(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軌跡生成用データ選択部は、複数の前記目標対象の位置の内、現在の前記自車両よりも後側に位置する後側の目標対象の位置を判定し、前記後側の目標対象の位置について、前記第2方向の前記目標対象の位置の変化方向を算出し、前記後側の目標対象の位置の内、後方向に対する前記目標対象の位置の変化方向の角度の絶対値が、前記判定角度以上になる位置を判定し、判定した位置よりも前記第1方向側の前記後側の目標対象の位置を、更に前記軌跡生成用の目標対象位置として選択する請求項1に記載の車両位置処理装置。
前記軌跡生成用データ選択部は、複数の前記目標対象の位置の内、現在の前記自車両よりも後側に位置する後側の目標対象の位置を判定し、前記後側の目標対象の位置の内、前記第2方向で、前記目標対象の位置が前方向に変化する位置を判定し、判定した位置よりも前記第1方向側の前記後側の目標対象の位置を、更に前記軌跡生成用の目標対象位置として選択する請求項3に記載の車両位置処理装置。
前記目標対象位置取得部は、前記目標対象の位置として、現在の前記自車両の前方向及び横方向を2つの座標軸とした座標系である自車両座標系における、前記目標対象の座標位置を算出し、
前記軌跡生成部は、前記自車両座標系において、前記軌跡を生成する請求項1から6のいずれか一項に記載の車両位置処理装置。
前記操舵制御部は、現在の前記自車両の位置よりも前方注視距離だけ前方の前記軌跡の位置を、前記自車両の横方向の目標位置に設定し、前記自車両の横方向の位置が、前記目標位置に近づくように、前記操舵角を制御し、
前記前方注視距離を、現在の前記自車両の位置から前記軌跡の前方向の端点までの前方向の距離よりも短い距離に設定する請求項9に記載の車両制御装置。
前記操舵制御部は、現在の前記自車両の位置から前記軌跡の前方向の端点までの前方向の距離が、下限値以上である場合に、前記軌跡追従操舵制御を実行し、前記前方向の距離が、前記下限値よりも小さい場合に、前記軌跡追従操舵制御を実行しない請求項9又は10に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態1
実施の形態1に係る車両位置処理装置10(車両制御装置)について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る車両位置処理装置10(車両制御装置)の概略ブロック図である。
【0014】
本実施の形態では、車両位置処理装置10は、自車両に搭載されている。車両位置処理装置10は、目標対象位置取得部11、軌跡生成用データ選択部12、軌跡生成部13、及び操舵制御部14等の処理部を備えている。車両位置処理装置10の各処理は、車両位置処理装置10が備えた処理回路により実現される。具体的には、
図2に示すように、車両位置処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90、記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入出力する入出力装置92等を備えている。
【0015】
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。記憶装置91として、演算処理装置90からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)等が備えられている。なお、記憶装置91として、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ハードディスク、DVD装置等の各種の記憶装置が用いられてもよい。
【0016】
入出力装置92には、A/D変換器、入力ポート、駆動回路、出力ポート、通信装置等が備えられる。入出力装置92は、前方物体検出装置20及び自位置検出装置21等が接続され、これらの出力信号を演算処理装置90に入力する。入出力装置92は、操縦装置24等に接続され、これに演算処理装置90の出力信号を出力する。
【0017】
そして、車両位置処理装置10が備える各処理部11〜14等の各機能は、演算処理装置90が、ROM等の記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91及び入出力装置92等の車両位置処理装置10の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各処理部11〜14等が用いる判定角度、マップデータ等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM等の記憶装置91に記憶されている。以下、車両位置処理装置10の各機能について詳細に説明する。
【0018】
図3は、本実施の形態に係る車両位置処理装置10の処理の手順(車両位置処理方法、車両制御方法)を説明するための概略フローチャートである。
図3のフローチャートの処理は、演算処理装置90が記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行することにより、所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
【0019】
1−1.目標対象位置取得部11
図3のステップS01で、目標対象位置取得部11は、目標対象の位置を取得する目標対象位置取得処理(目標対象位置取得ステップ)を実行する。本実施の形態では、目標対象位置取得部11は、順番に並んだ複数の目標対象の位置を取得する。以下で説明するように、目標対象は、前方対象物とされている。順番に並んだ複数の目標対象の位置は、検出の順番(検出時点の番号の順番、時系列)に並んだ複数の前方対象物の履歴位置とされており、順番の番号として、検出時点の番号が設定されている。
図1に示すように、目標対象位置取得部11は、自位置情報取得部11a、前方対象物位置取得部11b、及び履歴位置演算部11cを備えている。
【0020】
1−1−1.前方対象物位置取得部11b
前方対象物位置取得部11bは、自車両の前方に存在する前方対象物の自車両に対する相対位置を取得する。本実施の形態では、前方対象物位置取得部11bは、前方物体検出装置20の出力信号に基づいて、前方対象物の相対位置を取得するように構成されている。
【0021】
前方物体検出装置20は、自車両の前方に存在する物体を検出する装置である。前方物体検出装置20には、例えば、監視カメラ、ミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging)及び超音波センサ等の各種の検出装置の1つ又は複数が用いられる。監視カメラが用いられる場合は、カメラにより撮像した自車両前方の画像に対して、公知の各種の画像処理を行って、自車両の前方に存在する先行車両等の物体を検出し、自車両に対する検出物体の相対位置を検出する。ミリ波レーダ、LIDAR、又は超音波センサが用いられる場合は、自車両の前方に、ミリ波、レーザ、又は超音波を照射し、前方に存在する先行車両等の物体により反射された反射波を受信するまでの時間差及び照射方向等に基づいて、自車両に対する検出物体の相対位置を検出する。
【0022】
前方対象物位置取得部11bは、検出周期毎に、前方対象物の相対位置を取得する。検出周期は、自車両の速度等の運転状態に応じて可変とされてもよく、予め設定された固定値とされてもよい。
【0023】
前方対象物位置取得部11bは、前方物体検出装置20により検出した前方物体から、自車両の前方を走行している先行車両を、連続的に前方対象物に設定する。例えば、前方対象物位置取得部11bは、検出時点の番号間で検出位置及び検出特徴が近い物体を同一の前方対象物として、同一の前方対象物の相対位置を検出周期で連続的に検出する。複数の先行車両が検出されている場合は、各先行車両について軌跡生成を行う処理が行われ、複数の軌跡から軌跡追従操舵制御を行うための軌跡が選択される。以下では、1つの同一の先行車両が連続的に前方対象物に設定されている場合を例に説明する。
【0024】
図4に示すように、前方対象物位置取得部11bは、現在の自車両の前方向及び横方向を2つの座標軸X、Yとした座標系(以下、自車両座標系と称す)において、自車両に対する前方対象物(本例では、先行車両)の相対位置座標(Xf、Yf)を算出する。自車両の前方向(進行方向ともいう)がX軸に設定され、前方向に直交する自車両の横方向(本例では左方向)がY軸に設定される。自車両は、X軸及びY軸の0点に位置する。
図5に示すように、前方対象物位置取得部11bは、検出時点の番号iで検出した前方対象物の相対位置座標(Xf
i、Yf
i)を、検出時点の番号iと対応付けて、車両位置処理装置10のRAM等の書き換え可能な記憶装置91に記憶する。なお、現在よりも所定時間だけ古い検出時点の番号のデータは、データ容量を削減するために記憶装置91から消去される。
【0025】
1−1−2.自位置情報取得部11a
自位置情報取得部11aは、自車両の移動情報を取得する。本実施の形態では、自位置情報取得部11aは、自位置検出装置21の出力信号に基づいて、自車両の移動情報を取得するように構成されている。
【0026】
自位置検出装置21は、自車両の移動情報を検出する装置である。自位置検出装置21には、例えば、加速度センサ、GPS(Global Positioning System)受信機、方位センサ等の各種の検出装置の1つ又は複数が用いられる。自位置検出装置21は、車両位置処理装置10に内部に備えられてもよいし、車両位置処理装置10の外部に備えられてもよい。
【0027】
自位置情報取得部11aは、検出周期毎に、自車両の移動情報を取得する。自位置情報取得部11aは、検出時点の番号間の自車両の移動情報を算出する。例えば、自位置情報取得部11aは、移動情報として、検出時点の番号間の自車両座標系の移動情報(平行移動及び回転)を算出する。本実施の形態では、
図6に示すように、自位置情報取得部11aは、前回の検出時点の番号i
0−1の自車両座標系を基準にした、今回の検出時点の番号i
0の自車両座標系の移動位置(ΔX0
i0、ΔY0
i0)及び回転角度θ
i0を算出する。
【0028】
1−1−3.履歴位置演算部11c
履歴位置演算部11cは、現在及び過去の複数時点で取得した前方対象物の相対位置及び自車両の移動情報に基づいて、現在の自車両の位置を基準にした、複数時点の前方対象物の履歴位置を算出する。複数時点の前方対象物の履歴位置は、複数の目標対象の位置に対応する。この履歴位置は、複数時点のそれぞれにおいて、その時点の自車両の位置を基準に検出した前方対象物の相対位置を、現在の自車両の位置を基準にした相対位置に変換した位置となる。
【0029】
図7に示すように、自車両が移動すると、現在の自車両の位置(自車両座標系)を基準に見た、過去の前方対象物の相対位置は、自車両の移動量だけ自車両の移動方向とは反対方向に移動すると共に、自車両の回転角度だけ自車両の回転方向とは反対方向に回転する。
【0030】
そこで、履歴位置演算部11cは、検出周期毎に、各検出時点の番号i(i=・・・、i
0−2、i
0−1)で検出した相対位置に対応する履歴位置(Xfh
i、Yfh
i)を、それぞれ、今回の検出時点の番号i
0で検出した自車両座標系の移動量(ΔX0
i0、ΔY0
i0)及び回転角度θ
i0とは逆方向に、移動及び回転を行うアフィン変換を行って、各検出時点の番号で検出した相対位置に対応する履歴位置(Xfh
i、Yfh
i)を更新する。検出周期毎に、各検出時点の履歴位置に対して、周期間の自車両の移動を反映させるアフィン変換を累積的に行って、各検出時点の履歴位置を更新していく。
【0031】
1−2.軌跡生成用データ選択部12
図3のステップS02で、軌跡生成用データ選択部12は、現在の自車両の位置に近い目標対象の位置を含む連続した範囲である軌跡生成範囲を設定し、複数の目標対象の位置の内、軌跡生成範囲に含まれる目標対象の位置を、軌跡生成用の目標対象位置として選択する軌跡生成用データ選択処理(軌跡生成用データ選択ステップ)を実行する。本実施の形態では、目標対象の位置を番号で管理しており、軌跡生成用データ選択部12は、現在の自車両の位置に近い目標対象の位置の番号を含む連続した順番の番号の範囲である軌跡生成範囲を設定し、複数の目標対象の位置の内、軌跡生成範囲に含まれる目標対象の位置を、軌跡生成用の目標対象位置として選択する。現在の自車両の位置に近い目標対象の位置は、現在の自車両よりも前側の目標対象の位置の内、現在の自車両の位置に最も近い目標対象の位置となる。
【0032】
また、本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、現在の自車両の前後方向の位置に近い履歴位置の検出時点の番号を含む連続した検出時点の番号の範囲である軌跡生成範囲を設定し、複数時点の履歴位置の内、軌跡生成範囲に含まれる履歴位置を、軌跡生成用の目標対象位置として選択する。
【0033】
この構成によれば、現在の自車両の前後方向の位置に近い前方対象物の履歴位置を含む連続した検出時点の番号の範囲である軌跡生成範囲に含まれる履歴位置に基づいて目標対象の軌跡を生成することができる。よって、軌跡の生成に用いる前方対象物の履歴位置の数を増加させて、軌跡の生成精度を向上させることができる。
【0034】
また、軌跡生成用データ選択部12は、現在の自車両の前後方向に対する、目標対象の位置の変化方向の角度の絶対値が、判定角度よりも小さくなる、現在の自車両の前後方向の位置に近い目標対象の位置を含む連続した範囲を、軌跡生成範囲に設定する。
【0035】
本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、現在の自車両の前後方向に対する、検出時点の番号間の履歴位置の変化方向の角度の絶対値が、判定角度αjよりも小さくなる、現在の自車両の前後方向の位置に近い履歴位置の番号を含む連続した検出時点の番号の範囲を、軌跡生成範囲に設定する。
【0036】
この構成によれば、現在の自車両の前後方向に対する前方対象物の履歴位置の変化方向の傾きを、現在の自車両の前後方向の位置から前後方向に連続して、判定角度αjより小さくすることができる。履歴位置の変化方向の傾きが大きくなり過ぎると、後述する軌跡の近似精度が悪化するおそれがある。よって、傾きが判定角度αjよりも大きくなる履歴位置を除外して、軌跡の近似精度が悪化することを抑制することができる。また、後述するように、自車両を軌跡に追従させる軌跡追従操舵制御を行う場合は、軌跡の傾きが大きくなり過ぎると、自車両の追従が容易でなくなる。よって、傾きが判定角度αjよりも大きくなる履歴位置を除外して、自車両が追従できる軌跡を生成することができる。
【0037】
例えば、判定角度αjは、π/2(90°)以下の角度に設定される。軌跡生成用データ選択部12は、検出周期、自車両の速度等に応じて判定角度αjを変化させてもよい。例えば、検出周期が短くなるに従って、判定角度αjが減少され、自車両の速度が高くなるに従って、判定角度αjが減少される。
【0038】
本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、複数時点の履歴位置を、現在の自車両の位置よりも前側と後側とに分割して、前側の履歴位置及び後側の履歴位置のそれぞれについて、軌跡生成用の履歴位置を選択する。
【0039】
<前側の処理>
まず、前側の処理について説明する。軌跡生成用データ選択部12は、複数の目標対象の位置の内、現在の自車両よりも前側に位置する前側の目標対象の位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、前側の目標対象の位置について、第1方向の目標対象の位置の変化方向を算出し、前側の目標対象の位置の内、前方向に対する目標対象の位置の変化方向の角度の絶対値が、判定角度αj以上になる位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した位置よりも第2方向側の前側の目標対象の位置を、前側の軌跡生成用の目標対象位置として選択する。
【0040】
ここで、第1方向は、少なくとも現在の自車両の位置に近い前側の目標対象の位置において、前側の目標対象の位置が前方向に変化する方向である。本実施の形態では、第1方向は、過去から現在に向かう方向となり、具体的には、検出時点の番号iが増加する方向となる。第2方向は、少なくとも現在の自車両の位置に近い前側の目標対象の位置において、前側の目標対象の位置が後方向に変化する方向であり、第1方向とは反対方向になる。本実施の形態では、第2方向は、現在から過去に向かう方向となり、具体的には、検出時点の番号iが減少する方向となる。
【0041】
本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、現在及び過去の複数時点の履歴位置の内、現在の自車両よりも前側に位置する前側の履歴位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、前側の履歴位置について、過去から現在に向かう方向(第1方向)の検出時点の番号間の履歴位置の変化方向を算出し、前側の履歴位置の内、前方向に対する履歴位置の変化方向の角度αfの絶対値が、判定角度αj以上になる番号を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した番号よりも古い(第2方向側の)番号の前側の履歴位置を、前側の軌跡生成用の履歴位置として選択する。
【0042】
この前側の処理を、
図8のフローチャートのように構成することができる。ステップS11で、軌跡生成用データ選択部12は、今回及び過去の各検出時点の番号i(i=・・・、i
0−2、i
0−1、i
0)に対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
i、Yfh
i)の内、前方向の位置Xfh
iが0以上になる履歴位置を、前側の履歴位置として選択する。軌跡生成用データ選択部12は、前側の履歴位置に選択された各検出時点の番号の内、前側の最も古い検出時点の番号Nfold、及び前側の最も新しい検出時点の番号Nfnewを設定する。
【0043】
ステップS12で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lを、前側の最も古い検出時点の番号Nfoldに初期設定する(L=Nfold)。そして、ステップS13で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lが、前側の最も新しい検出時点の番号Nfnewよりも小さいか否かを判定し(L<Nfnew)、小さいと判定した場合は、ステップS14に進み、小さくないと判定した場合は、ステップS19に進む。
【0044】
ステップS14で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lに対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
L、Yfh
L)を基準位置A
Lに設定する。ステップS15で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lの次の検出時点の番号L+1に対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
L+1、Yfh
L+1)を比較位置B
L+1に設定する。
【0045】
ステップS16で、
図9及び次式に示すように、軌跡生成用データ選択部12は、基準位置A
L(Xfh
L、Yfh
L)から比較位置B
L+1(Xfh
L+1、Yfh
L+1)に向かう方向の、現在の自車両の前方向(X軸)に対する角度αfを演算する。
【数1】
【0046】
ステップS17で、軌跡生成用データ選択部12は、角度αfの絶対値が、判定角度αj以上になるか否かを判定し(|αf|≧αj)、判定角度αj以上になると判定した場合は、ステップS19に進み、判定角度αj以上にならないと判定した場合は、ステップS18に進む。
【0047】
ステップS18で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lを1つ増加させた後(L=L+1)、ステップS13に進み、ステップS13からステップS17の処理を再び行う。
【0048】
一方、ステップS19で、軌跡生成用データ選択部12は、現在設定されている前側の処理検出時点の番号Lを、前端の軌跡生成検出時点の番号Nfendに設定する(Nfend=L)。そして、軌跡生成用データ選択部12は、次式に示すように、前側の最も古い検出時点の番号Nfoldから前端の軌跡生成検出時点の番号Nfendまでを、前側の軌跡生成範囲Nrngfに設定して処理を終了する。
【数2】
【0049】
<前側処理の挙動>
図10を用いて前側処理の挙動を説明する。処理検出時点の番号L=NfoldからNfold+3までは、今回の処理検出時点の番号Lに対応する履歴位置(基準位置)から次の処理検出時点の番号L+1に対応する履歴位置(比較位置)に向かう方向の角度αfの絶対値が、例えば、80°に設定された判定角度αjよりも小さくなっている。一方、処理検出時点の番号L=Nfold+4で、今回の処理検出時点の番号L=Nfold+4に対応する履歴位置(基準位置)から次の処理検出時点の番号L=Nfold+5に対応する履歴位置(比較位置)に向かう方向の角度αfの絶対値が、80°に設定された判定角度αjよりも大きくなっている。よって、角度αfが大きくなる処理検出時点の番号L=Nfold+5以降は、前側の軌跡生成範囲に含まれず、前側の最も古い検出時点の番号Nfoldから処理検出時点の番号L=Nfold+4までの履歴位置が、前側の軌跡生成範囲に設定されている。
【0050】
<後側の処理>
次に、後側の処理について説明する。軌跡生成用データ選択部12は、複数の目標対象の位置の内、現在の自車両よりも後側に位置する後側の目標対象の位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、後側の目標対象の位置について、第2方向の目標対象の位置の変化方向を算出し、後側の目標対象の位置の内、後方向に対する目標対象の位置の変化方向の角度の絶対値が、判定角度αj以上になる位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した位置よりも第1方向側の後側の目標対象の位置を、後側の軌跡生成用の目標対象位置として選択する。
【0051】
本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、現在及び過去の複数時点の履歴位置の内、現在の自車両よりも後側に位置する後側の履歴位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、後側の履歴位置について、現在から過去に向かう方向(第2方向)の検出時点の番号間の履歴位置の変化方向を算出し、後側の履歴位置の内、後方向に対する履歴位置の変化方向の角度αrの絶対値が、判定角度αj以下になる番号を判定し、判定した番号よりも新しい(第1方向側の)番号の後側の履歴位置を、後側の軌跡生成用の履歴位置として選択する。
【0052】
この後側の処理を、
図11のフローチャートのように構成することができる。ステップS21で、軌跡生成用データ選択部12は、今回及び過去の各検出時点の番号i(i=・・・、i
0−2、i
0−1、i
0)に対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
i、Yfh
i)の内、前方向の位置Xfh
iが0未満になる履歴位置を、後側の履歴位置として選択する。軌跡生成用データ選択部12は、後側の履歴位置に選択された各検出時点の番号の内、後側の最も古い検出時点の番号Nrold、及び後側の最も新しい検出時点の番号Nrnewを設定する。
【0053】
ステップS22で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mを、後側の最も新しい検出時点の番号Nrnewに初期設定する(M=Nrnew)。そして、ステップS23で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mが、後側の最も古い検出時点の番号Nroldよりも大きいか否かを判定し(M>Nrold)、大きいと判定した場合は、ステップS24に進み、大きくないと判定した場合は、ステップS29に進む。
【0054】
ステップS24で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mに対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
M、Yfh
M)を基準位置C
Mに設定する。ステップS25で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mの前の検出時点の番号M−1に対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
M−1、Yfh
M−1)を比較位置D
M−1に設定する。
【0055】
ステップS26で、
図12及び次式に示すように、軌跡生成用データ選択部12は、基準位置C
M(Xfh
M、Yfh
M)から比較位置D
M+1(Xfh
M−1、Yfh
M−1)に向かう方向の、現在の自車両の後方向に対する角度αrを演算する。
【数3】
【0056】
ステップS27で、軌跡生成用データ選択部12は、角度αrの絶対値が、判定角度αj以上になるか否かを判定し(|αr|≧αj)、判定角度αj以上になると判定した場合は、ステップS29に進み、判定角度αj以上にならないと判定した場合は、ステップS28に進む。
【0057】
ステップS28で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mを1つ減少させた後(M=M−1)、ステップS23に進み、ステップS23からステップS27の処理を再び行う。
【0058】
一方、ステップS29で、軌跡生成用データ選択部12は、現在設定されている後側の処理検出時点の番号Mを、後端の軌跡生成検出時点の番号Nrendに設定する(Nrend=M)。そして、軌跡生成用データ選択部12は、次式に示すように、後端の軌跡生成検出時点の番号Nrendから後側の最も新しい検出時点の番号Nrnewまでを、後側の軌跡生成範囲Nrngrに設定して処理を終了する。
【数4】
【0059】
<後側処理の挙動>
図13を用いて後処理の挙動を説明する。処理検出時点の番号M=NrnewからNrnew−2までは、今回の処理検出時点の番号Mに対応する履歴位置(基準位置)から前の処理検出時点の番号M−1に対応する履歴位置(比較位置)に向かう方向の角度αrの絶対値が、例えば、80°に設定された判定角度αjよりも小さくなっている。次の処理検出時点の番号M=Nrnew−3が、後側の最も古い検出時点の番号Nroldであるので、選択処理を終了し、後側の最も新しい検出時点の番号Nrnewから後側の最も古い検出時点の番号Nroldまでの履歴位置が、後側の軌跡生成範囲に設定されている。
【0060】
<前側と前側の軌跡生成範囲の合計>
軌跡生成用データ選択部12は、前側の軌跡生成用の履歴位置と後側の軌跡生成用の履歴位置を合計して、軌跡生成用の履歴位置を設定する。本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、次式に示すように、前側の軌跡生成範囲Nrngfと後側の軌跡生成範囲Nrngrとを合わせて、前端の軌跡生成検出時点の番号Nfendから後端の軌跡生成検出時点の番号Nrendまでを軌跡生成範囲Nrngに設定する。そして、軌跡生成用データ選択部12は、軌跡生成範囲Nrngに対応する履歴位置を、軌跡生成用の履歴位置として選択する。
【数5】
【0061】
1−3.軌跡生成部13
図3のステップS05で、軌跡生成部13は、軌跡生成用の目標対象位置(本例では、履歴位置)に基づいて、目標対象(本例では、前方対象物)の軌跡を生成する軌跡生成処理(軌跡生成ステップ)を実行する。
【0062】
本実施の形態では、軌跡生成部13は、現在の自車両の位置を基準にした自車両座標系において、軌跡を生成するように構成されている。また、軌跡生成部13は、軌跡生成部13は、次式に示すように、前方向の座標軸の値Xを入力変数とし、横方向の座標軸の値Yを出力変数とした多項式を用いた近似により、軌跡を生成するように構成されている。なお、軌跡生成部13は、多項式を用いて生成する軌跡を、軌跡生成範囲内に制限する。
【数6】
【0063】
ここで、hmxは、多項式の最大次数であり、予め設定されている。a
hmx、a
hmx−1、・・・、a
1、a
0は、各次数hmx、hmx−1、・・・、1、0の係数である。Xf
Nrendは、軌跡生成範囲の後端の軌跡生成検出時点の番号Nrendにおける履歴位置の前方向の座標軸の値であり、Xf
Nfendは、軌跡生成範囲の前端の軌跡生成検出時点の番号Nfendにおける履歴位置の前方向の座標軸の値である。軌跡生成部13は、軌跡生成用の履歴位置と多項式との誤差が小さくなるように、最小二乗法等を用いて、各次数の係数aを調整する。
【0064】
図14に、本実施の形態と異なる比較例を示す。比較例では、角度αfの絶対値が、判定角度αjより大きくなる範囲も、前側の軌跡生成範囲に設定されている。そのため、軌跡生成において、履歴位置の変化角度が大きくなる部分も含めて近似するので、近似精度が悪化している。多項式の次数を増加させれば近似精度の向上が見込まれるが、次数の増加分だけ、軌跡生成用の履歴位置の数を増加させる必要があり、望ましくない。また、
図14の例のように、履歴位置の変化角度が90°以上になると、同様の前方向(X軸)の値に対して、横方向(Y軸)の値が異なる複数の履歴位置が生じるため、入力変数を前方向(X軸)の値とする多項式を用いた近似では、近似誤差が大きくなる。一方、本実施の形態では、
図15に示すように、履歴位置の変化角度が大きくなる部分が除かれているので、軌跡の近似精度が高くなっている。
【0065】
1−6.操舵制御部14
図3のステップS04で、操舵制御部14は、自車両が軌跡に追従するように自車両の操舵角を制御する軌跡追従操舵制御を行う操舵制御処理(操舵制御ステップ)を実行する。
【0066】
本実施の形態では、
図16に示すように、操舵制御部14は、現在の自車両の位置よりも前方注視距離Xwだけ前方の軌跡の位置を、自車両の横方向の目標位置Ytに設定し、自車両の横方向の位置が、目標位置Ytに近づくように、操舵角を制御する。具体的には、操舵制御部14は、次式に示すように、式(6)の前方向の座標軸の値Xに、前方注視距離Xwを入力し、算出した横方向の座標軸の値Yを、目標位置Ytに設定する。
【数7】
【0067】
操舵制御部14は、目標位置Ytに応じて操舵角の指令値を設定する。現在の自車両の横方向の位置はY=0であるので、操舵制御部14は、目標位置Ytが正の値である場合は、目標位置Ytに応じた左方向の角度を操舵角の指令値に設定し、目標位置Ytが負の値である場合は、目標位置Ytに応じた右方向の角度を操舵角の指令値に設定する。
【0068】
操舵制御部14は、操舵角の指令値を、通信装置等を介して操縦装置24に伝達する。操縦装置24は、電動パワーステアリング装置により構成されており、車輪の操舵角が、操舵角の指令値に一致するように、操舵用の電動モータを駆動制御する。
【0069】
操舵制御部14は、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendに応じて前方注視距離Xwを設定する。操舵制御部14は、前方注視距離Xwを、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendよりも短い距離に設定する。軌跡の前方向の端点Xf
Nfendは、軌跡生成範囲の前端の履歴位置の前方向の値Xf
Nfendとなる。
【0070】
この構成によれば、軌跡生成範囲の前端の変化に合わせて、前方注視距離Xwを軌跡生成範囲内に適切に設定することができる。
【0071】
本実施形態では、操舵制御部14は、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendと前方注視距離Xwとの関係が予め設定されたマップデータを参照し、現在の軌跡の前方向の端点Xf
Nfendに対応する前方注視距離Xwを算出する。
【0072】
図17にマップデータの設定例を示すように、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが上限値X1よりも大きい範囲では、前方注視距離Xwは、上限値X1よりも小さい固定値X2に設定される。軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが上限値X1よりも小さい範囲では、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが減少するに従って、前方注視距離Xwが減少され、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendよりも小さくされる。
【0073】
この構成によれば、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが上限値X1よりも大きい範囲では、前方注視距離Xwを固定値X2に設定して、前方注視距離Xwが前方に離れて設定され過ぎないようにでき、軌跡追従操舵制御のための適切な距離に設定できる。一方、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが上限値X1よりも減少するに従って、前方注視距離Xwを減少させ、前方注視距離Xwを軌跡生成範囲内に設定することができる。
【0074】
本実施の形態では、操舵制御部14は、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが、下限値X3以上である場合は、軌跡追従操舵制御を実行し、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが、下限値X3よりも小さい場合は、軌跡追従操舵制御を実行しないように構成されている。そのため、
図17のマップデータでは、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが下限値X3よりも小さい範囲では、前方注視距離Xwが設定されていない。
【0075】
この構成によれば、軌跡の前方向の端点Xf
Nfendが自車両に近過ぎて、適切な前方注視距離Xwを設定できないときは、軌跡追従操舵制御を実行しないようにできる。
【0076】
また、本実施の形態では、操舵制御部14は、軌跡生成用の履歴位置の個数が、多項式の最大次数hmx+1以上である場合に、軌跡追従操舵制御を実行し、軌跡生成用の履歴位置の個数が、最大次数hmx+1よりも小さい場合に、軌跡追従操舵制御を実行しないように構成されている。
【0077】
多項式の係数の決定のためには、多項式の最大次数hmx+1以上の軌跡生成用の履歴位置の個数が必要である。上記の構成によれば、軌跡生成用の履歴位置の個数が、多項式の最大次数hmx+1よりも小さい場合は、近似精度が低い多項式により生成した軌跡を用いた、軌跡追従操舵制御を行わないようにできる。
【0078】
2.実施の形態2
実施の形態2に係る車両位置処理装置10について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る車両位置処理装置10の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、軌跡生成用データ選択部12の処理が異なる。
【0079】
本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、軌跡生成用データ選択部12は、現在の自車両の前後方向に対する、目標対象の位置の変化方向の角度の絶対値が、判定角度αjよりも小さくなる、現在の自車両の前後方向の位置に近い目標対象の位置を含む連続した範囲を、軌跡生成範囲に設定するように構成されている。
【0080】
しかし、本実施の形態では、判定角度αjがπ/2(90°)に設定されており、軌跡生成用データ選択部12の詳細な処理が、実施の形態1と異なる。
【0081】
本実施の形態でも、軌跡生成用データ選択部12は、複数時点の履歴位置を、現在の自車両の位置よりも前側と後側とに分割して、前側の履歴位置及び後側の履歴位置のそれぞれにおいて、軌跡生成用の履歴位置を選択する。
【0082】
<前側の処理>
まず、前側の処理について説明する。軌跡生成用データ選択部12は、複数の目標対象の位置の内、現在の自車両よりも前側に位置する前側の目標対象の位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、前側の目標対象の位置の内、第1方向で、目標対象の位置が後方向に変化する位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した位置よりも第2方向側の前側の目標対象の位置を、前側の軌跡生成用の目標対象位置として選択する。
【0083】
ここで、実施の形態1と同様に、第1方向は、少なくとも現在の自車両の位置に近い前側の目標対象の位置において、前側の目標対象の位置が前方向に変化する方向である。本実施の形態では、第1方向は、過去から現在に向かう方向となり、具体的には、検出時点の番号iが増加する方向となる。第2方向は、少なくとも現在の自車両の位置に近い前側の目標対象の位置において、前側の目標対象の位置が後方向に変化する方向であり、第1方向とは反対方向になる。本実施の形態では、第2方向は、現在から過去に向かう方向となり、具体的には、検出時点の番号iが減少する方向となる。
【0084】
本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、現在及び過去の複数時点の履歴位置の内、現在の自車両よりも前側に位置する前側の履歴位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、前側の履歴位置の内、過去から現在に向かう方向(第1方向)の検出時点の番号間で、履歴位置が後方向に変化する番号を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した番号よりも古い(第2方向側の)番号の前側の履歴位置を、前側の軌跡生成用の履歴位置として選択する。この履歴位置が後方向に変化する時点が、自車両の前後方向に対する、履歴位置の変化方向の角度の絶対値が、π/2に設定された判定角度αjよりも大きくなる時点である。
【0085】
この前側の処理を、
図18のフローチャートのように構成することができる。ステップS31で、軌跡生成用データ選択部12は、今回及び過去の各検出時点の番号i(i=・・・、i
0−2、i
0−1、i
0)に対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
i、Yfh
i)の内、前方向の位置Xfh
iが0以上になる履歴位置を、前側の履歴位置として選択する。軌跡生成用データ選択部12は、前側の履歴位置に選択された各検出時点の番号の内、前側の最も古い検出時点の番号Nfold、及び前側の最も新しい検出時点の番号Nfnewを設定する。
【0086】
ステップS32で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lを、前側の最も古い検出時点の番号Nfoldに初期設定する(L=Nfold)。そして、ステップS33で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lが、前側の最も新しい検出時点の番号Nfnewよりも小さいか否かを判定し(L<Nfnew)、小さいと判定した場合は、ステップS34に進み、小さくないと判定した場合は、ステップS38に進む。
【0087】
ステップS34で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lに対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
L、Yfh
L)を基準位置A
Lに設定する。ステップS35で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lの次の検出時点の番号L+1に対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
L+1、Yfh
L+1)を比較位置B
L+1に設定する。
【0088】
ステップS36で、軌跡生成用データ選択部12は、比較位置B
L+1の前方向の位置Xfh
L+1が、基準位置A
Lの前方向の位置Xfh
L以下になるか否かを判定し(Xfh
L+1≦Xfh
L)、以下になると判定した場合は、ステップS38に進み、以下にならないと判定した場合は、ステップS37に進む。
【0089】
ステップS37で、軌跡生成用データ選択部12は、前側の処理検出時点の番号Lを1つ増加させた後(L=L+1)、ステップS33に進み、ステップS33からステップS36の処理を再び行う。
【0090】
一方、ステップS38で、軌跡生成用データ選択部12は、現在設定されている前側の処理検出時点の番号Lを、前端の軌跡生成検出時点の番号Nfendに設定する(Nfend=L)。そして、軌跡生成用データ選択部12は、式(2)に示したように、前側の最も古い検出時点の番号Nfoldから前端の軌跡生成検出時点の番号Nfendまでを、前側の軌跡生成範囲Nrngfに設定して処理を終了する。
【0091】
<前側処理の挙動>
図19を用いて前側処理の挙動を説明する。処理検出時点の番号L=NfoldからNfold+3までは、今回の処理検出時点の番号Lに対応する履歴位置(基準位置)の前方向の位置Xfh
Lが、次の処理検出時点の番号L+1に対応する履歴位置(比較位置)の前方向の位置Xfh
L+1よりも大きくなっている。一方、処理検出時点の番号L=Nfold+4で、今回の処理検出時点の番号L=Nfold+4に対応する履歴位置(基準位置)の前方向の位置Xfh
Nfold+4が、次の処理検出時点の番号L=Nfold+5に対応する履歴位置(比較位置)の前方向の位置Xfh
Nfold+5以下になっている。よって、処理検出時点の番号L=Nfold+5以降は、前側の軌跡生成範囲に含まれず、前側の最も古い検出時点の番号Nfoldから処理検出時点の番号L=Nfold+4までの履歴位置が、前側の軌跡生成範囲に設定されている。この選択により、実施の形態1において
図14の比較例、及び
図15を用いて説明したように、軌跡の近似精度が高くなる。
【0092】
<後側の処理>
次に、後側の処理について説明する。軌跡生成用データ選択部12は、複数の目標対象の位置の内、現在の自車両よりも後側に位置する後側の目標対象の位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、後側の目標対象の位置の内、第2方向で、目標対象の位置が前方向に変化する位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した位置よりも第1方向側の後側の目標対象の位置を、後側の軌跡生成用の目標対象位置として選択する。
【0093】
本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、現在及び過去の複数時点の履歴位置の内、現在の自車両よりも後側に位置する後側の履歴位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、後側の履歴位置の内、現在から過去に向かう方向(第2方向)の検出時点の番号間で、履歴位置が前方向に変化する番号を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した番号よりも新しい(第1方向側の)番号の後側の履歴位置を、後側の軌跡生成用の履歴位置として選択する。この履歴位置が前方向に変化する時点が、自車両の前後方向に対する、履歴位置の変化方向の角度の絶対値が、π/2に設定された判定角度αjよりも大きくなる時点である。
【0094】
この後側の処理を、
図20のフローチャートのように構成することができる。ステップS41で、軌跡生成用データ選択部12は、今回及び過去の各検出時点の番号i(i=・・・、i
0−2、i
0−1、i
0)に対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
i、Yfh
i)の内、前方向の位置Xfh
iが0未満になる履歴位置を、後側の履歴位置として選択する。軌跡生成用データ選択部12は、後側の履歴位置に選択された各検出時点の番号の内、後側の最も古い検出時点の番号Nrold、及び後側の最も新しい検出時点の番号Nrnewを設定する。
【0095】
ステップS42で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mを、後側の最も新しい検出時点の番号Nrnewに初期設定する(M=Nrnew)。そして、ステップS43で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mが、後側の最も古い検出時点の番号Nroldよりも大きいか否かを判定し(M>Nrold)、大きいと判定した場合は、ステップS44に進み、大きくないと判定した場合は、ステップS48に進む。
【0096】
ステップS44で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mに対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
M、Yfh
M)を基準位置C
Mに設定する。ステップS45で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mの前の検出時点の番号M−1に対応する前方対象物の履歴位置(Xfh
M−1、Yfh
M−1)を比較位置D
M−1に設定する。
【0097】
ステップS46で、
図20に示すように、軌跡生成用データ選択部12は、比較位置D
M−1の前方向の位置Xfh
M−1が、基準位置C
Mの前方向の位置Xfh
M以上になるか否かを判定し(Xfh
M−1≧Xfh
M)、以上になると判定した場合は、ステップS48に進み、以上にならないと判定した場合は、ステップS47に進む。
【0098】
ステップS47で、軌跡生成用データ選択部12は、後側の処理検出時点の番号Mを1つ減少させた後(M=M−1)、ステップS43に進み、ステップS43からステップS46の処理を再び行う。
【0099】
一方、ステップS48で、軌跡生成用データ選択部12は、現在設定されている後側の処理検出時点の番号Mを、後端の軌跡生成検出時点の番号Nrendに設定する(Nrend=M)。そして、軌跡生成用データ選択部12は、式(4)に示したように、後端の軌跡生成検出時点の番号Nrendから後側の最も新しい検出時点の番号Nrnewまでを、後側の軌跡生成範囲Nrngrに設定して処理を終了する。
【0100】
<後側処理の挙動>
図21を用いて後処理の挙動を説明する。処理検出時点の番号M=NrnewからNrnew―2までは、今回の処理検出時点の番号Mに対応する履歴位置(基準位置)の前方向の位置Xfh
Mが、前の処理検出時点の番号M−1に対応する履歴位置(比較位置)の前方向の位置Xfh
M−1よりも小さくなっている。次の処理検出時点の番号M=Nrnew−3が、後側の最も古い検出時点の番号Nroldであるので、選択処理を終了し、後側の最も新しい検出時点の番号Nrnewから後側の最も古い検出時点の番号Nroldまでの履歴位置が、後側の軌跡生成範囲に設定されている。
【0101】
<前側と前側の軌跡生成範囲の合計>
軌跡生成用データ選択部12は、前側の軌跡生成用の履歴位置と後側の軌跡生成用の履歴位置を合計して、軌跡生成用の履歴位置を設定する。本実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、式(5)に示したように、前側の軌跡生成範囲Nrngfと後側の軌跡生成範囲Nrngrとを合わせて、前端の軌跡生成検出時点の番号Nfendから後端の軌跡生成検出時点の番号Nrendまでを軌跡生成範囲Nrngに設定する。軌跡生成用データ選択部12は、軌跡生成範囲Nrngに対応する履歴位置を軌跡生成用の履歴位置として選択する。
【0102】
3.実施の形態3
実施の形態3に係る車両位置処理装置10について説明する。上記の実施の形態1又は2と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る車両位置処理装置10の基本的な構成は実施の形態1又は2と同様であるが、目標対象位置取得部11の処理が異なる。
【0103】
本実施の形態でも、目標対象位置取得部11は、目標対象の位置を取得する。しかし、本実施の形態では、
図23に示すように、目標対象は、地図データから取得した道路地点とされており、複数の目標対象の位置は、自車両が走行する道路の進行方向に沿って順番に並んだ複数の道路地点の位置とされている。また、本実施の形態でも、道路地点の位置を番号により管理しており、順番の番号iとして、道路の進行方向に沿った順番の番号が設定されている。
図22に示すように、目標対象位置取得部11は、自位置情報取得部11a、及び道路位置取得部11dを備えている。
【0104】
自位置情報取得部11aは、現在の自車両の位置を取得する。本実施の形態では、自位置情報取得部11aは、検出周期毎に、自位置検出装置21の出力信号に基づいて、現在の自車両の位置を取得するように構成されている。
【0105】
自位置検出装置21は、自車両の位置情報を検出する装置である。自位置検出装置21には、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機、ビーコン受信機等の各種の検出装置の1つ又は複数が用いられる。自位置検出装置21は、車両位置処理装置10に内部に備えられてもよいし、カーナビゲーション装置等の車両位置処理装置10の外部装置に備えられ、通信装置を介してデータを取得してもよい。高精度GPSが用いられる場合は、GPS受信機による自車両の検出位置がそのまま用いられてもよいが、マップマッチングにより特定された自車両の位置が用いられてもよい。
【0106】
図23に示すように、道路位置取得部11dは、検出周期毎に、現在の自車両の位置に基づいて、地図データ11eから、自車両が走行する道路の進行方向に沿って順番に並んだ複数の道路地点の位置を、複数の目標対象の位置として取得する。道路位置取得部11dは、順番の番号iとして、道路の進行方向に沿った順番の番号を設定する。道路地点の位置は、自車両が走行している道路又は走行レーンの幅方向の中心部の位置に設定される。
【0107】
また、本実施の形態では、
図23に示すように、道路位置取得部11dは、道路の進行方向に沿った、現在の自車両の位置よりも前方の道路地点の位置だけでなく、現在の自車両の位置よりも後方の道路地点の位置も取得する。そして、道路位置取得部11dは、検出周期毎に、取得した複数の道路地点の位置に対して、後方から前方に向かって順番に増加する道路地点の番号iを設定する。
【0108】
地図データには、道路の各地点の位置情報(緯度、経度、高度)等の道路情報が記憶されている。地図データは、車両位置処理装置10のフラッシュメモリ等の記憶装置91に記憶されていてもよいし、カーナビゲーション装置等の外部装置の記憶装置に記憶され、通信装置を介してデータを取得してもよい。ナビゲーション機能により、経路案内が行われている場合は、案内経路の進行方向に沿った道路地点の位置が取得されてもよい。
【0109】
道路位置取得部11dは、検出周期毎に、取得した複数の道路地点の位置に対して、座標変換を行って、自車両座標系における、現在の自車両の位置を基準にした複数の道路地点の相対位置座標を算出する。
【0110】
そして、軌跡生成用データ選択部12は、現在の自車両の前後方向の位置に近い道路地点の位置の番号を含む連続した道路地点の番号の範囲である軌跡生成範囲を設定し、複数の道路地点の位置の内、軌跡生成範囲に含まれる道路地点の位置を、軌跡生成用の目標対象位置として選択する。
【0111】
軌跡生成用データ選択部12は、現在の自車両の前後方向に対する、道路地点の番号間の道路地点の位置の変化方向の角度αsの絶対値が、判定角度αjよりも小さくなる、現在の自車両の前後方向の位置に近い道路地点の位置の番号を含む連続した順番の番号の範囲を、軌跡生成範囲に設定するように構成されている。
【0112】
この構成によれば、現在の自車両の前後方向に対する道路地点の位置の変化方向の傾きαsを、現在の自車両の前後方向の位置から前後方向に連続して、判定角度αjより小さくすることができる。道路地点の位置の変化方向αsの傾きが大きくなり過ぎると、軌跡の近似精度が悪化するおそれがある。よって、傾きαsが判定角度αjよりも大きくなる道路地点の位置を除外して、軌跡の近似精度が悪化することを抑制することができる。また、自車両を軌跡に追従させる軌跡追従操舵制御を行う場合は、軌跡の傾きが大きくなり過ぎると、自車両の追従が容易でなくなる。よって、傾きαsが判定角度αjよりも大きくなる道路地点の位置を除外して、自車両が追従できる軌跡を生成することができる。
【0113】
<実施の形態1と同様に構成される場合>
実施の形態1と同様に構成される場合は、軌跡生成用データ選択部12は、複数の道路地点の位置の内、現在の自車両よりも前側に位置する前側の道路地点の位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、前側の道路地点の位置について、第1方向の順番の番号間の道路地点の位置の変化方向を算出し、前側の道路地点の位置の内、前方向に対する道路地点の位置の変化方向の角度の絶対値が、判定角度αj以上になる番号を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した番号よりも第2方向側の番号の前側の道路地点の位置を、前側の軌跡生成用の道路地点の位置として選択する。
【0114】
ここで、第1方向は、道路の進行方向に沿って後方から前方に向かう方向となり、具体的には、道路地点の番号iが増加する方向となる。第2方向は、道路の進行方向に沿って前方から後方に向かう方向となり、具体的には、道路地点の番号iが減少する方向となる。
【0115】
また、軌跡生成用データ選択部12は、複数の道路地点の位置の内、現在の自車両よりも後側に位置する後側の道路地点の位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、後側の道路地点の位置について、第2方向の順番の番号間の道路地点の位置の変化方向を算出し、後側の道路地点の位置の内、後方向に対する道路地点の位置の変化方向の角度の絶対値が、判定角度αj以上になる番号を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した番号よりも第1方向側の番号の後側の道路地点の位置を、後側の軌跡生成用の道路地点の位置として選択する。
【0116】
この場合は、実施の形態1における検出時点の番号iを、道路地点の番号iに置き替え、実施の形態1における履歴位置を、道路地点の位置に置き替えることによって、
図8のフローチャート、
図11のフローチャートを用いて説明した処理と同様に構成される。よって、説明は省略する。
【0117】
<実施の形態2と同様に構成される場合>
実施の形態2と同様に構成される場合は、軌跡生成用データ選択部12は、複数の道路地点の位置の内、現在の自車両よりも前側に位置する前側の道路地点の位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、前側の道路地点の位置の内、第1方向の順番の番号間で、道路地点の位置が後方向に変化する番号を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した番号よりも第2方向側の番号の前側の道路地点の位置を、前側の軌跡生成用の道路地点の位置として選択する。
【0118】
ここで、同様に、第1方向は、道路の進行方向に沿って後方から前方に向かう方向となり、具体的には、道路地点の番号iが増加する方向となる。第2方向は、道路の進行方向に沿って前方から後方に向かう方向となり、具体的には、道路地点の番号iが減少する方向となる。
【0119】
また、軌跡生成用データ選択部12は、複数の道路地点の位置の内、現在の自車両よりも後側に位置する後側の道路地点の位置を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、後側の道路地点の位置の内、第2方向の順番の番号間で、道路地点の位置が前方向に変化する番号を判定する。軌跡生成用データ選択部12は、判定した番号よりも第1方向側の番号の後側の道路地点の位置を、後側の軌跡生成用の道路地点の位置として選択する。
【0120】
この場合は、実施の形態2における検出時点の番号iを、道路地点の番号iに置き替え、実施の形態2における履歴位置を、道路地点の位置に置き替えることによって、
図18のフローチャート、
図20のフローチャートを用いて説明した処理と同様に構成される。よって、説明は省略する。
【0121】
〔その他の実施の形態〕
最後に、本願のその他の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施の形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0122】
(1)上記の各実施の形態では、車両位置処理装置10が操舵制御部14を備えている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、車両位置処理装置10が操舵制御部14を備えずに、目標対象位置取得部11から軌跡生成部13までを備えてもよい。この場合は、車両位置処理装置10を軌跡生成装置とも称することができる。なお、各実施の形態のように、車両位置処理装置10が操舵制御部14を備えている場合は、車両位置処理装置10を車両制御装置とも称する。
【0123】
(2)上記の実施の形態1、2では、前方物体検出装置20は、自車両の前方に存在する先行車両を検出し、自車両に対する先行車両の相対位置を検出する場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、前方物体検出装置20は、自車両の前方に存在する先行車両以外の物を、前方対象物として検出してもよい。例えば、前方物体検出装置20は、自車両の走行レーンに隣接するレーンを走行している先行車両の相対値位置を検出し、隣接レーンの先行車両の軌跡を生成してもよい。この場合は、軌跡追従操舵制御を行わず、予防安全の制御を行うように構成されてもよい。
【0124】
(3)上記の各実施の形態では、軌跡生成用データ選択部12は、前側の軌跡生成用の目標対象位置に加えて、後側の軌跡生成用の目標対象位置を選択するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、軌跡生成用データ選択部12は、前側の軌跡生成用の目標対象位置の選択のみを行い、後側の軌跡生成用の目標対象位置の選択を行わず、軌跡生成部13は、前側の軌跡生成用の目標対象位置のみに基づいて、目標対象の軌跡を生成してもよい。
【0125】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。