特許第6961161号(P6961161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961161
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】固体材料容器用キャビネット
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20211025BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C23C16/448
   H01L21/31 F
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-91137(P2019-91137)
(22)【出願日】2019年5月14日
(65)【公開番号】特開2020-186432(P2020-186432A)
(43)【公開日】2020年11月19日
【審査請求日】2020年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小浦 輝政
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−191140(JP,A)
【文献】 特開2005−206911(JP,A)
【文献】 特開2004−307974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C
C30B
H01L
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天壁、側壁、底壁を有する本体と、
前記本体の一部に取り付けられる、固体材料容器を出し入れするための出入口部と、
前記本体の一部に取り付けられる、排気ダクトと、
前記固体材料容器を加熱する加熱部と、
前記固体材料容器または前記加熱部の温度を測定する温度測定部と、
前記固体材料容器に向かって冷却風を吹き付ける冷却用送風機と、
所定の操作値を入力するための操作入力部と、を備え、
前記操作入力部で、着脱式電気ヒータジャケットを取り外してから冷却する第一冷却モードと、それを取り外さずに冷却する第二冷却モードを設定可能に構成される、
固体材料容器用のキャビネット。
【請求項2】
前記冷却用送風機は、吸気部の開口面積と吹付部の開口面積が同じまたは略同じである、請求項1に記載の固体材料容器用のキャビネット。
【請求項3】
前記冷却用送風機は、吸気部の開口面積より吹付部の開口面積が小さい、請求項1に記載の固体材料容器用のキャビネット。
【請求項4】
前記吹付部のフード先端と、前記固体材料容器または前記固体材料容器を覆っている前記加熱部との最短距離が10cm以下である、請求項2または3に記載の固体材料容器用のキャビネット。
【請求項5】
前記温度測定部で測定された測定温度および/または前記加熱部に設定された設定温度を表示する表示部と、を備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体材料容器用のキャビネット。
【請求項6】
前記固体材料容器の内部が所定温度となるように前記加熱部を制御するキャビネット制御部を備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体材料容器用のキャビネット。
【請求項7】
前記固体材料容器の重量が閾値以下、または固体材料の残量が閾値以下になったら、昇華ガスおよび/またはキャリアガスの同伴ガスを半導体製造装置へ送ることを停止するように、昇華ガス送出配管に配置される制御弁および/または前記固体材料容器の出口弁に指令し各弁を閉じ、および/または、キャリアガス導入配管に配置される制御弁および/または前記固体材料容器の入口弁に指令し各弁を閉じる制御を行う、キャビネット制御部を備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の固体材料容器用のキャビネット。
【請求項8】
昇華ガスおよびキャリアガスの同伴ガスを半導体製造装置へ送ることを停止した後で、前記冷却用送風機を駆動させる制御を行い、前記温度測定部で測定される温度が閾値以下になったら前記冷却用送風機を停止する制御を行う、キャビネット制御部を備える、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固体材料容器用のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造用の固体材料が充填された固体材料容器を収容するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業の進歩に伴い、厳しい薄膜の要件を満たすであろう新たな半導体材料を利用することが求められている。これらの材料は、半導体製品内の薄膜堆積、形状加工するための広範な用途において使用される。
例えば、固体材料(固体前駆体材料ともいう。)としては、バリア層、高誘電率/低誘電率絶縁膜、金属電極膜、相互接続層、強誘電性層、窒化珪素層又は酸化珪素層用の構成成分が挙げられ得る。加えて、この固体前駆体としては、化合物半導体用のドーパントとして働く構成成分や、エッチング材料が挙げられ得る。例示的な前駆体材料としては、アルミニウム、バリウム、ビスマス、クロム、コバルト、銅、金、ハフニウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、鉛、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、ニオブ、白金、ルテニウム、銀、ストロンチウム、タンタル、チタン、タングステン、イットリウム及びジルコニウムの無機化合物及び有機金属化合物が挙げられる。
【0003】
この新たな材料の一部は、標準温度及び圧力で固体の形にあるため、製造プロセス用の半導体成膜チャンバへ直接供給することはできない。
これらの材料は、一般に、非常に高い融点及び低い蒸気圧を有しているため、成膜チャンバへの供給に先立って、固体材料容器の内部で加熱され、気化・昇華されねばならない。
【0004】
半導体製造工程で使用されるために十分な量の蒸気を供給するためには、加熱時において固体材料容器から固体材料へ十分な入熱があることが求められる。
固体材料の気化に際して、気化熱が奪われるため、固体材料蒸気の供給を開始すると固体材料表面の温度が低下する。すると温度が低下した部分について、固体材料の蒸気圧が低下することから、供給時間の経過とともに固体材料容器から導出される蒸気の量が低下することとなる。このような蒸気の導出量の変動は、半導体製造工程において均一な成膜を妨げることとなるため、好ましくない。
このため、固体材料容器は一般に重量が大きく設計されている。重量を大きくすることにより、固体材料容器そのものが有する熱量が大きくなり、気化に伴い温度が低下した固体材料表面に迅速に熱量を供給することが可能となるためである。
【0005】
ところで、固体材料容器は、半導体製造装置に固体材料の蒸気を供給するため、半導体製造装置に近接して配置される。ここで固体材料容器内部の固体材料が消費されると、固体材料が充填された別の固体材料容器に交換される。
固体材料容器の交換作業を行うためには、安全上の観点から固体材料容器を室温付近にまで冷却する必要がある。また、半導体プロセスの進捗を考慮すると可能な限り素早く冷却する必要がある。
【0006】
特許文献1は、シリンダーキャビネット室に、複数のオートシリンダボックスを格納し、ガス供給を制御する装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019−8741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、制御装置11がガス供給経路情報(状態情報)を監視制御装置20に送信し、表示部204でガス供給経路情報を表示することが記載されている。ガス供給経路情報として、例えば、弁の開閉、圧力情報、温度情報および正常・異常の状態情報などが挙げられる。そして、特許文献1では、複数のキャビネット(シリンダー)を並列使用することで、一方のキャビネット内の全シリンダーを使用したら、他のキャビネット内のシリンダーへ切り替えを行う構成であり、使用後のシリンダーは自然冷却されている。
【0009】
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、キャビネット内の固体材料容器を素早く冷却し、キャビネット内の固体材料容器の交換作業時間を短縮できる、固体材料容器用のキャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る固体材料容器用のキャビネットは、
天壁、側壁、底壁を有する本体と、
前記本体の一部に取り付けられる、固体材料容器を出し入れするための出入口部(扉)と、
前記本体の一部(例えば、天壁、出入口部から離れた側壁など)に取り付けられる、排気ダクトと、
前記固体材料容器を加熱する加熱部(例えば、着脱式電気ヒータジャケット)と、
前記固体材料容器(例えば、外壁面、内部空間)または加熱部(例えば、熱源、固体材料容器との接触部)の温度を測定する温度測定部と、
前記固体材料容器に向かって冷却風を吹き付ける冷却用送風機と、を備える。
【0011】
前記冷却用送風機の単位時間当たりの風量が、前記排気ダクトの送風手段のそれと同程度でもよく、冷却用送風機のそれが前記排気ダクトの送風手段のそれよりも高くてもよい(例えば、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上高くてもよい)。
前記冷却用送風機は、前記出入口部(扉)に設けられていてもよく、前側壁あるいは前記底壁に設けられていてもよい。扉は、例えば、観音開き扉、片開き扉、スライド式扉であってもよい。
前記冷却用送風機は、吹付部(固体材料容器に対向する側)に風向きを調整するフードを備えていてもよい。
前記冷却用送風機は、吸気部の開口面積と吹付部の開口面積が同じまたは略同じでもよい。「略」は、例えば、±[1〜10]%程度の違いであってもよい。
前記冷却用送風機は、吸気部の開口面積より吹付部の開口面積が小さくてもよい。
前記吸気部の開口部の形状が円状、楕円状または矩形状であってもよい。
前記吹付部の開口部の形状が円状、楕円状または矩形状であってもよい。
前記吹付部のフード先端と、前記固体材料容器または前記固体材料容器を覆っている加熱部との最短距離が10cm以下であることが好ましい。吹付部のフード先端と固体材料容器または固体材料容器を覆っている加熱部とが、接触しない程度に、固体材料容器がキャビネット内に配置される。
【0012】
前記固体材料容器用のキャビネットは、
所定の操作値を入力するための操作入力部(例えば、タッチパネル)と、
温度測定部で測定された測定温度および/または加熱部に設定された設定温度を表示する表示部(例えば、タッチパネル)と、を備えていてもよい。
前記固体材料容器用のキャビネットは、
前記固体材料容器の重量を測定する重量測定部(例えば、ロードセル)を備えていてもよい。
【0013】
前記固体材料容器用のキャビネットは、各種制御を行うキャビネット制御部を備える。
前記キャビネット制御部は、(例えば、各半導体製造装置を制御するプロセス制御装置からの指示に応じて、あるいは昇華ガス供給開始入力指示に応じて、)固体材料容器の内部が所定温度(例えば、固体材料が蒸発する温度範囲)となるように加熱部を制御してもよい。
前記キャビネット制御部またはプロセス制御装置は、温度測定部で測定された測定温度を監視し(例えば、温度測定部から測定温度をリアルタイムあるいは所定タイミングで受信し)、所定の温度範囲になったら(または閾値を超えたら)、固体材料容器内へキャリアガスを導入するように、キャリアガス源(例えばキャリアガス容器)から固体材料容器内へキャリアガスを導入するキャリアガス導入配管に配置される制御弁および/または固体材料容器の入口弁に指令し、弁の開閉制御をしてもよい。
前記キャビネット制御部またはプロセス制御装置は、温度測定部で測定された温度を監視し(例えば、温度測定部から測定温度をリアルタイムあるいは所定タイミングで受信し)、所定の温度範囲になったら(または閾値を超えたら)、固体材料が蒸発した昇華ガスとキャリアガスとを同伴させて、半導体製造装置へ供給するように、固体材料容器から半導体製造装置側へ昇華ガスとキャリアガスとの同伴ガスを送る昇華ガス送出配管に配置される制御弁および/または固体材料容器の出口弁に指令し、弁の開閉制御をしてもよい。
【0014】
固体材料容器は、その内部圧(あるいは同伴ガス圧)を測定する圧力計を設けていてもよい。
昇華ガス送出配管は、その内部圧(あるいは同伴ガス圧)を測定する圧力計を設けていてもよい。昇華ガス送出配管は、同伴ガスの流量調整および/または圧力調整のための流量調整部および/または圧力調整部を設けていてもよい。
前記キャビネット制御部またはプロセス制御装置は、同伴ガスの流量調整部および/または圧力調整部を制御してもよい。
キャリアガス導入配管は、キャリアガスの流量測定および/または圧力調整のためのキャリアガス流量調整部および/または圧力調整部を設けていてもよい。また、キャリアガス導入配管は、キャリアガスの流量を測定する流量計および/または圧力を測定する圧力計を設けていてもよい。
前記キャビネット制御部またはプロセス制御装置は、キャリアガス流量調整部および/または圧力調整部を制御してもよい。
【0015】
前記キャビネット制御部は、前記重量測定部で測定された重量が閾値以下になったら、プロセス制御装置へその情報(例えば、重量)あるいは交換タイミングであることを示す情報を送ってもよい。または、前記重量測定部が、測定された重量をプロセス制御装置へ直接またはデータ転送装置(例えば、メモリと通信部を備える)を介して送ってもよい。
「閾値」は、例えば、固体材料容器および付属物の重量から充填されている固体材料の重量の80%〜95%を引いた値であってもよい。
【0016】
前記キャビネット制御部は、前記重量測定部で測定された重量が閾値以下になったら、同伴ガスを半導体製造装置へ送ることを停止するように、昇華ガス送出配管に配置される制御弁および/または固体材料容器の出口弁に指令し各弁を閉じてもよく、および/または、キャリアガス導入配管に配置される制御弁および/または固体材料容器の入口弁に指令し各弁を閉じてもよい。
「閾値」は、例えば、固体材料容器および付属物の重量から、固体材料容器に充填されている固体材料の重量の85%〜95%を引いた値であってもよい。
【0017】
前記キャビネット制御部は、キャリアガスの流量(流量計の測定値、流量調整部で測定された測定値)、飽和蒸気圧(固体材料によって一定値)、同伴ガスの送り込み時間(タイマー機能で時間測定)から、固体材料の残量を演算で求めてもよい。
前記キャビネット制御部は、前記残量が閾値以下になったら、プロセス制御装置へその情報あるいは交換タイミングであることを示す情報を送ってもよい。
前記キャビネット制御部は、前記残量が閾値以下になったら、同伴ガスを半導体製造装置へ送ることを停止するように、昇華ガス送出配管に配置される制御弁および/または固体材料容器の出口弁に指令し各弁を閉じてもよく、および/または、キャリアガス導入配管に配置される制御弁および/または固体材料容器の入口弁に指令し各弁を閉じてもよい。
「閾値」は、例えば、固体材料容器に充填されている固体材料の重量の1%〜10%であってもよい。
【0018】
前記キャビネット制御部は、同伴ガスを半導体製造装置へ送ることを停止した後(閉弁した後)で、前記冷却用送風機を駆動させ、固体材料容器の温度が閾値以下になるまで、固体材料容器を冷却してもよい。
前記キャビネット制御部は、固体材料容器の温度が閾値以下になったら、前記冷却用送風機を停止してもよい。
固体材料容器の温度は、前記温度測定部が固体材料容器に接している場合にはこれで測定された温度でもよく、固体材料容器に設置された温度計あるいはキャビネット内に設置されて固体材料容器の外表面温度を測定するように設定された非接触式温度計で測定された温度でもよい。
「閾値」は、例えば、50℃以下、40℃以下、大気温度以下である。
【0019】
前記冷却用送風機は、自動駆動または停止に限らず、操作入力部からのオペレータの手動入力により駆動または停止を行なってもよい。また、操作入力部とは別の緊急停止スイッチ(ボタン)を押すことで冷却用送風機を停止してもよい。
前記キャビネット制御部は、前記冷却用送風機の駆動前、同時あるいは駆動直後に、排気ダクトのダクト用換気送風機を駆動させ、排気を開始させてもよい。
【0020】
固体材料容器は、少なくともその側面を加熱部で覆われていてもよい。冷却前に、加熱部(例えば、着脱式電気ヒータジャケット)を外してから、冷却を開始してもよい。
【0021】
前記キャビネット制御部は、操作入力部、各種計器(流量計、圧力計、流量調整部、圧力調整部、温度測定部など)およびプロセス制御装置と、データおよび制御指令の送受信(無線、有線を問わず)が可能に構成されている。
【0022】
本発明によれば、キャビネット内の固体材料容器を素早く冷却し、キャビネット内の固体材料容器の交換作業時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】実施形態1の半導体製造装置とキャビネットの機能ブロック図である。
図1B】別実施形態の半導体製造装置とキャビネットの機能ブロック図である。
図2A】実施形態1のキャビネットの模式図である。
図2B】別実施形態のキャビネットの模式図である。
図3A】別実施形態のキャビネットの模式図である。
図3B】別実施形態のキャビネットの模式図である。
図4】実施例および比較例における冷却時間推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
図1Aは、実施形態1の半導体製造装置1とキャビネット2の一例を示す。図1Aでは、キャビネット2の内部に設置された固体材料容器からキャリアガスと共に昇華ガスが半導体製造装置1へ送られる。キャビネット2の構成については後述する。
図1Bは、別実施形態の半導体製造装置1と2つのキャビネット2の一例を示す。連続的な昇華ガスの供給を可能にするために、キャビネットが複数並列に設置され(ここでは2つ)、第一キャビネットからの昇華ガス(同伴ガス)が停止される前に、第二キャビネットからの昇華ガス(同伴ガス)の供給が可能なように準備(固体材料容器の加熱を開始)しておき、第一キャビネットからの昇華ガス(同伴ガス)の供給を停止(閉弁)した際に(あるいは停止直前に)、第二キャビネットからの昇華ガス(同伴ガス)の供給を開始するように、配管の弁を開けるなどの切替制御が行われてもよい。この切替制御は、単一のキャビネット制御部が行ってもよく、各キャビネットに備わっている各キャビネット制御部が行ってもよく、プロセス制御装置が行ってもよい。
【0025】
(キャビネット)
図2Aに、キャビネット2の構成を示す。キャビネット2は、天壁21、側壁23、底壁22を有する本体を備える。
側壁23の1面に出入口部となる扉231が設けられており、この扉231から、固体材料容器5が出し入れされる。
天壁21には、排気ダクト25が設置されている。排気ダクト25は、キャビネット2内部の換気を行う機能であり、例えば、ダクト用換気送風機(吸気・排気用の電動送風機)、配管、逆流防止シャッターなどを有していてもよい。
【0026】
固体材料容器5は、キャビネット2の内部に収納される。固体材料容器5には、不図示の着脱式電気ヒータジャケットが取り付けられており、加熱される。
また、着脱式電気ヒータジャケットには、不図示の温度センサが取り付けられている。温度センサは、固体材料容器5に与えられる熱量を温度として測定し、測定温度を不図示のキャビネット制御部に送る。
【0027】
冷却用送風機3は、扉231に取り付けられている。冷却用送風機3は、吸気部31から外気または冷気を吸い込み、吹付部フード32から外気または冷気を、固体材料容器5の側面に向かって吹き付ける構成である。
吹付部フード32の先端から固体材料容器5の側面までの最短距離(d1)は、1cm〜10cmであることが好ましい。着脱式電気ヒータジャケットが取り付けられている場合には、吹付部フード32の先端から着脱式電気ヒータジャケットの側面までの最短距離(d1)は、1cm〜10cmであることが好ましい。
本実施形態1では、吸気部31の開口面積と吹付側フード32の開口面積が同じである。
【0028】
冷却用送風機3は、排気ダクト25のダクト用換気送風機よりも単位時間当たりの風量が、例えば、1.5倍以上、2倍以上または3倍以上高いことが好ましい。
【0029】
冷却用送風機3は、その羽根車の構造が、例えば、シロッコ、ターボ、ターボファン、プレート、プレートファンのいずれの構造でもよい。
最大静圧は、例えば、0.5kPa以上、好ましくは1kPa以上、より好ましくは10kPa以上であることが好ましい。
最大風量は、例えば、100m/分以上、好ましくは150m/分以上であることが好ましい。
【0030】
冷却風は、例えば、大気であって、温度は大気温度である。
冷却風は、大気に限定されず、例えば冷気(10℃以下)、乾燥空気でもよい。冷気は、スポットクーラーや空気調和機などで製造してもよい。
また、冷却風として複数種の風を段階的に使用してもよい。例えば、最初はキャビネット外の外気を用い、所定の温度に下がったら冷気を使用する、またはその逆でもよい。
吸気部31は、大気中の空気を吸気する第一吸気口と、冷気源から冷気を吸気する第二吸気口を有していてもよい。第一、第二吸気口には、それぞれ、開口弁が設置され、キャビネット制御部によって、開口弁が開閉する構成である。
【0031】
キャビネット2は、扉231に、所定の操作値(例えば、冷却風開始・停止、キャリガス導入開始・停止、同伴ガスの供給開始・停止など)を入力するためのタッチパネル24が設置されている。タッチパネル24は、各種データ(例えば、設定温度、測定温度、キャリアガスの流量・圧力、同伴ガスの流量・圧力、各種弁の開閉の有無、固体材料容器の重量または固体材料の理論残量、半導体製造装置1の稼働状態など)を表示する機能も有している。
【0032】
キャビネット2は、各種制御を実行するためのキャビネット制御部(不図示)を有する。
キャビネット制御部は、各半導体製造装置を制御するプロセス制御装置からの指示に応じて、あるいは昇華ガス供給開始入力指示に応じて、固体材料容器5の内部が所定温度(例えば、固体材料が蒸発する温度範囲)となるように着脱式電気ヒータジャケットの温度を制御する。
キャビネット制御部は、温度センサから測定温度をリアルタイムあるいは所定タイミングで受信し、所定の温度範囲になったら、固体材料容器5内へキャリアガスを導入するように、キャリアガス源から固体材料容器5内へキャリアガスを導入するキャリアガス導入配管(不図示)に配置される制御弁および/または固体材料容器5の入口弁に指令し、弁の開閉制御をする。
また、キャビネット制御部は、温度センサから測定温度をリアルタイムあるいは所定タイミングで受信し、所定の温度範囲になったら、固体材料が蒸発した昇華ガスとキャリアガスとを同伴させて、半導体製造装置1へ供給するように、固体材料容器5から半導体製造装置1側へ昇華ガスとキャリアガスとの同伴ガスを送る昇華ガス送出配管(不図示)に配置される制御弁および/または固体材料容器の出口弁に指令し、弁の開閉を制御する。
また、別実施形態として、固体材料容器5にその内部圧(あるいは同伴ガス圧)を測定する圧力計(不図示)が設定されており、キャビネット制御部は、圧力計から測定圧力をリアルタイムあるいは所定タイミングで受信し、所定の圧力範囲になったら、固体材料が蒸発した昇華ガスとキャリアガスとを半導体製造装置1へ供給するように構成してもよい。
【0033】
本実施形態1において、昇華ガス送出配管は、同伴ガスの流量調整および/または圧力調整のための流量調整部および/または圧力調整部を設けてある。キャビネット制御部は、同伴ガスの流量調整部および/または圧力調整部を、半導体製造装置1の要求に対応するように制御する。
また、キャリアガス導入配管は、キャリアガスの流量測定および/または圧力調整のためのキャリアガス流量調整部および/または圧力調整部を設けてある。キャビネット制御部は、キャリアガス流量調整部および/または圧力調整部を、半導体製造装置1の要求に対応するように制御する。
【0034】
(昇華ガス供給の停止)
キャビネット制御部は、キャリアガスの流量(流量調整部で測定された測定値)、飽和蒸気圧(固体材料によって一定値)、同伴ガスの送り込み時間(タイマー機能で時間測定)から、容器内の固体材料の理論残量を演算で求める。
キャビネット制御部は、理論残量が閾値以下になったら、半導体製造装置1へその情報あるいは交換タイミングであることを示す情報を送る。そして、上述した図1Bに示すように、別のキャビネットから昇華ガスの供給を受けることができる。
キャビネット制御部は、理論残量が閾値以下になったら、同伴ガスを半導体製造装置1へ送ることを停止するように、昇華ガス送出配管に配置される制御弁および/または固体材料容器の出口弁に指令し各弁を閉じる。また、キャリアガス導入配管に配置される制御弁および/または固体材料容器の入口弁に指令し各弁を閉じる。ここで、「閾値」は、例えば、固体材料容器5に充填されている固体材料の重量の5%〜8%である。
キャビネット制御部は、着脱式電気ヒータジャケットへ電力供給を停止する。
【0035】
(固体材料容器の冷却)
着脱式電気ヒータジャケットを取り外してから冷却する第一冷却モードと取り外さずに冷却する第二冷却モードを設定できる。この設定は予めどちらかのモードに設定されていてもよく、昇華ガスの供給を停止し冷却をする制御の時に、オペレータがタッチパネル24から指示入力する構成でもよい。
【0036】
(第一冷却モード)
(1)キャビネット制御部が同伴ガスを半導体製造装置1へ送ることを停止し、かつ着脱式電気ヒータジャケットへ電力供給を停止する。
(2)オペレータがキャビネット2内の固体材料容器5から着脱式電気ヒータジャケットを取り外す。
(3)オペレータが冷却開始の指示をタッチパネル24で入力指示する。この指示に対応して、キャビネット制御部が冷却用送風機3を駆動させる。
(4)キャビネット制御部は、固体材料容器に設置された温度計あるいはキャビネット2内に設置されて固体材料容器5の外表面温度を測定するように設定された非接触式温度計で測定された温度が閾値以下になったら、冷却用送風機3を停止する。「閾値」は、例えば、40℃以下または大気温度である。
(5)タッチパネル24に、測定された温度の推移がリアルタイムに表示され、温度が閾値以下になったら、キャビネット制御部がタッチパネル24に冷却完了の情報を表示させてもよく、オペレータの携帯端末などへ通知する構成でもよい。
【0037】
(第二冷却モード)
(1)キャビネット制御部が同伴ガスを半導体製造装置1へ送ることを停止し、かつ着脱式電気ヒータジャケットへ電力供給を停止する。
(2)キャビネット制御部が冷却用送風機3を駆動させる。
(3)キャビネット制御部は、固体材料容器に設置された温度計あるいはキャビネット2内に設置されて固体材料容器5の外表面温度を測定するように設定された非接触式温度計で測定された温度が閾値以下になったら、冷却用送風機3を停止する。「閾値」は、例えば、40℃以下または大気温度である。
(4)タッチパネル24に、測定された温度の推移がリアルタイムに表示され、温度が閾値以下になったら、キャビネット制御部がタッチパネル24に冷却完了の情報を表示させてもよく、オペレータの携帯端末などへ通知する構成でもよい。
【0038】
キャビネット制御部は、キャビネット2とは物理的に分離可能であり、各構成要素に制御指令を出して遠隔制御可能な情報処理装置(通信機能を有する、スマートフォン、タブレットあるいはパソコンなど)で実現されていてもよい。キャビネット制御部は、各種制御プログラムとプロセッサーとの協働によって実現されてもよく、専用回路、ファームウエアなどの単一あるいは複数種の構成によって構成されていてもよい。
キャビネット制御部は、タッチパネル24、各種計器(流量計、圧力計、流量調整部、圧力調整部、温度センサ、温度計など)および半導体製造装置1とデータの送受信(無線、有線を問わず)が可能に構成されている。
【0039】
(別実施形態)
(1)図2Bは、吸気部31の開口面積より吹付部フード321の開口面積が小さい、冷却用送風機3の構成である。これにより、図2Aよりも風速を上げることができ、冷却効果を向上させることができる。
(2)図3Aは、図2Aの構成に加え、底壁22に、第二の冷却用送風機4を設置した構成である。第二の冷却用送風機4は、吸気部から外気または冷気を吸い込み、吹付部フードから外気または冷気を、固体材料容器5の底面に向かって吹き付ける構成である。
吹付部フードの先端から固体材料容器5の底面までの最短距離(d2)は、1cm〜10cmであることが好ましい。底面に着脱式電気ヒータジャケットが取り付けられている場合には、吹付部フードの先端から着脱式電気ヒータジャケットの底面までの最短距離(d2)は、1cm〜10cmであることが好ましい。
図3Aでは、吸気部の開口面積と吹付部フードの開口面積が同じであるが、吹付部フードの開口面積の方が小さくてもよい。
(3)図3Bは、図2Bの構成に加え、底壁22に、第二の冷却用送風機4を設置した構成である。第二の冷却用送風機4は、吸気部から外気または冷気を吸い込み、吹付部フードから外気または冷気を、固体材料容器5の底面に向かって吹き付ける構成である。
吹付部フードの先端から固体材料容器5の底面までの最短距離(d2)は、1cm〜10cmであることが好ましい。底面に着脱式電気ヒータジャケットが取り付けられている場合には、吹付部フードの先端から着脱式電気ヒータジャケットの底面までの最短距離(d2)は、1cm〜10cmであることが好ましい。
図3Bでは、吸気部の開口面積より吹付部フードの開口面積が小さいが、吸気部の開口面積と吹付部フードの開口面積が同じであってもよい。
(4)扉231に、冷却用送風機3を設置することに限定されず、キャビネットの側壁または天壁に設置してもよい。
(5)冷却用送風機は、1または2機に限定されず、3機以上でもよい。
(6)冷却用送風機は、一つの吹付部に限定されず、複数の吹付部を有してもよく、固体材料容器の側面の任意の方角から、それぞれ吹き付け可能に設置されていてもよい。
【0040】
(実施例)
実施形態1の図2Aの構成において強制冷却をした実施例と、強制冷却をせずに自然冷却した比較例の温度低下の時間的推移を図4に示す。着脱式電気ヒータジャケットは取り除いてから冷却を開始した。
固体材料容器:内容積18L、肉厚0.28cmのステンレススチール製
冷却用送風機の風量:150m/分
供給流体(空気)の温度範囲:15℃〜25℃
最短距離(d1):10cm
冷却開始時の温度:150℃(温度センサの測定温度)
実施例(強制冷却):50℃まで下がった時間が720分、40℃まで下がった時間が880分であった。
比較例(自然冷却):50℃まで下がった時間が910分、40℃まで下がった時間が1000分であった。
実施例の方が比較例よりも約200分程度早く冷却でき、冷却効果が高かった。
また、冷却用送風機の能力を上げることで冷却速度を上げることができる。さらに、供給流体として冷気を用いることで、さらに冷却速度を上げることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体製造装置
2 キャビネット
21 天壁
22 底壁
23 側壁
24 タッチパネル
25 排気ダクト
3 冷却用送風機
31 吸気部
32 吹付部(フード)
5 固体材料容器
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4