(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961173
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/14 20060101AFI20211025BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20211025BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20211025BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20211025BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
H02G3/14
H02G3/16
B60R16/02 610D
H05K5/02 J
H05K5/02 L
H05K7/20 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-111304(P2018-111304)
(22)【出願日】2018年6月11日
(65)【公開番号】特開2019-216503(P2019-216503A)
(43)【公開日】2019年12月19日
【審査請求日】2020年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 孝祐
【審査官】
大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−041332(JP,U)
【文献】
特開平03−235610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/08−3/20
B60R 16/02
H05K 5/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品が装着される複数の部品装着部が一方の面に設けられた箱本体と、
前記箱本体の前記一方の面を覆蓋するカバー部材と、
前記箱本体の周壁部に設けられた被ロック部と、前記カバー部材に片持ち状に設けられた弾性ロック部を含むロック機構とを備え、
前記カバー部材の天壁部が、前記カバー部材の周壁部に設けられた前記弾性ロック部よりも熱伝導率の大きな樹脂材料で形成されている一方、前記カバー部材の前記周壁部に設けられた前記弾性ロック部が、前記カバー部材の前記天壁部よりも弾性の大きな樹脂材料で形成されており、
前記カバー部材が、前記弾性ロック部が一体的に設けられた枠体周壁部と、該枠体周壁部とは別体に形成されて該枠体周壁部に着脱自在に組み付け固定される前記天壁部を含んでおり、前記枠体周壁部全体が前記天壁部よりも弾性の大きな樹脂材料で形成されており、
前記天壁部が、前記枠体周壁部における前記箱本体側に対向する下方側開口部から前記枠体周壁部に挿し入れられて組み付け固定されるものであり、
前記枠体周壁部における前記箱本体から離隔する上方側開口部には内フランジが突設されており、前記天壁部の外周縁部が前記内フランジに重ね合されることにより前記天壁部の挿し入れ端が規定されている一方、
前記枠体周壁部には、板厚方向外方に撓み変形可能なロック片が設けられており、前記天壁部の周壁に突設されたロック突部に当接して前記ロック片が外方に撓み変形することにより前記枠体周壁部への前記天壁部の挿し入れが許容される一方、前記ロック片が前記ロック突部を乗り越えて弾性復帰することにより、前記ロック片と前記ロック突部が係合して前記天壁部が前記枠体周壁部に保持されるようになっており、
前記天壁部の前記周壁の下方側開口部には、前記箱本体との当接面よりも外周側に位置して下方に突出する水入り防止壁が突設されている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記箱本体の前記周壁部が、前記天壁部の前記箱本体への前記当接面を当接保持する内周壁部と、前記枠体周壁部の前記箱本体への当接面を当接保持する外周壁部を含む二重壁構造とされており、前記内周壁部と前記外周壁部の間に設けられた凹溝に対して、前記水入り防止壁が挿し込まれるようになっている請求項1に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される電気接続箱に関し、特に、箱本体に対してカバー部材を着脱自在に装着するロック機構を備えた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の電装系には、リレーボックスやヒューズボックス、ジャンクションボックス等の電気接続箱が用いられており、かかる電気接続箱に多数のリレーやヒューズ等の電気部品を集中して配設することによって、電気配線の効率化や交換等のメンテナンス性の向上が図られている。
【0003】
ところで、電気接続箱は、特開平11−307954号公報(特許文献1)や特開2012−235654号公報(特許文献2)等に記載されているとおり、バスバーやプリント基板等から構成される内部回路を収容する箱本体を備えている。箱本体の一面である上面には、電気部品が装着される複数の部品装着部が設けられており、ロック機構を介して箱本体に着脱自在に装着固定されるカバー部材によって、箱本体の上面が覆われるようになっている。ここで、ロック機構は、カバー部材に片持ち状に突設された弾性ロック部と、箱本体に設けられた被ロック部とを含んでおり、カバー部材を箱本体に装着する際には、弾性ロック部が被ロック部に係合して弾性変形することにより弾性ロック部の被ロック部への挿し入れが許容されると共に、弾性ロック部が被ロック部を乗り越えて弾性復帰することにより、弾性ロック部が被ロック部に係合して、カバー部材と箱本体に組み付け状態に保持されるようになっている。
【0004】
ところが、近年の自動車電装品の増加に伴い、ヒューズやリレーなどの発熱部品が増えると共に、電気接続箱は設置場所のスペースの関係からその大きさが制限されていることから、電気接続箱内の発熱部品の密度も高くなっている。特に、ヒューズの可溶部やリレーのコイル部は発熱量がきわめて大きい。このため、密閉した電気接続箱内に熱がこもり易くなると共に局部的な過熱が発生することにより、ヒューズやリレーの機能を損ねるおそれがあった。
【0005】
これに対して、箱本体の上面を覆うカバー部材を熱伝導率の良い樹脂材料に変えることによって、カバー部材から外部への放熱を促して電気接続箱内に熱がこもることを防止することが考えられる。しかしながら、熱伝導率の良い樹脂材料は柔軟性に欠けることから、カバー部材をロック機構を介して箱本体に着脱自在に装着固定する際に、弾性ロック部が十分に撓むことができず破断してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−307954号公報
【特許文献2】特開2012−235654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ロック機構の耐久性を維持しつつ、電気接続箱の放熱性も向上することができる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、電気部品が装着される複数の部品装着部が一方の面に設けられた箱本体と、前記箱本体の前記一方の面を覆蓋するカバー部材と、前記箱本体の周壁部に設けられた被ロック部と、前記カバー部材に片持ち状に設けられた弾性ロック部を含むロック機構とを備え、前記カバー部材の天壁部が、前記カバー部材の周壁部に設けられた前記弾性ロック部よりも熱伝導率の大きな樹脂材料で形成されている一方、前記カバー部材の前記周壁部に設けられた前記弾性ロック部が、前記カバー部材の前記天壁部よりも弾性の大きな樹脂材料で形成されて
おり、前記カバー部材が、前記弾性ロック部が一体的に設けられた枠体周壁部と、該枠体周壁部とは別体に形成されて該枠体周壁部に着脱自在に組み付け固定される前記天壁部を含んでおり、前記枠体周壁部全体が前記天壁部よりも弾性の大きな樹脂材料で形成されており、前記天壁部が、前記枠体周壁部における前記箱本体側に対向する下方側開口部から前記枠体周壁部に挿し入れられて組み付け固定されるものであり、前記枠体周壁部における前記箱本体から離隔する上方側開口部には内フランジが突設されており、前記天壁部の外周縁部が前記内フランジに重ね合されることにより前記天壁部の挿し入れ端が規定されている一方、前記枠体周壁部には、板厚方向外方に撓み変形可能なロック片が設けられており、前記天壁部の周壁に突設されたロック突部に当接して前記ロック片が外方に撓み変形することにより前記枠体周壁部への前記天壁部の挿し入れが許容される一方、前記ロック片が前記ロック突部を乗り越えて弾性復帰することにより、前記ロック片と前記ロック突部が係合して前記天壁部が前記枠体周壁部に保持されるようになっており、前記天壁部の前記周壁の下方側開口部には、前記箱本体との当接面よりも外周側に位置して下方に突出する水入り防止壁が突設されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、カバー部材の天壁部が、カバー部材の周壁部に設けられた弾性ロック部よりも熱伝導率の大きな樹脂材料で形成されていることから、カバー部材から外部への放熱を促して電気接続箱内に熱がこもることを低減乃至は防止することができる。また、かかる弾性ロック部が、天壁部よりも弾性の大きな樹脂材料で形成されていることから、カバー部材をロック機構を介して箱本体に着脱自在に装着固定する際に、弾性ロック部の十分な撓み変形が確保され、弾性ロック部が破断するおそれを低減乃至は解消することができ、ロック機構の耐久性を維持しつつ、電気接続箱の放熱性の向上を図ることができる。
【0010】
なお、カバー部材は、2色成形を用いて、天壁部と弾性ロック部を異なる樹脂材料で形成してもよいし、それぞれ異なる樹脂材料で別体成形した後に互いに組み付けるようにしてもよい。
【0012】
本態様によれば、カバー部材が、弾性ロック部が一体的に設けられた枠体周壁部と、枠体周壁部とは別体に形成されて枠体周壁部に着脱自在に組み付け固定される前記天壁部を含んでいることから、枠体周壁部と天壁部をそれぞれの要求特性を発揮し得る別々の材料で形成することが容易となり、2色成形等に比して製造効率の向上を図ることができる。
【0013】
加えて、枠体周壁部に対して天壁部を着脱自在に組み付け固定されるようになっていることから、ロック機構の耐久性を維持しつつ電気接続箱の放熱も向上できる構成を容易に実現することができる。さらに、枠体周壁部と天壁部の何れか一方に不具合が生じた場合でも、何れか一方を交換すればよいことから、メンテナンス性の向上も図ることができる。
【0015】
本態様によれば、天壁部が枠体周壁部の下方から挿し入れられて組み付けられるようになっており、枠体周壁部の上方側開口部に突設された内フランジに対して、天壁部が当接することで、挿し入れ端が規定されるようになっている。さらに、天壁部の周壁と枠体周壁部の重ね合せ面間には、ロック機構が設けられており、天壁部が枠体周壁部に固定状態に保持されるようになっている。ここで、ロック機構を構成するロック片が枠体周壁部に設けられ、天壁部にはロック突部が設けられていることから、枠体周壁部よりも内部に位置する天壁部にロック片を撓み変形可能にするスリット等を設ける必要がなく、防水性を確保しつつ、ロック機構を設けることができる。
【0016】
さらに、天壁部の周壁の下方側開口部には、箱本体との当接面よりも外周側に位置して下方に突出する水入り防止壁が突設されていることから、天壁部が被水して水が天壁部と枠体周壁部の間に入り込んだ場合でも、箱本体の内部への水の浸入を水入り防止壁で確実に防止することができ、2分割構造としたカバー部材の防水性を一層有利に確保することができる。
【0017】
本発明の第
二の態様は、前記第
一の態様に記載のものにおいて、前記箱本体の前記周壁部が、前記天壁部の前記箱本体への前記当接面を当接保持する内周壁部と、前記枠体周壁部の前記箱本体への当接面を当接保持する外周壁部を含む二重壁構造とされており、前記内周壁部と前記外周壁部の間に設けられた凹溝に対して、前記水入り防止壁が挿し込まれるようになっているものである。
【0018】
本態様によれば、カバー部材を構成する天壁部と枠体周壁部とがそれぞれ箱本体の周壁部を構成する内周壁部と外周壁部に当接保持されるようになっていることから、天壁部と枠体周壁部のそれぞれを安定して箱本体で支持することができ、ロック片に過度の外力が加わり破断するおそれ等を低減することができる。
【0019】
さらに、天壁部の周壁に設けられた水入り防止壁が、箱本体の内周壁部と外周壁部の間に設けられた凹溝に差し込まれていることから、箱本体内部への水の浸入経路が長く複雑となって、箱本体内部の被水が一層確実に防止される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、カバー部材の天壁部が、カバー部材の周壁部に設けられた弾性ロック部よりも熱伝導率の大きな樹脂材料で形成されていることから、カバー部材から外部への放熱を促して電気接続箱内に熱がこもることを低減乃至は防止できる。また、弾性ロック部が、天壁部よりも弾性の大きな樹脂材料で形成されていることから、カバー部材をロック機構を介して箱本体に着脱自在に装着固定する際に弾性ロック部が破断するおそれを低減乃至は解消することができ、電気接続箱の放熱性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態としての電気接続箱を示す全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1〜5に、本発明の一実施形態としての電気接続箱10が示されている。電気接続箱10は、
図1,3,4に示されているように、箱本体12と、箱本体12の一方の面である上面14を覆蓋するカバー部材たるアッパカバー16と、箱本体12の他方の面である下面18を覆蓋するロアカバー20、とを含んで構成されている。なお、以下の説明において、上方とは、
図1,3,5中の上方、下方とは、
図1,3,5中の下方を言い、また前方とは、
図2〜4中の右方、後方とは、
図2〜4中の左方を言い、さらに長手方向とは、
図2〜4中の左右方向、幅方向とは、
図2,4中の上下方向を言うものとする。
【0024】
箱本体12は、
図1に示されているように、全体として長手矩形ブロック形状を呈しており、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の絶縁性の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。
図4に示されているように、箱本体12の上面14には、部品装着部を構成するリレー装着部22やヒューズ装着部24が複数、上方に向かって開口形成されている。図示は省略するが、箱本体12の下面18(
図3参照)には、複数の端子収容孔やバスバー収容溝が下方に向かって開口形成されており、電線の端末に圧着された圧着端子やバスバーがそれぞれ端子収容孔やバスバー収容溝に収容配置されている。
【0025】
そして、箱本体12の上面14側から、各リレー装着部22や各ヒューズ装着部24に対して、電気部品であるリレー26やヒューズ28が装着されている。これにより、かかるリレー26やヒューズ28から下方に向かって突出する図示しないタブ端子が上述した電線の端末の圧着端子やバスバー等に導通接続されるようになっている。なお、
図3では理解を容易にするために、部品装着部を構成するリレー装着部22やヒューズ装着部24や、電気部品であるリレー26やヒューズ28の記載は省略されている。
【0026】
また、
図1〜2,4に示されているように、箱本体12の周壁部30の上端部近傍には、長手方向に離隔配置され且つ幅方向に対向する合計4箇所において、それぞれ平面視で略コ字状のロック機構を構成する被ロック部たる係合枠32が外方(
図4中、上下方向)に向かって突設されている。より詳細には、かかる係合枠32は、周壁部30に両端部が連結されて突設された構造とされている(
図4参照)。
図1に示されているように、係合枠32は、その一部が周壁部30の上端部を越えてアッパカバー16側すなわち鉛直方向上方に向って突出するように構成されている。そして、係合枠32の上端部には、内方に向って突出する係合突起34が設けられている(
図4参照)。
【0027】
加えて、
図3,4に示されているように、箱本体12の周壁部30が、内周側に設けられた内周壁部30aと、外周側に設けられた外周壁部30bを含む二重壁構造とされており、内周壁部30aと外周壁部30bの間の上端部には、上方に向かって開口すると共に略矩形断面形状で周壁部30に沿って延びる凹溝36が設けられている。
【0028】
一方、アッパカバー16は、
図1,3,5に示されているように、全体として下方に向かって開口する略矩形箱体形状を有している。より詳細には、アッパカバー16は、アッパカバー16の周壁部を構成し且つ上下方向に向かって開口する平面視で略矩形枠体状の枠体周壁部16aと、下方に向かって開口する略矩形箱体形状を有する天壁部16bを含んで構成されている。そして、枠体周壁部16aにおける箱本体12側に対向する下方側開口部38近傍の外周面40には、長手方向に離隔配置され且つ幅方向に対向する合計4箇所において、下方側開口部38側に連結されて上方斜め外方に向かって片持ち状に延出してロック機構を構成する弾性ロック部42が設けられている。かかる弾性ロック部42には、延出方向の略中央部分において外方に向かって略三角断面形状で突出するロック突部44が設けられている一方、延出先端部において外方に向かって平面視で略略コ字状で突出するロック解除部46が設けられている。なお、各弾性ロック部42の幅方向両側には一対のガイド部47,47が突設され、係合枠32に対する弾性ロック部42の位置決めがされるようになっている。また、枠体周壁部16aにおける箱本体12側から離隔する上方側開口部48近傍には、長手方向に離隔配置され且つ幅方向に対向する合計4箇所において、略矩形平板状のロック片50が設けられている。かかるロック片50は、幅方向両側および上側が図示しないスリットによって切り欠かれ且つ下側において片持ち状に枠体周壁部16aに連結されて板厚方向(
図3中、左右方向)外方に向かって撓み変形可能とされている。さらに、ロック片50には、延出方向の略中央部分において内方に向かって略三角断面形状で突出するロック突部52が設けられている(
図3参照)。加えて、枠体周壁部16aにおける箱本体12から離隔する上方側開口部48には内方に突出する略矩形枠体状の内フランジ54が設けられている。
【0029】
一方、天壁部16bは、全体として下方に向かって開口する略矩形箱体形状を有しており、天面56の中央の大部分が平面視で略矩形状に突出して突部58を形成している。また、天面56の周壁60の上端部には、周壁60の長手方向に離隔配置され且つ幅方向に対向する合計4箇所において、外方に向かって略三角断面形状で突出するロック突部62が設けられている。さらに、天壁部16bの周壁60の下方側開口部64には、下方に向かって突出する水入り防止壁66(
図3参照)が設けられている。
【0030】
なお、アッパカバー16を構成する天壁部16bは、弾性ロック部42が設けられた、アッパカバー16の周壁部を構成する枠体周壁部16aよりも熱伝導率の大きな樹脂材料、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリブタレンテレフタレート(PBT)等の絶縁性の合成樹脂により射出成形等によって一体的に形成されている。一方、弾性ロック部42が設けられた枠体周壁部16aは、天壁部16bよりも弾性の大きな樹脂材料、例えばポリプロピレン(PP)等の絶縁性の合成樹脂により射出成形等によって一体的に形成されている。すなわち、アッパカバー16を構成する天壁部16bと枠体周壁部16aは、それぞれ異なる樹脂材料で別体で一体的に成形されているのである。
【0031】
このような構成とされたアッパカバー16の組み付け固定作業は、天壁部16bを、枠体周壁部16aにおける箱本体12側に対向する下方側開口部38から枠体周壁部16a内に挿し入れることによって実行される。より詳細には、天壁部16bを枠体周壁部16aの下方から挿し入れることによって、天壁部16bの周壁60に突設されているロック突部62が、板厚方向外方に撓み変形可能とされた枠体周壁部16aのロック片50のロック突部52に当接してロック片50を外方に撓み変形させることにより、枠体周壁部16a内への天壁部16bのさらなる挿入が許容される(
図3参照)。次に、天壁部16bをさらに奥方に挿入すると、天壁部16bのロック突部62がロック片50のロック突部52を乗り越えて弾性復帰することにより、枠体周壁部16aのロック片50のロック突部52と天壁部16bのロック突部62が係合する。そして、天壁部16bの周壁60を含む外周縁部が内フランジ54に重ね合されることにより、これ以上の天壁部16bの挿入が規制され、天壁部16bの挿し入れ端が規定されている。この結果、天壁部16bが枠体周壁部16aに組み付けられた状態で保持されて、アッパカバー16が構成されるようになっているのである。
【0032】
かかる組み付け状態のアッパカバー16において、天壁部16bの天面56上に突設された突部58が、枠体周壁部16aの内フランジ54の突出先端部によって囲まれた上方開口部を下方から塞ぐことにより、アッパカバー16の上面が略平坦となっている。また、組み付け状態のアッパカバー16において、枠体周壁部16aのロック片50を外方に撓ませて、ロック突部52と天壁部16bのロック突部62の係合を解除することが可能であることから、天壁部16bは枠体周壁部16aに対して着脱自在に組み付け固定できるようになっている。加えて、組み付け状態のアッパカバー16において、
図3に示されているように、箱本体12の周壁部30の内周壁部30aが、天壁部16bの箱本体12への当接面68を当接保持するようになっている一方、外周壁部30bが、枠体周壁部16aの箱本体12への当接面70を当接保持するようになっている。これにより、天壁部16bと枠体周壁部16aのそれぞれを安定して箱本体12で支持することができることから、枠体周壁部16aのロック片50が過度に変形して破断するおそれ等を低減することができるのである。また、内周壁部30aと外周壁部30bの間に設けられた凹溝36に対して、天壁部16bの周壁60の下方側開口部64から下方に向かって突出する水入り防止壁66が、挿し込まれるようになっている。ここで、かかる水入り防止壁66は、箱本体12との当接面68よりも外周側に位置して下方に突出されていることから、箱本体12内部への水の浸入経路が長く複雑となって、箱本体12内部の被水が一層確実に防止されている。
【0033】
このような構成とされたアッパカバー16を箱本体12の上面14を覆蓋するように組み付ける際には、
図3に示されているように、アッパカバー16の天壁部16bから突出する水入り防止壁66を、箱本体12の周壁部30を構成する内周壁部30aと外周壁部30bの間に設けられた凹溝36に挿し入れるように上方から押し込む。これにより、箱本体12の周壁部30の上端部近傍に突設されている係合枠32内へアッパカバー16の枠体周壁部16aに突設されたガイド部47,47で位置決めされた弾性ロック部42が挿し入れられ、係合枠32の係合突起34が、弾性ロック部42のロック突部44に当接して弾性ロック部42を内方に撓み変形させることにより、アッパカバー16の箱本体12上へのさらなる押し込みが許容される。そして、アッパカバー16をさらに下方に向かって押し込むと、箱本体12の係合突起34が弾性ロック部42のロック突部44を乗り越えて弾性復帰することにより、箱本体12の係合突起34とアッパカバー16のロック突部44が係合する。この結果、アッパカバー16が箱本体12に組み付けられて保持されて、電気接続箱10が構成されるようになっている。なお、組み付け状態の電気接続箱10において、アッパカバー16の弾性ロック部42のロック解除部46を内方に向かって押圧することにより、箱本体12の係合突起34とアッパカバー16のロック突部44の係合を解除することが可能であることから、アッパカバー16は箱本体12に対して着脱自在に組み付け可能となっている。
【0034】
一方、ロアカバー20は、合成樹脂から形成された一体成形品とされており、
図1,3に示されているように、上方に開口する略箱体形状とされている。また、ロアカバー20の周壁72の上下方向の中央部には、外周に沿って離隔して略三角断面形状で外方に向かって突出し箱本体12の周壁部30の外周壁部30bを支持する多数の支持突起74が設けられている。なお、ロアカバー20は箱本体12に対して図示しないロック機構によってのロック固定されている。
【0035】
このような構成とされた電気接続箱10によれば、アッパカバー16を構成する天壁部16bが、弾性ロック部42が設けられた枠体周壁部16aよりも熱伝導率の大きな樹脂材料で形成されていることから、アッパカバー16から外部への放熱を促して電気接続箱10内に熱がこもることを低減乃至は防止することができる。また、枠体周壁部16aは天壁部16bよりも弾性の大きな樹脂材料で形成されていることから、枠体周壁部16aに形成されている弾性ロック部42は十分な撓み変形が確保されている。それゆえ、弾性ロック部42が破断するおそれを低減乃至は解消することができる。以上のことから、ロック機構32,42の耐久性を維持しつつ、電気接続箱10の放熱性の向上を図ることができるようになっている。
【0036】
しかも、本実施形態では、アッパカバー16を構成する天壁部16bと枠体周壁部16aが別体成形とされていることから、例えば2色成形等によって一体的に形成した場合に比して製造効率の向上を図ることができる。加えて、枠体周壁部16aと天壁部16bの何れか一方に不具合が生じた場合でも、何れか一方を交換すればよいことから、メンテナンス性の向上も図ることができる。
【0037】
また、天壁部16bの周壁60の下方側開口部64には、箱本体12との当接面
68よりも外周側に位置して下方に突出する水入り防止壁66が突設されている。それゆえ、天壁部16bが被水して水が天壁部16bと枠体周壁部16aの間に入り込んだ場合であっても、箱本体12内への水の浸入を水入り防止壁66で確実に防止することができるので、アッパカバー16を天壁部16bと枠体周壁部16aに分割した構造とした場合の防水性を一層有利に確保することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでない。例えば、上記実施形態では、アッパカバー16を構成する天壁部16bと枠体周壁部16aが別体成形とされていたが、2色成形等の公知の技術を用いて、異なる材料を用いて一体的に形成してもよい。一体的に形成することによりアッパカバー16を組み立てる必要が不要となり、作業性を向上することができる。なお、アッパカバー16を一体的に形成する場合には、少なくとも天壁部16bに相当する領域が弾性ロック部42よりも熱伝導率の大きな樹脂材料で形成されており、且つ少なくとも弾性ロック部42が天壁部16bに相当する領域よりも弾性の大きな樹脂材料で形成されていればよい。
【符号の説明】
【0039】
10:電気接続箱、12:箱本体、14:上面(一方の面)、16:アッパカバー(カバー部材)、16a:枠体周壁部(周壁部)、16b:天壁部、22:リレー装着部(部品装着部)、24:ヒューズ装着部(部品装着部)、26:リレー(電気部品)、28:ヒューズ(電気部品)、30:周壁部、30a:内周壁部、30b:外周壁部、32:係合枠(被ロック部)(ロック機構)、36:凹溝、38:下方側開口部、42:弾性ロック部(ロック機構)、48:上方側開口部、50:ロック片、54:内フランジ、60:周壁、62:ロック突部、64:下方側開口部、66:水入り防止壁、68:当接面、70:当接面