特許第6961170号(P6961170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6961170
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】子扉付きドア
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/32 20060101AFI20211025BHJP
   E06B 7/28 20060101ALI20211025BHJP
   E06B 7/06 20060101ALI20211025BHJP
   E06B 9/52 20060101ALI20211025BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20211025BHJP
   E05C 17/12 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   E06B7/32
   E06B7/28 Z
   E06B7/06
   E06B9/52 A
   E06B5/16
   E05C17/12
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-108390(P2020-108390)
(22)【出願日】2020年6月24日
【審査請求日】2021年5月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520227581
【氏名又は名称】ユーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178331
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 宏二
(72)【発明者】
【氏名】浦山 久志
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−064836(JP,A)
【文献】 特開平11−200722(JP,A)
【文献】 特開平04−202991(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3150219(JP,U)
【文献】 特開2008−138476(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3107270(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第10−1801739(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/00
E06B 7/00−7/10
E06B 7/28
E06B 7/32
E06B 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親扉と、
前記親扉の表裏を貫通し人が通り抜け可能な開口形状に形成された子扉用開口部を開閉自在にし、かつ室外側に開くように前記親扉に取り付けられた子扉と、
前記子扉を半開きの所定の角度に開いた状態に維持可能にする維持手段と、
前記親扉の室内側の側面に前記子扉用開口部を覆うように取り付けられ、前記親扉の表裏を結ぶ方向に空気を通す通風部と、
を有し、
前記通風部は、室内側に開くように開閉自在に取り付けられ、
前記維持手段により開いた状態が解除された前記子扉を開いた状態にし、かつ前記通風部を室内側に開いた状態にすると前記子扉用開口部を人が通り抜けることができる子扉付きドア。
【請求項2】
前記子扉は、側面に取り付けられた蝶番によって前記親扉に対して回動自在に支持されて前記蝶番が取り付けられている側面とは反対の側面が親扉に対して接離可能とされており、
前記維持手段は、前記反対の側面と前記親扉との間にアームをかけ渡して前記子扉を開いた状態に維持し、予め設定した温度になると、前記アームをかけ渡した状態を解除して、開いた状態に維持している前記子扉を閉じるように構成されている請求項1に記載の子扉付きドア。
【請求項3】
前記子扉の室外側の側面の外周には、当該子扉が閉じられている状態で前記親扉の室外側の側面の前記子扉用開口部の外周部に対向する位置まで延在する鍔部が形成されており、
前記子扉は、前記親扉に対して回動自在に支持されており、回転軸を中心に回動しながら室外側に持ち出しながら開かれる請求項1又は2に記載の子扉付きドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、戸建て住宅や集合住宅などの建物の玄関に施工される子扉付きドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような子扉付きドアとして、ガラリによって通風(換気)機能を備えた建物用ドアが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−207152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、子扉付きドアにおいて、子扉を開けている状態で室外からの虫等の侵入を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、 親扉と、前記親扉の表裏を貫通し人が通り抜け可能な開口形状に形成された子扉用開口部を開閉自在にし、かつ室外側に開くように前記親扉に取り付けられた子扉と、前記子扉を半開きの所定の角度に開いた状態に維持可能にする維持手段と、前記親扉の室内側の側面に前記子扉用開口部を覆うように取り付けられ、前記親扉の表裏を結ぶ方向に空気を通す通風部と、を有し、前記通風部は、室内側に開くように開閉自在に取り付けられ、前記維持手段により開いた状態が解除された前記子扉を開いた状態にし、かつ前記通風部を室内側に開いた状態にすると前記子扉用開口部を人が通り抜けることができる子扉付きドアである。
【0006】
本発明の第2の態様では、前記子扉は、側面に取り付けられた蝶番によって前記親扉に対して回動自在に支持されて前記蝶番が取り付けられている側面とは反対の側面が親扉に対して接離可能とされており、前記維持手段は、前記反対の側面と前記親扉との間にアームをかけ渡して前記子扉を開いた状態に維持し、予め設定した温度になると、前記アームをかけ渡した状態を解除して、開いた状態に維持している前記子扉を閉じるように構成されていることが好ましい。
【0007】
本発明の第3の態様では、前記子扉の室外側の側面の外周には、当該子扉が閉じられている状態で前記親扉の室外側の側面の前記子扉用開口部の外周部に対向する位置まで延在する鍔部が形成されており、前記子扉は、前記親扉に対して回動自在に支持されており、回転軸を中心に回動しながら室外側に持ち出しながら開かれることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の前記第1の態様によれば、子扉付きドアは、子扉用開口部を覆うように通風部を設けることで、子扉を開けている状態で子扉用開口部からの虫等の侵入を防げる。
また、本発明の前記第1の態様によれば、子扉付きドアは、災害時に室内の人が子扉用開口部を通って室外へ迅速に逃げ出して避難できる。
【0010】
本発明の前記第2の態様によれば、子扉付きドアは、火災発生時に子扉が自動的に閉まり、防災基準が満たされる。
【0011】
本発明の前記第3の態様によれば、子扉付きドアは、親扉と子扉との間の隙間を鍔部で室外側から目隠しでき、防犯性に優れるとともに、子扉が持ち出しながら開かれることで、鍔部を親扉に干渉させることなく子扉を開けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る子扉付きドアを示す図であって、(A)は正面図(外観図)、(B)は背面図(内観図)、(C)は平面図である。
図2図2は、子扉付きドアの垂直断面図である。
図3図3は、子扉付きドアの水平断面図である。
図4図4は、子扉の回転機構を示す水平断面図である。
図5図5は、子扉用の蝶番を示す図であって、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は側面図である。
図6図6は、子扉が半開きに維持された状態を示す水平断面図である。
図7図7は、換気用ストッパを示す図であって、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
実施形態では、子扉付きドアを挙げている。
【0015】
(構成)
図1は、実施形態に係る子扉付きドアを示す図であって、同図中(A)は正面図(外観図)、同図中(B)は背面図(内観図)、同図中(C)は平面図である。図2は、子扉付きドアの垂直断面図である。図3は、子扉付きドアの水平断面図である。図4は、子扉の回転機構を示す水平断面図である。図5は、子扉用の蝶番を示す図であって、同図中(A)は正面図、同図中(B)は平面図、同図中(C)は側面図である。図6は、子扉が半開きに維持された状態を示す水平断面図である。図7は、換気用ストッパを示す図であって、同図中(A)は正面図、同図中(B)は側面図である。
【0016】
図1に示すように、子扉付きドア1は、戸建て住宅や集合住宅の玄関ドアとして施工されるもので、外開き式の親扉2を有している。親扉2は、鋼板材料によって縦長長方形板状に形成された扉本体2aを有している。扉本体2aは、室内側(玄関側)から見て、左側に支持側端面2d、右側に開放側端面2eが形成されている。親扉2は、3個の蝶番3を介して矢印で示すように回転して室外側(外部側)に開くようにドア枠4に取り付けられている。
【0017】
図1(A)に示すように、扉本体2aの室外側の表側面2bには、開放側端面2eの近傍に外側のハンドル5が取り付けられている。図1(B)に示すように、扉本体2aの室内側の裏側面2cには、開放側端面2eの近傍に内側のハンドル6が取り付けられている。さらに、扉本体2aの室内側の裏側面2cには、ドア枠4の上辺部との間にドアクローザ7が取り付けられている。
【0018】
図1に示すように、扉本体2aの中央部のやや支持側端面2d寄りの部位には、親扉2の表裏を貫通するように子扉用開口部10が縦長長方形断面状に形成されている。扉本体2aには、特定形状の3個の蝶番12を介して外開き式の子扉11が、子扉用開口部10を開閉自在にし、かつ、室外側に持ち出しながら矢印で示すように回転して室外側に開くように取り付けられている。
【0019】
図1に示すように、子扉11は、鋼板材料等の親扉2と同様な材料によって縦長長方形板状に形成された扉本体11aを有している。子扉11の扉本体11aは、親扉2の扉本体2aと同様、室内側から見て、左側に支持側端面11b、右側に開放側端面11cが形成されている。図2及び図3に示すように、子扉11の扉本体11aは、親扉2の扉本体2aと同じ厚さで、親扉2の扉本体2aに対して若干の隙間C1をあけて子扉用開口部10に収容されうるように子扉用開口部10より少し小さくなっている。図1(A)及び(B)に示すように、子扉11の扉本体11aには、ドアスコープ8が埋設されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、親扉2の室内側の裏側面2cには、枠体17を介して気密ゴム15が、親扉2と子扉11との隙間C1をその全長にわたって塞ぐように子扉用開口部10の周縁に沿って配設されている。
【0021】
図2乃至図4に示すように、子扉11の室外側の表側面11dの外周には、親扉2と子扉11との隙間C1を室外側から目隠しする鍔部9が形成されている。例えば、鍔部9は鋼板材料によって形成されている。鍔部9は、親扉2と子扉11との隙間C1より広い幅W1を有しており、子扉11が閉じられている状態で親扉2の室外側の表側面2bの子扉用開口部10の外周部10aに対向する位置まで延在している。
【0022】
また、図3及び図4に示すように、子扉11の扉本体11aの支持側端面11bと、この支持側端面11bに対向する親扉2の扉本体2aの支持側端面2dとの間には、3個の蝶番12が上中下3段で取り付けられている。図5に示すように、各蝶番12はそれぞれ、主に親扉2側に取り付けられる親扉用羽根12aと、子扉11側に取り付けられる子扉用羽根12bと、丸棒軸12cと、スプリング12dと、2個のワッシャ12eとから構成されている。
【0023】
ここで、図4及び図5に示すように、親扉用羽根12aは、略L字断面形状に形成されており、端部12a1が複数個の皿ねじ12fで親扉2の扉本体2aの支持側端面2dに止め付けられている。子扉用羽根12bは、略コ字又は略U字の断面形状に形成されており、端部12b1(実際には軸方向に延在した部位12b2)が複数個の皿ねじ12gで子扉11の扉本体11aの支持側端面11bに止め付けられている。丸棒軸12cは、親扉用羽根12aに対して子扉用羽根12bが当該丸棒軸12cの軸心CT1を中心として図5中に示す矢印K、L方向に回転するように、親扉用羽根12a及び子扉用羽根12bを互いに連結している。ここで、図4に示すように、丸棒軸12cは、子扉付きドア1において室外寄りに配置されている。スプリング12dは、親扉用羽根12aに対して子扉用羽根12bを常に離反方向(図5中に示す矢印L方向)に付勢するように丸棒軸12cの周囲に巻回されている。各ワッシャ12eはそれぞれ、親扉用羽根12aと子扉用羽根12bとの間に位置するように丸棒軸12cに挿通されている。
【0024】
このような構造によって、図4に示すように、子扉11は、全閉状態(図4中の実線参照)から開かれると、扉本体11aの支持側端面11bが親扉2の室外側の表側面2bから離れるように移動し、室外側に持ち出しながら全開状態(図4中の二点破線参照)になる。これにより、鍔部9は、子扉11の持ち出し構造(子扉11が全閉状態(図4中の実線参照)から室外側に持ち出しながら開かれて全開状態(図4中の二点破線参照)になる構造)により、子扉11が全閉状態から全開状態に至る間に親扉2の室外側の側面2bに干渉する不都合は生じない。
【0025】
また、図6に示すように、子扉11の扉本体11aの開放側端面11cと、この開放側端面11cに対向する親扉2の扉本体2aの開放側端面2eとの間には、子扉11を所定の維持角度θ3(例えば、θ3=20°)で半開きに維持可能にする換気用ストッパ13が取り付けられている。換気用ストッパ13は、当該換気用ストッパ13(具体的には、後述の温度ヒューズ13h)が予め設定した温度になると、半開きに維持している子扉11を閉じるように構成されている。
【0026】
図6及び図7に示すように、換気用ストッパ13は、主にアーム13aと、係着ピン13bと、第1スプリング13cと、凹部(端部収容部)13dと、係止ピン13eと、ブラケット13fと、ヒューズ取付板13gと、温度ヒューズ13hと、第2スプリング13kとから構成されている。
【0027】
ここで、図6に示すように、アーム13aは、長尺の平板状のアーム本体13iを有している。アーム本体13iの一端には平板状の係止部13jが、アーム本体13iに対して所定の傾斜角度θ4だけ傾斜して連設されている。この傾斜角度θ4は子扉11の維持角度θ3にほぼ一致している。一方、アーム本体13iの他端には係着ピン13bが取り付けられている。係着ピン13bは、子扉11の扉本体11aの開放側端面11cに遊嵌されている。第1スプリング13cは、係着ピン13bを介してアーム本体13iの他端部を常に子扉11の扉本体11aの開放側端面11cに近づける向きに付勢するように係着ピン13bの周囲に巻回されている。すなわち、第1スプリング13cは、アーム本体13iの一端部を親扉2の扉本体2aの開放側端面2eに押し付けるように付勢するように巻回されている。
【0028】
また、図7に示すように、子扉11の扉本体11aの開放側端面11cには当該開放側端面11cに対して凹となる凹部13dが形成されている。凹部13dは、係着ピン13bが設けられた部位の真下であって、アーム13aが吊り下げられた状態で係止部13jが対向する位置に形成されている。ここで、アーム13aが吊り下げられた状態で、係止部13jは、アーム本体13iに対して子扉11の扉本体11aの開放側端面11c側に傾いた状態になる。凹部13dは、このような係止部13jを収容する。
【0029】
また、図6及び図7(B)に示すように、係止ピン13eは、ブラケット13fに遊嵌された形で親扉2の扉本体2aの開放側端面2eに進退自在に埋設されている。第2スプリング13kは、常に係止ピン13eを後退させる向きに付勢するように係止ピン13eの周囲に巻回されている。係止ピン13eの後端には、ヒューズ取付板13gが取り付けられている。温度ヒューズ13hは、ブラケット13fとヒューズ取付板13gとの間に張設されており、係止ピン13eの前端部13e1を親扉2の開放側端面2eから少し突出させた状態で保持している。温度ヒューズ13hが予め設定した温度になると剛性が弱くなるため(例えば、溶断するため)、係止ピン13eは、第2スプリング13kの弾性力によって後退する。これによって、係止ピン13eの前端部13e1が親扉2の開放側端面2eから突出した状態から当該親扉2内に移動し収容される。
【0030】
これにより、換気用ストッパ13は、子扉11を所定の維持角度θ3で半開きに維持するとともに、予め設定した温度になると、半開きに維持している子扉11を閉じる。
【0031】
さらに、図1乃至図3に示すように、親扉2の室内側の側面2cには、親扉2の表裏を結ぶ方向(図2乃至図3中に示す矢印M、N方向)に空気を通す内開き式の網戸14が、フレーム16を介して取り付けられている。網戸14は、子扉用開口部10を覆うように、かつ室内側に開くように開閉自在になっている。例えば、網戸14は、枠がステンレス材料によって形成されている。
【0032】
(動作、作用等)
子扉付きドア1が施工された戸建て住宅等において、居住者は、親扉2を閉めたまま室内を換気する際には、玄関において、以下の手順により、子扉付きドア1の子扉11を半開きにする。
【0033】
先ず、居住者は、室内側から網戸14を室内側(手前)に引いて開いて、子扉11を室外側に押す。すると、蝶番12は、蝶番12のスプリング12dの弾性力に抗する形で、子扉用羽根12bが親扉用羽根12aに対して接近方向(図5中に示す矢印K方向)に回転移動し、子扉11が室外側に開く。
【0034】
そして、居住者は、子扉11が所定の維持角度θ3に達したところで、換気用ストッパ13を用いて子扉11を半開きの状態に維持する。それには、居住者は、アーム13aの自重で係止部13jが下向きに吊り下げられている鉛直状態から、アーム13aが水平状態になるまで係止部13jを持ち上げて親扉2の開放側端面2eから突出している係止ピン13e(係止ピン13eの前端部13e1)に引っ掛けて係止する。こうすることで、子扉11がアーム13aで半開きの状態に維持された状態になる。最後に、居住者は網戸14を閉める。
【0035】
このようにして、子扉11がアーム13aで半開きの状態に維持されると、室内空間と室外空間とが子扉用開口部10を介して連通するため、この子扉用開口部10を通して室内と室外との間で空気の入れ替えが行われ、室内が換気される。
【0036】
このとき、子扉11が半開き状態にされていても、親扉2には網戸14が子扉用開口部10を覆うように取り付けられているので、室外から子扉用開口部10を通って室内に虫等が侵入する事態を未然に防止できる。
【0037】
また、こうして親扉2を閉めたまま子扉11を開けて室内を換気しているときに、室内で火災が起きた場合には、換気用ストッパ13において、温度ヒューズ13hが溶断する。その結果、スプリング13kの弾性力によって係止ピン13eが後退し、アーム13aの係止部13jと係止ピン13eとの係止状態が解除される。そのため、アーム13aは、係着ピン13bを中心として回転する形で係止部13jを下降させて鉛直状態になる。
【0038】
すると、3個の蝶番12のスプリング12dの弾性力により、半開きの子扉11が閉まって全閉状態になる。このとき、親扉2と子扉11との隙間C1は気密ゴム15で塞がれるので、室内と室外とは子扉付きドア1によって完全に遮断された状態になる。
【0039】
このように、子扉11が半開きの状態で火災が起きると、換気用ストッパ13による子扉11の半開き維持状態が自動的に解除され、子扉11が全閉状態になる。したがって、子扉付きドア1は、隣家への延焼を防ぎ、防災基準を満たす。
【0040】
なお、アーム13aの係止部13jが下降してアーム13aが鉛直状態になると、図7に示すように、スプリング13cの弾性力により、アーム本体13iの他端部が子扉11の扉本体11aの開放側端面11cに接触し、アーム13aの係止部13jが凹部13dに収納されるので、係止部13jがアーム本体13iに対して傾斜しているからといって、アーム13aが子扉11の扉本体11aの開放側端面11cからアーム13aの厚さ以上に突出することは起きない。したがって、子扉11が閉まる動作は、親扉2の室外側の側面2bにアーム13aが干渉することなく円滑に実行される。
【0041】
さらに、子扉付きドア1が施工された戸建て住宅等において、地震などの災害が発生して室外へ避難しようとする場合、先ずは、居住者は、親扉2の内側のハンドル6を把持し、親扉2を室外側に押して開いた後、室内から室外へ逃げ出す。
【0042】
ところが、災害に伴ってドア枠4が斜め(平行四辺形)に変形して親扉2に噛み合い、親扉2を押しても親扉2が開かない事態が生じうる。こうした事態が生じた場合には、次善の策として、玄関において、先ず、居住者は、網戸14を室内側に引いて開く。次に、子扉11を室外側に押し開いて全開状態にする。この状態で、居住者は、子扉用開口部10を通って室内から室外へ逃げ出す。
【0043】
このように、災害が発生して親扉2が開かない場合には、網戸14を取り外す作業などせず網戸14を開く操作をするだけで、子扉用開口部10を室内側に臨むようにできる。そのため、居住者は、網戸14を子扉用開口部10を覆っている状態から覆わない状態に早く変化させることができ、子扉用開口部10を通って室内から室外へ迅速かつ安全に逃げ出して避難できる。
【0044】
しかも、子扉付きドア1は、子扉11が外開き式(つまり、逃げ出す向きに開く方式)であるため、内開き式(つまり、逃げ出す向きとは反対の向きに開く方式)の場合と異なり、子扉11を開けるために一旦停止する必要がないので、避難時の迅速性及び安全性を一層高められる。
【0045】
さらに、図1(A)及び(B)に示すように、子扉用開口部10の下部は、ドア枠4の下辺部から少しだけ上側の高さに位置しているに過ぎないので、高齢者や子どもでも親扉2の下部を難なく跨いで容易に逃げられる。
【0046】
(実施形態における効果)
(1)子扉付きドア1は、子扉用開口部10を覆うように網戸14を設けることで、子扉11を開けている状態で子扉用開口部10からの虫等の侵入を防げる。例えば、特許文献1に開示のようなガラリでは、子扉用開口部10からの虫等の侵入を効果的に防げない。しかも、親扉2の子扉用開口部10には子扉11のみが収容されているため、子扉11の厚さも親扉2の厚さ同等に確保できる。これにより、特許文献1のように子扉用開口部10内にガラリも設けられている場合に比べて、網戸14を設けながらも(虫等の侵入を防ぎながらも)、子扉付きドア1全体の剛性を高められる利点がある。
【0047】
(2)子扉付きドア1は、換気用ストッパ13によって、火災発生時に子扉11が自動的に閉まり、防災基準が満たされる。
【0048】
(3)子扉付きドア1は、親扉2と子扉11との間の隙間C1を鍔部9で室外側から目隠しでき、防犯性に優れる。例えば、空き巣狙い等の犯罪者が、親扉2と子扉11との隙間C1に室外側からバール等の器具を差し込んで子扉11をこじ開ける犯罪を有効に防止できる。さらに、子扉付きドア1は、子扉11が持ち出しながら開かれることで、鍔部9を親扉2に干渉させることなく子扉11を開けることができる。
【0049】
(4)子扉付きドア1は、災害時に室内の人が子扉用開口部10を通って室外へ迅速に逃げ出して避難できる。
【0050】
(5)図1(A)に示すように、子扉付きドア1は、親扉2と子扉11とが室外から見たデザインが統一されているので、外観デザインの一体性を容易に確保できる。
【0051】
(6)子扉付きドア1は、子扉11の室内側に網戸14が子扉用開口部10を覆うように取り付けられているが、網戸14には全面に多数の通風口が形成されているので、子扉11に設けられたドアスコープ8は、子扉11の扉本体11aの上下方向及び左右方向のどの部位に設けられていても十全に機能する。
【0052】
なお、本実施形態では、換気用ストッパ13は、例えば、維持手段を構成する。また、網戸14は、例えば、通風部を構成する。
【0053】
(本実施形態の変形例等)
前記の実施形態は、戸建て住宅等の間取りやアルコーブその他の状況に応じて、種々変形することが可能である。
【0054】
例えば、親扉2の扉本体2aは、前記の実施形態とは逆に、室内側から見て、右側に支持側端面2d、左側に開放側端面2eを形成することもできる。さらに、親扉2を内開き式にすることもできる。また、子扉11の扉本体11aは、前記の実施形態とは逆に、室内側から見て、右側に支持側端面11b、左側に開放側端面11cを形成することもできる。また、網戸14を内開き式以外の取付方式、例えば、嵌め込み式や引き戸式にすることもできる。
【0055】
また、前記の実施形態の他の例として、親扉2の扉本体2aや子扉11の扉本体11aの材質は、鋼板に限定されず他の材質、例えば、硬質の木材としてもよい。或いはまた、子扉付きドア1の重厚さを高めるべく、親扉2の扉本体2aの室外側にステンレス製の鏡面版(図示せず)を貼り付けても構わない。
【0056】
また、前記の実施形態の他の例として、鍔部9の材質は、鋼板に限定されず他の材質、例えば、鋼板をアルミニウム板で化粧した複合材料としてもよい。
【0057】
また、前記の実施形態の他の例として、網戸14の材質は、ステンレスに限定されず他の材質、例えば、鋼材や合成樹脂としてもよい。
【0058】
また、前記の実施形態の他の例として、網戸14の代わりに、子扉付きドア1の意匠性を重視して所望の通風窓やガラリ(図示せず)を代用することもできる。
【0059】
また、前記の実施形態の他の例として、親扉2の扉本体2aの形状は、縦長長方形板状に限定されず他の形状、例えば、縦長長円形板状に形成されることもできる。
【0060】
また、前記の実施形態の他の例として、子扉用開口部10の形状は、縦長長方形断面状に限定されず他の形状、例えば、正方形断面状に形成されることもできる。
【0061】
また、前記の実施形態の他の例として、子扉11の扉本体11aの形状は、縦長長方形板状に限定されず他の形状、例えば、正方形板状に形成されることもできる。
【0062】
また、前記の実施形態の他の例として、子扉11の扉本体11aの室外側に取っ手(図示せず)を取り付けて、子扉11の開閉を容易にすることもできる。
【0063】
また、前記の実施形態の他の例として、子扉付きドア1は、マンションやアパート等の集合住宅において、各住戸の玄関ドアとして施工されることもできる。或いは、戸建て住宅や集合住宅の各住戸の内部において、例えば、居室と廊下とを仕切る仕切りドアとして施工されることもできる。
【0064】
さらに、前記の各変形例を適宜組み合わせてもよい。例えば、内開き式の親扉に嵌め込み式の網戸を取り付けるようにしても構わない。
【0065】
また、本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0066】
1 子扉付きドア、2 親扉、9 鍔部、10 子扉用開口部、10a 外周部、11 子扉、13 換気用ストッパ、14 網戸
【要約】
【課題】子扉付きドアにおいて子扉を開けている状態で室外からの虫等の侵入を防ぐ。
【解決手段】子扉付きドア1は、親扉2と、親扉2の表裏を貫通し形成された子扉用開口部10を開閉自在にし、かつ室外側に開くように親扉2に取り付けられた子扉11と、を有している。また、子扉11を開いた状態に維持可能にする換気用ストッパと、親扉2の室内側の側面2cに子扉用開口部10を覆うように取り付けられ、親扉2の表裏を結ぶ方向に空気を通す網戸14と、を有している。子扉11を室外側に開いた状態で維持できる構造において、子扉用開口部10を覆うように網戸14を設けることで、子扉用開口部10からの虫等の侵入を防げる。
【選択図】図1
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図7