【実施例】
【0057】
以下の実施例で使用される細胞株及び一般的な実験技術は、以下のとおりである。
【0058】
実施例1 PD−1/CD47二重特異性抗体のタンパク質発現
ヒト化抗体H8(抗PD−1 IgG抗体)に基づき、特定のリンカー(GGGGSGGGGSERGETGP)を介して、ヒトシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPA、NP_542970.1)膜外ドメイン(32aa−137aa)をH8重鎖のC末端と結合させることにより、二重特異性抗体HX009−5を得て、それにより二重特異性抗体は、目的のタンパク質であるPD−1及びCD47の両方を標的にする。
【0059】
実践の操作においては、ヒト化抗体H8の軽鎖をコードする核酸の全配列を合成し、その後ベクターに挿入することにより、発現ベクター1を得て;H8重鎖をコードする核酸の全配列及びリンカー−SIRPA(
118mer)をコードする核酸の全配列も合成し、前記H8重鎖をコードする核酸は、前記発現ベクター1に直接挿入され、抗PD1モノクローナル抗体H8を発現する発現ベクター2を得た。オーバーラップPCRによる融合後、抗PD1モノクローナル抗体H8の重鎖とリンカー−SIRPAとの融合ペプチドをコードする核酸を発現ベクター1に挿入し、それによって二重特異性抗体HX009−5を発現する発現ベクター3を得た。その後、発現ベクター2及び発現ベクター3から抽出したDNAを、それぞれ哺乳類細胞(293細胞)にトランスフェクトした。このようなトランスフェクションにより、抗体は哺乳類細胞で発現され、細胞から分泌された。その後、抗体Aアフィニティクロマトグラフィカラムにおける精製の後、タンパク質H8及びHX009−5を得た。HX009−5は、SDS−PAGE及びSEC−HPLC標準分析技術による品質同定後の後続の薬力学研究に用いられた。
【0060】
図1及び
図2は、それぞれ、SDS−PAGE及びSEC−HPLCによるHX009−5の同定を示す結果である。
【0061】
図1は、HX009−5の同定のSDS−PAGE結果である。
図1においては、レーン1は、HX009−5(還元された)を表し;レーン2は、H8(還元された)を表し;レーンMは、タンパク質マーカー(18.4KDa;25KDa;35KDa;45KDa;66.2KDa)を表し;レーン3は、ウシ血清アルブミン(BSA)バッファを示す。
図1に示されるように、抗体HX009−5の候補サンプルは、比較的高い全体の純度を示す。
【0062】
図2は、HX009−5の同定におけるSEC−HPLC結果である。
図2に示されるように、抗体は、積分定量により、全体の純度が98.2%であることが確認されている。
【0063】
HX009−5の重鎖のアミノ酸配列
【化10】
可変領域に下線が引かれる。
【0064】
HX009−5の重鎖をコードする核酸配列
【化11】
【0065】
HX009−5の軽鎖のアミノ酸配列
【化12】
可変領域に下線が引かれる。
【0066】
HX009−5の軽鎖をコードする核酸配列
【化13】
【0067】
実施例2 HX009−5二重特異性抗体のELISA結合アッセイ
1.H8及びHX009−5のPD−1結合ELISAアッセイ
実施例1で得られたH8抗体及びHX009−5抗体との間で、PD−1結合アッセイ及びPD−L1競合アッセイを含む、直接の比較を行った。詳細は下記の通りである。
【0068】
PD−1結合アッセイのための具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
ELISAプレートを0.25μg/ml(ウェル当たり100μl)の濃度でhPD−1−his抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
1%BSA(PBSバッファで希釈)を用いて、hPD−1−his抗原で塗布したELISAプレートを37℃で2時間ブロッキングし、その後1%Tween−20を含む1×PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた。
3)一次抗体とのインキュベーション
H8抗体及びHX009−5抗体を、それぞれ2μg/mlから1:5ずつ段階希釈し、それぞれの抗体に対する7つの勾配抗体溶液を得た。各抗体のための7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロールをブロッキングしたELISAプレートにそれぞれ添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
4)二次抗体とのインキュベーション
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、二次抗体として、1:10000希釈のヤギ抗ヒトIgG−HRP(H+L)(ウェル当たり100μl)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)発色(developing)
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤(developer)としての3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)をウェル当たり100μl添加し、5分間〜15分間室温でインキュベーションした。
6)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
7)読み(reading)
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0069】
表1及び
図3に示されるように、PD−1に結合するH8及びHX009−5のEC
50値はいずれも0.05nMであると計算されることができる。
図3は、H8のC末端でのリンカー−SIRPA(
118mer)との融合は、抗体HX009−5にPD−1への結合親和性における変化をもたらさないことを示す。
【表1】
【0070】
2.H8及びHX009−5のPD−L1競合ELISAアッセイ
具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
96ウェルELISAプレートを0.5μg/ml(ウェル当たり50μl)の濃度でhPD−1−hIgGFc抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、37℃で2時間、1%BSA(PBSバッファで希釈)で、塗布した96ウェルELISAプレートをブロッキングし、その後1%Tween−20を含有する1×PBSTバッファで3回洗浄した。
3)一次抗体とのインキュベーション
H8抗体及びHX009−5抗体を、それぞれ6μg/mlから1:3ずつ段階希釈し、それぞれの抗体に対する7つの勾配抗体溶液を得た。各抗体のための7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロール(ウェル当たり50μl)をブロッキングした96ウェルELISAプレートにそれぞれ添加し、室温で10分間インキュベーションした。
4)リガンドとのインキュベーション
ウェル当たり50μlで、0.6μg/mlのPD−L1−mIgG2aFc溶液を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)二次抗体とのインキュベーション
96ウェルELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、二次抗体としての1:5000希釈のヤギ抗マウスIgG−HRP(H+L)(ウェル当たり50μl)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
6)発色
96ウェルELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤としてのTMBをウェル当たり50μl添加し、5分間〜15分間室温でインキュベーションした。
7)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
8)読み
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0071】
結果を表2及び
図4に示す。HX009−5抗体及びH8抗体は、PD−L1へのPD−1結合の阻害に関して、1.5nM及び1.0nMのそれぞれのIC
50値を示し、H8のC末端でリンカー−SIRPA(
118mer)との融合は、抗体HX009−5にPD−L1へのPD−1結合の阻害における明らかな変化をもたらさない。
【表2】
【0072】
3.H8及びHX009−5のPD−L2競合ELISAアッセイ
具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
96ウェルELISAプレートを1.0μg/ml(ウェル当たり100μl)の濃度のhPD−1−hIgGFc抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、37℃で2時間、1%BSA(PBSバッファで希釈)で、塗布した96ウェルELISAプレートをブロッキングし、その後1%Tween−20を含有する1×PBSTバッファで4回洗浄した。
3)一次抗体とのインキュベーション
H8抗体及びHX009−5抗体を、それぞれ20μg/mlから1:3ずつ段階希釈し、それぞれの抗体に対する7つの勾配抗体溶液を得た。各抗体のための7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロール(ウェル当たり50μl)をブロッキングした96ウェルELISAプレートにそれぞれ添加し、室温で10分間インキュベーションした。
4)リガンドとのインキュベーション
0.6μg/mlのPD−L2−his tag溶液をウェル当たり50μl添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)二次抗体とのインキュベーション
96ウェルELISAプレートをPBSTバッファで5回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、1:750希釈(ウェル当たり50μl)で、二次抗体としてのHRP結合抗−his tagマウスモノクローナル抗体を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
6)発色
96ウェルELISAプレートをPBSTバッファで6回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤としてのTMBをウェル当たり100μl添加し、30分間室温でインキュベーションした。
7)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
8)読み
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0073】
結果を表3及び
図5に示す。HX009−5抗体及びH8抗体は、PD−L2へのPD−1結合の阻害に関して、1.5nM及び2.7nMのそれぞれのIC
50値を示し、H8のC末端でリンカー−SIRPA(
118mer)との融合は、抗体HX009−5にPD−L2へのPD−1結合の阻害における明らかな変化をもたらさない。
【表3】
【0074】
4.HX009−5のCD47結合ELISAアッセイ
実施例1で得たHX009−5抗体のCD47結合ELISAアッセイを行った。詳細は下記に示される。
【0075】
具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
ELISAプレートを0.25μg/ml(ウェル当たり100μl)の濃度のCD47抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
37℃で2時間、1%BSA(PBSバッファで希釈)で、CD47抗原で塗布したELISAプレートをブロッキングし、その後1%Tween−20を含有する1×PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた。
3)一次抗体とのインキュベーション
HX009−5抗体を、それぞれ10μg/mlから1:5ずつ段階希釈し、7つの勾配抗体溶液を得た。7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロールを、ブロッキングしたELISAプレートにそれぞれ添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
4)二次抗体とのインキュベーション
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、二次抗体として、1:10000希釈のヤギ抗ヒトIgG−HRP(H+L)(ウェル当たり100μl)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)発色
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤としてのTMBをウェル当たり100μl添加し、5分間〜15分間室温でインキュベーションした。
6)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
7)読み
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0076】
結果を表4及び
図6に示す。HX009−5とhCD47との間の結合におけるEC
50は、0.6nMである。
【表4】
【0077】
5.HX009−5のSIPRA競合ELISAアッセイ
具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
96ウェルELISAプレートを0.25μg/ml(ウェル当たり100μl)の濃度のCD47抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、37℃で2時間、1%BSA(PBSバッファで希釈)で、塗布した96ウェルELISAプレートをブロッキングし、1%Tween−20を含有する1×PBSTバッファで4回洗浄した。
3)一次抗体とのインキュベーション
HX009−5抗体を、30μg/mlから1:3ずつ段階希釈し、7つの勾配抗体溶液を得た。7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロール(ウェル当たり50μl)を、ブロッキングした96ウェルELISAプレートにそれぞれ添加し、室温で10分間インキュベーションした。
4)リガンドとのインキュベーション
0.6μg/mlのSIRPA−his tag溶液をウェル当たり50μl添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)二次抗体とのインキュベーション
96ウェルELISAプレートをPBSTバッファで5回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、1:750希釈(ウェル当たり50μl)で、二次抗体としてのHRP結合抗−his tagマウスモノクローナル抗体を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
6)発色
96ウェルELISAプレートをPBSTバッファで6回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤としてのTMBをウェル当たり100μl添加し、30分間室温でインキュベーションした。
7)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
8)読み
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0078】
表5及び
図7に示される結果は、HX009−5が、21nMのIC
50で、CD47とSIRPAとの間の結合を阻害することを示す。
【表5】
【0079】
実施例3 HX009−5Fcフラグメントの有効性における研究
HX009−5(実施例1で得られた)のFcフラグメントの有効性を調査するために、個々のFC受容体に対するHX009−5の結合能力の決定について、それぞれのFc受容体(CD16、CD32a、CD32b、及びCD64)の親和性を試験した。詳細は下記に示される。
【0080】
1.CD16aに対するHX009−5の親和性のアッセイ
Fc受容体CD16a(FcγRIIIaとしても知られる)は、IgG抗体のFcフラグメントに結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に関与することができる。治療用モノクローナル抗体とFc受容体との間の結合能力は、抗体の安全性と有効性に影響を与える。本実施例では、HX009−5のCD16aへの親和性をELISAにより試験し、HX009−5のFc受容体CD16aへの結合能力を評価した。
【0081】
HX009−5抗体(実施例1で得られた)は、HX006抗体(IgG1サブタイプ)と比較して、ELISAによりCD16aへの結合が検出された。詳細は下記に示される。
【0082】
具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
ELISAプレートを0.5μg/ml(ウェル当たり100μl)の濃度のCD16a抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
CD16a抗原で塗布したELISAプレートを、1%BSA(PBSバッファで希釈)で、37℃で2時間ブロッキングし、その後1%Tween−20を含有する1×PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた。
3)一次抗体とのインキュベーション
HX009−5抗体を、それぞれ10μg/mlから1:5ずつ段階希釈し、7つの勾配抗体溶液を得た。7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロールを、ブロッキングしたELISAプレートにそれぞれ添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
4)二次抗体とのインキュベーション
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、二次抗体として、1:8000希釈のヤギ抗ヒトIgG−HRP(H+L)(ウェル当たり100μl)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)発色
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤としてのTMBをウェル当たり100μl添加し、30分間室温でインキュベーションした。
6)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
7)読み
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0083】
表6及び
図8に示される結果は、HX009−5とCD16aとの間に顕著な結合がないことを示す。
【表6】
【0084】
2.CD32aに対するHX009−5の親和性のアッセイ
HX009−5抗体(実施例1で得られた)は、HX006抗体(IgG1サブタイプ)と比較して、ELISAによりCD32aへの結合が検出された。詳細は下記に示される。
【0085】
具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
ELISAプレートを0.5μg/ml(ウェル当たり100μl)の濃度のCD32a抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
CD32a抗原で塗布したELISAプレートを1%BSA(PBSバッファで希釈)で、37℃で2時間ブロッキングし、1%Tween−20を含有する1×PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた。
3)一次抗体とのインキュベーション
HX009−5抗体を、それぞれ10μg/mlから1:5ずつ段階希釈し、7つの勾配抗体溶液を得た。7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロールを、ブロッキングしたELISAプレートにそれぞれ添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
4)二次抗体とのインキュベーション
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、1:8000希釈(ウェル当たり100μl)で、二次抗体としてのヤギ抗ヒトIgG−HRP(H+L)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)発色
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤としてのTMBをウェル当たり100μl添加し、30分間室温でインキュベーションした。
6)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
7)読み
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0086】
表7及び
図9に示される結果は、HX009−5とCD32aとの間に顕著な結合がないことを示す。
【表7】
【0087】
3.CD32bに対するHX009−5の親和性のアッセイ
HX009−5抗体(実施例1で得られた)は、HX006抗体(IgG1サブタイプ)と比較して、ELISAによりCD32bへの結合が検出された。詳細は下記に示される。
【0088】
具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
ELISAプレートを0.5μg/ml(ウェル当たり100μl)の濃度のCD32b抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
CD32b抗原で塗布したELISAプレートを1%BSA(PBSバッファで希釈)で、37℃で2時間ブロッキングし、その後1%Tween−20を含有する1×PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた。
3)一次抗体とのインキュベーション
HX009−5抗体を、それぞれ10μg/mlから1:5ずつ段階希釈し、7つの勾配抗体溶液を得た。7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロールを、ブロッキングしたELISAプレートにそれぞれ添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
4)二次抗体とのインキュベーション
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、1:8000希釈(ウェル当たり100μl)で、二次抗体としてのヤギ抗ヒトIgG−HRP(H+L)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)発色
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤としてのTMBをウェル当たり100μl添加し、30分間室温でインキュベーションした。
6)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
7)読み
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0089】
表8及び
図10に示される結果は、HX009−5とCD32bとの間に顕著な結合がないことを示す。
【表8】
【0090】
4.CD64に対するHX009−5の親和性のアッセイ
HX009−5抗体(実施例1で得られた)は、HX006抗体(IgG1サブタイプ)と比較して、ELISAによりCD64への結合が検出された。詳細は下記に示される。
【0091】
具体的な工程は、下記の通りである。
1)抗体コーティング
ELISAプレートを0.5μg/ml(ウェル当たり100μl)の濃度のCD64抗原で塗布し、4℃で一晩インキュベーションした。
2)ブロッキング
CD64抗原で塗布したELISAプレートを1%BSA(PBSバッファで希釈)で、37℃で2時間ブロッキングし、その後1%Tween−20を含有する1×PBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた。
3)一次抗体とのインキュベーション
HX009−5抗体を、それぞれ10μg/mlから1:5ずつ段階希釈し、7つの勾配抗体溶液を得た。7つの勾配抗体溶液及びブランクPBSコントロールを、ブロッキングしたELISAプレートにそれぞれ添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
4)二次抗体とのインキュベーション
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、穏やかに叩いて乾燥させた後、1:8000希釈(ウェル当たり100μl)で、二次抗体としてのヤギ抗ヒトIgG−HRP(H+L)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。
5)発色
ELISAプレートをPBSTバッファで3回洗浄し、再び穏やかに叩いて乾燥させた後、発色剤としてのTMBをウェル当たり100μl添加し、30分間室温でインキュベーションした。
6)発色の終了
ウェル当たり50μlの2MのH
2SO
4溶液を添加して、発色を終了させた。
7)読み
マイクロプレートリーダー上で、450nmの波長下で各ウェル中の溶液の吸光度を測定した。
【0092】
表9及び
図11に示される結果は、HX009−5とCD64との間に顕著な結合がないことを示す。
【表9】
【0093】
実施例4 混合リンパ球反応(MLR)による二重特異性抗体と抗PD1抗体との生物活性
混合リンパ球反応(MLR)によって、Tリンパ球を刺激して、IL−2及びIFN−γを分泌する能力は、HX009−5(実施例1で得られた)とH8との間で検出された。詳細を下記に示す。
【0094】
混合リンパ球反応では、別の個体からの樹状細胞(DC)と混合した後、T細胞(TC)を刺激し、DC提示によってIL−2及びIFN−γを分泌した。最初に、サイトカインGM−CSF及びIL−4によってDCに分化するように、血中の単球を誘導した。その後、DCは、TNFaによって刺激されて成熟した。細胞培養の上澄み中のIL−2及びIFN−γの分泌レベルは、成熟DCと異種性TCを混合して5日後に検出した。具体的には、1×10
5細胞/ウェルの濃度でのTCと1×10
4細胞/ウェルの濃度でのDCを96ウェルプレートで混合し、10M〜0.09765625nMの8つの勾配濃度の抗体を添加した。5日後、IL−2検出キットを用いて、上澄みのIL−2含有量を定量化した。
【0095】
図12は、それぞれH8抗体及びHX009−5抗体によって刺激されたTリンパ球におけるIL−2の分泌レベルを示す。
図12から分かるように、H8抗体及びHX009−5抗体は、Tリンパ球を効果的に刺激して、IL−2を分泌することができ、H8のC末端におけるリンカー−SIRPA(
118mer)との融合が、Tリンパ球を刺激してIL−2を分泌することにおける変化を抗体HX009−5にもたらさないことを示す。
【0096】
実施例5 HX009−5による赤血球凝集反応についての研究
具体的な工程は、下記の通りである。
1.ボランティアから、5mlの末梢血を5mlのヘパリンで抗凝固剤処置した管に集め、穏やかに振盪して十分に接触させた。15mlの遠心管に移し、穏やかな振盪下で、9mlのPBSと混合した後、末梢血を2100rpmで10分間遠心分離した。
2.赤血球層の上にある白血球を含む上澄みを捨て、再懸濁するために12mlのPBSを添加し、その後1500rpmで5分間遠心分離した。
3.赤血球層の上にある上澄みを捨て、再懸濁するために12mlのPBSを添加し、1500rpmで5分間遠心分離した。
4.工程3を2回繰り返した。
5.上澄みを捨てた後、1mlの赤血球懸濁液を15mlの遠心管に移し、9mlのPBSと混合し、PBS中10%の赤血球として使用時に備えて調製した。
6.PBS中10%赤血球1mlを、新しい15mlの遠心管内で9mlのPBSと混合し、使用時に備えてPBS中1%赤血球を得た。
7.様々な試験サンプルの調製
1)HX009−5を9.1mg/mlから0.9mg/mlまで希釈し、更に1:3に段階希釈し、12個の勾配濃度を得た。
2)H8を10mg/mlから0.9mg/mlまで希釈し、更に1:3に段階希釈し、12個の勾配濃度を得た。
3)ポテト(potation)レクチン抽出溶液を1:3に段階希釈し、8個の勾配濃度を得た。
4)PBSをブランクコントロールとした。
【0097】
96ウェルU底プレートのB1からG12までの各ウェルに、PBS中1%の赤血球50μl及び50
μlの試験サンプルを以下の表10に示されるパターンで添加し、5%、CO
2のインキュベーターにおいて一晩37℃でインキュベーションした。
【0098】
24時間のインキュベーションした後、ゲルイメージングアナライザーによる観察を行うために、96ウェルプレートを取り出した。表10及び
図13に示されるように、最初の4つの濃度でのポテトレクチン抽出溶液(ポジティブコントロールとして)を添加したウェルでは、明らかな赤血球凝集反応が観察され;一方、H8、HX009−5、又はPBSを様々な濃度で添加したウェルでは赤血球凝集反応は観察されず、赤血球凝集反応がHX009−5によって引き起こされていないことを示す。
【表10】
【0099】
実施例6 ヒト未分化大細胞リンパ腫(KARPAS−299)を皮下移植したMixenoモデルにおけるHX009−5の抗腫瘍有効性
ヒト未分化大細胞リンパ腫(KARPAS−299)を皮下移植したMixenoモデルにおけるH8及びHX009−5(実施例1で得られた)の抗腫瘍有効性における研究について、ヒト腫瘍移植モデルをNSGマウスで樹立した。詳細は下記に示される。
【0100】
NOD/Prkdcscid/IL2rgnullの欠損/変異によって特徴づけられるNSGマウスは、ヒトの細胞や組織に対する拒絶が殆ど存在しないので、現時点でヒトの細胞移植に最も適した免疫不全のマウスモデルとして使用される。したがって、本発明者らは、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をNSGマウスに養子的に導入することにより樹立された移植片対宿主病(GVHD)モデルにおけるHX009−5のin vivo薬力学を調査する。NSGマウスに基づくヒト腫瘍移植モデル(Mixenoモデル)によって、本発明者らは、ヒト未分化大細胞リンパ腫(KARPAS−299)を皮下移植したMixenoモデルにおけるHX009−5の抗腫瘍有効性を調査する。
【0101】
0日目に、KARPAS−299細胞を30匹のNCGマウスの右背中に皮下接種した。接種から6日目に、腫瘍体積が60mm
3の平均値に達したときに、30匹のNCGマウスを5つのグループに分け、各グループに6匹のマウスとした。ドナーAに由来するヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、尾静脈を介して各グループの3匹のマウス(「A」とマークされている)に移植し;一方、ドナーBに由来するヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、各グループの残りの3匹のマウス(「B」とマークされている)に尾静脈を介して移植した。それぞれのドナーからのPBMCを注射用PBSに懸濁した(注射量は、0.1ml/マウス)であった。
図11に示されるように、腫瘍細胞の接種から6日目、9日目、13日目、16日目、19日目、及び22日目の6回、尾静脈を介して5つのグループのマウスに、0.1mg/kg、1mg/kg、及び10mg/kgの個々の用量でのHX009−5、及びポジティブコントロールとしての10mg/kgでのH8(表11ではHX008とも示される);並びにコントロールとしての5mg/kgでのアイソフォーム抗体(ヒトIgG4)をそれぞれ投与した。治療評価は、相対腫瘍抑制率(TGI
RTV)で行い、安全性評価は体重と死亡率との変化で行った。
【表11】
注:薬物投与量は、10μl/gである。nは動物の数を表す。0日目は、腫瘍細胞が接種された日である。i.v.は、尾静脈を介した投与を表す。
【0102】
図14及び
図15は、5つのグループにおける腫瘍体積の経時的な変化を示す。PBMCが接種され、アイソフォーム抗体(ヒトIgG4)が投与されたコントロール群に対して、HX009−5又はH8の投与は、明らかな抗腫瘍有効性を示し、HX009−5の用量依存性が観察された。即ち、投与用量が多いほど、腫瘍抑制が大きくなる。同じ用量下で、HX009−5は、H8よりも更に強い抗腫瘍有効性を示し、PD1/CD47二重標的抗体がPD1単一の標的抗体より優れていることを示す。
【0103】
「実施形態」、「幾つかの実施形態」、「1つの実施形態」、「他の例」、「例」、「具体的な例」、又は「幾つかの例」など本明細書中の参照は、実施形態又は例に関連して記載される特定の部分、構造、材料、又は特徴が本開示の少なくとも1つの実施形態又は例中に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所で記載される「幾つかの実施形態においては」、「1つの実施形態においては」、「実施形態においては」、「他の実施形態においては」、「例においては」、「具体的な例においては」、又は「幾つかの例においては」などの表現の出現は、必ずしも本開示の実施形態又は例と同じものを意味しているわけではない。更に、特定の部分、構造、材料、又は特徴は、1つ以上の実施形態又は例において任意の好適な方法で組合せてもよい。
【0104】
説明的な実施形態を示し、記載してきたが、上記実施形態が、本開示を限定するように解釈されることができないこと、及び、実施形態について、本開示の範囲において、変更、代替、及び改変を行うことができることが当業者によって理解されよう。