(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1制御部は、前記複数の第1同期信号のうちから、前記特定第1同期信号に対応しないものを、前記第1制御周期を同期させる際の対象の信号から除くように制御して、
前記第2制御部は、前記複数の第2同期信号のうちから、前記特定第2同期信号に対応しないものを、前記第2制御周期を同期させる際の対象の信号から除くように制御する、
請求項1に記載のドライブシステム。
前記マスタ装置は、前記基準周期のなかの前記第1周期ごとに前記第1送信同期信号と前記基準周期のなかの前記第1周期を識別するための識別情報とを前記第1ドライブ装置宛に送信し、前記基準周期のなかの前記第1周期ごとに前記第2送信同期信号と前記識別情報とを前記第2ドライブ装置宛に送信し、
前記第1制御部は、前記識別情報を用いて、複数回の前記第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第1同期信号のうちから、前記基準周期のなかで特定の前記第1送信同期信号が生成された時に関わる第1基準タイミングを決定し、前記第1基準タイミングに対応する前記特定第1同期信号に前記第1制御周期が同期するように前記第1制御周期の位相を調整し、
前記第2制御部は、前記識別情報を用いて、複数回の前記第2送信同期信号の受信によって得られた複数の第2同期信号のうちから、前記基準周期のなかで特定の前記第2送信同期信号が生成された時に関わる第2基準タイミングを決定し、前記第2基準タイミングに対応する前記特定第2同期信号に前記第2制御周期が同期するように前記第2制御周期の位相を調整する、
請求項1に記載のドライブシステム。
前記マスタ装置は、前記識別情報を付加した前記第1送信同期信号を前記第1ドライブ装置宛に送信し、前記識別情報を付加した前記第2送信同期信号を前記第2ドライブ装置宛に送信し、
前記第1制御部は、前記第1送信同期信号に付加されていた前記識別情報の値が予め値が定められた定数値である場合に、前記第1基準タイミングに送信された前記特定の第1送信同期信号に対応する前記特定第1同期信号に同期するように前記第1制御周期の位相を調整し、
前記第2制御部は、前記第2送信同期信号に付加されていた前記識別情報の値が予め値が定められた定数値である場合に、前記第2基準タイミングに送信された前記特定の第2送信同期信号に対応する前記特定第2同期信号に同期するように前記第2制御周期の位相を調整する、
請求項4に記載のドライブシステム。
前記第1制御部は、前記第1基準タイミングから第1時間遅らせた第1調整タイミングにおいて、前記特定第1同期信号に同期するように前記第1制御周期の位相を調整し、
前記第2制御部は、前記第2基準タイミングから第2時間遅らせた第2調整タイミングにおいて、前記特定第2同期信号に同期するように前記第2制御周期の位相を調整する、
請求項4に記載のドライブシステム。
前記第1位相比較器は、前記比較の結果に基づいて前記第1制御周期の位相の基準と前記特定第1同期信号の位相の基準との偏差が小さくなるように前記第1カウントの計数値を補正するための補正値を生成する
請求項11に記載のドライブシステム。
前記第2位相比較器は、前記比較の結果に基づいて前記第2制御周期の位相の基準と前記特定第2同期信号の位相の基準との偏差が小さくなるように前記第3カウントの計数値を補正するための補正値を生成する
請求項13に記載のドライブシステム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のドライブシステムを、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、揃速制御を行うドライブシステムを単にドライブシステムと呼ぶ。また、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それらの構成の重複する説明は省略する場合がある。なお、電気的に接続されることを、単に「接続される」ということがある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のドライブシステム1の構成図である。
【0009】
ドライブシステム1は、例えば、マスタ装置10と、第1ドライブ装置31から第4ドライブ装置34とを備える。第1電動機21から第4電動機24は、ドライブシステム1の制御対象の電動機の一例である。
【0010】
図1に、ドライブシステム1に関わる製造設備の一例を併せて示す。
図1に示された製造設備は、例えば、対象物を搬送させるための第1圧延スタンドST1から第4圧延スタンドST4を備える。第1圧延スタンドST1には第1電動機21が設けられ、第2圧延スタンドST2には第2電動機22が設けられ、第3圧延スタンドST3には第3電動機23が設けられ、第4圧延スタンドST4には第4電動機24が設けられている。第1圧延スタンドST1から第4圧延スタンドST4は、第1電動機21から第4電動機24の動力によって駆動される。
【0011】
第1電動機21は、第1ドライブ装置31によって駆動される。第2電動機22は、第2ドライブ装置32によって駆動される。第3電動機23は、第3ドライブ装置33によって駆動される。第4電動機24は、第4ドライブ装置34によって駆動される。第1電動機21から第4電動機24を区別しない場合には、単に電動機20という。第1ドライブ装置31から第4ドライブ装置34を区別しない場合には、単にドライブ装置30という。各ドライブ装置30が各電動機20を同時に稼働させることにより、各電動機20が出力する動力によって、第1圧延スタンドST1から第4圧延スタンドST4が夫々駆動される。これにより、第1方向に比較的長い対象物を、その対象物の延伸方向(第1方向)に少なくとも搬送させる。各ドライブ装置30が各電動機20を同時に稼働させることとは、各ドライブ装置30を並列に制御して各電動機20を稼働させる場合、或いは、各ドライブ装置30を連携させて各電動機20を稼働させる場合が含まれる。この製造設備は、例えば、鋼鈑(対象物)の圧延工程に適用してよい。或いは、ドライブシステム1は、これに制限されず、紙などの製造工程に適用してもよい。
【0012】
マスタ装置10(上位のコントローラ)は、ネットワークNWを通じて、指令値を各ドライブ装置30に送り、指令値を用いて各ドライブ装置30を夫々制御することにより、各電動機20による対象物の搬送量と搬送速度を調整する。マスタ装置10は、各ドライブ装置30に、各々電動機20の回転速度を調整(揃速)させることで、対象物の搬送状態を良好に保つ。ネットワークNWは、例えば、有線LAN(Local Area Network)である。実施形態のネットワークNWは、マスタ装置10と各ドライブ装置30とをバス型に接続する。ネットワークNWの種類は、これに制限されることなく、接続形態が互いに異なる他の種類のものを適宜選択してもよい。マスタ装置10と各ドライブ装置30は、ネットワークNWを通じて、各種情報をパケットにして通信する。
【0013】
図2を参照して、マスタ装置10について、より具体的な一例について説明する。
図2は、第1の実施形態のマスタ装置10の構成図である。
【0014】
マスタ装置10は、例えば、インタフェースユニット11(
図2内の記載はIF。)と、カウンタ13と、割り込み信号生成ユニット14(
図2内の記載はINTR−PROC。)と、記憶部15(
図2内の記載はSTRAGE。)と、制御部本体16(
図2内の記載はM_CONT。)とを備える。
【0015】
インタフェースユニット11は、ネットワークNWを通して各ドライブ装置30と通信して、マスタ装置10が提供する各種情報を、制御部本体16から受けて各ドライブ装置30宛に送信する。
【0016】
カウンタ13は、
図2に示されていないオシレーターから供給される固定周期の信号の波数を計数し、制御部本体16が離散時間制御に用いるクロックを制御部本体16に供給する。カウンタ13は、クロックを所定の数で分周して第1周期のMクロック信号を生成し、生成された第1周期のMクロック信号を、割り込み信号生成ユニット14に供給する。これにより、割り込み信号生成ユニット14による割り込み周期が実行される。
【0017】
割り込み信号生成ユニット14は、カウンタ13から供給されるMクロック信号に係る割り込み信号を発生して、制御部本体16に供給する。
標準的な長さは、設計的に規定されるものであり、実際の第1周期は、設計的に許容される範囲で変動することが許容される。この変動分が含まれた第1周期を固定周期という。
【0018】
記憶部15は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。記憶部15は、制御部本体16を機能させるための各種設定情報と、OSなどの基本プログラムと、アプリケーションプログラムとを格納するための記憶領域が割り当てられる。
【0019】
制御部本体16は、インタフェースユニット11と、記憶部15と共に、
図2に示されていないバスに接続されている。
【0020】
制御部本体16は、ソフトウエアプログラムを実行する第1プロセッサを含む。第1プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)と呼ばれることがある。制御部本体16の第1プロセッサが実行するソフトウエアプログラムは、予め記憶部15に格納されていてもよいし、
図2に示されていない外部装置や可搬型記憶媒体などから、或いはネットワークNWを介してダウンロードされてもよい。制御部本体16は、ソフトウエアプログラムを実行することで、以下に示す制御部本体16の全部の機能と、割り込み信号生成ユニット14との一部の機能を形成する。
【0021】
制御部本体16は、各ドライブ装置30を制御するための指令値COM_iを生成して、そしてこの指令値COM_iを各ドライブ装置30に供給する。「i」は、整数であり、第1周期に関連付けられた識別情報iに対応する。例えば、制御部本体16は、割り込み信号生成ユニット14から供給される割り込み信号を検出すると、ドライブ装置30ごとの指令値COM_iを、その第1周期ごとに生成して、ドライブ装置30ごとの指令値COM_iを、予め規定された順に従い各ドライブ装置30に供給する。例えば、制御部本体16は、全てのドライブ装置30に対する指令値COM_iを、各第1周期のなかでそれぞれ供給する。
【0022】
制御部本体16は、各ドライブ装置30側の制御周期を同期させるために、第1周期の複数倍の期間を周期にした基準周期を利用する。制御部本体16は、基準周期内の各第1周期を一意に識別するための識別情報iを各第1周期に関連付ける。例えば、制御部本体16は、基準周期の起点側の識別情報iを0にして、それ以降の各第1周期に関連付けた識別情報iの値を順に単調に増加させる。制御部本体16は、各ドライブ装置30宛に送る情報(パケット)に、この識別情報iを付与して送付する。
【0023】
マスタ装置10は、各ドライブ装置30を揃速するための同期信号(例えば、第1送信同期信号と呼ぶ。)を第1周期ごとに生成する。その後、マスタ装置10は、第1周期ごとにパケット化した第1送信同期信号を第1ドライブ装置31から第4ドライブ装置34に供給する。
【0024】
制御部本体16は、第1送信同期信号に各第1周期に関連付けた識別情報iの値を付与して送信する。制御部本体16は、各ドライブ装置30宛に共通の第1送信同期信号を送付する。なお、制御部本体16は、各ドライブ装置30に対する指令値COM_iと第1送信同期信号とを分けて送信してもよく、指令値COM_iと第1送信同期信号とを纏めて送信してもよい。
【0025】
図3Aと
図3Bを参照して、各ドライブ装置30について、より具体的な一例について説明する。
図3Aは、第1の実施形態の第1ドライブ装置31の構成図である。
【0026】
第1ドライブ装置31は、例えば、第1電力変換器311と、第1制御部312と、第1通信処理ユニット313とを備える。第1電力変換器311は、対象物を搬送させるための第1電力を第1電動機21の巻線(不図示)に供給する。
【0027】
直流電力POWを用いて交流電動機の電動機20を制御するためには、第1電力変換器311は、所謂インバータとして直流電力POWを交流電力に変換する。上記は、一例であり、これに制限されない。例えば、交流電力POWを用いて直流電動機の電動機20を制御するためには、第1電力変換器311は、所謂コンバータとして交流電力POWを直流電力に変換する。第1電力変換器311と第2電力変換器321の仕様は、電動機20の仕様と、電源の仕様とにより決定されるため、上記以外の種類の電力変換器であってもよい。以下の説明では、電動機20が交流電動機である場合について説明する。
【0028】
第1電力変換器311(
図3A内の記載はPC。)は、例えば
図3Aに示されていない複数の半導体スイッチとその駆動回路とを含み、例えば、複数の半導体スイッチがフルブリッジ型又はハーフブリッジ型に形成されている。第1電力変換器311の回路形式は、これに制限されることなく適宜変更してよい。複数の半導体スイッチの種別は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とFET(Field-Effect Transistor)の何れかであってよく、その種別に制限されることなく、その他の種別の半導体スイッチを適用してもよく、ダイオードを適宜組み合わせてもよい。
【0029】
第1制御部312は、第1電力変換器311を制御する。
第1制御部312は、例えば、第1制御部本体3121(
図3A内の記載はS_CONT。)と、第1割り込み信号生成ユニット3122(
図3A内の記載はINTR。)と、位相調整ユニット3123(
図3A内の記載はPA_UNIT。)と、比較器3124とを備える。
【0030】
第1制御部本体3121は、マスタ装置10から提供される指令値COM_iに従って、第1電動機21を駆動させるための第1のゲート信号GPを生成し、そしてこの第1のゲート信号GPを第1電力変換器311に供給する。例えば、第1制御部本体3121は、第1電動機21の軸の位置の情報と、第1電力変換器311の出力状態の情報とを、フィードバック制御の帰還量に用いた離散時間制御により、第1のゲート信号GPを生成してもよい。第1制御部本体3121は、後述する第1割り込み信号生成ユニット3122から供給される割り込み信号を検出すると、第1電動機21の駆動に関する制御のための処理を起動して、そして起動した処理を、離散時間制御の1又は複数の制御周期のなかで実行する。例えば、第1制御部本体3121は、後述する第1クロック信号を用いて、第1クロック信号の周期に同期する離散時間制御によって第1電力変換器311を制御するための処理(第1処理)を実施するとよい。
【0031】
第1割り込み信号生成ユニット3122は、標準的な長さに調整された間隔で割り込み信号を生成して、第1制御部本体3121に供給する。標準的な長さに調整された期間を第1制御周期と呼ぶ。標準的な長さは、設計的に規定されるものであり、実際の第1制御周期は、設計的に許容される範囲で変動することが許容される。
【0032】
比較器3124は、識別情報iを用いて、マスタ装置10の第1周期を識別した結果を論理値で出力する。比較器3124は、識別情報iの値から、マスタ装置10の第1周期が、ユーザによって定められた所望の周期であると判定したときに、換言すると識別情報iが所望の値であるときに論理1を出力し、マスタ装置10の第1周期が所望の周期でないときに論理0を出力する。
【0033】
位相調整ユニット3123は、第1制御部本体3121が離散時間制御に用いる第1クロックを第1制御部本体3121に供給し、第1制御周期の元となる第2クロックを第1割り込み信号生成ユニット3122に供給する。位相調整ユニット3123は、例えば、マスタ装置10から供給される第1送信同期信号に係るタイミング情報と、比較器3124の比較結果とに基づいて、第2クロックが標準的な長さになるように調整する。第1クロックと第2クロックの生成に関することを含めた位相調整ユニット3123の詳細について後述する。
【0034】
第1通信処理ユニット313は、ネットワークNWを通してマスタ装置10と通信して、マスタ装置10から取得した各種情報を、第1制御部312に供給する。
【0035】
例えば、第1通信処理ユニット313は、インタフェースユニット3131(
図3A内の記載はIF。)と、抽出処理ユニット3133(
図3A内の記載はEXTR。)とを備える。
【0036】
インタフェースユニット3131は、ネットワークNWに接続されていて、ネットワークNWを通してマスタ装置10と通信することで、マスタ装置10が送信する各種情報を取得する。マスタ装置10が送信する各種情報には、マスタ装置10が第1ドライブ装置31に指令する指令値COM_iに関する情報と、マスタ装置10の制御周期に関する識別情報iとが含まれる。
【0037】
抽出処理ユニット3133は、インタフェースユニット3131からマスタ装置10が送信する各種情報を取得して、取得した情報を抽出して、抽出した情報をそれぞれの供給先に提供する。
【0038】
抽出処理ユニット3133は、マスタ装置10が送信した第1送信同期信号のパケットに付与されていた識別情報i(パケットを送信した制御周期を示す識別情報iのこと。)と、そのパケットを受信したタイミングを示す第1同期信号(
図3A内の記載はSYNC_S1。)とを位相調整ユニット3123に供給する。
【0039】
例えば、比較器3124の第1入力aには、任意の整数、例えば0が設定され、第2入力bには、第1通信処理ユニット313からマスタ装置10の制御周期を識別するための識別情報iが供給される。この場合、比較器3124は、識別情報iが0であるときに、マスタ装置10の制御周期が0であることを検出し、論理1を出力する。
【0040】
上記のように、第1制御部312は、抽出処理ユニット3133が出力する第1同期信号と識別情報iとの両方を得ることができる。
【0041】
図3Bに示す第2ドライブ装置32について説明する。
図3Bは、第1の実施形態の第2ドライブ装置32の構成図である。
図3Bに示す第2ドライブ装置32は、例えば、第2電力変換器321と、第2制御部322と、第2通信処理ユニット323とを備える。
【0042】
第2電力変換器321は、対象物を搬送させるための第2電力を第2電動機22の巻線(不図示)に供給する。第2制御部322は、第2電力変換器321を制御する。第2通信処理ユニット323は、マスタ装置10と通信する。なお、第2電力変換器321と、第2制御部322と、第2通信処理ユニット323は、前述の第1電力変換器311と、第1制御部312と、第1通信処理ユニット313とに対応する。第2電力変換器321と、第2制御部322と、第2通信処理ユニット323は、前述の第1電力変換器311と、第1制御部312と、第1通信処理ユニット313と同様の構成にするとよい。第2ドライブ装置32の符号を第1ドライブ装置31の符号の100の桁の値を代えた同様の符号を付し、これらについての詳細な説明を省略する。
【0043】
図4を参照して、第1ドライブ装置31による速度調整処理について説明する。
図4は、第1の実施形態の第1ドライブ装置31による速度調整処理のフローチャートである。例えば、第1ドライブ装置31の第1制御部312は、速度調整処理として以下の処理を実施する。
【0044】
第1制御部312は、マスタ装置10が送信した第1送信同期信号と、基準周期内の各第1周期を識別するための識別情報iとを受信する(ステップS12)。
【0045】
第1制御部312は、識別情報iの値が定数Cに等しいか否かを判定する(ステップS16)。定数Cの値は、予め定められていて、例えば、その値が0であってよい。
【0046】
識別情報iの値が定数Cに等しくない場合には、第1制御部312は、一連の処理を終える。識別情報iの値が定数Cに等しい場合には、第1制御部312は、偏差Xを算出する(ステップS18)。例えば、偏差Xとは、マスタ装置10の基準周期の位相と、第1制御部312の位相の位相差のことである。
【0047】
第1制御部312は、偏差Xの絶対値が、予め定められた閾値THよりも小さいか否かを判定する(ステップS20)。偏差Xの絶対値が閾値THよりも小さい場合には、第1制御部312は、一連の処理を終える。
【0048】
偏差Xの絶対値が閾値THを超える場合には、第1制御部312は、偏差Xに基づいて、割り込みカウンタの積算値Yを算出する(ステップS22)。例えば、上記の閾値THは、0近傍の正の実数である。
【0049】
次に、第1制御部312は、記憶部314(
図8)の記憶領域内の変数領域に格納されている割り込みカウンタの現在値を、算出した割り込みカウンタの積算値Yに変更するために、その変数領域に積算値Yを書き込んで更新する(ステップS24)。なお、第1カウンタ31232は、ステップS24の処理とは独立に、上記の変数領域の値を逐次更新する。
【0050】
第1制御部312は、以上の処理を実施することにより、第1ドライブ装置31をマスタ装置10に同期させる。
【0051】
なお、第2ドライブ装置32の第2制御部322は、
図4に示した第1制御部312の処理と同様の処理を実施することにより、第2ドライブ装置32をマスタ装置10に同期させることが可能になる。
【0052】
以下、各ドライブ装置30の制御周期を、マスタ装置10が供給するタイミングに同期させる制御について説明する。
【0053】
図5と
図6を参照して、実施形態との対比のために、先に比較例について説明する。
図5は、第1比較例のマスタ装置#Mとドライブ装置#11、#12の制御周期の位相関係について説明するための図である。第1比較例のマスタ装置#Mとドライブ装置#11、#12の制御周期は互いに等しい長さにある。
【0054】
図5のなかの第1段目にマスタ装置#Mの制御周期に関する三角波(Ma)と矩形波(Mb)とを示し、
図5のなかの第2段目にドライブ装置#11の制御周期に関する三角波(11a)と矩形波(11b)とを示し、
図5のなかの第3段目にドライブ装置#12の制御周期に関する三角波(12a)と矩形波(12b)とを示す。
【0055】
例えば、
図5のなかの第1段目の三角波(Ma)は、マスタ装置#Mが制御に利用するクロック(又はステップ)の計数値を示す。例えば、マスタ装置#Mのカウンタ(不図示)は、検出したクロックの個数を計数し、計数値を0からMAX#Mまでの値で示す。カウンタは、カウンタの計数値が順に増えてMAX#Mに達すると、その次のクロックを検出したときに計数値を0にする。例えば、計数値を0にするときに、マスタ装置#Mは、定周期の割り込み処理を実行する。この割り込み処理のタイミングを矩形波(Mb)で示す。
マスタ装置#Mは、
図5のなかの第1段目の矩形波(Mb)を、パルスMP1からMP4を割り込み処理のトリガに利用して、これに係る処理をそれぞれの制御周期の中で実行する。
【0056】
図5のなかの第2段目と第3段目の三角波と矩形波の説明は、
図5のなかの第1段目の三角波と矩形波の説明と同様であり、この説明を参照してよい。なお、ドライブ装置#11のクロックの計数値が0からMAX#11になる点と、ドライブ装置#12のクロックの計数値が0からMAX#12になる点と、ドライブ装置#11と#12がパルスSP1からSP4を割り込み処理のトリガにそれぞれ利用する点が異なる。
【0057】
ここで、
図5のなかの第1段目の矩形波(Mb)と
図5のなかの第2段目の矩形波(11b)とを対比すると、その第1段目のパルスMP1からMP4に対応する第1から第4の制御周期の時間軸方向の位置が、その第2段目のパルスSP1からSP4に対応する第1から第4の制御周期の時間軸方向の位置に揃っている。この状態は、マスタ装置#Mの制御周期の位相と、ドライブ装置#11の制御周期の位相に位相差が生じていない状態にあることを示している。
【0058】
これに対して、
図5のなかの第1段目の矩形波(Mb)と
図5のなかの第3段目の矩形波(12b)とを対比すると、その第1段目のパルスMP1からMP4に対応する第1から第4の制御周期の時間軸方向の位置と、その第3段目のパルスSP1からSP4に対応するの第1から第4の制御周期の時間軸方向の位置とが互いにずれている。この状態は、マスタ装置#Mの制御周期の位相と、ドライブ装置#12の制御周期の位相に位相差が生じている状態にあることを示している。
【0059】
このような状態にあると、例えば、マスタ装置#Mが、時刻ta1に、ドライブ装置#11とドライブ装置#12とに速度変更の指令を送り、ドライブ装置#11とドライブ装置#12のそれぞれが、その指令を同時に受信できると仮定しても、この指令を処理する制御周期の処理を起動させる時刻にずれが生じる。これは、
図5に示すようにドライブ装置#11の制御周期とドライブ装置#12の制御周期とに位相差が生じているために生じる。例えば、
図5の各段の矩形波(Mb)、(11b)、及び(12b)にそれぞれ付した網掛けは、時刻ta1に送信された速度変更の指令を各ドライブ装置30がそれぞれ処理する制御周期を示す。このように互いの制御周期に位相差が生じていると、各電動機に与える電力を切り替える時刻にもずれが生じることになる。この時間軸方向のずれの最大値は、ドライブ装置#11とドライブ装置#12に共通の制御周期の長さになる。そのため、第1比較例のドライブ装置#11とドライブ装置#12は、互いの同期がとれていないと、それぞれの制御周期の位相差の影響を軽減しきれないことがあり、揃速性を確保しにくいことがあった。
【0060】
図6を参照して、第2比較例のマスタ装置とドライブ装置の制御周期の長さが互いに異なるときの動作について説明する。
図6は、第2比較例のマスタ装置の制御周期の長さとドライブ装置の制御周期の長さとが互いに異なるときの動作について説明するための図である。この
図6に示すマスタ装置の制御周期の長さとドライブ装置の制御周期の長さが互いに異なる。そのために、この第2比較例のマスタ装置の制御周期とドライブ装置の制御周期とが揃うことがないことにより、制御周期の位相差の影響を軽減させることができず、揃速性を改善することができなかった。
【0061】
図7を参照して、マスタ装置10と第1ドライブ装置31と第2ドライブ装置32の組み合わせについて説明する。
図7は、第1の実施形態のマスタ装置10と第1ドライブ装置31と第2ドライブ装置32の組み合わせたときの動作について説明するための図である。実施形態に示した通り、マスタ装置10の制御周期(第1周期)の長さは、第1ドライブ装置31の第1制御周期の長さと互いに異なり、第2ドライブ装置32の第2制御周期の長さと互いに異なる。
【0062】
図7のなかの第1段目にマスタ装置10の制御周期に関する三角波(10a)、(10c)と矩形波(10b)とを示し、
図7のなかの第2段目に第1ドライブ装置31の制御周期に関する三角波(31a)、(31c)と矩形波(31b)とを示し、
図7のなかの第3段目に第2ドライブ装置32の制御周期に関する2つの三角波(32a)、(32c)と矩形波(32b)とを示す。
【0063】
図7のなかの各段に記載された2つの三角波(例えば、三角波(10a)と三角波(10c)。)は、時間軸方向の1周期の長さが互いに異なる。三角波(10a)は、三角波(10c)よりも1周期が時間軸方向に短い。三角波(10a)と矩形波(10b)の関係は、前述の
図5の各段の三角波(Ma)と矩形波(Mb)の関係に対応する。
図7のなかの第2段目と第3段目も同様の傾向にある。
【0064】
なお、マスタ装置10の第1周期は、基準周期のM分の1である。マスタ装置10の第1周期は三角波(10a)の周期に対応し、マスタ装置10の基準周期は三角波(10c)の周期に対応する。第1制御部312の第1制御周期は、上記の基準周期のN分の1である。第1制御部312の第1制御周期は三角波(31a)の周期に対応し、第1制御部312の基準周期は三角波(31c)の周期に対応する。第2制御部322の第2制御周期は、上記の基準周期のN分の1である。第2制御部322の第2制御周期は三角波(32a)の周期に対応し、第2制御部322の基準周期は三角波(32c)の周期に対応する。上記Mの値とNの値は、互いに値が異なる整数である。
【0065】
1周期が時間軸方向に短い方の三角波(10a)、(31a)、(32a)の値は、マスタ装置10とドライブ装置30が、それぞれの処理に利用するクロックの計数値である。例えば、マスタ装置10の三角波(a)の値は、カウンタ13の計数値である。第1ドライブ装置31の三角波(31a)の値は、位相調整ユニット3123内の第1カウンタ31232の計数値である。第2ドライブ装置32の三角波(32a)の値は、位相調整ユニット3223内の第2カウンタ32232の計数値である。
【0066】
例えば、第1ドライブ装置31の第1制御部312は、第1カウンタ31232の計数値が0からk1になるまでに第1電動機21の状態と第1電力変換器311の状態を取得して(処理A)、その計数値がk1からk2になるまでに第1電力変換器311に対する指令値を生成し(処理B)、その計数値がk2からkMAX31になるまでに第1電動機21を駆動するための第1ゲートパルスGPを生成する(処理C)。第1制御部312は、第1カウンタ31232の計数値が0からkmaxまで変化する1つの第1制御周期のなかで、上記の処理Aから処理Cを夫々実施して、第1制御周期ごとに処理Aから処理Cを繰り返す。
【0067】
さらに、第2ドライブ装置32の第2制御部322は、第2カウンタ32232の計数値が0からk1になるまでに第2電動機22の状態と第2電力変換器321の状態を取得して、その計数値がk1からk2になるまでに第2電力変換器321に対する指令値を生成し、その計数値がk2からkMAX32になるまでに第2電動機22を駆動するための第2ゲートパルスGPを生成する。第2制御部322は、第2カウンタ32232の計数値が0からkmaxまで変化する1つの第2制御周期のなかで、上記の処理Aから処理Cを夫々実施して、第2制御周期ごとに処理Aから処理Cを繰り返す。処理Aから処理Cは、第1処理の一例である。
【0068】
なお、1周期が時間軸方向に長い方の三角波(10c)は、説明用に示したものであり、ドライブシステム1が、その値を計数しなくてもよい。
【0069】
例えば、
図7の第1段目に示す三角波(10c)の周期(基準周期という。)は、マスタ装置10の制御周期のN倍である。この
図7に示す波形は、上記のNの値を1000にしたときのものであり、一部の波形の表記が省略されている。
図7の第1段目に示す矩形波(10b)に沿えた数字は、0から999まで順に増加する制御周期の識別情報iの値である。三角波(10c)の振幅は、この識別情報iの値を模式化して示している。実際の識別情報iは、連続的に変化するものでなく、制御周期の切り替えタイミングに同期して階段状に変化する。
【0070】
図7の第2段目に示す第1ドライブ装置31の状態は、ある第1制御周期を、マスタ装置10の基準周期との位相調整に利用することにより、位相が良好に調整され、それにより偏差Xが0の状態にある。第1制御周期のM倍が、マスタ装置10の基準周期に一致する。
図7の第2段目に示す波形は、Mの値を1024にしたときのものである。矩形波(31b)に沿えた数字は、0から1023まで、順に増加する制御周期の識別情報jの値である。三角波(31c)の振幅は、この識別情報jの値を模式化して示している。実際の識別情報jは、連続的に変化するものでなく、第1制御周期の切り替えタイミングに同期して階段状に変化する。
【0071】
図7の第3段目に示す第2ドライブ装置32の状態は、制御周期の位相の調整が良好でないために、偏差Xが生じている状態にある。各波形の説明は、
図7の第2段目の第1ドライブ装置31の場合と同様である。
図7の第3段目に示す第2ドライブ装置32と
図7の第2段目の第1ドライブ装置31との違いは、
図7の第2段目の第1ドライブ装置31の状態がマスタ装置10の基準周期のタイミングに揃っているのに対し、
図7の第3段目に示す第2ドライブ装置32の状態が、それらと揃っていない状態にある点である。
【0072】
図7の第1段目と第2段目を対比して、第1ドライブ装置31の処理について説明する。
第1ドライブ装置31は、識別情報iを用いて、複数回の第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第1同期信号のうちの特定第1同期信号を決定して、その特定第1同期信号の位相を調整する。
図7における複数の第1同期信号は、
図7の第2段目の矩形波(31b)に相当する。この場合の特定第1同期信号は、識別情報jの値(0から1023)に対応する各矩形波(パルス)のなかで、識別情報iが999から0に変化するタイミングに対応する1つの矩形波(パルス)である。そこで、第1ドライブ装置31の第1制御部312は、識別情報iが999から0に変化するタイミングに、第1ドライブ装置31の矩形波(31b)の周期(第1制御周期)が同期するように第1ドライブ装置31の矩形波(31b)の周期(第1制御周期)の位相を調整するとよい。
【0073】
上記の場合、マスタ装置10の制御周期(
図7の第1段目の矩形波(10b)のパルスの周期)と第1ドライブ装置31の制御周期(
図7の第2段目の矩形波(31b)のパルスの周期)は厳密には異なる。
図7に示すような位相関係にあると、第1ドライブ装置31の識別情報jが0で識別される第1制御周期が、マスタ装置10の識別情報iが0で識別される制御周期の位相に近くなる。そこで、第1ドライブ装置31は、
図7の第1段目に示すマスタ装置10の矩形波(10b)に付した識別情報iが0である制御周期に、
図7の第2段目に示す第1ドライブ装置31の矩形波(31b)の位相を調整する。
【0074】
このように良好な位相関係に調整されている場合であっても、
図7の第1段目の識別情報iが1から999までのマスタ装置10の矩形波の基準の位相と、
図7の第2段目の識別情報jが1から1023までの第1ドライブ装置31の矩形波の基準の位相と、が揃うことがない。そのため、第1ドライブ装置31は、上記の識別情報iが0のときに位相を調整して、識別情報iが0以外のときには位相を調整しないように制御することで、マスタ装置10の基準周期に対する位相を安定に調整することができる。
【0075】
これに対して、
図7の第3段目に示す第2ドライブ装置32は、
図7の第1段目に示すマスタ装置10の矩形波(10b)に付した識別情報iが0であるときでさえ、
図7の第3段目に示す第2ドライブ装置32の矩形波(32b)に付した識別情報jが0でない位相関係にある。そのため、
図7の第3段目に示した各波形の位相は、マスタ装置10の基準周期の位相に整合しているために偏差Xが生じていない状態を示す
図7の第2段目に示した各波形の位相とは異なり、マスタ装置10の基準周期の位相に対して偏差Xが生じている。
【0076】
図7の第3段目に示すような位相関係にあるときに、第2ドライブ装置32の第2制御部322は、第1ドライブ装置31の第1制御部312と同様に第2制御周期の位相を調整する。より具体的には、第2ドライブ装置32は、第1ドライブ装置31と同様に、識別情報iを用いて、複数回の第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第2同期信号のうちの特定第2同期信号を決定して、その特定第2同期信号の位相を調整する。第2ドライブ装置32が扱う第2同期信号と特定第2同期信号は、第2ドライブ装置32内部の信号であり、装置が異なる第1ドライブ装置31の第1同期信号と特定第1同期信号とにそれぞれ対応する信号である。これにより、第2ドライブ装置32の第2制御部322は、第1段目に示すマスタ装置10の基準周期の位相に第2制御周期の位相を整合させることができ、その結果、
図7の第2段目に示すような位相関係の各波形を得ることができる。
【0077】
さらに、第1ドライブ装置31と第2ドライブ装置32以外の各ドライブ装置30の夫々が同様の処理をそれぞれ実施することにより、マスタ装置10の矩形波の基準の位相と、各ドライブ装置30の矩形波の基準の位相とが揃う。
【0078】
図8は、実施形態の第1ドライブ装置31の構成図である。
第1ドライブ装置31は、例えば、記憶部314(
図8内の記載はSTRAGE。)と、入出力ユニット315と、演算処理ユニット316とを備える。第1ドライブ装置31は、コンピュータの一例である。
【0079】
記憶部314は、ROM、RAM、HDD、フラッシュメモリ等で実現される。記憶部314は、第1制御部312を機能させるための各種設定情報と、OSなどの基本プログラム、アプリケーションプログラムなどを格納するための記憶領域が割り当てられる。
【0080】
入出力ユニット315は、例えば、第1電動機21の軸の位置の情報と、第1電力変換器311の出力状態の情報とを入力情報として取得し、ゲート信号GPを出力する。入出力ユニット315は、例えば、各種情報を表示する液晶表示器などの表示部と操作検出部とを備えていてもよい。上記の表示部と操作検出部は、それらを組み合わされたタッチパネルとして構成されていてもよい。
【0081】
演算処理ユニット316は、ソフトウエアプログラムを実行する第2プロセッサを含む。第2プロセッサは、CPU、FPGAと呼ばれることがある。演算処理ユニット316は、第1通信処理ユニット313と、記憶部314と、入出力ユニット315と共にバスBUSに接続されている。演算処理ユニット316は、ソフトウエアプログラムを実行することで、第1制御部本体3121と、第1割り込み信号生成ユニット3122と、位相調整ユニット3123と、比較器3124との一部又は全部の機能を形成する。
【0082】
演算処理ユニット316の第2プロセッサが実行するソフトウエアプログラムは、予め記憶部314に格納されていてもよいし、図示されない外部装置や可搬型記憶媒体などから、或いは通信回線を介してダウンロードされてもよい。
【0083】
なお、第1通信処理ユニット313のうち、ネットワークNWに接続するためのハードウエアを除く範囲の一部又は全部が、演算処理ユニット316のソフトウエアプログラムを実行することで形成されていてもよく、演算処理ユニット316とは異なる演算処理ユニットによって形成されていてもよい。
【0084】
上記の実施形態によれば、ドライブシステム1は、第1ドライブ装置31と、第2ドライブ装置32と、マスタ装置10とを備える。マスタ装置10は、基準周期のなかの第1周期ごとに第1周期の識別情報と第1送信同期信号とを送信する。第1ドライブ装置31の第1制御部312は、その識別情報を用いて、複数回の第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第1同期信号のうちの特定第1同期信号に関わるタイミング(第1基準タイミングという。)に、第1制御周期が同期するように第1制御周期の位相を調整する。さらに第1制御部312は、第1制御周期を用いて第1電力変換器311を制御する。第2ドライブ装置32の第2制御部322は、識別情報を用いて、複数回の第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第2同期信号のうちの特定第2同期信号に関わるタイミング(第2基準タイミングという。)に第2制御周期が同期するように第2制御周期の位相を調整する。さらに第2制御部322は、第2制御周期を用いて第2電力変換器321を制御する。これにより、ドライブシステム1は、複数の電動機20の揃速性をより高めることができる。
【0085】
上記の特定第1同期信号は、第1ドライブ装置31が特定の値の識別情報iを検出したときに対応する第1同期信号であってよい。同様に特定第2同期信号は、第2ドライブ装置32が特定の値の識別情報iを検出したときに対応する第2同期信号であってよい。なお、第1ドライブ装置31は、共通の識別情報iの値を利用して、特定第1同期信号を特定するとよい。第2ドライブ装置32は、共通の識別情報iの値を利用して、特定第2同期信号を特定するとよい。
【0086】
なお、第1制御部312は、複数の第1同期信号のうちから、特定第1同期信号に対応しないものを、第1制御周期を同期させる際の対象の信号から除くように制御するとよい。第2制御部322は、同様に複数の第2同期信号のうちから、特定第2同期信号に対応しないものを、第2制御周期を同期させる際の対象の信号から除くように制御するとよい。
【0087】
例えば、第1ドライブ装置31は、第1送信同期信号を複数回受信して、複数回の前記第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第1同期信号のうちから、基準周期のなかの第1基準タイミングに対応する特定第1同期信号を選択し、特定第1同期信号を用いて第1電動機21の制御に係る処理を起動させる第1制御タイミングを調整してもよい。さらに、第2ドライブ装置32は、第1送信同期信号を複数回受信して、複数回の第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第2同期信号のうちから、第1基準タイミングに対応する特定第2同期信号を選択し、特定第2同期信号を用いて第2電動機22の制御に係る処理を起動させる第2制御タイミングを調整してもよい。
このように、第1制御部312と、第2制御部322の夫々が、対象の信号を選択することにより、ドライブシステム1は、複数の電動機20の揃速性をより高めることができる。
【0088】
上記のように位相の調整のための対象の信号を制限していれば、マスタ装置10が制御に利用する第1周期の基準の長さと、第1ドライブ装置31の第1制御周期及び第2ドライブ装置32の第2制御周期の基準の長さとが互いに異なる組み合わせであってもよい。さらに、複数の第1同期信号のうちの一部及び複数の第2同期信号のうちの一部を、位相の調整のための対象の信号から除くように制御することにより、ドライブシステム1は、第1電動機21と第2電動機22の揃速性を確保して、夫々を制御することができる。
【0089】
マスタ装置10と第1ドライブ装置31を連携させ、及びマスタ装置10と第2ドライブ装置32とを連携させることにより、マスタ装置10は、第1ドライブ装置31及び第2ドライブ装置32を制御することができる。
【0090】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のドライブシステム1Aについて説明する。
ドライブシステム1Aは、例えば、
図1のドライブシステム1と同様に構成される。第1の実施形態のドライブシステム1Aにおけるマスタ装置10は、各ドライブ装置30に対して共通の第1送信同期信号を送信していた。第2の実施形態では、マスタ装置10Aは、各ドライブ装置30Aに対して個別に、送信同期信号を送信する。
【0091】
図9は、実施形態のマスタ装置10Aの構成図である。
マスタ装置10Aは、前述のマスタ装置10に対し、さらにタイマー12(
図2内の記載はTIMER。)を備える。
【0092】
タイマー12は、例えば、
図9に示されていない、時計と、時計の時刻合わせ処理を実行する時計調整ユニットとを含む。タイマー12は、インタフェースユニット11とネットワークNWを通して各ドライブ装置30Aと通信する。タイマー12は、各ドライブ装置30Aと通信することで、各ドライブ装置30A側の時刻情報をマスタ装置10側の時刻情報に合わせるように、各ドライブ装置30A側で、その時刻を調整させる。マスタ装置10Aは、この時刻の調整に係る処理に、既知のプロトコルを利用してよい。例えば、時刻の調整に利用するプロトコルとして、PTP(Precision Time Protocol:IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1588)などが挙げられる。上記の場合、インタフェースユニット11は、ネットワークNWに信号(パケット)を送信する際に、タイマー12の時刻情報をそのパケットに付加して送信する。
【0093】
マスタ装置10Aは、各ドライブ装置30を揃速するための同期信号(送信同期信号と呼ぶ。)を生成する。例えば、マスタ装置10Aは、各ドライブ装置30に対して個別に送信するための、送信同期信号をそれぞれ生成する。
【0094】
より具体的には、マスタ装置10Aは、第1周期ごとに第1送信同期信号と第2送信同期信号とを生成する。第1送信同期信号と第2送信同期信号は、上記の送信同期信号の一例である。その後、マスタ装置10Aは、第1周期ごとに第1送信同期信号を第1ドライブ装置31に供給し、第1周期ごとに第2送信同期信号を第2ドライブ装置32に供給する。第3ドライブ装置33と第4ドライブ装置34とに対しても同様である。
【0095】
図10Aと
図10Bを参照して、第1ドライブ装置31Aと第2ドライブ装置32Aとについて説明する。
図10Aは、実施形態の第1ドライブ装置31Aの構成図である。
【0096】
第1ドライブ装置31Aは、第1ドライブ装置31の第1制御部312と、第1通信処理ユニット313に代えて、第1制御部312Aと、第1通信処理ユニット313Aとを備える。
【0097】
第1通信処理ユニット313Aは、ネットワークNWを通してマスタ装置10Aと通信して、マスタ装置10Aから取得した各種情報を、第1制御部312Aに供給する。
【0098】
第1通信処理ユニット313Aは、第1通信処理ユニット313のインタフェースユニット3131と、抽出処理ユニット3133とに代えて、インタフェースユニット3131Aと、抽出処理ユニット3133A(
図10A内の記載はEXTR。)とを備え、さらに遅延時間格納ユニット3134と、加算器3135と、比較器3136とを備える。
【0099】
インタフェースユニット3131Aは、ネットワークNWに接続されていて、ネットワークNWを通してマスタ装置10Aと通信することで、マスタ装置10Aが送信する各種情報を取得する。マスタ装置10Aが送信する各種情報には、マスタ装置10Aの時刻情報、マスタ装置10Aが第1ドライブ装置31に指令する指令値COM_iに関する情報、マスタ装置10Aの制御周期に関する識別情報iなどが含まれる。
【0100】
タイマー3132は、例えば、
図10Aに示されていない、第1時計と、第1時計の時刻合わせ処理を実行する時計調整ユニットとを含む。タイマー3132は、インタフェースユニット3131AとネットワークNWを通してマスタ装置10Aと通信することで、マスタ装置10Aのタイマー12の時刻情報に同期をとる。タイマー3132は、これにより第1時計の時刻を調整する。タイマー3132は、この時刻の調整に係る処理に、マスタ装置10Aと共通のプロトコルを利用する。タイマー3132は、調整された時刻情報を比較器3136の第1入力aに供給する。
【0101】
なお、タイマー3132は、処理に用いるプロトコルにより、時刻の精度が制限される。処理に用いるプロトコルによる時刻の安定性よりも、高い安定性が要求される場合には、後段にPLL(phase locked loop)等の安定化回路を設けて、プロトコルに起因する時刻変動を低減させるとよい。
【0102】
抽出処理ユニット3133Aは、インタフェースユニット3131Aからマスタ装置10Aが送信する各種情報を取得して、取得した情報を抽出して、抽出した情報をそれぞれの供給先に提供する。
【0103】
例えば、抽出処理ユニット3133Aは、実際に同期をとるタイミングを算出するためにマスタ装置10Aから指定された遅延時間の値(
図10A内の記載はTD1。)を後述する遅延時間格納ユニット3134に供給し、マスタ装置10Aが第1送信同期信号のパケットを送信した時刻に関わる時刻情報(
図10A内の記載はtTX1。)を加算器3135の第1入力に供給する。マスタ装置10Aが送信した時刻に関わる時刻情報は、マスタ装置10Aの時刻情報の一例である。
【0104】
抽出処理ユニット3133Aは、マスタ装置10Aが送信した第1送信同期信号のパケットに付与されていた識別情報i(パケットを送信した制御周期を示す識別情報iのこと。)を位相調整ユニット3123Aに供給する。
【0105】
遅延時間格納ユニット3134は、例えば、整数値を格納可能な記憶領域に、マスタ装置10Aから指定された遅延時間の値を格納する。遅延時間格納ユニット3134は、保持している遅延時間の値を加算器3135の第2入力に供給する。遅延時間格納ユニット3134は、整数値を格納可能な記憶領域として、後述する補正演算用データテーブルを用いるとよい。
【0106】
加算器3135は、マスタ装置10Aが第1送信同期信号のパケットを送信した時刻に関わる時刻情報の値のtTX1と、遅延時間格納ユニット3134に保持されている遅延時間の値のTD1とを加算して、演算結果のtST1を比較器3136に供給する。演算結果のtST1は、揃速性を検出するための位相比較を実施する時刻を指定する値になる。
【0107】
比較器3136は、マスタ装置10Aから送信された時刻情報によって指定される時刻になったことを検出して、指定される時刻になったときに正論理のパルスを出力し、指定される時刻以外のときに論理0を出力する。
【0108】
例えば、比較器3136の第1入力aには、タイマー3132が出力する現在時刻の情報(
図10A内の記載はtCT1。)が供給され、第2入力bには、揃速性を検出するための位相比較を実施する時刻を指定する時刻情報のtST1が供給される。比較器3136は、上記のtCT1とtST1の比較の結果から、マスタ装置10Aから指定される時刻になったことを検出し、そのときに正論理のパルスを出力する。正論理のパルスは、マスタ装置10Aが第1送信同期信号のパケットを送信した時刻に基づいて時刻が調整された第1同期信号(
図10A内の記載はSYNC_S1。)になる。このパルスが示すタイミングが、第1調整タイミングの一例である。
【0109】
第1制御部312Aは、前述の第1制御部312の位相調整ユニット3123に代わる位相調整ユニット3123Aを備える。
【0110】
位相調整ユニット3123Aは、第1制御部本体3121が離散時間制御に用いる第1クロックを第1制御部本体3121に供給し、第1制御周期の元となる第2クロックを第1割り込み信号生成ユニット3122に供給する。位相調整ユニット3123Aは、例えば、比較器3136によって生成された第1同期信号SYNC_S1と、比較器3124の比較結果とに基づいて、第2クロックの長さを調整する。
【0111】
位相調整ユニット3123Aは、例えば、クロック生成ユニット31231と、第1カウンタ31232と、第1位相比較器31233とを備える。
【0112】
クロック生成ユニット31231は、
図3Aに示されていないオシレーターを含み、固定周期の第1基準クロック信号を生成し、第1カウンタ31232に供給する。
【0113】
第1カウンタ31232は、クロック生成ユニット31231から供給される第1基準クロック信号の波数を計数することで、第1基準クロック信号を予め定められた数で分周して、第1制御周期の長さよりも周期が短い第1クロック信号を生成する。
【0114】
第1カウンタ31232は、第1制御周期の起点からの第1クロック信号の波数を計数した結果が第1制御周期の位相に対応する値を示す第1カウントの計数値を生成する。第1カウンタ31232は、生成された第2クロック信号を、位相を補正するために第1位相比較器31233の第2入力に供給し、条件により第1カウントの計数値を補正する。第1カウンタ31232は、例えば、第1カウントの計数値又は補正された第1カウントの計数値の何れかを用いて第1制御周期の第2クロックを生成して、生成された第2クロック信号を、第1割り込み信号生成ユニット3122に供給する。
【0115】
ここで、上記の第1カウントの計数値を補正することにする条件について説明する。上記の条件として、第1基準タイミングの時点の比較器3124の結果を利用してよい。例えば、比較器3124の結果の論理値が「1」であるときが、上記の条件を満たす場合として規定される。
【0116】
第1位相比較器31233の第1入力には、抽出処理ユニット3133から第1同期信号SYNC_S1が供給される。第1位相比較器31233は、第1カウントの計数値を用いて、抽出処理ユニット3133から供給された第1同期信号SYNC_S1の位相の基準と、第1カウンタ31232によって生成された第1制御周期の位相の基準との位相差を比較して、比較の結果を出力する。比較の結果は、マスタ装置10Aが第1送信同期信号のパケットを送信した時刻に基づく第1同期信号SYNC_S1のタイミングと、第1制御周期との位相の関係を示す。例えば、第1位相比較器31233は、比較の結果に基づいて、第1カウンタ31232の計数値の補正値を算出する。
【0117】
上記のように、第1制御部312Aは、抽出処理ユニット3133Aが出力する情報に基づいて、第1同期信号SYNC_S1によって指定されるタイミングを基準にして、マスタ装置10Aの制御周期に関する識別情報iを用いて、第1カウントの計数値を補正する。
【0118】
ここで、第1制御部312Aの各部について整理する。
第1カウンタ31232は、第1基準クロックを分周することで第1クロック信号を生成する。第1カウンタ31232は、第1制御周期の起点からの第1クロック信号の波数を計数した結果の第1カウントの計数値を生成する。第1カウンタ31232は、第1基準タイミングの時点の条件により第1カウントの計数値を補正して、第1カウントの計数値又は補正された第1カウントの計数値の何れかを用いて第1制御周期の第2クロックを生成する。第1カウントの計数値は、第1制御周期の位相に対応する値になる。
【0119】
第1位相比較器31233は、第1カウンタ31232による第1カウントの計数値を用いて第1制御周期の位相の基準と、第1同期信号SYNC_S1に含まれる特定第1同期信号の位相の基準との位相差を比較する。第1位相比較器31233は、その比較の結果に基づいて第1制御周期の位相の基準と特定第1同期信号の位相の基準との第1の偏差Xが小さくなるように、特定第1同期信号の位相の基準に関わる第1基準タイミングの時点の第1カウントの計数値を補正するための補正値を生成する。
第1割り込み信号生成ユニット3122は、この第2クロックに基づいて第1制御周期の第1割り込み信号を生成する。
第1制御部本体3121は、第1クロック信号を用いて第1電力変換器311を制御するための第1処理を、第1割り込み信号に基づいて起動させる。これによって、第1制御部312Aは、第1電力変換器311を制御する。
【0120】
図10Bに示す第2ドライブ装置32について説明する。
図10Bは、実施形態の第2ドライブ装置32Aの構成図である。
【0121】
図10Bに示す第2ドライブ装置32Aは、例えば、第2電力変換器321と、第2制御部322Aと、第2通信処理ユニット323Aとを備える。
第2電力変換器321は、対象物を搬送させるための第2電力を第2電動機22の巻線(不図示)に供給する。第2制御部322Aは、第2電力変換器321を制御する。第2通信処理ユニット323Aは、マスタ装置10と通信する。
【0122】
なお、第2制御部322Aと、第2通信処理ユニット323Aは、前述の第1制御部312Aと、第1通信処理ユニット313Aとに対応する。第2制御部322Aと、第2通信処理ユニット323Aは、前述の第1制御部312Aと、第1通信処理ユニット313同様の構成にするとよい。第2ドライブ装置32Aの符号を第1ドライブ装置31Aと同様の符号を付す。
【0123】
ここで、第2制御部322Aの各部について整理する。
第2カウンタ32232は、第2基準クロックを分周することで第3クロック信号を生成する。第2カウンタ32232は、第2制御周期の起点からの第3クロック信号の波数を計数した結果の第3カウントの計数値を生成する。第2カウンタ32232は、第2基準タイミングの時点の条件により第3カウントの計数値を補正して、第3カウントの計数値又は補正された第3カウントの計数値の何れかを用いて第2制御周期の第4クロックを生成する。第3カウントの計数値は、第2制御周期の位相に対応する値になる。
【0124】
第2位相比較器32233は、第2カウンタ32232による第3カウントの計数値を用いて第2制御周期の位相の基準と、第2同期信号SYNC_S2に含まれる特定第2同期信号の位相の基準との位相差を比較する。第2位相比較器32233は、その比較の結果に基づいて第2制御周期の位相の基準と特定第2同期信号の位相の基準との第2の偏差Xが小さくなるように、特定第2同期信号の位相の基準に関わる第2基準タイミングの時点の第4カウントの計数値を補正するための補正値を生成する。
第2割り込み信号生成ユニット3222は、第4クロックに基づいて第2制御周期の第2割り込み信号を生成する。
第2制御部本体3221は、第4クロック信号を用いて第2電力変換器321を制御するための第2処理を、第2割り込み信号に基づいて起動させる。これによって、第2制御部322Aは、第2電力変換器321を制御する。
【0125】
上記の第2ドライブ装置32Aの説明よりも詳細は、第1ドライブ装置31Aの説明を参照する。第3ドライブ装置33Aと第4ドライブ装置34Aについても、第1ドライブ装置31Aと第2ドライブ装置32Aと同様である。
【0126】
以下、実施形態のドライブ装置30による制御周期の位相の調整について説明する。
【0127】
図11は、第2の実施形態の送信時刻データテーブルについて説明するための図である。
図11に示す送信時刻データテーブルには、識別番号と、時刻差データの項目を含む。識別番号の項目には、ドライブ装置を識別するためのデータが格納される。時刻差データの項目には、第一制御の起点から送信同期信号を送信するまでの遅延時間を規定するデータが格納される。例えば、送信時刻データテーブルは、マスタ装置10Aの記憶部15に割り付けられている。
【0128】
図12は、第2の実施形態の補正演算用データテーブルについて説明するための図である。
図12に示す補正演算用データテーブルには、識別情報と、遅延時間と、送信時刻と、指定時刻の項目が含まれる。遅延時間の項目には、マスタ装置10Aが指定する遅延時間のデータが格納される。送信時刻には、マスタ装置10Aが送信した時刻に関するデータが格納される。指定時刻の項目には、指定時刻のデータが格納される。
【0129】
図13は、第2の実施形態のドライブ装置30による制御周期の位相の調整について説明するための図である。
図13に示す波形は、前述の
図7の範囲Aに対応する部分を拡大したものである。
【0130】
図13に示すタイミングチャートには、
図7の各三角波と各矩形波を示し、パケットの送信タイミング(10d)と、パケットの受信タイミング(31e)と(32e)とを追加している。
図13における(10c)の波形は、
図7の三角波(10c)に対応する値(識別情報i)を、階段状に変化する波形を用いて示す。なお、
図13に示すタイミングチャートに時間軸は、
図7に示すタイミングチャートに時間軸の一部を拡大したものである。時刻t0から時刻t10までが、マスタ装置10Aの第1周期になる。
【0131】
マスタ装置10Aにおいて、時刻t0に、カウンタ13の計数が0から開始され、その計数値が順に増加する。三角波(10a)の振幅がその計数値を示す。また、時刻t0で矩形波(10b)のパルスが生成されている。
【0132】
同じく、第1ドライブ装置31Aにおいて、時刻t0に、第1カウンタ31232の計数が0から開始され、その計数値が順に増加する。三角波(31a)の振幅がその計数値を示す。同様に、時刻t0で矩形波(31b)のパルスが生成されている。矩形波(31b)のパルスが生成されたことにより、第1ドライブ装置31Aの第1制御部312は、第1割り込み信号生成ユニット3122によって割り込み信号が生成されたことによって、割り込み処理による第1制御処理を起動する。
【0133】
マスタ装置10Aの制御部本体16は、各ドライブ装置30Aに対して、各パケットを個別に送信するタイミングを、送信時刻データテーブル(
図11)の時刻差データの値を時刻t0に加算してそれぞれ決定する。マスタ装置10Aは、例えば、第1ドライブ装置31A用に時刻t0にΔt1を加算して時刻t1を得て、第2ドライブ装置32A用に時刻t0にΔt2を加算して時刻t2を得る。
【0134】
タイマー12の計時の結果が時刻t1になると、マスタ装置10Aは、第1ドライブ装置31A宛に、第1送信同期信号の第1パケットを送信する。その際、マスタ装置10Aの第1通信処理ユニット313Aは、第1送信同期信号を送信した時刻t1に関わる時刻情報のtTX1を、その第1パケットに付与してから送信する。
その後、時刻t1dに、第1ドライブ装置31Aは、第1送信同期信号を受信する。
【0135】
その後、タイマー12の計時の結果が時刻t2になると、マスタ装置10Aは、第2ドライブ装置32A宛に、第2送信同期信号の第2パケットを送信する。その際、マスタ装置10Aの第2通信処理ユニット323Aは、第2送信同期信号を送信した時刻t2に関わる時刻情報のtTX2を、その第2パケットに付与してから送信する。
その後、時刻t2dに、第2ドライブ装置32Aは、第2送信同期信号を受信する。
【0136】
第1ドライブ装置31Aの第1通信処理ユニット313Aが第1送信同期信号を受信すると、第1通信処理ユニット313Aは、受信した第1送信同期信号から、マスタ装置10Aが送信した時刻t1に関わる時刻情報のtTX1を抽出して、上記のtTX1に、遅延時間の値のTD1を加算する。なお、第1通信処理ユニット313Aは、例えば、補正演算用データテーブルとして遅延時間格納ユニット3134に保持されている遅延時間の値のTD1を利用する。第1通信処理ユニット313Aは、その演算結果のtST1を、補正演算用データテーブルの指定時刻の項目のデータとして追加する。第1制御部312Aは、その演算結果のtST1を、位相比較を実施する時刻の指定値として利用する。
【0137】
第2ドライブ装置32Aの第2通信処理ユニット323Aが第2送信同期信号を受信すると、第2通信処理ユニット323Aは、受信した第2送信同期信号から、マスタ装置10Aが送信した時刻t2に関わる時刻情報のtTX2を抽出して、上記のtTX2に、遅延時間の値のTD2を加算する。なお、第2通信処理ユニット323Aは、例えば、補正演算用データテーブルとして遅延時間格納ユニット3234に保持されている遅延時間の値のTD2を利用する。第2通信処理ユニット323Aは、その演算結果のtST2を、補正演算用データテーブルの指定時刻の項目のデータとして追加する。第2制御部322Aは、その演算結果のtST2を、位相比較を実施する時刻の指定値として利用する。
【0138】
上記のように、第1ドライブ装置31Aは、第1通信処理ユニット313Aが第1送信同期信号を受信した時刻ではなく、マスタ装置10Aが送信した時刻t1に関わる時刻情報のtTX1を利用する。仮に、マスタ装置10Aが第1送信同期信号を送信してから第1ドライブ装置31Aが受信するまでに遅延時間が生じたり、その遅延時間が揺らいでも、それらの影響を受けることなく、マスタ装置10Aが指定する時刻(tST1)を再現できる。これについては、第2ドライブ装置32Aについても同様である。
【0139】
これにより第1ドライブ装置31Aは、マスタ装置10Aが指定する時刻(tST1)に、位相を比較するタイミングを定め、そして第2ドライブ装置32Aは、マスタ装置10Aが指定する時刻(tST2)に位相を比較するタイミングを定める。各ドライブ装置30Aは、それぞれ指定された時刻のタイミングに、基準の位相に対する現在の位相を比較することができる。各ドライブ装置30Aは、実質的に共通のタイミングになるように、時刻がそれぞれ指定されるため、その共通のタイミングにそれぞれの位相を比較することができる。
【0140】
上記の実施形態によれば、ドライブシステム1Aは、第1ドライブ装置31Aと、第2ドライブ装置32Aと、マスタ装置10Aとを備える。マスタ装置10Aは、基準周期のなかの第1周期ごとに第1周期の識別情報と第1送信同期信号と第2送信同期信号とを送信する。第1ドライブ装置31Aの第1制御部312Aは、その識別情報を用いて、複数回の第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第1同期信号のうちの特定第1同期信号に関わるタイミングに、第1制御周期が同期するように第1制御周期の位相を調整する。さらに第1制御部312Aは、第1制御周期を用いて第1電力変換器311を制御する。第2ドライブ装置32Aの第2制御部322Aは、識別情報を用いて、複数回の第2送信同期信号の受信によって得られた複数の第2同期信号のうちの特定第2同期信号に関わるタイミングに第2制御周期が同期するように第2制御周期の位相を調整する。さらに第2制御部322Aは、第2制御周期を用いて第2電力変換器321を制御する。これにより、ドライブシステム1Aは、複数の電動機20の揃速性をより高めることができる。
【0141】
さらに、マスタ装置10Aは、第1周期の識別情報と第1送信同期信号と第2送信同期信号とを送信する際に、基準周期のなかの第1周期ごとに第1送信同期信号と第2送信同期信号とを生成して、基準周期のなかの第1周期ごとに第1送信同期信号と基準周期のなかの第1周期を識別するための識別情報iとを第1ドライブ装置31Aに供給し、これと同様に第2送信同期信号と識別情報iとを第2ドライブ装置32Aに供給してもよい。
第1ドライブ装置31Aの第1制御部312Aは、識別情報iを用いて、複数回の第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第1同期信号のうちから、基準周期のなかで特定の第1送信同期信号が生成された時に関わる第1基準タイミングを決定することで、第1基準タイミングに対応する特定第1同期信号に第1制御周期が同期するように第1制御周期の位相を調整して、その第1制御周期を用いて第1電力変換器を制御してもよい。
第2ドライブ装置32Aの第2制御部322Aは、同様に識別情報iを用いて、複数回の第2送信同期信号の受信によって得られた複数の第2同期信号のうちから、基準周期のなかで特定の第2送信同期信号が生成された時に関わる第2基準タイミングを決定することで、第2基準タイミングに対応する特定第2同期信号のタイミングに第2制御周期が同期するように第2制御周期の位相を調整して、その第2制御周期を用いて第2電力変換器を制御してもよい。これにより、ドライブシステム1Aは、少なくとも第1電動機21と第2電動機22の揃速性をより高めることができる。
【0142】
マスタ装置10Aは、識別情報iを付加した第1送信同期信号を第1ドライブ装置31に供給し、同じく識別情報iを付加した第2送信同期信号を第2ドライブ装置32に供給する。第1制御部312Aは、供給された第1送信同期信号に付加されていた識別情報iの値が定数Cの値(定数値)である場合に、第1基準タイミングに供給された特定の第1送信同期信号に対応する特定第1同期信号に同期するように第1制御周期の位相を調整するとよい。これに併せて、第2制御部322Aは、同様に供給された第2送信同期信号に付加されていた識別情報iの値が定数Cの値である場合に、第2基準タイミングに供給された特定の第2送信同期信号に対応する特定第2同期信号に同期するように第2制御周期の位相を調整するとよい。
【0143】
なお、利用するネットワークNWの仕様、通信に利用するプロトコルの仕様又は中継装置の仕様により、マスタ装置10は、第1送信同期信号と第2送信同期信号とを互いに異なるタイミングで送信する場合がある。上記のように第1送信同期信号と第2送信同期信号とを互いに異なるタイミングで送信することが必要とされる構成についても、ドライブシステム1は、これを許容する。
【0144】
第1制御部312Aは、第1基準タイミングから第1時間遅らせた第1調整タイミングにおいて、特定第1同期信号に同期するように第1制御周期の位相を調整するとよい。さらに、第2制御部322Aは、第2基準タイミングから第2時間遅らせた第2調整タイミングにおいて、特定第2同期信号に同期するように第2制御周期の位相を調整するとよい。これにより、マスタ装置10Aが第1基準タイミングに第1送信同期信号を送信した後に、第1制御部312Aは、第1基準タイミングから第1時間遅らせた第1調整タイミングを再現することができる。また、マスタ装置10Aが第2基準タイミングに第2送信同期信号を送信した後に、第2制御部322Aは、第2基準タイミングから第2時間遅らせた第2調整タイミングを再現することができる。
【0145】
マスタ装置10Aは、第1送信同期信号と第2送信同期信号とを互いに異なるタイミングで送信してもよい。その際に、第1基準タイミングと第2基準タイミングの差が予め決定されていれば、第1基準タイミングと第2基準タイミングの差を打ち消すように、第1時間遅と第2時間に上記の差を適用することで、第1調整タイミングと第2調整タイミングとを揃えることが可能になる。
【0146】
例えば、第1制御部312Aは、特定の第1送信同期信号が生成された時として、マスタ装置10Aから通知される第1基準時間に基づいて第1調整タイミングを決定してもよい。さらに第2制御部322Aは、特定の第2送信同期信号が生成された時として、マスタ装置10Aから通知される第2基準時間に基づいて第2調整タイミングを決定してもよい。例えば、マスタ装置10Aから通知される第1基準時間と第2基準時間が、パケットの送信時刻に対応する情報であれば、マスタ装置10からパケットが送信されるまでの送信待機時間による変動の影響を軽減させることができる。
【0147】
(変形例)
次に、
図14Aから
図14Cを参照して、上記の第1と第2の実施形態に共通する変形例のドライブシステムについて説明する。ここで示す変形例は、上記の第1と第2の実施形態とは、ネットワーク構成が異なる。
【0148】
図14Aは、第1変形例のドライブシステム1Bの構成図である。
図14Aに示すドライブシステム1Bは、カスケード接続型のネットワークNWBを利用する。例えば、ドライブシステム1Bは、マスタ装置10Bと、マスタ装置10を起点にしてカスケード接続された第1ドライブ装置31Bから第4ドライブ装置34Bとを備える。マスタ装置10Bと、第1ドライブ装置31Bから第4ドライブ装置34Bは、前述のマスタ装置10と、第1ドライブ装置31から第4ドライブ装置34に対応する。
【0149】
例えば、マスタ装置10Bが第1ドライブ装置31Bから第4ドライブ装置34Bの何れかと通信するためにネットワークNWBにパケットを送信すると、第1ドライブ装置31Bは、そのパケットを受信して、そのパケットを後段の第2ドライブ装置32Bに中継する。なお、第1ドライブ装置31Bは、そのパケットが自身宛のパケットであることを検出すると、そのパケットに係る処理を実施する。第2ドライブ装置32Bと第3ドライブ装置33Bは、第2ドライブ装置32Bと同様にパケットを中継するが、第4ドライブ装置34Bは、ネットワークNWBの終点であり、パケットの中継を行わなくてもよい。第2ドライブ装置32Bから第4ドライブ装置34Bは、そのパケットが自身宛のパケットであることを検出すると、そのパケットに係る処理を実施する。
例えば、第1ドライブ装置31Bから第4ドライブ装置34Bのそれぞれが、マスタ装置10に情報を送るときは、マスタ装置10から要求があったときに送信するとよい。第1ドライブ装置31Bから第4ドライブ装置34Bのそれぞれが、マスタ装置10に情報を送る送信方法は、後述するネットワーク構成ついても適用してよい。
【0150】
図14Bは、第2変形例のドライブシステム1Cの構成図である。
図14Bに示すドライブシステム1Cは、リング接続型のネットワークNWCを利用する。例えば、ドライブシステム1Cは、第1通信ポートと第2通信ポートとを有するマスタ装置10Cを備え、さらに第1ドライブ装置31Cから第4ドライブ装置34Cを備える。第1ドライブ装置31Cから第4ドライブ装置34Cは、マスタ装置10Cの第1通信ポートを起点に第2通信ポートを終点にしたネットワークNWCのリング内に順に配置される。
【0151】
図14Cは、第3変形例のドライブシステム1Dの構成図である。
図14Cに示すドライブシステム1Dは、シングルスター接続型のネットワークNWDを利用する。ネットワークNWDは、シングルスター接続型のノードの位置に設けられたハブ(HUB)40を含む。マスタ装置10Dと、第1ドライブ装置31Dから第4ドライブ装置34Dは、前述のマスタ装置10と、第1ドライブ装置31から第4ドライブ装置34に対応する。例えば、ドライブシステム1Dのマスタ装置10と、第1ドライブ装置31Dから第4ドライブ装置34Dは、それぞれハブ50に接続されている。マスタ装置10は、ハブ50を通じて第1ドライブ装置31Dから第4ドライブ装置34Dのそれぞれと通信する。なお、ハブ50は、電気的にパケットを中継するスイッチ又はリピータであってもよく、或いは、光通信の光カプラであってもよい。
【0152】
上記のドライブシステム1Aとドライブシステム1Bの場合、各ドライブ装置がパケットを中継する際に、中継処理による遅延時間が発生することがある。上記のドライブシステム1Aとドライブシステム1Bは、実施形態に示した通信方式を利用することで、中継処理による遅延時間の変動に影響されずに、揃速性を確保することができる。ドライブシステム1Dの場合、ハブ50がパケットを中継する際に遅延時間が発生することがあるが、同様に遅延時間の変動に影響されずに、揃速性を確保することができる。
【0153】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、実施形態のドライブシステムは、第1ドライブ装置と、第2ドライブ装置と、マスタ装置とを備える。第1ドライブ装置は、第1電力を第1電動機21の巻線に供給する第1電力変換器311と、第1電力変換器311を制御する第1制御部とを含む。第2ドライブ装置は、第2電力を第2電動機22の巻線に供給する第2電力変換器321と、第2電力変換器321を制御する第2制御部とを含む。マスタ装置は、第1周期と、複数の前記第1周期を含む基準周期とを用いて、第1制御部と第2制御部を制御する。マスタ装置は、基準周期のなかの第1周期ごとに第1周期の識別情報と第1送信同期信号とを送信し、又は基準周期のなかの第1周期ごとに第1周期の識別情報と第1送信同期信号と第2送信同期信号とを送信する。第1制御部は、識別情報を用いて、複数回の前記第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第1同期信号のうちの特定第1同期信号に関わるタイミングに第1制御周期が同期するように第1制御周期の位相を調整して、第1制御周期を用いて第1電力変換器311を制御する。第2制御部は、識別情報を用いて、複数回の第1送信同期信号の受信と、複数回の第2送信同期信号の受信との何れかの受信によって得られた複数の第2同期信号のうちの特定第2同期信号に関わるタイミングに第2制御周期が同期するように第2制御周期の位相を調整して、第2制御周期を用いて第2電力変換器321を制御する。これにより、ドライブシステムは、複数の電動機の揃速性をより高めることができる。
【0154】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、実施形態の構成は、上記例に限定されない。例えば、各実施形態の構成は、互いに組み合わせて実施されてもよい。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
実施形態のドライブシステム(1)のマスタ装置(10)は、複数の第1周期を含む基準周期のなかの第1周期ごとに第1周期の識別情報と第1送信同期信号とを送信し、又は基準周期のなかの第1周期ごとに第1周期の識別情報と第1送信同期信号と第2送信同期信号とを送信する。第1ドライブ装置(31)は、識別情報を用いて、複数回の前記第1送信同期信号の受信によって得られた複数の第1同期信号のうちの特定第1同期信号に関わるタイミングに第1制御周期が同期するように前記第1制御周期の位相を調整して第1電力変換器を制御する。第2ドライブ装置(32)は、識別情報を用いて、複数回の前記第1送信同期信号の受信と、複数回の前記第2送信同期信号の受信との何れかの受信によって得られた複数の第2同期信号のうちの特定第2同期信号に関わるタイミングに第2制御周期が同期するように前記第2制御周期の位相を調整して第2電力変換器を制御する。