(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961160
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】位置検出のためのシステム、制御デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
G01S5/14
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-527996(P2018-527996)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公表番号】特表2019-501377(P2019-501377A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】EP2016078090
(87)【国際公開番号】WO2017093043
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年11月14日
(31)【優先権主張番号】15197464.9
(32)【優先日】2015年12月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521361936
【氏名又は名称】ライフライン システムズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ドゥンゲン,ウィルヘルミュス アンドレアス マリニュス アルノルデュス マリア
【審査官】
安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−301850(JP,A)
【文献】
特開2005−318368(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/195161(WO,A1)
【文献】
国際公開第02/001247(WO,A2)
【文献】
特開2001−069555(JP,A)
【文献】
特開2008−017302(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0025631(US,A1)
【文献】
Moragrega, Ana et al.,SUPERMODULAR GAME FOR POWER CONTROL IN TOA-BASED POSITIONING,IEEE TRANSACTIONS ON SIGNAL PROCESSING,米国,IEEE SERVICE CENTER,2013年 6月15日,VOL.61,No.12,p.3246-3259,URL,http://dx.doi.org/10.1109/TSP.2013.2259160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14,
G01S 19/00−19/55,
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFに基づく距離測定を実施する位置検出システムであって、
当該位置検出システムは、
RF帯域において電磁波信号を送信するよう構成される少なくとも1つの送信ユニットと、
RF帯域において電磁波信号を受信するよう構成される少なくとも1つの受信ユニットと、
前記少なくとも1つの送信ユニットへ及び前記少なくとも1つの受信ユニットへ動作上接続される、送信された信号情報及び受信された信号情報に基づく距離測定のための少なくとも1つの制御デバイスと
を有し、
前記送信ユニットは、距離測定のために特に形成された電磁波信号を送信するよう構成され、前記受信ユニットは、前記送信ユニットによって送信された電磁波信号を受信するよう構成され、
前記制御デバイスは、距離測定品質評価ユニットと、電力消費最適化ユニットとを有し、
前記距離測定品質評価ユニットは、距離測定結果に基づき、距離測定の精度を示す距離測定品質指標を導出するよう構成され、前記電力消費最適化ユニットは、前記距離測定品質指標に基づき少なくとも1つの送信パラメータを適応させるよう構成され、前記電力消費最適化ユニットは、前記距離測定品質指標に応じて前記少なくとも1つの送信ユニットの送信電力を適応させるよう構成される、
位置検出システム。
【請求項2】
前記距離測定品質評価ユニットは、平均距離を示す値、特に移動平均距離を示す値に基づき、前記距離測定品質指標を計算するよう構成される、
請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記距離測定品質評価ユニットは、時間にわたる複数の測定に基づき前記距離測定品質指標を計算するよう構成され、
期待される信号レベルからの検出された信号の偏差は、品質指標の減少を示す、
請求項1又は2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記距離測定品質評価ユニットは、周波数帯域にわたる複数の測定に基づき前記距離測定品質指標を計算するよう構成され、
夫々の周波数部分についての期待される信号レベルからの検出された信号の偏差は、品質指標の減少を示す、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記距離測定品質評価ユニットは、複数の距離測定サンプルから導出される複数の距離値に基づき前記距離測定品質指標を計算するよう構成され、
特定の距離が基準距離として使用され、
近傍サンプルからの距離値が計算され、
前記基準距離からの検出された距離の偏差は、品質指標の減少を示す、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項6】
複数のノードが設けられ、該ノードは距離測定グリッドを形成し、複数の距離測定経路が確立され、前記距離測定品質評価ユニットは、複数の経路測定に基づき前記距離測定品質指標を計算するよう構成され、距離測定経路どうしの間の検出された信号の偏差は、品質指標の減少を示す、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項7】
少なくとも1つの送信ユニット及び少なくとも1つの受信ユニットは、送信ペアを形成し、
前記送信ユニット及び前記受信ユニットの夫々は、少なくとも1つのダイバース・アンテナを有し、
前記距離測定品質評価ユニットは、複数のダイバース測定に基づき前記距離測定品質指標を計算するよう構成され、
多角的距離測定経路どうしの間の検出された信号の偏差は、品質指標の減少を示す、
請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項8】
前記送信ユニット及び前記受信ユニットは、単一のモバイル・トランシーバ・デバイス、特にユーザ装着型位置検出デバイスにおいて実装される、
請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項9】
少なくとも1つの位置基準ノード、特に受動型反射器ノード又は能動型反射器ノードを更に有する
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記制御デバイスは、前記距離測定品質指標を所望の範囲内に保ちながら、電力消費を最適化するように少なくとも1つの送信パラメータを適応させるよう構成される、
請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項11】
前記電磁波信号は、全く距離測定に関連したデータだけを含む、距離測定のために特に形成された非データ搬送距離検知信号である、
請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の位置検出システムを有し、
送信ユニット及び受信ユニットのうちの少なくとも1つとして構成される少なくとも1つの装着型ユニットが設けられる、
患者モニタリング装置、特に無線患者測距装置。
【請求項13】
RFに基づく距離測定を実施する位置検出システムのための制御デバイスであって、
当該制御デバイスは、
距離測定品質評価ユニットと、
電力消費最適化ユニットと
を有し、
当該制御デバイスは、少なくとも1つの送信ユニットへ及び少なくとも1つの受信ユニットへ動作上接続され、
当該制御デバイスは、RF帯域における送信された電磁波信号及び対応する受信された電磁波信号に基づく距離測定のために構成され、
前記電磁波信号は、距離測定のために特に形成され、
前記受信された信号は、前記送信された信号に基づき、
前記距離測定品質評価ユニットは、距離測定結果に基づき、距離測定の精度を示す距離測定品質指標を導出するよう構成され、
前記電力消費最適化ユニットは、前記距離測定品質指標に基づき少なくとも1つの送信パラメータを適応させるよう構成され、
前記電力消費最適化ユニットは、前記距離測定品質指標に応じて前記少なくとも1つの送信ユニットの送信電力を適応させるよう構成される、
制御デバイス。
【請求項14】
RFに基づく距離測定を実施する位置検出方法であって、
当該位置検出方法は、
RF帯域において電磁波信号を送信し、該電磁波信号は、距離測定のために特に形成され、
RF帯域において電磁波信号を受信し、該受信される信号は、前記送信された信号に基づき、
送信された信号情報及び受信された信号情報に基づき距離測定制御を実行する
ステップを有し、
前記距離測定制御は、
距離測定結果に基づき、距離測定の精度を示す距離測定品質指標を導出することを含め、距離測定品質を評価し、
前記距離測定品質指標に応じて送信電力を適応させることを含め、前記距離測定品質指標に基づき少なくとも1つの電力消費に関連した送信パラメータを適応させる
ことを有する、
位置検出方法。
【請求項15】
コンピュータで実行される場合に、該コンピュータに、請求項14に記載の方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RF距離測定に基づく位置検出のためのシステムと、対応する位置検出方法とに関する。本開示は更に、位置検出システムのための制御デバイスと、患者モニタリング装置とに関する。更には、本開示は、位置検出方法及びシステムの有利な使用と、位置検出方法に対応するコンピュータプログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
RF(Radio Frequency)(無線周波数)に基づく通信及びRFに基づく距離測定は、当該技術において広く知られており且つ記載されている。ここで使用されるように、語「RF(Radio Frequency)」は、一般的に、約3kHzから約300GHzまでの範囲に通常対応する電磁スペクトルの部分に関係がある。例えば、無線通信及びレーダー用途は、RF帯域において通常用意される周波数部分を使用する。
【0003】
更に、より具体的に言えば、本開示は、屋内の測位及びナビゲーションに関する。ここで使用されるように、屋内ナビゲーションは、遠隔の、遠くに位置付けられた検出デバイス及びユニットへの直接的な視線方向(line of sight)が不可能である用途に言及すべきである。それに反して、屋外ナビゲーションは、例えば、GPS(Global Positioning System)(全地球測位システム)、大規模ネットワークに基づくナビゲーション(例えば、モバイルネットワークの無線塔を使用する。)、などを伴う。そのような所謂屋外ナビゲーションアプローチは、一方では、それが屋内ナビゲーションになる場合に、関心のある通常の帯域と比較して、あまり正確でない。他方で、屋外ナビゲーションシステムの受信品質は、受信デバイスが屋内に位置する場合に、相当に低下する。
【0004】
しかし、本開示は、屋内ナビゲーション(室内ナビゲーション)に厳密に制限されるわけではない。少なくともいくつかの実施形態では、適用分野は、短距離から中距離の測定及び位置検出が対象である屋外環境であってもよい。一般的に、視線方向が限られている位置検出(例えば、建物密集地域、都市地域、工業地域における)は、適用分野を形成してよい。更に、適用分野は、GPS信号又は同様の長距離測位信号によって到達され得ない環境において、例えば、地下環境、水中環境、及び同様の環境において見られる。更に、機内又は車内の位置検出も、例えば、列車又は大型の可動式建築/掘削機械のために、考えられる。
【0005】
従って、RF信号に基づく屋内ナビゲーションへのいくつかのアプローチが提案されてきた。RF信号に基づく距離測定への2つの一般的なアプローチとして、飛行時間(time of flight)法及び位相シフト法がある。
【0006】
位相シフト法の実施形態は、例えば、国際公開第2002/001247(A2)号(特許文献1)において記載されている。特許文献1は、電磁波の使用により2つの対象物の間の距離を測定する方法を開示している。基地局のインタロゲーション信号及び携帯型のコード放射体のレスポンス信号は、異なるキャリア周波数で2回送信される。この場合におけるキャリア周波数は相関している。すなわち、それらはお互いに依存している。キャリア周波数はお互いに近似され、それにより、信号間の位相シフトが測定され得る。基地局までのコード放射体の距離は、この位相シフトから計算される。インタロゲーション信号及びレスポンス信号は、異なるキャリア周波数で又は同じキャリア周波数で送信され得る。キャリア周波数は、新たなインタロゲーション/レスポンス・ダイアログのために変更される。
【0007】
飛行時間法の実施形態は、例えば、国際公開第2014/195161(A1)号(特許文献2)において記載されている。特許文献2は、第1デバイスと第2デバイスとの間の距離を測定する方法を開示している。方法は、第1デバイスと第2デバイスとの間の距離を測定するよう飛行時間に基づく距離測定を行うことを有し、飛行時間に基づく距離測定の間に送信される信号の長さ及び/又は得られる飛行時間測定の回数は、距離測定のために必要とされる精度に応じて決定される。
【0008】
ANA MORAGREGA ET AL: “Supermodular Game for Power Control in TOA-Based Positioning”, IEEE TRANSACTIONS ON SIGNAL PROCESSING, IEEE SERVICE CENTER, NEW YORK, NY, US, vol.61, no.12, 1 June 2013 (2013-06-01), pages 3246-3259(非特許文献1)は、無線センサネットワークに基づく屋内ナビゲーションへの制御アプローチに関する。より具体的には、この参考文献では、ゲーム理論に基づきエネルギコストを最小限にすることが提案されている。
【0009】
米国特許公開第2003/0194979(A1)号明細書(特許文献3)は、超広帯域インパルス無線システムにおける電力制御のための方法であって、第1トランシーバからインパルス無線信号を送信することと、該インパルス無線信号を第2トランシーバで受信することと、該受信されたインパルス無線信号の少なくとも1つの性能測定を決定することと、該少なくとも1つの性能測定に応じて前記第1トランシーバ及び前記第2トランシーバのうちの少なくとも一方の出力電力を制御することとを有する方法に関する。
【0010】
産業分野、医療分野、ホームケア分野、及びレジャー分野において屋内ナビゲーションの一般的な必要性が存在する。産業分野では、部品、構成材及び機械の追跡が自動化環境においてますます重要になる。医療分野及びケア分野では、患者監視及び患者、乳幼児、高齢者、夢遊病者、などのモニタリングについて一定の必要性が存在する。レジャー分野では、移動の追跡及び記録の一定の必要性が存在する。更に、例えば、ペットの追跡及びモニタリングは、屋内測位システムのための他の適用分野となり得る。RFに基づく距離測定装置が更なる距離及び/又は位置測定技術と組み合わされてよいことは言うまでもない。例えば、いくつかの用途において、RFに基づく屋内ナビゲーションと屋外ナビゲーション(例えば、GPSナビゲーション及び/又はモバイル通信ナビゲーション)との組み合わせが考えられる。
【0011】
ここで使用されるように、語「屋内ナビゲーション」又は「屋内位置検出」は、一般的に、数平方メートル(例えば、シングルルーム)から数千平方メートル(例えば、工場建物)の範囲における被監視エリアに関する。従って、本開示の文脈内の屋内測位は、短距離、近距離測位アプローチとして理解されるべきではなく、且つ、長距離アプローチとして理解されるべきではない。
【0012】
RFに基づく測位システムでは、少なくともいくつかの要素は移動可能であり、モニタされるべき人又は物に取り付けられ得る。そのようなモバイル要素は、通常は、少なくとも部分的にアクティブな要素(すなわち、RF帯域において電磁波信号を発するよう構成される要素)として配置される。そのため、電力供給が主要問題である。
【0013】
たとえRFに基づく屋内距離測定及び位置検出が当該技術で広く記載されているとしても、特に、携帯型の屋内RFデバイスの特殊性に対処する場合に、依然として改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2002/001247(A2)号
【特許文献2】国際公開第2014/195161(A1)号
【特許文献3】米国特許公開第2003/0194979(A1)号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】ANA MORAGREGA ET AL: “Supermodular Game for Power Control in TOA-Based Positioning”, IEEE TRANSACTIONS ON SIGNAL PROCESSING, IEEE SERVICE CENTER, NEW YORK, NY, US, vol.61, no.12, 1 June 2013 (2013-06-01), pages 3246-3259
【発明の概要】
【0016】
以上を鑑みて、本発明の目的は、関連するデバイスの電力消費を最適化しながら位置検出の改善された正確さ及び信頼性を可能にする、RFに基づく距離測定のためのシステム及び対応する方法を提供することである。望ましくは、本開示に従うシステム及び方法は、関連するユニットの、特に、追跡されるべき人又は物に取り付けられ得る携帯型ユニットの比較的長期の動作を可能にする。本開示の他の目的は、RFに基づく距離測定に特に適し、モバイル通信の副産物の域を出ないものとならないシステム及び対応する方法を提示することである。望ましくは、システム及び対応する方法は、データ交換及び転送のためではなく、主として距離測定及び位置検出のために構成される。
【0017】
更に、システム及び方法から利益を得うる有利な適用が示されるべきである。その上、位置検出システムで使用される対応する制御デバイスが提示されるべきである。更には、対応するコンピュータプログラムが提示されるべきである。
【0018】
本発明の第1態様では、位置検出のためのシステムが提示される。当該システムは、RFに基づく距離測定を実施し、当該システムは、
RF帯域において電磁波信号を送信するよう構成される少なくとも1つの送信ユニットと、
RF帯域において電磁波信号を受信するよう構成される少なくとも1つの受信ユニットと、
前記少なくとも1つの送信ユニットへ及び前記少なくとも1つの受信ユニットへ動作上接続される、送信された信号情報及び受信された信号情報に基づく距離測定のための少なくとも1つの制御デバイスと
を有し、
前記送信ユニットは、距離測定のために特に形成された電磁波信号を送信するよう構成され、前記受信ユニットは、特に直接的又は間接的方法で前記送信ユニットによって送信された電磁波信号を受信するよう構成され、
前記制御デバイスは、距離測定品質評価ユニットと、電力消費最適化ユニットとを有し、
前記距離測定品質評価ユニットは、距離測定結果に基づき距離測定品質指標を導出するよう構成され、前記電力消費最適化ユニットは、前記品質指標に基づき少なくとも1つの送信パラメータを適応させるよう構成され、前記電力消費最適化ユニットは、前記品質指標に応じて前記少なくとも1つの送信ユニットの送信電力を適応させるよう構成される。
【0019】
この態様は、既に知られている位置検出システムが、言わば、通信及びデータ転送用途から生じるいくつかの制約を課されるという見識に基づく。すなわち、データ転送及び情報交換のために最適化されているシステムは、RFに基づく距離測定のために必ずしも最適化されておらず、あるいは、それほど適切でないことが分かっている。これは、特に、電力消費と距離測定品質/精度との間のトレードオフに当てはまる。
【0020】
従って、上記のシステムに従って、距離測定品質指標を処理し、達成される距離測定品質レベルを改善(又は少なくとも維持)すると同時に、電力消費の妥当な(相当に低い)レベルを達成するという観点からシステムの動作を最適化(調整)することが提案される。
【0021】
この文脈では、RF通信の分野における既に知られている指標(indicators)、例えば、当該技術で広く記載されている受信信号強度指標(RSSI;Received Signal Strength Indicator)及びリンク品質指標(LQI;Link Quality Indicator)が参照される。RSSI及びLQIはいずれも、通信品質と電力消費との間のトレードオフを目指しており、一定の最低品質レベルを達成することに焦点が当てられている。しかし、RSSIアプローチ、LQIアプローチ及び同様のアプローチのうちの1つに従って作動するRFに基づく通信システムは、距離測定に関して最適な性能を示さないことが分かっている。このことに対する1つの理由は、屋内RF用途では、好ましくない散乱、反射、クロストーク及び更なる乱れが起こる可能性があるからである。データ転送及び通信最適化への従来のアプローチに従って、選択肢は、送信電力を増大させることでありうる。しかし、この対策は、距離測定及び位置検出のために利用されるRF信号がより一層歪む可能性があるので、距離測定に悪影響を及ぼしうる。
【0022】
望ましくは、電磁波信号は、データを搬送しない距離検知信号である。少なくともいくつかの(距離測定に関連した)データ又は情報が信号に存在してよいことは言うまでもない。しかし、信号は、標準的なRFに基づく通信システムで見られるような追加の転送されるべき情報を含まないことが好ましい。むしろ、電磁波信号は、望ましくは、具体的に、もっぱら距離測定のために形成されてよい。
【0023】
ここで使用されるように、追跡対象は、機械又は製品の構成材だけでなく、人や動物であってよい。追跡対象は、少なくとも時々、望ましくは屋内環境において、動いている。本開示の文脈内の位置検出の目標は、追跡対象の正確な位置(例えば、現在座標)を検出することであってよい。
【0024】
更に、少なくともいくつかの実施形態では、目標は、追跡対象が具体的に画定されたエリア内に存在するか否かを検出することであってよい。例となる用途は、例えば、アルツハイマー又は同様の病気に罹っている高齢患者のモニタリング及び追跡である。時々、頭が混乱している人々は、彼らの現在の住居又は患者の部屋から離れる傾向がある。このことは、潜在的に危険な状況を生じさせうる。そのため、例えば、適切な位置に夫々の送受信又は少なくとも反射器ユニットを置くことによって、許可区域及び/又は禁止区域を画定することが選択肢であってよい。従って、監視区域は、複数の夫々の固定ユニットによって画定され得る。
【0025】
他の選択肢は、少なくとも1つの固定ユニット、特に送受信ユニットを置くことであり、そのユニットの周りの周囲は許可区域として画定される。追跡対象が許可区域から離れると直ぐに、アラートが生成され得る。夫々のユニットは、基地局又はユニットと呼ばれ得る。
【0026】
位置検出システムの実施形態では、電力消費最適化ユニットは、品質指標に応じて少なくとも1つの送信ユニットの送信電力を適応させるよう構成される。例えば、少なくとも1つの送信ユニットは、検出されるべき物又は人に取り付けられるか、又はそれらによって装着されてよい。従って、対象は通常動いているので、電力供給はバッテリ及びそのようなものによって供給されるべきである。そのため、動作時間は、実際の電力消費に強く依存する。更に、追跡対象が通常動くにつれて、少なくとも時々、測定及び信号転送条件も変化する。そのため、電力消費最適化ユニットは、品質指標の現在の値又はレベルを考慮しながら少なくとも1つの送信ユニットの送信電力を制御及び調整する制御ループを実装するか、又はそのような制御ループへ結合されてよい。
【0027】
言うまでもなく、送信ユニット及び受信ユニットのうちの少なくとも1つは、送信する電磁波信号及び受信する電磁波信号の両方のために構成される送受信一体ユニットの部分を形成してよい。更に、少なくとも1つの所謂反射器は、位置基準を定義すること及び/又は許可エリアを画定すること及び/又は測定精度を更に改善することに適し得るよう設けられてよい。反射器ユニットは、能動型反射器又は受動型反射器として配置されてよい。
【0028】
一般的に、少なくともいくつかの実施形態では、距離測定に関連したデータ又は情報以外の情報転送又はデータ転送は、位置検出システムでは処理されないことが好ましい。従って、システムは、距離測定のために、そして、結果として、位置検出のために、より一層最適化され得る。
【0029】
一般的に、距離測定品質指標は、関連するユニット又は経路、測定時間、測定周波数、及び更なる信号パターン特性において異なりうる複数の距離測定に基づいてよい。
【0030】
システムの他の実施形態では、品質評価ユニットは、平均距離を示す値、特に、移動平均距離を示す値に基づき距離測定品質指標を計算するよう構成される。例えば、時間平均距離値は、時間にわたって処理されて観測される。更なる情報、例えば、観測対象の潜在的な及び/又は期待される移動速度に関する情報が、このために使用されてよい。従って、予期しない位置の変化が起きたことが検出される場合に、このことは、測定品質の低下の強い現れであり、結果として、品質指標の減少(より一般的に、品質レベルの低下)として反映され得る。
【0031】
システムの他の実施形態では、品質評価ユニットは、時間にわたる複数の測定に基づき距離測定品質指標を計算するよう構成され、期待される信号レベルからの検出された信号の偏差は、品質指標の減少を示す。また、このようにして、追跡対象の予期しない動き及び再配置は、好ましくない乱れを示しうる。従って、そのような乱れは、送信電力の調整をトリガ又はプロンプトし得る品質指標の減少を生じさせうる。
【0032】
システムの他の実施形態では、品質評価ユニットは、周波数帯域にわたる複数の測定に基づき距離測定品質指標を計算するよう構成され、夫々の周波数部分についての期待される信号レベルからの検出された信号の偏差は、品質指標の減少又は品質レベルの低下を示す。従って、複数の周波数は、送信された信号から品質指標を導出するために用いられてよい。更に、帯域内偏差も考慮されてよい。
【0033】
システムの更なる他の実施形態では、品質評価ユニットは、複数の距離測定サンプルから導出される複数の距離値に基づき距離測定品質指標を計算するよう構成され、特定の距離が基準距離として使用され、近傍サンプルからのそれらの距離値が計算され、基準距離からの検出された距離の偏差は、品質指標の減少又は品質レベルの低下を示す。近傍(proximity)サンプルは、空間近傍サンプル、時間近傍サンプル及び/又は周波数近傍サンプルであってよい。
【0034】
空間近傍サンプルが使用される場合に、特定の距離、例えば、最短の検出された距離が基準として使用されてよい。従って、基準となる最短の検出された距離に基づき、品質指標は処理されてよい。
【0035】
システムの他の実施形態では、複数のノードが設けられ、ノードは距離測定グリッドを形成し、複数の距離測定経路が確立され、品質評価ユニットは、複数の経路測定に基づき距離測定品質指標を計算するよう構成され、距離測定経路どうしの間の検出された信号の偏差は、品質指標の減少又は品質レベルの低下を示す。
【0036】
測定グリッドのノードは、送信ユニット及び受信ユニットのうちの少なくとも1つを有してよい。望ましくは、少なくともいくつかのノードは、送受信(transceiving)ユニットを有する送受信ノードとして配置される。関心のある対象が少なくとも時々動く場合に、複数の経路のうちの少なくとも一部は、一時的にのみ確立されてよい。
【0037】
ノードの夫々は、電磁波信号を送信及び受信するよう構成される少なくとも1つの各々のアンテナを有してよい。更に、ノードのうちの少なくとも一部は、アンテナダイバーシティ動作のために配置されてよい。結果として、複数のアンテナは、少なくとも1つの各々のノードに設けられてよい。このようにして、更なる距離測定経路は、品質指標が導出される基となるデータベースを更に大きくし得るよう使用されてよい。
【0038】
システムの更なる他の実施形態では、少なくとも1つの送信ユニット及び/又は少なくとも1つの受信ユニットは、少なくとも1つのダイバース・アンテナを有し、品質評価ユニットは、複数のダイバース測定に基づき距離測定品質指標を計算するよう構成され、多角的距離測定経路どうしの間の検出された信号の偏差は、品質指標の減少又は品質レベルの低下を示す。
【0039】
多角的(diversified)アンテナは、空間ダイバース、パターンダイバース、及び/又は偏波ダイバースの様式において配置されてよい。更に、所謂送信/受信ダイバーシティは、距離測定経路を増やすために使用されてよい。更なる例となる実施形態では、適応アンテナアレイが距離測定のために使用されてよい。ダイバース・アンテナ又は多角的アンテナは、スイッチング、選択、結合及び動的制御の様式において作動してよい。
【0040】
なお、上述されたように、動作スキームは、データ転送の最適化を必ずしも追求しない。むしろ、本開示に従って、電力消費に対する距離測定精度の最適化が達成されるべきである。
【0041】
システムの更なる他の実施形態では、送信ユニット及び受信ユニットは、単一のモバイル・トランシーバ・デバイス、特にユーザ装着型位置検出デバイスにおいて実装される。言うまでもなく、更なるデバイスが、位置検出システムによって使用される測定グリッドの部分を形成してよい。更に、システムは、観測対象に取りけられるか又はそれによって装着される複数のモバイル位置検出デバイスを検出するよう構成されてよい。
【0042】
適用分野は、患者モニタリング、夢遊病者モニタリング、製造モニタリング、工場内ロジスティクス、組み立てラインモニタリング、屋内車両モニタリング、ペットモニタリング、などを含んでよいが、それらに制限されない。一般的に、適用分野は、産業及び非産業環境にある。更に、スポーツ、レジャー及びホーム・アプリケーションの分野における適用が考えられる。
【0043】
更なる実施形態では、システムは、少なくとも1つの位置基準ノード、特に受動型反射器ノード又は能動型反射器ノードを有する。然るに、能動型ノード、例えば、送受信一体ユニットは、距離測定プロシージャを開始する能動型ノードを形成してよい。開始距離測定信号に応答して、少なくとも1つの位置基準ノードは、各々の距離測定信号を反射又は送信してよい。
【0044】
更なる実施形態では、制御デバイスは、距離測定品質指標を所望の範囲内に保ちながら電力消費を最適化するように少なくとも1つの送信パラメータを適応させるよう構成される。
【0045】
更なる実施形態では、電磁波信号は、全く距離測定に関連したデータだけを含む、距離測定のために特に形成された非データ搬送距離検知信号である。
【0046】
本開示の他の態様では、患者モニタリング装置、特に無線患者モニタリング装置が提示され、当該装置は、ここで記載されてきた少なくとも1つの実施形態に従う位置検出システムと、患者に取り付けられるよう構成される少なくとも1つのモバイル又はポータブルデバイスとを有する。ここで使用されるように、患者は、ケアを必要としている人、例えば、高齢者又は少なくとも一時的に頭が混乱している人々であってよい。
【0047】
本開示の態様では、RFに基づく距離測定を実施する位置検出システムのための制御デバイスが提示される。当該制御デバイスは、
距離測定品質評価ユニットと、
電力消費最適化ユニットと
を有し、
当該制御デバイスは、少なくとも1つの送信ユニットへ及び少なくとも1つの受信ユニットへ動作上接続され、
当該制御デバイスは、RF帯域における送信された電磁波信号及び対応する受信された電磁波信号に基づく距離測定のために構成され、
前記電磁波信号は、距離測定のために特に形成され、
前記受信された信号は、前記送信された信号に基づき、
前記距離測定品質評価ユニットは、距離測定結果に基づき距離測定品質指標を導出するよう構成され、
前記電力消費最適化ユニットは、前記品質指標に基づき少なくとも1つの送信パラメータを適応させるよう構成され、
前記電力消費最適化ユニットは、前記品質指標に応じて
前記少なくとも1つの送信ユニットの送信電力を適応させるよう構成される。
【0048】
本開示の更なる他の態様では、RFに基づく距離測定を実施する位置検出方法が提示される。当該位置検出方法は、
RF帯域において電磁波信号を送信し、該電磁波信号は、距離測定のために特に形成され、
特に直接的又は間接的に、RF帯域において電磁波信号を受信し、該受信される信号は、前記送信された信号に基づき、
送信された信号情報及び受信された信号情報に基づき距離測定制御を実行する
ステップを有し、
前記距離測定制御は、
距離測定結果に基づき距離測定品質指標を導出することを含め、距離測定品質を評価し、
前記品質指標に応じて送信電力を適応させることを含め、前記品質指標に基づき少なくとも1つの電力消費に関連した送信パラメータを適応させる
ことを有する。
【0049】
本発明の更なる他の態様では、計算装置で実行される場合に、該計算装置に、ここで論じられてきた方法のステップを実行させるプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムが提供される。
【0050】
プログラムコードは、コンピュータのような計算機械による実行のために1つ以上の非一時的な有形的媒体において符号化され得る。いくつかの例となる実施形態では、プログラムコードは、システム内での使用のためにネットワーク上で他の装置又はデータ処理システムからコンピュータ読み取り可能な信号媒体を通じて持続性メモリユニット又はストレージへダウンロードされてよい。例えば、サーバデータ処理システム内のコンピュータ読み取り可能なメモリユニット又は記憶媒体に記憶されているプログラムコードは、ネットワーク上でサーバからシステムへダウンロードされてよい。プログラムコードを提供するデータ処理装置は、サーバコンピュータ、クライアントコンピュータ、又はプログラムコードを記憶及び送信することができるその他装置であってよい。
【0051】
ここで使用されるように、語“コンピュータ”は、多種多様なプロセッシング装置を意味してよい。すなわち、相当な計算能力を有しているモバイルデバイスも、たとえそれらが標準的な“コンピュータ”ほどには処理能力リソースを提供しないとしても、計算装置と呼ばれ得る。言うまでもなく、そのような“コンピュータ”は、医療デバイス及び/又はシステムの部分であることができる。更に、“コンピュータ”はまた、クラウド環境で提供される計算能力を伴うか又はそのような能力を使用し得る分散型計算装置を指してよい。語“コンピュータ”はまた、データを処理することができる医療テクノロジデバイス、ヘルステクノロジデバイス、パーソナルケアデバイス、フィットネス器具デバイス、及びモニタリングデバイス全般に関係があってよい。産業分野においても、上記の定義に従う計算装置が使用されてよい。
【0052】
本開示の好適な実施形態は、従属請求項で定義される。請求される方法及び請求されるコンピュータプログラムは、請求されるシステム及び請求されるデバイスと、並びに従属するシステム/デバイス請求項で定義されるのと同様の好適な実施形態を有することができ、その逆も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明のそれら及び他の態様は、以降で記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【
図1】本開示に従う例となる実施形態、すなわち位置検出システムの略配置図を示す。
【
図2】変形された位置検出システムの略配置図を示す。
【
図3】距離測定のための送受信ノードの対の略配置図を示す。
【
図4】
図3の配置の機能を説明する信号チャートを示す。
【
図5】距離測定のための制御デバイスの例となる実施形態の概略図を示す。
【
図6】本開示に従う距離測定方法のいくつかのステップを表す略ブロック図である。
【
図7】RFに基づく距離測定を実施する位置検出システムの更なる実施形態の略配置図である。
【
図8】RF送信信号特性を表す信号チャートである。
【
図9】本開示に従う位置検出方法の実施形態のいくつかのステップを表す略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、RF信号に基づく屋内位置検出システム10の略配置図を示す。システム10は、RFネットワーク又はグリッドを形成する少なくとも1つの送信ユニット12及び少なくとも1つの受信ユニット14を有する。言うまでもなく、関連するユニット12、14のうちの少なくとも1つは、送信及び受信の両方が可能である送受信ユニットとして配置されてよい。送信ユニット12は、少なくとも1つの送信アンテナ16を有する。受信ユニット14は、夫々が少なくとも1つの受信アンテナ18を有する。送信ユニット12と受信ユニット14との間では、電磁波信号20が受け渡される。送信ユニット12は、受信ユニット14によって受信され得る各々の信号20を送信するよう構成される。
図1では、送信ユニット12と受信ユニット14との間に直接的な視線方向が存在し得ることが更に示されている。なお、障害物24、例えば、壁、機械類、家具、なども存在し得る。一般的に、電磁波信号は障害物24を通る。しかし、多くの場合に、信号20は減衰され、反射され、散乱され、そして別なふうに弱められる。結果として、ユニット12と受信ユニット14のいずれかとの間の如何なる距離測定も、対応する精度低下を起こしがちである。
【0055】
例として、送信ユニット12は、モニタ対象(例えば、患者、人、ペット、輸送品、製造部品若しくは構成材、又は機械)に取り付けられ得る装着型又はモバイルデバイスの部分を形成し得る。従って、デバイスの位置は、少なくとも1つの対応する更なるユニット12、14までの距離が測定される場合に検出され得る。
【0056】
更に、制御デバイス30が設けられる。制御デバイス30は、距離測定のために、及び距離測定最適化のために構成される。制御デバイス30は、距離測定品質評価ユニット32及び電力消費最適化ユニット34を有する。これらについては、以降で更に記載及び説明される。
【0057】
距離測定を実施する位置検出システムの例となる構造レイアウトに関して、位相シフトに基づく測定に関連する国際公開第2002/001247(A2)号(特許文献1)と、飛行時間に基づく測定に関連する国際公開第2014/195161(A1)号(特許文献2)とが再び参照される。
【0058】
この文脈では、無線ネットワークの第1ノード及び第2ノードの間の距離測定のための方法を開示している米国特許公開第2013/0288611(A1)号明細書で記載されている例となる距離測定方法及びデバイスが更に参照される。方法は、第1の中間周波数にダウンミキシングすることで第2ノードによって受信される第1の信号を第1ノードによって第1の周波数により送信し、第2ノードによって第1の周波数の第1の周波数値について第1の位相の第1の値を決定し、第2の中間周波数にダウンミキシングすることで第1ノードによって受信される第2の信号を第2ノードによって第2の周波数により送信し、第1ノードによって第2の周波数の第1の周波数値について第2の位相の第1の値を測定し、第1の周波数及び第2の周波数は、第1の周波数の第2の周波数値及び第1の周波数の第1の周波数値が周波数差を有し、且つ、第2の周波数の第2の周波数値及び第2の周波数の第1の周波数値が周波数差を有するよう変更され、第1の周波数の第2の周波数値について第2ノードによって第1の位相の第2の値を決定し、第2の周波数の第2の周波数値について第1ノードによって第2の位相の第2の値を決定し、第1ノードと第2ノードとの間の距離を計算することを有する。
【0059】
本開示は、原理上は当該技術で既に記載されているそのようなものである位置検出のための距離測定方法及びシステムの改良版に関する。
【0060】
具体的に、本開示は、夫々のシステム10の電力消費に焦点を当てる。電力消費及び測定の正確さを最適化するために、あるいは、少なくとも、距離測定精度に対して電力消費をトレードオフするために、距離測定品質指標(Distance measurement Quality Indicator)(DQI)を処理するよう構成される距離測定品質評価ユニット32を制御デバイス30に設けることが提案される。先に本明細書で説明されたように、距離測定品質指標は、先行技術のデバイスで一般的に使用されているデータ転送又は通信品質指標(例えば、RSSI及びLQI)に必ずしも対応しない。品質評価ユニット32によって導出された品質指標に基づき、電力消費最適化ユニット34は、例えば、送信ユニット12の送信電力を適応させるように動作してよい。夫々の制御が実施されてよく、ここで、目標数字は、そのようなものとして距離測定精度であって、データ転送品質ではない。
【0061】
図1は、RFに基づく信号転送のためのユニット12、14の大いに簡略化された配置を示す。
図2は、電磁波信号の送信及び受信の両方が可能である少なくとも1つのトランシーバユニット42を実装する同様のシステム40に関する。このために、
図1に示されたユニット12、14のうちの少なくとも1つは、トランシーバユニット42によって置き換えられ得る。
【0062】
図2は、受動型反射器とも呼ばれ得る反射器ユニット44を更に表す。更に、反射器ユニット46が設けられており、これは能動型反射器とも呼ばれ得る。反射器ユニット44は、入射する電磁波信号を受動的に反射するよう構成される。このために、RF反射体52が設けられてよい。
【0063】
(能動型)反射器ユニット46は、基本的に、送受信ユニットして配置される。反射器ユニット46は、受信アンテナ54及び送信アンテナ56を有する。受信アンテナ54によって受信された入射電磁波信号に応答して、信号が送信アンテナ56を介して送信され得る。ここで論じられているユニット12、14、42、44、46は、各々のタイミング回路構成、例えば、位相ロックループ(Phase Lock Loop)(PLL)を設けられるか、又はそれへ結合されてよい。結果として、位相シフト、飛行時間、及び同様の値が計算され得、それに基づき、ユニット12、14、42、44、46の間の距離測定が実行され得る。距離測定に基づき、ユニット12、14、42、44、46のうちの少なくとも1つについての位置検出が実行され得る。
【0064】
ユニット12、14、42、44、46のうちの少なくとも1つは、モニタされるべき関心のある対象に取り付けられるか、又は装着され得る。例えば、患者は、夫々のユニットを実装する装着型デバイスを取り付けられてよい。従って、装用者の位置は追跡されモニタされ得る。基本的に、同じことが、産業分野で使用され且つ夫々のユニットが取り付けられる機械、品物、構成材及び同様のものにも当てはまる。
【0065】
図3が更に参照され、
図3は、夫々が送受信ユニットとして配置され得るユニット12、14の対を表す。
図3で示されるように、最初に、ユニット12は、電磁波信号60を送信してよい。電磁波信号60は、ユニット14によって受信される。これに応答して、ユニット14は、電磁波信号62を送信(又は反射)し得る。電磁波信号62は、逆に、ユニット12によって受信される。一定量の時間が信号交換のために必要である。経過した時間に基づき、ユニット12、14の間の距離が測定され得る。
【0066】
対応する信号チャートを表す
図4が更に参照される。
図4は、例として、
図3のユニット12の信号状態を表してよい。
図4において、横座標の軸は時間tを表し、参照符号66を参照する。PLLに基づく信号は参照符号68によって示されている。送信段階での送信信号は参照符号70によって示されている。受信段階での受信信号は参照符号72によって示されている。送信信号70は、PLL信号68と同期(位相同期)される。PLL信号68と受信信号72との間には、位相シフト74が存在する。位相シフト74に基づき、ユニット12、14の間の距離が計算され得る。
【0067】
図5は、制御デバイス30の実施形態を例として表す。具体的に、
図5は、制御デバイス30において、特に、電力消費最適化ユニット34(
図1を参照)において、少なくとも部分的に実装され得る制御ループを例示する。制御ループは、ハードウェアによって及び/又はソフトウェアによって実施されてよい。
【0068】
参照符号80は、入力される距離品質指標目標信号を表し、この信号は、定義/設定された距離品質指標値又はレベルであってよい。例えば、信号80は、超えられるべきでない特定の品質範囲を表してよい。
【0069】
参照符号80は、入力信号、すなわち、定義された距離品質指標信号を示す。更に、フィードバック信号82が供給され、この信号は、現在の距離測定精度を表し得る。信号80、82の比較(例えば、減算)に基づき、制御エラー(参照符号84)が計算され得る。制御エラー信号84はコントローラ86へ供給される。コントローラ86は、基本的に、
図1の電力消費最適化ユニット34に対応するか、又はその部分を形成してよい。従って、コントローラ86は、電力設定信号88を出力するよう構成される。結果として、制御動作は、フィードバック信号82を距離品質指標80と整合させるように実行される。
【0070】
電力設定信号88に基づき、被制御セクション90が作動する。被制御セクション90は、ユニット12、14、42、44、46が距離測定のために作動する場合に、基本的にそれらのユニットを表す。なお、距離測定品質評価ユニット32も、言わば、被制御セクション90の部分を形成してよい。被制御セクション90はまた、実際の測定値を、そして、制御デバイス30の目下の性能に基づき、距離(測定)品質指標(参照符号94を参照。)を計算するよう構成される。
【0071】
参照符号92によって示される矢印は、距離測定精度に影響を及ぼし得る外乱を表す。基本的に、外乱92は、被制御セクション90の段階で存在する。
【0072】
本開示に従う方法のいくつかのステップを表す
図6が更に参照される。方法は、RFに基づく距離測定に対する改善された品質及び改善された電力消費のアプローチに関する。
【0073】
方法は、新しい距離測定の開始を伴うステップS10を伴う。ステップS10は、複数又は多数の差分値を収集することを伴ってよい。ステップS10における距離測定結果プロセスに基づき、ステップS12が続いてよい。ステップS12は、複数の距離測定値を処理し、それらから距離品質指標を導出することを含む。距離品質指標は、例えば、実際の距離測定値と平均距離値との比較を伴ってよい。このようにして、外れ値及び予期しない値が検出され得る。結果として、距離品質指標は、実際の距離測定精度を示し得る。
【0074】
導出された距離品質指標値(複数を含む。)は、後続のステップS14で更に処理されてよい。ステップS14では、実際の品質レベルが定義された許容範囲内にあるか、又は定義された(最低)閾値を上回るかどうかが評価されてよい。品質レベルが満足であると評価される場合には、ステップS16が続く。
図6で表されている実施形態では、ステップS16は、特に、より低い電力消費のために、新たな電力設定の計算を伴う。従って、方法は、距離測定の精度及び品質を所望の範囲内に又は所望の最低レベルを上回って保ちながら、電力消費の削減に焦点を当てる。
【0075】
距離測定の実際の品質が最低閾値を下回るか又は所望の範囲内にないとステップS14で評価される場合には、ステップS18が続いてよい。ステップS18は、関連する送信ユニット、受信ユニット及び送受信ユニットのための新たな電力設定の計算を伴ってよい。
【0076】
ステップS16及びS18で処理された電力設定に基づき、更なる測定サイクルが実行されてよい(ステップS10を参照。)。代替の実施形態では、ステップS16は、距離測定品質が所望の範囲内にあるか、又は所望の最低閾値を上回る限り、実際の電力設定を一定に保つことを伴う。
【0077】
位置検出システム10の他の略配置図を表す
図7が更に参照される。システム10は、RF帯域において電磁波信号を交換するよう構成される2つの送受信ユニット42を有する。
【0078】
ユニット42の間の信号リンクは、参照符号104、106によって
図7で示されている。参照符号104は、トランシーバ42の間のデータ及び情報の交換を表す。先に本明細書で既に説明されたように、標準のRF通信デバイスで見られるように情報を転送することは、システム10の主たる目的ではない。むしろ、データ情報104は、望ましくは、距離測定に関連がある。
【0079】
更に、トランシーバ42の間には、複数の範囲又は距離測定リンク106が確立されてよい。結果として、関連するトランシーバ42の間の複数の経路は、距離測定のために使用されてよい。2つよりも多いトランシーバ42がシステム10に存在してよいことは言うまでもない。トランシーバ42のうちの少なくとも1つは、モニタされるべき対象に取り付けられ得るモバイル又は装着型トランシーバ42であってよい。言うまでもなく、システム10はまた、1つよりも多い動く可能性があるモニタ対象を追跡するために構成されてよい。
【0080】
複数のリンク106は、ダイバース・アンテナの間に形成されてよく、あるいは、異なる周波数帯域をカバーしてよい。関連する送受信ユニット42の間に複数のリンクを確立することが一般的に好ましい。結果として、距離測定のための及び距離品質指標の導出のためのデータベースは、拡張され得る。
【0081】
図7に示されているシステム10は、電力設定セクション100及び給電又は電圧印加セクション102を更に伴う。セクション102はバッテリを伴ってよい。線112は、関連するトランシーバ42と電力設定ユニット100との間の距離測定結果の転送を示す。線114は、対応する品質関連信号を示し、この信号は、距離測定品質指標を表し得る。従って、信号112、114に基づき、電力設定ユニット100は、新たな電力設定を設定してよく、給電セクション102とトランシーバ42とを然るべく結合してよい(給電セクション102と電力設定ユニット100との間の電力線118、及びユニット100とトランシーバ42との間の線116を参照。)。線116は、トランシーバ42への新たな電力設定及び新たな設定に基づく距離測定の新たなリクエストの転送を伴う。更に、給電セクション102とトランシーバ42との間のそのようなものとしての電力供給が行われてよい。
【0082】
図8が更に参照され、
図8は、RFに基づくシステムの電力消費と品質レベルとの間の関係を示す例となる図解チャートを表す。横座標の軸はRF送信電力を示す(参照符号130)。縦座標軸は品質レベルを表す(参照符号132)。グラフ136は、RFに基づく通信環境に関する。グラフ138は、本開示に従うRFに基づく距離測定環境に関する。
【0083】
グラフ136は、データ交換を含むRFに基づく通信を表し、RSSIアプローチに基づく品質最適化の典型的な結果が表されている。グラフ136は、適用される送信電力と結果として起こる信号転送品質との間のおおよそ線形な関係を示す傾斜140を有する。ある電力レベル(参照符号144)で、最大品質レベルが達成される。送信電力を更に増大させたとしても、信号送信品質はこれ以上改善しない。むしろ、グラフ136は飽和部分142を伴う。グラフ136は、通信RF環境における電力及び品質最適化のための標準的なアプローチを代表する。
【0084】
それに反して、グラフ138は、本開示の文脈内の例となるRFに基づく距離測定/位置検出システムについて、利用される送信電力と結果として起こる距離測定精度又は品質との間の例となる関係を表す。品質最大は参照符号146によって示されている。チャート136と同様に、チャート138も、送信電力の増大と結果として起こる品質レベルとの間の正相関を示す部分を有する(品質最大を表す電力値146より左側部分)。しかし、最高又は最大品質を過ぎると、送信電力の更なる増大は、達成された精度又は品質レベルをおとしめさえしうる(値146より右側部分)。
【0085】
更に、匹敵する環境において匹敵する設定を有してさえ、データ転送最適条件144は、距離測定品質最適条件146と適合しない。
【0086】
曲線136、138の異なる特性の主たる理由は、通信目的のために、定義された品質レベル(100%)がある送信電力レベルで達成され得るからである。このとき、品質レベルは、夫々のデータ片/情報片(ビット及びバイト)が成功裏に送信され得ることを含む。従って、この最適点を過ぎると、更なる改善は達成される必要がない。
【0087】
それに反して、距離測定は、実際の測定条件に応じて、信号歪み及び対応する品質低下の影響をはるかに受けやすい。距離測定は、最終的に、言わば“アナログ値”、すなわち、RFシステムの2つ以上のユニット間の距離の測定を対象としている。従って、ほとんどの場合において、更なる制度改善の余地が十分に存在しうる。反対に、精度の低下の可能性が常に存在する。実際の使用において、完ぺきな(距離測定)結果は、基本的に達成され得ない。従って、夫々の距離測定及び位置検出システム及び方法は、完ぺきな品質レベル(100%)に近づこうと試みてよいが、上記の制約を課される。結果として、距離測定プロセスの最適化の目標は、単純なデータ転送プロセスの最適化の目標とは異なる。
【0088】
RSSI又はLQIに基づく電力調整を利用する距離測定システムは、視線方向が全く存在しないか又は限られている状況/環境において、性能が限られている。このことは、特に、屋内用途に当てはまる。斯様な場合に、例えば、送信電力の単純な増大は、基本的に、望まない信号反射の増大を引き起こしうる。これは、結果として、更なる送信エラーを引き起こし、距離測定精度を低下させる。上述されたように、非屋内用途も、ここで記載されるアプローチから利益を受け得る。
【0089】
図9が更に参照され、
図9は、ここで開示される少なくとも1つの実施形態に従う例となる位置検出方法を表す略ブロック図を示す。基本的に、方法は、RFに基づく距離測定を実施する。第1のステップS50で、電磁波信号が送信される。望ましくは、信号はRF信号である。電磁波信号は、距離測定のために特に形成される。電磁波信号は、望ましくは、距離測定に関連したデータを越える情報/データを包含又は搬送しない。
【0090】
更なるステップS52が続いてよく、ステップS52は、送信された信号に基づく電磁波信号を受信することを伴う。電磁波信号は、直接的又は間接的に受信されてよい。直接的に受信される信号は、反射信号である。間接的に受信される信号は、最初に送信された信号に応答して能動型反射器によって送信された信号である。
【0091】
更なるステップS54は、距離測定制御に当たる。ステップS54は、基本的に、距離測定を伴う。距離測定は、例えば、位相シフト又は飛行時間に基づいてよい。
【0092】
更なるステップS56、S58が設けられてよく、ステップS56、S58は、距離測定結果の精緻化及び電力消費の最適化を対象とする。ステップS56は、距離測定品質の評価を伴い、複数の距離測定結果に基づき距離測定品質指標を導出することを伴ってよい。距離測定品質指標に基づき、少なくとも1つの電力消費に関連した送信パラメータがステップS58で適応又は調整されてよい。
【0093】
結果として、距離測定は、測定品質と電力消費との間の有益なトレードを達成することを目的として制御され得る。
【0094】
本発明は、図面及び上記の説明において詳細に図解及び記載されてきたが、そのような図解及び記載は、実例又は例示であって、限定とみなされるべきではなく、本発明は、開示されている実施形態に制限されない。開示されている実施形態に対する他の変形は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求されている発明を実施する際に当業者によって理解及び達成され得る。
【0095】
特許請求の範囲において、語“有する(comprising)”は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞“1つの(a又はan)”は、複数を除外しない。単一の要素又は他のユニットは、特許請求の範囲で挙げられているいくつかのアイテムの機能を満足してよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項で挙げられているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0096】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに又はそれの部分として供給される適切な媒体(例えば、光記憶媒体又は固体状態場合)において記憶/分配され得るが、他の形態でも(例えば、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介して)分配されてよい。
【0097】
特許請求の範囲における如何なる参照符号も、適用範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。