよい。例えば、連通流路は、二つの外側壁33、33の各温調媒体流路36、36同士を連通するように設けられる。また、連通流路は、例えば、外装体30の端面30aと接する面に、一つの外側壁33の温調媒体流路36の上側流路361と下側流路362とを連通するように設けられてもよい。これにより、エンドプレート4を利用して、外装体30内の温調媒体を効率良く流動させることができる。
【0075】
(保持機構)
次に、保持機構7について
図8〜
図30を参照して説明する。
保持機構7は、各バッテリセル搭載部3、3の外装体30内に設けられる。保持機構7は、外装体30内に並列して配置されたバッテリセル群6、6の間に配置され、その各バッテリセル群6、6に対して、バッテリセル群6、6同士を引き離して相反する二つの外側壁33、33に向けて押し付ける方向の圧力を作用させる。これにより、保持機構7は、バッテリセル群6の全てのバッテリセル60を外側壁33の内面33aに対して、伝熱シート331を介して熱交換可能に接触させる。また、これと同時に、保持機構7は、各バッテリセル群6、6を外側壁33、33に向けて押し付けた状態を維持する。バッテリセル群6の全てのバッテリセル60は、保持機構7により、外側壁33に向けて押し付けられた状態で外装体30内にがたつくことなく位置決めされて保持される。
【0076】
保持機構7により外側壁33の内面33aに押し付けられるバッテリセル60は、伝熱シート331及び外側壁33の内面33aを介して温調媒体流路36内の温調媒体と熱交換される。バッテリセル60の冷却のために、隣り合うバッテリセル60、60の間に冷却空気を流通させる必要はない。このため、バッテリセル60の積層方向の長大化を避けることができ、バッテリ装置1の大型化を招くおそれはない。また、保持機構7は、バッテリセル60を一つずつ固定する必要がなく、バッテリセル群6全体をまとめて保持することができる。このため、バッテリセル60を熱交換面に対して熱交換可能に接触及び保持するための作業性が良く、しかも、容易である。
【0077】
保持機構7は、外装体30内で並列するバッテリセル群6、6の間に配置させることができ、バッテリセル群6、6同士を引き離して相反する二つの外側壁33、33に向けて押し付ける方向の圧力を作用させることができるものであれば特に制限はない。
図8に示す保持機構7は、樹脂710により構成される。樹脂710としては、例えば化学反応により膨張する樹脂を用いることができる。化学反応により膨張する具体的な樹脂としては、2液の化学反応により膨張するウレタン樹脂が例示される。樹脂710は、並列に配置される二つのバッテリセル群6、6と中間壁34の薄壁部341の両面との間の隙間に、バッテリセル60の積層方向に沿って充填される。充填後の化学反応により樹脂710が膨張すると、樹脂710は、中間壁34を挟んでバッテリセル群6、6同士を引き離し、相反する二つの外側壁33、33に向けて押し付ける方向の圧力(膨張圧力)を作用させる。樹脂710は、化学反応による膨張後、その膨張状態を維持するので、各バッテリセル群6、6のバッテリセル60は、それぞれ外側壁33の内面33aに伝熱シート331を介して熱交換可能に接触し、その接触状態が保持される。このため、バッテリセル60は、温調媒体流路36内の温調媒体との熱交換を効率良く行うことができる。
【0078】
また、樹脂710は、外装体30内に充填される際の高圧の充填圧によって、バッテリセル群6、6を引き離し、相反する外側壁33、33に向けて押し付ける方向の圧力(充填圧)を作用させてもよい。外装体30内に所定の充填圧で充填された後の樹脂710は、外装体30内で硬化して所定の硬度を維持し、バッテリセル群6に対する押し付け圧力を維持する。これにより、バッテリセル60は、それぞれ外側壁33の内面33aに伝熱シート331を介して熱交換可能に接触し、その接触状態が保持される。このため、バッテリセル60は、温調媒体流路36内の温調媒体との熱交換を効率良く行うことができる。この場合に用いられる樹脂710は特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴム、又はこれらの組み合わせから構成されるものであってよい。
【0079】
樹脂710は、膨張圧により又は充填圧により、バッテリセル群6、6の側面の凹凸に容易に追従することができる。このため、バッテリセル群6を構成する個々のバッテリセル60が幅寸法のばらつきを有していても、そのばらつきを許容して、各バッテリセル60に対して均等に圧力を作用させることができる。また、樹脂710を充填するスペースは極めて狭小なスペースで足りるため、外装体30をより小型化することができる。更に、樹脂710は、バッテリセル群6と中間壁34との間又は並列されるバッテリセル群6、6間を絶縁することも可能である。
【0080】
図9は、樹脂710により構成される保持機構7を有する外装体30の他の実施形態を示している。この外装体30の内部に中間壁34は設けられていない。二つのバッテリセル群6、6に共通の一つの樹脂710が、バッテリセル群6、6の間に配置されている。一つの樹脂710は、二つのバッテリセル群6、6の各々に対して、相反する外側壁33の内面33aに向けて押し付ける方向の圧力を作用させている。この樹脂710は、外装体30の下側壁32に近接して配置されている。即ち、樹脂710は、二つのバッテリセル群6、6の間の下方に片寄って配置されている。
【0081】
樹脂710がバッテリセル群6、6の間の下方に片寄って配置されることにより、バッテリセル群6、6の間には、樹脂710に隣接する上方の部位に、樹脂710が存在しない逃げ空間302が形成される。この逃げ空間302は、変形した樹脂710の侵入を許容する。即ち、
図10に示すように、外装体30に対してD2方向に沿う側方から、例えば車両の側面衝突等による衝突荷重Fが入力することにより、外装体30がD2方向に沿って潰れるように破壊又は変形すると、衝突荷重Fがバッテリセル群6を介して樹脂710に作用する場合がある。このとき、樹脂710は、バッテリセル群6に押し潰されて変形し、バッテリセル60を攻撃することなく上方の逃げ空間302内に侵入することができる。バッテリセル群6に作用する衝突荷重Fは、樹脂710の変形により緩衝されるため、衝突荷重Fの入力時にバッテリセル60に与える影響を低減でき、バッテリセル60の変形等を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態に示す樹脂710は、バッテリセル群6の下方に片寄って配置されるため、樹脂710が変形して逃げ空間302に侵入しても、バッテリセル60の上部に配置される電極端子までは到達しない又は到達しにくい。このため、変形した樹脂710が電極端子周辺に対して干渉することを防止又は抑制することができる。
【0083】
衝突荷重Fの入力時に、樹脂710がバッテリセル60を攻撃することなく変形して逃げ空間302に効果的に侵入し得るようにするため、
図9に示すようにバッテリセル群6を保持しているときの樹脂710自体の耐荷重が設定される。具体的には、バッテリセル群6を保持しているときの樹脂710自体の耐荷重は、バッテリセル60の耐荷重よりも小さく、且つ、樹脂710がバッテリセル群6に対して作用させる保持荷重よりも大きくなるように設定される。これにより、樹脂710自体の耐荷重よりも大きな衝突荷重Fが入力した際に、バッテリセル群6に押し潰された樹脂710は容易に変形し、バッテリセル60を攻撃することなく逃げ空間302に侵入することができる。
【0084】
なお、片寄って配置される樹脂710は、例えば、バッテリセル群6、6の間の逃げ空間302となる部位に、樹脂710が充填されないようにするための治具を挿入した後、バッテリセル群6、6の間に樹脂710を充填することによって設けることができる。樹脂710は、膨張によってバッテリセル群6を保持する樹脂でもよいし、充填圧によってバッテリセル群6を保持する樹脂でもよい。治具は、樹脂710がバッテリセル群6を保持した後に取り除かれる。
【0085】
図11に示す保持機構7は、形状記憶合金性の板ばね720により構成される。板ばね720は、並列に配置される二つのバッテリセル群6、6と中間壁34の薄壁部341の両面との間の隙間に、外装体30及びバッテリセル群6の長さ方向の全長に亘ってそれぞれ挿入される。板ばね720は、中間壁34と各バッテリセル群6、6との間でばね反力を発生させることにより、バッテリセル群6、6同士を引き離し、各バッテリセル群6、6の各々に対して、相反する二つの外側壁33、33に向けて引き離すように押し付ける方向の圧力(ばね反力)を作用させる。
【0086】
板ばね720は、
図12Aに示すように、常温状態で、二つの第1当接面721、721と、この第1当接面721、721の間の第2当接面722と、を有し、第1当接面721、721と第2当接面722とが傾斜面723、723で連結された形状を有する。
図11では、板ばね720のばね反力により、第1当接面721、721がバッテリセル群6(バッテリセル60)の側面に当接し、第2当接面722が中間壁34に当接しているが、逆であってもよい。板ばね720は形状記憶合金性であるため、
図12Bに示すように、予め装着前に低温状態で板ばね720がほぼ平坦になるように圧縮させておくことで、その平坦な圧縮状態のまま、中間壁34と各バッテリセル群6、6との間の隙間に挿入することができる。その後、昇温に伴い、
図12Cに示すように徐々に元の状態に向けて回復すると、各バッテリセル群6、6に対してばね反力を作用させる。
【0087】
このような板ばね720は、
図12Bに示す圧縮状態で、中間壁34と各バッテリセル群6、6との間の隙間に挿入することができるため、板ばね720を挿入する作業も、工具等を用いる必要がなく、極めて簡単である。しかも、バッテリセル群6を収容した外装体30の内部には、圧縮状態の板ばね720を挿入し得る程度の小さなスペースがあれば足りるため、外装体30をより小型化することができる。
【0088】
図13に示す保持機構7は、弾性を有する螺旋状のコイル730により構成される。コイル730は、
図14A、
図14Bに示すように、二つのバッテリセル群6、6の間に、コイル730の軸線方向がバッテリセル60の積層方向に沿うように配置される。コイル730のピッチは、二つのバッテリセル群6、6の各バッテリセル60の積層方向のピッチとほぼ一致している。なお、ここでは、外装体30の内部の中間壁34は設けられていない。また、
図14Bでは、積層方向に隣り合うバッテリセル60、60間のセパレータ61の図示は省略している。
【0089】
図14A、
図14Bに示すコイル730は、バッテリセル群6、6に対して押し付け圧力を作用させていない。この状態から、コイル730の一端を固定し、他端をコイル730の巻方向と逆方向に回転変位させると、コイル730は弾性的に拡径する。これにより、
図15A、
図15Bに示すように、コイル730は、バッテリセル群6、6同士を引き離し、各バッテリセル群6、6の各々に対して、相反する二つの外側壁33、33に向けて押し付ける方向の圧力を作用させることができる。このとき、コイル730は、各バッテリセル群6、6のバッテリセル60の各々と当接し、バッテリセル60に対して個々に圧力を作用させる。
【0090】
弾性的に拡径されるコイル730は、個々のバッテリセル60の幅寸法にばらつきがあっても、コイル730のピッチ毎の拡径量が変化して容易に追従可能である。このため、コイル730は、バッテリセル群6、6の全てのバッテリセル60に対して押し付ける方向の圧力を均等に作用させることができる。しかも、コイル730の中心部のスペースは、バッテリセル群6、6に設けられる配線類等の構成部品を収容又は挿通させるスペースとして利用することもできる。
【0091】
コイル730は、
図13に示すように、伝熱性を有する中空線材を螺旋状に巻回することにより形成することができる。この場合、中空線材からなるコイル730の内部に、空気又は液体からなる温調媒体を流動させることにより、コイル730の内部は、温調媒体流路(第2の温調媒体流路)731を構成することができる。これにより、外側壁33に設けられる温調媒体流路36のみならず、コイル730内の温調媒体流路731によっても、各バッテリセル60との間で熱交換を行うことができる。このため、バッテリセル60は熱交換媒体との更に効率的な熱交換を行うことができる。
【0092】
図16に示すように、コイル730とバッテリセル群6、6との間に、伝熱性を有する接触部材732を配置させるようにしてもよい。接触部材732は、シリコーン等により形成される。コイル730に対向する接触部材732の面は、コイル730の外周面に沿うように凹設された円弧面732aとなっている。接触部材732は、コイル730によるバッテリセル60への接触圧力を分散させ、熱交換効率を維持しつつバッテリセル60の変形等の不具合を抑制する。
【0093】
コイル730は、
図17A〜
図17Fに示すように、外装体30内の配置を様々に変化させることにより、外装体30内のバッテリセル群6に対する押し付け方向を容易に変化させることもできる。例えば、
図17Aに示すように、二つのバッテリセル群6、6の間にコイル730が配置される場合は、外装体30の高さ方向の寸法が抑制される。一方、
図17Bに示すように、二つのバッテリセル群6、6に対して斜め上方にコイル730が配置される場合は、外装体30の幅方向の寸法が抑制される。
【0094】
図17Cは、外装体30内に一つのバッテリセル群6のみが収容される場合を示している。コイル730は、バッテリセル群6と一方の外側壁33との間に配置される。これによれば、外装体30の高さ寸法が抑制される。また、コイル730は、外装体30内の一つのバッテリセル群6を外側壁33に向けて押し付けて保持することができる。一方、
図17Dは、外装体30内の一つのバッテリセル群6に対して、コイル730が斜め上方に配置されている。これによれば、外装体30の幅方向の寸法は抑制される。また、コイル730は、外装体30内の一つのバッテリセル群6を外側壁33に向けて押し付けて保持することができる。
【0095】
外装体30内のバッテリセル群6が、他の保持機構7によって外側壁33に対して熱交換可能に接触可能である場合は、コイル730は、必ずしもバッテリセル群6に対して外側壁33に向けて押し付けなくてもよい。例えば、
図17Eに示すように、一つのコイル730が、外装体30内の一つのバッテリセル群6を外装体30の下側壁32に押し付けるようにしてもよい。また、
図17Fに示すように、外装体30内の二つのバッテリセル群6、6に対応する二つのコイル730、730が、それぞれバッテリセル群6を外装体30の下側壁32に押し付けるようにしてもよい。
【0096】
図18A、
図18Bに示す保持機構7は、カム部材740により構成される。カム部材740は、アルミニウム、アルミニウム合金等の剛体からなる。カム部材740の軸線方向(回転中心)は、外装体30の長さ方向に沿って延びている。カム部材740は、回転中心から回転方向に対して半径が連続的に変化(増大)する断面形状を有する。
【0097】
図18Aは、二つのバッテリセル群6、6の間に、高さ方向に沿って二つのカム部材740、740を配置させた状態を示している。外装体30の内部に中間壁34は設けられていない。カム部材740、740とバッテリセル群6、6との間には、押し付けプレート741が介在され、カム部材740の摺動によるバッテリセル60の損傷を防止している。
【0098】
図18Aは、バッテリセル群6に対する押し付け方向(D2方向に沿う方向)に対して、二つのカム部材740、740の半径が縮小した状態を示している。この状態から、各カム部材740、740が回転すると、バッテリセル群6、6の押し付け方向に沿うカム部材740、740の半径は次第に増加する。
図18Bは、バッテリセル群6に対する押し付け方向に沿うカム部材740、740の半径が最も増加した状態を示している。カム部材740、740が、
図18Aに示す回転変位位置から
図18Bに示す回転変位位置に配置されると、バッテリセル群6、6同士は、カム部材740、740の外周面に押されて引き離され、相反する方向に向けて押し付けられる。
【0099】
このようなカム部材740により構成される保持機構7によれば、カム部材740の回転変位量を調整することにより、バッテリセル群6の押し付け圧力を一定に維持することができる。また、カム部材740は剛体からなるため、バッテリセル群6に瞬間的なGが発生しても、押し付け圧力を維持することができる。
【0100】
カム部材740により構成される保持機構7は、カム部材740の回転変位位置を維持するための固定部材742を有することが好ましい。
図19は、固定部材742の一例を示している。固定部材742は金属性プレートからなり、外装体30内に配置される上記二つのカム部材740、740に対応する二つの係合穴742a、742aを有する。係合穴742aは、カム部材740の多角形状(本実施形態では星形)の回転軸部740aを挿通させて係合可能な多角形状(本実施形態では星形)に形成されている。固定部材742は、各係合穴742aにそれぞれカム部材740の回転軸部740aを挿通させ、例えば外装体30の端面30aに固定される。これにより、カム部材740を所定の回転変位位置に容易に維持することができる。
【0101】
図20に示す保持機構7は、アルミニウム、アルミニウム合金等の塑性変形可能な金属からなる押し付け部材750により構成される。押し付け部材750は、筒状に形成され、外装体30の長さ方向に沿って延びており、外装体30内の二つのバッテリセル群6、6の間に配置されている。外装体30の内部に中間壁34は設けられていない。
図20は、塑性変形前の押し付け部材750を示している。この状態では、押し付け部材750は細幅であり、並列されるバッテリセル群6、6の間のスペースに楽に挿入することが可能である。押し付け部材750とバッテリセル群6、6との間には、押し付け部材750との接触によるバッテリセル60の変形等を防止するための接触部材751が介在されている。
【0102】
バッテリセル群6、6の間に挿入された押し付け部材750は、適宜のかしめ治具を用いて上下方向からかしめられることにより塑性変形される。
図21A、
図21Bは、かしめ治具752を用いて押し付け部材750をかしめる方法の一例を示している。かしめ治具752は、軸部752aの周囲に複数のかしめ部材752bを有している。本実施形態に示すかしめ治具752は、軸部752aの軸方向に並んだ三つのかしめ部材752bを有している。各かしめ部材752bは高さ方向のサイズが異なっており、
図21Aにおける右側から左側にかけて次第に高さが大きくなるように形成されている。
【0103】
かしめ治具752は、
図21Aに示すように、外装体30の一方の端面30aの側から押し付け部材750の上方及び下方に挿入される。このとき、かしめ治具752は、最も高さの小さいかしめ部材752bの側から外装体30内に挿入される。その後、かしめ治具752が、外装体30と押し付け部材750との間を外装体30の長さ方向に沿って貫くように押し込まれる。これにより、
図21Bに示すように、高さが徐々に大きくなる複数のかしめ部材752bによって、押し付け部材750が徐々に上下方向から押し潰され、それに伴って押し付け部材750が横方向(D2方向に沿う方向)に拡幅される。
【0104】
拡幅された押し付け部材750は、左右の接触部材751、751にそれぞれ当接し、接触部材751、751を介して、バッテリセル群6、6同士を引き離し、各バッテリセル群6、6に対して、相反する外側壁33、33に押し付ける方向の圧力を作用させる。塑性変形後の押し付け部材750の拡幅状態は維持されるため、押し付け部材750は、バッテリセル群6、6に対して安定した押し付け圧力を付与することができる。なお、押し付け部材750は、上下方向から押し潰されることによって拡幅されるように塑性変形可能であれば、六角筒状に形成されるものに制限されず、例えば円筒状等であってもよい。
【0105】
図22A、
図22Bに示す保持機構7は、リンク機構760により構成される。外装体30の内部に中間壁34は設けられていない。リンク機構760は、バッテリセル60の積層方向に沿って配置された二枚の平行な支持板761、761と、この二枚の支持板761、761の間を連結する複数の平行な連結部材762と、を有する。連結部材762の両端部は、各支持板761、761に対して回動可能に連結される。このように構成されるリンク機構760は、二枚の支持板761、761をバッテリセル60の積層方向に沿う反対方向へ相対移動させることにより、支持板761、761同士の間隔を縮小又は拡大させることができる。
【0106】
リンク機構760は、外装体30内の二つのバッテリセル群6、6の間に、二枚の支持板761、761がそれぞれバッテリセル群6、6の側面に対面するように配置される。このとき、リンク機構760は、
図22Aに示すように、二枚の支持板761、761同士の間隔を近接させ、幅寸法を縮小させた状態とされる。この状態では、リンク機構760は、バッテリセル6、6に対して何ら押し付け方向の圧力を発生させないため、外装体30内のバッテリセル群6、6の間に容易に挿入することができる。その後、二枚の支持板761、761が、バッテリセル60の積層方向に沿って互いに反対方向に相対移動すると、
図22Bに示すように、支持板761、761同士の間隔が拡大する。これにより、リンク機構760は、バッテリセル群6、6同士を引き離し、各バッテリセル群6、6に対して、相反する外側壁33、33に向けて押し付ける方向の圧力を作用させる。
【0107】
支持板761、761同士の間隔は、
図22Aに示すように、支持板761、761に対して、バッテリセル60の積層方向に沿って挟み付ける力を作用させることにより拡大可能である。支持板761、761は、エンドプレートを利用して挟み付けることができる。
図22A、
図22Bでは、エンドプレート4と、エンドプレートとしても機能するI/Fボックス2の側壁部201と、の間で支持板761、761を挟着している。これにより、バッテリセル群6、6を両側からエンドプレート(エンドプレート4、側壁部201)を用いて挟着するだけでリンク機構760を作動させることができるため、リンク機構760を作動させるための特別な作業は不要となり、バッテリセル群6、6に対して押し付け圧力を容易に付与することができる。
【0108】
図23に示す保持機構7は、外装体30を貫通する貫通穴771と、この貫通穴771に挿入される楔部材772と、を有する楔機構770により構成される。外装体30の内部に中間壁34は設けられていない。本実施形態に示す貫通穴771は、外装体30における二つのバッテリセル群6、6の間に対応する上側壁31に配置される。楔部材772の円柱状の軸部772aの先端は、先細り状に形成されることにより、斜面772bを有する。この楔部材772は、軸部772aの外周面に雄ねじを有し、貫通穴771に形成された雌ねじに対して螺合するように構成される。
【0109】
貫通穴771に楔部材772が螺合されると、
図24に示すように、軸部772aの先端の斜面772bが、バッテリセル群6、6の角部6a、6aに当接する。楔部材772が更に押し込まれると、斜面772bがバッテリセル群6、6の角部6a、6aを押圧し、その斜面772bに沿って二つのバッテリセル群6、6を引き離し、外側壁33、33に向けて相反する方向に押し付ける。このため、外装体30の外側から貫通穴771に楔部材772を挿入するだけで、外装体30内のバッテリセル群6、6に対して容易に押し付け圧力を付与することができる。また、楔部材772は、貫通穴771に螺合されるため、楔部材772の回転量を調整することにより、バッテリセル群6、6に対する押し付け量を容易に調整することができる。
【0110】
楔機構770は、外装体30に複数設けることもできる。また、バッテリセル群6は、
図23、
図24に示すように、適宜の拘束バンド65によって一体化されていることが好ましい。これにより、少ない数の楔機構770で、バッテリセル群6を押し付けることができるので、部品点数を削減できると共に、バッテリ装置1の組立て性も良好となる。なお、楔機構770は、楔部材772を外装体30の下側壁32から挿入するように構成されてもよい。
【0111】
図25に示す保持機構7は、充填部材780により構成される。外装体30の内部に中間壁34は設けられていない。充填部材780は、略直方体形状を有し、外装体30内の二つのバッテリセル群6、6の間に配置され、バッテリセル60の積層方向の全長に亘って延びている。充填部材780は、
図26、
図27に示すように、空気等の気体が充填される気体充填層781と、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂が充填される樹脂充填層782と、を有する。樹脂充填層782は、気体充填層781の外周に配置され、この気体充填層781を包囲している。中央に配置される気体充填層781に比べて、その外周の樹脂充填層782は薄い層状に形成されている。従って、気体充填層781に比べて、樹脂充填層782の容積は小さい。これら気体充填層781及び樹脂充填層782は、例えば二重構造の袋状の柔軟なラミネートフィルム783により構成される。
【0112】
充填部材780の一端には、金属又は硬質樹脂等の硬質材によって形成される末端部784を有する。末端部784には、気体充填層781内と連通する気体充填用の第1ジョイント部785と、樹脂充填層782内と連通する樹脂充填用の第2ジョイント部786と、を有する。第1ジョイント部785及び第2ジョイント部786は、末端部784から突出している。
【0113】
充填部材780は、気体充填層781及び樹脂充填層782に対して気体及び硬化性樹脂のいずれも実質的に充填させていない収縮状態で、外装体30内のバッテリセル群6、6の間に挿入される。充填部材780は収縮状態であるため、挿入作業を楽に行うことができる。その後、先ず、第1ジョイント部785から気体充填層781内に気体が注入される。これにより、気体充填層781は膨張し、バッテリセル群6、6同士を引き離し、各バッテリセル群6、6に対して、相反する外側壁33に向けて押し付ける方向の圧力を作用させる。但し、このときの圧力は、気体充填層781内の圧縮性を有する気体による圧力であるため、バッテリセル群6を外側壁33に対して安定して保持するには十分でない。
【0114】
次いで、第2ジョイント部786から樹脂充填層782内に硬化性樹脂が注入されると、樹脂充填層782は膨張し、バッテリセル群6に対して更に外側壁33に向けた押し付け方向の圧力を作用させる。その後、樹脂充填層782内の硬化性樹脂が硬化すると、充填部材780による押し付け圧力が維持される。これにより、充填部材780は、バッテリセル群6を外側壁33に対して安定して保持することができる。
【0115】
この充填部材780によれば、気体充填層781の膨張によって、樹脂充填層782内の硬化性樹脂の硬化を待たずに、バッテリセル群6、6同士を引き離し、各バッテリセル群6、6に対して、相反する外側壁33、33に向けて押し付ける方向の圧力を付与することができる。このため、硬化性樹脂が硬化するまでの間、他の手段を用いてバッテリセル群6を外側壁33に向けて押し付ける必要はない。硬化性樹脂の硬化後は、押し付け圧力は維持されるため、バッテリセル群6に対して安定した押し付け圧力を容易に付与することができる。また、気体充填層781及び樹脂充填層782は、バッテリセル群6、6の側面形状に容易に追従することができる。従って、充填部材780は、バッテリセル60の個々の幅寸法のばらつきを許容し、個々のバッテリセル60に対して均等に圧力を付与することができる。また、充填部材780は、末端部784の第1ジョイント部785及び第2ジョイント部786を利用して、外装体30の端面30a側から気体及び硬化性樹脂の注入作業を容易に行うことができる。
【0116】
充填部材780の末端部784の第1ジョイント部785と第2ジョイント部786は、
図28、
図29に示すように、メス型のジョイント部であってもよい。末端部784からの各ジョイント部785、786の突出量が抑制されるため、末端部784の小型化が可能である。
【0117】
樹脂充填層782は、
図30〜
図32に示すように、気体充填層781を横断するパス部782aを有することができる。本実施形態に示すパス部782aは、充填部材780の長さ方向に亘って延びている。パス部782aは、充填部材780の幅方向、即ち、バッテリセル群6、6の押し付け方向(D2方向に沿う方向)に沿って設けられ、充填部材780内の気体充填層781を上下に二分している。このため、末端部784には、二つの気体充填層781、781に対応する二つの第1ジョイント部785、785が設けられる。また、本実施形態に示す末端部784には、硬化性樹脂がパス部782aを含む樹脂充填層782内に十分に行き渡るように、二つの第2ジョイント部786、786が上下に分かれて設けられている。これらのジョイント部785、786も、
図28、
図29と同様にメス型のジョイント部によって構成してもよい。
【0118】
パス部782aは、樹脂充填層782内の硬化性樹脂が硬化すると、
図32に示すように、左右の樹脂充填層782、782を一体に繋いで補強する役目を果たす。このパス部782aにより、バッテリセル群6に対する外側壁33に向けた押し付け方向の充填部材780の強度が高められる。従って、各バッテリセル群6、6を、外側壁33、33に対してより安定して保持することができる。なお、このようなパス部782aは、充填部材780の長さ方向に沿って部分的に(断続的に)形成されるだけでもよい。
【0119】
[バッテリ装置の製造方法]
以上説明したように、バッテリ装置1は、バッテリセル60を複数積層して構成されるバッテリセル群6を外装体30内に保持することにより得られる。バッテリセル群6は、外装体30の二つの外側壁33、33の間のバッテリセル群収容部301、301に並列して配置される。その後、バッテリセル群6、6の間に保持機構7を配置し、複数のバッテリセル群6、6に対して、バッテリセル群6、6同士を引き離して相反する二つの外側壁33、33に向けて押し付ける方向の圧力を作用させる。これにより、各バッテリセル群6、6は、外側壁33、33に向けて押し付けられた状態で外装体30内に保持される。
【0120】
このようにして得られるバッテリ装置1は、バッテリセル60を外側壁33内に保持するために、バッテリセル60を個別に固定する必要はない。このため、この製造方法によれば、個々のバッテリセル60を外側壁33内の二つの外側壁33、33の間に容易に保持することが可能である。
【0121】
[バッテリ装置の他の実施形態]
以上の実施形態に示すバッテリ装置1では、I/Fボックス2を挟んで二つのバッテリセル搭載部3、3が設けられるが、バッテリセル搭載部3は、I/Fボックス2のいずれか一方側のみに設けられるだけでもよい。また、I/Fボックス2及び外装体30は、温調媒体流路を待たないものであってもよい。
【0122】
以上の各実施形態では、バッテリセル群6を収容する外装体30は筒状に形成されるが、外装体は筒状のものに限定されない。外装体は、例えば、上部に着脱可能な蓋体を有する箱状(バスタブ状)に形成されてもよい。この場合は、蓋体を取り外した開放状態の外装体の上方から外装体内に、セパレータ61を有するバッテリセル60を個別に収容することにより、外装体内でバッテリセル群6を構成することができる。外装体が中間壁34を有する場合、凹部38は、バッテリセル群6の凸部618を上方から係合可能に設けることができる。
【0123】
このような箱状(バスタブ状)の外装体を用いる場合も、上記保持機構7を用いて、並列に配置されるバッテリセル群6を外装体の相反する二つの外側壁に向けて押し付けることができる。バッテリセル群6は、外側壁に向けて移動することにより、上記実施形態と同様に、凸部617を外側壁の凹部37に横方向から係合させることができる。この場合の保持機構7は、外装体の上方から並列するバッテリセル群6の間に挿入してもよいし、バッテリセル60の積層方向の両端側に配置される外装体の壁部の一部に開口部を設け、この開口部から外装体内の並列するバッテリセル群6の間に挿入してもよい。