(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961145
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】平面加熱構造
(51)【国際特許分類】
H05B 3/84 20060101AFI20211025BHJP
H05B 3/12 20060101ALI20211025BHJP
H05B 3/16 20060101ALI20211025BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20211025BHJP
H05B 3/26 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
H05B3/84
H05B3/12 A
H05B3/16
H05B3/20 355A
H05B3/26
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-500952(P2020-500952)
(86)(22)【出願日】2018年3月23日
(65)【公表番号】特表2020-516044(P2020-516044A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】CN2018080257
(87)【国際公開番号】WO2018171731
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】201710183435.8
(32)【優先日】2017年3月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】317001367
【氏名又は名称】カンブリオス フィルム ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ジー フースン
(72)【発明者】
【氏名】チェン インジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ユー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン フーボ
(72)【発明者】
【氏名】スー フーユ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー シューグアン
(72)【発明者】
【氏名】タン チュンヤー
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェンダー
【審査官】
西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−103041(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/108656(WO,A1)
【文献】
特表2009−505358(JP,A)
【文献】
特表2016−515280(JP,A)
【文献】
特開2016−119305(JP,A)
【文献】
実開昭62−000459(JP,U)
【文献】
実開平04−092397(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02− 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板層と、
前記ガラス基板層上に配置された複数の金属ナノワイヤを有し、電気エネルギーを受け取って該電気エネルギーを熱エネルギーに変換する、前記金属ナノワイヤの92%以上が5μmを超える長さを有する、ナノ金属透明導電層と、
前記ナノ金属透明導電層上に配置され、前記ナノ金属透明導電層を完全に覆う第1パッシベーション層であって、前記第1パッシベーション層の熱伝導率は、前記ガラス基板層の熱伝導率よりも低く、前記電気エネルギーから変換された前記熱エネルギーの大部分は、前記ガラス基板層から導電又は放射により放出され、
最短の相対距離を有する平面加熱構造の2つの対向する側面に位置する2つの電極であって、電圧は2つの前記電極間に印加され、
前記電圧は、実質的に40ボルトであり、前記平面加熱構造が、表面の平方センチメートル当たり0.07Wの電力を消費するとき、前記平面加熱構造は2分以内に12℃±1℃の温度上昇を得、
2つの前記電極に隣接する前記ナノ金属透明導電層の断面積は、2つの前記電極から離れた前記ナノ金属透明導電層の断面積より小さい、
平面加熱構造。
【請求項2】
前記金属ナノワイヤのアスペクト比が10から100である、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項3】
前記ナノ金属透明導電層の閾値表面負荷レベルは、0.05μg/cm2から10μg/cm2の間である、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項4】
前記平面加熱構造は、透過率が85%を超え、ヘイズが3%未満であるという条件を満たす、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項5】
前記第1パッシベーション層は、以下の化合物及びそれらの組み合わせのいずれかを有する:
500以下の分子量を有する小さな有機分子、
2から100モノマーを有するオリゴマー、又は、
100を超えるモノマーを有するポリマー、
150℃以上の沸点を有するいずれかの化合物、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項6】
前記ナノ金属透明導電層はマトリックス層をさらに含み、
前記マトリックス層は前記ガラス基板層上に配置され、前記金属ナノワイヤを接着させ、
前記マトリックス層の厚さは10nmから5μmであり、
前記マトリックス層の屈折率は1.3から2.5である、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項7】
前記金属ナノワイヤは、以下のパターン層及びそれらの組み合わせのいずれかを形成する:
ドット、多角形、インターレース線、同心円、又は円状配列、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項8】
前記第1パッシベーション層に含まれる化合物は、ロジウム塩、亜鉛、又はカドミウム塩のいずれか及びそれらの組み合わせである、
請求項5に記載の平面加熱構造。
【請求項9】
前記第1パッシベーション層に含まれる化合物は、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、又はアスコルビン酸のいずれか及びそれらの組み合わせである、
請求項5に記載の平面加熱構造。
【請求項10】
前記ガラス基板層と前記ナノ金属透明導電層との間に配置された第2パッシベーション層をさらに備え、
前記第2パッシベーション層は、以下の化合物及びそれらの組み合わせのいずれかを有する:
500以下の分子量を有する小さな有機分子、
2から100モノマーを有するオリゴマー、又は、
100を超えるモノマーを有するポリマー、
150℃以上の沸点を有するいずれかの化合物、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項11】
前記第2パッシベーション層に含まれる化合物は、ロジウム塩、亜鉛、カドミウム塩、ナトリウムアスコルビン酸塩、カリウムアスコルビン酸塩、又はアスコルビン酸のいずれか及びそれらの組み合わせである、
請求項10に記載の平面加熱構造。
【請求項12】
前記ナノ金属透明導電層に近い前記ガラス基板層の表面に形成されたインク層をさらに備え、
前記インク層は視覚的な干渉を避けるために2つの前記電極を覆う、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項13】
前記第1パッシベーション層は、前記ガラス基板層から離れた前記ナノ金属透明導電層の表面に直接形成されるか、接着層を介して結合される、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項14】
前記ガラス基板層と前記ナノ金属透明導電層との間に配置された光学機能層をさらに含む、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項15】
前記ナノ金属透明導電層は、反射防止材料又は抗UV材料の少なくとも一方の粒子又はコーティング剤を含む、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項16】
前記平面加熱構造の少なくとも1つの外側に形成され、前記ガラス基板層、前記ナノ金属透明導電層、及び前記第1パッシベーション層の少なくとも1つの側面を少なくともカプセル化する補強接着剤をさらに含む、
請求項1に記載の平面加熱構造。
【請求項17】
前記補強接着剤は、硬化プロセスによる液体接着剤の固化によって形成される、
請求項16に記載の平面加熱構造。
【請求項18】
フレキシブル基板層と、
前記フレキシブル基板層上に配置された複数の金属ナノワイヤを有し、電気エネルギーを受け取って該電気エネルギーを熱エネルギーに変換する、前記金属ナノワイヤの92%以上が5μmを超える長さを有する、ナノ金属透明導電層と、
前記ナノ金属透明導電層上に配置された接着層と、
前記ナノ金属透明導電層から離れた前記接着層の表面上に形成された剥離フィルムと、
前記ナノ金属透明導電層上に配置され、前記ナノ金属透明導電層を完全に覆う第1パッシベーション層であって、前記第1パッシベーション層の熱伝導率は、前記フレキシブル基板層の熱伝導率よりも低く、前記電気エネルギーから変換された前記熱エネルギーの大部分は、前記フレキシブル基板層から導電又は放射により放出され、
最短の相対距離を有する平面加熱構造の2つの対向する側面に位置する2つの電極であって、電圧は2つの前記電極間に印加され、
前記電圧は、実質的に40ボルトであり、前記平面加熱構造が、表面の平方センチメートル当たり0.07Wの電力を消費するとき、前記平面加熱構造は2分以内に12℃±1℃の温度上昇を得、
2つの前記電極に隣接する前記ナノ金属透明導電層の断面積は、2つの前記電極から離れた前記ナノ金属透明導電層の断面積より小さい、
ガラスに接着するための、平面加熱構造。
【請求項19】
前記フレキシブル基板層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド(PI)、又はポリウレタン(PU)のいずれかの材料及びそれらの組み合わせである、
請求項18に記載の平面加熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月24日に提出された中国特許出願第201710183435.8に対する優先権を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、平面加熱構造に関する。より具体的には、本開示は、高い光透過率及び均一な加熱を有する平面加熱構造に関する。
【背景技術】
【0003】
ドライバーの視角の明瞭さと幅を確保するために、自動車産業は気候によって引き起こされる様々な問題に直面している。それらの1つは、自動車の内側と外側の温度差によって引き起こされる、自動車のフロント及びリアのフロントガラスの結露問題である。自動車のフロント及びリアのフロントガラスに結露した水分は、いわゆるウィンドウフォグ現象を発生させる。この現象は、フロント及びリアのフロントガラスを通した視認性を明らかに大幅に低下させ、ドライバーの視角と視力を著しく低下させる。
【0004】
さらに、低温環境では、車両の窓に積もった雪の霜を取り除く方法は、長年議論されてきた問題の1つである。ガラス表面全体に沿って形成された固い霜又は溶解してから再凍結した古い雪の層のために、ドライバーは、窓の損傷の危険を伴う厳しい寒さの中で、固い雪の霜を取り除くために、長時間自動車の外に留まる必要がある。
【0005】
上記のウィンドウフォグ/霜の問題を解決するために、開発された2つの主なタイプの技術がある。一方は曇り止め/霜止めで、他方は曇り取り/霜取りである。曇り取り/霜取り技術では、主流の実装方法は、窓ガラスの表面に金属ワイヤを配し、電流を流すことである。アクティブ又はパッシブの電子素子がエネルギーを消費しない状況では、エネルギー変換により窓の表面に分布する金属ワイヤが加熱され、金属ワイヤが取り付けられている領域を囲む窓ガラスの温度も上昇する。窓ガラス全体の温度を上げることで、フォグ現象を解決する。長年使用されてきた技術の1つに、フォードの「Quickclear」がある。これは、2層のガラスの間に金属製の電熱線を埋め込む。しかし、金属ワイヤを使用して温度を上げて曇り/雪を除去するこの方法には、かなりの問題と欠点がある。
【0006】
まず、金属ワイヤとガラス表面の組み合わせは簡単ではない。不完全な取り付けに起因する欠陥が頻繁に発生するか、1つの部品は取り付けられているが他の部品が脱落しているため、同様のワイヤが取り付けられたガラスは不均一な熱を発生する。状況が深刻な場合、曇り取り/霜取り効果が影響を受けたり、ガラスが損傷したりする。
【0007】
また、金属ワイヤは透明ではないため、リアウィンドウガラスのみがこの技術を利用できるが、フロントガラスと自動車のサイドガラスはこの技術を使用して霜取りを行うことはできない。それに加えて、金属ワイヤの幅を制御する必要があり、ワイヤの間隔もかなりの距離に維持して、窓からの視認性を維持する必要がある。従って、同じ窓ガラス片でも、金属ワイヤからの距離に応じて不均一な加熱により温度差が生じる傾向がある。その結果、一部の曇り/霜は除去されるが、死角の曇り/霜は依然として存在する。
【0008】
金属ワイヤ自体の接触が不十分な場合、又は、金属ワイヤと外部電源の接触が不十分な場合、ブレークポイントが電源に近い限り、ブレークポイントの後の電熱線はエネルギー不足のために機能を失う。そのため、このタイプの技術の信頼性は高くなく、異常が発生しやすくなる。異常が発生した場合、これを修復する唯一の方法は、窓ガラス全体を交換することである。これは、電熱線が2層のガラスの間に埋め込まれ、しっかり固定されているためである。コストが高すぎるため、普及率に深刻な影響を及ぼす。
【0009】
さらに、電熱線を使用して曇り取り/霜取りする技術は、金属ワイヤがゆっくり熱くなるのを待つ必要がある。特に気候が寒い場合や過度に湿っている場合は、曇り/霜が除去されるまでより長い時間待つ必要がある。ドライバーが自動車を始動して運転することを切望しているとき、この補助は助けになるには遅すぎる。ドライバーが待ちたくなく、運転を断行する場合、危険な運転の問題が発生する。ドライバーが影響を受けるだけでなく、全体的な交通安全も確保できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の理由により、平面加熱構造を提供することにより、不均一な加熱、不十分な透明性、長時間の待機を含む問題を解決する必要があり、これは業界が達成したい課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、ターゲットを均一に加熱することができ、優れた透明性を有し、温度をデフォルト温度まで迅速に上昇させることができる平面加熱構造を提供する。
【0012】
平面加熱構造が提供される。平面加熱構造は、ガラス基板層、ナノ金属透明導電層、及び第1パッシベーション層を含む。ナノ金属透明導電層は、ガラス基板層上に配置され、電圧を受け取って熱エネルギーを生成する。第1パッシベーション層は、ナノ金属透明導電層上に配置され、ナノ金属透明導電層を完全に覆う。
【0013】
本開示は、ガラスに結合するための平面加熱構造を提供する。平面加熱構造は、フレキシブル基板層、ナノ金属透明導電層、接着層、及び剥離フィルムを含む。ナノ金属透明導電層は、フレキシブル基板層上に配置され、電圧を受け取って熱エネルギーを生成する。接着層は、ナノ金属透明導電層上に配置される。剥離フィルムは、ナノ金属透明導電層から離れた接着層の表面に形成される。
【0014】
上記において、平面加熱構造は、ガラス基板層又はフレキシブル基板層とナノ金属透明導電層との間に配置された第2のパッシベーション層をさらに含む。
【0015】
上記において、第2パッシベーション層は光学機能層である。
【0016】
上記において、光学機能層は、反射防止層及び抗UV層のいずれか又はそれらの組み合わせである。
【0017】
上記において、ガラス基板層又はフレキシブル基板層の材料は、透明ガラス又はフレキシブル透明フィルムである。
【0018】
上記において、ナノ金属透明導電層の材料は銀ナノ材料である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る平面加熱構造の概略図を示す。
【0020】
【
図2A】
図2Aは、本開示の一実施形態に係る、精製された金属ナノワイヤの長さのヒストグラムを示す。
【0021】
【
図2B】
図2Bは、本開示の一実施形態に係る、様々な時点での加熱による温度上昇を示す概略図である。
【0022】
【
図3】
図3は、本開示の他の実施形態に係る、
図1に基づく平面加熱構造1の構造の概略図を示す。
【0023】
【
図4】
図4は、本開示に係る、他の平面加熱構造2の構造の概略図である。
【0024】
【
図5A】
図5Aは、本開示に係る、さらに他の平面加熱構造3の構造の概略図を示す。
【0025】
【
図5B】
図5Bは、本開示の他の実施形態に係る、
図5Aに基づく平面加熱構造3の構造の概略図を示す。
【0026】
【
図6】
図6は、本開示に係る、さらに他の平面加熱構造4の構造の概略図を示す。
【0027】
【
図7】
図7は、本開示の他の実施形態に係る加熱構造を窓ガラスに結合する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
平面加熱構造の以下の説明は、特定の実施形態を参照して提供され、当業者は、本明細書に開示される教示の他の利点及び効果を容易に理解するであろう。本開示は、他の実施形態によって実装又は適用されてもよい。本明細書の詳細は、異なる見解及び用途に基づく場合があり、本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正及び変更を行うことができる。また、図面は説明のためのものであり、元のサイズ、厚さ、縮尺に従ってプロットされていない。つまり、関連する構成要素の実際の寸法を反映していない。
【0029】
次に、本開示の本実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能な限り、同じ参照番号が図面又は説明で用いられ、同じ又は同様の部品を指す。また、本開示の全ての実施形態の図面は概略的であり、実際のサイズ及び縮尺を表していない。加えて、以下の実施形態の文脈で使用される「上側(above)」及び「下側(lower)」は、単に相対的な位置関係を示すために使用される。さらに、以下の説明における、他の特徴の「上に(over)」、「直上に(on)」又は「下に(below)」の、一特徴の形成には、一及び他の特徴が直接接触して形成される実施形態が含まれ、一及び他の特徴が直接接触しないように、一及び他の特徴の間に追加の特徴が形成される実施形態も含まれ得る。
【0030】
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る平面加熱構造1の概略図を示す。平面加熱構造1は、様々な透明基板を加熱して、曇り取り/霜取り効果を達成するために使用することができる。例えば、平面加熱構造1は、自動車のフロントガラス及びリアウインドウ、サイドウインドウガラス、サイドミラーに適用され、あるいは業務用のガラス冷蔵庫に適用され、又は水槽の加熱に適用される。
【0031】
平面加熱構造1は、ガラス基板層11、透明導電層12、第1パッシベーション層13を含む。ガラス基板層11は、車両の窓の透明部分を構成する基板であり、適切な透明性と自動車の安全仕様に合格するのに十分な強度を有する任意の材料であり得る。ガラス基板層11は、高強度耐熱ガラス又はプラスチックであってもよいが、これに限定されず、本開示はこの点に限定されない。また、ガラス基板層11は、ガラスとプラスチックの複合構造であってもよい。
【0032】
透明導電層12は、ガラス基板層11上に配置され、電気エネルギーを受け取って、平面加熱構造1の温度を上昇させることができる。例えば、電圧を受けた後、透明導電層12には、高電位から低電位に流れる電流が発生する。透明導電層12にはアクティブ回路がないため、電気エネルギーは、透明導電層12の温度を上げることにより消費され、バランスをとる。この増加した熱エネルギーは、ガラス基板層11に均一に伝導される。このようにして、ガラス基板層11を加熱する効果は本開示に従って達成され、その結果、車両窓のガラス基板層11の曇りを除去することができる。
【0033】
一実施形態では、透明導電層12は、分布ナノ金属材料から構成される。少なくとも一実施形態では、ナノ金属材料は、より優れた金属特性を有し、同時に十分な光透過性を保持する銀ナノ材料であってもよい。その結果、本開示は窓の曇りを除去することができるが、車両窓の透明性は、様々な国からの自動車の使用に関する国家基準を満たすために確保することができる。例えば、本明細書で使用される場合、「ナノ金属材料」とは、金属元素、合金、又は金属化合物(金属酸化物を含む)を含む金属ワイヤを指す。金属ナノワイヤの少なくとも1つの断面寸法は、500ナノメートル(nm)未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満、より典型的には100nm又は50nm未満である。様々な実施形態において、ナノ構造の幅又は同等の直径は、10nmから40nm、20nmから40nm、5nmから20nm、10nmから30nm、40nmから60nm、又は50nmから70nmの範囲にある。金属ナノワイヤのアスペクト比(長さ:幅)は、10よりも高く、好ましくは50よりも高く、より好ましくは100よりも高い。適切な作業特性を有するナノワイヤは、典型的には10〜100,000の範囲のアスペクト比を有する。より高いアスペクト比は、透明導電体層を得るためにより有利である。これは、この特徴により、透明導電層12がより効率的な導電ネットワークを形成できると同時に、導電性ナノワイヤの全体密度を低下させて高い透明性を実現できるためである。言い換えれば、設定された透明性を達成するために、より高いアスペクト比を有する導電性ナノワイヤが使用される場合、導電性ネットワークのナノワイヤの密度は過度に高い必要はない。従って、導電性ネットワークは実質的に透明に近い。金属ナノワイヤは、銀、金、銅、ニッケル、及び金と銀のメッキを含む(ただし、これらに限定されない)任意の金属によって支配され得る。
【0034】
金属ナノワイヤの長さ対直径の比は、透明導電層の導電特性が優れているかどうかにも関係している。様々な実施形態では、ナノワイヤ構造の長さは、5μmから30μmの範囲、又は15μmから50μm、25μmから75μm、30μmから60μm、40μmから80μm、又は50μmから100μmの範囲にある。
図2Aに示されるように、これは、本開示の一実施形態に係る、精製された金属ナノワイヤの長さのヒストグラムを示す。本実施形態では、80%を超える金属ナノワイヤは25μm未満の長さを有し、75%を超える金属ナノワイヤは8μmを超える長さを有し、92%を超える金属ナノワイヤは5μmを超える長さを有する。他の可能な組み合わせが図に開示されており、図を参照できるため、この点に関する説明は提供されない。
【0035】
前述の「透明導電層」とは、透明導電体の導電媒体を提供する金属ナノワイヤのネットワーク層を指す。マトリックスが存在する場合、金属ナノワイヤのネットワーク層とマトリックスの組み合わせは、「透明導電層」とも呼ばれる。導電性は、一金属ナノワイヤから他の金属ナノワイヤへの電荷浸透によって達成されるため、電気浸透閾値に達し、導電性になるために、導電層に十分な金属ナノワイヤがなければならない。導電層の表面導電率はその表面抵抗率に反比例し、表面抵抗率はシート抵抗と呼ばれることもあり、これは当技術分野で知られている方法で測定できる。本実施形態では、マトリックス層は透明導電層の一部であり、ガラス基板層11上に配置されている。
【0036】
当業者は、マトリックスの機械的及び光学的特性が、その中のいずれかの粒子の高負荷によって変更又は損なわれる可能性が高いことを理解するであろう。有利なことに、金属ナノワイヤのアスペクト比が十分に高い場合、銀ナノワイヤの許容閾値負荷レベルは、重量で35%のマトリックスによって形成される導電性ネットワークである。この負荷レベルは、マトリックスの機械的又は光学的特性には影響しない。
【0037】
様々な実施形態において、金属ナノワイヤは、マトリックスの機械的又は光学的特性に悪影響を与えることなく、閾値負荷レベルよりも高い負荷レベルであってもよい。例えば、銀ナノワイヤは、典型的には、約60重量%より低い、より典型的には約40重量%より低い、最も典型的には約20重量%より低い、さらにより典型的には約10重量%より低い負荷レベルであり得る。これらの値は、ナノワイヤの寸法と空間分布に完全に依存している。有利には、調整可能な電気伝導性(又は表面抵抗率)及び透明性の透明導電体は、金属ナノワイヤの負荷レベルを調整することにより提供できる。当業者によって理解されるように、マトリックスの機械的及び光学的特性は、その中のいずれかの粒子の高負荷によって変更又は損なわれる可能性が高い。有利には、金属ナノワイヤの高いアスペクト比は、好ましくは約0.05μg/cm
2から約10μg/cm
2、より好ましくは約0.1μg/cm
2の閾値表面負荷レベルでマトリックスを通る導電性ネットワークの形成を可能にする。銀ナノワイヤの場合、約5μg/cm
2、最も好ましくは約0.8μg/cm
2から約3μg/cm
2である。これらの表面負荷レベルは、マトリックスの機械的又は光学的特性に影響しない。上記の値は、ナノワイヤの寸法と空間分布に大きく依存している。有利には、調整可能な電気伝導性(又は表面抵抗率)及び透明性の透明導電体は、金属ナノワイヤの負荷レベルを調整することにより提供できる。いくつかの実施形態において、マトリックスの厚さは、約10nmから約5μm、約20nmから約1μm、又は約50nmから約200nmである。他の実施形態では、マトリックスの屈折率は約1.3から2.5又は約1.35から1.8である。
【0038】
一般的に、透明導電体の光学的透明度(transparency)又は清澄度(clarity)は、光の透過率やヘイズなどのパラメーターによって定量的に定義できる。「光透過率(light transmissivity)」とは、媒体を透過した入射光の割合を指す。様々な実施形態において、透明導電体の光透過率は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%であり、少なくとも91%から92%まで高くてもよい。ヘイズは光の拡散の指標である。それは、入射光から分離され、伝送中に散乱される光の量の割合を指す。主に媒体の特性である光透過率とは異なり、ヘイズは通常製品に関連しており、通常は媒体の表面粗さや埋め込まれた粒子又は組成の不均一性によって引き起こされる。様々な実施形態において、透明導電体のヘイズは、10%以下、8%以下、又は5%以下であり、2%から0.5%以下と低くてもよい。
【0039】
一実施形態では、銀ナノワイヤの幅は約70nmから約80nmであり、長さは約8μmである場合、PET上の裸の銀ナノワイヤフィルムは、80%を超える光透過率を有する。
【0040】
さらに、少なくとも1つの実施形態では、実験は、平面加熱構造1全体が、光透過率が85%を超え、ヘイズが3%未満である状態を達成できることを示している。同時に、透明導電層12の抵抗は、1平方センチメートルあたり10オーム以下である。
【0041】
抗UV剤に関しては、感光性物質は光を吸収し、複雑な光化学活性を起こしたり、引き起こす傾向がある。1つのタイプの光化学活性には、基底状態からより高いエネルギーレベル(つまり、励起状態)への化合物の励起が含まれる。励起状態は一時的なものであり、通常は減衰して基底状態に戻り、熱を放出する。ただし、一時的な励起状態は、他の物質との複雑なカスケード反応も引き起こす可能性がある。故障メカニズムが何であれ、特定の光化学活性が酸化により銀ナノ構造の腐食を引き起こすことがわかる。
Ag
0→Ag
++e
−
【0042】
いくつかの実施形態では、励起状態の光化学活性を阻害するか、基底状態に迅速に戻るのを助けることにより、腐食が抑制される。より詳細には、1つ以上の光安定剤を光学スタックに追加すると(例えば、1つ以上の層に組み込まれ、特に銀ナノ構造に隣接する1つ以上の層に組み込まれる)、銀の腐食を引き起こす可能性のある光化学活性を抑制することができる。
【0043】
抗UV層は、UV領域の光子(通常、波長が390nm未満の光として定義される)を吸収する1つ以上の抗UV物質を含み、元々光学スタックに入射し、銀ナノ構造を劣化させる可能性のある入射光のUV光を遮断又は大幅に減衰させる。抗UV物質は、通常、不飽和化学結合を有する化合物である。一般的に、抗UV物質が光子を吸収すると、電子励起状態が生成される。励起状態はエネルギー移動又は電子移動により基底状態に戻り、光子エネルギーを消散させる。
【0044】
いくつかの実施形態では、抗UV層は、本明細書に記載の抗UV物質の薄層で被覆されたいずれかの基板であり得る。他の実施形態では、抗UV層は、層の大部分に1つ以上の抗UV物質を組み込むことにより実装されてもよい。他の実施形態では、特に抗UV層が光学スタック内の中間層である構成では、抗UV層は光学透明接着剤(OCA)層として適切に機能することができる。このような状況では、UV光の遮断と光学スタックの2つのサブ部分の結合の両方に、抗UV OCA層が使用される。
【0045】
抗UV層を構成する抗UV剤は、次の化合物のいずれかであり得る:一般に、それは不揮発性であり(少なくとも150℃の沸点を持ち)、液体又は固体であり得る。それは、500以下の分子量を有する小さな有機分子、2から100のモノマーを有するオリゴマー、又は100を超えるモノマーを有するポリマーであり得る。
【0046】
オレフィンには、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するアルキルが含まれる。二重結合により、オレフィンは犠牲酸化反応の候補になる。オレフィンは、直鎖、環状炭素骨格、又は直鎖と環状炭素骨格の組み合わせを有してもよい。炭素骨格については、オレフィンは、ヒドロキシル基、アルコキシ基、チオール基、ハロゲン基、フェニル基、又はアミン基でさらに置換されていてもよい。
【0047】
一実施形態では、適切なオレフィンは、二重結合と単結合が交互になった構成を有し、拡張された共役構造を提供する。共役構造により、基を安定化するために非局在化できる。共役オレフィンの例には、カロテン又はカロテノイド、特定のテルペン又はテルペノイドが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
他の実施形態において、オレフィンは、複数の非共役二重結合を有し得る。非共役オレフィンの例には、特定のテルペン、ロジン、ポリブタジエンなどが含まれる。光安定剤であることに加えて、一部のオレフィンは粘着付与剤でもあり、OCAに直接組み込むことができる。
【0049】
テルペンはオレフィンのサブグループである。それらは様々な植物、特に針葉樹から作られた樹脂に由来する。テルペンは多種多様な炭化水素を含んでいるが、それらは全て少なくとも1つのイソプレン単位を含んでいる。テルペンは、環式及び非環式の炭素骨格を有し得る。本明細書で使用される「テルペン」は、炭素骨格の酸化又は再配列によるテルペンの誘導体であるテルペノイドも含む。
【0050】
一部の実施形態では、光安定剤はリモネンである。リモネンには、2つのイソプレン単位を含む環状テルペンが含まれる。環状二重結合は酸化反応を受けやすく、エポキシドを形成する。一部の金属は、光化学活性の感度を低下させる可能性があるため、無機光安定剤として使用できる。例には、ロジウム塩、亜鉛、又はカドミウム塩が含まれる。これらの関連特許は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0051】
抗酸化剤は、酸素誘発腐食を抑制するのに特に効果的である。抗酸化剤は、分子酸素との直接反応により酸素を除去するトラップ剤として機能し得る。抗酸化剤は、他の基によって開始される連鎖反応を防ぐために、初期酸化反応で形成された基を除去するように機能することもできる。少なくとも1つの実施形態では、抗酸化剤はアスコルビン酸塩であり、アスコルビン酸塩(アスコルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸カリウムなど)又はアスコルビン酸であってもよい。
【0052】
抗酸化剤の他の例は、チオール、ヒドラジン、及び硫酸塩(亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸カリウムなど)を含み得る。本明細書に記載の光安定剤又は任意の光安定剤の組み合わせは、光学スタックの任意の層に組み込むことができる。
【0053】
より詳細には、光学スタックの機能層のほとんどは溶液ベースのコーティング法を用いて形成できるため、コーティングの前に光安定剤をコーティング溶液と組み合わせることができる。例えば、光安定剤は、共堆積によりナノ構造層、オーバーコート層、アンダーコート層、基板、又は接着層(OCAなど)に組み込まれてもよい。
【0054】
透明導電層12は、コーティング法を利用してガラス基板層11の片面に配置することができ、コーティング法は、例えば、スピンコーティング、ディッピング、注入(pouring)、滴下(infusion)、スプレー、ミスト、ブレードコーティング、ブラッシング、又は、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、リソグラフィ、パッド印刷などの印刷であり得る。
【0055】
透明導電層12に十分かつ均一に分配された電気エネルギーを提供するために、本開示は、電圧差を有する電極又は電流供給層を生成するための複数の方法を開示する。例えば、金属細線を利用することにより、最短直線距離を有する透明導電層12の2つの側面の間に2電極レイアウトを形成することができる。又は、電極は、銀ペーストのスクリーン印刷によって主に形成され、透明導電層12を通過する電流を均一に供給して、迅速かつ均一な加熱及び冷却を達成することができる。また、銀ペーストのスクリーン印刷により形成される電極は、主にスクリーン印刷、蒸着、スパッタリング、貼り付けなどの方法を用いて実現され、電極はガラス基板層11の反対側の透明導電層12の表面に配置される。又は、ガラス基板層11上に電極を形成し、その後、電極又は電極を形成する導電層上に透明導電層12を形成してもよい。
【0056】
言い換えれば、電極は透明導電層12上に配置され、互いに分離されており、電極の導電率は透明導電層12の導電率よりも高い。例えば、銀ペースト又は高導電性金属ペーストを使用することができる。実際の用途では、これらのペーストは、透明導電層12上にコーティング又は印刷される。少なくとも1つの実施形態では、2つの電極は、透明導電層12の反対側にそれぞれ配置される。もちろん、特定の用途で必要とされる場合、2つの電極は互いに分離され、透明導電層12の2つの隣接する側に配置されてもよい。又は、1つの電極が2つの隣接する側を占有する。上記の選択は、透明導電層12上の電流の分布と電流の経路に影響を与え、従ってエネルギー消費の分布を決定する。その結果、本開示は、ターゲット表面を均一に加熱することができ、特定の領域を個別に加熱して、均一なコーティングによる透明導電層12の不均一な加熱の問題を克服することができる。詳細な説明は次のとおりである。本開示で言及される「電極」は、層状構造に限定されないことに留意されたい。実際の用途では、層状構造は、必要に応じて、高い導電率を有する金属細線で置き換えることができる。
【0057】
他の実施形態では、透明導電層12は、コーティング又は印刷法を用いることによりガラス基板層11の表面上に直接形成され、電極が透明導電層12上にコーティング又は印刷されることに留意されたい。
【0058】
さらに、実際の用途では、自動車のフロントガラスの面積が大きく、ガラス全体の加熱温度はおそらく不均一であるため、同じナノ金属材料が透明導電層12上に均一に分布している状況下では異なる局所的な曇り除去率を引き起こすことに留意されたい。その結果、少なくとも一実施形態では、電流が導入されるナノ金属コーティング層に隣接する透明導電層12の断面積をより小さくし、また、電流が導入されるナノ金属コーティング層から遠い透明導電層12の断面積をより大きくして、ガラス全体の加熱温度を均一にすることができる。従って、ガラス全体の曇り除去率は同じである。又は、ナノ金属材料が透明導電層12に均一に分布している状況下では、透明導電層12をスクリーン印刷又はエッチングによりパターン化して、ドット、多角形、インターレース線、同心円、又は円状の配置などの様々なパターン層を形成することができる。原理は、エネルギー分布を平均化するために、電極に近い透明導電層の部分の総面積が、電極から離れた中央部分に位置する導電層の部分の面積よりも小さくなるように減少することである。これにより、平面加熱構造はターゲット平面を均一に加熱できる。又は、特定のエリアの暖房能力を向上させることができる。
【0059】
また、透明導電層12のパターン径、密度、分布などを制御することにより、平面加熱構造1の全体の光透過率をさらに高めることができ、様々な国の車両の窓の透明性の工場仕様を満足させることができる。平面加熱構造1全体が透明フィルムであるため、フロントガラスやリアウインドウなどの自動車の内部に貼り付けることができ、ドライバーの視線を妨げることなく、迅速かつ均一な加熱を実現できる。
【0060】
本願が開示する透明導電層12は、ナノ金属材料で構成されているため、導電層全体が導電性を有しており、Quickclearなどの技術に比べてブレークポイントを生成しにくい。パターンはレイヤー全体にレイアウトされているため、代替の導電性パスは、ブレークポイントが生成されたときに単一のブレークポイントの欠陥を補うことができる。従って、局所的な欠陥により、透明導電層12全体がその動作能力を失うことはなく、これにより製造の困難さが大幅に減少し、歩留まりが向上し、製品の信頼性が向上する。
【0061】
さらに
図1を参照すると、本実施形態では、電極によって透明導電層12に電流が導入された後、透明導電層12の温度を制御可能に上昇させて、その側のガラス基板層11を加熱することができる。これにより、透明導電層12に対するガラス基板層11の外面上のミストを効果的に除去することができる。また、透明導電層12は、透明導電層12がガラス基板層11の表面全体と接するようにガラス基板層11に接着されているため、透明導電層12は、ガラス基板層11を迅速に加熱するだけでなく、透明導電層12はまた、ガラス基板層11の表面全体を均一に昇温させて、表面全体の曇りを同時に除去することもできる。
図2Bを参照して説明する。
図2Bは、本開示の一実施形態に係る、様々な時点での加熱による温度上昇を示す概略図を示す。例えば、実用的なデータについて考える。本開示の一実施形態に係る平面加熱構造
1は、40ボルトの電圧が印加され、その表面積の平方センチメートルあたり0.07Wの電力を消費するとき、2分以内に12±1℃の温度上昇を得ることができる。すなわち、本開示の一実施形態に係る平面加熱構造は、曇り取り効果を達成するために自動車のガラスを急速に加熱するために少量の電気のみを必要とする。
図2Bからわかるように、電圧を適切に上げることが温度を効率的に上げるための鍵である。ここでは「40ボルト」を例として取り上げるが、20ボルトと30ボルトの電源の案と図の対応するデータが除外されているわけではない。実際には、
図2Bに開示される全てのデータは完全に開示されているとみなされ、この点に関する説明は提供されていない。
【0062】
さらに、製品が良品であるか否かは、温度上昇の効率によって単純に決定されないことに留意されたい。
図2Bに示されている温度上昇データは、窓ガラスが十分な透明性とヘイズを維持していることを確認したときに得られる。例えば、
図2Bの加熱データが達成される一方で、平面加熱構造1は、透過率が85%を超え、ヘイズが3%未満である状態を達成することができる。同時に、透明導電層12の抵抗は、1平方センチメートルあたり10オーム以下である。
【0063】
ガラス基板層11上に透明導電層12が配置される場合、第1パッシベーション層13は、透明導電層12の表面に配置され、透明導電層12の表面を覆う。第1パッシベーション層13は、透明な光学接着剤であってもよいし、被覆された透明な絶縁材料であってもよく、又は後に透明導電層12に結合される予め形成されたパッシベーション層であってもよい。さらに、第1パッシベーション層13は、透明導電層12及び電極を完全に保護するために、透明導電層12及び電極を完全に覆う。さらに、第1パッシベーション層13の熱伝導率はガラス基板層11の熱伝導率よりも低いため、一般に熱源はガラス基板層11の片側からのみ導電又は放射によって放出され、平面加熱構造1は急速かつ均一に加熱できる。
【0064】
又は、電極がモジュール化され、透明導電層12の両側を介して平面加熱構造1に電気的に結合される例では、第1パッシベーション層13は、透明導電層12を完全に保護するため、透明導電層12のみを完全に覆う。
【0065】
少なくとも1つの実施形態では、第1パッシベーション層13は、ポリビニルブチラール(PVB)フィルムを用いることにより形成され得る。第1パッシベーション層13はホットメルト接着フィルムであり、第1パッシベーション層13の材料は、ポリビニルブチラール(PVB)フィルム又はエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムから選択することができる。
【0066】
図3を参照して説明する。
図3は、
図1に基づく他の実施形態である。本実施形態では、電極が不透明又は光透過性がない場合、電極の配線が明確に見え、車両の窓の視覚効果に影響を及ぼす。透明導電層12の両側又は側面に形成された電極を覆うために、ガラス基板層11と透明導電層12との間にインク層14が配置される。一般に、インク層14は、電極が配置される位置に分布し、インク層14は電極に対応する透明導電層12の両側又は縁部にのみ形成され、平面加熱構造1の視認性を向上させる。
【0067】
上記の説明により、本実施形態の機能及び構造が完全に開示された。それに加えて、
図1及び
図3から分かるように、ガラス基板層11の2つの側面、透明導電層12の2つの側面、及び第1パッシベーション層13の2つの側面は全て露出している。空気、及び自動車の使用環境は非常に厳しい可能性がある。例えば、自動車は、高温環境、高湿度環境、又は、酸化速度を高める硫黄などが存在する非典型的な環境でも使用される。劣悪な環境条件による透明導電層12の急速な酸化及び劣化の問題を回避し、ガラス基板層11を保護するために、一実施形態において、カプセル化のために、ガラス基板層11、透明導電層12、第1パッシベーション層13の少なくとも片側に補強接着材料を追加することができる。補強接着剤は、硬化プロセスによる液体接着剤の固化によって形成されてもよい。補強接着剤は、未硬化のときの粘度が500から1200mPa・秒であり、硬化後のショア硬度は70から85である。
【0068】
図4を参照して説明する。
図4は、本開示に係る他の平面加熱構造2の構造図を示す。本実施形態によれば、平面加熱構造2は、ガラス基板層11、透明導電層12、及び第1パッシベーション層13を備え、第2パッシベーション層15が追加される。なお、本実施形態では、ガラス基板層11と透明導電層12との間に第2パッシベーション層15が配置されている。第2パッシベーション層15は、抗紫外線(UV)又は/及び反射防止能力を有する光学機能層である。第2パッシベーション層15の抗UV機能は、透明導電層12に入射するUV光の総量を減らし、透明導電層12内のナノ金属の寿命を延ばし、劣化状態に入るまでの期間を延長する。反射防止機能は、透明導電層12及び第1パッシベーション層13の反射の可能性を低減し、平面加熱構造2の全体的な透明性を向上させる。
【0069】
さらに、製造プロセスを簡素化してコストを削減するために、透明導電層12が形成されるときに、反射防止及び/又は抗UV材料の粒子又はコーティング剤を混合して、透明導電層12にコーティングされる場合がある。
【0070】
要約すると、平面加熱構造が
図1、
図3、及び
図4に開示されている実施形態では、加熱構造は車両の窓に直接形成されて一体化構造を形成する。利点は、工場の生産ラインに便利であることである。しかしながら、使用中の自動車が本開示に係る平面加熱構造を曇り/霜取りのために設置する必要がある場合、又は、曇り/霜取りのために使用中の自動車の元の平面加熱構造を本開示に係る平面加熱構造と交換する場合、又は、2層の構造の間に金属ワイヤがカプセル化されているQuickclearなどの技術が故障した場合、車両の窓も交換する必要があり、これはリソースの浪費につながり、経済的ではない。従って、他の実施形態は以下のように説明される。以下の実施形態では、加熱構造は窓ガラスから独立しており、その後、接着剤を利用することによって車両窓に接着され、加熱構造が取り付けられた車両窓を迅速かつ均一に曇り除去することができる。
【0071】
図5Aを参照して説明する。
図5Aは、本開示のさらに他の実施形態に係る、ガラスに結合された平面加熱構造である。平面加熱構造3は、フレキシブル基板層31、透明導電層12、第1パッシベーション層13、接着層32、及び剥離フィルム34を含む。本実施形態では、透明導電層12はフレキシブル基板層31上に配置される。透明導電層12は電圧を受け取り、電気エネルギーを消費することにより熱エネルギーを生成する。透明導電層12の材料選択、形成方法、及び配置規則に関しては、透明導電層12の様々な特徴の上記開示を参照することができ、この点に関する説明は提供されない。剥離フィルム34は、接着層32を保護及び遮蔽するために、透明導電層12から離れた接着層32の表面に形成される。接着層32が窓ガラスに取り付けられる前に、剥離フィルム34は接着層に接着され、接着層32を保護及び遮蔽し、接着層32が誤って粘着するのを防ぎ、その粘着性を維持する。
【0072】
本実施形態に適用されるフレキシブル基板層31は、取り付けの組み立てモードに対応するためにより大きな変形に対応する必要がある。従って、材料の選択は主にフレキシブルフィルムである必要があり、強度と変形量の要件を同時に満たす透明な薄膜の複合成形体である場合がある。透明で柔軟性のある薄膜の材料は、以下のプラスチック材料、すなわち、PP、PE、PS、PMMA、PC、PET、PVC、PI、PUなどの選択可能な透明材料のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせから選択できる。さらに、フレキシブル基板層31は露出しており、自動車のユーザーと接触しているため、耐摩耗性の能力が要求され、必要に応じて、フレキシブル基板層31は耐摩耗性処理を施して、基板層の耐摩耗性及び耐傷性を改善することができることに留意されたい。
【0073】
接着層32は、透明導電層12上に形成又は配置される。接着層32は、かなりの接着能力を有し、平面加熱構造3を車両の窓に滑らかかつ完全に接着するために使用される。平面加熱構造3は、上記の動作原理を用いて、車両の窓を均一に加熱し、曇りを除去することができる。接着層32の選択に関しては、車両窓用の一般的な接着層を選択することができ、接着液又は接着剤を後続の処理又はコーティングにより車両窓にコーティングされ、結合プロセスが続いて行われる。後続のコーティング方法が選択される場合、接着層32は、平面加熱構造3では省略されてもよい。
【0074】
平面加熱構造3によって生成された熱エネルギーを損失なしに窓ガラスに伝達し、設計通りの分布を維持できるようにするために、接着層又は接着剤は、平面加熱構造3の曇り除去効果への影響を避けるために、より小さな熱抵抗を有する配合を有するか又は材料となるように選択しなければならないことに留意されたい。
【0075】
本実施形態において、第1パッシベーション層13は、透明導電層12と接着層32との間、すなわち、フレキシブル基板層31から離れた透明導電層12の表面に形成される。第1パッシベーション層13は、接着層32と一体化されて、接着能力を有する第1パッシベーション層を形成してもよい。同時に、第1パッシベーション層13は、抗UV及び/又は反射防止能力を有し、可視光及び熱を吸収する材料が加えられた光学機能層として機能し得る。あるいは、第1パッシベーション層13は、フレキシブル基板層31に近い透明導電層12の他の表面上に形成されてもよい。
【0076】
図5Bを参照して説明する。
図5Bは、
図5Aに基づく他の実施形態である。本実施形態では、電極が不透明又は光透過性がない場合、電極の配線が明確に見え、車両の窓の視覚効果に影響を及ぼす。透明導電層12の両側又は側面に形成された電極を覆うために、接着層32と窓ガラスの接着面にインク層33が配置される。一般的に、インク層33は、電極が配置される位置に分布し、インク層33は電極に対応する透明導電層12の両側又は縁部にのみ形成され、平面加熱構造の視認性を向上させる。
【0077】
図6を参照して説明する。
図6は、本開示に係るさらに他の平面加熱構造4の構造図を示す。本実施形態によれば、平面加熱構造4は、フレキシブル基板層31、透明導電層12、接着層32、及び第1パッシベーション層13を備え、第2パッシベーション層15が追加される。なお、本実施形態では、第2パッシベーション層15は、接着層32と透明導電層12との間に配置されている。第2パッシベーション層15は、抗UV又は/及び反射防止能力を有する光学機能層である。第2パッシベーション層15の抗UV機能は、透明導電層12に入射するUV光の総量を減らし、透明導電層12内のナノ金属の寿命を延ばし、劣化状態に入るまでの期間を延長する。反射防止機能は、透明導電層12及び第1パッシベーション層13の反射の可能性を低減し、平面加熱構造4の全体的な透明性を向上させる。
【0078】
図7を参照して説明する。
図7は、本開示の他の実施形態に係る、加熱構造を車両の窓に固定する概略図を示す。窓ガラスから独立した加熱構造が製造された後、加熱構造は、接着層を利用することにより車両の窓に接着される。図からわかるように、透明な導電構造に電力を供給する電極を覆うために、インク層が車両の窓ガラスに形成されている。
【0079】
さらに、製造プロセスを簡素化してコストを削減するために、透明導電層12が形成されるときに、反射防止及び/又は抗UV材料の粒子又はコーティング剤を混合して、透明導電層12にコーティングされる場合がある。又は、反射防止及び/又は抗UV材料の粒子又はコーティング剤は、接着層32が形成されるときに、接着層32に混合してコーティングされてもよい。
【0080】
本願で開示される平面加熱構造1は、透過率が85%を超え、ヘイズが3%未満の条件を達成することができる。透明性に優れているため、自動車、船舶、航空機などの様々な輸送手段で使用して、ガラスの曇りや霜を取り除くことができる。車両の窓ガラスの用途では、平面加熱構造1は、リアウインドウに加えて、フロントガラスを含む他の部分に適用することができる。
【0081】
本開示は、その特定の実施形態を参照して詳細に説明されたが、他の実施形態も可能である。従って、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。