特許第6961093号(P6961093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961093マルチダイパワーモジュールを監視する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961093
(24)【登録日】2021年10月14日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】マルチダイパワーモジュールを監視する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20211025BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20211025BHJP
   H02M 7/5387 20070101ALI20211025BHJP
【FI】
   H02M1/00 A
   G01R31/26 B
   H02M7/5387 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-539017(P2020-539017)
(86)(22)【出願日】2019年1月31日
(65)【公表番号】特表2021-511771(P2021-511771A)
(43)【公表日】2021年5月6日
(86)【国際出願番号】JP2019004320
(87)【国際公開番号】WO2019187676
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年7月14日
(31)【優先権主張番号】18165304.9
(32)【優先日】2018年3月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンチュク、ジェフリー
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−079534(JP,A)
【文献】 特許第6264491(JP,B1)
【文献】 国際公開第2007/116900(WO,A1)
【文献】 特開2014−150701(JP,A)
【文献】 特開2004−064930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00
G01R 31/26
H02M 7/5387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフブリッジスイッチ構成である2×N個のダイを備えるマルチダイパワーモジュールを監視する方法であって、
前記ダイを非導通状態に設定するステップと、
電圧を遮断している1つのダイを選択するステップと、
選択されたダイの入力寄生容量を充電するために、前記選択されたダイのゲートに電流を注入するステップと、
前記選択されたダイのゲートにおける電圧を監視するステップであって、前記電圧を監視するステップは、前記選択されたダイのゲートにおける電流の注入を開始した後の第1の所定期間の後に実行され、前記第1の所定期間の値は第1の基準電圧から求められ、前記第1の基準電圧の値は、前記マルチダイパワーモジュールのダイの閾値電圧の最小値より小さい、電圧を監視するステップと、
監視された電圧の値が電圧プラトーにあるとき、前記監視された電圧の値を記憶するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記電圧を監視するステップが第2の所定期間中に実行されたか否か、又は、前記監視された電圧が最大定義基準以上であるか否かを判断するステップを更に含み、前記電圧を監視するステップが前記第2の所定期間中に実行されていない場合、又は、前記監視された電圧が前記最大定義基準以上である場合、前記方法は、ダイの欠陥を通知するステップを更に含むことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記マルチダイパワーモジュールのダイは第1のグループ及び第2のグループに分割され、前記方法は、一方のグループのダイに対して実行された後、他方のグループのダイに対して実行されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ハーフブリッジスイッチ構成である2×N個のダイを備えるマルチダイパワーモジュールを監視する装置であって、
ダイを非導通状態に設定する手段と、
電圧を遮断している1つのダイを選択する手段と、
選択されたダイの入力寄生容量を充電するために、前記選択されたダイのゲートに電流を注入する手段と、
前記選択されたダイのゲートにおける電圧を監視する手段であって、前記電圧を監視する手段は、前記選択されたダイのゲートにおける電流の注入を開始した後の第1の所定期間の後に動作し、前記第1の所定期間の値は第1の基準電圧から求められ、前記第1の基準電圧の値は、前記マルチダイパワーモジュールのダイの閾値電圧の最小値より小さい、電圧を監視する手段と、
監視された電圧の値が電圧プラトーにあるとき、前記監視された電圧の値を記憶する手段と、
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項5】
前記装置は、前記電圧を監視する手段が第2の所定期間中に動作したか否か、又は、前記監視された電圧が最大定義基準以上であるか否かを判断する手段を更に備え、前記装置は、前記電圧を監視する手段が前記第2の所定期間中に動作していない場合、又は、前記監視された電圧が前記最大定義基準以上である場合にダイの欠陥を通知する手段を備えることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記マルチダイパワーモジュールのダイは第1のグループ及び第2のグループに分割され、前記装置は、一方のグループのうちの1つのダイを監視した後、他方のグループのダイを監視することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、パワー半導体デバイスをオンラインで監視する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体デバイスの健全性をオンラインで監視する場合には、パワー半導体デバイスの健全性の状態の指標となるデータの収集が必要である。
【0003】
一般的には、パワー半導体デバイスの内部接合部温度又はオン状態電圧を監視することに多くの開発努力がつぎ込まれてきた。
【0004】
電圧制御型パワー半導体デバイス、すなわちIGBT又はMOSFETにおける重要であるが見過ごされることが多いパラメータの1つは、閾値電圧である。
【0005】
このパラメータは、製造後にダイレベルで測定する必要があるが、ゲート過電圧、高温動作又は他のゲートストレスによって生じるゲート酸化物の絶縁破壊に関する故障メカニズムに対する指標でもある。さらに、閾値電圧の値は、ダイのパッケージングの後でも、完成した製品における機能性を確保するために重要である。
【0006】
閾値電圧Vthは、パワー半導体デバイスが電流を導通し始める電圧であるため、このパラメータを測定するためには、いくつかのオフラインの方法が存在する。
【0007】
閾値電圧は、あらかじめ決められた電流に対応するゲート電圧として定義される。しかしながら、正確な電流測定値及びゲート電圧の変化の両方を求めることが必要であるため、特にコストが考慮される場合、オンライン測定が困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、マルチダイパワーモジュールにおいて法外なコストがかかる可能性がある、ダイ整流電流タイミングから測定を切り離すオンライン監視方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、ハーフブリッジスイッチ構成である2×N個のダイを備えるマルチダイパワーモジュールを監視する方法であって、
ダイを非導通状態に設定するステップと、
電圧を遮断している1つのダイを選択するステップと、
選択されたダイの入力寄生容量を充電するために、選択されたダイのゲートに電流を注入するステップと、
選択されたダイのゲートにおける電圧を監視するステップと、
監視された電圧の値が安定したとき、監視された電圧の値を記憶するステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0010】
したがって、パワーモジュールのダイの間の単一のダイの閾値電圧は、電圧プラトー値による方法によって、かつコレクタ電流のいかなる測定も同期化も行うことなしに、測定することができ、それにより実装のコストが削減される。
【0011】
特定の特徴によれば、電圧の監視は、選択されたダイのゲートにおける電流の注入を開始した後の第1の所定期間後に実行され、第1の所定期間値は第1の基準電圧から求められ、第1の基準電圧の値は、マルチダイパワーモジュールのダイの閾値電圧の最小値より小さい。
【0012】
特定の特徴によれば、方法は、電圧の監視が第2の所定期間中に実行されたか否か、又は、監視された電圧が最大定義基準以上であるか否かを判断するステップを更に含み、電圧の監視が第2の所定期間中に実行されていない場合、又は、監視された電圧が最大定義基準以上である場合、方法は、ダイの欠陥を通知するステップを更に含む。
【0013】
したがって、マルチダイパワーモジュールのユーザは、パワーダイにおける欠陥を検出することができ、ダイの欠陥の種類を推定することができる。こうした情報に基づいて、ユーザは、クリティカルミッション/作業を成し遂げるためにパワーモジュールの動作を性能低下モードで継続するか否かを判断することができる。
【0014】
特定の特徴によれば、ダイは第1のグループ及び第2のグループに分割され、本アルゴリズムは、一方のグループのダイに対して実行された後、他方のグループのダイに対して実行される。
【0015】
したがって、測定は、ダイの2つのグループの間で連続的に交互に行うことができる。パワーモジュールを構成する全てのダイの閾値電圧は、いかなる介入も外部コマンドもなしに現場で測定することができる。
【0016】
本発明はまた、ハーフブリッジスイッチ構成である2×N個のダイを備えるマルチダイパワーモジュールを監視する装置であって、
ダイを非導通状態に設定する手段と、
電圧を遮断している1つのダイを選択する手段と、
選択されたダイの入力寄生容量を充電するために、選択されたダイのゲートに電流を注入する手段と、
選択されたダイのゲートにおける電圧を表す電圧を監視する手段と、
監視された電圧の値が安定したとき、監視された電圧の値を記憶する手段と、
を備えることを特徴とする、装置にも関する。
【0017】
したがって、パワーモジュールのダイの間の単一のダイの閾値電圧は、電圧プラトー値による方法によって、かつコレクタ電流のいかなる測定も同期化も行うことなしに、測定することができ、それにより実装のコストが削減される。
【0018】
特定の特徴によれば、電圧の監視は、選択されたダイのゲートにおける電流の注入を開始した後の第1の所定期間後に実行され、第1の所定期間値は第1の基準電圧から求められ、第1の基準電圧の値は、マルチダイパワーモジュールのダイの閾値電圧の最小値より小さい。
【0019】
特定の特徴によれば、装置は、電圧の監視が第2の所定期間中に実行されたか否か、又は、監視された電圧が最大定義基準以上であるか否かを判断する手段を更に備え、装置は、電圧の監視が第2の所定期間中に実行されていない場合、又は、監視された電圧が最大定義基準以上である場合、ダイの欠陥を通知する手段を備える。
【0020】
したがって、装置は、パワーモジュールにおける欠陥検出をパワーモジュールのユーザに通知し、ダイの欠陥の種類を推定する。こうした情報に基づいて、ユーザは、クリティカルミッション/作業を成し遂げるためにパワーモジュールの動作を性能低下モードで継続するか否かを判断することができる。
【0021】
特定の特徴によれば、ダイは第1のグループ及び第2のグループに分割され、装置は、一方のグループのうちの1つのダイを監視した後、他方のグループのダイを監視する。
【0022】
したがって、装置は、ダイの2つのグループの間で測定を連続的に交互に行い、パワーモジュールを構成する全てのダイの閾値電圧を、いかなる介入も外部コマンドもなしに現場で取得することができる。
【0023】
本発明の特徴は、例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による、マルチダイパワーモジュール及びマルチダイ監視装置を備えるシステムの一例を表す図である。
図2】本発明によるマルチダイ監視装置のアーキテクチャの一例を表す図である。
図3】本発明によるマルチダイ監視装置の入出力インターフェースの一例を表す図である。
図4】本発明によるマルチダイパワーモジュールのダイを監視するアルゴリズムの一例を表す図である。
図5】本発明によるマルチダイパワーモジュールを監視するために使用される信号を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明による、マルチダイパワーモジュールとマルチダイ監視装置とを備えるシステムの一例を表す。
【0026】
マルチダイパワーモジュール15は、S1,1〜S1,N、S2,1〜S2,Nと示す2×N個のダイを備える。マルチダイパワーモジュール15のダイは、ダイS1,1〜S1,Nが導通しており、ダイS2,1〜S2,Nが導通しておらず、それが交互である場合、ハーフブリッジスイッチ構成、すなわち、標準的動作モードにある。
【0027】
マルチダイ監視装置10は、入力信号PWM1及びPWM2を受け取り、図1には示さない増幅器を通してダイS1,1〜S1,N及びS2,1〜S2,Nを駆動する。
【0028】
より正確には、通常動作中、マルチダイ監視装置10は、信号PWM1を用いてS1,1〜S1,Nを駆動し、信号PWM2を用いてダイS2,1〜S2,Nを駆動する。
【0029】
本発明は、ハーフブリッジ構成でダイの閾値電圧を測定する手段として、ダイの寄生出力容量における蓄積された電荷を使用する。寄生出力容量は、ダイのコレクタとゲートとの間の寄生容量と、上記ダイのコレクタとエミッタとの間の寄生容量との和である。或る特定のオンライン状態の間、ハーフブリッジにおけるi=1〜NのダイS1,iは、DC電圧VDCを遮断しており、好ましい小さい又はゼロの負荷電流IoutがVoutを通過している。例えば、負荷電流は、1アンペア未満である。そして、DC電流は、i=1〜Nのうちの1つのダイS1,iのゲートを通して注入され、対向するダイS2,1〜S2,N並びにダイS1,1〜S1,i−1及びS1,i+1〜S1,Nは非導通である。注入されたDC電流は、ダイS1,iのゲート−エミッタ間容量を充電し、ダイS1,1〜S1,Nの内部出力寄生容量に蓄積されたエネルギーは、ダイS2,1〜S2,Nの出力容量に放電される。このエネルギーの放電中、ダイS1,1〜S1,Nにわたるコレクタ−エミッタ間電圧遷移、したがってダイS2,1〜S2,Nの電圧遷移により、閾値電圧の周囲でプラトーに達するダイS1,iのゲート電圧波形の遷移がもたらされる。ゲート信号に従って、同期したサンプリングの瞬間が発生し、ゲート電圧におけるプラトーの値が測定される。この技法は、DC電流注入パルスを上部ダイS1,1〜S1,N及び下部ダイS2,1〜S2,Nの間を交互に実行することによって、マルチダイシステムに拡張される。
【0030】
さらに、ゲートプラトー時間は、導通電流に従って被試験ダイS1,iの高い電圧を遮断することから低い電圧を遮断することへの遷移に関連するため、導通される電流の大きさが小さいことに起因して遷移までの時間は大きい。これにより、閾値電圧の測定に利用可能な時間が改善され、実装のコストが最小限になる。
【0031】
本発明は、ハーフブリッジ構成を必要とするが、閾値電圧の測定をトリガーするために、ダイの電源端子におけるコレクタ電流Icのいかなる測定も不要である。
【0032】
本発明の更なる改良は、実装のコストを削減するために、DC電流注入回路を含む同一の測定チェーンを採用することである。
【0033】
マルチダイパワーモジュール15は、S1,1〜S1,N及びS2,1〜S2,Nと示すダイの2つのグループを備える。ダイの第1のグループは、S1,1〜S1,Nを含む。ダイの第2のグループは、S2,1〜S2,Nを含む。ダイS1,1〜S1,Nのコレクタは、電源の正端子に並列に接続されており、ダイS1,1〜S1,Nのエミッタは、ダイS2,1〜S2,Nのコレクタにそれぞれ接続され、図1には示さない負荷に信号Voutを提供する。ダイS2,1〜S2,Nのエミッタは、電源の負端子に並列に接続されている。各ダイS1,1〜S1,N、S2,1〜S2,Nに対して、明確にするために図1には示さないダイオードは、ダイのエミッタとコレクタとの間に接続されている。より正確には、ダイオードのアノードは、ダイのエミッタに接続され、ダイオードのカソードはダイのコレクタに接続されている。
【0034】
本発明によれば、マルチダイ監視装置は、
ダイを非導通状態に設定する手段と、
電圧を遮断している1つのダイを選択する手段と、
選択されたダイの入力寄生容量を充電するために、選択されたダイのゲートに電流を注入する手段と、
選択されたダイのゲートにおける電圧を表す電圧を監視する手段と、
監視された電圧の値が安定したとき、監視された電圧の値を記憶する手段と、
を備える。
【0035】
図2は、本発明によるマルチダイ監視装置のアーキテクチャの一例を表す。
【0036】
マルチダイ監視装置10は、例えば、バス201によって合わせて接続されたコンポーネントに基づくアーキテクチャと、図4に開示するようなプログラムによって制御されるプロセッサ200とを有する。
【0037】
バス201は、プロセッサ200を、リードオンリーメモリROM202、ランダムアクセスメモリRAM203及び入出力インターフェースI/O IF205に連結する。
【0038】
メモリ203は、変数と、図4に開示するようなアルゴリズムに関するプログラムの命令とを受け取るように意図されたレジスタを含む。
【0039】
プロセッサ200は、入出力I/O IF205を介して、PWM1信号及びPWM2信号を受け取り、i=1〜N及びj=1又は2のダイSj,iに対するゲート電圧Vgj,iを出力し、電流Imを各ダイSj,iに注入する。
【0040】
リードオンリーメモリ又は場合によりフラッシュメモリ202は、図4に開示するようなアルゴリズムに関するプログラムの命令を収容し、そのような命令は、マルチダイ監視装置10に電源が投入されると、ランダムアクセスメモリ203に転送される。
【0041】
マルチダイ監視装置10は、PC(パーソナルコンピュータ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)若しくはマイクロコントローラ等のプログラマブルコンピューティングマシンによる、命令若しくはプログラムのセットの実行により、ソフトウェアで実装するか、又は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等、マシン若しくは専用コンポーネントにより、ハードウェアで実装することができる。
【0042】
言い換えれば、マルチダイ監視装置10は、マルチダイ監視装置10が、図4に開示するようなアルゴリズムに関するプログラムを実行することができるようにする、回路、又は回路を備える装置を備える。
【0043】
図3は、本発明によるマルチダイ監視装置の入出力インターフェースの一例を表す。
【0044】
入出力インターフェース205は、各ダイに対して、3つのトランジスタQ1〜Q3と、2つの抵抗器Rg1及びRg2と、ダイオードD1と、アナログデジタル変換器ADCと、電流源Imとを備える。
【0045】
一変形では、実装のコストを削減するために、アナログマルチプレクサを使用して、ダイS1,1〜S1,Nに対して、ダイオードD1、アナログデジタル変換器ADC及び電流源Imを同じとすることができ、ダイS2,1〜S2,Nに対して、別のダイオード、別のアナログデジタル変換器及び別の電流源を相互的にすることができる。
【0046】
トランジスタQ1はP型MOSFETであり、トランジスタQ2及びQ3はN型MOSFETである。
【0047】
トランジスタQ1のソースは、正電源Vddに接続されている。トランジスタQ1のドレインは、抵抗器Rgの第1の端子に接続されている。
【0048】
抵抗器Rgの第2の端子は、抵抗器Rgの第1の端子にかつダイSj,iのゲートに接続されている。
【0049】
抵抗器Rgの第2の端子は、トランジスタQ2のドレインに接続されている。
【0050】
トランジスタQ2のソースは、トランジスタQ3のドレインに、ダイオードD1のアノードに、電流源Imの正端子に、かつアナログデジタル変換器ADCの入力に接続されている。
【0051】
トランジスタQ3のソースは、負電源Vssに、電流源Imの負端子に、かつアナログデジタル変換器ADCの入力に接続されている。
【0052】
トランジスタQ1及びQ2のゲートは信号PWMjに接続されている。
【0053】
トランジスタQ3のゲートは、ダイSj,iのゲートへの電流注入を可能にする信号Enj,iに接続されている。
【0054】
ダイオードD1のカソードは基準電圧Vmaxに接続されている。
【0055】
図4は、本発明によるマルチダイパワーモジュールのダイを監視するアルゴリズムの一例を表す。
【0056】
本アルゴリズムは、プロセッサ200によって実行される一例で開示されている。
【0057】
ステップS400において、プロセッサ200は、監視すべきダイ、例えばダイS1,1を選択する。
【0058】
ダイS1,2〜S1,N及びS2,1〜S2,Nは導通していない。
【0059】
次のステップS401において、プロセッサ200は、信号En1,1をハイレベルに設定し、PWM1をローレベルに設定することにより、ダイS1,1のゲートへの電流注入をアクティベートする。
【0060】
本発明によれば、通常は5mA〜30mA程度であるImの大きさを有する電流が、1つのダイS1,1のゲートに、それがオフ状態にあり、DC電圧VDCを遮断しているときに注入される。寄生入力容量Ciesは、ダイのコレクタとゲートとの間の寄生容量と、ダイのゲートとエミッタとの間の寄生容量との和である。電流注入が開始すると、ゲート電圧Vge1,1は、以下の式に従って、ダイS1,1の寄生入力容量Cies1,1及び時間に従って上昇する。
【数1】
【0061】
電流注入は、図5におけるt0で開始する。
【0062】
図5は、本発明によるマルチダイパワーモジュールを監視するために使用される信号を表す。
【0063】
図5では、注入電流Imと、ダイS1,1のゲート−エミッタ間の電圧に対応するゲート電圧Vge1,1と、ダイS1,1〜S1,Nのコレクタ−エミッタ間電圧に対応する電圧Vce1,iと、ダイS2,1〜S2,Nのコレクタ−エミッタ間電圧に対応するVce2,iとを表す。
【0064】
同じステップにおいて、プロセッサ200は、カウンター「TMR」を初期化し、記憶用の2つのメモリレジスタ「REG(1)」及び「REG(0)」はゼロに設定される。
【0065】
次のステップS402において、プロセッサ200は、タイマーTMRが第1の所定時間値t1に等しいか否かを判断する。
【0066】
プロセッサ200のクロック周波数で、タイマー「TMR」は、第1の所定時間値t1まで増大する。第1の所定時間値t1は、ダイデータシートに与えられたダイの閾値電圧の最小値より厳密に小さい第1の基準電圧Vと、注入された測定電流に基づく入力容量をこの電圧まで充電する時間とに基づく。容量値Cies1,1=15nFを有する基準IGBT、30mAの測定電流、負電源Vss=0V、及び第1の基準電圧V=2Vに基づく、1μsに等しい第1の所定時間値「t1」の計算の一例を以下に示す。
【数2】
【0067】
閾値電圧Vthに達すると、ダイS1,1は、導通を開始し、ハーフブリッジにおいて、ダイS1,iの寄生出力容量CGE1,1〜CGE1,N、CCE1,1〜CCE1,Nにおいて蓄積されたエネルギーを、ダイS1,1〜S1,Nの寄生出力容量CGC2,1〜CGC2,N、CCE2,1〜CCE2,Nに放電する。ゲート電圧が閾値電圧をわずかにのみ上回るため、ダイS1,1における飽和電流(Is)は低く、それにより、ダイS1,1におけるピークコレクタ電流Icは低い値に制限される。この段階は、図5における時点t1に対応する。
【0068】
時間TMRがt1に等しいとき、プロセッサ200は、ステップS403に進む。
【0069】
t1の後、アナログデジタル変換器ADCは、連続サンプリングを開始する。
【0070】
ステップS403において、プロセッサ200は、レジスタREG(0)にレジスタREG(1)の内容を設定し、レジスタREG(1)にVmeasのサンプリングされた値を格納する。サンプリングされた値Vmeasの値は、Vge1,1+Vssの値に近いことに留意されたい。
【0071】
電圧Vge1,1が閾値電圧に達すると、ダイS1,2〜S1,Nのダイ出力寄生容量Coes1,1〜Coes1,Nが、ダイS1,1にわたって電圧の放電を開始し、それにより、変位電流がダイS1,1のゲートの入力寄生容量に流れ込む。
【0072】
したがって、図5におけるt2に対応して、ゲート電圧波形におけるプラトーが現れる。飽和電流が低いため、プラトー電圧は、以下の式に従って、閾値電圧値におよそ等価である。
【数3】
【0073】
ここで、gfsはダイの相互コンダクタンス値であり、IoutはVoutを通って流れる電流である。
【0074】
この場合、ゲート電圧のサンプルが作成された場合、測定された値は、ダイS1,1の閾値電圧測定値に近い。さらに、プロセスは、一定温度に対して繰返し可能であり、又は温度を補償するため、閾値電圧測定値は、実際の差を補償するようにデジタルで補正することができる。
【0075】
電流Is+Ioutが小さいため、プラトーの長さは、寄生出力容量に蓄積され、出力容量を放電する電荷を、完全に除去するための時間に関連する。プラトーの長さは、数マイクロ秒程度とすることができ、それにより、低サンプリングレート周波数アナログデジタル変換器の使用が可能となり、実装のコストが削減される。
【0076】
ステップS404において、プロセッサ200は、レジスタREG(1)及びREG(0)の内容を比較することにより、測定された電圧Vmeasが安定しているか否かを判断する。
【0077】
測定された電圧Vmeas電圧が安定している場合、プロセッサ200はステップS405に進み、安定していない場合は、プロセッサ200はステップS406に進む。
【0078】
ステップS405において、プロセッサ200は、「REG(1)」内の値をVthの値、すなわち閾値電圧に設定し、ステップS408に進む。
【0079】
測定された電圧Vmeasが安定した後、電流注入をオフにすることができ、図5における状態t3に対応して、ゲート−エミッタ間容量CGE1,1は放電される。このように、ハーフブリッジの標準的な動作を再度確立することができる。
【0080】
対向するデバイス、すなわちS2,1において、次の閾値電圧測定を行うことができ、本アルゴリズムを用いて無限に測定を繰り返すことができる。
【0081】
ステップS406において、プロセッサ200は、タイマーTMRが最大所定時間値tmax以上であるか否かを判断し、レジスタREG(1)に格納された電圧Vmeas(TMR)が、最大定義基準Vmaxと比較される。
【0082】
タイマーTMRが最大所定時間値tmaxより大きいか、又はVmeas(TMR)が最大定義基準Vmax以上である場合、プロセッサ200はステップS407に進む。そうでない場合、プロセッサ200はステップS403に戻る。
【0083】
最大定義基準Vmaxは、測定閾値電圧に対する許容限界と、閾値電圧が通常4V〜6Vであるダイに対する最大値、すなわち10Vとに基づく。最大所定時間値tmaxは、最大定義基準Vmaxによって求められる。以下のように、30mAの測定電流、Vmax=10Vの最大基準電圧、及びCies1,1=15nFの入力容量での計算の一例を与える。
【数4】
【0084】
このため、本例では、ADCにおける連続サンプリングは、4μsごととした。
【0085】
ステップS407において、ダイS1,1の閾値電圧の測定が失敗したことを通知するために、フェイルフラグが生成される。タイマーTMRが最大所定時間値より大きい場合、フェイルは、ダイS1,1のゲート−エミッタ間の短絡モードにおける欠陥を示す。そうではなく、Vmeas(TMR)が最大定義基準Vmax以上である場合、フェイルは、ダイS1,1のゲート−エミッタ間又はコレクタ−エミッタ間の開回路モードにおける欠陥を示す。
【0086】
次いで、プロセッサ200はステップS408に進む。
【0087】
ステップS408において、次いで、ゲート注入回路がディスエーブルとされ、ゲートは、即座に放電されて、通常動作の開始が可能になる。
【0088】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5