特許第6961162号(P6961162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961162RNAナノ粒子の伝達によるマイクロベシクルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961162
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】RNAナノ粒子の伝達によるマイクロベシクルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/88 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   C12N15/88 ZZNA
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-174971(P2019-174971)
(22)【出願日】2019年9月26日
(65)【公開番号】特開2020-110142(P2020-110142A)
(43)【公開日】2020年7月27日
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】10-2019-0005784
(32)【優先日】2019年1月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515175637
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ソウル インダストリー コーオペレイション ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジョン−ボム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘ−ジン
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/054086(WO,A1)
【文献】 特表2002−535665(JP,A)
【文献】 Scientific Reports, 2015, Vol. 5, No. 12737
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/10
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロベシクル生産用RNAナノ粒子を細胞に伝達する伝達段階と、前記伝達段階の後、マイクロベシクル生産用RNAナノ粒子が伝達された細胞を培養することにより、目標タンパク質を含むマイクロベシクルを生成する培養段階とを含み、
前記マイクロベシクルの製造方法は、前記培養工程で生成されたマイクロベシクルを分離する分離段階をさらに含み、
前記マイクロベシクル生産用RNAナノ粒子は、目標タンパク質の発現のための繰り返されるメッセンジャーRNAを含み、前記培養段階では、細胞内で局部的にタンパク質を過発現させることにより、目標タンパク質を含むマイクロベシクルを生産することができることを特徴とする、マイクロベシクルの製造方法。
【請求項2】
前記伝達段階で細胞に伝達されるマイクロベシクル生産用RNAナノ粒子の量を調節することにより、生成されたマイクロベシクルの量とマイクロベシクルの製造時間を調節することができることを特徴とする、請求項に記載のマイクロベシクルの製造方法。
【請求項3】
前記マイクロベシクル生産用RNAナノ粒子は、球状をし、50〜200nmの直径を有することを特徴とする、請求項に記載のマイクロベシクルの製造方法。
【請求項4】
前記マイクロベシクルの製造方法は、前記伝達段階の前に、細胞の表面を改質する表面改質段階をさらに含み、
前記培養段階を経て生成されたマイクロベシクルは、細胞の表面特性をそのまま持っているので、前記伝達段階において前記表面改質段階を経て表面が改質された細胞を用いる場合、前記培養段階で目標タンパク質を担持しながらも特定の機能の表面特性を有するマイクロベシクルを生産することができることを特徴とする、請求項に記載のマイクロベシクルの製造方法。
【請求項5】
前記伝達段階は、リポソームまたは正電荷高分子を用いる方法が利用され、
前記リポソームを用いる伝達法は、RNAナノ粒子を脂質ベースの複合体形成溶液に添加した後、複合体を形成して細胞に処理することにより行われ、
前記正電荷高分子を用いる方法は、細胞を培養皿に分注し、成長培地を添加して一定時間培養した後、RNAナノ粒子を正電荷高分子と混合して形成した複合体を成長培地に添加することにより行われることを特徴とする、請求項に記載のマイクロベシクルの製造方法。
【請求項6】
前記分離段階は、遠心分離方法を用いて細胞培養培地から目標タンパク質を含むマイクロベシクルを分離することを特徴とする、請求項に記載のマイクロベシクルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法及びこれから製造された小胞に係り、さらに詳細には、目標タンパク質の発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を細胞に伝達して細胞内で局部的にタンパク質を過発現させて小胞を介して細胞外に輸送されるようにすることにより、目標タンパク質を含む小胞を容易に大量生産することができ、細胞の種類を問わずに目標タンパク質を含む小胞を得ることができ、細胞に伝達されるメッセンジャーRNAナノ粒子の濃度を調節して、製造された小胞の量と小胞の製造時間を調節することができ、細胞の表面を改質した後にメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して目標タンパク質を担持しながらも特定の機能の表面特性を有する小胞を得ることができ、追加の担持過程なしに目標タンパク質だけでなく、細胞内に既に伝達された目標DNAまたはRNAを担持する小胞を得ることができる、RNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法及びこれから製造された小胞に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(extracellular vesicle;EV)は、細胞が外部環境に放出するリン脂質二重層に囲まれた構造であって、生成方式によってエクスソーム(exosome)、マイクロベシクル(microvesicle)、アポトーシス小体(apoptotic body)などがある。中でも、エクソソームは50〜200nm、マイクロベシクルは数百ナノメートル〜数マイクロメートルレベルの大きさを持つ。前記細胞外小胞は、核球、血小板、内皮細胞をはじめとするがん細胞など、真核生物の様々な細胞から自然に分泌され、分泌細胞の膜組成と同一または類似の膜組成を有し、母体となる細胞の細胞質部分を含む。よって、細胞外小胞にはmiRNAなどの様々な遺伝物質とタンパク質などの要素が含まれており、これらを細胞信号物質伝達体、薬物伝達体、または免疫治療剤として活用するために小胞を生産する研究が盛んに進められている。
【0003】
前記細胞外小胞を取得する方法の一つは、自然に分泌される小胞を集める方法であるが、これは、収率が非常に低く、内部に含まれている物質を調節することができないという欠点がある。このような欠点を克服するために、下記特許文献のように形質転換細胞を物理的、化学的に処理して、目標タンパク質を含む小胞を生産する方法が開発されている。
【0004】
ところが、従来の目標タンパク質を含む小胞を生産する方法は、形質転換細胞を用い、物理的、化学的に細胞を処理しなければならないので、その過程が複雑で小胞の生産効率に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1733971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的は、目標タンパク質の発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を細胞に伝達して細胞内で局部的にタンパク質を過発現させ、小胞を介して細胞外に輸送されるようにすることにより、目標タンパク質を含む小胞を容易に大量生産することができる、RNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、細胞の種類を問わずに、目標タンパク質を含む小胞を得ることができる、RNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の別の目的は、細胞に伝達されるメッセンジャーRNAナノ粒子の濃度を調節して、製造された小胞の量と小胞の製造時間を調節することができる、RNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、製造された小胞が細胞の表面特性をそのまま持っているので、細胞の表面を改質した後、メッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して、目標タンパク質を担持しながらも特定の機能の表面特性を有する小胞を得ることができる、RNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、追加の担持過程なしに目標タンパク質だけでなく、細胞内に既に伝達された目標DNAまたはRNAを担持する小胞を得ることができる、RNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、次の構成を持つ実施例によって実現される。
【0012】
本発明の一実施例によれば、本発明に係る小胞の製造方法は、小胞生産用RNAナノ粒子を細胞に伝達する伝達段階と、前記伝達段階の後、小胞生産用RNAナノ粒子が伝達された細胞を培養することにより、目標タンパク質を含む小胞を生成する培養段階とを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の実施例によれば、本発明に係る小胞の製造方法において、前記小胞生産用RNAナノ粒子は、目標タンパク質の発現のための繰り返されるメッセンジャーRNAを含み、前記培養段階では、細胞内で局部的にタンパク質を過発現させて小胞を介して細胞外に輸送されるようにすることにより、目標タンパク質を含む小胞を生産することができることを特徴とする。
【0014】
本発明の別の実施例によれば、本発明に係る小胞の製造方法において、前記伝達段階で細胞に伝達される小胞生産用RNAナノ粒子の量を調節することにより、生成された小胞の量と小胞の製造時間を調節することができることを特徴とする。
【0015】
本発明の別の実施例によれば、本発明に係る小胞の製造方法において、前記小胞生産用RNAナノ粒子は、球状をし、50〜200nmの直径を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の別の実施例によれば、本発明に係る小胞の製造方法は、前記伝達段階の前に、細胞の表面を改質する表面改質段階をさらに含み、前記培養段階を経て生成された小胞は、細胞の表面特性をそのまま持っているので、前記伝達段階において前記表面改質段階を経て表面が改質された細胞を用いる場合、前記培養段階で目標タンパク質を担持しながらも特定の機能の表面特性を有する小胞を生産することができることを特徴とする。
【0017】
本発明の別の実施例によれば、本発明に係る小胞の製造方法において、前記伝達段階は、リポソームまたは正電荷高分子を用いる方法が利用され、前記リポソームを用いる伝達法は、RNAナノ粒子を脂質ベースの複合体形成溶液に添加した後、複合体を形成して細胞に処理することにより行われ、前記正電荷高分子を用いる方法は、細胞を培養皿に分注し、成長培地を添加して一定時間培養した後、RNAナノ粒子を正電荷高分子と混合して形成した複合体を成長培地に添加することにより行われることを特徴とする。
【0018】
本発明の別の実施例によれば、本発明に係る小胞の製造方法は、前記培養段階で生成された小胞を分離する分離段階をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の別の実施例によれば、本発明に係る小胞の製造方法において、前記分離段階は、遠心分離方法を用いて細胞培養培地から目標タンパク質を含む小胞を分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、前述した実施例によって次の効果を得ることができる。
【0021】
本発明は、目標タンパク質の発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を細胞に伝達して細胞内で局部的にタンパク質を過発現させて小胞を介して細胞外に輸送することにより、目標タンパク質を含む小胞を容易に大量生産することができるという効果がある。
【0022】
また、本発明は、細胞の種類を問わずに、目標タンパク質を含む小胞を得ることができるという効果がある。
【0023】
また、本発明は、細胞に伝達されるメッセンジャーRNAナノ粒子の濃度を調節して、製造された小胞の量と小胞の製造時間を調節することができるという効果がある。
【0024】
また、本発明は、製造された小胞が細胞の表面特性をそのまま持っているので、細胞の表面を改質した後、メッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して、目標タンパク質を担持しながらも特定の機能の表面特性を有する小胞を得ることができるという効果がある。
【0025】
また、本発明は、追加の担持過程なしに目標タンパク質だけでなく、細胞内に既に伝達された目標DNAまたはRNAを担持する小胞を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】メッセンジャーRNAナノ粒子の原子顕微鏡及び走査電子顕微鏡画像と動的光散乱分析結果を示す図表である。
図2】PC−3細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞の形成を確認するための蛍光顕微鏡画像及びサイトメトリ分析結果を示す図表である。
図3】PC−3細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞の形成を確認するための走査電子顕微鏡画像である。
図4】PC−3細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞の形成を確認するための蛍光顕微鏡画像、及びImageJソフトウェアで分析した結果を示す図表である。
図5】PC−3細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して時間による小胞の形成を確認するための蛍光顕微鏡画像である。
図6】HeLa細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して時間による小胞の形成を確認するための蛍光顕微鏡画像である。
図7】HeLa細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して形成された小胞の蛍光顕微鏡画像である。
図8】HeLa細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して形成された小胞がHeLa細胞に由来したことを確認するための蛍光顕微鏡画像である。
図9】HeLa細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して形成された小胞がHeLa細胞に由来したことを確認するための走査電子顕微鏡画像である。
図10】HeLa細胞にRFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞の形成を確認するための蛍光顕微鏡画像及びサイトメトリ分析結果を示す図表である。
図11】HeLa細胞にRFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して時間による小胞の形成を確認するための蛍光顕微鏡画像である。
図12】MDA−MB−231細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞の形成を確認するための走査電子顕微鏡画像及びSEMベースEDX分析結果を示す図表である。
図13】HDF細胞にメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞の形成を確認するための走査電子顕微鏡画像である。
図14】HDF細胞にメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞の形成を確認するための蛍光顕微鏡画像である。
図15】処理されるRFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子の濃度に応じて小胞の生産量の調節が可能であることを確認するための蛍光顕微鏡画像である。
図16】処理されるRFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子の濃度に応じて小胞の生産量の調節が可能であることを確認するための走査電子顕微鏡画像である。
図17】処理されるRFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子の濃度に応じて小胞の生産量の調節が可能であることを確認するためのEDX分析結果を示す図表である。
図18】処理されるGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子の濃度に応じて小胞の生産量の調節が可能であることを確認するための走査電子顕微鏡画像である。
図19】細胞の表面改質による小胞の機能付与が可能であることを確認するための蛍光顕微鏡画像である。
図20細胞外小胞を目標タンパク質伝達体として使用可能であることを確認するための蛍光顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るRNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法及びこれから製造された小胞を、添付図面を参照して詳細に説明する。特別な定義がない限り、本明細書のすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が理解する当該用語の一般的意味と同一であり、もし本明細書で使用された用語の意味と衝突する場合には、本明細書で使用された定義に従う。また、本発明の要旨を不明確にするおそれのある公知の機能及び構成についての詳細な説明は省略する。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これに特別に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0028】
本発明の一実施形態に係るRNAナノ粒子の伝達による小胞の製造方法を図1乃至図20を参照して説明すると、前記小胞の製造方法は、小胞生産用RNAナノ粒子を製造する粒子製造段階と、前記粒子製造段階で製造された小胞生産用RNAナノ粒子を細胞に伝達する伝達段階と、前記伝達段階の後、小胞生産用RNAナノ粒子が伝達された細胞を培養することにより、目標タンパク質を含む小胞を生成する培養段階と、前記培養段階で生成された小胞を分離する分離段階とを含む。
【0029】
前記粒子製造段階は、小胞生産用RNAナノ粒子を製造する段階で、目標タンパク質の発現のための繰り返されるメッセンジャーRNAを含むメッセンジャーRNAナノ粒子が製造される。前記小胞生産用RNAナノ粒子は、一定の形状及び大きさを有するが、好ましくは全体的に球状をし、50〜200nmの直径を有し、一本鎖のメッセンジャーRNAが互いにねじれたり縺れたりして形成され、生体物質のみからなって体内の毒性がなく、体内の環境で安定して長い間持続的にmRNAを放出することができる。
【0030】
前記粒子製造段階は、目標タンパク質の発現のためのメッセンジャーRNA塩基配列と相補的な塩基配列、RNAからタンパク質が翻訳されるときに必要不可欠な要素であるリボソーム結合塩基配列、及びT7 RNAポリメラーゼのためのプロモーター塩基配列を含み、終止(termination)塩基配列が除去された環状の二本鎖プラスミドDNAを生成するpDNA生成段階と、前記プラスミドDNAやRNAポリメラーゼなどを含む反応溶液を一定温度で一定時間インキュベートして、RNAポリメラーゼを用いて前記プラスミドDNAをローリングサークル転写(Rolling circle transcription、RCT)させて目標タンパク質の発現のための繰り返されるメッセンジャーRNA塩基配列を含む長い一本鎖のメッセンジャーRNAを生成し、生成された一本鎖のメッセンジャーRNAが互いにねじれたり縺れたりして自己組織化を介してメッセンジャーRNAナノ粒子を形成する粒子形成段階などを含む。前記プラスミドDNAは、終止(termination)塩基配列が除去されているので、前記粒子形成段階でRNAポリメラーゼが持続的に環状のプラスミドDNA上でRNAを生産することができ、これにより一本鎖のRNA上にmRNA塩基配列が多数回繰り返し組み込まれる。
【0031】
前記伝達段階は、前記粒子製造段階で製造された小胞生産用RNAナノ粒子を細胞に伝達する段階であって、例えば、リポソームまたは正電荷高分子を用いて小胞生産用RNAナノ粒子を細胞に伝達することができる。前記伝達段階で細胞に伝達される小胞生産用RNAナノ粒子の量を調節することにより、製造された小胞の量と小胞の製造時間を調節することができる。
【0032】
前記リポソームを用いる伝達法は、RNAナノ粒子と脂質ベースの複合体形成溶液(Stemfect RNA Transfection Kit、Stemgent)とを混合して複合体を生成し、これを細胞培養培地に添加することにより行われ、前記正電荷高分子を用いる方法は、細胞を培養皿に分注し、成長培地を添加して一定時間培養した後、RNAナノ粒子を正電荷高分子ベースのトランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System、Mirus)と混合して複合体を生成し、これを細胞培養培地に添加することにより行われ得る。
【0033】
前記培養段階は、前記伝達段階の後、小胞生産用RNAナノ粒子が伝達された細胞を一定温度で一定時間培養することにより、目標タンパク質を含む小胞を生成する段階である。前記培養段階では、目標タンパク質の発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を細胞に伝達して細胞内で局部的にタンパク質を過発現させ、小胞を介して細胞外に輸送されるようにすることにより、目標タンパク質を含む小胞を容易に大量生産することができる。また、前記小胞の製造方法は、粒子製造段階を経て様々な目標タンパク質の発現のための小胞生産用RNAナノ粒子を製造することができ、伝達段階で様々な細胞に小胞生産用RNAナノ粒子を伝達することが可能であって、細胞の種類に関係なく、目標タンパク質を含む小胞を得ることができる。
【0034】
前記分離段階は、前記培養段階で生成された小胞を分離する段階であって、例えば、遠心分離などの方法を介して細胞培養培地から目標タンパク質を含む小胞を得ることができる。
【0035】
本発明の他の実施例は、前記粒子製造段階と伝達段階との間にメタボリックエンジニアリング(metabolic engineering)を介して細胞の表面を改質する表面改質段階をさらに含み、小胞の表面に標的認識などの新しい機能を付与することができる。前記小胞の製造方法によって製造された小胞が細胞の表面特性をそのまま持っているので、細胞の表面を改質した後、小胞生産用RNAナノ粒子を伝達して、目標タンパク質を担持しながらも特定の機能の表面特性を有する小胞を得ることができる。また、マイクロベシクル(microvesicle)は、他の種類の細胞外小胞(extracellular vesicle)とは異なり、細胞質から直接出芽(budding)が生じ、これにより目標タンパク質を発現し、当該タンパク質がマイクロベシクルに担持される過程で、細胞質内に含まれているRNA、DNAも自然に一緒に担持できるので、小胞生産用RNAナノ粒子の製造時にRNA及びDNAを一緒に含ませる場合、目標タンパク質、DNAおよびRNAをすべて含むマイクロベシクルを生成することが可能になる。
【0036】
本発明の別の実施例は、小胞の製造方法によって製造された目標タンパク質を含む小胞を含む。
【0037】
以下、実施例を介して本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものに過ぎず、本発明の権利範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0038】
小胞生産用メッセンジャーRNAナノ粒子の製造
1.T7 RNAポリメラーゼのためのプロモーター塩基配列(配列番号:1)、RNAからタンパク質が翻訳されるときに必要不可欠な要素であるリボソーム結合塩基配列(Kozak塩基配列)(配列番号:2)、及び目標タンパク質である緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現のためのメッセンジャーRNA塩基配列(配列番号:3)を含み、終止(termination)塩基配列が除去されたプラスミドDNA(CCCGTGTAAAACGACGGCCAGTTTATCTAGTCAGCTTGATTCTAGCTGATCGTGGACCGGAAGGTGAGCCAGTGAGTTGATTGCAGTCCAGTTACGCTGGAGTCTGAGGCTCGTCCTGAATGATATGCGACCGCCGGAGGGTTGCGTTTGAGACGGGCGACAGATCGACACTGCTCGATCCGCTCGCACC−TAATACGACTCACTATAGG(配列番号:1)−GAT−GCCACCATGG(配列番号:2)−
ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAA(配列番号:3)
GGATCGACGAGAGCAGCGCGACTGGATCAGTTCTGGACGAGCGAGCTGTCGTCCGACCCGTGATCTTACGGCATTATACGTATGATCGGTCCACGATCAGCTAGATTATCTAGTCAGCTTGATGTCATAGCTGTTTCCTGAGGCTCAATACTGACCATTTAAATCATACCTGACCTCCATAGCAGAAAGTCAAAAGCCTCCGACCGGAGGCTTTTGACTTGATCGGCACGTAAGAGGTTCCAACTTTCACCATAATGAAATAAGATCACTACCGGGCGTATTTTTTGAGTTATCGAGATTTTCAGGAGCTAAGGAAGCTAAAATGAGTATTCAACATTTCCGTGTCGCCCTTATTCCCTTTTTTGCGGCATTTTGCCTTCCTGTTTTTGCTCACCCAGAAACGCTGGTGAAAGTAAAAGATGCTGAAGATCAGTTGGGTGCACGAGTGGGTTACATCGAACTGGATCTCAACAGCGGTAAGATCCTTGAGAGTTTACGCCCCGAAGAACGTTTTCCAATGATGAGCACTTTTAAAGTTCTGCTATGTGGCGCGGTATTATCCCGTATTGACGCCGGGCAAGAGCAACTCGGTCGCCGCATACACTATTCTCAGAATGACTTGGTTGAGTACTCACCAGTCACAGAAAAGCATCTCACGGATGGCATGACAGTAAGAGAATTATGCAGTGCTGCCATAACCATGAGTGATAACACTGCGGCCAACTTACTTCTGGCAACGATCGGAGGACCGAAGGAGCTAACCGCTTTTTTGCACAACATGGGGGATCATGTAACTCGCCTTGATCGTTGGGAACCGGAGCTGAATGAAGCCATACCAAACGACGAGCGTGACACCACGATGCCTGTAGCAATGGCAACAACGTTGCGCAAAC)を設計した。前記プラスミドDNA1nM、ribonucleotide solution mix(New England Biolabs)1mM、Reaction buffer(8mM Tris−HCl、0.4mM spermidine、1.2mM MgCl、and 2mM dithiothreitol)、T7 RNAポリメラーゼ(1mlあたり50unit、England BioLabs)をチューブに入れて混合し、前記チューブをインキュベーターに入れ、37℃で20時間反応させて小胞生産用メッセンジャーRNAナノ粒子(mRNA−NP)を製造した。
【0039】
2.T7 RNAポリメラーゼのためのプロモーター塩基配列(配列番号:1)、RNAからタンパク質が翻訳されるときに必要不可欠な要素であるリボソーム結合塩基配列(IRES塩基配列)(配列番号:4)及び赤色蛍光タンパク質(RFP(DsRed−Express2))の発現のためのメッセンジャーRNA塩基配列(配列番号:5)を含むプラスミドDNA(TCGCGCGTTTCGGTGATGACGGTGAAAACCTCTGACACATGCAGCTCCCGGAGACGGTCACAGCTTGTCTGTAAGCGGATGCCGGGAGCAGACAAGCCCGTCAGGGCGCGTCAGCGGGTGTTGGCGGGTGTCGGGGCTGGCTTAACTATGCGGCATCAGAGCAGATTGTACTGAGAGTGCACCAAATGCGGTGTGAAATACCGCACAGATGCGTAAGGAGAAAATACCGCATCAGGCGCCATTCGCCATTCAGGCTGCGCAACTGTTGGGAAGGGCGATCGGTGCGGGCCTCATCGCTATTACGCCAGCTGGCGAAAGGGGGATGTGCTGCAAGGCGATTAAGTTGGGTAACGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAGTGCAACGCGATGACGATGGATAGCGATTCATCGATGAGCTGACCCGATCGCCGCCGCCGGAGGGTTGCGTTTGAGACGGGCGACAGATGAGGCTCGTTTAGTGAACCGTCAGATCGCCTGGAGACGCCATCCACGCTGTTTTGACCTCCATAGAAGACACCGGGACCGATCCAGCCTCCGGACTCTAGAGGATCGAACCCTTTTGGACCCTCGTACAGAAGC−TAATACGACTCACTATAGG(配列番号:1)−
GAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGAGCCACCG−CCCCTCTCCCTCCCCCCCCCCTAACGTTACTGGCCGAAGCCGCTTGGAATAAGGCCGGTGTGCGTTTGTCTATATGTTATTTTCCACCATATTGCCGTCTTTTGGCAATGTGAGGGCCCGGAAACCTGGCCCTGTCTTCTTGACGAGCATTCCTAGGGGTCTTTCCCCTCTCGCCAAAGGAATGCAAGGTCTGTTGAATGTCGTGAAGGAAGCAGTTCCTCTGGAAGCTTCTTGAAGACAAACAACGTCTGTAGCGACCCTTTGCAGGCAGCGGAACCCCCCACCTGGCAACAGGTGCCTCTGCGGCCAAAAGCCACGTGTATAAGATACACCTGCAAAGGCGGCACAACCCCAGTGCCACGTTGTGAGTTGGATAGTTGTGGAAAGAGTCAAATGGCTCTCCTCAAGCGTATTCAACAAGGGGCTGAAGGATGCCCAGAAGGTACCCCATTGTATGGGATCTGATCTGGGGCCTCGGTGCACATGCTTTACATGTGTTTAGTCGAGGTTAAAAAAACGTCTAGGCCCCCCGAACCACGGGGACGTGGTTTTCCTTTGAAAAACACGATGATAA(配列番号:4)−T−
ATGGATAGCACTGAGAACGTCATCAAGCCCTTCATGCGCTTCAAGGTGCACATGGAGGGCTCCGTGAACGGCCACGAGTTCGAGATCGAGGGCGAGGGCGAGGGCAAGCCCTACGAGGGCACCCAGACCGCCAAGCTGCAGGTGACCAAGGGCGGCCCCCTGCCCTTCGCCTGGGACATCCTGTCCCCCCAGTTCCAGTACGGCTCCAAGGTGTACGTGAAGCACCCCGCCGACATCCCCGACTACAAGAAGCTGTCCTTCCCCGAGGGCTTCAAGTGGGAGCGCGTGATGAACTTCGAGGACGGCGGCGTGGTGACCGTGACCCAGGACTCCTCCCTGCAGGACGGCACCTTCATCTACCACGTGAAGTTCATCGGCGTGAACTTCCCCTCCGACGGCCCCGTAATGCAGAAGAAGACTCTGGGCTGGGAGCCCTCCACCGAGCGCCTGTACCCCCGCGACGGCGTGCTGAAGGGCGAGATCCACAAGGCGCTGAAGCTGAAGGGCGGCGGCCACTACCTGGTGGAGTTCAAGTCAATCTACATGGCCAAGAAGCCCGTGAAGCTGCCCGGCTACTACTACGTGGACTCCAAGCTGGACATCACCTCCCACAACGAGGACTACACCGTGGTGGAGCAGTACGAGCGCGCCGAGGCCCGCCACCACCTGTTCCAGTAG(配列番号:5)−
GCTGCCTTCTGCGGGGCTTGCCTTCTGGCCATGCCCTTCTTCTCTCCCTTGCACCTGTACCTCTTGGTCTTTGAATAAAGCCTGAGTAGGAAGTGAGGGTCTAGAACTAGTGTCGACGCAAATCAGTTCTGGACCAGCGAGCTGTGCTGCGACTCGTGGCGTAATCATGGTCATAGCTGTTTCCTGTGTGAAATTGTTATCCGCTCACAATTCCACACAACATACGAGCCGGAAGCATAAAGTGTAAAGCCTGGGGTGCCTAATGAGTGAGCTAACTCACATTAATTGCGTTGCGCTCACTGCCCGCTTTCCAGTCGGGAAACCTGTCGTGCCAGCTGCATTAATGAATCGGCCAACGCGCGGGGAGAGGCGGTTTGCGTATTGGGCGCTCTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGTCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTACCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCTAAGAAACCATTATTATCATGACATTAACCTATAAAAATAGGCGTATCACGAGGCCCTTTCGTC)を使用した以外は、他の条件を実施例1の1.と同様にして、小胞生産用メッセンジャーRNAナノ粒子(mRNA−NP)を製造した。前記緑色蛍光タンパク質と赤色蛍光タンパク質は、生成されたタンパク質を容易に確認するために選定された。
【実施例2】
【0040】
小胞生産用メッセンジャーRNAナノ粒子の大きさ、形状および分布の確認
実施例1の1.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子を原子顕微鏡及び透過電子顕微鏡(内部)で測定した結果を図1の(a)に示し、動的光散乱(Dynamic light scattering、DLS)を用いて分析した結果を図1の(b)に示した。図1から、球状の形状及び約100nmの直径を有するナノ粒子を確認することができる。
【実施例3】
【0041】
メッセンジャーRNAナノ粒子の伝達による目的タンパク質を含む小胞の大量生産の確認
1.PC−3細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞を生産
(1)実施例1の1.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、PC−3細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体1.5μgを処理)。前記反応の開始時点から24時間が経過した後、蛍光顕微鏡を用いて測定した結果を図2の(a)に示し、サイトメトリ(cytometry)で細胞のGFP発現を確認した結果を図2の(b)に示し、走査型電子顕微鏡を測定した結果を図3に示し、蛍光顕微鏡を用いて測定した結果及び蛍光顕微鏡画像をImageJソフトウェアで分析した結果を図4の(a)に示し、ImageJソフトウェアで分析した結果の中でも小胞のサイズ分布を図4の(b)に図表化して示した。また、前記反応の開始時点から2、6、18、24および48時間が経過した後に蛍光顕微鏡を用いて測定した結果を図5に示した。
【0042】
(2)図2の(a)を参照すると、GFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞(mRNA−NP treated)からマイクロサイズの小胞(GFPを含む)が多量に生成されることを確認することができるのに対し、未処理細胞(Untreated)では小胞が確認されず、図2の(b)を参照すると、GFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞で未処理細胞よりも緑色蛍光の強さが著しく高くなることから、メッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞に多量のGFPが発現したことが分かる。図3を参照すると、未処理細胞の場合には、比較的滑らかな表面を持つのに対し、メッセンジャーRNAナノ粒子の伝達を介してタンパク質を発現させた細胞の場合には、数百ナノメートル乃至数マイクロメートルサイズの小胞が細胞の表面から多量に観察され、図4の(a)を参照すると、細胞あたり少なくとも4つのマイクロベシクル(MV)が分泌され、前記マイクロベシクルは強い緑色蛍光を帯びてGFPタンパク質を多量に含有していることが分かる。図4の(b)を参照すると、マイクロベシクルは、平均的に数百ナノメートル乃至2マイクロメートル程度の大きさを持つことが分かる。図5を参照すると、18時間が経過した時点からはGFPが比較的強く発現され、以後時間が経過するにつれてGFPの発現及び小胞の分泌が増加する傾向を確認することができるので、GFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子の伝達を介して発現された過量のタンパク質がPC−3細胞の小胞分泌に大きな影響を及ぼすことが分かる。
【0043】
2.HeLa細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞を生産
(1)実施例1の1.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、HeLa細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体1.5μgを処理する)。前記反応の開始時点から3、6、7、9および12時間が経過した後に蛍光顕微鏡を用いて測定した結果を図6に示し、前記反応の開始時点から24時間が経過した後、遠心分離を介して得た複数の小胞を蛍光顕微鏡で撮影して図7に示した(Inset scale bar=5μm)。
【0044】
(2)細胞膜を赤色蛍光物質で染色する試薬であるCellVue Claretで染色したHeLa細胞を用いた以外は、実施例3の2.の(1)と同様にして実験を行い、24時間の経過後、遠心分離を介して得た小胞を蛍光顕微鏡で測定して図8に示した。また、リン脂質二重層部分の電子密度を高くして透過電子顕微鏡の画像からリン脂質二重層を観察することができるように四酸化オスミウム(Osmium tetroxide)で染色されたHeLa細胞を用いた以外は、実施例3の2.の(1)と同様に実験を行い、24時間の経過後に透過電子顕微鏡で測定して図9に示した(図9の(a)は細胞から分泌中の小胞を示し、図9の(b)は分泌された小胞を示し、図9の(c)は図9の(b)の破線部分を拡大した画像である)。
【0045】
(3)図6を参照すると、時間経過に伴ってGFPの発現及び小胞の分泌が増加する傾向を確認することができ、図7を参照すると、小胞は、1〜2μmの大きさを有し、発現されたGFPを含んでいるため、小胞が緑色蛍光シグナルを放出することを確認することができる。また、図8を参照すると、GFPを含む小胞がCellVue Claretの赤色蛍光シグナルを発散することを確認することができるため、小胞の表面にリン脂質二重層が存在することが分かり、図9を参照すると、小胞が細胞に由来しており、生成された小胞の表面には細胞の膜と同様に厚さ9nm程度のリン脂質二重層が存在することを確認することができ、細胞の内部および小胞の内部がすべて周辺地域よりも暗く観察されることにより細胞の内部と同様に小胞の内部もタンパク質が豊富に存在することが分かる(四酸化オスミウム(Osmium tetroxide)は、タンパク質に結合してタンパク質を安定化させ、タンパク質が存在する部分の電子密度を高くして透過電子顕微鏡で観察したときに明暗を与える役割を果たす)。よって、GFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子の伝達を介して発現された過量のタンパク質がHeLa細胞の小胞分泌に大きな影響を及ぼすことが分かる。
【0046】
3.HeLa細胞にRFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞を生産
(1)実施例1の2.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、HeLa細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体1.5μgを処理する)。前記反応の開始時点から24時間が経過した後、蛍光顕微鏡を用いて測定した結果を図10の(a)に示し、サイトメトリ(cytometry)で細胞のRFPの発現を確認した結果を図10の(b)に示した。また、前記反応の開始時点から0、4、12、24および48時間の経過後に蛍光顕微鏡を用いて測定した結果を図11に示した。
【0047】
(2)図10の(a)を参照すると、RFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞(mRNA−NP treated)からマイクロサイズの小胞(RFPを含む)が多量に生成されることを確認することができるのに対し、未処理細胞(Untreated)では小胞が確認されず、図10の(b)を参照すると、RFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞で未処理細胞よりも赤色蛍光の強さが著しく高くなることから、メッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞に多量のRFPが発現したことが分かり、図11を参照すると、12時間が経過した時点からは消泡剤の分泌が顕著に観察され、以後時間が経過するにつれてRFPの発現及び小胞の分泌が著しく増加する傾向を確認することができるため、RFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子の伝達を介して発現された過量のタンパク質がHeLa細胞の小胞分泌に大きな影響を及ぼすことが分かる。
【0048】
4.MDA−MB−231細胞にGFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞を生産
(1)実施例1の1.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、MDA−MB−231細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体1.5μgを処理する)。前記反応の開始時点から24時間が経過した後、細胞を四酸化オスミウム(Osmium tetroxide)で染色した後、走査電子顕微鏡を用いて測定した結果を図12の(a)に示し、SEMベースのEDX(Energy dispersive x−ray)分析を介して、細胞及び小胞を構成している元素のweight%を分析した結果を図12の(b)に示した。
【0049】
(2)図12の(a)を参照すると、GFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞(mRNA−NP treated)からマイクロサイズの小胞が多量に生成されることを確認することができるのに対し、未処理細胞(Untreated)では小胞が確認されず、図12の(b)を参照すると、未処理細胞の表面及び小胞の表面からオスミウム(オスミウム(Os)は、細胞を走査電子顕微鏡で観察するために、二次固定液(second fixative)として使用された四酸化オスミウム(Osmium tetroxide)の処理により観察されるもので、細胞膜リン脂質のhead部分に結合する特性を有する)が観察され、細胞と小胞の両方ともリン脂質二重層に囲まれた構造を持つことが分かり、リン(P)が観察されてリン脂質二重層の存在をさらに証明することが可能であって、小胞が細胞に由来したことが分かるので、GFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子の伝達を介して発現された過量のタンパク質がMDA−MB−231細胞の小胞分泌に大きな影響を及ぼすことが分かる。
【0050】
5.HDF細胞にGFPまたはRFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を伝達して小胞を生産
(1)実施例1の1.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、HDF(Human dermal fibroblast)細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体1.5μgを処理する)。前記反応の開始時点から24時間が経過した後、走査型電子顕微鏡を用いて測定した結果を図13に示した。また、実施例1の1及び2.で製造された緑色蛍光タンパク質および赤色蛍光タンパク質発現用メッセンジャーRNAナノ粒子それぞれをトランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery system)と混合して複合体を形成し、前記複合体、メッセンジャーRNAナノ粒子を含まないトランスフェクション試薬(transfection reagent)をそれぞれHDF細胞培養培地(OPTI−MEMI)に添加して反応させ、24時間の経過後に蛍光顕微鏡を用いて測定した結果を図14に示した。
【0051】
(2)図13を参照すると、GFP発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞(mRNA−NP treated)からマイクロサイズの小胞が多量に生成されることを確認することができるのに対し、未処理細胞(Untreated)では小胞が確認されず、図14を参照すると、緑色蛍光タンパク質と赤色蛍光タンパク質がそれぞれ小胞内に担持されたように、メッセンジャーRNAナノ粒子の種類に応じて、発現されるタンパク質が決定され、発現されたタンパク質が小胞内に含まれることを確認することができ、メッセンジャーRNAナノ粒子を細胞に伝達するときに使用されたトランスフェクション試薬(transfection reagent)は、それ自体では細胞におけるタンパク質の発現および小胞の分泌に影響を与えないことを確認することができるため、メッセンジャーRNAナノ粒子の伝達によりタンパク質を過発現させることが、HDF細胞がタンパク質を含む小胞を分泌することに大きな影響を及ぼすことが分かる。
【0052】
6.実験結果の評価
上記の実験結果から、細胞に特定のタンパク質発現のためのメッセンジャーRNAナノ粒子を処理して得られた小胞は前記細胞に由来したことが分かり、標的タンパク質を含む小胞を様々な細胞種から大量生産することができることが分かる。
【実施例4】
【0053】
小胞生産量の調節が可能であることを確認
1.実施例1の2.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、HeLa細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体0.2、1.5、6μgをそれぞれ処理する)。前記反応の開始時点から24時間が経過した後、蛍光顕微鏡を用いて測定した結果を図15に示し、走査電子顕微鏡を用いて測定した結果を図16に示し、SEMベースのEDX(Energy dispersive x−ray)分析を介して、細胞及び小胞を構成している元素のweight%を分析した結果を図17に示した。
【0054】
2.また、実施例1の1.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、HDF細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体0.5、1.5、3、6μgをそれぞれ処理する)。前記反応の開始時点から24時間が経過した後、走査電子顕微鏡を用いて測定した結果を図18に示した。
【0055】
3.図15を参照すると、処理されたメッセンジャーRNAナノ粒子の量に応じて、分泌される小胞の量が決定され、メッセンジャーRNAナノ粒子の量とは無関係に生成される小胞に含まれている発現タンパク質の量は類似することを確認することができる。また、図16および図18を参照すると、1mlあたり1.5μgのメッセンジャーRNAナノ粒子を処理した場合には、細胞の形状をそのまま維持しながら、RFPを含む小胞が分泌されることを確認することができたが、4倍(6.0μg ml−1)のメッセンジャーRNAナノ粒子を処理した場合には、細胞の全体的な形状が変化し、細胞全体が小胞に覆われる現象を確認することができる。また、図17を参照すると、小胞の形状、大きさとは無関係に、母体となる細胞と類似する元素の含有量を有することを確認することができる。したがって、メッセンジャーRNAナノ粒子の処理濃度が増加するほど、細胞から分泌される小胞の大きさは類似するが、その量が増加することが分かり、一定濃度以上のメッセンジャーRNAナノ粒子を処理する場合、短時間で多量の小胞を得ることができるが、細胞の細胞質のほとんどが小胞として放出されて細胞に損傷を加えることが分かるため、処理するメッセンジャーRNAナノ粒子の濃度調節を介して短時間で多量の小胞を生産するか或いは持続的に小胞を生産することを制御することができる。
【実施例5】
【0056】
細胞の表面改質による小胞の機能付与が可能であることを確認
1.HeLa細胞が培養培地にAc3ManNAz(N−Azidoacetyl−D−mannosamine、triacetylated)を含ませてメタボリックエンジニアリング(metabolic engineering)を介して細胞の表面にアジド(azide)を発現させたHeLa細胞を準備し、実施例1の1.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、HeLa細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体1.5μgを処理する)。前記反応の開始時点から24時間が経過した後、細胞の表面に存在するアジド基(azide group)とクリック化学(click chemistry)を介して結合することができるDBCO−cy5(Cyanine5:赤色蛍光物質)を反応させた。その後、細胞の核をDAPIで染色して準備し、蛍光顕微鏡を用いて測定し、その結果を図19に示した。
【0057】
2.図19を参照すると、メッセンジャーRNAナノ粒子を処理した細胞の場合、発現されたGFPを含む小胞が形成されており、小胞の表面にも細胞の表面と同様にDBCO−cy5がラベリングされたことを確認することができるため、メッセンジャーRNAナノ粒子の伝達で標的タンパク質が含まれた小胞の分泌を誘導する過程で細胞膜が配向を維持し、そのまま小胞が形成されるということが分かる。よって、メタボリックエンジニアリング(metabolic engineering)を介して細胞の表面改質を行い、小胞の表面に標的認識などの新しい機能を付与することができることが分かる。
【実施例6】
【0058】
細胞外小胞を目標タンパク質伝達体として使用可能であることを確認
1.実施例1の2.で製造されたメッセンジャーRNAナノ粒子をOPTI−MEMIに希釈した後、トランスフェクション試薬(transfection reagent)(TransIT−X2 Dynamic Delivery System)と混合して複合体を形成し(メッセンジャーRNAナノ粒子:Reagent:OPTI−MEMIの比率は7μg:15μl:50μlである)、HeLa細胞培養培地(cmあたり20000個の細胞を分注)に添加して反応させた(細胞培養培地1mlあたり複合体1.5μgを処理する)。24時間後、PBSに細胞及びMVを含む溶液を浮遊させた後、300RCF条件で10分間遠心分離し、得られた上澄み液を2000RCF条件で10分間遠心分離した後、これから得られた上澄み液を最終的に10,000RCF条件で30分間遠心分離して、RFPを含有する小胞(MV−RFP)を得た。
【0059】
2.緑色蛍光タンパク質を細胞質に発現するように形質変形がなされているHeLa−GFP細胞を準備した。緑色を帯びているHeLa−GFP細胞の使用は、目標タンパク質である赤色蛍光タンパク質を担持した細胞外小胞が伝達されたときに、これに対する確認を容易にするためである。
【0060】
3.前記緑色蛍光タンパク質が細胞質に均一に含まれるように形質変形がなされているHeLa−GFP細胞の培養培地に、RFPを含有する小胞(MV−RFP)を添加して反応させた後、細胞の核をDAPIで染色し、蛍光顕微鏡を用いて測定した。結果を図20に示した。
【0061】
4.図20を参照すると、小胞を用いて伝達した目標タンパク質であるRFPが小胞を収容したHeLa−GFP細胞の内部に成功的に伝達されたことを確認することができるため、前記小胞が薬物伝達体として活用可能であることが分かる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施例を説明したが、これらの実施例は本発明の技術的思想を実現する一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を実現する限り、いかなる変更例または修正例も本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]